【ミリマス】765学園物語B √PG (30)

文化祭での対決から約1年

Pさんは大学部に行き、私は高等部へと進級した

学園の規則により、大学部と小中高の行き来は学園行事の時以外禁止されているので私は学園では中々Pさんに会えなくなっていた

だけど寂しくは無い、だって家では会えるのだから

だから私は今日も待つ

あの人の温もりを感じるために

そして

誕生日おめでとうって、言って貰うために

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1505315562

9月14日

志保「静香、掃除は終わったの」

地下に行っていた志保は、戻ってくるなりそう言った

静香「もちろん」

志保「じゃあ確認しましょうか」

そう言って志保は部屋を確認する

志保「…」

窓の縁に指を滑らせ

志保「埃は…ないわね」

テレビの画面を確認し

志保「指紋も…ないわね」

静香「ちゃんと掃除したもの」

志保「…」

志保が顎に手を当て目を瞑る

そして目を開いたかと思うと突然自分の髪を1本抜いて、床に落とした

志保「髪の毛が落ちてるから失格ね」

静香「今明らかに志保が自分で抜いて落としたわよね!?」

志保「はあ?何寝惚けてるのよ、冗談はその平たい胸とうどんだけにしたら?」

静香「お生憎様、あの人は私の胸が好きだって言ってくれたから」

志保「…ま、良いわ、一応合格ってことにしてあげる」

静香「それはどうも」

志保「それより、私は今日は一日地下に居るから入ってこないように」

静香「え?でも私にも屋台の準備が」

志保「入ってきたら叩きつけるから」

静香「何をよ…」

あの一件以来多少態度は緩和したものの、やっぱり志保からの当たりは強い

これからも家族としての付き合いは増えるだろうし、もう少し仲良くしたいところだけど…

そんなことを考えていると

P「ただいま」

あの人が帰ってきた

静香「お帰りなさい」

P「ただいま、静香」

静香「今日は遅かったですね?」

P「ちょっと最上さんに捕まってな…」

静香「またあの人は…」

最近の父はPさんを気に入ったのかすぐに家に連れ込んでいる

何をやっているのか知らないけど、私のPさんを独占するのはやめてほしい

志保「お帰りなさい、兄さん」

地下に居たはずの志保がいつの間にかPさんの隣に立っていた

…私は地下室の階段前に立っているから志保が通ったら気付く筈なんだけど、一体どうやったのだろう

P「ただいま志保、準備は?」

志保「順調です、いつでも出られます」

静香「何の話?」

P「内緒」

志保「最重要機密よ」

静香「むう…」

Pさんと志保、一体何を秘密にしているのだろう

…二人だけの秘密なんてずるい

P「静香」

私の嫉妬を察したのか、Pさんが私の頭を撫でる

…これだけで嫉妬が薄れてしまうなんて、この人は本当にずるい

志保「…すぐに行きますか?」

P「そうだな、早めに行こう」

志保「わかりました」

志保が再び地下に行く

P「静香」

静香「はい」

P「少し、散歩しようか」

P「夜は冷えるようになってきたけど、寒くないか?」

静香「はい、大丈夫です」

繋いだ手から伝わる温もりのおかげで、全然寒くなんか無い

静香「どこに向かってるんですか?」

P「それは着いてからのお楽しみ」

Pさんがイタズラを企む子供のように笑う

この1年で更に大人っぽく、格好良くなったPさんだが、たまに見せる子供のような表情も私は大好きだ

静香「では、楽しみにしていますね」

P「ああ、楽しみにしててくれ」

Pさんの事だ、きっと私が喜ぶような何かを用意しているんだろう

この人はそういう人だから

その事が分かるから、私は

静香「…ふふ♪」

Pさんの腕に身体を寄せた

見慣れた景色を進んでいると、Pさんが足を止めた

