提督「なにも考えない」 (49)

提督「あーあ……」

ウォースパイト「…………」

提督「朝潮ちゃん」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

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ウォースパイト「……そちらの書類は終わりました?」

提督「ああ」

ウォースパイト「それでは休憩にしましょうか。紅茶をいれるわ」

提督「朝潮ちゃん」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

1ラブコメ
2青春
3ホラー
4その他自由

↓3

ウォースパイト「そういえば面白い小説をこの前読みました」

提督「へえ」

ウォースパイト「『ルドルフ・ゴードンへの質問状』という百の質問から構成されている短編で、なかなか示唆に富む手法でした」

提督「朝潮ちゃんへの質問」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

ウォースパイト「電車の中で電話通話者を不愉快に思う訳は、単純にうるさいからではありません。うるさいだけなら電話よりよほど集団一行のほうがうるさいわね」

提督「ああ」

ウォースパイト「私たちは会話の一方向だけ聞かされるから不気味になるわけですね。もし、誰もいない虚空に向かって話し続けている人がいるなら、彼彼女は精神的異常を抱えているとみなされるわけです」

提督「まさしく」

ウォースパイト「あなたは私を精神異常者にでもなさるおつもり? それとも私ではなく、あなたが異常となってくれるのかしら? それとも、異常なのはもしくは可能な第三者かしら?」

提督「朝潮ちゃん」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

ウォースパイト「よろしい」

提督「?」

ウォースパイト「これは事件ということね」

提督「事件?」

ウォースパイト「そう。真犯人を探すどころか何が事件かさえわからない。まさに分からないところが分からない性質の事件」

提督「朝潮ちゃん」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

朝潮ちゃん!

>>8 「朝潮ちゃん!」

朝潮ちゃんは声を聞いた。それは「朝潮ちゃん!」と聞こえた。

後ろを振り向く。誰もいない。上を見上げた。シャンデリア。鏡を覗き見る。朝潮ちゃん。スカートの中に顔を突っ込む。謎の光。

室内には誰もいない。そして、室外は存在しない。なので、誰も朝潮ちゃんを呼んでいなかったと結論付けられる。

関心を失した朝潮ちゃんは、すぐに朝潮ちゃんらしい仕方で寛ぎ始めた。

まさに朝潮ちゃんがいるお部屋という様相を呈してきた頃合い、再び声を聞いた。「朝潮ちゃん!」と変わらずに聞こえた。

朝潮ちゃんは己が幻聴しているのかと疑ったが、思い直した。

幻聴には己自身を責め立てるような響きが通常伴うが、その声は感情的にフラットで、いかなる言外の含みも抽出できなかった。

幻聴ではないなら実在する音声のはずだが、朝潮ちゃん以外に「朝潮ちゃん!」とそもそも発言できる存在はいないので、やはり現実的な音でもないことになる。

夢でも現でもない排中律を無視した第三領域から、好意からでも敵意からでもなく、届く呼び声。

尋常なら、通俗的な世界理解を超えた外宇宙的存在を強く意識したとき、人は戦慄すべき不安を抱えるだろう。

しかし、朝潮ちゃんは尋常ではない。なぜなら、朝潮ちゃん彼女こそが朝潮ちゃんなのだから。

「朝潮ちゃん!」と朝潮ちゃんが呼びかけられたところで、朝潮ちゃんがどうして困るというのだろうか。

確かに、呼び声が例えば「フランシス・ベーコンちゃん」であったのなら、朝潮ちゃんも戸惑ったであろう。いつの間に朝潮ちゃんはベーコンちゃんになったのだろうかと疑問に思うのももっとものはずだった。

それに「フランシス・ベーコンちゃん」とはどの「フランシス・ベーコンちゃん」かの問題もある。哲学者として四つのイドラ概念を導入したり、聾教育にでも力を注ぐべきなのか、芸術家として恐怖の叫びを描き、二十世紀の具象絵画に新天地を啓くべきなのか。

そうしたさまざまな迷いが不安となり、最終的には己の実存性を疑うという不愉快な恐怖に繋がったであろう。

しかし、至極当然ながら僥倖にも呼び声は「朝潮ちゃん!」であった! 朝潮ちゃんは朝潮ちゃんであり、「朝潮ちゃん=朝潮ちゃん」という以上でも以下でもないのだ。

朝潮ちゃんは己が朝潮ちゃんであることに心から感謝したい気分だった。あーあ、私が朝潮ちゃんだなんて、なんと幸福なのだろう!

朝潮ちゃんは多幸感に包まれ、いかにも朝潮ちゃんらしく室内をぷらぷらするのみであった。「朝潮ちゃん!」。そう。彼女は朝潮ちゃんだから。

フランシス・ベーコン作『ベラスケス作「教皇インノケンティウス十世」による習作』
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-11-9a/mymws251/folder/560237/24/8272224/img_0?1255486603

おわり

1ほのぼの
2虚無
3ヤンデレ
4その他自由

↓3

ウォースパイト「まずはざっと話を聞き回らなければいけないわね」

提督「この鎮守府で事件なんて信じられない」

ウォースパイト「あどまいらる、何か変わったことってここ最近なかったかしら?」

提督「そんな突然言われても、思いつかないな」

ウォースパイト「些細なことでもいいから」

提督「朝潮ちゃん」

ウォースパイト「…………」

提督「…………」

鎮守府

ウォースパイト「あどまいらるから有用な情報は何も引き出せなかったわ」

グラーフ「珍しいな。貴艦が出歩くとは」

ウォースパイト「グラーフ! 事件よ事件!」

グラーフ「事件? 何かあったのか?」

ウォースパイト「わからないわ」

グラーフ「わからないとは……?」

ウォースパイト「事件は不明よ」

グラーフ「……事件とは、普通問題があって、それの解決状態がある程度想像できるものではないのか」

ウォースパイト「私にはまだよくわからないのだけど、事件があるわ」

グラーフ「随分と貴艦は用心深いのだな。事件があるのかどうかがわからないこと自体を事件と見なしていたら、心休まる暇なんてないだろう」

ウォースパイト「だから、事件はあるのよ。ただ私たちがまだ誰も知らないだけで」

グラーフ「私の知っているウォースパイトがそんな混乱した主張を頑なにするとは信じられない。知らないことより知っていることを私は信じたい。きっとウォースパイトあなたは疲れているのだ。よく休養したまえ」

〉〉17 3「ヤンデレ」ついでに〉〉18の大潮

大潮の敬愛すべき姉と誠実な良心と健全な精神を持った司令官との祝宴の夜のこと。

事の発端は本当に何気ない、それこそ大潮自身にさえ記憶されないことであった。

姉との相部屋だったが、大潮は一人、大きく開かれた窓から夜空を見上げていた。時間が止まったかのように風切り音や虫鳴りといった本来あるべきものがなく静寂に包まれていた。

星々がただ煌々と青く光っている夜だった。「あの頃に戻れたら」。己でもどうしてそんな「おセンチ」な言葉が出たのか分からなかった。

きっと星空が余りにも幻想的すぎて何かお願いをしておかないと損と思い、適当な言葉を吐き出しただけかもしれなかった。それなら、より良いお誂え向きともいえる「ふさわしい」願い事に気付いた。

「どうか姉と司令官に幸せな未来がありますように! さって! 明日も早いし、姉さんもからかわないといけないしで忙しい日です! 就寝!」。布団に潜り込む。青い星光のせいか少し眠りづらかったような気がした。

大潮が時間の巻き戻っている事実に気づくまでそう時間は要さなかった。

日付を表示する目覚まし時計のベルを止めて、ああ後でズレを直さないといけないと思いつつ着替えと朝食を済ました大潮は、執務室に挨拶に行く。

途中姉に出会ったので、「よ! 昨夜は司令官とお楽しみでしたね! いわゆる初夜です! やっぱり燃えた!?」、気分をアゲて茶化してみた。反応は思っていたより冷たいものだった。「ふぅ、あなたまで荒潮みたいな冗談を言い出したら、もはや私の手には負えないわ」

その姉の振る舞いに拍子抜けした。妙に冷静にだった。これが大人の階段を上った結果かとその場では納得したのだ。

しかし、挨拶しに行った先で、司令官までが姉との関係なんてそもそも無かったかのような態度に出たときは流石に訝しんだ。いくらなんでも倦怠期には早すぎるんじゃないかと。

それで周りを改めて見渡すと、カレンダーは過ぎ去ったはずの月日を指示していたし、出撃記録と攻略海域の見取り図も本来のより小さかった。

余り己を賢いとは思わない大潮でも、状況を確認すれば、流石に時間が巻き戻ったという一見突飛な事実に気付かざるを得なかった。

大潮はなぜ己が過去に戻ったのか、その理由も原理も何も理解しなかった。それでも、大潮には生来の楽観さと無邪気さがあったので、大して巻き戻りを悩むことなく、その生活に順応していった。

むしろ、未来人であった大潮はとりわけ積極的に姉と司令官との関係を支援した。ある程度どこに問題が発生し、その原因も知っていた大潮は彼らのキューピットとしては非常に有能であった。

また大潮自身、姉と司令官とが己の助力のおかげで絆を強めていっていると思うと、全能感にも似た幸福を感じるのだった。

時は流れ、大潮にとっては二度目の姉と司令官との関係が成就する時には、大潮自身がよく貢献したせいもあり、一度目の時より強く彼らを祝福した。彼らに幸福な未来があらんことを!

浮足立って自室に帰ってきた大潮は寂しさなんて全く感じずにベッドに潜り込んだ。その夜もやはり星々が青く輝き、時が止まってしまったかのように静謐で。

「さて! 今日もアゲアゲで行きましょうー!」普段より早い起床、何もかも肯定的な気分であった大潮は、目覚まし時計のベルを前もって止めようとして止まった。時計の日付表示が再び戻っていた。大潮は背中に冷や汗をかき、呼吸を乱した。まさか。

さしもの大潮であっても、三周目をこれから過ごすことを思うと辟易とした。それでも大潮が退屈せず過ごせたのはひとえに恋愛の魔力というものが大きかった。

大潮は更に踏み込んで姉と司令官の恋路をサポートし始めた。まじかで見るラブストーリーというのは非常に面白味のあるものだった。

例の夜が過ぎ、再び例の朝がこようとも、大潮はそのたびに彼らの関係をより深く探究していった。いつの間にか、大潮は非常に限定的な形であるとはいえ、恋愛のエキスパートと化していた。彼らがどう動くか手に取るように分かるようになっていたのだ。

しかし、どんな名作であっても飽きがくるように、大潮にとって彼らのロマンスは些か退屈なものとなっていた。そして、更には、名作から陳腐平凡、それどころか駄作茶番と大潮の中で評価は下り続けた。

鬱屈とした不満はついに爆発する。例の夜彼らの見せる笑みは、もはや大潮の祝福の対象ではなかった。もはやそれは幸福の浅薄さの象徴であり呪いの対象となっていたのだ。

気付いた時には連装砲を取り出し、姉に向かって撃っていた。姉の困惑した死に顔、その空虚な瞳と目が合うと大潮は逃げ出し、部屋の隅で慟哭した。その時のことを大潮はうまく記憶していない。

ただ「こんな悪意は許されない。こんな悪意は許されない。こんな悪意は許されない」と繰り返していたのは覚えていた。それは己の行為を責めるものより、世界の仕打ちに対しての怨嗟であった。

朝日によって目が覚めた大潮は時計を見るなり、連装砲を己の頭にあてがい撃ちぬいた。

目が覚めた大潮は、部屋を出ると埠頭で海をただ漫然と眺めていた。すると声をかけられた。「随分と酷い面構えだ。どうした」。いかにも正気じみた司令官だった。無視する大潮の隣に座り、司令官は大潮の手を握った。

驚く大潮と目が合った司令官が微笑む。その瞬間大潮に起きた変化は筆舌しがたい。幾度となく姉と結ばれるのを見てきていたのだ、もしかしたら無意識のうちに諦めてしまっていたのかもしれない。

手に入らないと。その前提こそが致命的な間違いだった。司令官はこんなにも近い。同じ世界に存在しているではないか!

大潮にとって幸せを手にすることはとんでもなく容易くなってしまっていた。いかなる障害であろうと容易に解決できた。いつしか当然ながら司令官と大潮は最も親密な関係を結んでいた。

今夜はその記念すべき節目であった。「見ろ。大潮。とても素晴らしい夜だ。世界が俺たちのことを祝福してくれているようだ」。その言葉は大潮にとって笑ってしまうほどに完全なる真理であった。そうこの世界は私と司令官を結びつけるためにあったのだ。

姉の反応には少し身構えたが、姉も心からの祝福をくれた。そうだ。存在しない未来の因縁なんて存在しないのだ。何もおかしくない。

彼女は本来私がいたはずの、あの一人の部屋にいるのだろうか。

その姿を想像すると少し心を痛めたが、これこそ世界の定めた正しい運命なのだから仕方がない。大潮は愛しい人に肩を抱かれ夜空を見上げた。この忌々しかった景色も今では愛おしい。

時間が止まってしまったかのように、風の切る音も虫の鳴く声もなく、静寂のみ。ただ夜空の星々が煌々と青く輝いて…………。そう「あの夜と何も変わらない」。大潮はゾッとした。

おわり

1日常
2恋愛
3マジキチ

↓3

ウォースパイト「信じられないわ。この私の話を信じないなんて。これだから頭の堅いドイツ艦は……」

アイオワ「ヘイ! 随分とご機嫌斜めなようで! 麗しきお姫様!」

ウォースパイト「……あなたはここで何をしているの?」

アイオワ「サボっている。……ちょ、ちょっと待って! 落ち着いてよ! アンタ本当に物騒なんだから! 平和を愛する私を少しは見習うべきだわ」

ウォースパイト「…………」

アイオワ「ワオ! ほんとびっくりするぐらいに不機嫌ね。何かあったの?」

満潮ちゃん!

>>30 「満潮ちゃん」 搦め手寄りのが続いたのでテーマはssの王道寄りに


執務室

満潮「さて、今日も司令官のいない内に執務室の掃除を終わらせないと! 特に仮眠用寝台の下!」

満潮「風紀を乱すようなものを隠し持っていたら許さないんだから!」ひょい

ベッド下

時雨「…………」ぱちくり

満潮「…………」ぱちくり

時雨「……やあ」

満潮「きゃああああああ!!!」

時雨「しっ! 静かに! 今何時だと思っているんだい!」

満潮「あんたこそ今何時だと思ってんのよ!」

時雨「おいおい! 僕に聞かないでくれよ! 一日中ここで過ごしてたんだ! 僕が知るわけもないだろう!?」

満潮「じゃあ、私も知らないわよ! 変態!!!」

時雨「どうして僕がそんな誹りを受けるのか心当たりがないんだけど!」

満潮「司令官のベッドの下にいたからよ! 変態!」

時雨「艦娘だってベッド下で一日過ごすことぐらいあるさ! それで変態扱いは納得できないな!」


満潮「じゃあ、どうしてそんな所にいたのよ!?」

時雨「やれやれ! 決まっているじゃないか!」

満潮「なによ!?」

時雨「Onanism.」

満潮「Onanism.」

時雨「…………」

満潮「…………」

時雨満潮「「いっえーい!!!☆」」

満潮「やっぱり変態じゃない!?」

時雨「それはどうかな!」

満潮「どういうことよ!」

時雨「艦娘なら誰だってこの状況下でオナニーするのは当たり前のことだから! 君だってそうなんだろう!?」

満潮「そんなわけないじゃない!」

時雨「じゃあどうして全裸なんだ!!!」

満潮「ろ、露出狂なのよ!! ばか!!!」

時雨「おいおい冗談はよしてくれよ! 露出狂のほうがよっぽど変態じゃないか!」

満潮「変態じゃないもん!」

時雨「では、もう一度チャンスをあげよう! これから君は露出狂として変態の道を進むのか、それともオナリストとして艦娘の道を選ぶのか、どっちなんだい!?」

満潮「ああ! もう分かったわよ! そうよ! 私もオナニーにしにきたの!! 悪い!?」

時雨「素晴らしい!!! それでこそ僕の信じた満潮だ!!!」

満潮「で、どうするの? 時雨もオナる?」

時雨「もちろん。では、一緒に続けようか! ……どうしたんだい、ベッドを指さして? ……はっ!? まさか……!」

満潮「ベッドの下より、あいつの使った毛布に包まるほうが捗ると思わない?」

時雨「でも、愛液でぐちょぐちょになった布団を見たら、提督がどんな反応をするか……」

満潮「知ったことじゃないわ! 私たちは誇りある艦娘として毅然に振る舞う。他人からどう思われようなんて関係ない!! 愛液で毛布が汚れる? 些末ね! むしろ上等!! 愛液で鎮守府が沈没して、あいつを溺れさしてやるわ!」

時雨「やれやれ今回は君の魂の高潔さに完敗だよ……でも、次はないからね!」

満潮「さあ! 行くわよ!」

彼女たちが布団に潜り込んだあと、嬌声が執務室に響き続けた。しかし、彼女たちの関係について邪推は不要だろう。
なぜなら、彼女たちには艦娘として不屈の矜持があるのだから!

おわり

↓3

朝潮型の生態日記
作:司令官

>>40 『朝潮型の生態日記 作:司令官』 このタイプはほのぼの路線?

 本日、朝潮ちゃんに対し兵役検査の一環としてWAIS‐R(ウェスクラー成人知能検査)が施行された。
 検査の結果(詳細は別紙にて記載)、言語性尺度と動作性尺度との両領域において好成績を示す。朝潮ちゃんは、認知能力の高い範囲内で機能している。
 また両領域間でのポイント差に統計的有意は認められず、発達の不均衡を示唆するものもなかった。WRAT学力検査でも申し分のない得点を示し、検査者の形式的質問に対しても規範的な回答を行った。
 それゆえ、一般的な心理教育的諸検査から得られた予備的知見に基づいて、これより詳細な深層的人格構造の集中的な分析は不要と判断し、検査者は鎮守府への着任を認可した。
 
 私はその場で着任したばかりの朝潮ちゃんを迎え入れた。朝潮ちゃんらしい振る舞いで朝潮ちゃんは私に挨拶した。不思議な光を目に宿していたようだった。
 ふと己の意識が己の感覚よりも朝潮ちゃんに惹きつけられているような不可解なズレを感じる。それは私自身が朝潮ちゃんに魅力を感じたからなどという心因性のものではなく、客観的に働く強制力ともでも表現できるものであった。

 検査者の一人が気分の悪さを訴え出た。彼は確か朝潮ちゃんのベンダー視覚運動ゲシュタルト・テストで刺激図形の提示を行っていた。彼の主張では朝潮ちゃんの目を見ていたらどんどん気分が悪くなってきたとのことだった。
 最低限それだけ述べると、彼は口を押えて退室した。彼の席上には非常に複雑で高度な刺激図形の模写が残されていた。不可能な程に短時間で朝潮ちゃんが完成させたものである。
 他の検査者に尋ねた所、あらゆる身体的検査を行ったが、朝潮ちゃんに未知の器質的要因はなかったとのことだ。検査者は再検査の提案を申し出たが、認可印をわざわざ取り消すのも面倒であったので、そのまま朝潮ちゃんと共に鎮守府へ向かうことにした。

バン!

霞「ほんと! 信じらんない! もう知らないんだから!」

霰「……どう、したの?」

霞「なんの出撃も遠征の命令も来ないから執務室に文句言いにいったら、秘書艦はいないし! クズはクズだし! どうなってるのよ!!!」

霰「……たぶん、みんな別の用で忙しいだけ」

霞「あれが!? あれで忙しいっていえるなら、誰だって寝てても忙しいわよ!」

霞「はああ、もう別のところにでも異動しようかしら」

霰「ええ……! だ、だめ」

霞「だめって言われても、あれ絶対何も考えてないわよ?」

霰「で、でも……」

霞「……それに私も嫌われているようだしね」

霰「そんなことない……!!」

霞「な、なによ……でもさっきだって何か会話が弾まなかったし、あいつ気のない返事ばっかだし、きっとあれは私にさっさとどっかに行ってほしかったのよ」

霰「司令官は、そんなことしない」

霞「ふん。随分と信頼しているのね……あいつのこと」

霰「霞の方も」

霞「冗談でしょ。でもこっちがそうでも、あっちはどうだか。腹の底ではもしかしたら本当に」

霰「これ、見て……」

霞「なによこれ。『朝潮型生態日記 作:司令官』?」

霰「……司令官は、私たちのことを……気にかけてくれてた」

霞「いや普通に気持ち悪いんだけど」パラパラ

霰「…………どう」

霞「……朝雲姉さんと山雲姉さんのがないわね。かなり以前の記録のようね。どこにあったのよ、これ」

霰「……満潮姉さんが持ち出したらしい。……それで、机に放置されてたのを荒潮姉さんが見つけて……霰にくれたの」

霞「荒潮姉さんはともかく満潮姉さんはほんと最近どうしたのよ……普通こんな私的書類なんて持ち出さないでしょ」

霰「……じゃあ、戻してくる」

霞「待って」

霰「?」

霞「少しだけ読むわ」

霰「……え? でも」

霞「いいから」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月30日 (土) 02:17:53   ID: BzLhR1nn

朝潮を育ててると娘の成長を見てる気になるw

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