P「静香、そろそろ目的地に到着するんだけど」

静香「はい」

P「ちょっとの間目隠しをしていて欲しいんだ」

静香「目隠し…ですか?」

P「ああ」

目隠し…何かサプライズやドッキリでも仕掛けられているのだろうか

それなら乗るしかない

静香「わかりました」

P「静香の手を引いて歩くから、怖かったら言ってくれよ」

静香「はい」

目隠しをし、Pさんに手を引かれて歩く

少し歩くと、沢山の人の気配がした

P「…良し、もう目隠しを外して良いぞ」

静香「はい」

目隠しを外すと…

未来「静香ちゃ~ん!誕生日おめでとう!」

静香「きゃっ!み、未来!?」

未来「うん!やっぱり静香ちゃんは硬いね!…痛い痛い痛い!そっち曲がらないからぁ!」

全く学習しない未来の肘を反対方向に曲げる

伊織「はいはい、それ以上やると折れるわよ」

静香「伊織先輩」

伊織「静香、誕生日おめでとう」

静香「あ、ありがとうございます」

周りを良く見るとみんな私がお世話になった人だったり、友達だったり…

みんな何かしら顔を合わせたことのある人達だ

静香「あの、これは…?」

私たちの屋台も展開した状態で設置されていた

伊織「もうすぐ首謀者から説明があると思うわよ」

静香「首謀者?」

P「静香」

静香「Pさん、これは…?」

P「もちろん、静香の誕生日パーティーだ」

静香「誕生日パーティー…誕生日パーティー!?」

こんなに沢山の人が来る誕生日パーティーなんて初めてだ

P「本当はもうちょっと静かにやるつもりだったんだけどな…静香の誕生日パーティー」

千早「ぶふっ!し、静香の誕生日パーティーを…静かに…ふふ、ふふふ…!」

静香「千早さん…」

P「ただやっぱり沢山の人に祝って欲しかったし、俺達がお世話になった人達にも声をかけたんだ」

静香「そうだったんですね…」

P「まあ細かいことは置いといて、今日は楽しんでくれ」

静香「はい」

P「っと、最上さんが呼んでるみたいだからちょっと行ってくるよ」

そう言ってPさんが父のところへ行ってしまった

静香「…むう」

せっかくだから一緒にいて欲しいのに

…これは今夜中一緒に居て貰わないと清算出来なさそうだ

どうやってPさんに甘えようか考えていると

黒井「静香ちゃん」

黒井先生に声をかけられた

静香「黒井先生」

黒井「誕生日おめでとう、セレブな私からのプレゼントだ、受け取ると良い」

静香「ありがとうございます、これは…?」

黒井「特殊な金属で作られた麺切り包丁だ」

黒井「耐Bコーティングが施されているから錆びないし刃こぼれもしないし何でも切れるという業物だ」

黒井「その気になればビームだって切れるぞ」

静香「ビームを切るような機会は流石に無いかと…でも、ありがとうございます、大切にしますね」

黒井「ウィ、それで更なる高みへと昇り美味いうどんを私に提供することを期待している」

静香「はい、楽しみにしていてください」

黒井「それでは私は失礼する、アデュ…こら、離せ酔っ払い!」

格好良く去ろうとした黒井先生は既に酔っていた高木先生や善澤さんに捕まり引き摺られていった

伊織「私からもプレゼントをあげるわ」

静香「ありがとうございます、伊織先輩」

伊織「可憐に調合してもらったスペシャルなお香よ、夜に活用しなさい」

静香「…ちなみに、効能は?」

伊織「性欲増強」

静香「…頂戴します」

伊織「にひひ♪あんたも見かけによらずムッツリねぇ」

静香「まあ…はい」

伊織「ま、仲が良いのは良いことだわ、アイツとこれからも仲良くね」

静香「はい、もちろんです」

伊織「それじゃ、パーティーを楽しみなさい」

そう言って伊織先輩は歩いて行った

その後も沢山の人からプレゼントを貰った

このみさん、桃子、未来、翼、星梨花、海美先輩、恵美先輩…本当に、沢山の人に祝って貰えた

ある程度落ち着いたころ、私はずっと気になっていた私達の屋台の様子を見に行った

すると中には志保がいて

志保「…来たわね、少しそこで待ってなさい」

そう言うとうどんを作り始めた

少しして

志保「お待ちどおさま」

志保がうどんを…かけうどんを出してきた

静香「いただきます」

私はそのうどんに口を付ける

静香「美味しい!」

志保「当然よ、兄さんが打ったうどんなんだから世界一美味しいに決まってる」

静香「Pさんが…?」

去年、センスが無いからと打つのはやめたはずなのに…

志保「お前に美味しいうどんを打ってあげたいからって、空いた時間にずっと練習してたのよ」

志保「そしてとうとう完成したうどんは一玉分…お前が今食べている分だけ」

静香「私の、ために…」

あの人が私の、私のためだけに作ってくれたうどんを、世界で私だけが食べられた

その嬉しさに泣きそうになる

志保「何泣いてるのよ、食べないなら私が残り全部食べるわよ」

静香「…だめ、これは私だけのうどんなんだから」

志保「…わかってるわよ」

静香「…ごちそうさま」

志保「…」

志保が無言でどんぶりを片付ける

静香「志保、ありがとう、うどんを作ってくれて」

志保「別に…兄さんに頼まれたから作っただけ」

静香「ふふ、そうね」

静香「ふふ、そうね」

志保「…静香」

静香「なに?」

志保「…誕生日、おめでとう」

聞こえてきた言葉に少し驚いたけれど

静香「ありがとう、志保」

私は笑顔でそう返した

静香「Pさん」

P「おお、静香、丁度良かった」

Pさんと父が一緒に歩いてくる

P「最上さんと一緒に作ったんだ、受け取ってくれるか?」

そう言ってPさんが持ってきたのは

静香「…これは?」

P「誕生日うどんだ」

静香「誕生日…うどん…!」

そんなものがこの世に存在していたなんて…!

P「ここ最近ずっと最上さんにうどん作りを教わっててさ、ようやく完成したんだ」

P「最上さんとの共同作だ」

Pさんが嬉しそうに語る

父もPさんは筋が良いと褒めちぎっていた

P「静香、誕生日おめでとう!」

静香「ありがとうございます、Pさん!」

思わず抱き着きそうになるが、抱き着くと誕生日うどんが台無しになってしまうので我慢する

その分今日の夜は精一杯甘えよう

誕生日うどんを食べ、みんなでパーティーを楽しむ

酔いに酔った先生方と父が服を脱ぎ始め、警察の人が来て捕縛していき、パーティーはお開きとなった

そして今、私達は家に戻りPさんの部屋にいた

P「…なあ静香」

静香「はい」

P「暑くない?」

静香「全然暑くないです」

P「そ、そうか」

今日一日甘えられなかった分を埋めるように、私はPさんに引っ付く

ちなみに伊織先輩のお香は5分ほど前に焚いており、身体が火照ってきているので暑くないというのは嘘だ

P「…なあ、静香…俺…」

静香「Pさん」

Pさんが何かを言おうとするのを私は口で塞ぐ

静香「…今日の残り時間、精一杯楽しみましょう」

そう言って、私達はベッドに倒れ込んだ

日付も変わった真夜中、私は少しだけ体を起こす

隣ではPさんがぐっすり眠っており、その寝顔をついつい眺めてしまう

本当に、可愛らしい寝顔だ

…昨日は最高の誕生日だった

Pさんが私のために用意してくれた、最高の誕生日

この人に愛されていると、そう感じられる

だから私も、この人に持てる限りの愛を尽くしたい

静香「…Pさん、愛してますよ」

そう呟き、私はPさんに寄り添って目を閉じる

これからもこの人と一緒に最高の日々を歩んでいきたい

私達なら、絶対に出来るはずだ

何故なら

私達には時間があるのだから

尾張名古屋の味噌煮込み
静香、誕生日おめでとう

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom