エルフ「ダンジョン荒らして金稼ぎ!」戦士「不安しかないが……」 (699)



エルフ「絶望的なまでにお金がない」


戦士「は?」


エルフ「財布が薄いってレベルじゃないよ。無一文だよ無一文、たはは」


戦士「おい待て、待て待て」


エルフ「いやあ、今日のご飯どうしようかな? あ、お人好しの戦士さんじゃないですか! 今日これから戦士さんの奢りで一杯どうです!?」


戦士「ちょっと待てちょっと待て。最初に言っとくぞ? ついこの前、一緒にそこそこまとまった額を受け取ったよな?」


エルフ「お金ってね、一瞬にして消えちゃうんですよ……」フゥ…


戦士「……お前、俺への借金を返すつもりはあるのか?」


エルフ「あるある! あと20Gぐらい? ちょっと待っててよ」


戦士「1000Gだ。1Gも返して貰ってないぞ」


エルフ「あはは」


戦士「いや笑いごとじゃねえから。1000Gといったら贅沢しなきゃ三ヶ月は暮らせる額だぞ。こんなことならこの前のうちに取り立てとくべきだった……」


エルフ「戦士は金にうるさいね」


戦士「1000Gなんて大金を貸したら普通はそうだろ……」


エルフ「そんな大金をほとんど素性が知れない他種族相手に貸すんだから、とことんお人好しだよねぇ」


戦士「こんな奴だと知ってたらもう少しは渋ったよ!」


エルフ「まあ、エルフ族にはあげるつもりでお金を貸しなさいって言うし?」


戦士「少なくともお前の言うセリフではないな、それは……」


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エルフ「そんなにカリカリしないでよ……そんなことよりご飯おごってよ。一昨日から何も食べてないんだよね」


戦士「お前ぇ……」


<<ぐうう……


エルフ「食べ物の話をしたらお腹なっちゃったよ、あはは」


戦士「……はあ。高い物はダメだかんな」


エルフ「いやっほう! 戦士さん、イケメン! 好き好き大好き愛してる!」


戦士「調子のいいやつ……」


エルフ「じゃあ中央区にあるグランドホテルのレストランがいい!」


戦士「一生に一度くらいは上流階級の飯を食ってみたいもんだな。さてど貧困の俺たちは大衆食堂にいくぞ」


エルフ「今日もデザート頼んでいい?」


戦士「遠慮って言葉を知ってるか?」


・・・
【大衆食堂】


エルフ「この濃い味付けがいいんだよね。The 不健康! って感じがたまらないよ」


戦士「……そんなことよりどうして無一文なんだ? この前、一緒にサンドワーム倒してそれなりに報奨金を貰っただろ」


エルフ「ギャンブルって怖いよねー。一瞬でお金が……むぎゅっ!?」


戦士「お前……返すもの返さずに博打してたのかよ……?」ぐぐぐ……


エルフ「やめへー! ちゅぶれりゅぅ……!」むぎゅぅ


戦士「賭け事をやる前に返すものは返せ」


エルフ「ほら、ここらで借金をチャラにしようと思い立って賭けトランプで一山当てようと思ったらさぁ……最初は勝ってたのに最後には身ぐるみ剥がされかけたよ、あはは」


戦士「お前、賭けトランプって、まさか酒場の地下にある賭場に行ったのか……?」


エルフ「よく知ってるね。おっぱいの大きいお姉さんと楽しんできたよ……いや、結果的に痛い目見たけど」


戦士「バカ……あそこのディーラーはやべえって聞くぞ。誰も見抜けない天才的なイカサマ師だってな」


エルフ「そうなの? もっと早く教えてよ」


戦士「俺は賭け事とか基本しないからな。お前がギャンブルする奴だとも思ってなかったけどさ」


エルフ「今回が初めてだよ! 次は勝つ!」


戦士「せめて返すものを堅実に返してからにしてくれ……」



エルフ「君ってお酒もタバコもやらないけど、冒険者としてどうなの?」


戦士「美味しく感じないんだから別にいいだろ。贅沢する余裕もないしな」


エルフ「見ず知らずのエルフに1000Gも貸しておいてよく言うよ」


戦士「あの時の貯金のほぼ全額だ」


エルフ「……マジでぇ?」


戦士「俺みたいなしがない冒険者にそんなに蓄えがあるわけないだろ」


エルフ「やばいね、お人好しっていうかバカじゃん?」


戦士「よく言われる」


エルフ「なるほどねぇ……ヘルプとしてよくパーティに入れられるわりに定常的な仲間が全然出来ないわけだ」


戦士「うん?」


エルフ「お人好し過ぎて連んでたくないんだよ。見ず知らずの第三者のために死にかねない奴に生命預けたくないでしょ。臨時ならとっても有り難いけどね」


戦士「…………」


エルフ「ははあ、その反応、さては似たようなことをかつて言われたな?」


戦士「ご明察。一年近く一緒にいた奴に同じこと言われて、そのままサヨナラだ」


エルフ「あはは、よく一年も君と組めたもんだよ。尊敬する」


戦士「……俺のことそんなに嫌いか」


エルフ「いやいや、扱いやすいバカは好きだよ」にこっ


戦士「飯奢ってもらっといてよく言うぜ……」


エルフ「どうせ君は怒んないでしょ」


戦士「怒らなくてもしょげるわ……」


エルフ「ごめんごめん」


undefined




エルフ「しかしどうやってお金を稼ごうかねぇ……養ってくんない?」


戦士「無理だな」すぱっ


エルフ「うは、即答……稼ぎの少ない根無し草な冒険者さまにそんな経済力ないよねぇ」


戦士「お前は呼吸するように俺を蔑むな」


エルフ「仕方ないからダンジョンでも潜っとくかいな。ちょい付き合って」


戦士「また『魔物の洞穴』だよな」


エルフ「うんにゃ、あそこは敵もショボいけどアイテムもショボいじゃん。簡単に手に入るアイテムを10個売っても1Gになるかならないかって感じ」


戦士「仕方ないだろ。罠がなくて魔物が弱いのはあそこだけらしいからな」


エルフ「それなんだよー! おかげであそこで取れるアイテムは供給過多で買値はゼロに等しいか、売れる数量が規制されてるか、売買そのものが規制されてるかだもん」


戦士「なんで規制があるんだろうな」


エルフ「冒険者なのに知らない知らないの? ムカついたから調べたんだよ。例えば『冒険者の服』。『魔物の洞穴』でめっちゃよく取れるじゃん?」


戦士「この前も5着も手に入れたな……」


エルフ「そんな感じで『冒険者の服』がたくさん取れ過ぎるせいでほぼ無料で流通される状態。そのせいで大衆向けの衣料産業はボロボロだったらしいよ」


戦士「安くて質のいいものあったらみんなそれ買うわな。あれ、かなり質がいいかはな」


エルフ「それで既存産業を保護するために国が『魔物の洞穴』で取れるアイテムの流通規制や数量規制に入ったわけよ」


戦士「ああ、なるほど……」


エルフ「規制が入るまで街中で『冒険者の服』を着てる人だらけだよ。こうしてダンジョンのせいで職にあぶれた労働者がダンジョン冒険者となるんだね」


戦士「ダンジョン冒険者が増え続けるわけだ」


エルフ「死人もね」



戦士「しかし、なんであんなにたくさんのアイテムが出て来るんだろうな」


エルフ「魔物についても言えるよね。全く減らないし、むしろますます増えているって話だよ」


戦士「らしいな。どうなってるんだか」


エルフ「ダンジョン冒険者なのに何も知らないんだねぇ。初心者の私以下じゃん?」


戦士「本職はダンジョン冒険者じゃないからな……あれに本職も何もないか」


エルフ「何? 無職なの?」


戦士「敢えて言うなら傭兵だ。一緒に暴れてるサンドワーム倒しただろ」


エルフ「無職だ」


戦士「無職いうな……」



エルフ「とにかく明日は『不帰の虚』に行こう」


戦士「待て。待て待て。どうして最難関に挑む」


エルフ「だって『魔物の洞穴』の次に近いじゃん」


戦士「いや近いけど死んだら元も子もないだろ」


エルフ「行ける行ける。私たちなら行けるよ」


戦士「『不帰の虚』の名は伊達じゃないからな? お前、8つのダンジョンの中で唯一つ生還者が誰もいないダンジョンだぞ? ダンジョン冒険者じゃなくてもあそこはヤバいって認識だぞ」


エルフ「んもう、じゃあどうしろと?」


戦士「『魔物の洞穴』じゃなく、俺たち二人で大丈夫なのは……『飛竜の塔』はどうだろう? 飛竜にさえ気を付ければ魔物自体は弱くて、アイテムの質は洞穴よりもいい……らしい。実際に行ったことはない」


エルフ「オッケー。じゃあ、君の提案だし君がリーダーね。ヘルプで入ってあげるから旅費とかよろしく。仕方ないなぁ……」にやにや


戦士「はあ!? ……あ、お前最初からそのつもりで……!」


エルフ「ふっふっーん、デザートもごちそうさま♪」


戦士「食えないやつ……」


・・・
【飛竜の塔】



戦士「やっと着いたか。そこそこ遠いよな」


エルフ「そうだねぇ……わりと魔物も漏れ出てたし帰りも面倒だね」もぐもぐ…


戦士「何を食ってんだ?」


エルフ「『桃のかんづめ』。早速アイテムが落ちてた」


戦士「ここのアイテムか……というか躊躇いなく拾い食いするなよ」


エルフ「お腹すいちゃってさ。最近はやりのRPGゲームでいえばHP回復だよ」


戦士「……戦う前からHP減ってる前提かよ」


エルフ「お腹減ったら体力も減るよ。よし、ずっと帰りたい気分だったけどやる気出てきた!」


戦士「帰りたかったのかよ!」



エルフ「さって、このゴツい塔を登って行きますか」


戦士「……塔の内部には飛竜は入ってこないって噂だし、中の方がここより安全だろ」


エルフ「そうだねー。よっしゃー! お金を稼ぐぞー!」


戦士「おー」



・・・
飛竜の塔1F



エルフ「しかし、変わった建物だよねぇ。今の建築技術じゃないよね、これ」


戦士「ダンジョンたちは20年前に突然現れたらしいからな。この辺りは昔は何もない丘だったみたいだが、今じゃ魔物と冒険者の巣窟だ」


エルフ「お陰様でこうして稼がせてもらえるわけだけどねぇ。まだろくに稼いでないけど」


戦士「一緒に現れた魔物のお陰で俺みたいな戦うことしか能のないやつでもそこそこ食っていけるからな」



エルフは『桃のかんづめ』を手に入れた!


エルフ「かんづめの宝庫だねぇ」もぐもぐ…


戦士「また自家消費すんのかよ。……まあ、かんづめも買値は100個で1Gとからしいしいいけどな」


エルフ「ダンジョンの出現で真に肥えるはダンジョン商人だよねぇ」もぐもぐ


戦士「ダンジョン商人で成功してる奴は大抵他の商売やっても成功しそうだがな」


エルフ「まあ、そうかも」



戦士は『桃のかんづめ』を手に入れた!


戦士「本当によく『桃のかんづめ』が手に入るな……」



戦士「お? なんだこれ?」


戦士は『ステータス解析マシン』を手に入れた!


戦士「なんだこれ?」


エルフ「なになに、金目のもの?」


戦士「さあ? 初めて見るもんだな」カチッ


解析マシン<<ピピッ


戦士「うおっ?」


解析マシン<<ピロンッ



・戦士
HP:5000
こうげき:400
まほう:0
ぼうぎょ:900
すばやさ:300



戦士「……?」


エルフ「戦闘能力を表す数字とかかな? ぷぷっ、まほう0じゃん、本当に魔法の才能が欠片もないんだね」


戦士「……別に魔法使えなくてもいいからな」


エルフ「拗ねてるぅ」


戦士「……お前も測れよ」


エルフ「や、やめとく」


戦士「バカにしたんだから測れよ」


エルフ「いやですぅー」すすす…


戦士「お、これで距離が離れてるやつも測れるっぽい」カチッ


エルフ「げっ」


解析マシン<<カシャッ……ピピッ


エルフ「ま、まあ私ならいい結果に決まってるよ!」


戦士「それはどうかな……これでお前がめちゃくちゃ高かったら俺が辛いけどな」


解析マシン<<ピロンッ


エルフ「……」どきどき…



・エルフ
HP:1500
こうげき:600
まほう:600
ぼうぎょ:100
すばやさ:600



エルフ「……私の方が優秀!」


戦士「むむ……」


エルフ「やーい、前衛職のくせに攻撃力ひくーい!」


戦士「ぐ……いや待て、お前は貧弱すぎだろ。HPとぼうぎょを見ろよ」


エルフ「当たらなければどうということはないんですぅー、攻撃される前に倒せばいいんですぅー」


戦士「だが不意打ちを食らったりしたらだな……まあ、いい」


エルフ「ま、これからはエルフさまと呼んでもいいよ」


戦士「そもそも基準値が分からんから何とも言えないだろ。平均が1000とかだったらお互いただの小物だろ」


エルフ「他に冒険者がいればコッソリ測れるんだけどね。何にせよ魔法が0は底辺オブ底辺だけどね! あはは」


戦士「放っとけ……」


・・・
飛竜の塔2F


エルフ「おっかしいな……」


戦士「ん?」


エルフ「あまりにも人が居なすぎじゃない? 『魔物の洞穴』よりは魔物が強いけど、そこまでじゃないし……これは流石に変なんじゃ?」


戦士「……確かに不思議だな。結構賑わってるダンジョンって聞くが」


エルフ「……いやな予感がするし一旦引き返すのもありかもね」


戦士「そうだな。飛竜は塔の内部には入ってこないって話が変わってたりしたら一大事だ」




<<グルル……



エルフ「げっ……まさか飛竜……?」



タワーキマイラ「グォォォッッ!」



タワーキマイラが出現!



戦士「……飛竜ではないみたいだが、こいつも大物だぞ。おかしいな、こんな奴がいたら話題になるだろ」


エルフ「……なるほど。コイツが最近現れたから、みんな近寄らないんじゃないかな……情報収集って大事だね」


戦士「本当にな……後悔は先に立たないんだよなぁ」


エルフ「君らしくないなぁ。するのは後悔じゃなくて反省だよ」スッ


戦士「そうだな。コイツを倒してから反省するか」チャキッ




エルフ「飛ばしていこー!」タンッ


エルフは杖の先に魔力を溜める!


戦士「おい、一人で突っ込むな!」ダダッ


エルフ「醜い怪物さん、炎をお一つ食べなさいな!」ググッ


エルフの『爆杖殴打』!


タワーキマイラはよろめいている!


エルフ「それ、もういっぱ……っ!?」



タワーキマイラの反撃!



戦士はエルフを庇った!



戦士「紙装甲のくせに無茶すんな!」


エルフ「ごめんごめん……もう一発!」



エルフの『爆杖殴打』!



戦士の攻撃!



タワーキマイラ「グルルルゥゥ……!?」




タワーキマイラ「グルォォォ……ッッ!」


タワーキマイラは『氷の息』を吐いた!


戦士はエルフを庇った!



エルフ「電撃の方がお好きかな?」バチチッ……ググッ


エルフの『雷撃打』!



バチィィッッ!!


タワーキマイラ「……ッッ!!?」


タワーキマイラは痺れて動けない!



戦士「でやぁっ!」



戦士の一撃!


クリティカル!



タワーキマイラ<<ブシャッッ…!



タワーキマイラ「グル……」ズサッ…



タワーキマイラを倒した!





戦士「…………ふう。何とかなったな」


エルフ「いいとこ取り……」


戦士「そう言うなよ。別に誰かが見てるわけでもあるまいし」


エルフ「なんだよー、クリティカルとかふざけんなよー、絶対に私の方がダメージ与えてたのにー」


戦士「まあまあ」


エルフ「可愛い武闘派魔法使いエルフちゃんだけでも勝てたのにー」


戦士「ほとんどお前の手柄だよ。機嫌直せって」


エルフ「まあ、分かってるんならいいけどさ。さてと、こいつの部位で売れそうなところはないかな」


戦士「切り替え早いな……角でも貰っておくか。賞金首になってたりしたら報奨金が出るだろ」


エルフ「私たちが何も知らないってことは出現したばっかりだろうし、何もかかってないんじゃない? 」


戦士「……確かにな」


エルフ「放っておけばいずれ付いたかもね。うーん失敗したね」


戦士「まあ、怪我人がこれ以上出る前に倒せたなら良いことだろ」


エルフ「お人好しぃ……」





戦士「噂で聞いてる『飛竜の塔』とは様子が違うし、一旦近くの村まで戻るか」


エルフ「そだね……でもその前にこのフロアだけでも見てこうよ」


戦士「……さっきみたいのが他にいないと良いが」




・・・
飛竜の塔2F探索中


戦士「他の魔物はそこまでの強さでもないな。俺一人でも手こずらない」


エルフ「見てよ!」


戦士「お、レアなアイテムでも見つけたか!」


エルフ「激レア! 『みかんのかんづめ』だよ! 」


戦士「かんづめ……」



二人で美味しくいただきました





エルフ「さてと、一旦、戻りますか」


戦士「ああ」




to be continued…




○戦士メモ


・エルフ:自称可愛い武闘派魔法使いだそうだ。行き倒れてたところを少し面倒を見てやったらやけにちょっかいをかけてくるようになった。戦闘ではかなり頼りになる。

・ダンジョン:20年前に突然現れた8つの謎の存在。アイテムやら魔物が無限かと思われるくらい取れる。

・魔物の洞穴:8つの中で一番難易度が低いとされるダンジョン。ただしあまりに人が入ってアイテムを取ったためにこのダンジョンのアイテムには金銭的価値がつかない。最奥に鎮座すると言われるボスは未討伐のまま20年が過ぎたとか……まだ生きてんのか?

・冒険者の服:頑丈で肌触りのいい衣服。何故か必ず上下セットであちこち見つかる。ダンジョンはどうなってるんだ。

・不帰の虚:かえらずのうつろ。8つのダンジョンの中で最も難易度が高いとされるが、生還者がいないため難易度は未知数の大穴。『悪い子は不帰の虚に投げ込まれる』が子どもたちの躾の常套句だ。

・飛竜の塔:8つのダンジョンの1つ。拠点の街から少し遠い。巨大な飛竜が山頂に住み着いているという。内部は比較的安全とされているが……?

・ステータス解析マシン:ボタン押したら戦闘に関係ありそうな数字が出てきた。まほう0だと……別に傷付いてない。本当だ。

・タワーキマイラ:そこそこ強敵だったんじゃないか? 俺だけだったらかなりの接戦だったろう。エルフの破壊力はかなりのものだ。




○エルフメモ


・戦士:お人好しの苦労人。お人好しはもはやバカの粋だね。せいぜい私の盾と財布にしてやろう! ……仕方ないからたまには回復もしてあげる。

・グランドホテルのレストラン:ここのフルコースはとても美味しいらしい。いつか戦士の奢りで食べたい。

・桃のかんづめ:美味しい。シロップは戦士に飲ませる。

・みかんのかんづめ:みかんは好きだよ。シロップは戦士に(ry



【飛竜の村・冒険者の酒場】



マスター「最近は塔に強い魔物が出現したせいでだいぶダンジョン冒険者が減っちまった。うちの景気もだいぶ陰ったね」


エルフ「随分と腑抜けた“冒険者”たちばっかりだね」


マスター「違いねえな」


<<ああん? 嬢ちゃんよぉ、粋がるのは塔二階に巣食ってるバケモンを倒してからにしろよ?

<<違いねえ!


エルフ「典型的な小物たちだ……もはや名前すら必要のないレベルのモブたちだ……」


<<ケンカ売ってんのか!


エルフ「ふっふーん、これが何か分かるかい?」きゅぴーん


<<はあ? なんだその折れたツノは?

<<そんなデカいツノを持つ魔物は塔にいねえぞ


エルフ「これはその噂になってる魔物のツノだよ!」どやっ


ざわっ……



<<ど、どうせハッタリなんだろ! 二人だけであの魔物も倒せるわけがない! それは……ニセモノだ!

<<だ、だよな……結構な冒険者があいつに食い殺されたってのによくそんな冗談が言えるな!


エルフ「む……これで信じられないなら塔に行って死体を見てくればいいじゃん」


戦士「……もしかして俺たちが倒した魔物は別のやつだったのか? 2階にはいなかったが、その時は3階にいたのかもな」


エルフ「ええ……んー、確かにあの魔物はそこまででもなかったかも」


<<はは、そうだろうよ! お前たちにタワーキマイラは倒せねえ!


エルフ・戦士「やっぱ倒したよ」



エルフ「引き返して損したぁ……強いのあいつだけかぁ」


戦士「いや……上にまだいるかもしれないな。何せタワーキマイラが現れてから3階に行った奴がいないからな」


エルフ「急に現れたのはタワーキマイラだけじゃないってことか。あり得るね」


戦士「ダンジョン探索はもうやめとくか?」


エルフ「んにゃ。ここの腑抜けた冒険者たちに任せてちゃラチがあかない。エセでもまだ私たちの方がよっぽど“冒険者”だし、飛竜の手前まで行ってみようか」


戦士「お前、かなり肝が据わってるよな」


エルフ「虎穴なんちゃらだよ。入るのは竜の寝ぐらだけどね」


戦士「……まあ、行けるところまで行ってみるか」


マスター「……お前ら気に入ったぜ! 好きなの頼みな! 奢ってやる!」


エルフ「ラッキー♪ りんごジュースで♪」


戦士「お茶くれ」


マスター「酒飲まないのかよ……」



「…………」じー


戦士「ん?」


「…………!」さっ


戦士「?」



エルフ「おうおう、ガンつけてなんか用かワレ?」


戦士「なぜケンカを売る」


「い、いや、そんなつもりは…………あの、タワーキマイラ倒したって本当ですよね?」


エルフ「お、分かっちゃう? いやぁ、見る目あるよ、君」


戦士「気分の変わりが恐ろしく早いな」



「僕、商人なんです。あ、ま、まだ見習いなんですけど……」スススッ


エルフ「君みたいなちびっ子が商人ねぇ」


商人「こ、これでももうお酒だって飲める年ですよっ」


エルフ「(まさかの年上……)」


戦士「お前も大概ちびだろ」


エルフ「ああ、わっかんないかー。戦士には私のこの大人の魅力がわっかんないかー」


戦士「よく分からないな。ただの子どもにしか見えない」


エルフ「は?」


商人「あ、あの、隣いいですか?」


戦士「ああ」


エルフ「……」



・・・

エルフ「親父さんを説得するために飛竜草をとりたい、ねぇ……」


商人「は、はい。飛竜草を取って来れれば父も僕が商人として独立するのを許してくれると思うんです」


エルフ「飛竜草ってレアなの?」


商人「そ、そうですね。塔の上層でしか取れないんです。心臓病に効く薬の原料になるので価値は高いです」


エルフ「へぇー、借金を返す額を稼ぐのに適してる感じだ?」


商人「しゃ、借金ですか……」


戦士「はやく1000G返してくれ、大人の魅力あふれる魔法使いさんよ」


エルフ「うっさいわ」


商人「あ、そういう……ええと、代金はもちろんお支払い致します。ええと、飛竜草1束の買値は200Gですから……」


エルフ「1束で200G!?」


商人「は、はい」


エルフ「たかが草が200Gとかやばいよ……ぼろい商売見つけたよ」


戦士「200G......結構な大型をそこそこの人数で討伐した際の1人頭か」



商人「あの、その分危険度も高いですから……」


エルフ「別に飛竜と戦わないならあそこの魔物は大丈夫でしょ。もはや私たちにとってあのダンジョンは飛竜の塔じゃない……金の成る塔だよ」


戦士「そんなに甘くないんじゃないか? まあ、いい。過度に期待せずに待っていてくれ」


商人「あ、そ、その……!」


戦士「うん?」


商人「僕もダンジョンについていきます……っ! そうじゃないときっと父は認めてくれません!」


戦士「自分で危ないと言ったばかりだろうに」


商人「そ、そうですけど……っ」


エルフ「強さ的に無理でしょー」カチッ



ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……


商人「……なんですかそれ?」


戦士「飛竜の塔で拾ったアイテムだ」


解析マシン<<ピロンッ



・商人
HP:3000
こうげき:20
まほう:10
ぼうぎょ:300
すばやさ:30





エルフ「……思ったよりは高かった」


戦士「お前よりも断然しぶといな」


エルフ「あ、当たらなければどうということは……!」


商人「僕の家は飛竜の塔のアイテムを頻繁に扱いますし、他のダンジョンのアイテムについても色々と勉強してますけど初めて見るアイテムです」じー


商人「これは『ステータス解析マシン』ですね。対象の戦闘能力が測れます。ほとんどの魔物にも有効です。売値は……とても価格つけられません。貴重なものですから大事にしてください」


戦士・エルフ「…………」


商人「あ、す、すみません。いつもの癖でつい……」


戦士「あ、ああ……いや……」


エルフ「これは?」つ『桃のかんづめ』


商人「これは『桃のかんづめ』ですね。白桃と黄桃の二種類が詰められています。甘くて美味しいです。売値は100個で1Gです」


エルフ「ほい」つ『冒険者の服』


商人「これは『冒険者の服』ですね。厚手の生地で出来ています。売値はつきません。無料での引き取りになります」



エルフ「それじゃあ……」


戦士「分かった分かった。目利きが凄いな」


商人「あ、ありがとうございます。アイテムを見てると無意識になって勝手に喋っちゃうんですよ……よく気持ち悪がられます


戦士「へえ……いや、特別な才能だと思っていいさ」


商人「そ、そう言ってくださる人は初めてです」


エルフ「面白いねぇ……あ、ちなみにマスター」カチッ


マスター「うん?」


解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ



・マスター
HP100
こうげき:1
まほう:23
ぼうぎょ:50
すばやさ:80



エルフ「ふむ……マスターは足速い?」


マスター「ん? ああ、子どもの頃は村で一番だったね」


エルフ「なるほどなるほど」



エルフ「腑抜けたちも測ってみたけど、まあダンジョンに潜ってるだけあってマスターよりは強いか」


戦士「この数値がどれだけ当てになるんだか」


エルフ「さあ? とりあえずこの私がHP覗く総合値で1番だね」どやっ


戦士「はいはい……」


エルフ「あと戦士は頑丈過ぎて気持ち悪い」


戦士「そこは素直に褒めようぜ……」


エルフ「魔物にも使えるらしいから、測ってステータスが高い魔物を避けたりすれば探索に使えそうだね」


戦士「ああ、なるほど」


エルフ「飛竜を測りたいね。どうせならタワーキマイラも測ればよかった」


戦士「そんな余裕はなかっただろ」


商人「そ、それであのダンジョンへの同行は……」


エルフ「ああ、いいよいいよ。……ただし! この肉壁ができるだけ庇ってくれるだろうけど、死んでも自己責任だよ」


戦士「勝手に決めるな……というか肉壁呼ばわりはさすがに傷つくわ!」


商人「え、えっと……」


戦士「……はあ。出来るだけ守ってやるが、絶対の無事は保証できないからな」


商人「あ、ありがとうございます!」


エルフ「お人好しぃ」


戦士「そもそもお前が……まあ、いい」


・・・
【飛竜の村・道具屋】



エルフ「あんだけ下手に出てたくせに遅刻なんていい神経してるよ。迎えに来させた分、報奨金割り増しにしてやろうか」イライラッ


戦士「まあまあ、もしかしたら例の父親と揉めてるんじゃないか?」



<<ふざけるなッッ!


商人「な、なんで……っ!」



エルフ「ザッツライだね。やれやれ、黙って行けばいいのに」


戦士「それは卑怯だと思ったんだろ。商人なりに筋を通そうと考えたんだろう」


エルフ「だからって直前に言うのもアレじゃん? それに結果的に面倒ごとになってるじゃん?」


戦士「まあ、そう言ってやるな」


エルフ「甘いなぁ……シロップの飲み過ぎじゃない?」


戦士「飲ませてるのは誰だと……まあ、いい」





商人「僕は……僕の力で道を切り開きたいんだ! 父さんの言うことはこれ以上聞いてられない!」


<<勇気と無謀の違いも分からない世間知らずの半人前が一端の口を聞くな! まだまだ未熟なお前に何ができる! だいたいお前は……!


商人「っっ~~! ……あ」


戦士<<よっ

エルフ<<やれやれ



商人「もう僕は行くからね! それじゃ!」

<<おい、待て!




商人「お、お恥ずかしいところをお見せしました……」


戦士「いや」


エルフ「うざったい親だねぇ。子の好きにさせろっての」


戦士「別に憎くて言ってるわけじゃないだろ。むしろお前を大事に思って心配してるからあそこまで怒るんじゃないのか」



商人「……父の言うことも確かだと思うんです。僕は未熟だし、飛竜草を採るというのも勇気というにはかなり無謀です」


エルフ「1束200G……」


商人「でも……このままじゃダメだと思うんです! 今、無茶だとしても動かなきゃ、一生このままな気がするんです……!」


戦士「……それは俺たちじゃなくて父親に言うことだろう」


商人「でもどうせ父は聞く耳なんて……」


エルフ「親なんて自分の都合を子どもに押し付けて勝手に期待したり失望したり腹立つよねぇ」


戦士「だが……あの父親は商人のことを本当に気にかけてるから……いや、なんでもない」


商人「…………」


エルフ「とにかく200G草を採りに行こう! 死んでも知らないからね!」


商人「っ、は、はい! あと飛竜草です!」


戦士「……俺からあまり離れるなよ」


・・・
飛竜の塔3F


商人「ひ、飛竜の塔は10Fまであります……飛竜草は9Fにありますが……そ、その……屋外に突き出てるポイントで飛竜から襲撃を受けかねない地点なので注意が必要です……」


エルフ「げっ……君ぃ、説明不足だよ」


戦士「1束200Gには裏があるわけだ」


商人「ひ、飛竜は1日に何度か回遊しますからその時を狙えばた、多分なんとかなるかと……」


戦士「飛竜が出払ってる隙を見て、採取するんだな。まあ、何とかなるだろ。見つかっても内部に戻れば何とかなりそうだしな。大丈夫だろ」


エルフ「なんかそれフラグにしか聞こえないよ?」


エルフは『妖精の羽』を手に入れた!


エルフ「おっ、『妖精の羽』だ」


戦士「おー」


商人「これは『妖精の羽』です。口当たりが良くてほのかな甘みがあります。売値は1Gです」


エルフ「美味しいよね、妖精の羽。かすかに甘くて爽やかな味。口に含んでると溶けていって雪解けを思わせる。いやぁ、春を感じるよね。さすが妖精の羽」


戦士「……うん?」


商人「えっと……」


エルフ「……どうかした?」


戦士「妖精の羽って……ええっと知ってるよな?」


エルフ「は? 何が? ああ……妖精から羽を取るって残酷だ的な話? まあ、確かに可哀想かもだけど美味しいからねぇ」


商人「え、ええっと……それはあくまでそういう名前のお菓子で、その、別に本物の妖精は関係ないです」


エルフ「はは、何それ。面白い冗談だね」


戦士・商人「…………」


エルフ「…………」


戦士「お前……」


エルフ「し、知ってたしー! 超知ってたしー! 妖精の羽はただのお菓子だって知ってたしー! さっきのエルフ族の定番ジョークだしー!」


戦士「ドヤ顔で雪解けをなんちゃらと……」


エルフ<<ベシィッ! ベシィッ!


戦士「照れ隠しで叩くな!」


・・・
飛竜の塔4F


エルフ「戦士が私から春を奪っていった……」バシィッ!


戦士「変な言い方をするな!」ザクッ!


エルフ「はあ、私可哀想だわー、私超可哀想だわー」バシィッ! バシィ!


商人「(本当に可哀想なのは八つ当たり込みでしばかれる魔物たちかも……というかこの人たち本当に強い……)」


戦士は『ショートソード』を手に入れた!


戦士「……今使ってるのよりも性能が良さそうだな。……見た所、不良もなさそうだし新品そのものだ。武器を替えるか」


商人「これは『ショートソード』ですね。小振りで扱いやすい刀剣です。売値は3Gです」


エルフ「ダンジョンのアイテムって基本的に価値低すぎだよね……」


戦士「まあ、そんなもんだ。一攫千金も楽じゃない」


商人「あ、どうせなら捨てずに私が買い取りましょうか。支払いは後になりますが」


戦士「いいのか?」


商人「に、逃げ足と荷物持ちには相当の自負があります。あと目利きですかね」


エルフ「ダンジョン商人の才能ありすぎじゃない?」



エルフは『天然クーラーボックス』を見つけた!


エルフ「こ、これはあの噂の……!」



エルフは『アイスクリーム』を手に入れた!



エルフ「きたー!」


戦士「おっ、アイスクリーム」


エルフ「ふふふ、私たちはダンジョンでしか食べられない高級品だよ。やっぱり食べ物が大量に落ちてるダンジョンにはマイ食器と消毒薬が必須だね」もっもっ…


戦士「お前、食ってばかりだな」


商人「これは『アイスクリーム』ですね。濃厚なミルクの味わいが口に広がる逸品です。売値は25Gです」


エルフ「高い!?」もっもっ…


商人「どうしても輸送に多額のコストがかかってしまいますから。天然クーラーボックスも一度開けるともう機能しませんから」


エルフ「ほんとアイスクリームは冒険者の特権だよね」


戦士「ちょうど3つか。空気の読めるボックスだな」


エルフ「ほんとほんと。私に三食分も渡すなんて気が利いてるよね」


戦士「独占する気なのかよ!?」



三人で仲良く食べました


・・・
飛竜の塔5F



エルフ「頭キーンってした……」


戦士「アイスクリーム……狡猾なトラップだったのか……」


商人「一気に食べ過ぎたからですよ……」


エルフ「それにしても順調だねぇ。魔物も『魔物の洞穴』と大差ないし」


戦士「骨のありそうなのはタワーキマイラくらいだったか」


商人「お、お二人が強過ぎるんですよ……」


エルフ「まあ、それほどでもあるかな。私は天才だからね」


戦士「運がいいだけだ」


商人「は、はあ……」



エルフ「……む?」



<<ユラユラッ



戦士「弱くはない……な」カチッ……ピピッ


解析マシン<<ピロンッ


・ゾンビ剣士
HP:8000
こうげき1000
まほう0
ぼうぎょ0
すばやさ100


戦士「……エルフ、絶対に攻撃食らうなよ。商人、もう少し下がれ」




エルフ「ここは短期決戦!」


エルフは杖の先に魔力を集中させた!


エルフ「死に切れなかった可哀想な君に炎はいかが!?」ググッ……


エルフの『爆杖殴打』!


ゾンビ剣士<<ググッ…


エルフ「(む、怯まないね……ッ)」



ゾンビ剣士の攻撃!



戦士はエルフを庇った!


戦士「(っ、重いなッ……衝撃は殺しきれないか……ッ)」ビリッ…


戦士「だらぁっ!」ザンッ!


戦士の攻撃!


エルフ「炎と共に踊れや踊れ!」


エルフの『炎舞乱打』!



ゾンビ剣士<<ジュゥゥゥゥゥ……スッ…ズバッ!


ゾンビ剣士の『薙ぎ払い』!


エルフ「いっ!?」



戦士はエルフを庇った!


戦士「ぐぅぅ……っ! エルフ! 決めろ!」


エルフ「……かっ飛ばす! 灰になれ!」ググッ……ガキイッッ!


エルフの『滅撃・炎』!



ゾンビ剣士<<バシュゥゥ……!




ゾンビ剣士を倒した!





エルフ「……はふぅ」


戦士「飛竜の塔も中々きついな……」


商人「し、知りませんよあんな魔物……あ、あんな強さの魔物が出てきたら話題になるはず……」


エルフ「タワーキマイラといい何か塔に異変でも起きてるのかな?」


戦士「勘弁して欲しいぜ……こんな強さのやつらが外をうろつき始めたら結構やばいな」


エルフ「うーん……」


商人「……飛竜草の採取は思っていた以上に難しいのかもしれません」


エルフ「なんか割りに合わない気がしてきた……いやでも5束以上ゲットできたら……グランドホテルのレストランで……」


戦士「まず俺への借金を返せよ」


エルフ「さあ、探索探索!」


戦士「強いのがまだいるかもしれない。ここからはより慎重に行くぞ」


商人「は、はい……!」



to be continued...



○戦士メモ

・魔物:ダンジョンと共に現れたの異形の怪物たち。強さや危険度はピンキリだ。俺はコイツを狩るのが本職のつもりでいる。しかしダンジョンの近くで現れることがほとんどだ。

・飛竜の村:少し肌寒い土地にある村だ。特産品はりんごしかなかったが、ここ20年はダンジョンの中継地として栄えた。

・タワーキマイラのツノ:結構な大物のツノだし、タワーキマイラと分からなくてもそれなりに泊が付きそうな逸品だ。

・飲酒:俺たちの国では16歳から。余談だが法や文化の違いは諍いの原因になりやすい。お互いの背景や前提を理解し共有することで初めて人と人の繋がりは潤うだろう。

・道具屋:冒険に必要なものを買うのによる。この村の道具屋の一押しアイテムは銀の鎧だ。素材が銀である必要性はあるのか?

・ゾンビ剣士:厄介な敵だった。俺一人では負けていたかもしれない。エルフの火力は大したものだ。



○エルフメモ

・商人:目利きは大したものだけどおどおどしてる。そんな態度だから父親から修行に出してもらえないんじゃないの?

・飛竜草:心臓病に効く薬の原料だってさ。その買値は……1束200G!? 美味しいものがいっぱい食べられる……グランドホテルのレストランはスープ1杯で400G……2束でスープ1杯…あれ、ショボい?

・商人の父:子どもに対する心配だのは時として傲慢だし独善だ。ああいう親は大嫌いだ。

・妖精の羽:戦士が私から春を奪っていった。許さじ……!

・爆杖殴打:無属性の爆発魔法を杖に乗せて叩きつけるよ。相手の動きをよく止めるナイスな一撃。

・雷撃:ビリビリくるナイスな技。

・炎舞乱打:ふぁいあー! 変な口上や技名を叫んだりするのは何故かって? 楽しいからさ。

・滅撃(炎):炎魔法を乗せて全力で相手をスマッシュするよ。私の必殺技の一つだけど、隙が大きいから注意が必要。



・・・
飛竜の塔6F



エルフは『色紙粘土』を手に入れた!


エルフ「……なにこれ?」


商人「これは『色紙粘土』ですね。鮮やかな各種の紙粘土の詰め合わせで美術品の材料として用いられます。売値は2個で1Gです」


エルフ「……ダンジョンのアイテムって変なのも多いよね」


戦士「なんで、こんなにアイテムが落ちてるんだ?」


商人「なんでなんでしょうね……色々と仮説はありますけど、確証はないですね」


戦士「そういうのは研究者に任せておこう」


商人「国立研究所が調査はしているようですがあまり目ぼしい成果はないみたいですよ」


戦士「俺らにはなおさら分からないな」


エルフ「戦士は頭の中まで筋肉ぎっしりだもんね」


戦士「頑丈だと褒められてると受け取っておく」





エルフ「これもしかして飛竜草!?」


商人「これは『ブラッドジギタリス』です。全草に神経に作用する猛毒があり極めて危険な植物ですが麻酔の原料になります。売値は10Gです」


エルフ「あ、違うんだ。でも結構いい値段で売れるんだね! あっちにたくさんあったから集めよ……」くらっ


戦士「おいっ!?」


商人「あ……『ブラッドジギタリス』の毒に当てられたみたいですね……少し待てば多分回復するはずです」


戦士「アイテムも危険だな……」


エルフ「うう……気持ち悪い……」


戦士「もう少しこの紫の花から離れるぞ」


商人「せっかくですから回収していきます。気を付けて持ち運べば大丈夫です」


戦士「お前、結構たくましいな……」




・・・
飛竜の塔7F


エルフ「酷い目にあった……それにしてもかなり登ってきたね。どうせなら景色見たいけど」


戦士「そうだな。飛竜がいなけりゃそれもいいが」


エルフ「うざったいなぁ……飛竜倒しちゃう?」


戦士「ダンジョンのボスは別格に強いらしいぞ。できればステータスだけでも測定したいがな」


商人「ひ、飛竜は塔の近くに寄らなければ人を襲うことはありませんが……多くの飛竜に出くわした冒険者が食い殺されたとのことです……冒険者の死因のほとんどが飛竜のようです」


エルフ「怖い怖い」


戦士「縄張りを荒らされるのが嫌なんだろうな」




戦士は『ウインドシールド』を手に入れた!



戦士「盾か」


商人「これは『ウインドシールド』です。風の精霊の加護がかかっています。売値は10Gです」


エルフ「風の精霊舐められすぎ!」


戦士「精霊の加護が10Gで買い叩かれる時代か……」


商人「い、いっぱい手に入りますから……」


戦士「今使ってる『木の盾』よりは使えそうだな」


戦士は『ウインドシールド』を装備した!


エルフ「そんなしょっぱい装備使ってたの? 戦士に守りを任せるの不安になるんだけど」


戦士「今までだって上手くやってただろ」


エルフ「これからもちゃんと壁になってよ」


戦士「へいへい……」





エルフは『魔法使いの杖』を手に入れた!


エルフ「杖だ」


商人「これは『魔法使いの杖』です。売値は2Gです特別な魔力はこもっていませんが頑丈で魔力の伝導に優れています。」


エルフ「ふうん。ストックになるかな。戦士」


戦士「はいはい」


商人「そういえば、どうして魔法使いなのに近接攻撃を?」


エルフ「可愛い武闘派魔法使いだからね!」


戦士「杖の先以上に魔法を離れて扱えないだけだろ」


エルフ「うぐっ……」


戦士「不器用なりの戦い方だよな」


エルフ「はいはい、そうだよそうですよ私は不器用ですよ。あっ、戦士さんそろそろ疲れたよね! 回復してあげる!」バキィッ!


戦士「いでえっ!?」


戦士は回復した!(同時に少しダメージを負った)


エルフ「ごっめーん、不器用だから回復魔法の時は殴っちゃうんだよねっ!」


戦士「別に押し当てるだけでもいいだろ……悪かったよ」


エルフ「とまあ、こんな感じで杖の消費が激しいんだよね。すぐ折れちゃうから」


商人「な、なるほど……」


・・・
飛竜の塔8F


エルフ「うん? 扉だ……鍵がかかってるよ」ガチャガチャッ


商人「あ、こ、ここは開けられる度に新しい扉と鍵が生成されるらしいです」


戦士「鍵は?」


商人「こ、この階のどこかにあるはずです。階から鍵を移動すると消滅して、また新しい扉と鍵が生成されるらしいです」


エルフ「め、めんどくさ……」



エルフは『土下座教本』を手に入れた!

エルフは『靴の底』を手に入れた!

エルフは『消臭ハンガー』を手に入れた!



戦士は『共産主義のススメ』を手に入れた!

戦士は『水筒の蓋』を手に入れた!

戦士は『白シャツ』を手に入れた!



エルフ「鍵は落ちてない……というかガラクタが多い!」


商人「フロアはかなり広いですけどほとんど調べたと思うんですけどね」


戦士「ははは、この土下座の本、面白いな。焼き土下座だってよ」


商人「響きが穏やかじゃないんですが……」



エルフ「……あれ、あの棚の上にあるのは便箋?」ペラッ


戦士「おっ?」



エルフ「んしょ……」よじよじ


戦士「気を付けろよ」


エルフ「よっ……取れた取れた」


商人「鍵のヒントでしょうか」


エルフ「どれどれ……」


便箋<<あほーが、見ィーるゥー


エルフ「ふんっ!」バシッ


戦士「落ち着け」


商人「おや、紙がくっついているようですよ?」ペリッ


便箋<<扉前の右壁を調べろ


戦士「……ふむ」


エルフ「どうせ罠だよ。かー、ムカつく」


戦士「罠かもしれんが、他に見るところもないだろ」


商人「そうですね……」



戦士「……ここだけ壁が紙張りだな」


エルフ「めくれるじゃん」ペリッ


商人「あ、鍵です!」


戦士は『扉の鍵』を手に入れた!


戦士「これで上に行けるか」


エルフ「実は偽物であほーが見ィーるゥーだったら腹立つね」


商人「これは『扉の鍵』です。飛竜の塔8階の扉を開けることができます。一度使うと失われます。売ることはできません」


エルフ「……マジでぇ?」



戦士は扉の鍵を使った!



ガチャッ……ギィィィ……ッッ



戦士「開いたな」


エルフ「開くのか……いいけどさぁ……なんだかなぁ」



・・・
飛竜の塔9F


エルフ「さて200G草! 200G草はどこ!?」ズカズカッ


商人「飛竜草ですっ!」


戦士「そんなにいきり立って進むなよ……っと!」



タワーキマイラ<<グルルル……



戦士「またタワーキマイラか」


エルフ「他にもいたんだ。また倒すけどね」


商人「ま、待ってください!」


<<グルルル…

<<グルル…

<<グル……



エルフ「……何体いるの?」


戦士「……ゾンビ剣士もかなりいるぞ」


商人「か、かか、囲まれていますよ……っ!」




<<グォォォッッ


エルフ「(下への階段へ続くルートを覆うように集団が固まってる……これじゃ退却できない……!)」


戦士「…………合図と共に右に走れ」


エルフ「(右は……テラス? 飛竜も現れる最悪のポイントじゃん。何考えてんの? 血迷った?)」チラッ


戦士「…………」


エルフ「……おっけ」



<<グルルル……


戦士「……今だ!」


戦士たちはテラスへと駆け出した!


戦士「走れ!」パシッ


商人「あわわわ……!」


タワーキマイラの攻撃!


戦士は商人を庇った!



<<グォォォォォォッッ!


エルフ「邪! 魔!」


エルフは杖の先に魔力を集める!


エルフの『爆杖殴打』!


エルフ「怯んでる! こいつの下をくぐって!」するっ


戦士「うぉぉぉっ!」ズザザッ


商人「んびゃぁぁあああ……っっ!」


<<グルルルゥゥッッ!?


戦士「ケツいってぇ……!」ヒリヒリ…


エルフ「生き残っても痔に悶えるね!」


戦士「死ぬよりはマシだろ!」ダッ


商人「あばばばばば……」



エルフ「よし、テラス! どうするの!?」


戦士「飛び降りる!」


エルフ「ここ9階!」


戦士「戦うよりかはよっぽど生存率が高い! 捕まれ!」


エルフ「……っ」


商人「……嘘」



飛竜「ギュルォォォォッッッ!!」



飛竜が出現!



エルフ「さ、最悪だぁ……」


戦士「飛び降りても喰われるか……! くそ……!」


飛竜の攻撃!


エルフ「ッ……!」



タワーキマイラ<<グォォォッッ!?


タワーキマイラを倒した!



エルフ「……え?」




飛竜の攻撃! 飛竜の攻撃! 飛竜の攻撃! 飛竜の攻撃!


タワーキマイラを倒した! タワーキマイラを倒した! ゾンビ剣士の群れを倒した! ゾンビ剣士の群れを倒した!


タワーキマイラ<<グルルル……


タワーキマイラたちは塔の奥へと逃げていった!



飛竜「ギュゥゥッッ…………」


戦士「なんだ、味方か?」


飛竜「…………」ギロッ


戦士「……ッッ!」バッ




飛竜の攻撃!


戦士はエルフを庇った!


戦士「ぐふっ……!」



飛竜の攻撃!


戦士は商人を庇った!


戦士「ッッ……!」



飛竜「……ギュル……ッッ」ズキキッッ



エルフ「こんのデカトカゲェっ!」ダッ


飛竜「……」バサァッ


エルフ「ぬみゃぁっ!?」よろっ



飛竜は塔の上へと飛び立って行った!




エルフ「…………」


戦士「た、たすかったのか……?」ゼェゼェ…


商人「だ、大丈夫ですか?」


戦士「ああ……丈夫な身体に産んでくれた母ちゃんに感謝だな……」はぁはぁ…


エルフ「……あのデカトカゲ、深い傷を負ってたよ。多分、咬み傷……しかもデカい」


戦士「……タワーキマイラか? 魔物同士で争ってるのか?」ふぅ……


商人「そ、そんな話は聞いたことありませんけど……」


エルフ「タワーキマイラもゾンビ剣士もダンジョンに最近現れたみたいだよね? いつもと勝手が違うのかも……?」



<<ギュルォォォッッ!!



「「「!!」」」


戦士「飛竜の咆哮か?」


エルフ「かなり苦しんでるみたいだね……あの咬み傷、相当強い魔物が他にもいて争ってるのかな?」


戦士「…………」


エルフ「あ、その表情……」


戦士「この塔を下るだけならお前たちだけでも大丈夫だな?」


商人「えっ?」



戦士「少しだけ頂上を見てくる。すぐ戻るが待たなくていい」


エルフ「なんなのなんなの? 情けの対象は人間以外も含まれるの?」


戦士「……そんなつもりはねえよ」


エルフ「……そんなつもりじゃん、バカだバカ。はー、君とパーティを1年も組んでた奴はすごいよホント」


戦士「……そうだな。商人、今回は飛竜草は諦めてくれ」


商人「……」


エルフ「ウェイウェイ。一人で行かせないよ?」


戦士「ん?」


エルフ「私だけでタワーキマイラかゾンビ剣士と会ったら死んじゃうじゃん。ここは生存率を上げるために仕方なく同行してあげるよ。今回は君のヘルプだしね」


戦士「別に無理しなくていい。商人もいる」


エルフ「うるさい! だったら行くのやめろよ!」


戦士「……」


商人「あ、あの……僕も飛竜草、諦めたくないです。頂上なら間違いなく生えてるでしょうし」


戦士「いや、お前……」


エルフ「行くならさっさとしろよ! またキマイラとゾンビが集まるでしょ!」


戦士「……後悔すんなよ」





・・・
飛竜の塔頂上


商人「うっ、一際血生臭い……」


エルフ「……うわ、死体の山っ」


戦士「タワーキマイラ……いや、塔の中のやつよりも数段デカいから別種のようだな」



飛竜<<ギュルゥゥゥッッ!



キングキマイラ<<ゴオォォォッッッ!



エルフ「やり合ってるね」


エルフ「さらにデカいキマイラだな……加勢するにも激し過ぎて難しい」


商人「……な、なんでしょう、アレ? 空中に黒くて丸い石みたいなのが浮いてます……」



黒石<<コォォォッッーーーー


エルフ「……よく分からないけど不吉な感じだね」




黒石<<ゴポポポ……!


タワーキマイラ・ゾンビ剣士<<ズルル…


商人「……っ!? あ、あの穴から出てきましたよ!」


エルフ「……新しく出た魔物たちはあの石から出てきたのかな?」


戦士「こんなものは初めて見るな……エルフ、あの石は砕けないか?」


エルフ「さあ……? やってみるけど本当に砕いていいの? このまま飛竜が倒された方がいいんじゃない?」


戦士「飛竜は不用意に塔に近づかなきゃ危害はないが、新種たちはどうか分からない。こんなのが人里をうろついたら、どれだけの犠牲が出るか分からん」


エルフ「飛竜の村なんか滅びるだろうね」


商人「……!」


戦士「……あの黒石を何とかする。その前にまずは出てきたばかりのタワーキマイラとゾンビ剣士だ!」


エルフ「さっさと倒そっ!」ダッ


エルフは杖の先に魔力を集める!



エルフ「おりゃぁっ!」


エルフの『爆杖殴打』!


タワーキマイラ<<グルルルっ!?


エルフ「いい加減、弱点が分かったよ!」


エルフの『爆杖殴打』!



クリティカル!



タワーキマイラを倒した!



ゾンビ剣士「……!」グッ


戦士の『足払い』!


ゾンビ剣士「!?」ドサッ


戦士「腕っ節はあるがそんだけだ。真っ向からやり合わなきゃステータス以下だな」


戦士の攻撃!



クリティカル!



ゾンビ剣士を倒した!



戦士「エルフ、そっちは頼んだ!」


エルフ「しっかたないなぁ!」




飛竜「ギュルゥゥッッ!?」ギロッ


戦士「敵じゃない!」



キングキマイラ「ゴオォォォッッッ」


キングキマイラの『引き裂き』!



飛竜「ギュッッ……!」



戦士は飛竜を庇った!



飛竜「……!?」



ガキィィィッッ!


戦士「がああっっ……!」ズサササッ…!



エルフ「飛竜まで庇うのかよ!」




商人「エルフさん!黒石からまた何か出てきそうです!」せっせっ…


エルフ「ったく……!」ぐぐぐっ…………


エルフ「……砕け散れッッッッ!」



エルフの『滅撃・炎』!


黒石<<ピシィィィ……ッッ!



エルフ「いっだぁぁ……ちっ、もう一発!」



キングキマイラ「ゴオォォォッッッ!!!」



エルフ「うっ!?」



キングキマイラの『八つ裂き』!


戦士「させるかぁぁッッ!」


戦士はエルフを庇った!


ゴシャシャァッッ!


戦士「ーーーーっ」



戦士は気絶した!



エルフ「戦士……っ」





飛竜<<ギュルゥゥゥッッッッ!


飛竜の攻撃!


キングキマイラ「ゴオォォォッッッ!?」


飛竜「……」ギロッ


エルフ「…… 早く壊せって? どいつもこいつも人遣いが荒いよねっ!」グググ…………ッッ


エルフは杖の先に魔力を溜めている!


エルフ「渾身の一発を見せてやろうじゃないか……!」グググ……ッッッッ


エルフは更に魔力を溜めている!


エルフ「まだまだぁぁッッ!」グググググ……


エルフは極限まで魔力を溜めている!



エルフ「ーー砕け散れッッ!」スッ



エルフの『滅撃・炎』!



クリティカル!



黒石<<ピキピキピキピキ………ッッッ





黒石<<バギィィィ……ッッッ!!



黒石を粉々に砕いた!



商人「や、やった……!?」


エルフ「い、いえーい……杖が折れちったけど……」



キングキマイラは怒り狂っている!


キングキマイラ「ゴオォォッッッッ!」ダッ


商人「っ……エルフさん!」


エルフ「こんにゃろ……!」



飛竜「ギュルォォォッッッッッ!」


飛竜の攻撃!


クリティカル!



キングキマイラ「ォォォ…………!」ズゥゥゥン…


キングキマイラを倒した!




エルフ「……よしっ」



to be continued...


>>72コンマ二桁
ゾロ目:ロリババア
ゾロ目以外:通常進行

undefined

こい


(メモを貼れてなかった,コンマはボーナスみたいなものだから取れなくてもあまりお気にせず)


○戦士メモ

・飛竜:巨大なドラゴンだ。大きいだけあってかなり高い知能を持っているようだ。穏和というわけでもないが獰猛にも見えない。

・国立研究所:全国の最も優秀な頭脳が集まる国の機関だ。金持ちの道楽ばかりが集まるところだ。高等教育は金持ちのものだからな。

・痔:なったことないが、これからもなりたくない……。

・キングキマイラ:飛竜と同じくらい巨大なキマイラだ。二発もらったら気絶してしまった。俺もまだまだ未熟だ。



○エルフメモ

・風の精霊:シルフだね。いつも陽気に踊ってばかりいるし、光るものをエサに釣り上げることもできる残念な精霊だよ。閑話だけどエルフとシルフって字面が似ていて、並べたら目が滑りそうだから私の前に出て来ないで欲しい。

・便箋:アホっていう方がアホだ! アホ!

・黒石:ちょっぴり地面から浮いていた謎の黒い正球。魔物が出てきたけど、どういうことなんだろう。飛竜には砕けなかったみたい……ふふん、私の方が攻撃力高いんだね。



○商人の鑑定

・土下座教本:売値1G。これを読めばあらゆるシチュエーションに即した土下座を学べます。ハードカバーかつ1200ページ超えと大部のために鈍器として使えます。

・靴の底:売値0.1G。ゴム製の靴の底です。そのままでは価値がありませんが現在私たちは自力でゴムを作れないため、製品の素材としては中々優秀です。もう少し加工技術が進歩すれば価値が上がるかも……その前にゴムが作れるようになって価値暴落?

・消臭ハンガー:売値0.01G。消臭効果のある木材で作られ、服を吊るすと消臭してくれるハンガーです。これだけ聞くと非常に有用ですが、使用すると服が樹液でカピカピになるというとんだ不良品ですのでご注意。

・共産主義のススメ:売値10G(規制対象品)。この本が登場して以来、この本に感化された過激思想グループが登場しました。これを危惧する政府によって流通、所持、閲覧が禁止されていますが闇市場でそれなりの値段で取引されています。

・水筒の蓋:売値0.001G。平べったくて黒い水筒の蓋です。どうしてか水筒の蓋だけが見つかり本体が見つかったことはありません。飛竜の村の子供たちはこれをフリスビー代わりに投げ合って遊んでいます。

・白シャツ:売値0G(規制対象品)
あまりにも取れ過ぎて政府が衣料産業保護のために規制しました。商人からすれば、産業の保護は少数の生産者を守るために多数の消費者の幸せを減らしている望ましくない方法です。私たちはみんながもっと幸せになれる方法を考えるべきだと思うのです。



(1G:日本円で300円程度,国際的な基軸通貨であるためボラティリティは高くない.他の通貨としてはZやJなどもある)



・・・


戦士「はっ!?」


エルフ「やっと起きたね」


戦士「……すまん、気絶してた! どうなった!」


エルフ「ニブチンめ。生きてるってことはそういうことだ。この可愛い天才武闘派魔法使いエルフちゃんに感謝するんだね」


商人「す、すごかったですよ……! 大きな黒石を砕いたんです!」


戦士「そ、そうか……やるな」


エルフ「まあ、エルフさまと呼んでもいいよ」ドヤヤッ


戦士「すーぐ調子に乗るな……飛竜は?」


商人「せ、戦士さん……後ろ」


戦士「ん?」クルッ



飛竜「ギュルル……」



戦士「うおっ!?」


エルフ「びびってやんのぉ」


戦士「誰だってびびるわい!」


飛竜「…………」


戦士「……飛竜、傷は大丈夫か?」


飛竜「……」ギロッ


戦士「……人間の心配なんていらないってことか?」


飛竜<<ベシッベシッ……ブンブン……


エルフ「目が覚めたなら早く帰れって感じかな?」


商人「……は、早く帰りましょう!」


戦士「……ああ。元気になれよ……あまり人を喰ったり殺さないようにしてやってくれると助かる」


飛竜「…………」フンッ


・・・

商人「や、やっと塔から出られましたね……」


戦士「タワーキマイラとゾンビ剣士の生き残りを片付けないといけなかったから疲れたぜ」


エルフ「ちゃんと降りて来られて……200G草とるの忘れてた!」


戦士「あっ」


エルフ「ぐわぁぁっ! 本来の目的を完全に忘れてたぁ! 何!? 生命を危険に晒してヘトヘトになっただけなの!? バカなの!? 死ぬの!?」


戦士「落ち着けよ……やっちまったな」


商人「……これを見てください」ごそっ


エルフ「なんだよー、私は自分の迂闊さと戦士のアホさを猛烈に嫌悪してるんだから邪魔すんなよー」


戦士「俺もかよ!?」


商人「い、いや、ですからこれ……」


エルフ「だから、よく分からない草見せられても腹立つ…………草?」


商人「飛竜草です。塔の頂上にたくさん生えていましたから、隙を見て採取しました」



エルフ「おお……うおお……」


戦士「お前……やるな……」


商人「あ、ありがとうございます。この量ですと10束ほどですね」


エルフ「……2000G! よっしゃぁ!」


戦士「やったぜ」


商人「はい……!」


エルフ「……君ぃ、自分が採取したからって2000Gは自分のものなんて言わないでよ?」


商人「もちろんですよ……僕だけじゃ取れませんでしたから」


戦士「それじゃあ分け前は三等分か?」


エルフ「いやいや、待ちなよ。私が一番活躍したよね? 私が8割で君たちで1割ずつが妥当じゃないかな?」


戦士「ふっかけすぎだろ!」


商人「ええと……あまり商人を安く買い叩こうとするとロクな目にあいませんよ?」


戦士「あのなエルフ、戦闘でお前が圧倒的な強さで強敵すら蹴散らしたならその分け前でもいい。だが、俺たちはお互いの弱点を補い合っていた。そうだろう?」


エルフ「えぇ……どうかなぁ?」


戦士「それに飛竜草の採取に成功したのは商人の成果だろう? これを換金するのも商人だ。それもしっかりと考慮しないとダメだ」


エルフ「そしたら借金の返済で手取り0じゃん!」


戦士「自己責任って言葉を知ってるか?」



商人「約束通り僕の取り分はなしで、お二人に報酬をお渡しします」


エルフ「いえーい!」


戦士「……いいのか?」


商人「はい。僕は自分が村を出てもやっていけるという自信と証拠が欲しかっただけですから」


エルフ「うんうん。君ならやっていけるよ。うんうん」


戦士「調子のいいやつだな……」


商人「それに戦士さんに言われたように、もう一度父と話し合ってみます」


戦士「ん、それがいい」


商人「お二人とも本当にありがとうございました。お金は換金して明日お渡し致します」


エルフ「ちゃんと2000Gに換えてよ?」


商人「お任せください! それでは!」たったったっ…




戦士「アイツ、この短期間でも成長したな」


エルフ「危険な目にあって生還したからハイになってるだけなんじゃない?」


戦士「そうだとしてもな」


エルフ「それより分け前は7対3でいいよね?」


戦士「なんでだよ!?」


エルフ「譲歩してるのに何が不満なんだい!?」


戦士「そこは折半でいいだろうがよ! なんでお前がキレるんだ!」


エルフ「元々今回のリーダーである君がしっかり分け前を決めないから揉めるんだよ! 責任とって9:1ね!」


戦士「どうしてそうなる!?」


エルフ「じゃあ全部私が貰えば問題ないの?」


戦士「問題しかないわ!」


・・・
【飛竜の村】


商人「昨日はありがとうございました。昨夜、父と話して説得がうまくいきました」


戦士「そうか、よかったな」


商人「戦士さんのアドバイスのおかげです。僕たちは理解が足りなかったんだと思います。家族だからって何でも通じるというのはダメですね」


エルフ「……」


戦士「甘えるのと仲良くするのは別物だからな」


エルフ「そんなことより報酬!」


商人「あ、はい。これ2200Gです……200Gは少ないですけど僕からの報酬です」


戦士「いいのか?」


エルフ「払うっていうんだから貰えばいいんだよ、もう……」


商人「盗賊や追い剥ぎなどもいますからお気を付けて…………あの」


戦士「ん?」


商人「ぼ、僕もお二人の仲間にしていただけませんか! 雑用や装備の補充、アイテムの換金など、色々とお手伝いします! ダンジョン探索のお手伝いもします! だから……!」


戦士「いやいや危ないぞ……って、それは承知の上だよな。だが、そもそも俺たちは常に組んでるわけでもダンジョン冒険者でもないからな」



エルフ「じゃあ組めばいいじゃん?」


戦士「は?」


エルフ「私たちそんなに相性悪くないじゃん。それにさぁ、お人好しの君には、私や商人が手綱を握るべきだよ」


商人「善意は出しどころを絞って効率的に出すものですよ!」


戦士「えぇ……」


エルフ「そんなわけでこれからはチームとして他のダンジョンも制覇して稼ごう!」


商人「はい! いい修行、ビジネスチャンスになります!」


戦士「マジかよ……まあ、ダンジョンの魔物を倒せば結果的には魔物被害も減るかね」


エルフ「決まりだね。ーーここにチームエルフの結成を宣誓する!」


商人「はい!」


戦士「お前がリーダーかよ……」


エルフ「とりあえず現在のみんなの所持金を統合して……ええと、そう! 管理するから寄越しなさ……預けなさい!」


戦士・商人「ムリ」



エルフ「チームエルフかいさーん……」


戦士「雑だな!」



チームエルフを結成した!



商人「出納管理は任せてください。しっかりブックキーピングして、監査も行い、チームの健全な財務管理を達成します!」


戦士「意識高い」


エルフ「私に甘いものを食べさせるチームだね」


戦士「やっぱり解散でいいよ……」


・・・
【その後しばらくして】


戦士「忘れてたけど借金返せよ」


エルフ「返せと言われても、ないものは返せないよ」


戦士「はあ!? この前、1100G受け取ったろ!?」


エルフ「……この前の賭けトランプの借金で1000Gもっていかれた」


戦士「おま……無一文どころか借金までしてたのかよ!?」


エルフ「トサンって怖い言葉だよね……あはは……」


戦士「めっちゃ暴利じゃねえか!」


エルフ「しかも家賃が払えなくて賃貸追い出されちゃった……」


戦士「おま……おま……」


エルフ「それで戦士」


戦士「断る!」


エルフ「まだ何も言ってないよ!」


戦士「どうせ金を無心するんだろ! 借りる前にまずは返せ!」



エルフ「戦士ぃ……このままじゃ私生きていけないよぉ……」うるうる…


戦士「な、泣いても無理なものは無理だ!」


エルフ「こうなったら……歓楽街で身体を売るしか……」ぐすぐす…


戦士「ぇぇ……」


エルフ「私、戦士に見捨てられて、娼館で知らないオヤジに穢されちゃうんだ……」しくしく…


戦士「い、いや……」


エルフ「そして、望まぬ子どもを産んで性病にかかって、見捨てられて親子ともに朽ちるんだ……」ぼろぼろ…


戦士「……ああもう! 分かったよ! 金は貸さねえ……というか貸せねえけど、しばらくうちに来い。狭くて汚いけど文句言うなよ」


エルフ「ありがとう戦士! 大好き!」


戦士「ったく……」


エルフ「それじゃあ、さっそく荷物入れさせてもらうね」けろっ


戦士「お前、嘘泣きかよ!」


エルフ「あはは、でも一文無しの宿無しなのは本当だよ。あのディーラーの巨乳姉ちゃん、絶対にアヘアヘさせてやるから覚えてろよぉ」


戦士「もうギャンブルはやめろぉぉっ!」




商人「この人たちについてきたの失敗だったかなぁ……」



Chapter1:飛竜の塔

ーーーーーーーー


○戦士メモ

・トサン:10日で3割の利息が付く利息体系。一ヶ月たつころには単利計算で借金が2倍弱になり、複利計算だったら2倍を超える。一番賢い利用方法は利用しないことかもしれない。

・泣き落とし:エルフは故郷の妹を思い出すせいか殊更に強く出れない。



○エルフメモ

・チームエルフ:これからダンジョンを荒らして荒稼ぎする予定のチームだから覚えておくべきだね!

・賭け場:歓楽街の隅にある酒場のその地下にある。冒険者にとっては有名みたい。ディーラーのお姉さんはおっぱいが大きくて美人だけど天才的にイカサマが上手いらしい……おのれ。

歓楽街:きっと酒もタバコもやらない戦士はここにたくさんある娼館にお金を落としてるに違いない……不潔だ!

・戦士の家:借宿でボロい。狭い。二人暮らしするには適してないよ。しかも戦士のニオイがこもってて……は? 嗅いでなんかないし?



エルフ「……草って高く売れるんだよ」


戦士「藪蛇だな」


エルフ「賢くて可愛いエルフちゃんは学習しました。今まで宝石だけが高く売れるものだと思ってたけど、草は結構高く売れるということを」


戦士「医療用は需要もあるから高く売れるな」


エルフ「ここはまた一つ高く売れる草を採って稼ぎますか。幸いにしてチームエルフには目利きができるチビがいるしね」


戦士「チビって……お前の方がチビだろ」


エルフ「私はそこまで小さくないから」


戦士「俺から見たら大差ないけどな」


エルフ「無駄にデカいもんねぇ。デカ過ぎて頭に栄養がいってないっぽい」


戦士「いちいちこき下ろすなよ……それより屋台行って飯でも食うか」


エルフ「またスライム春雨? 肉がいい。ホロホロ鳥のフライとか食べたーい」


戦士「贅沢言うな居候。飯代やその他諸々を払ってからにしろ」


エルフ「戦士はケチだなぁ。こんな可愛い女の子と同棲できてるんだからお金を払って欲しいよ」


戦士「お前……まあ、いい。食わないなら部屋で待ってろ」


エルフ「はいはい行きますよ、もー」


・・・
【道具屋】


商人「あ、お疲れ様です!」


戦士「おう。働いてるな」


エルフ「ふわぁ……」


戦士「道具屋の主人さんとは仲良くやってるか?」

商人「はい! うちの村とは扱ってる品も規模も違うのでとてもいい経験になります! 戦士さん、紹介してくださってありがとうございます!」


エルフ「ふっ、戦士は顔だけは広いからね」


戦士「なんでお前が偉そうなんだよ……」


商人「ダンジョンに行く時はついて行きますからお声かけください」


戦士「ああ」


エルフ「目利きだけは一流だもんね。目利きだけは」


商人「ぅぅ……」


戦士「お前そういうのやめろよ」




エルフ「ところで飛竜草みたいに高く売れる葉っぱって他にないの?」


商人「そうですね……膵島草とかですかね」


エルフ「すいとーそー?」


商人「糖尿病の治療薬の原料です」


戦士「糖尿病か。近年深刻みたいだな」


エルフ「とーにょーびょー、とーにょーびょー。ああ、知ってる知ってる。社会問題だよね。爆ぜるやつだよね」


戦士「どういうことだよ……」


商人「社会問題なのは確かですね。、昔はお金持ちの美食家しかならなかったんですけど、今はダンジョンで取れる高エネルギーの食品のために食生活の変化が起きて糖尿病が増えているようです」


戦士「俺たちも気を付けないとな。特にエルフ」


エルフ「むっ」


商人「人間でも元々食が質素な人ほどなりやすいようです。エルフ族もおそらく発症しやすいですから気を付けてください」


エルフ「びょ、病気が怖くてダンジョン冒険者はやってられないよ! それよりすいとーそーは幾らするの?」


商人「1束500Gです」


戦士・エルフ「高い!?」


エルフ「飛竜草よりも高いんだけど!?」


商人「採取が難しいんです……なんせ今のところ『異形の島』でしか見つかってませんから」


戦士「異形の島か。遠いな」


エルフ「500G草......10束取れば5000G草……戦士の一年の年収くらい!?」


戦士「さすがにもう少し稼いでるわ……」


商人「向かうというなら手配は任せてください。必要であろう道具も仕入れておきます」


エルフ「よし! 行こう!」


戦士「待て待て……先立つものがないだろ」


エルフ「そこは戦士が立て替えてくれるでしょ? この前の1100G、まだ残ってるんだから」


戦士「いやお前な……俺の稼ぎの大部分は故郷に送ってんだっての」


エルフ「道理でどこにも1100Gはなかったわけか」ちっ


戦士「部屋の中を探し回るのやめてもらえる!?」



エルフ「じゃあ商人この戦士のポケットマネーに300Gあるから、これで準備よろしく」


戦士「なんでお前が持ってんじゃー!?」


エルフ「それじゃあ賭けトランプに使えってことかい?」


戦士「どうしてそうなるんだよ!?」


エルフ「じゃあどうしろっていうの!?」


戦士「逆ギレ!?」


商人「あ、あの……」


戦士「……どうせこいつは頑固で折れないからな。『異形の島』で元を取ってやる。商人、足りるか?」


商人「は、はい……何とかしてみせます」


エルフ「よっし、次なるダンジョンは『異形の島』! 500G草が私たちを待っている!」


戦士「不安しかない……」




「奇遇だな。アンタら異形の島に行くつもりか?」


戦士「ん?」


「俺たちも異形の島に向かうんだ。俺は赤魔だ」


戦士「お、おう……」


エルフ「ふーん。まあ、私たちの方が稼ぐけどね」


赤魔「ははあ、俺たちが誰か知らないのか嬢ちゃん? さてはモグリだな」


エルフ「ああ? お前みたいな赤ずくめ黒チビなんか知らんわ。ママのおっぱいでも吸ってろ」


赤魔「ああっ!? 同じエルフ族だから声かけたら何つう態度だ!? お前の方がチビだろうがチビ!」


エルフ「黒エルフなんかと一緒にされたくないですぅー、黒チビー」


赤魔「ちっ、白いのはこれだから……」


エルフ「ああ? 赤魔道士なんてイタい職業やってるアホチビ黒エルフに言われたくないよ」



赤魔「こ、この……俺にケンカを売ったこと後悔させてやる! 決闘だ!」


エルフ「望むところだよ!」


戦士「お前ら落ち着け……」


商人「み、店の前で騒がないでください」


赤魔「ちっ……広場に移るぞ! 大衆の前で膝を突かせて恥をかかせてやる!」


エルフ「それは私のセリフだけどね?」


赤魔「ふん、ついて来いよ! ついて来られるならな!」ダッ


エルフ「むしろ私の方が先に広場につくんじゃないの?」ダッ


戦士「あっ、おい! ……すまん商人、準備よろしくな!」ダッダッ…


商人「あ、はい……うーん、やっぱり苦労人ですね」


【広場】


赤魔「な、なかなか速いじゃないか……」


エルフ「そ、そっちこそ……」


赤魔「だが、戦いで俺に敵うと思うなよ!」ババッ


エルフ「(ナイフ二刀流……!)」


エルフ「ふん、かっこつけて……」バッ


エルフは魔力を杖の先に溜めている!


赤魔「遅いぜ!『疾風剣』!」



エルフ「(こいつも魔法を武器に宿らせて戦うタイプか!)」


赤魔「おらぁっっ!」ビュンビュンビュンビュンッッ


エルフ「当たるか! 喰らえっ!」


エルフの『爆杖殴打』!


赤魔「っとぉ! ?」バッ


エルフ「ちっ……!」


赤魔「(……こいつ、生意気叩くだけあるなっ)」





赤魔「業火を身に刻め!」


赤魔の『火炎魔法』!


エルフ「(普通の魔法も使えんのかよぉ……!)」ササッ


赤魔「ちょこまかと……! 止まりやがれっ! 『地震剣』!」ザクザクッ


ドガガガッッッ!


エルフ「うおおぃ!?」グラグラッ


赤魔「喰らえっ!」ぶんっ


エルフ「くっ……!」



ガシッ



エルフ「……へっ?」



赤魔「誰だ! 何をしやが……げぇっ!」



「アンタがなにやってんの?」



赤魔「と、盗賊さん……? 宿の手配をしてたんじゃ……?」


盗賊「もう終わった。なんでこんなところでケンカやってんの? 買い物は終わったわけ?」


赤魔「あっ……」


盗賊「……やることやらずに遊んでるんじゃない」ギチチチッッ


赤魔「……あだだっ! ごめ、ごめんなさい……っ!」


エルフ「なんなんだ……」


戦士「はぁはぁ……やっと追い付いた……あれ、終わった感じか」


盗賊「その子の保護者か? ウチのバカがすまない」


赤魔「んなっ」


盗賊「……」ギロッ


赤魔「……」シュン…


戦士「ああ、いや、うちのアホがふっかけたことだし……こちらこそすまない」


エルフ「誰がアホだ! 随分と偉くなったな戦士ぃ」


戦士「うるさいよ」ビシッ


エルフ「あだっ」


盗賊「……お互いケガはないようだし、ここらで手打ちにしていいだろうか?」


戦士「ああ」



赤魔「待て! まだ決着は……!」


トンッ


赤魔「……」きゅうっ


エルフ「首トン……生で初めて見た……」


盗賊「お騒がせした」ぼすっ


赤魔「……ぅぅ」ぷらーん…


エルフ「……せめて戦闘能力の数値だけでも測ってやる!」


戦士「おま……勝手に測るなよ……」


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ



・赤魔
HP:2500
こうげき:300
まほう:700
ぼうぎょ200
すばやさ:500


・盗賊
HP:3500
こうげき:400
まほう:200
ぼうぎょ:400
すばやさ:1000






エルフ「うーん……多分私の方が強い!」


戦士「五分五分だろ。魔法で負けてる分エルフ族としては……」


エルフ「うっさい!」


戦士「……というか、あの黒エルフの連れも相当の手練れだよな」


エルフ「ただ足が速いだけじゃん」


戦士「いや……やっぱりその機械だけじゃ測れないものがあるって。あの立ち振る舞いは相当場数を踏んでそうだ」


エルフ「なるほど、私の方が強いけど、連れについては完敗だ。戦士がショボすぎる」


戦士「んなこと言われてもな……あの二人も『異形の島』に行くんだよな? 鉢合わせになって争うことになったりしないといいが」


エルフ「なんでフラグを立てるかなぁ……」



to be continued...



○戦士メモ

・スライム春雨:養殖されたスライムを細く切り刻んで辛めのスープに入れた食べ物。庶民の食べ物として広く普及しているため屋台で安く売られ、昼時は簡易な椅子に座って食している人々が多く見られる。

・ホロホロ鳥:全身に脂がのりジューシーな肉汁がたまらなく旨い魔物。気性は穏やかかつ悪食で何でも食べるため養殖されている。ただストレスに弱いため流通量が中々増えない。

・異形の島:国東部の近海に出没したダンジョン。非常にグロテスクな外観をしており危険生物が多く住むという。難易度は高く腕利きのダンジョン冒険者でない限り生き残ることは出来ないそうだ。

膵臓島:『異形の島』に自生する植物。近年増加しつつある糖尿病に有効な治療薬の原料らしいが、『異形の島』の難易度が高いこともあり、売値が1束500Gと高値である。購入できるのは一部の金持ちに限られるだろう。

・糖尿病:缶詰のシロップを飲むのはやめておいた方がいいようだ。

・盗賊:あの身のこなしや佇まいは只者ではないと思ったが、数値で見ても常人離れしているようだ。悪人ではなさそうだが、実際にそうであることを願う。



○エルフメモ

・赤魔:くそむかつく黒エルフのチビ。ちゃっかり私よりも魔力が高いのが尚更気に入らない。

・赤魔道士:魔道士の職業の一つ。攻撃力が高く回復魔法、攻撃魔法を使いこなす。また魔法を剣に宿して戦う『魔法剣』を用いたりする。多彩だがスペックが低いとただの器用貧乏になる。あと赤ずくめの格好が胡散臭いよね。私は可愛い武闘派魔法使いなので赤魔道士じゃない。赤くないしね。

・黒エルフ:エルフ族と仲が悪い。エルフ族よりも人間に対して友好的であるのもエルフ族は気に入らないらしい。私自身は別に黒エルフが嫌いとかでもないし、むしろエルフ族の高慢さがあまり好きでなかったりするけど、あの黒チビは気に入らない。

・・・
【異形の島に向かうオンボロ定期船の中にて】


エルフ「…………」


赤魔「…………」


エルフ「フラグ回収が早いんだよぉ!」


赤魔「意味が分かんねえぞ!」


エルフ「戦士のアホー!」


商人「まあ、一番最安値でダンジョンへ行き来するにはこの定期船しかありませんからね」


盗賊「どうも」


戦士「ああ、どうも」


赤魔「チビすけ! このダンジョンでケリつけようじゃないか」


エルフ「ああん?」


赤魔「このダンジョンでよりレアアイテムを手に入れた方が勝ちだ。どうだ!? 乗るか!?」


エルは「望むところだよ! 黒チビが負けたらチームエルフの奴隷だからな!」


赤魔「俺に二言はない! お前が負けたらチームレッドのパシリだかんな!」



盗賊「勝手な約束をするなバカ」


赤魔「うぐっ……」


エルフ「ぷぷ……」


戦士「エルフもだぞ」


エルフ「むっ……」


赤魔「はっ!」



赤魔・エルフ「…………!」バチバチッ



商人「あは、あはは……同じエルフどうし仲がいいんですね」


エルフ・赤魔「よくないっ!」


商人「ごめんなさいっ」







赤魔「ったく、この程度のやつら俺が軽く捻ってやるのに……」


盗賊「……はあ。赤魔、このダンジョンの生存率がどれだけか復唱しなさい」


赤魔「……忘れた」


商人「せ、生存率25%です。よ、4人のうち1人以外は亡くなります……」


赤魔「ふーん……まあ、俺と盗賊は死なないからお前らが死ぬな。はっ、まず勝負にすらならねえか」


エルフ「ああ?」


盗賊「バカか。過酷な環境だから他の冒険者と争ってる場合じゃないんだよ。ほんとバカだな」


赤魔「ぐ……二回もバカって言うなよ……っ」


エルフ「へっ」


戦士「お前もだぞ」


エルフ「さっきからうっといよ!」


商人「エルフさん、僕たちはお金稼ぎに来たんですからね! プライオリティを間違えないでくださいね!」


エルフ「プライオリティ……ああ、プライオリティね。体力全快するよね」



戦士「……ところでそちらのパーティの目的は? こちらは膵島草の採取だが」


赤魔「すいとーそー?」


エルフ「いちいち言うなよ!」


商人「そうですよ! ピンポイントで狙ってるライバルだったら潰し合いになります!」


戦士「んなバカなこと……」



<<あいつらも膵島草ねらいかよ

<<ガキ連れだけどな……潰しておくか

<<まあ、俺たちが潰すまでもないだろ



戦士「……すまん」


エルフ「まったくこれだから考えなしの脳筋は……」はぁ…


戦士「悪かったって……」



盗賊「私たちはこれといった目的アイテムはない。まあ、レアアイテムでも見つかればいいのだけど」


商人「じゃあ僕たちと基本的に同じですね」


戦士「どうせなら俺たちと組まないか? お互い実力は同じくらいだと思うし、生存率が低いなら尚更協力し合うべきだろう」


盗賊「すまないが身元が知れない奴等と組むつもりはない。別にそちらが怪しいなどという事ではなく一律にそうしているんだ。悪く受けとらないで欲しい」


戦士「……そうか。すまなかった」


赤魔「勝負するんだから組んだりするわけないだろ!」


エルフ「そーだそーだ!」


盗賊「そんなつもりも勿論ない」ガチッ


赤魔「いだだだっ……!」


戦士「ああ。お互い生き残って帰ろう」ぐっ


エルフ「むーむー……! ……がぶっ!」


戦士「いでぇっ!? 噛むなっ!」


・・・
【異形の島・最寄の小島】



ガゴンッ……


<<ダンジョン最寄に到着です! この小島からはボートに乗って本島までお進みください! 五体満足の生還をお待ちしております!



商人「……着きましたね」


エルフ「おえ……」


赤魔「うぷっ……」


戦士「ダンジョン突入前から疲弊してるな……」


盗賊「はぁ……」


商人「そ、それより、本当は僕たちと入れ替わりで帰る人たちが待ってるはずですけど……」


シーン……


戦士「誰もいない?」




ざわっ……


<<ど、どういうことだ?

<<なんで帰る奴が誰もいないんだ……?


赤魔「なんだこりゃ? 盗賊、どういうことだ?」


盗賊「さて……まだ帰る気がないのか、元々誰もダンジョンに入ってなかったのか、最悪で一番尤もらしい場合として……全滅したかのどれかだろう」


商人「ぜ、全滅ですか……? た、確かに生存率は低いですけど、さ、さすがに全滅はそうそう……今回も100人近くが入るわけですし、前回もそれくらいいたでしょうし……」


赤魔「……キモい本島の浜にボートが大量にあるっぽいから全滅くさいけどな」



エルフ「……戦士、なんかデジャブだよね」


戦士「ん?」


<<……おい!? 魔物が来たぞ!? 飛んでやがる!

<<はあ!? この小島には魔物が来ないって話じゃねえのか!?

<<……きょ、巨大カマキリ……? あ、あんな魔物、ここで見たことねえぞ!



<<ブブブブ……



エルフ「……人の少ないダンジョンに普段は見かけぬ魔物。飛竜の塔の時に似てるよ」サッ


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ



・クリティカルマンティス

HP:1500
こうげき:800
まほう:10
ぼうぎょ:200
すばやさ:800





クリティカルマンティス<<ブブブブ……ッッ!


エルフ「早くて破壊力はあるけど脆い! 慎重に防御して一気に倒そう!」


戦士「俺の後ろに下がれ!」



盗賊「……」シュバッ


戦士「……!」


盗賊の『死の針』!


クリティカルマンティス<<!? ……ブブッ……!


クリティカルマンティスの『急所切り』!


ミス!


盗賊の『加速蹴り』!


クリティカルマンティス<<ッッ!


盗賊は更に加速する!





赤魔「真っ二つになりやがれ!」


赤魔の『疾風魔法』!


クリティカルマンティス<<……グラッ!


盗賊「もう一発」


盗賊の『加速蹴り』!


盗賊の素早さは最高潮に達する!



クリティカルマンティス<<ドシャッ!



クリティカルマンティスを倒した!



盗賊「なんだ終わりか」スタッ


赤魔「にひっ、らっくしょー♪」




<<つ、つええ……!

<<バケモノじみてやがる……!



エルフ「……うーん」


赤魔「へっ、どうだクソチビ! 俺たちの実力を思い知ったか!」


エルフ「君の連れは強いね、連れは、ね」


赤魔「俺も強いっつーの!」


エルフ「はっ」


赤魔「んぐぐ……!」


戦士「やめろって。二人とも助かった」


盗賊「別に降りかかる自分たちに火の粉を払っただけだ。感謝する必要はないわね」


商人「お、お強いですね……」


盗賊「それはどうも」


エルフ「盗賊というより武闘家じゃないの?」


赤魔「うちの盗賊は武闘家よりも白兵戦に強いんだっての! どうだ!」どやっ


盗賊「なんでアンタがイキるわけ?」


・・・
【異形の島・本島の海岸】


赤魔「そんじゃ勝負だチームエルフ! 換金G額が高いアイテムを見つけた方が勝ちだ! 約束忘れんなよ!」


エルフ「はっ! 精々死なないように気をつけるんだね!」


赤魔・エルフ「ふんっ!」


ザッザッザッザッ……


赤魔・エルフ「…………同じルートかよ!?」


赤魔「さっきあそこで別れる感じだったろ! なんで同じメジャールート来てるんだよ!」


エルフ「こっちのセリフだよ! てっきりそっちはマイナールートに行くと思ったよ!」


赤魔「ちっ、ヘタレどもめ……おい、盗賊! 俺たちはマイナールート行くぞ!」


盗賊「バカか死ね。初めて来たダンジョンでいきなりマイナールートに行くか死ね」


赤魔「そ、そこまで言わなくたっていいだろぉ……」


エルフ「……へっ」


赤魔「鼻で笑いやがって……!」ムカムカッ……


盗賊「……」はぁ…


商人「異形の島……どんなアイテムが待ってますかね!」キラキラ…


戦士「お前もわりとマイペースで楽天的だな……」



商人は『硬い枕』を手に入れた!


商人「戦士さん、新しい盾ですよ」


戦士「盾なの!? 枕じゃないの!?」


商人「固すぎて盾になる枕です。売値は11Gです。ウィンドシールドよりも素の防御力は高いですよ」


戦士「わ、わりと高いな……いや、ウィンドシールドでいいよ」


商人「じゃあ換金用ですね」



商人は『亜銀石』を手に入れた!

商人は『氷結プリン体』を手に入れた!

商人は『闇鍋用の土鍋』を手に入れた!



赤魔「め、めざとい……」


盗賊「気にするな。私たちは嵩張らず高価なもの狙いでしょう?」


赤魔「わ、わかってるよ。宝石とか狙うぞ……こんな紫のドロドロがあるくらいだし宝石とかとれそうなんだけどな」


エルフ「というか、この紫のヘドロみたいなのは何? 毒? なんか戦士の体から分泌されそう」


戦士「こんなもん出るか!」


商人「人体に有害という報告がありますから、触ったりしちゃダメですよ。呼吸くらいは平気みたいですけど」


エルフ「なるほど、怖いね」


・・・

赤魔「俺たちはAルートを行くつもりだ」


エルフ「商人、すいとーそーが採れるのは?」


商人「地図によるとBルートが群生地の森に通じてます」


エルフ「じゃあBルートだね。精々500Gより高いものを見つけるんだね!」


赤魔「舐めるなよ! 3000G超えの財宝を手に入れてやる!」


戦士「3000Gか……一攫千金だな」


商人「膵島草の群生地まで無事にたどり着ければ合計で3000Gほど稼げそうですけどね」


エルフ「ふへへ……大金が私たちを待ってるよ……ふへへ……」


戦士「ゲスい顔しやがって……」


商人「ふへへ……まだ見ぬアイテムたち……ふへへ……」


戦士「こっちもかい……」


・・・
【異形の島・Bルート】


戦士「……」ザッザッ


商人「ほとんどの人がAルートに行きましたね……一番切り開かれたルートですし、やはり赤魔さんたちがいるからでしょうか」


戦士「そうかもなぁ……前回の生存者はゼロかもしれないし、不安になったんだろうな。すぐに引き返したやつも結構いたし」


エルフ「高い金払って何しに来たんだか……」



ヒソヒソ……



商人「唯一後ろにいる人たちは……船の中で不穏なことを言っていた人たちですよね? だ、大丈夫でしょうか……?」


エルフ「もし襲って来たらぶちのめして食人植物の餌にでもするよ」


戦士「恐ろしいこと言うなよ……」



商人「……地図にあるはずの道がないですね」


戦士「マジかよ……」


商人「結構な金額を払ったのに……まだまだダンジョンの全容は掴めてませんから仕方ありませんね」


エルフ「まだまだ未開拓なんだよね?」


商人「はい。特に私たちが入って来た方角は南ですが、北側は急崖で海からは進入できず、また北上するにかけて敵が多いためほとんど調査は進んでません」


エルフ「つまりまだ未発掘のすんごいお宝がある可能性あり、ってわけ?」むふー!


商人「はいっ」


戦士「それだけ危険ってことだろ……それより、問題は今どうするかだろ」


エルフ「この獣道っぽいのがルートじゃないの?」


戦士「魔物が歩いた跡かもしれんぞ?」


エルフ「でも道が消えるってのも中々あり得ないし、これがルートじゃないかな」


戦士「うーむ……目印付けて、地図書きながら行くか」


商人「どちらも任せてください!」


エルフ「戦闘以外は頼りになるよね」


戦士「ありがたいよな」



他冒険者のグループ<<……ニヤニヤ



エルフ「……後ろの奴等は立ち止まってる私たちを追い抜こうとしないね。 持ち悪いんだけど」


商人「そうですよねぇ……」


戦士「あいつらも道に迷ってるんじゃないのか?」


エルフ「それなら私たちに並んでもいいじゃん。……あいつら、私たちが魔物を倒してもらって楽に進もうとか考えてるんじゃない?」


商人「フリーライドですね……弱ってる最中に不意打ちされたり、獣道でつけた目印を消されたりしないか不安ですね……」


戦士「そんな悪どいことするか普通?」


エルフ「私たちがいるところは普通じゃないでしょ? ここはダンジョン……大金を稼ぐチャンスと危険に満ちた無法地帯! その危険は魔物だけじゃなくて追い剥ぎの如き冒険者が含まれてもおかしくないよ」


戦士「マジかよ……」

エルフ「……そうは言っても進まないことには始まらない。目印はやっぱり私がつけるよ」


エルフは杖の先に魔力を溜める!


エルフ「はっ!」


エルフの『爆杖殴打』!


大木<<ベコッッ!


他冒険者たち<<!!??


エルフ「これなら消せないでしょ。さて、獣道をいこー」


戦士「お、おう」


エルフ「というか、この島全体を焼き払ったら、魔物も倒せるし道にも迷わないし一石二鳥?」


戦士「お前……エルフ族としてそれはダメだろ……」


商人「火をつけてもすぐに消えちゃうそうですよ。しかも火をつけた冒険者たちは森に呑まれたとかいう目撃談も……」


エルフ「えー」


戦士「森の主が仕返ししたのかもな。その理屈で行くと、この目印の付け方も怒りの対象になりそうだが……まあ、そんなわけはないよな!」


エルフ「息をするようにフラグを立てるのはやめてよぉー……」



<<ザワッ……………



to be contined...


○戦士メモ

・定期船:冒険者ギルドが運行する便。ほぼ毎日ダンジョンを往復する。生存率25%という非常に危険なダンジョンでも人足が減らないのはこのダンジョンは希少価値が高いアイテムが数多くあるためである。

・最寄の小島:本島に直接船を停めるのは危険なため、本来は魔物が上陸できないこの島に停留する。冒険者たちはここから小型ボートに乗り込んで本島に向かう。ちなみに還らぬものとなった冒険者のボートを小島まで持って行くと僅かに謝礼金が貰える。

・クリティカルマンティス:人並みの体躯を持つ昆虫型の魔物。俺たちでもおそらく倒せていただろうが、盗賊と赤魔がいなければ他の冒険者が多く犠牲になったかもしれない。

・Aルート:メジャールートのメジャールート。今まで異形の島で見つかったアイテムはだいたい手に入るが。最も価値があるもので300G程度。もちろん強い魔物が多く出て危険なことには変わりない。

・Bルート:近年開拓されたルート。鬱蒼として奇妙な形態の森を抜けないと行けないため危険度は高い。膵島草が見つかったことで野心的な冒険者が挑み命を落とすことが増えている。

・地図:8つのダンジョンのうち4つは地図が発行されている。しかし『異形の島』と『悪魔の湿原』の地図は未記入かつ不正確な箇所が多く、また誤った情報や古い情報も多いようだ。しかも高額。それでも無いよりはマシである。




○エルフメモ

・フリーライド:ああ、うん。知ってる知ってる。体力回復するよね。……えっ、他人の努力とかへの『タダ乗り』を意味する? し、知ってたしー! ……商人はすぐに横文字使うのをやめるべき。

・フラグ:戦士は呼吸をするように立てる。頼むからやめて欲しい。本当にやめて欲しい。あ、また……ちょっ、まっ、ほんとやめ……やめろって言ってんだろ!


○商人の鑑定

・硬い枕:売値11G。皆さん、これを枕として認識していませんが、これは枕です。ただし枕としては石と大差ないので盾として使うといいと思います。でも枕なんです。

・亜銀石:0.2G。銀に似て非なる鉱石。実際はスズと極少量のミスリルが混じっていて、どうにかミスリルを取り出せないかと各国の研究機関が試行しているようですが成果はないらしいです。

・氷結プリン体:売値5G。プルプルなのにシャリシャリした質感の謎物質。柔らかくひんやりと冷たいため夏場の寝具の材料として好まれています。

・闇鍋用の土鍋:売値5G。何を入れても食材が真っ黒になるという鍋です。味や香りは変わりませんが、ただ真っ黒になります。パーティグッズとして買われる方がほとんどですが、一度ネタで使われたら多分二度と使われないのでは?


○盗賊のtips
各ダンジョンの生存率ランキング

・魔物の洞穴:生存率98%

・飛竜の塔:生存率92%

・幻惑の街:生存率80%(生還者の9割は廃人になっている)

・悪魔の湿原:生存率50%(毒の後遺症を負う者が7割以上)

・異形の島:生存率25%

・蠢く砂漠:生存率3%(所在地不明……ダンジョンが動き回っている?)

・憤怒の火山:生存率0.5%(生還者3名)

・不帰の虚:生存率0%



・・・

エルフ「可愛いってお得だよね」


戦士「急になんじゃい」


エルフ「いや、可愛く生まれて人生得してるなぁと。大抵男の人は優しくしてくれるしー、戦士とか下心丸見えだしー」


戦士「何処がだよ」


商人「まあ、確かにうちの父も美人冒険者さんに勝手に値下げしたりとかして僕や母が怒ることも多かったですね」


エルフ「商人だってやるかもじゃん?」


商人「いや、僕はそういう事はしないつもりです。父の混同には辟易してましたから。まあ、雇用するなら美男美女を優先するかもしれませんが」


戦士「そういやエルフは美形しかいないとか言うが本当なのか? 今まで見かけたエルフは大抵そうだったが 」


エルフ「ヒトほど顔立ちにばらつきはないかな。モンスターみたいな顔のヒトとかたまにいるけどエルフだと見たことない」


商人「エルフは長生きで美形揃いですから色々と需要ありそうですよね」


エルフ「闇商人かよー」すすす…


商人「た、他意はないですから離れないでください」



戦士「(あとエルフ族って男か女か見た目で判断つかないんだよな。みんな女に見える)」





戦士は『狂気のオルゴール』を手に入れた!


戦士「なんだこりゃ?」


商人「これは『狂気のオルゴール』です。使用するとしばらく混乱する代わりに攻撃力が増加します。売値は5Gです」


戦士「……使いづらいな」


エルフ「敵に使えたら便利かも? ほら、魔法メインの敵の魔法を封じられたり? ……あ」


戦士「赤魔に対して使ったりするなよ。俺が預かっておく」


エルフ「ちっ……」


商人「一回流れると壊れる仕組みのようです」


エルフ「ほんとダンジョンは変なものばっかり落ちてるよね」


戦士「だなぁ」


エルフの『爆杖殴打』!


エルフ「よし、進もう」


戦士「魔法をそんなに使って消耗しないのか?」


エルフ「んー? 私は天才だからだいじょぶ」


商人「エルフの魔法は自分のエネルギーだけでなく外部のエネルギーも取り込むから人間よりも遥かに効率的だと聞きますね」


エルフ「よく知ってんね。私は他のやつより取り込みがうまくて、全部外から引っ張ってくることもできるくらいなんだ」ドヤッ


戦士「その代償として、杖より先に魔法を放てないわけか」


エルフ「うっせー」


商人「でもそれって無限に魔法を使えるわけですよね? すごくないですか?」


エルフ「いや無理。ずっと魔法を使ってたら普通に疲れるよ。他の人よりは遥かに長持ちだけど無限ってことはないね」


戦士「まあ、なんにせよ頼りになる」


エルフ「とーぜん!」ふふんっ


戦士「杖の届く範囲ではな」


商人「杖の届く範囲では頼もしいです」


エルフ「さっきから何なの!?」




エルフ「おりゃぁっ!」


エルフの『火炎乱舞』!


メイジマッシュの群れを倒した!


戦士「倒せたか……敵はかなり強いな……商人、ケガはないな」


商人「は、はい」


エルフ「はあはあ……」



他冒険者<<ニヤニヤ……



エルフ「……ああ、もう! 後ろの奴等本当にムカつく! ほとんど私たちが魔物と戦って、あいつら安全なところで見てるだけとか何なの……!」


商人「あちらが魔物と戦っても、目印で追い付いてくるから離れられることもできないし……」


戦士「戦闘くらい手伝ってくれりゃいいのに。ちょっと共闘を申し込んでくる」


エルフ「あいつら、絶対にそんなつもりないっての!」


商人「もっとひどい場合、協力するふりしてこちらを攻撃してくるかもしれませんよ……?」


エルフ「こうなったら弱ってるところを襲われる前にぶっ飛ばしてやろうか」


商人「正直その方がいいと思います」


戦士「いやいや……そう決めつけるなよ。迷うのが怖くて俺たちについてきてるだけかもしれないだろ」


エルフ「だったら私たちにそれらしく声をかけてくるでしょ。それはそれで怪しいけど」


商人「どちらにせよ、他人に乗っかって漁夫の利を得ようとしてますよね……」


戦士「ダンジョンだからって疑心暗鬼になりすぎちゃ、むしろ生命の危険に晒されるかもしれないぞ。本当は協力したいのに協力を申し出るのを遠慮してるだけかもしれない」


エルフ「いや、アレは絶対に違うよ! ……ああ、もう分かったよ。シカトするよ。あいつらとは協力したくもないけど追っ払わない。これでいいでしょ?」はぁ…


戦士「いや、だから……まあいい」


商人「戦士さん、お願いしますよホント」


戦士「そんなに俺がおかしいんだろうか……」



他冒険者<<ノロノロ……



エルフ「~~ッ」イライラッ


・・・
【異形の島・森林地帯中央地】



エルフ「あれ? この辺りはやけに開けてるね? ちょっとした公園みたい」


戦士「真ん中、すげえデカい木だな」


商人「……あ、ありました! 膵島草です!」


エルフ「よっしゃ! 500G草きた!」


戦士「おお!」


商人「これなら2束分になりますよ」


エルフ「いい稼ぎじゃん! この辺りにもっとないかな?」ガサガサッ


戦士「おい、あまり離れるなよ」


エルフ「だいじょぶだいじょぶ。……しかし大きい木だなぁ。樹齢数百はいってるよ彼」


戦士「(数百年? ダンジョンが出現したのは20年前だからおかしくないか? ……今更か)」


エルフ「おや、あれは木の実かな? こんな老木なのに?」


商人「あれは『トレントの果実』ですね。売値は……1つ800Gです」


エルフ「はっぴゃ……!? おじいちゃん! 可愛いエルフちゃんがその子たちもらっちゃうね!」よじよじ…


戦士「おま……ん? トレント?」


戦士「おい、エルフ!」


エルフ「何だよー? あと少しで……よっ……」ググッ



大木<<ミキキ……ッ!



エルフ「……うぇっ?」


戦士「そいつは魔物だ! 飛び降りろ!」


エルフ「ぐっ……こいつトレント……! 分かってたんならもっと早く言えー!」


エルフの 『爆杖殴打』!


トレント<<バキキッッ……



エルフ「っと……!」フワッ


商人「おおっ、反動で後ろに飛んだ!」


エルフ「せ、戦士ー! 受け止めてー!」ヒュー……


戦士「任せろっっ!」ガシッッ!


エルフ「……いやあ、死ぬかと思ったぁ」


戦士「……まだ来るぞ! トレントのやつ、逃げ場を潰そうとしてやがる! 商人、もっと下がれ!」


商人「は、はい!」



エルフ「ったく」カシャッ……ピピッ……ピロンッ


・トレント
HP:8000
こうげき:450
まほう:700
ぼうぎょ:700
すばやさ:50



戦士「これも年の功ってやつかね」




エルフ「魔力もタフネスも大したもんだね。でも、どうせ火に弱いんでしょ!」ダッ


エルフの『火炎乱舞』!


トレント<<ブゥゥゥン……


戦士「っ!」


トレントの『凍結水』!


バシュッ!


戦士はエルフを庇った!


戦士「ぐっ……すげえ水圧……っ!?」パキキ……ッ


エルフ「心配しないで! 火炎魔法の魔力で溶かせるから!」ジュゥゥ…


戦士「ありがとよ……!」



トレント<<バキキッッ……!


トレントの『枝突き』!


戦士はエルフを庇った!


戦士「危ねえな……!」





エルフ「水と氷の魔法を使おうが、弱点が火なのには変わりないね!」


戦士「俺が庇う! 大技かましてやれ!」


エルフ「しっかり盾になってよ!」


エルフは杖の先に魔力を溜めている!


トレントの『凍結水』!


戦士はエルフを庇った!


戦士「ぐぅ……! 決めてやれ!」パキキッ


エルフ「はっ、当然……!」ググッ



エルフ「灰になれ!」カッ



エルフの『滅撃・炎』!



ジュウウウゥゥゥウッッ!


トレント<<ザワザワ……ッッ!



戦士「よしっ、効いてるぞ……っ」パキキッッ


エルフ「(ちっ、これで仕留めたかったんだけど……)」



トレントの『のしかかり』!



エルフ「やばっ……」


戦士「エルフっ!」どんっ!


戦士はエルフを庇った!


ドシャァッ!


エルフ「戦士!?」


戦士「だ、大丈夫だ……耐えてる……ぅ……」パキキッッッ



エルフ「(どうする! 戦士を助け……いや間に合わない。ここはへし折る……!)」ググッ……



エルフ「さっさと肥料になれ、この老木がぁっ!」



エルフの『滅撃・炎』!



トレント<<ウゾウゾウゾウゾ…………バキキッッ……ズゥゥゥンッッ!



トレントを倒した!



エルフ「はぁはぁ……ねぇ! くたばってないよね!?」


戦士「あっぢぃぃ……!」ブスブス……


エルフ「……氷も溶けて一石二鳥じゃん?」ほっ





エルフは『トレントの果実』を二つ手に入れた!


エルフ「ふへ、ふへへ……800G。しかも2個。おーい、商人……っ!?」


商人「エ、エルフさん……戦士さん……っ」ガタガタ…



ならず者冒険者A「へへっ、動くなよ、てめーら」


ならず者冒険者B「このガキが死んでもいいのか?」


戦士「……お前ら、どういうつもりだ」


ならず者冒険者C「なーに、ちょっとしたお願いだよ。俺たち、金に困ってんだわ。そんで可哀想な俺たちに『膵島草』とその『トレントの果実』とやらを譲って欲しいんだわ」ニヤニヤ…


エルフ「ああ?」


冒険者D「逆らわないでよぉ。仲間の首が飛んじゃうよぉ?」


商人「ひっ……!」ブルブル…



戦士「……分かった。エルフ、それを」


エルフ「……ちっ!」ぽいぽいっ


ならず者冒険者A「へへっ、これが800Gもすんのか。膵島草が奪えればめっけもんだと思ってたが、こいつは思いがけない報酬だぜ」


エルフ「……アンタら、ロクな死に方しないよ」


戦士「早く商人を離せ」


ならず者冒険者A「いやいや、考えてみろよ? このまま無事なら俺たちは同じ船で帰るんだぜ? 臆病でか弱い俺たちは怖くて怖くて仕方ないわけだ」


ならず者冒険者B「だからお願いだよ。そこのお嬢ちゃんに魔法を使われちゃ困るからまず杖を置いて貰おうか? 戦闘を見てると杖を使わなきゃ魔法使えないみたいだしなぁ?」


エルフ「(こいつら、どうせ私たちをここで始末する気だ! それなのに武器を手放したら……)」


戦士「……エルフ」


エルフ「……ちっ」コロンッ


ならず者冒険者A「次にそこの大男くん、両腕を折らせてくれや」


エルフ「お前らぁ……!」


ならず者冒険者C「おいおいこのガキが死ぬぞ? ほら、ナイフが首に食い込んでるよ?」グイッ


商人「あ、あ……!」ツゥ……



戦士「……分かった」



エルフ「……このバカっ」



ならず者冒険者A「ほら、そこにうつ伏せになれよ。抵抗するとこのチビが余計痛い目見るぜ」


戦士「……」どさっ


ならず者冒険者D「えへへぇ、もう冒険できないねぇ?」


ならず者冒険者B「へへへ……」


エルフ「…………」ギリッ



ならず者冒険者BとDは戦士の腕を武器で何度も叩きつけた……!



戦士「…………ッッ」



商人「ぁ……ひっ……」


エルフ「…………」



戦士「っぅ……」


ならず者冒険者B「なんだこいつ、やけに頑丈だな」はぁはぁ…


ならず者冒険者D「本当に人間かなぁ?」


ならず者冒険者A「(まあ、これであの男は無力化したか。エルフは高く売れそうだし殺すには惜しいが、まあ、殺す前にこの人質使って愉しませてもらうか)」


ならず者冒険者A「じゃあ、次はお嬢ちゃん? そんな睨むなよ? ちょっと仲良くしようぜ?」


エルフ「…………」


ならず者冒険者B「おっ、この男、なんか持ってるぞ?」


ならず者冒険者D「木の箱だぁ」


エルフ「……!」


ならず者冒険者A「おい、あれはなんだ」


商人「あ、あれは……『祝福のオルゴール』です。き、聞いた人を幸せにする音色を鳴らします。う、売値は1000Gです」


ならず者冒険者B「てめえ! レアアイテムを隠し持ってやがったのかよ! ふざけんな!」ガンッ


戦士「っ……」



ならず者冒険者A「へっ、高いもんだな。どれ、聞いてみるか」カチチッッ……カチチッ


商人「……」ゴクッ



パカッ


『狂気のオルゴール』が鳴り始めた!


商人「うわぁぁぁっっ!」だっ


ならず者冒険者C「てめ……なんだこの音……は」グラッ


ならず者冒険者たちは混乱した!


ならず者冒険者たちは同士討ちを始めた!


戦士「しょ、商人……大丈夫か……」ぜぇぜぇ…


商人「ごめ、ごめんなしゃ……」えぐっ…



エルフの『回復魔法』!


戦士「いだだっ!」


エルフ「我慢しろ! くそっ……ムカつく……ムカつく……!」シュゥゥ…


・・・

ならず者冒険者Aを倒した!

ならず者冒険者Dを倒した!

ならず者冒険者Bを倒した!


ならず者冒険者C「……っ? なっ、おい、何がどうなって……!」


エルフ「はっ、同士討ちしたんだよ。お仲間同士のチャンバラは楽しかったかい?」


ならず者冒険者C「て、てめぇらぁ……!」バッ



エルフの『爆杖殴打』!


ならず者冒険者Cを倒した!



ならず者冒険者C「ぅ……」


エルフ「……」すっ


ゲシッゲシッゲシッ!


エルフ「お前らなんか死ね! 死んじまえ! このゴミどもがっ!」げしっ


ならず者冒険者C「ぅぅ……」ピクピクッ


戦士「やめろ!」ぐいっ


ズキッ


戦士「いつつ……」


エルフ「完治してないんだから無茶すんな!」


戦士「……とにかくやめろ」


エルフ「でもこいつら……」ギリッ


戦士「腹が立つのは分かる。でもお前が同じことするな」ぽふっ


エルフ「……ちっ。気安く頭に触んないでよ変態」ぷいっ


商人「……」


戦士「商人の首の血も止まったな。無事で良かった」ぽふっ


商人「ほんとに、ごめんなさい……っ」ぼろぼろ…


戦士「お前は悪くないから……むしろ俺が……」


エルフ「……ああもう! この話はもういい! みんな悪い! 私も戦士も商人も悪い! 後で反省会するからね!」


戦士「……ああ」


商人「はい……」ぐすっ




エルフ「500G草と800Gの実は回収、と。こいつら縛って放置でいいよね?」


戦士「いやだが、そうしたら魔物に襲われて死ぬんじゃ?」


エルフ「こいつらが死のうがどうでもいいよ。むしろ死んでくれって感じ」


商人「生きてたら絶対に仕返しに来ますよ……」


エルフ「あっちから仕掛けてきた分際で復讐とかどこまでもカスだね。魔物の肥やしにでもなってろ」


戦士「官憲につき出すにも連れてくのがまず無理だろう。俺もまだ腕が万全じゃないしな」ぐっ


エルフ「ばかっ! 無理に動かすな!」


戦士「無茶はできないが少しは戦えるさ」


商人「が、頑丈ですね……」


戦士「それだけが取り柄だからな」ぐっ


エルフ「だから無理に動かすな! ほんとバカ!」




エルフ「ったく……こいつらを丸腰にしてもダンジョンなら武器も手に入るし、やっぱり縛って放置が正解だよ。仕方ないじゃん」


商人「僕もそうするべきだと思います」


戦士「ううむ……」


エルフ「こいつらは悪事を働いたんだよ? 運が良ければ生き残れるだけ優しさじゃん。それか、全員の両腕を折ってく?」


戦士「……分かったよ。俺たちの身の安全のためにも拘束しておくしかないな」


商人「このトレントの燃え残りにでも押し込んでおきましょう」


戦士「もう少し目立たないところに……いや、魔物は寄ってくるかもしれないが、隠れてることに気付きはしないか?」


エルフ「なんでもいいよ。こんなゴミたちにこれ以上時間を取られるのが苦痛だよ」



戦士たちはならず者冒険者たちを拘束して、トレントの亡骸に隠した



エルフ「……だいぶ陽が落ちてきたね。海岸まで戻ろうか」


商人「そうですね。小島なら魔物に出くわさな……いや、襲われましたね」


戦士「ここよりはマシだろ」



エルフ「さて、早く行こうか」


to be continued...



○戦士メモ

・メイジマッシュ:キノコ型の魔物。集団で行動している。複数で魔法を連発してくるため危険。

・トレント:非常に手強い魔物だった。おそらく果実を餌に寄ってきた魔物や冒険者を養分にして成長してきたのだろう。相変わらずエルフの魔法には助けられてばかりだ。



○エルフメモ

・人質:次からは人質になったら自己責任ということにしたい。でも、お人好しバカが従うわけないし、商人にもっと自衛するように鍛えるのが一番現実的かな。

・ならず者冒険者たち:地味に良い装備してたから羽振りはいいんだろうね。おそらく同じような手口を今までも行なってきたんだろう、ムカつく。戦士がゴネるから直接始末はしなかったけど、どうせ魔物に喰い殺されるはず。『いんがおーほー』というやつだ。

・回復魔法:外傷の治りを促進するけどひどい怪我には痛みも伴う。仕方ないね。

・反省会:帰ったら戦士の奢りでご飯を食べながらお説教タイムだよ。



○商人の鑑定

・狂気のオルゴール:売値5G。聞くものを混乱させる代わりに攻撃力を上げる危険なオルゴールです。1度使うと壊れます。耳を塞いで大声をあげたりするなどして音色を聞かなければ効果はありません。今回は助けられました。

・トレントの果実:売値800G。トレントは大地の栄養と数多の生物の養分を吸って育ちます。この果実にはその養分が凝縮されていて、その芳醇な甘さは既存の果物で比肩するものがないと評されます。王侯貴族が大事な祝いの席で食べる貴重な果物です。

・・・

エルフ「目印を消えづらいものにしておいて良かったよ」


商人「本当ですね」


戦士「暗くなる前に行くぞ」


カサ……


エルフ「……ちっ」


エルフは杖に魔力を溜めている!


「ま、待てよ! 魔物じゃねえ!」ガササッ


エルフ「……んん? 黒チビじゃん」


赤魔「はぁはぁ……」


商人「(Aルートと僕たちのBルートはかなり道が隔たってるはずなんですけどね)」


戦士「傷だらけじゃないか。どうした? 盗賊は?」


商人「……話をするにしてもまずは急ぎませんか」


戦士「あ、ああ」


エルフ「それじゃ」スタスタ…


赤魔「あ、おい……っ」



エルフ「…………」スタスタ…


赤魔「…………」スタスタ…



エルフ「……なんでついて来てんの?」


赤魔「べ、別にいいだろ!」


エルフ「こちとら、今は他所と馴れ合う気分じゃないんだよね。さっさとどっか行ってくれる? じゃなきゃ、追っ払うよ?」


戦士「エルフ、どう見ても赤魔は迷子だ」


赤魔「うっ……」


戦士「さっきの今で気が立ってるのは分かるが仕方ないだろ」


エルフ「……ちっ」スタスタッ


赤魔「くそっ……いだっ」ズキッ…


戦士「足ケガしてるのか?」


赤魔「べ、別にこれくらい……くそっ、盗賊がいれば回復してくれるのに……!」ズルズル…


エルフ「黒エルフのくせに回復魔法も使えないの?」ぷっ


赤魔「お、俺が使えなくても盗賊が使えるからいいんだっての!」



戦士「俺に乗れ。背負ってやる」


エルフ「はあ!? 君さぁ、腕が完治してないっていってるでしょ!?」


戦士「赤魔くらいなら背負えるだろ。これ以上歩けないようだしな」


赤魔「い、いや、俺はまだ歩ける! ……っ」ズキズキッ


戦士「こういう時は助け合いだろ。ほら」


赤魔「……ありがと」


エルフの『回復魔法』!


赤魔「!」


エルフ「自分で歩け!」


赤魔「あ、ああ。…………ありがとよ」


エルフ「あとで治療代100Gね」


赤魔「んな!?」



・・・
【異形の島・メジャールート分岐路】


盗賊「……赤魔!」タタッ


赤魔「盗賊!」


盗賊「……このバカが!」ガチッ


赤魔「いだだだだ……!?」


盗賊「危険だっていったろうが! 無茶するな!」


赤魔「ご、ごめんって……!」


エルフ「~~♪」


商人「あ、あの、早く小島まで戻りましょうよ」


戦士「もうかなり薄暗いもんな」



・・・
【最寄の小島】


盗賊「うちのバカを保護してくれて本当に感謝する」


エルフ「ほんとだよ。治療代と面倒を見た料金として200Gね」


赤魔「てめっ……」


盗賊「今はあいにく持ち合わせがないが……何か金になるアイテムはあったろうか」ごそごそ…


戦士「いや、こいつの冗談だ。1Gも払う必要はない」


エルフ「冗談じゃないけど」


商人「うーん……」


戦士「こういうのはお互い様だろう」


赤魔「アンタいい奴だな! 気に入ったぜ!」にっ


盗賊「……だが助けられっぱなしは性に合わないんだ。これとか価値がありそうだけど」すっ


商人「これは『絹蛇の皮』ですね。売値は1Gです」


盗賊「ぐ……じゃあ、こっちのアイテムはどうだ。初めて見る食べ物だし高いんじゃないか?」すっ


商人「これは『透明煎餅』ですね。売値は0.1Gです」


盗賊「0.1G......」



赤魔「盗賊は腕はいいんだけど、アイテムを見る目がゼロなんだよ」


盗賊「キラキラしてるものは高いでしょ」


赤魔「そう言っていつも安く買い叩かれてるだろ」


エルフ「というかキラキラしてる食べ物って不味そうなんだけど」


盗賊「…………」いじいじ…


赤魔「ああ、拗ねた」


エルフ「君たち実力の割にはあんまり実入りはよくなさそうだね」


商人「……それにしても他の冒険者たちはどうしたんでしょう? 来た時はあんなにいたのに」


戦士「ビバークするなら小島に来そうなもんだがな」


赤魔「魔物にみんなやられたよ。情報で聞いていたよりもずっと魔物が多かったよ」


盗賊「しかも情報にない種類の魔物ばかりだったわね。未開の奥地から出てきたか」


戦士「もしくは新種かもな」


盗賊「新種?」



商人「飛竜の塔に行った時に普段いない魔物がいたんです。そいつらは大きな黒くて丸い球体から出てきていました」


赤魔「マジかよ」


商人「その時の欠片も取って来たのですが、アイテムじゃないんでしょう。頭に特に何も浮かびません」


盗賊「ちょっと見せてもらえるか?」


商人「あ、どうぞ」


盗賊「…………」


赤魔「心当たりあるのか?」


盗賊「いや。見せてくれてありがとう」


商人「いえいえ」


エルフ「もし飛竜の塔と同状況じだとしたら、このダンジョンの生存率は更に下がるかもねぇ」


戦士「冒険者ギルドに伝えておくか」



赤魔「やれやれ、今回は収穫が無かったな。もう少し奥まで探索できてりゃ……」


盗賊「そうやって勇み足だからトラップで吹き飛ばされるんでしょ」


赤魔「うぐ……」


エルフ「なに? どんなトラップ」


盗賊「踏んだ瞬間、バネ付き床でポーンッと」


エルフ「だっさ」


赤魔「う、うるせー! 盗賊もベラベラ言うな!」


戦士「無事でよかったじゃないか」


赤魔「だよな!? いやぁ、お前ほんとにいいやつだ! そんな性悪女よりも俺たちと組まないか?」


エルフ「はあ!?」


戦士「悪いがそれは断るよ。共闘なら喜んで受けるが」


エルフ「さっきの今でその発言って、君は反省や学習という言葉を知らないのかなぁ!?」


戦士「さっきの追い剥ぎたちのことか? そうだな……運が悪かったな」


エルフ「なにそれだけですませてんの!? 下手したら全員死んでたんだからね! 分かってる!?」


盗賊「リスクには適切に対処するべきだ」


エルフ「ほんとだよ!」


戦士「わ、悪かったよ。俺が迂闊だった」


戦士「(どうすればよかったんだか……まあ、いい)」



赤魔「このまま手ぶらで帰りたくねえなぁ……」


盗賊「気持ちは分かるけど仕方ないだろ」


エルフ「(商人、ちゃんと管理してよ?)」ヒソヒソ…


商人「(エルフさんの方もお願いします)」ヒソヒソ…


赤魔「そっちは何か収穫はあったか?」


エルフ「え、い、いやぁ、大したアイテムはなかったよ」えへっ


商人「(嘘つくのヘタ!?)」


赤魔「ふーん……あーあ、異形の島も稼げねえな。次はどうする盗賊?」


盗賊「…………」


赤魔「盗賊?」


盗賊「ん、ああ、いや。ぼーっとしてただけ」


赤魔「…………」


・・・
【翌日】


商人「とくに魔物が襲ってくることもありませんでしたね」


戦士「海風も大したことないし、地面も柔らかいからテントも快適だったな。おかげで身体も万全だ」


エルフ「今回の帰還者は私たちだけかな?」


盗賊「もう少しくらい島の中でなんとか生き延びてるかも」


赤魔「お、船が来たぞ!」



冒険者たち<<ゾロゾロ……


エルフ「今回も多いねぇ」


商人「危険なダンジョンなんですけどね」


赤魔「さ、帰ろうぜ」


戦士「二人は帰りも船酔いだな」


赤魔・エルフ「うっ……」



<<それでは出航します!


エルフ「やっと帰れるぅ」


戦士「疲れたが、前評判ほどじゃなかったな」


商人「ふぅ……船内がスカスカで気楽ですね」


赤魔「なぁ、盗賊見なかったか!?」


エルフ「あん? 知らんがな」


戦士「トイレでもしに行ったか?」


商人「デリカシー……」


赤魔「いなかった! あいつが言伝なしに単独行となると……ちっ! また独りで何か抱え込んでやがるな!」


赤魔は船を降りた!


<<お客さん!?



エルフ「2日連続でダンジョン攻略とかしんどいでしょ。なに考えてるんだか」


戦士「……」スクッ



エルフ「おいおい待ちなよ。ウェイウェイ」


商人「せ、戦士さん、もしかして……」


戦士「お前らは先に帰っていてくれ」


エルフ「出たよ悪い病気! ダメですー! チームのリーダーとして拒否しますー!」


商人「少し考え無しすぎますよ!」


戦士「……悪いな。明日には帰る」ダッ



戦士は船を降りた!



エルフ「あ、あのバカぁ……!」


商人「戦士さんはどうして今まで生きて来られたんでしょうね……」


エルフ「…………~~~~っ!」


ダンッ!


エルフ「……」ズカズカッ



エルフは船を降りた!



商人「えぇ……」




<<あわわ、今回の帰還者1名!?



商人「(僕は足手まといだし帰ろう……)」


商人「(……でも、もしかしたら未知のアイテムが見つかるかも?)」


商人「(今回の失態で、次はもうダンジョンに連れていってくれないかもしれないし)」


ポコポコポコポコ……



再び島を訪れる確率<二度と来ない確率

このことから

船に留まることで確実に得られる満足<船を降りることで得られる満足の期待値

よって

船に留まる<自分も降りる

よって

船を降りるのが最適である



チーン!


商人「みなさん待ってください!」ダッ



商人は船を降りた!



<<今日も帰還者ゼロ!?


to be continued...



○戦士メモ

・トラップ:生命の危機に繋がるモノからふざけたモノまで幅広い。ふざけながら生命の危機に繋がるモノもあるから要注意だ。

・テント:海岸だと身体がベタつくが、まだコンディションがいい。岩場で傾斜だと目も当てられない。



○エルフメモ

・お人好し:戦士はこれだと思っていたけど最近は本当にバカなだけだと気付いた。アイツと1年も一緒にいた仲間とやらがすごい。今度グチ大会でも開きたい。



○商人の鑑定

絹蛇の皮:売値1G。蛇の皮には金運を上げる効果があると言われています。そのためこの実用性のない蛇の抜け殻にも価格がつくのです。信仰を売り物にするのは“うまい”ビジネスだなぁと思います。もっと課税しろ。

・透明煎餅:売値0.1G。この煎餅を食べると我々は食事の際に見た目を含めて美味しさを感じるのだなぁと実感します。味はよくある煎餅です。


・・・

盗賊「……」タンッ


ハンニャレプタイルの『噛み付き』!


ミス!


盗賊の『死の針』!


全ての生物を殺す猛毒!


ハンニャレプタイルを倒した!


盗賊「はぁはぁ……長引かせてくれたわね」


ズゥゥン……


盗賊「!」


ハンニャドラゴン「シュー……」


盗賊「(……これは相手したくないわね。やり過ごしていきたいけれど……)」


ハンニャレプタイルの群れ<<シュルルル……


盗賊「(結構まずいな……)」


盗賊「……くっ、やるしかないか」



赤魔「ーーやっと見つけた!」ザッ



盗賊「赤魔!? なんで残ってるの!?」


赤魔「それはこっちのセリフだ! このアホ!」


戦士「ちょうどいいタイミングだな。特にケガはないようで良かった」ボロッ


エルフ「……」つんっ


盗賊「(むしろそちらが重傷なように見えるけど……)」


商人「あわわ、またギルドの報告にない魔物ですよ! つ、強そうです……!」ささっ


エルフ「ちっ……とりあえず倒すよ!」


エルフは杖の先に魔力を溜めている!


エルフ「冬眠してろ爬虫類!」



エルフの『氷点零』!



パキキキキ……ッッ


ハンニャレプタイルの群れは凍えている!



赤魔の『疾風剣』!



盗賊の『加速蹴り』!


盗賊は更に加速する!



戦士の攻撃!



商人「(……戦士さんの攻撃だけなんか地味だなぁ)」



ハンニャドラゴン「シュルルル……」


ハンニャドラゴンの『尻尾薙ぎ』!


戦士「やらせるかっ!」ガキィッ


戦士はパーティを庇った!



ハンニャレプタイルの群れは赤魔に襲いかかって来た!


戦士「効くかぁぁっ!」


戦士は赤魔を庇った!



エルフの『氷点零』!


赤魔の『地震剣』!


盗賊の『加速蹴り』!

盗賊の素早さは最高潮に達する!


戦士の攻撃!

クリティカル!



ハンニャレプタイルの群れを倒した!



エルフ「すぐいいとこ取りする!」


戦士「そう言うなって……!」



ハンニャドラゴン「シュゥゥゥ……ッッ」


ハンニャドラゴンの『麻痺の魔眼』!

戦士は麻痺した!


戦士「ぅぁ……!?」


エルフ「うおいっ!?」



盗賊「……崩す!」


盗賊の『神風蹴り』!


ハンニャドラゴン「シュ……!?」グラグラ…


ハンニャドラゴンは無防備だ!

盗賊の素早さが元に戻った!



エルフ「がら空きだ!」


エルフの『氷結突き』!

クリティカル!



赤魔の『火炎剣』!

クリティカル!


赤魔「今のは相当効いてるぜ!」



戦士は痺れて動けない!


戦士「(攻め時なのにすまん……というかこのままじゃ庇えない。俺を狙え! 頼むからエルフを狙うなよ……!)」ビリビリ…




ハンニャドラゴン「シャアアアアッッ!」ギロリッ


エルフ「げっ……」


ハンニャドラゴンの『諸刃鞭打』!


クリティカル!


エルフ「みゃふぎゃっ!」


エルフは力尽きた!


ハンニャドラゴン「シュゥゥ……!」


ハンニャドラゴンは反動でダメージを負った!



戦士「ぐっ……エルフ!」ぐぐっ……


戦士の麻痺が治った!



エルフ<<チーン……


商人「エルフさぁん……!」ずるずる…


商人はエルフを安全地帯まで運んだ!



盗賊の『加速蹴り』!


盗賊は更に加速する!



赤魔「これで倒れろ……!」


赤魔の『流水剣』!


ハンニャドラゴン<<ズルズル……


赤魔「……まだか!」



戦士「でやぁっ!」


戦士の攻撃!



ハンニャドラゴン<<グラァ……バタタ……ッ!



ハンニャドラゴンを倒した!



赤魔「よしっ!」


盗賊「ふう……」



戦士「エルフは大丈夫か!」


商人「は、はい。今、気付薬を飲ませます」クイッ


エルフ<<グビッ


エルフ「へびゃぁっ!?」バッ


エルフは復活した!


エルフ「まっず!? まっずーッ!?」


戦士「良薬は口に苦いからな」


エルフ「やかましいわ! ちゃんと私を庇えよ! なに麻痺ってんだ!」ゲシッ


戦士「すまんな……」



盗賊「……」


赤魔「おい盗賊! どうして勝手に船を降りたんだよ!」


盗賊「あの黒石が置かれてないか気になったのよ」


商人「黒石……昨日見せたあの欠片ですか?」


盗賊「そうだ。あれに心当たりがあってね。ずっと追いかけているヤツと繋がってるはず」


赤魔「それって……そうだったらお前だけの問題じゃない!俺たちの問題だ! 俺たちは親友だろうが!」


盗賊「…………」


エルフ「取り敢えずもう少し詳しく説明してもらえる? 私たちも探索ついでに黒石探すのを手伝うからさ」


戦士「ああ……」ぼろぼろっ


盗賊「あ、ああ。……大丈夫か?」


戦士「ああ。丈夫な体だけが取り柄だからな」


盗賊「……そう」




・・・

盗賊「転移石。それが例の黒石の名前だ」


商人「転移というと……別の場所に移動することができると? 未知の魔物たちは石が生み出してるわけでなく、別の場所から移ってきたと?」


盗賊「まあ、大体そう考えていい。ただし重要なポイントが二つある」


戦士「何だ?」


盗賊「一つは原則として転移が機能する場所がごく限られていること」


エルフ「ダンジョンでしか使えないの?」


盗賊「それは十分条件だ。ダンジョンが出現しうる場所でしか反応しないんだ」


赤魔「とびきりエネルギーが溜まりやすい場だな」


盗賊「そういうこと」


エルフ「そういえばダンジョンってそうだよね。魔法が使いやすい」


戦士「そうだったのか」←魔法の才能皆無



商人「それが何故かも気になりますけど、もう一つは何ですか?」


盗賊「もう一つは転移石による転移の対象は異世界の物質に限るということだ」


エルフ「うお、ブチこんできたね」


戦士「異世界……?」


盗賊「この世のものじゃないアイテムやら魔物やらがどんどんと湧いてくるのもダンジョン自体が異世界から移動した異物で、未だに異世界との接点となってるからだ。むしろ異世界が存在しない方がよほど不自然だろう」


商人「異世界はないのが不自然ってすごい言葉ですね。でも、まあ確かにそうかも」


エルフ「そんで? そのナントカ石が何だっていうの?」


盗賊「転移石は人工物なんだ。そして転移石を作ったのが、私の探してる人間だ」


商人「ああ、それでもし石があればその探してる人の手がかりが見つかるという話になるわけですね。痕跡が残ってたらだとか」


盗賊「察しがよくて助かるわ」



戦士「なんでその人を探してるんだ? 大切な人なのか?」


盗賊「……まあ、そうね」


赤魔「……」


エルフ「あれでしょ? 探してるのは元カレで未練タラタラで元サヤ狙いか復讐なんでしょ?」


商人「ソープオペラですね!」


赤魔「きゅ、急に下ネタ言うなよ!」


エルフ「いや、下ネタじゃないから。戦士がよく行く“たまたま”女性と出会ってイイコトしてもらうお風呂屋さんとは無関係だから」


戦士「行ったことねえよ!」


エルフ「え、まだ童貞なの?」


戦士「なぜそうなる……いや、ノーコメント」


商人「(戦士さん……)」




赤魔「……ど、童貞とかそういうのは声を大きくして言うことじゃないだろ」カァァ…


エルフ「カマトトぶってるねぇ……それで探してる人とはどう言う関係?」


盗賊「今の話の流れで言うのはちょっと憚られるわ」ハァ…


エルフ「あーあ、戦士のせいだよ」


商人「戦士さん……」


戦士「なんでだよ!? 俺は悪くないだろ!」


赤魔「そ、そんなことより先に進もうぜ!」カァ…


エルフ「ぷぷっ、これくらいで顔を赤くしてるとかウブだね」


盗賊「赤魔は相変わらず天使ね(さっさと進むぞ)」キリッ


商人「(これは本音と建て前が逆なあれですかね……)」」


戦士「生存率25%の危険なダンジョンだというに、どうしてこんな暢気な会話をしてるんだか……」


to be continued...



○戦士メモ

・ハンニャドラゴン:まさか麻痺させられるとは俺も情けない。簡単に崩されないように気を付けねばいけない。

・ハンニャレプタイルの群れ:四人で戦えば大したことないが、俺とエルフだけだったら手こずっただろう。

・転移石:異世界から物質を転移させる人口石らしい。使用可能場所はダンジョンのようにエネルギーに溢れている場所に限るそうだ。報告にない魔物がダンジョンに多くいるため、設置されている可能性がある。



○エルフメモ:


・気付薬:苦いのか甘いのか辛いのかはっきりしないがマズいことだけは確かだね。あれだけマズければ嫌でも目を覚ますよ。

・異世界:いきなり異世界とか言われても正直困るよ。なんでも有りじゃん……そもそもダンジョンがそうか。

・泡のお風呂屋さん:ギャンブルの借金が返せなきゃここに沈められるところだった。怖い怖い。

・童貞:戦士のことだね!


・・・

商人は『瞬足シューズ』を手に入れた!

商人は『鯨油の無限壺』を手に入れた!

商人は『限定ICカード』を手に入れた!



商人「わぁ……珍しいアイテムがいっぱいですね!」むふーっ


戦士「(キワモノばっかりな気がするが……)」


エルフ「500G草や800Gの果実はないかな」



赤魔「アイテム見つけるの早いなー、俺たちよりはるかに目敏いな」


盗賊「私たちだけだと警戒に気を割くから仕方ないわよ」



商人「あそこにもアイテムです!」


戦士「うお、本当だ」


エルフ「よくあんなの気付くね」



盗賊「……やっぱり単純に見つけるのが上手いわね」




盗賊「ストップ。その大岩は変だ」


戦士「ん?」


エルフ「そう?」


盗賊「形状と色味が他と違う。『爆弾岩』だな」


商人「爆弾岩というと……近くに火気があると引火して辺り一帯を火の海にするトラップですね」


赤魔「こわっ……」


エルフ「もし岩陰で野営したら、大惨事だね。黒チビ、火炎使わないでよ」


赤魔「その呼び方やめろよ!」


戦士「爆弾岩が他にも存在するかもしれないと考えると恐ろしいな。さっさと岩山地帯から抜けてしまいたい」


商人「販売されている地図だと岩山地帯を抜けた辺りで途切れてますね」


エルフ「奥に謎のオブジェがあって、それを囲ってる巨大なボスがいるんでしょ」


盗賊「このルート上に報告にない魔物が多く出てくるということは転移石があるとしたらそこだろう」


エルフ「お約束みたいに奥地にあるねぇ」


赤魔「やっこさんはそれだけ転移石を壊されたくないんだろ」



エルフ「……!」サッ


戦士「敵か……!」チラッ



ヒトクイムシ<<バリッバリツ…


<<ぎゃぁぁぁ……っっ



商人「ひゃぁぁ……っ」ガクガク…


エルフ「冒険者? 数日間迷っていたのかな? あれはもう助から……」



戦士はヒトクイムシへと駆け出した!



エルフ「あ、あのバ……ッ!」パクパク…


盗賊「彼は随分と危なっかしい行動を取るな。ダンジョン冒険者には向いてないだろ」


赤魔「でも助けるのには賛成だぜ!」



エルフ「…………」


商人「(ま、魔物よりも、こ、こわ……っ)」


・・・

ヒトクイムシを倒した!



戦士「大丈夫か!」


返事がない
ただの屍のようだ


盗賊「……間に合わなかったか」


エルフ「ふう……戦士くん、ちょっとお話をしましょうか」


商人「……」ガクガク…


戦士「あー……急に飛び出して悪かった」


エルフ「謝ればそれで済むと思ってるのかな?」


戦士「……すまん」


エルフ「…………ふう。君さ、自己犠牲で自尊心を満たしたいとでも考えてる?」


戦士「そんなつもりは……いや、それでいい」


エルフ「あ? ふざけんな。ちゃんと答えろ」


赤魔「(ガチギレかよ……怖っ)」



戦士「……助けられる命は救いたい。困っているやつを助けたい。俺はそうした信念をもって生きていて、それを達成しようと努めている」


エルフ「そうした生き方をするために君は私たちを危険な目に遭わせたり、私たちを不当に傷付けるんだね?」


戦士「そんなつもりは……すまんな」


エルフ「だから謝ってほしいわけじゃねえんだよ。分かんねえのか。そうした欺瞞に満ちた利他心で行動すんのをやめろって言ってんだ。脳みそガバガバかよ」


戦士「…………」


エルフ「どうして同じ認知能力を持ってる私たちが、ここまで噛み合わないかな? 私が悪いの?」


戦士「そんなことはない。……俺たちはもう組まない方がいいかもな」


エルフ「なんでそうなるんだよ!」


商人「あ、あの……少し良いですか!?」


盗賊「(あの空気に割り込むとはやるわね)」


商人「えっと……えーっと……ちょっとだけ僕の話をさせてください」


エルフ「…………」



商人「この前、アイテムの交易のお手伝いとして港に行ったんです」


商人「そこで僧侶さんの集団に出くわしたんです。彼ら彼女らはバケツを持っていました」


商人「バケツの中には水と生きた魚が数匹入っていました」


商人「彼らはお祈りをした後に魚を海に返しました。お店の先輩によると毎週お馴染みの光景だそうです」


商人「僕は気になったから彼らに何をしてるか聞きました」


商人「『神の御許において収奪されんとした生命を救っている』と彼らは言いました」


商人「その魚は市場で10Gで買われた魚でした。彼らは10G分の死ぬ定めにあった魚たちを海に逃がしてあげていたんです」



赤魔「……えーと? どういうことだ?」



商人「善意って美しいと思います。彼らはその信念に従って魚を助けていました。彼らの善意は本物だったと僕は思います」


商人「戦士さんがいかに捉えていようと、戦士さんの誰かを助けようとすふ行動は美しい善意に違いないも思います」


商人「同時に思うのです。彼らは毎週20Gを支払って数匹の魚を逃している」


商人「もしもその2倍のお金を漁師に払って今日は魚を捕らないでくれと頼んだら、きっと購入した以上の魚を助けられたでしょう」


商人「善意は美しいです。けれど、美しいだけじゃダメなんですよ」


商人「いっぱい考えて上手いやり方を探さなきゃダメなんです。それをしないなら……やっぱりそれは怠惰な心が生み出した自己満足になっちゃうんです」


商人「……戦士さんはそういう人じゃないと思うんです」


戦士「……つまり今の俺の行動は思考が停止した安直で非効率な自己満足に過ぎないと?」


商人「この際、自己満足とかどうでもいいんです。非効率なのがダメなんです」


盗賊「へえ……言い切るわね」



商人「せ、戦士さんの身体は一つなんです。その身体で守れるものはきっと戦士さんが思ってるよりもずっと少ないんです」


商人「それなら戦士さんは実行可能な上手いやり方を見つけなきゃいけないんです」


商人「エルフさんはそれを怠ってる戦士さんを怒ってるんですよ。出来ないことをやろうとして非効率になってるのが許せないんです」


エルフ「ん、んー……? そうなのかな……? そうかも?」


戦士「頭の悪い俺には難しいが、何となく言いたいことは分かった……のか?」


盗賊「理想は持っても良いが、もっと地に足をつけて現実的に考えて行動しろってことだろう」


商人「そ、そうです」


戦士「……なるほどな。確かにそういう考えは俺にはなかったかもしれない……そうか……」


商人「戦士さんは、話し合えば人は分かり合えると思ってるんですよね?」


盗賊「……」


戦士「ああ」


商人「僕たちももっと分かり合う必要があると思います。帰ったらチームエルフの原則を議論して作りましょう。きっと僕たちには必要なことだと思います」


戦士「そうだな……」



エルフ「暫定ルールは『チームのメンバーの命を優先する』ね。分かった?」


戦士「ああ。……エルフ、悪かった。すまん」


エルフ「……まあ、私だって戦士のそういうところ嫌いじゃないけどさ。パーティーを危険に晒して欲しくないよ。生命あってなんぼなんだからさ」


戦士「……そうだな」


赤魔「俺は戦士のそういう人情に厚いところ好きだから、無茶しすぎなきゃこれからもそのままでいて欲しいけどな」にっ


戦士「ありがとな……」


商人「(丸く収まって良かったです)」ほっ



エルフ「あと、帰ったらここにいる全員にグランドホテルレストランのフルコース奢ってね」


戦士「無茶を言うな! 破産するわ!」


赤魔「ほんとか!?」キラキラッ


戦士「無理だからな!?」


エルフ「無い袖を振ろうとしてる戦士さんに不可能はないよ!」


戦士「いや、ほんと悪かったって……」


to be contonued...

○戦士メモ

・爆弾岩:ダンジョンで大爆発の音と振動に出くわしたら爆弾岩が爆発した可能性がある。威力は凄まじく、半径100メートルにいる生物は致命傷を負うため探索の際には用心しなければいけない。

・ヒトクイムシ:イモムシのうよな大型の魔物だ。人さえも捕食する危険な魔物であるため、注意する必要がある。



○エルフメモ

・謎のオブジェ:ダンジョンの奥にあるらしいよ。ご都合主義だなあと思わないでもないけど、奥まで行って何もないというのも虚しいから良しとしようじゃん?

・善意:商人のエピソードは基本的にパクリだそうだ(戦士にはナイショ)。まあ、商人にしては叙情的だったしそんな気はしてたよ。


○商人の鑑定

・瞬足シューズ:売値15G。ゴテゴテした意匠のスポーツシューズ。小学生男子垂涎の逸品です。コーナーで差をつけろ!

・鯨油の無限壺:売値50G。手のひらサイズの小瓶ですが、鯨の油がこれでもかというくらい出てきます。成分的には食用には適さないため、ランプや松明として使うのに適しています。

・限定ICカード:売値10G。限定と言われていますが、むしろ通常版の方が流通数が少なかったりします。そのデザイン性からコレクターが少なからずいます。端を削って武器として使えないこともないかも?



・・・

盗賊「ところでさっきの冒険者がこんなアイテムを持っていた。懐の奥に隠していたから汚いが、レアアイテムだったりしないか?」


戦士「遺体から追い剥ぎするなよ……」


盗賊「そう言われると思ったから、ここまで黙っていた」


商人「これは『真実の鏡』です。幻などを見破り、また防ぐことができます。値段が付けられないほど貴重なアイテムです。大事にしてください」


エルフ「(むむ……解析マシンと一緒の扱いか。あっちに取られたの痛いな。商人も馬鹿正直に答えなくていいのに)」


盗賊「真実の鏡……大層な名前ね」


赤魔「かっけー!」


戦士「何処かで必要になるかもな」


エルフ「はいはいフラグフラグ……」


・・・
【異形の島・フロンティアライン】


商人「ここが異形の島の地図最奥です。ここから先は冒険者がまだ入っていないということになっています」


赤魔「なんでこれより奥に行かねえんだろうとは思ってたけど納得だぜ」


<<ドロドロ……


盗賊「ここを越えていくにはあの銀色のヘドロを倒さないと無理ね。見事に道を塞いでやがる」


戦士「回避しようにも左右は急崖だからな、どうしても無防備なところを狙われる」


エルフ「逆に言えば、こいつを倒せば奥にある未知のお高いアイテムに出会えると……」


戦士「あれに勝てる算段がつかないが……」


盗賊「……! オブジェの上に転移石があるわね」


赤魔「どれどれ……うへ、あのヘドロに完全に覆われてるじゃん」


商人「あそこに到達するのは大変そうですね……」



転移石<<ズブズブ……



エルフ「ちょうど魔物が転移してきたみたいだよ。こっち来ないといいけど……」


ハンニャレプタイル<<ズブズブ……ボタッ


ジュプゥゥ……


赤魔「うおっ? 魔物がヘドロに食われてぞ……」


エルフ「助けようとか考えないでよ?」


戦士「そこまで無差別でもないって」


商人「エルフさん、強さを測ってみましょう」


エルフ「やれやれ、見たいような、見たくないような」スッ


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ


エルフ「どれどれ……」


・悪食粘獣
HP:9999
こうげき:1000
まほう:0
ぼうぎょ:9999
すばやさ:100



悪食粘獣<<ドロドロ……


エルフ「ううん……?」


戦士「なんだこのふざけたステータスは?」


商人「どうも正攻法じゃ無理みたいですね……」


盗賊「おそらく隙はある」


赤魔「えー、ほんとかよ?」


盗賊「転移石から出てきただろう魔物が実際にダンジョンの中にいるならあのヘドロが転移石から離れる瞬間があるはずだ」


エルフ「他の場所にも黒石がある可能性は?」


盗賊「それもあり得るが……しかし新種魔物の移動方向を見るにあのヘドロから生存してる確率が大きい」


戦士「暫く観察してみるか」


商人「帰りはどうしましょう……」


エルフ「結構な数の魔物が出てきてるから割と時間はかからないかも。……まあ、日没前に小島まで戻りたいからあまり時間はないけど」


赤魔「夜に寝てるとかだったらどうしようもねえな……」


戦士「祈るしかないな」


・・・

悪食粘獣<<ズズズズズズ……



戦士「オブジェの中に入って行ったぞ……」


エルフ「これは隙だらけなのかな? ちょっと怖いね」


盗賊「……私が行く。おそらく私なら不意打ちでも回避できるはずだ」


赤魔「おいおい……!」


盗賊「大丈夫だ。無茶はしない」


戦士「俺も行く」


盗賊「気持ちだけ受け取っておく。鈍足は足手まといだ」


戦士「……」しょぼん…


エルフ「へっ」


商人「き、気を付けてくださいね……」


エルフ「(というか、今ならダンジョンの奥に進めんじゃない? ……ヘドロの引きこもりが頻繁に起きるならこいつを避けるのはそこまで問題にならないはず……奥にもっとヤバいのがいるのかな)」



転移石<<ブブブブ……


盗賊「……」


盗賊の『加速蹴り』!


転移石には効果がないようだ……



エルフ「やっぱり物理的な攻撃じゃ壊せないみたいだね」


商人「それで飛竜も転移石自体は放置していたんですね」


戦士「やはりこの転移石も壊しておくべきだろう」


エルフ「そう? 放置してたらアイテムの価格が更に高くなっていいんじゃない?」


赤魔「それだけこのダンジョンが更に危険になるってことだろ?」


エルフ「リスクをとる代わりに儲ける仕事なんだからそれくらい仕方ないじゃん」


戦士「……まあ、俺に壊せない上に危険な以上は無理強いはできない」


商人「戦士さんにもそういう分別があったんですねー」


戦士「お前は俺をどんな人間だと思ってるんだ……」



盗賊「すまない、待たせた」


戦士「何か手がかりは?」


盗賊「……転移石に名前が刻まれていた。私が追っている奴の名前だった」


赤魔「……そうか」


エルフ「そいつはなんでダンジョンに転移石を設置してんの?」


盗賊「……分からない。ただそいつはおそらく多くのものにとって望ましくないことをするだろう」


戦士「盗賊がその人物を追っている理由は……」


盗賊「正義のためとかじゃない。復讐だよ」


エルフ「血生臭い話? 見つけ出してコロコロするぜ的なノリ?」


盗賊「……そうね」


赤魔「むう……」




悪食粘獣<<ズズズ……


戦士「おっと」


商人「わわ、また出てきちゃいましたね」



悪食粘獣<<ボコボコボコボコ……!



エルフ「ちょいちょい……どんどん膨張してるんだけど……!」


赤魔「……なあ、この辺りに草が生えてないのって、そこまでがこいつの生息域だったりしないよな?」


盗賊「……いや、岩山地帯は生物がいたから違うだろう。だがこの辺りは……」



悪食粘獣<<ーーーードッバァァッッ……!



エルフ「に、逃げろー!」



エルフたちは逃げ出した!



to be continued...

>>236コンマ2桁
ゾロ目:バトル・メイドロイド
ゾロ目以外:通常進行



○戦士メモ

・悪食粘獣:巨大で不定形な銀色の魔物だ。普通の攻撃では倒せないため、何かしら工夫が必要だろう。



○エルフメモ

・ステータス:しかしこの数値ってどれだけアテになるんだろう? このステータスは今の強さを表すだけで時間と共に変わっていくと思うんだよね。あと多分特殊な能力とかが測れてないんじゃないかな。何にせよ参考程度だよね。

・復讐:そんなことしてる暇があったらお金を稼いでゼイタクしたい。



○商人の鑑定

・真実の鏡:売値は貴重なため付けられません。悪意ある幻を打ち消し、真実を人にもたらします。ところで、その鏡が定義する真実と僕たちの信じる真実が食い違ったとき、それは本当に私たちにとっての真実になり得るのでしょうか。

ほい

・・・
【翌日・帰還船内】



戦士「今回の帰還者も俺たちを除いて僅か数名か……」


商人「そろそろ噂になってるかもですね」


エルフ「この調子だと生存率が下に変動しそうだね」



赤魔「あの銀色のヘドロさえいなけりゃ転移石を壊してやっても良かったんだけどな。そうすりゃ強い魔物も出てこねえだろうし」


盗賊「場所は分かってるんだ。何とでもなるだろう」


エルフ「このダンジョンは暫くいいや。他の冒険者に襲われたり散々だったしぃ」


戦士「……あいつらは結局ダメだったようだな」


商人「自業自得ですよ」


戦士「……あいつらも生きる為に仕方なくやってたのかもしれない」


エルフ「知らん知らん。そんなこと言い始めたらキリがないし後味が悪い」


戦士「そうか……そうだな」


赤魔「そういや、エルフ。勝負は俺の勝ちだな!」


エルフ「何の話かな」


赤魔「ダンジョンに来る前に勝負しようって話しただろうが! より高いアイテムを手に入れた方が負けた方の言いなりになるって約束でよ!」


エルフ「ああ、そういえば……どうして君たちの勝ちになるのかな?」


赤魔「こっちには『真実の鏡』がある! 値段がつけられないほど貴重なアイテムなんだから俺たちの勝ちだ!」


エルフ「おいおい、値段がついてないってことは0Gに等しいだろ?」


赤魔「はあ!? むしろ∞Gだろ!」


エルフ「私たちは実数値の中で争ってるつもりなのにプライスレスだから価値とか言われてもねぇ……」


赤魔「んな……」


エルフ「というわけで、やっぱり私たちの勝ちでしょ?」


赤魔「いや待てよ! 俺たちのは貴重アイテムなんだぞ!?値段もつけられないほど貴重なんだ! やっぱり私たちの勝ちだ!」


エルフ「駄々をこねないの」


赤魔「なんで私が間違ってるみたいに言うんだよ! そもそも実数値だけなんて条件付いてなかったろ!」


エルフ「いや、そこは暗黙裡にさぁ……」



戦士「引き分けでいいだろ、もう。実際に価値はあっちの方が上のようだしな」


エルフ「むむむ……」


盗賊「死体から取ったものだからあまり威張れたもんじゃないだろ」


赤魔「うぐぐ……」


商人「仲良くグランドホテルのレストランで食事しましょう! 戦士さんの奢りで!」


戦士「それ本気だったのかよ!?」


エルフ「ごちそーさまでーす♪」


戦士「無理だっての!」


赤魔「あそこのパイ包みは貴族もうなるって聞いたぜ!」キラキラッ


戦士「いや、あの……」


盗賊「肉料理が楽しみね」


戦士「…………」



紹介状なしでは入店できませんでした


・・・
【大衆食堂】


エルフ「まさかお金があっても紹介状なしでは入れないとは……お高くとまりやがってぇ……」


戦士「俺は助かった……」


エルフ「ちっ、戦士がもっとコネを持ってたらなぁ……はぁー、エルフちゃん不幸で可愛そう」チュー…


戦士「さいですか」グビッ


エルフ「おらっ!」ズゴッ


戦士「頭突きはやめろ! 飲み物が溢れるだろ!」


盗賊「こいつらはいつもこうイチャついてるのか?」


商人「一緒に暮らしてるくらいですからね」


赤魔「んなっ! そ、そういうのってどうなんだよ……!」カァッ


盗賊「何赤くなってるのよ。可愛いわね」


エルフ「好き勝手言ってるけどイチャついてないからね! ふざけんな!」


戦士「俺のセリフだ……」


エルフ<<ズゴッ


戦士「無言の頭突きはやめろっての!」



エルフ「はーい! 戦士くんの説教会を始めまーす!」


戦士「もう説教はさんざんされたような……」


エルフ「まだまだ反省が足りないからダメですぅ!」


戦士「お前、もしかして酔ってないか?」


エルフ「はあっ? 酔ってないなんかないれすぅ!」



盗賊<<グビッ


盗賊「……しまったわね。これがエルフのジュースで私のサワーがそっちか」


赤魔「色が同じだから間違えたんだな」



エルフ「戦士のあほやろー!」ヒック


戦士「またメンドくさいやつが酔ったな……」


商人「お酒弱いんですね」


エルフ「戦士はもっと可愛いエルフちゃんを特別扱いしろこらー! 他のやつ守ってる暇があったら私を守れこらー! もっと私に構えこらー!」ヒック…


戦士「はいはい」


エルフ「なんだその生返事はー!」ズゴッ


戦士「なんでそんなに頭突きが好きなんだよ!」



ぎゃーぎゃー……!



赤魔「酔っ払いの相手は大変だな」


商人「戦士さんは対処とか介抱とか慣れてそうですけどね」


盗賊「注文。テキーラダブルでストレートで」


<<か、かしこまりましたー


商人「そ、そんなに強いの呑んで大丈夫ですか? 」


赤魔「大丈夫だろ。こいつが酔ったところなんて見たことない」


盗賊「そこそこ飲める体質だ」


商人「うへぇ……あ、僕はお茶ください」


赤魔「一応成人済みだろ? 飲まないのか?」


商人「下戸なんですよ」


赤魔「あはは、見た目通りだな」


商人「ほっといてください……赤魔さんは?」


赤魔「俺は未成年だし」


商人「ああ、年下なんですね……」




エルフ「……」すぴー


戦士「好き放題言うだけ言って眠りやがった」


盗賊「それだけお前の死に急ぐような様が心配なんだろう。少し自分の行動を省みることだな」


戦士「……まあ、な」


赤魔「盗賊だって自分勝手な行動しただろ。俺だって怒ってるんだからな!」


盗賊「悪かったわよ。ほら、唐揚げ食べていいわよ」


赤魔「いえーい♪」


商人「(赤魔さんは単純だなぁ……)」


赤魔「一緒にダンジョンから帰ってきてこうして食事の席を囲んだのも何かの縁だ。またダンジョン行くならする時は声をかけてくれよ」にっ


戦士「ああ。そっちも困ったり人手が必要な時は頼ってくれ」


盗賊「あまり群れるのは好きじゃないが……まあ、お前たちならある種の信頼は置けそうだ」


商人「お金が絡めば喜んで協力しますよ」


赤魔「これからよろしくな!」



赤魔と盗賊がチームエルフに加わった!



エルフ「勝手に話をすすめんなこのー……」むにゃむにゃ…


・・・
【戦士(とエルフ)の部屋】


エルフ「せんしー、お腹すいたー」ゴロゴロ…


戦士「一日中ごろごろしてお前は猫かよ……」


エルフ「えー、だって出歩く用事ないしー……私可愛いから悪いおじさんに攫われそうだしー」


戦士「……。ダンジョンにでも行ったらどうだ?」


エルフ「流さないでよ。だって戦士マネーで暮らしてるからお金に困ってないしねー」


戦士「あ、1000G返せよ。この前もなんだかんだだいぶ稼いだろ。取り敢えず500Gでいいからさ」


エルフ「……」もぞもぞ…


戦士「なんで布団の奥に潜った。おい」


エルフ「稼いだ大金……うっ、頭が……!」


戦士「おい、まさかお前……!」


エルフ「今度こそ巨乳の姉ちゃんをアヘアヘさせてやろうと思ってたんだけどなぁ……」


戦士「おま、おまえぇ……!」


エルフ「まあ、戦士が養ってくれるから問題ないよねっ」


戦士「ギャンブルやめろこのバカやろー!」



戦士「なんなのお前……なんでそんなに金遣い荒いの……?」


エルフ「宵越しの銭は持たない主義なのさ」


戦士「ふっざけんな! 貯蓄の悦びを覚えやがれ!」


エルフ「戦士だって家族への仕送りや、周りにご飯をたかられたりして、そんなに蓄えがあるわけじゃないじゃん?」


戦士「だからだろうが! お前、いざという時大丈夫かよ……」


エルフ「エルフちゃん可愛いから何とでもなるよ!」


戦士「幸せになれんぞお前……」


エルフ「まあ、この前までの生活費と今月分までの生活費は払ったし、いいじゃん? 今回は新しい借金も作らなかったし?」


戦士「お前……はあ、俺だって今は金がないん……やべっ」


エルフ「は? なんで?」


戦士「…………」


エルフ「うん、取り敢えず言ってみようか?」



戦士「いや、困ってるやつがいたらさ、助けざるを得ないだろ」


エルフ「はー、ほんとバカだね! お金がもったいない!」


戦士「うるせー! ギャンブルよりはマシだろうが!」


エルフ「そいつが詐欺師だったら増長させるだけでしょ! ギャンブルより最悪じゃん!」


戦士「うぐ……いや、どうせ胴元だってロクなところと繋がりがないからそっちのがよくない!」


エルフ「はあ!?」


戦士「なんだよ!」



エルフ「…………」


戦士「…………」


エルフ「この虚しい言い合いはやめようか」


戦士「そうだな……」



エルフ「誰にいくら貸したかとかちゃんとメモしてる?」


戦士「……してない」


エルフ「君さぁ……そう言うの相手のためにもならないと思うよ? 返すものは返すという規律付けがない世の中はダメだよ」


戦士「それをお前が言うかぁ……?」


エルフ「何より私だけ催促されるのもムカつく!」


戦士「本音はそれかい」


エルフ「はあ……君はカタギの仕事は向いてないね。連帯保証人とかになっちゃダメだよ? あと家計簿もつけた方がいいよ?」


戦士「お前に言われても説得力がないぞ……」


エルフ「客観的な意見だから説得力しかないよ」


戦士「いやそれは……まあ、いい」


エルフ「君それ好きだよねー」



戦士「しかし商人に金銭管理を任せた方がいいんじゃないか俺たち……」


エルフ「お小遣い制なんていやだ! 私は自由にお金を使いたいんだ!」


戦士「でも使い方がヘタ過ぎないかお互い。俺はさすがに無い袖は振らないしお前だって余裕がなきゃギャンブルしないだろ……少なくとも今はまだ」


エルフ「じゃあ戦士だけそうすればいいじゃん」


戦士「そうすっかなマジで……いや待て。お前も自分の金で住むだけの貯金を貯めろよ」


エルフ「えー、いいよ。どうせ一人暮らししてもまたすぐに追い出されて戦士のお世話になるし」


戦士「次はねえよ!」


エルフ「あはは、戦士はいかにそう言っても私が困ったら助けるもん」


戦士「おま……」


エルフ「助けるでしょ?」


戦士「ぐっ……なんてヤツだ……!」


エルフ「あはは、こういうのを動学的不整合っていうんだってさ」


戦士「知るかぁ!」



戦士「今回はかなりの稼ぎだったのにな……」


エルフ「あはは、私たちがその気になればお金稼ぎなんて楽勝だよ」


戦士「んなことはねえだろ……またダンジョンにでも潜るか……」


エルフ「あ、そうそう。実りの良さそうな話を例のパイオツーがカーデーのチャンネーから聞いたよ」


戦士「普通に喋ろ普通に」


エルフ「君の好きな人助けさ」


戦士「……何だよ」


エルフ「今度武装集団の制圧をするんだってよ」


戦士「武装集団……?」



エルフ「過激派の少数民族をコロコロするんだよ」



to be continued...


○戦士メモ

・紹介状:グランドホテルのレストランが高級店なのは知っていたが、まさか紹介状が必要だとは思いも寄らなかった。代金の請求が後日になるため信用がある者しか入店させないらしい。つくづく庶民とは縁遠い。

・テキーラダブル:俺が飲むと2杯で吐く。

・少数民族:人間の民族よりも亜人を指す場合が多い。獣人やエルフなどが代表的か。多数派(人間)とは対立や迫害などが生じており問題は絶えない。


○エルフメモ

・飲酒:お酒は成人してからにしよう! ギャンブル? ……ふっ

・動学的不整合:商人がドヤ顔で言ってた。インスタンティーニアスとインターテンポラルでストラテジーが~、とか、イクスアンテとイクスポストでオプティマリティが~とか言ってた。商人は横文字を使いたがる病気にかかっているんだ!


・・・
【カフェ】


盗賊「武装した少数民族の討伐?」


エルフ「そうそう。3日後に北方の貴族様が傭兵使ってやるんだって。義憤らしいよ、ぎふーん」


商人「あー、もしかしてこの前の自爆テロですか?」


エルフ「そうそう。それの首謀者グループが北方の獣人の村に匿われてるから潰しに行くんだってさ」


盗賊「そのテロの首謀者が亜人という確証はなんだ? 本当に北方の村を占領をしたのか? そもそも武装しているというのすら本当なのか?」


エルフ「お? ぐいぐい来るね?」


商人「え、ええと、これはあくまで一般論で、エルフさんや赤魔さんへの悪意があるわけではありませんが、人間は亜人が怖いんですよ。怖いから嫌いなんです」


エルフ「嫌いなものを潰すのに確かな証拠はいらないよね。正当っぽい理由があればオッケー」


商人「都合のいいことは精査しないというのは、人間の悪癖ですね……」


赤魔「バカばっかりだ!」


戦士「……そうだな」


盗賊「いずれにせよ、そんな馬鹿らしいことには付き合わないわ」


エルフ「ウェイウェイ、話を最後まで聞いておくれよ。私たちは討伐じゃなくて救出をするんだよ」


盗賊「……どういうことだ?」


エルフ「賭場のディーラーのお姉ちゃんが亜人らしくてね……人間にしか見えないんだけど……それで獣人たちを逃して欲しいんだってさ。村人たちは本当は何も悪いことをしてないからさ」


盗賊「……はあ?」


戦士「本当かどうか分からんが、それなりの報酬が出るし、事実だったら良いことだろう?」


赤魔「なるほど! それなら俺も協力するぜ!」


商人「やるなら、こっそりとやらないとマズイですよ……変に目をつけられちゃいます……」


エルフ「だからこうして人の少ないカフェの奥で話してるんじゃん」


赤魔「……お前ってもっときっちりしたヤツかと思ってたんだけどな」


戦士「こいつは結構適当なんだよ」


エルフ「うるさいよっ」


商人「ちなみに幾らの仕事なんです?」


エルフ「報酬は全員で2000Gだってさ」


商人「尚更怪しいんですけど……」



盗賊「話を戻させてくれ。腑に落ちないんだが、同じ亜人だからとそこまで肩入れするか? それに何故どうしてその村の住民が無実だと言い切れる?」


エルフ「裏稼業で諜報の仕事してるらしいよ。あ、これ秘密だった。まあ、とにかくそんな感じ」


赤魔「なんかカッコいいな!」


盗賊「どうしてそんな胡散臭いヤツの胡散臭い危険な話を呑んだのか理解に苦しむわね」


エルフ「危ないといえば危ない仕事だしねぇ……あれ、確かに怪しさしかない。なんでこんな乗り気になっちゃったんだろ……」


商人「それが天才的イカサマ師の所以なのでは? おだて上手なんじゃないですかね」


戦士「エルフ、やっぱりお前はギャンブル向いてないぞ。もうやめろ」


エルフ「むむむ……」


エルフ「(ほんとは依頼を受けたら報酬とは別に次の賭けで絶対に勝たせてくれるって約束したからだよ)」


盗賊「……まあ、色々言ったけれど確かに気にはなるな。分かった、協力しよう」


エルフ「お、意外。黒チビを抱き込んでなし崩しにするつもりだったんだけどね」


赤魔「だから黒チビいうな!」


盗賊「私たちはもちろん慈善事業はやらないが、お金が全てというわけでもないんでね。報酬が出て興味があれば承諾するわ」


エルフ「どこが君の琴線に触れたのかよく分からないけど助かるよ。よろしく」


赤魔「俺は最初から加担する前提なのかよ……」


戦士「赤魔に協力してもらえるなら助かるさ。よろしく頼む」


赤魔「お、そ、そうか?」テレッ


エルフ<<げしっ


戦士「いてっ」


盗賊「……」


戦士「……」ゾッ


赤魔「……? どうしたんだ?」


戦士「い、いや……」


商人「はは……」



エルフ「じゃあ5人で行くってことで」


商人「あれ? 僕も入ってます?」


赤魔「ん? 行かないのか?」


商人「いやぁ、必要ないかと。鑑定も必要ないでしょうしね」


戦士「てっきり来てくれるものだと思ったんだがな」


商人「ええと……」


盗賊「このメンバーだ。常識人が欲しい」


エルフ「まるで常識がないみたいに言うのやめてくんない?」


赤魔「そーだそーだ!」


戦士「……」


盗賊「こいつらよ?」


商人「……わ、分かりました。僕も行きます」


エルフ「心外だ!」


赤魔「そーだそーだ!」


戦士「まあまあ、落ち着け」


・・・
【翌日・獣人の村の途中にて宿泊中】


エルフ「行程はすこぶる順調。明日には予定通り着くね」


戦士「歩き通すのも疲れるよな。もっと楽に移動できればいいが」


商人「陸路で平地ですし御者を雇って馬をレンタルできれば良かったですね。今回は急過ぎて御者の都合がつきませんでしたけど」


盗賊「馬の扱いは心得てるから言ってくれれば良かったのに」


商人「あ、そうだったんですね……」


赤魔「ふふん! 俺の盗賊は頼りになるだろ!」どやぁっ


盗賊「私のことでイキるやめてくれない? あと私はアンタのものじゃないから」


赤魔「あはは!」


盗賊「~~」



エルフ「仲良しだねぇ……」



エルフ「はいはい、作戦の復習をします。黒チビ、説明して」


赤魔「黒チビいうな! ええと……村の人が本当に悪者だったら倒す!」


エルフ「うん、それは特殊なケースだよね。戦士、悪者じゃない時は?」


戦士「村人を説得して山岳地帯を越えてドワーフの里まで避難させる。……傭兵たちが追いかけて来るんじゃないか?」


商人「ドワーフの里はかなりの税収源ですからね、気性が荒い彼らをあまり刺激したくないから流石に傭兵を引き込めるでしょう。義憤だなんだと名目上は言ってますけど、実際は世論に押されて仕方ない出兵のようですし」


エルフ「悪いやつほど合理的♪」


商人「説得に使えそうな小道具を作ってみました。爆破テロに関する新聞の切り抜きと亜人の村制圧の為の傭兵募集の偽造ポスターです」


赤魔「それ偽造なのかよ!? それっていいのかぁ……?」


商人「嘘も方便ですからね。結果的に助かったらいいじゃないですか」


戦士「(悪いやつほど合理的……)」


エルフ「これでバッチリだね」


盗賊「これが何らかの裏工作で私たちが何かの濡れ衣を着せられそうになった場合は?」


エルフ「……そ、そんなケースはあり得ないから」


戦士「おいおい」


エルフ「そ、その時は真犯人を吊し上げる!」


商人「う、うーん……あはは……」


盗賊「……まあ、そういうケースを未然に防ぐために私がいるんだ」


戦士「頼りにしてるぞ」


赤魔「盗賊がいれば何の心配もないな!」


エルフ「じゃあ言及しなくても良かったじゃん……」むすっ



エルフ「あとは自由時間で。まあ、この村も大して何もないけどねー」


商人「ああ、宿の部屋だが2人部屋と3人部屋が運良く空いてましたよ」


エルフ「お、ぴったりだね」


戦士「盗賊とエルフはゆったり使ってくれ。商人と赤魔は狭いけどガマンしろよ」


赤魔「おう。……おう?」


盗賊「フリーズ」


戦士「ん?」


盗賊「私と赤魔とエルフが三人部屋だろ?」


戦士「えっ?」


エルフ「……こいつ、マジか」


商人「あはは……」


赤魔「あー、ずっと勘違いされてたか……」



戦士「……すまん、女だったのか」


エルフ「さいてー」


赤魔「いいよ。人間からしたらエルフ族は男女の区別がつきづらいんだろ? 俺も男らしく振る舞うようにしてるしな」ふんすっ


商人「(まあ、でも何となく気づきますよね。たまに素が出てますし)」


戦士「じゃあ、商人と俺で2人部屋を使わせてもらおう。悪いな」


盗賊「……商人って男でいいのよね?」


エルフ「わりと女顔だよね。近所の年上のお姉さんに食べられてそう」


戦士「えっ、商人も女だったのか……? 部屋の取り方間違えたな……」


商人「僕は男ですよ! あと変な憶測しないでください!」


エルフ「そーりー」


戦士「なんだ、よかった」


商人「まあ、戦士さん的には僕も女だった方が嬉しそうですけどね」


戦士「いや、男一人だけとか肩身狭いだろ」


商人「……まあ、実際はそうですよね」


【翌日・獣人の村外れの川辺にて】


商人「盗賊さん、大丈夫ですかね?」


戦士「大丈夫だろう。決めた時間まで まだあるしまだ偵察してるんだろう。盗賊は慎重派だろうしな」


商人「いやぁ、でも異形の島の時は単独で……」


戦士「ま、まあ……そう何度も独断行動を取らないだろ。俺じゃあるまいし」


商人「戦士さんも慎んでください」


戦士「善処するさ」


商人「もう……」



赤魔「エルフ、そこだ! つかまえろ!」バシャッ


エルフ「おらっ! あっ、この! 大人しく昼ごはんになれ……!」


赤魔「へたくそー!」


エルフ「うっさい! ……喰らえ! 『爆杖殴打』!」カッ


ボゴォォォ……ッッ!!


赤魔「ふぎゃぁぁっ!?」バシャシャ……ッッ


魚<<プカァ……


エルフ「最初からこれでよかったね」ふんすっ


赤魔「ば、ばかやろー! いたいだろーが!」


エルフ「めんご。てへぺろ」


赤魔「……『地震剣』!」


エルフ「ちょっ……」ぐらぐらっ


エルフ<<ぼちゃんっ


エルフ「ぶはっ……おいごらぁっ! 鼻に水入ったろうがぁ!」じゃぷっ


赤魔「へっ!」




エルフ「……やっぱり私たちは相容れぬ種族のようだね!」ゴゴゴ…


赤魔「 俺もそう思ってたところだ……!」ゴゴゴ…




白と黒ーー決して交わらぬ者たちの熾烈な戦いが今ーー!!





盗賊「村が近いんだから不用意に暴れるな」ゴスッ、ゴツンッ


エルフ「あがっ!」

赤魔「あう…っ!」





戦士「始まらないのか」


商人「始まっても困りますよ……」






盗賊「戻った」


エルフ・赤魔「……」ぐすぐすっ…


戦士「お、おう」


商人「(このパーティのカースト頂点は盗賊さんですね……)」



戦士「様子はどうだった?」


盗賊「平和な村落といったところだな。見張りもなければ、内部にも武装してる者はいなかった。村人たちも農作業するか軒先で歓談してるかといったところよ」


商人「じゃあ、やっぱりこの村がテロの首謀者グループを匿ってるというのは嘘なんでしょうか」


盗賊「完全に、とは断定できないけれど、あれだけ牧歌的な雰囲気だとやはりそうした血生臭いことはなさそうね」


戦士「それならさっさと避難してもらおう」


商人「交渉事は任せてください!」


盗賊「口八丁手八丁に頼む」


エルフ・赤魔「……」しくしく…


盗賊「いつまで泣いてるの? 早く行くぞ」


エルフ・赤魔「はい……」ぐすっ



戦士・商人「(彼女は怒らせないようにしよう)」



to be continued...


○戦士メモ

・カフェ:最も平易な『魔物の洞穴』でコーヒー豆が取れるため、安価な値段でコーヒーを楽しむことができる。コーヒーは好物のためそれなりの頻度で行く。エルフはいつも苦くてまずいと言いながらついて来るが、本当はあいつもコーヒーが好きなのだろうか。

・獣人の村:北方に位置する獣人族の小さい村。ダンジョンから離れた内陸の村は経済発展から取り残されており格差はますます広がっていくだろう。こうして少数民族と多数派の格差は名目的にも実質的にも広がって行く……と商人が言っていた。穏やかな生活はそれ自体が貴重なものだと俺は思うのだが。

・ドワーフの里:更に北方の山間地帯に位置する大規模な里。ドワーフ族は金属の精錬に優れており、この国の鉄鉱生産の半分はこの里によるものだ。



○エルフメモ

・ディーラーのお姉さん:何を食べたらそんなに胸部が膨らむのかナゾ。むっつりスケベな戦士にはとても会わせられないね。

・義憤:ぎふーん

・コーヒー:砂糖とミルクを入れなきゃ飲めたもんじゃない。何も入れずに飲む戦士はきっと舌がバカなんだ。

・爆発漁法:とても効率がいいよ。生態系の破壊? 知るか! 私が生態系だ!

・ゲンコツ:盗賊は悪魔か何かに違いない。鬼! 悪魔! ばーか! ……このメモは見られないようにしなきゃ。

・・・
【獣人の村にて交渉中】


商人「それでは女性と子ども、一部の男性は僕たち方の子女と同伴して山稜地帯へ向かい、僕ともう一人が村で傭兵が本当に来るのか監視して、敵影を確認しだい山稜に逃走。敵影が明日中に現れなければ慰謝料として200Gと戦士さんが1日労働ということでよろしいですね」


<<ええ、それで手を打ちましょう

<<俺たちは何もしてないのに襲撃して来るってほんとかよ……

<<でも、この人たちの条件じゃ私たちを騙してもどうしようもないんじゃ……

<<人攫いにしても、流石にこんな回りくて大逸れたことしないだろうしな……


商人「僕たちは心優しい街の亜人の依頼でこうして皆さんをお助けしようと思ってるのです。失敗した時のお金は100Gを前金として預けておきます。何もなければそのまま貰ってください」


<<まあ、明日になってみれば分かるか……金も貰ったし、ちょうど農閑期だし畑の心配もないだろ

<<ほんとだったら、どうしましょう。作物はまだしも家畜が強奪されたら生きていけないわ……


商人「んー、大事なんでしょうけど家畜はどうしようもありませんね。せめて明日になったら村から離れた場所に隠しておくくらいしか手立てがありません」


エルフ「どうしてこんなデカいペットを飼おうと思ったんだか」


盗賊「家畜はペットとは違うぞ」


赤魔「エルフってわりと常識知らずなのか?」


エルフ「し、知ってたし……エルフちゃんジョークだし……」


戦士「(俺のタダ働きがいつの間にか条件に加えられてる……まあ、いいか)」




エルフ「交渉、お疲れさん」


商人「ありがとうございます。それではさっそく別れましょう。先の通り僕と戦士さんは村に残ります」


盗賊「私が残って伝令役をした方が良さそうだが」


商人「まあ、そうなんですけど……多分村の女性や子どもたちが僕や戦士さんと行動すると交渉が揉めると思ったので」


盗賊「実際は差がないと思うが……まあ、心理的にその方が安心するか。仕方ないわね」


商人「そういうことです。それでは山稜地帯の方はお任せします。途中の山小屋は環境は悪いですけど、おそらく横になって寝れるそうなので」


エルフ「そっちはお布団でちゃんと寝れるのにねぇ」


商人「す、すみません……」


赤魔「商人は頑張って説得してくれたんだぞ。そんなこと言うなよ」


エルフ「けっ……いい子いい子しちゃって」


赤魔「んなっ」


盗賊「……」ゴリリッ


エルフ・赤魔「ひっ……」



戦士「エルフ、しっかりやれよ」


エルフ「そっちこそ精々死なないように」


戦士「赤魔もよろしくな」


赤魔「おう! 任せとけ!」にっ


戦士「盗賊、二人をよろしく頼む。世話をかけるな……」


盗賊「そういう役回りだもの」


エルフ・赤魔「ぐぬぬ……」


盗賊「なに?」


エルフ・赤魔「な、なんでもー」ぷいっ


商人「(似た者同士ですよねぇ……)」


【山稜地帯・盗賊グループ】


<<ぐーちょきぱーでなにつくろー♪


赤魔「みぎてがぐーで♪ ひだりてもぐーで♪ ゆきだーるまー♪ ゆきだーるまー♪」


<<おねーちゃん、つぎつぎー♪


赤魔「そうだなー!」


<<ぱーんち!


赤魔「うわっ!? こらっ! いたいだろ!」


<<やーい!


赤魔「こんにゃろー!」ガシッ


<<わぁぁあっ


きゃっきゃっ……



エルフ「(めっちゃちびっ子に懐かれてる……)」



エルフ「(ま、赤魔も子どもだからね)」ふっ


<<おねーちゃん魔法使い!?


エルフ「ん? まあねー」


<<どうせヘッポコなんだろ!


エルフ「あーん? 『氷点零』」


<<うわ、涼しい!?

<<すげー!


エルフ「まあ、それほどでもあるね」どやっ


<<もっと見せてよ!

<<魔法はじめて見た!

<<魔法おしえてよシショー!


シショー! シショー!


エルフ「まあ、そこまで言うなら? 特別に? 伝授しないことも?」ふふん



赤魔「(仲良くやってるなー。精神年齢が近いんだろうな)」


盗賊「(赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい赤魔かわいい)」


<<はぁはぁ……


盗賊「……ご婦人、大丈夫か?」


<<いや、老人にはこたえる……足がだいぶ悪くなってしもうた……


盗賊の『回復魔法』!


<<お、おお……!


盗賊「無理は良くないわね。私が背負おう」


<<い、いや、しかし……


盗賊「問題ないわ。特別製なんでね」


<<す、すまんのう……もしかして亜人さんかい? 人間に見えるけども……


盗賊「……そうね」



盗賊たちは山小屋まで移動した!


【獣人の村・高台にて哨戒中】



戦士「……」


商人「お疲れ様です。見張り代わります」


戦士「ん、もう時間か」


商人「はい。ヘトヘトでしたけど、仮眠が取れて大分楽になりました」


戦士「歩き疲れたもんな。エルフたちは立て続けに山登りだから体調を崩してたりしてないといいが……あいつらタフだし大丈夫か」


商人「パワフルな人たちですよね、ほんと」


戦士「あいつらの前じゃ言えないけどな」


商人「ボコボコにされちゃいますもんねー」


わははは……



商人「あ、夕ご飯もらってきましたよ」


戦士「お、本当か。いい奴らだな」


商人「まあ、流石にまだ不審がられてますけどね。かなり動揺しているようです」


戦士「仕方ないさ」



商人「……」


戦士「……」


商人「……戻って休まないんですか?」


戦士「なあ、商人」


商人「改まってどうしたんです?」


戦士「俺の信念は間違ってるのか?」


商人「へっ?」



戦士「手を伸ばせば守れるものがいる。それを守ろうとするのは間違っていることか?」


商人「はあ……」


戦士「目の前で苦しんでる人間を助けるのは偽善なんだろうか。俺は間違ったことをしているんだろうか」


商人「そんなことはないんじゃないですか? ついこの前もこんな話しましたねー」


戦士「お前が一番冷静で客観的な意見をくれると思う。だから答えて欲しいんだ」


商人「買いかぶりだと思いますけど……そうですねぇ……」


戦士「俺の知らないところで哀しんでる人や苦しんでる人がいる。それを思うととても辛い。だから、せめて行動して目の前にいる困っている誰かを助けたい。少しでも良い世界にしたいと思う。そういう理想を持つのは間違っているのか?」


商人「んー……」


戦士「正直に言ってくれ」


商人「正直に……分かりました」



ビシッ



商人「思春期か!」



戦士「……」


商人「ああ、すいません。正直すぎました……ええと、別に理想に対して良い悪いとか正しい間違っているはナンセンスですよ」


戦士「それじゃあ、何が正しいんだ……」


商人「唯一絶対に正しいものなんて存在しませんよ。評価する人で違いますから。自分や周りの人の良識を踏まえて吟味してください」


戦士「……」


商人「何回でも言いますけど、社会的、個人的に望ましいか望ましくないかはありますからね。自分ができる以上のことはできないんですよ」


戦士「そりゃそうだろ」


商人「けれど、戦士さんは結果的にできてきた、もしくはできるつもりだったんでしょうけど、それは自分のことやパーティのことは度外視してることが多いですよね?」


戦士「そうだな……そうかもしれない」


商人「それは本当は自分ができる範囲を超えてるんですよ。できないことをやろうとしてるんです。だからエルフさんは怒るんですよ?」



戦士「結局、身の程を知れという話か」


商人「自分にできることできないことを認識して、最善を尽くしてくださいとしか言えませんね」


戦士「俺の信念は間違ってないんだよな?」


商人「僕は戦士さんの優しいところは大好きですよ。こうして僕たちを繋いだのは間違いなく戦士さんの優しさです。パーティみんな同じ意見だと思いますよ」


戦士「……ありがとう」


商人「ただ意見と予想を言っただけです」


戦士「そうだとしてもな」


商人「……そ、それより早く休んでくださいよ。事態が動いたらお知らせしますから」



戦士「ああ、そうさせ…………っ! 兵士たちだ!」


商人「もう来ましたか! 逃げるように指示してきます!」


戦士「……いや、待て。様子がおかしいぞ……!」


商人「……あれは!?」



to be continued...


○戦士メモ

・家畜:銀行などで貯金ができない農村では家畜が一つの貯蓄手段になっている。また、農産物生産のための道具でもある。それに動物は見ていて癒される。

・思春期:人間誰しもが経験する時期。俺は未だに思春期だったのか……?



○エルフメモ

・獣人:モフモフしてる。ちっちゃい子は毛がとっても柔らかいから抱きかかえてると幸せになれそう。

・ぐーちょきぱーの歌:最強はカタツムリ。パワフルかつテクニカルな手法だね。

・氷点零:威力を調整すれば涼むこともできるグレートな技。


・・・
【盗賊パーティ・山小屋近くにて】


<<きゃぁーっ!

<<ま、まものーっ!?


エルフ「……」スッ


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ



・グロウラー

HP:2500
こうげき:300
まほう:50
ぼうぎょ:250
すばやさ:400


エルフ「大した相手じゃない……けど」


赤魔「なんでダンジョンから遠いこんなとこで魔物が出るんだ!?」


盗賊「……いやな予感がするわね」


グロウラー「ォォォォォォッッーー!」


<<ひぃぃっ……!

<<うわぁぁぁんっ!


エルフ「とりあえずこのうるさいのを黙らせようか!」


赤魔「同感だぜ! 声だけデカいやつめ!」


エルフは杖の先に魔力を溜めている!


赤魔はナイフに四精霊の力を宿す!


盗賊の『加速蹴り』!

盗賊は更に加速する!


グロウラー「オボォォォォ……ッッ!」


エルフの『爆杖殴打』!


赤魔の『火炎剣』!



グロウラーは盗賊に噛みつこうとする!


ミス!



盗賊の『加速蹴り』 !


盗賊の素早さは最高潮に達する!


グロウラー<<グラァァ……バタンッ!


グロウラーを倒した!



エルフ「うん、やっぱり雑魚だね」



「見事なものね」



赤魔「誰だ!」


エルフ「あー、イカサマおっぱい女!」


イカサマ師「それは私のこと? もっと可愛く呼んで欲しいわねぇ」


盗賊「ーー」


盗賊の『神風蹴り』!



イカサマ師の『不確定免罪』!



『神風蹴り』は無効化された!


盗賊の素早さが元に戻った!



イカサマ師「急に襲いかかってくるなんていやね。どういう教育を受けてるのかしら……なんてね。久しぶり」


盗賊「黙れ……ッ! 何故お前がここにいる……!」



エルフ「なに、もしかして復讐相手ってディーラーのお姉ちゃんなの?」


イカサマ師「フクシュウなんて過去をうだうだするのはやめて今を楽しく生きなさいよ? というか、もしかしてまだサモナーのことを逆恨みしてる?」


盗賊「逆恨みだと……っ!」


盗賊の『死の針』!


イカサマ師「ああ、カミサマ。咎なき者を罰するなんてとんでもない」


イカサマ師の『不確定免罪』!


『死の針』を無効化した!



赤魔の『地震剣』!


ミス!


イカサマ師「そんなにお姉さんの揺れるおっぱいが見たいの、ボク?」ひらっ


赤魔「んなっ!?」



盗賊「……」ギリッ


エルフ「待って待って、ウェイウェイ。もしかして私たちを騙したのかな?」


イカサマ師「そんな人聞きの悪い……私はウソは言わないわ。あなたが勘違いしただけよね?」ぱちんっ


エルフ「いい歳してウィンクはやめろ」イラッ


赤魔「お前が盗賊を苦しめてるやつだっていうなら、俺はお前を許さない!」


イカサマ師「あらら、私は旧交を温めていただけよ。ねえ?」


盗賊の『加速蹴り』!


イカサマ師の『不確定免罪』!


『加速蹴り』は無効化された!


盗賊「ちっ……!」


イカサマ師「そんなに怖い顔しないでよ。もっと聞きたいことがあるんじゃないの? 『お姉ちゃん、今は恋人いるの?』とか可愛く聞いてよ」


盗賊「口を閉じろ!」


イカサマ師「それじゃあ、『あの魔物はどこからどうやって現れたの? 転移石? ダンジョン以外でも使えるの?』とか」


エルフ「ダンジョンの黒石はパイオツちゃんがやったの!?」


イカサマ師「それは現時点の誰にも分からないわ。何せその時にはもう戻れないのだから」


盗賊「無意味な言葉を並べ立てるな!」


盗賊の『死の針』!


イカサマ師の『不確定免罪』!


『死の針』は無効化された!



盗賊「くそっ……ふざけた力を……!」


盗賊「……」ゼエッ…ゼエッ…


赤魔「盗賊! 焦り過ぎだ! もう少し落ち着け!」


エルフ「あっちは戦うつもりはないみたいだし、情報を搾ってからコロコロしてもいいんじゃない?」


盗賊「……」はぁはぁ…


イカサマ師「まあ、別に用事なんてものはないよ。私はトリックスター。この場を引っ掻き回して楽しむの」


エルフ「気取ってんじゃないよ。アヘアヘさせんぞ」


イカサマ師「すけべは娘ねぇ……そうそう、これは報酬ね。2000G相当のアイテムだから」ポトッ


エルフ「やったぁ♪」


赤魔「アホか!」


イカサマ師「それじゃあ可愛い妹と久しぶりに遊んであげるわ。『トリックスターを探せ』を始めましょう。ルールは簡単。私を見つけ出してごらん?」


盗賊「ふざけるな……ッ!」


イカサマ師「私は真面目にふざけているからふざけてないわ。報酬は……サモナーの所在地。それじゃあ、始め♪」



イカサマ師は逃げ出した!



盗賊「待て……!」


『私を追いかけるより、お友達の心配した方がいいんじゃない?』


エルフ「!」



盗賊「くっ……!」


赤魔「盗賊、落ち着け!」


エルフ「気配が消えちゃったよ。……それより、村の方がマズいみたいだけど」


赤魔「戦士たちが襲われてるか……しかしアイツの作戦かも」


エルフ「同じくらい弱い魔物ならいいけど……どうなんだろう」



<<ドゴォォォ…………ーー


<<グラグラ……



赤魔「……もしかして相当ヤバいのとやり合ってるんじゃ」


盗賊「……私が行くから二人は村人たちと待機しろ」


赤魔「だめだ。お前、少し落ち着きに欠けてる」


エルフ「ここはエルフちゃんに任せてよ。二人は待機ね」


盗賊「私に行かせてほしい」


エルフ「この前も単独行して迷惑かけたんだから自重しなよ。オーケー?」


盗賊「……分かった」


赤魔「……」ほっ


エルフ「それじゃあ、私が見てくるから」


盗賊「すまない。こっちでまた魔物が出てもケガ人は出させないように対処するわ」


エルフ「よろしくー。あとパイオツちゃんが落としていったアイテムのチェックと黒石が近くにないか調べといてね」とてとて…


赤魔「ああ……というかノロノロ歩いてる場合か! いや、走っても危ないけどさぁ!」


エルフ「てへぺろ」



ダダダッッ…


エルフ「(あのバカ……またバカなことやってないといいけど……どうせやってるんだろうなぁ……!)」はぁはぁ…


エルフ「(くたばってんじゃないよー……!)」


エルフは山を全力で駆け下りていく!


エルフ「(いや、でも薄暗くて危ないし、バテるからきをつけよ)」


エルフは早歩きにペースを変えた


エルフ「(まあ、戦士はしぶとさだけが取り柄だもんねー。別に大丈夫でしょ)」



エルフ「……あれ、これフラグ?」



to be continued...



○エルフメモ


・グロウラー:今の私たちには弱い相手。声がデカい。

・イカサマ師:賭場のディーラーのパイオツちゃん。胡散臭さの塊。盗賊の姉?


【少し遡って獣人の村】



ドッゴオォォオオオォォォッッーー!



戦士「兵士たちが魔物に襲われてる……! あれは強いぞ!」


商人「……この状況って獣人たちな相当まずくないですか?」


戦士「えっ?」


商人「魔物がこんなダンジョンから離れた場所に現れるなんて普通じゃありえません! しかも亜人のテロの疑いを持って来た討伐隊に向かって……」


戦士「どういうことだ!? 話が見えない!」


商人「(そもそもの話、村の獣人たちがテロと無関係ならば首謀者は他にいるはずです)」


商人「(そいつらがこの魔物を何らかの方法で兵士たちを襲わせている? 転移石のようなものがダンジョン以外でも使えるようになったらそれも不可能じゃない)」


商人「(僕たちに依頼をした人物が関係者? そうだとしたらどうして僕たちを送り込んだのだろう。全くの無関係の可能性もありますけど、さすがにそれは不自然……むしろ止めて欲しがっていた?)」


商人「(……これは今の段階ではこれ以上の推論は時間の無駄ですね。それよりも、今の世論だとヘタをすれば獣人が魔物を操り始めたとなってもおかしくない。そうしたら本当に獣人の村を本気で滅ぼしにくるはず)」


商人「(関係ないといえばそうですが、この獣人の村だけでなく、ひいては亜人との対立になりうる……それが真犯人の狙いだったら何だか腹が立ちます)」


商人「(兵士たちが全滅しても世論は傾くことを考えると……)」


戦士「……すまん!」ダッ


商人「(まあ、戦士さんはそうですよね……僕がすべき行動は……おや、あれは?)」


商人「(ああ、なるほど、体裁のためか、強制か自発かは分かりませんが来たんですね。確か評判だと……うまく利用できないでしょうか)」


・・・

タイラントドラゴン「オォォオオオーーッ!」


<<しつこいなチクショウ!

<<くそっ、獣人どもの仕業か!?

<<ヒィイィィ……! お前たち僕を守れぇぇっ!



銃士「……オイタが過ぎるで」カチッ


銃士の『クリティカルショット』!

クリティカル!


タイラントドラゴン「グゥゥーーッッ」じろっ


銃士「こっち見んどいて」


タイラントドラゴンの『暴虐の爪』!


ミス!


銃士「あかんなぁ……アレもろうたらお陀仏やわ」


銃士「(とっさに注意を引きつけてしもうたわ。あのアホの病気が感染ってしもうたんやろか)」


銃士の『クリティカルショット』!

クリティカル!


銃士「(あと少し引きつけたら離脱やな。当たったらお陀仏やろうけど、幸い動きは大味やし何とかなるやろ)」


タイラントドラゴン「ウォォーー」


タイラントドラゴンは大きく息を吸った!


銃士「っ、あれは躱せへん……!」


タイラントドラゴンの『焦熱ブレス』!


銃士「ぐ……!」



戦士は銃士を庇った!



銃士「……おおう!?」


戦士「だいじょ……銃士っ!?」


銃士「何処ぞの筋肉ダルマか思うたら戦士やないか! なしてこんなとこにおるん!?」


戦士「……無駄話は後だ!」



銃士「そんならいつも通り俺に合わせてぇや!」チャキッ



銃士の『クリティカルバースト』!

クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!



戦士はタイラントドラゴンの動きを見極めている!


タイラントドラゴンの『暴虐の爪』!


戦士「はぁっっ!」


戦士は完璧に防御した!



銃士「そんなことできるようになったんか!?」


戦士「たまたまだ!」



銃士「やっぱりお前と組むとぶっ放し放題やから楽しいわ!」



銃士の『クリティカルバースト』!

クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!


戦士の攻撃!



タイラントドラゴンは怒り狂っている!



タイラントドラゴンの『暴虐の一閃』


戦士は銃士を庇った!


戦士「ぐっ……強いな……!」


銃士「ほんまにな……! 守りは頼むで!」



<<っ、俺たちもいくぞぉっ!

<<私に続け!

<<うるせぇ、坊ちゃんは下がってろ!


傭兵たちが加勢する!


タイラントドラゴン「グォォォォォォーーッッ!?」



銃士「流れが来とぉで! このまま押し切っちゃる!」



銃士の『クリティカルショット』!

クリティカル!


戦士「そういや弾は足りてるか?」


銃士「たんまり持って来とぉで。まあ人殺しに使うんより弾も喜んどるやろ」



<<なめんなぁ!

<<魔物狩りは本業なんだよぉ!



傭兵たちの攻撃!



タイラントドラゴンはますます怒り狂っている!



タイラントドラゴンの『孤独の逆鱗』!


<<ぐわぁぁっ!

<<ぎゃぁっ!


銃士「やっこさん、さらに暴れはるんか!」


戦士は銃士を庇った!


銃士「ほんまあんがとさん!」



タイラントドラゴンの『孤独の逆鱗』!


銃士「いっ……!」


傭兵たちの多くが力尽きた!



戦士は銃士を庇った!


戦士「はぁはぁ……」


銃士「……大技やけども、その分だけ無防備や! 急所全突きしちゃる!」


銃士の『クリティカルバースト』!


クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!


戦士の攻撃!


タイラントドラゴン「ゥオォォオオオォォォーーッッ!!」


銃士「まだ生きとぉんか!」


戦士「はぁはぁ……しぶとい……!」



商人「ーーみなさん、目と耳を塞いでください!」


商人は『スタングレネード』を投げた!


キィィンッッ!



タイラントドラゴンは混乱している!



商人「みなさん、今です!」



獣人族が加勢する!



銃士「おおう!?」


商人「戦士さん、大丈夫ですか!」


戦士「商人! これは……!」


商人「説得するのに大変でした! この勢いで倒してしまいましょう!」


戦士「……ああ!」


戦士の攻撃!

傭兵たちの攻撃!

獣人族の攻撃!





タイラントドラゴンは混乱している!



銃士「この隙に押し切るで!」



戦士「はぁっ!」

戦士の攻撃!



<<おらぁっ!

<<村を守れ!


傭兵と獣人の攻撃!



銃士「いい加減くだばりなはれや!」

銃士の『クリティカルショット』!


タイラントドラゴンは瀕死だ!



タイラントドラゴン「ォォォーー」



戦士「やったか!?」


銃士「おま……それはアカンやろ!」


タイラントドラゴン「ーーーー」ゴゴ…


タイラントドラゴンは限界まで力を溜めている!


銃士「……最初のアレや! 直撃は大惨事や! 下がれ!」



タイラントドラゴンの『天地崩壊』!



ドッゴオォォオオオォォォッッーー!



戦士「ぐっ……うぉぉぉっ!」



戦士はパーティを庇った!


戦士「ぅ……っ」


戦士は力尽きた!



傭兵たちは力尽きた!

獣人族は力尽きた!



銃士「……くっ」


商人「うぅ、ここまで来て……!」


銃士「お嬢ちゃんはもっと下がりな! 俺が時間を稼ぐわ!」


銃士「(いうて、俺は脆いんやけどなぁ……! まあ、ここはカッコつけんと男が廃るやろ!)」


銃士の『クリティカルショット』!

クリティカル!



タイラントドラゴンの『孤独の逆鱗』!


銃士「やっぱあかんわ……あふんっ!」


銃士は力尽きた!



商人「ええっ!」


タイラントドラゴンの『孤独の逆鱗』!


商人「ひゃっ……あぁっ!」


<<ああ、み、みんなやられてしまった……!


商人「あいたた……」


タイラントドラゴン「ーーグォォォォォォッッ!」



タイラントドラゴンは辺りを吹き飛ばすために力を溜めている!



<<ひっ……だ、誰か助けてくれ……お父様……お母様!


商人「う、うう……」



エルフの『爆杖殴打』!



タイラントドラゴン「ーー!?」


タイラントドラゴンはよろめいている!


商人「……エルフさんっ!」



エルフ「主役は遅れて登場するのさ! ……ちょっと遅すぎた気もするけど!」



エルフが加勢する!


タイラントドラゴン「グォォォ……!」


エルフ「さっさと暴君は斃れなよ!」ググッ……


エルフの『滅撃・氷』!


タイラントドラゴン「ォォォォォォーー」パキキキキ……



タイラントドラゴンの『悪あがき』!


エルフ「マジで……っ!」



商人「やらせない……!」



商人はエルフを庇った!


商人は力尽きた!



エルフ「……いい加減にしろよトカゲぇぇっ!」ググッ……


エルフの『滅撃・氷』!



タイラントドラゴン「ォーーーー」パキキキキ……


バキィィィィーー!!



タイラントドラゴンを倒した!




エルフ「ふう……」


<<た、たすかった……



エルフ「見たか戦士! 商人! 今回は私がいいとこどりさせてもらったからね!」


戦士<<チーン……

商人<<チーン……


エルフ「……まずは皆んな蘇生させないとね。あ、そこの腰抜かしてるお兄さんも手伝って。多分、まだ村に獣人が少し残ってるはずだから呼んできて」


<<は、いや、しかし獣人は……


エルフ「早くしろ!」


<<う、うん……

・・・
【獣人の村】


銃士「いやぁ、制圧に来て看病されるなんてけったいな話やね」


戦士「だからここにいる獣人たちは潔白だと言ってるだろ」


銃士「分かっとるよ。しかし領主はんへの報告はどないしましょ」


商人「それは大丈夫だと思います」バタンッ


銃士「おっ?」


商人「この隊の副隊長と交渉した結果、何とかなりそうです」


戦士「副隊長?」


商人「この兵隊は名目は領主が社会的正義を執行するために派遣されたものです。それならば体裁のために身内もいれるはずで、長男が副隊長として加わってました」


銃士「あー、あの坊ちゃんか。正義感振りかざして、そのくせわがままで手を焼いたわぁ」


商人「でも扱いやすかったですよ。獣人が戦いに参加したのもあって、この看病もあって完全に懐柔できました」


戦士「……それでこの好意的な対応なのか」


商人「単純ですけど押しは強いみたいですから領主も説得してもらいましょう。親バカらしいですしね」



銃士「打算的で怖いわぁ」


商人「平和的に解決できるならいいじゃないですか」にこっ


銃士「!」ぞくっ


戦士「そうだな」


商人「それでは少し獣人族の方とお話がしたいので失礼します」


戦士「おう。そういえばエルフは?」


商人「死ぬほど愚痴りながら登山中です。盗賊さんたちに状況を伝えなければいけないので」


戦士「大変だな」


商人「『あとで戦士に破産させるまで奢らせてやる』とか言ってましたよ」


戦士「とばっちりにも程がある!」


商人「あはは……それじゃあ」バタンッ


戦士「……」はぁ…


銃士「あの娘、今の仲間なん?」


戦士「ん? ああ」


銃士「めっちゃええやん……好きやわぁ……あの腹黒そうな感じええわぁ……」


戦士「はぁ……?」


銃士「なあなあ、また俺と組まへん?」


戦士「お前、あんだけ一方的に関係を切っておいて……」


銃士「まあまあ! 過去のことは置いとこうや。俺とお前の仲やろぉ?」


戦士「まあ、他のメンバーもいるから何ともいえんが」


銃士「お前みたいなアホと組むやつが二人もおるやと!?」


戦士「4人だな」


銃士「おま……大丈夫か? お金とられたりパシられたりしてへん? お給金はちゃんともろうとる? 痛い目に合わされてへんか?」


戦士「概ね上手くやってるさ」


銃士「あの無差別誰でも絶対助けるマンの戦士に仲間が……」


戦士「へいへい……」


銃士「(まさか助けたやつでハーレムを形成してたり……いや、まさか、まさかなぁ……ははは)」


・・・
【翌日】


エルフ「疲れたぁ……どんだけ私に歩かせるんだよぉ」ぐてぇ


商人「お疲れ様です、ほんと」


赤魔「そっちも大変だったみたいだなぁ」


盗賊「……」



銃士「ふざけんな!」


戦士「は?」


銃士「ハーレム作りやがって! もげてまえ!」


エルフ「さっきから何? 誰この人?」


銃士「あ、自分、戦士と前に組んでた銃士いいます! どうぞよろしう!」


エルフ「ふうん。ちょっと私たちだけで話したいことあるから出てってもらえる?」


銃士「まあまあまあまあ! エルフ族は秘密主義なんは聞いとりますけど、ここは是非ともお相伴に預からせてえな」


エルフ「はぁ……」


銃士「それに君みたいな可愛い娘とももっとお話がしたいんや」キリッ


エルフ「は? なに、キモい。1秒100Gもらわなきゃイヤ」


銃士「おふ……」


赤魔「まあ、そう言うなよ! 面白そうなやつじゃん」


銃士「ええ子やぁ……惚れてまいそう……」


盗賊「その時は抉るぞ」ボソッ


銃士「ひぇ……っ」ひゅんっ


商人「(脅しとかじゃなくて、本気の目ですね)」ぞくっ


戦士「そういや、こいつが仲間になりたいらしいんだが」


エルフ「チームエルフにこれ以上童貞はいらないかな」


盗賊「ダメだな。受け付けられない」


銃士「この言われよう! というか、どど、童貞ちゃうわ!」


盗賊「尚更ダメだな」


銃士「取り付く島もあらへん……!」


赤魔「えー、チームレッドに入れてやろうぜ」


エルフ「チームエルフだっての! チームレッドはチームエルフに吸収合併されましたー!」


赤魔「はぁ!? むしろそっちがだろ!」


バチチチ……!



戦士「あいつらは置いておいて、俺は銃士がまた組んでくれるなら心強いが」


銃士「別に男に好かれても嬉しくあらへん」


戦士「そうかよ……商人は? 今のところ2対2だが」


商人「僕ですか……」


銃士「(僕っ娘ええわぁ……)」


商人「6人いれば場合によっては3:3や2:2:2に分けられますからね。固定費用も6人と5人なら大差ないですし、銃士さんは戦闘能力も高かったですからメリットはあるかと」


銃士「そうやそうや!」


商人「……そういうわけで人出が欲しい時に臨時で雇う形でいきましょう」


銃士「そうやそう……へっ?」



エルフ「まあ、腕が確かならヘルプが欲しい時に入ってもらえばいいかな」


盗賊「……それくらいなら問題ないか」


赤魔「盗賊が譲歩するなら俺もそれでいいぞ!」



戦士「……銃士、そういうことでヘルプが欲しいときは頼む」


銃士「なんやそれ!?」


エルフ「呼んだら先約入っていてもこっち優先だからね」


銃士「はぁ!?」


エルフ「あと、チームへの仮入会金として100G徴収するから」


銃士「へぁぁ!?」


エルフ「それじゃよろしく♪」


銃士「あ、あんまりやぁ……!」



銃士が(ヘルプとして)チームエルフに加わった!



to be continued...

○戦士メモ

・タイラントドラゴン:今まで戦った相手の中でも格段に強かった。多くの加勢がなければ負けていた。

・領主の貴族:結局、長男の言葉を飲んで、獣人の村については潔白とのお触れ書きが出た。しかし少数民族と人間たちの隔たりは根深い。



○エルフメモ

・銃士:童貞。

・ケンカ別れ:理由は仕事で護衛した女の子に一目惚れした際、その子は戦士を好きになって振られたかららしい。後で戦士に詳しく聞かないと。ほらチームの運営的なアレだよ、うん。



>>352コンマ2桁
ゾロ目:???
ゾロ目以外:本編通常進行

神よ…


・・・
【後日・戦士宅】


エルフ「ひまだー、かまえー」


戦士「故郷の家族に手紙書いてるから後でな」カリカリ…


エルフ「~~」


エルフ「うるへー! 手紙と可愛いエルフちゃんのどっちが大事じゃー!」がばっ


戦士「おま! 危ねえだろ!」


エルフ「ふんふーん♪ そうだ、エルフちゃんが添削してあげるよ」ぱたぱた…


戦士「首に手を回したまま足ばたつかすなよ……だいぶクビ締まってる……っ!」ググッ…


エルフ「あはは」ぷらぷらっ


戦士「こんにゃろ!」ぐいっ


戦士はエルフを持ち上げた


エルフ「きゃー♪ 馬鹿力ー♪」ぷらーん


戦士「(お前には負けると思うがな……言わないけど)」



戦士「ったく」すたすたっ


エルフ「やだー、ベッドに連れて来て何するつもりー? えっちー」ぼふっ


戦士「何もしねえよ!」


エルフ「知ってたー♪」


戦士「~~」


エルフ「あはは」


戦士「もう少し寝とけ」すたすた


エルフ「断るよ」



この後同じことを2回繰り返した




エルフ「戦士の体は硬くて座り心地は微妙だね。それに文章も硬いって。もっと柔らかくしたら?」ぼふっ


戦士「そうか? あとお前が邪魔で上手く書けないんだが」


エルフ「すぐに責任転嫁するんだから」


戦士「いや、責任転嫁というか……まあ、いい」


エルフ「はい出た。『まあ、いい』」キリッ


戦士「そんな風には言ってないだろ……」


エルフ「まあ、いい」キリッ


戦士「~~」


エルフ「あ、それと、私のことはもっと賢く可愛く伝えてよ。この文章からじゃ全然伝わらないよ」


戦士「お前はこんなもんだろ」


エルフ<<ズゴッ


戦士「鳩尾に頭突きはやめろ……っ」


エルフ「全くリーダーへの敬いが足りてないよ」


戦士「敬って欲しいならせめて独り立ちしろよ……」


エルフ「うるへー。……そういえば、君の元仲間の童貞くんが言ってたけど、依頼人の娘に告白されたらしいじゃん? 詳しく聞かせてよ」


戦士「別に取り立てて話すことは特にないな。普通に護衛して、暗殺に来た刺客を倒しただけだ」


エルフ「普通ってなんだ……」


戦士「それに告白というか、専属の護衛にならないかという申し出だ。あいつは拡大解釈しすぎなんだよ」


エルフ「……ウソは言ってないの? 今はやり取りはある?」


戦士「ウソ言ってどうするんだよ。まあ、護衛はもう必要なくなったようだし、たまにパーティの警護の依頼が来るくらいだな」


エルフ「(うーん……グレーかなぁ?)」


エルフ「とりあえず銃士は依頼人の娘に手を出そうとしたクズ野郎ということでオーケー?」


戦士「いやぁ、別にあいつは何もしてないと思うぞ? 基本的に口では色々言うが実際に気になった女性の前だとめちゃくちゃ奥手になるんだよ」


エルフ「生粋の童貞じゃん」


戦士「そう言ってやるな……」


エルフ「戦士も童貞だしねー、たはは」


戦士「ほっとけ」


エルフ「やあやあ童貞の戦士くん? 可愛い女の子を膝の上に乗せて、何か思うところはないのかい? どきどきしてる? どんな気持ち? ねえ、どんな気持ち?」にやにや


戦士「そうだな……柔らかくていい匂いがするから心地いいな」


エルフ「……」ぼぼっ…


戦士「おいおい、耳まで赤いぞ。言われるのには慣れてないんだな」にやっ


エルフ「……童貞のくせに生意気だ!」ズゴッズゴッ


戦士「いってぇっ!?」


戦士「そういえばお前は家族に手紙を出したりしないのか?」


エルフ「……べつに必要ないしー」


戦士「だが、家族も心配してるだろう? 安心させてやれよ」


エルフ「うっさいなー。事情も知らないくせに」


戦士「……それはそうだな。どんな事情があるんだ」


エルフ「いや、言わないけど?」


戦士「……」ポンポン


エルフ「……急になに?」


戦士「他意はないさ」


エルフ「あーん? 勝手に推測して憐れんでるとかだったら股間に『爆杖殴打』だかんね」


戦士「クリティカルじゃねえか。まあ、話したくなったら話せよ」ナデナデ


エルフ「……ん」


ドンドンッ


エルフ「……ちっ。うざったいのは、どちら様?」ぴょんっ


ガチャッ



銃士「せんしー! 久しゅう会わんかったしサシ飲み……エルフ!?」



エルフ「……帰れ」バタンッ


銃士「ちょぉっ!?」


戦士「おいおい……」


・・・

銃士「一緒に暮らしとるやと!?」


エルフ「声デカい。うるさい。不快。近所迷惑」


銃士「堪忍してや……」


エルフ「堪忍してやるからさっさと帰って」しっしっ


銃士「エルフは手厳しいなぁ……」


エルフ「なんで呼び捨てにしてるの? 礼儀知らずなの? 他人との距離感が掴めないタイプなの? ほんと生理的に無理だから帰って欲しいのが分からないの?」


銃士「か、堪忍してやエルフちゃん」


エルフ「うわっ……」


銃士「……エルフはん」


エルフ「そもそも名前呼ばないで欲しいね」


銃士「……」しょぼん…


戦士「そんなに邪険にするなよ……」


エルフ「だいたい古都の人があまり好きじゃないんだよねぇ。自分たちの文化とか言葉に自負とか持ってるのはいいけど、それが他所でも当然みたいな顔してるのが受け付けないよ」


銃士「それは偏見やで! 別に俺のことを悪く言うんはええけど、それは許せへん! みんなええヤツばっかや!」


エルフ「はいはい……じゃあ、訂正するから帰って」


銃士「どんだけ帰って欲しいん!? さすがの俺も傷つくわ!」


エルフ「別に君が傷付こうが私は傷つかないし同情もしないよ。そんなわけで早く帰ってよ」



戦士「エルフ。それくらいにしとけよ」


エルフ「……」はぁ


銃士「(正直ご褒美やから止めんでええのに……いつも余計なことばかりしくさるんやから)」


戦士「それで二人で飲みに行くのか? 」


銃士「ええと……」ちらっ


エルフ「行ってくればいいじゃん。別にそこまでついて行ったり制限したりしないっての。エルフちゃん、そこまでメンドくさくないからね」


戦士「多少の自覚はあったんだな」


エルフ<<ゴスッ


戦士「悪い悪い」


銃士「(見せつけてくれるやんか……)」



エルフ「というか、早く仮入会金の100G払ってよ」


銃士「あれホンマやったん!?」


戦士「真に受けなくていいぞ」

・・・
【大衆食堂】


銃士「お前の彼女、めっちゃアタリきついわぁ」


戦士「別にそういう関係じゃないが」


銃士「はあ!? 一緒に暮らしとるんやろ!?」


戦士「居候だ、居候」


銃士「なんで戦士ばっかり良い目見とるん? 俺かて女の子養いたいわ。むしろ養って欲しいわぁ。ヒモになりたい」


戦士「上手くいけばいいな」


銃士「雑な返ししよってからに……もうヤルことヤッたん?」


戦士「はあ?」


銃士「戦士までもが大人の階段上ってしもたんか……? しかもエルフ族と?」


戦士「そんな関係じゃないって言ってるだろ」



銃士「いやぁ、居候するお礼的感じで乳でも揉んどるんかなぁと。まあ、お前はそういう男やなかったわ。ほんまについとるんか? 」


戦士「疑う余地があるか?」


銃士「もしかして不能なん? 同じ男として同情するわ」


戦士「……その方が気楽だがな」


銃士「……一緒に暮らしとるんやったら、ぶっちゃけ下の世話どうするん? 泡のお風呂屋さんデビュー……?」


戦士「何の話だよ。その辺は……まあ、お互いに暗黙裡に配慮するだろ……」


銃士「もしかして他のメンバーとできてるんか……? 爛れたパーティなんか?」


戦士「お前はろく次から次へと下世話な想像ができるな」


銃士「男なんて頭の中の9割方はエロいことでいっぱいやろ」


戦士「自分自身がそうだからって、それが常識だと思うなよ」


銃士「いや、みんなそうに決まっとる!」


戦士「まあ、お前の中ではそうなんだろうな」


銃士「なんや、みんなして俺にアタリが強いわぁ……」


戦士「言い過ぎたか? 悪かったよ」


銃士「エルフ族かぁ……一晩でどんなに安くても500Gからやろなぁ。一月の稼ぎがパァやな」


戦士「……」


銃士「下ネタはやめるさかいに、睨むんはやめえや」


戦士「お前、エルフか赤魔の前で同じようなこと言ったらぶん殴るからな?」


銃士「随分と入れ込んどるな?」


戦士「……妹みたいなもんだからな」


銃士「そういや、妹おるんやったな。紹介してえや!」


戦士「お前には絶対に嫌だ」


銃士「親友に対して冷たいわぁ」


戦士「一方的に関係を切っておいて親友面とはお前の調子の良さも変わらないな」


銃士「謝るから堪忍してや。なに? オコなん?」


戦士「今の発言で更にな」



銃士「いや、ほんとは縁切りも冗談のつもりやってん。でも、直後に入った仕事が予想以上にでこうて、全然帰れんくてな」


戦士「デカい仕事?」


銃士「他国の大富豪はんの依頼で『悪魔の湿原』でレアアイテム掘りや。そこで現場リーダーやってたんよ」


戦士「へえ……」


銃士「大変やったで。死人やら病人やらがガンガン出てな? それでもどんどんと新しい冒険者が投入されるんや。むざむざ死なすわけにもいかんから目当てのレアアイテム手に入れるまで半年近くおったな。だいぶ生死の感覚が麻痺してもうたわ」


戦士「……過酷だな。帰ってきたってことは、仕事は終わったのか」


銃士「……」ふるふる


戦士「ん?」


銃士「必要のうなったらしいわ。目当てのアイテムは万病に効く薬草やったんやけど、それを欲しごうとる依頼人はんがポックリしよったさかいに、打ち切りや」


戦士「……そうか」


銃士「後に残ったんは死体の山と毒の後遺症抱えた冒険者だけや。お笑い種にもならへん」


戦士「お前は毒は大丈夫だったのか?」


銃士「俺は加護の魔法使えるからな。俺の指示が行き渡らんかったやつや無視した奴が被害者やな」


戦士「……」


銃士「守れんのはキツいよなぁ。お前ならこういう時どうするんやろ、ってよお考えたわ」


戦士「……俺にもどうしようもできなかったさ」


銃士「……まあ、くよくよししてもしゃあないからな。俺は俺のやることをやるで」


戦士「それしかないな。もっと飲むか」


銃士「おっ、戦士が勧めるんは珍しいわぁ」


戦士「俺だってたまにはそういう気分になるさ」


銃士「感傷的なやっちゃな。そうだ、詫びにこれをお前にやるんやった」


戦士「これは?」


銃士「悪魔の湿原で取れたレアアイテムやな」


戦士「いいのか?」


銃士「別に報酬はたんまりもろうてたし、他のアイテムを換金して懐は潤っとるさかい、気に病まんでもろうてくれ」


戦士「まあ、そういうなら貰っておこう」



戦士は『解放の宝玉』を手に入れた!



戦士「綺麗な宝石だな」


銃士「なあ? まあ、お前は武器の方が嬉しかったかもな」


戦士「はは、そうだな。さ、飲むか」


銃士「お前の話も聞かせえや。あ、それよりも商人ちゃん……商人くんのことをやな」


戦士「何故また……」



銃士「あんだけ可愛いんやったら、男でも問題ない気がしてきてもうた」



戦士「血迷ってる、血迷ってるぞお前……」


銃士「あない可愛い子が女の子なワケありひん!」


戦士「おい……」


銃士「俺は正気に戻った!」


戦士「ダメみたいだな……」



・・・

エルフ「あまりに遅いから様子を見に来たら……」


戦士・銃士<<すやぁ……


エルフ「よくお店で熟睡できるよね……はあ、商人でも連れてこよ」


・・・

<<すげえな、あの大男を背負ってる……

<<二人とも小柄なのに怪力だな……


エルフ「まったくこいつら……! 戦士は無駄に重いんだよ!」


商人「ふわぁ……深夜に呼び出されたと思ったら酔っ払いの介抱ですか……戦士さんがここまで酔ってるなんて珍しいですね」


エルフ「まったく……私と一緒の時は全然飲まないくせに……!」


戦士「ぅ……エルフ? すまん、自分で歩けるから……」ウトウト…


エルフ「いいから寝てなよ! まったく今度お返ししてもらうからね」


戦士「すまん、ありがとう……」ウトウト…


商人「銃士さんの住所分からないんですけど、戦士さんの部屋でいいですか?」


エルフ「そうしたら、せっかくのチャンス……い、いや狭いから無理! うん狭いから!」


商人「えぇ……まあ、はい。なんかもう、お好きにどうぞ」


エルフ「や、だから、だからだね……えっと……」


商人「ああ、大丈夫、大丈夫です、はい」


エルフ「何がだ! その温かい目をやめろ!」


・・・

エルフ「やっと着いた。おりゃっ」


戦士「ぅぅ……」ドサッ


エルフ「おーい、吐いたりしないでよー?」


戦士「……」スゥスゥ…


エルフ「しっかし酒くさいなぁ」


エルフ「……」すんすん


エルフ「酒くさい!」


エルフ「……」くんくん



エルフ「まったく無防備に寝ちゃって……女の子なら色々と危ない目に遭っても知らないよ」


エルフ「……ええーと、着替えないとダメだよね? 仕方ないなぁ! めんどくさいけど仕方ないなぁ!」ドキドキ


エルフ「ほ、ほら着替えさせてあげるから手を挙げて!」


戦士「んー……いらん……」


エルフ「い、いいから! ほら、私がイヤだから!」


戦士「んー……」


エルフ「よ、よっと……」ぬがしぬがし




エルフ「……まあ、熱いなら私の体温がちょうどいいかもよ? ほら砂漠とか人肌の方が涼しいっていうし……ね? ねっ?」



するっ…ぱさっ…



戦士「……」



エルフ「……っ」のしっ



すっ



エルフ「せ、せんし……っ」







戦士「……うぷっ!」ぐぐ…




エルフ「えっ!? ちょっ……桶! この桶に!」



戦士「うぅ……おぇぇ……」ぼちゃちゃ…



エルフ「……」さすさす…


戦士「おぇぇ……」びちゃびちゃ…


エルフ「まったく……ほら、水」


戦士「……ん」ごくごく…



パタッ



戦士<<すやぁ……



エルフ「はぁ……やっぱり戦士だわ」



エルフ「……寝よ」




・・・

チュンチュン……



戦士「んぐ……あたまいてぇ……」ズキズキ…


エルフ「……」すやすや…


戦士「……うん? なんでこいつ下着なんだ? ……え? なんで俺はパンツだけなんだ!?」


エルフ「うるさい……あぁ、起きたんだ」ふわぁ


戦士「……エルフ、これは一体」


エルフ「……ひどいよ戦士……私、初めてだったのに……あんな乱暴に……」ぐすっ…


戦士「……」サァ…


エルフ「何回もやめてって言ったのに……まさか、覚えてないの……?」ぐすっ


戦士「あ、え、ま……?」


エルフ「……責任とってよっ」



戦士「ほ、本当にすまなかった! 責任は取る! すまない!」ガバッ


エルフ「(……本当に信じたし)」


戦士「すまない……! ああ、俺はなん
てことを……!」ガタガタ…


エルフ「(……)」


エルフ「……本当に嘔吐物の処理をさせるなんて最低!」


戦士「うぅ……へっ?」


エルフ「私に、自分の出したゲロを捨てさせて呑気に寝ちゃって! 人としてどうなの!? あんなに吐くのやめてって言ったのに!」


戦士「あ、うん、すまない?」


エルフ「次はないからね! ちゃんと責任もって禁酒してよ!」


戦士「あ、ああ! な、なんだ……」ほっ…



エルフ「(……ま、今はこれでいいや)」




to be continued...


○戦士メモ

・悪魔の湿原:隣国の領土にまたがる広大なダンジョン。8つのダンジョンの中で一番広い面積を持つとされる(『不帰の虚』は除く)。ダンジョン全体に毒の霧が広がっており、その水は猛毒である。それらに対する知識と対策を持たずしてこのダンジョンに挑むことは自殺行為である。

・アルコール:ここにおいて無期限に断酒することを誓う。



○エルフメモ

・手紙:戦士はわりと筆まめなのか二週間に一回は家族に手紙を出している。家族や友人、その他からの手紙は机に保管してるみたいでかなりの量だから全然読み終わらないよ。

・責任:好きでもないのに取ってもらっても嬉しくないし。いや、そもそも戦士なんかに取ってもらっても嬉しくないし。……別に事実を話して後悔とかしてないし。



>>379
1.日常
2.ダンジョン

2


【後日・カフェにて】



エルフ「はい、それじゃあミーティングを始めまーす」


戦士「ああ」

商人「はい」

赤魔「おう」

盗賊「……」

銃士「あいあい」



エルフ「まずはこの前の一件についてもう一回話し合おうか。その後、次の予定について話し合おう」


戦士「結局、この前のテロの真犯人は盗賊の姉なのか?」


商人「(いきなりぶち込んで来ますね……)」


盗賊「そうだろう。私にはその真意も、奴がどのような勢力と結び付いてるかも掴めていないが……まあ、ロクでもないのは間違いない」


商人「爆弾テロに魔物を使って兵士の襲撃ですもんね……」


銃士「自由に魔物を転移させれるんやとしたら、アカンなぁ。街中に転移させられたら大パニックや」


エルフ「『魔物の洞穴』でもヤバいよ。街に近いしね」


商人「でもそうしたら、どうして今回はまず爆弾を使ったんでしょうか。転移に制約があるのか、何か裏があるのか……あれから考えてみましたが答えは出ませんね」


盗賊「一つ確かなのは黒幕がいることだ。あのイカサマ女は手駒に過ぎないだろう。あいつはリーダーをやるようなヤツではないわ」


赤魔「そうなると黒幕はサモナーか」


盗賊「そうね」


エルフ「盗賊はそのサモナーとかいうのに復讐したいんだよね? 何をされたの? セクハラ?」


盗賊「村を焼き払われた」


エルフ「わーお」


戦士「おい、エルフ」


エルフ「不謹慎だったね。反省してまーす」


戦士「おい……」


盗賊「別にいいわ。過去の話よ」


エルフ「言葉と行動が一致してないだよねぇ」


商人「そういう時は行動を基に判断するのがベターかと」


盗賊「……そうね。水に流せてないわね」


エルフ「うんうん、素直な子は好きだなぁ」


盗賊「……」ふぅ…


赤魔「話が逸れてるだろ。大事なことはなんだよ」


エルフ「うわ、黒チビから真っ当な意見が出てきた」


赤魔「いちいち茶化すなよ!」


エルフ「何をそんなにイラついてるの」


赤魔「だから……!」


商人「ごほっ! まあ落ち着いて話を進めましょう」


エルフ「ほいさ」


赤魔「……ああ」


銃士「(商人くん、やるやん。あとこの前は迷惑かけてゴメンやで)」



商人「イカサマ師は賭場から姿を消していました。誰も行方は分からないようです」


エルフ「次は勝たせてくれるって約束だったのに……」ぐてっ


商人「……それも言及したいところですが、今はこのイカサマ師の置いていった報酬アイテムについてです」


商人は『紅蓮石』を取り出した!


商人「これは『紅蓮石』です。売値は2200Gです。強力な炎の力が宿っており、強力な魔法道具の素材などに用いられます」


エルフ「2200G石だぁ」


戦士「下手な宝石より高価だな」


銃士「初めて見るわ。どこで採れるん?」


商人「……『憤怒の火山』です」


赤魔「憤怒の火山……『不帰の虚』に次ぐ最難関ダンジョンかよ」


盗賊「……ヤツはそこにも手を伸ばしてるのか」


商人「ええ、おそらく」


戦士「別に採取してきたとは限らないんじゃないのか? どっかから盗んで来た可能性もあり得るだろあ?」


商人「いえ。紅蓮石の総量は詳しく測定されていて、その用途や行方まで記録されてるんです。原石のままの紅蓮石は記録上もう存在しません。ほぼ確実に新たに採取されたものかと考えられます」


銃士「なんでそこまで詳細に記録されてるん?」


商人「『憤怒の火山』は現在封印されてるんですよ。それで誰も入ることは出来なくなっているはずなんです。採れなくて貴重なアイテムですから加工の際に政府に認可を貰わなければいけなかったようです」


赤魔「聞いたことあるぞ。生還者の大賢者が危ないからってダンジョンを封印したって」


銃士「ほへー」


エルフ「ダンジョン冒険者のくせにそんなことも知らなかったの?」


エルフ「(私も知らなかったけど)」


銃士「いやいや、本職はダンジョン冒険者やないし。なぁ?」


戦士「ああ。傭兵だな」


銃士「せやせや」


エルフ「無職たちめ」


戦士・銃士「無職いうな!」


商人「(この人たちすぐに本筋から脱線しますね……)」


赤魔「……」いらいらっ


商人「ごほっ、ここで大きな疑問が出てくるわけです」


盗賊「ああ」


商人「封印されているのにどうして紅蓮石を持っているのか」


エルフ「封印を破って入ったから」


商人「そうしたらもう少し騒がれているはずです。見て来たわけではありませんから断定はできませんが、封印は破られていないと思われます」


エルフ「転移石で出入りしてるのかな?」


商人「それはあり得ますね。ただ転移石が火山内部にあるのが前提ですが」


戦士「封印を施した大賢者とやらが敵と繋がっている可能性は?」


商人「大賢者は現在消息不明です……あり得なくもないかと」


銃士「そのサモナーとやらと大賢者が同一人物とかありえへんの?」


盗賊「有りうる」


商人「何か根拠はありますか?」


盗賊「サモナーも非凡な魔法の使い手だった。転移石を作り出すほどだからな」


銃士「そうするとそもそも憤怒の火山だけ封印したのも不審やない? 『不帰の虚』とか他のダンジョンも充分危険やのに」


戦士「……火山に何かあるのか?」



赤魔「……憤怒の火山に行きたいな。きっとイカサマ師は憤怒の火山まで来いと挑発してるんだろ」


エルフ「見つけてみろみたいなこと言ってたもんね。罠かもしれないけど……あの性悪パイオツちゃんは読み切れないなぁ」


商人「しかし行こうにも、厳重に封印されてると思いますよ。まずは封印を解かないといけませんが気が遠くなるほど大変かと」


エルフ「どうやれば解けるの? 2200G石いっぱい採りたい。10個も集まれば22000Gだよ? 100個で220000G……うへへ……」


銃士「えらい大金やなぁ」


商人「封印を解くにはレアアイテムが3つも必要なんですよ。『解放の宝玉』、『セフィロトの杖』、『開闢の台座』です」


赤魔「なんか大それた名前だな……」


商人「記録ですとダンジョンにあるんですけどね。『悪魔の湿原』、『幻惑の街』、『蠢く砂漠』にそれぞれあるみたいです」


エルフ「め、めんどくせぇ……! RPGじゃないんだから!」



銃士「……あれ? なあ戦士」


戦士「ああ。商人、こいつをどう思う?」スッ


商人「はい? ええと……『解放の宝玉』じゃないですか!?」


盗賊「!」


赤魔「ええ!?」


エルフ「え、どういうこと? なんで戦士が持ってるの?」


戦士「銃士が『悪魔の湿原』で見つけたんだよ」


銃士「わはは、都合のええこっちゃ」


盗賊「そうなると……あと二つで『憤怒の火山』に入れるか」


商人「うーん……このアイテムが存在するならやっぱり封印は解けてないのでしょうね。しかし、幻惑の街も蠢く砂漠も難関ですよ……」


赤魔「蠢く砂漠はたまに発見の話を聞くけど、今はどうなんだ?」


商人「ここ1年は話を聞きませんね」


エルフ「幻惑の街もヤバいって言うよね。生還者のほとんどが眠りこけたりボンヤリしたままなんだっけ? みんな、そのまま緩やかに衰弱死するって聞いたよ」


赤魔「らしいな。無事な生還者は幻を見たって話だ。とても幸せな幻なんだってさ」



戦士「赤魔は結構ダンジョンに詳しいんだな」


赤魔「ダンジョン冒険者になるのが小さい頃からの夢だったからな」


エルフ「今も小さいままだけどねー、ぷぷっ」


赤魔「お前には言われたくねーよ!」


商人「幻……まあ、『幻惑の街』というくらいですからね」


盗賊「この前に拾った『真実の鏡』は使えないかしら?」


商人「いけると思います。おそらくどんな幻も見破るかと」


銃士「実は毒物による幻覚やってんなら俺の加護魔法で何とかなるはずや」


エルフ「『幻惑の街』ねえ……何か金になるアイテムはあるの?」


商人「『ビスクドール』が1つ1000Gで取引きされてますね。熱心な愛好家がいますから」


エルフ「よっしゃ1000G人形を集めに行こう!」


戦士「相変わらず現金なやつだな……」



エルフ「ついでに『パチスロの杖』だか『ドンジャラの台座』だかも探すよ」


戦士「ついで扱いかよ」


商人「全然名前違いますしね……」


赤魔「よしっ、それじゃあ次の目的地は『幻惑の街』だ!」


エルフ「あ、こら! それを宣言するのは私だ!」


赤魔「はぅ、チームレッドのリーダーが宣言するのは当たり前だろ?」にやっ


エルフ「チームエルフだー!」


赤魔「いーや、チームレッドだね!」


盗賊「店で騒ぐな」


エルフ・赤魔「はい……」



銃士「そういう力関係なんやなぁ」ヒソッ


商人「そうなんです」ヒソッ


戦士「盗賊は怒らせないようにしとけ」ヒソッ


盗賊「聞こえてるから。わざとかしら?」


「「「ごめんなさい」」」



chapter3:不穏の始まり
ーーーーーーーー


○戦士メモ

・憤怒の火山:今までわずか3名のみの生還者しか記録されていない最難関ダンジョンの一つ。現在は生還者の一人である大賢者によって封印されている。イカサマ師たちはここにも干渉しているようだが真偽のほどはどうなのか。

・サモナー:盗賊曰く転移石を作った人物。魔法に恐ろしく長けているそうだ。『憤怒の火山』を封印した大賢者の同一人物という仮説も考えられるが真偽は分からない。



○エルフメモ

・ミーティング:淡々とやって終わるよりも雑談を挟んでわいわいやった方が良い案が出たり、関係の深まりにも繋がるよね。賢くて可愛いリーダー、エルフちゃんは色々と考えているのだ!

・無職:童貞たちのことだねー

・赤魔のイライラ:重い日だったのかな? まあ、盗賊の苦悩を自分のことのように感じてるんだろうね。単純だから少し気を紛らわしてやればすぐ元気になるから盗賊に比べたら遥かに扱いやすいもんだよ。



○商人の鑑定

・紅蓮石:売値は2200G。非常に貴重にも関わらず、値段がそこまで高くないのは加工技術が低いために持て余し気味なことが原因です。技術の進歩とともに需要は増大していくでしょう。

・解放の宝玉:売値は貴重なため付けられません。青く輝く宝玉には膨大な魔力が込められています。『セフィロトの杖』、『開闢の台座』と揃えることでその真価を発揮するようです。

すごい今更だが>>255の最後に

chapter2:異形の島
ーーーーーーーー

を挿入しとくべきだった


うだうだ喋ってないでさっさとダンジョンにいってくれ

・・・

曇天の下、俺は固唾を飲んだ。

普通には変えられない現状を変えるため、ここまで来た。

『幻惑の街』。

かつては商業都市であり、現在はダンジョンと化した街。

多くの人と金が行き交っていたかつての街は今もなお死ぬほど富を欲する人間を惹きつけている。

誘蛾灯に群がる蛾の如くーーそして俺も蛾の一匹。

恐ろしい噂は何度も聞いた。

それでも俺は挑まなければいけない。

金が要るのだ。

腹を空かせた子どもたちに食わすため。

病に臥せた妻に薬を与えるため。

手放さざるを得なかった土地を取り戻すため。


街の外れの一角に冒険者たちが倒れていた。

近寄って見てみれば、眠りこけているか、虚ろに宙を見上げているかのどちらかだった。

彼らは死ぬまでこの状態らしい。

不気味な魔物によって運び出されるか、自分でふらついてここに辿り着くそうだ。

一日に一回、搬送用の馬車が訪れてここに溜まった廃人たちを連れていくのだとか。

数日以内に正気に戻らない者はそのまま延命措置が打ち切られるらしい。

俺も同じ運命を辿るかもしれない。

恐ろしいが、それでも俺には他に術がなかった。

それに全員が廃人になるわけじゃなく生還者はちゃんといる。

俺はきっと大丈夫。

俺は特別だ。

昔から俺は特別なんだ。

魔物との戦いはおろかケンカすらしたことないが、他に生き残ってる奴がいるのに俺が死ぬわけない。

そう自分を奮い立たせてダンジョンへと足を踏み入れた。


・・・

拍子抜けした。

街の中は見惚れるほどに美しかった。

手入れの行き届いた植え込み。

透明な水を吹き出す噴水。

鮮やかなパラソルと真っ白な外壁。

露天や屋台が並び、食料品やら服飾品やらが晴天に晒されていた。

ダンジョンとは不思議な場所だ。

この服飾品などは持ち帰ってもいいはずだが少し逡巡した。

ダンジョンなのだから罪悪感を覚える必要はないはずだと自分に何度か言い聞かせた後、袋にアイテムを詰め込み始めた。

出来る限り値の張りそうなアイテムを懸命に探していると童心にかえる気分だった。

ダンジョンなんて大したことないじゃないか。

この調子なら俺は金持ちになれるぞ。

「そこのお前、何をしてる?」



唐突に肩を叩かれ思わず体が硬直した。

恐る恐る振り返れば官憲が立っていて俺を睨みつけていた。

「白昼堂々と窃盗なんてふてぶてしいやつだ」

ここはダンジョンのはずなのにどうして警邏が?

「何をおかしなことを……大人しく詰所まで来い!」

俺はとっさに逃げ出した。

邪魔な人混みをかき分けて前へ前へと無我夢中で足を進めた。

「待て!」

警官は追い掛けてきているようだ。

捕まったら逮捕されてしまう。

そうしたら俺の人生は終わりだ。


イヤだ……イヤだ……!


「こっちよ!」

少女が俺の手を掴んだ。

「こっちの路地ならきっと撒けるわ!」

俺は驚いたが、少女に導かれるままに入り組んだ裏路地を走った。

やがて怒声は聞こえなくなった。

「撒けたみたい。よかったわね」

乱れた息を整えようと深呼吸を繰り返した。

胸の高鳴りが苦しくて、それでいて心地良かった。

やっと落ち着いて、俺は少女に礼を言った。

「良いのよ。それより少し一緒に遊びましょう?」

遊ぶ暇なんてない。俺は家に帰らなければいけない。

俺の帰りを待っているのだ…………誰が?


……あれ?


「ねえ、お願い」

少女の縋るような目。

その視線に耐え切れず、たまらず頷いた。


ありがとう。それじゃあ、日が暮れるまで一緒に遊びましょう」

日が暮れるまで……それくらいならお母さんも許してくれるはずだ。

ああ、待たせているのはお母さんだった。

……どうして疑問に思ったのだろう?

新しい友だちが出来たと話せば、仕方ないわね、と笑って許してくれる。

それから僕たちは一緒に遊んだ。

気づけば他の子たちも混じっていた。

ああ、とても楽しい。

このまま楽しい時間がずっと続けばいいのに……。

日はまだ暮れない。

まだまだ僕たちは遊べるんだ。


俺は……僕は……あれ?


何故か少し心がもやもやしたけれど、そのうち気にならなくなった。


・・・

「また、お友だちが増えたわ」


「もっと増えないかしら。もっと増えないかしら」


「みんなといれば楽しいわ」


「いつまでも終わらない日曜日」


「なんて素敵なのかしら」



「ーーああ、また新しい人たちが来たのね」


「6人も……全員とお友だちになれるかしら」



「ーー真実の鏡?」



「……お友だちになれないかも」



「お友だち以外はここにいちゃダメなのに」



・・・
【幻惑の街・入り口】


盗賊は真実の鏡を使った!


幻が打ち消された!


エルフ「わーお、綺麗な街並みが消えちゃった」


赤魔「廃墟だな。嫌なニオイがする……」


盗賊「さっきの幻……確かに対策なしだと知覚するのも大変そうだな」


銃士「真実の鏡さまさまやな」


商人「……しかし、外にいた冒険者たちに鏡の効果はありませんでしたね」


銃士「予防にはなっても、治療にはならへんのかな?」


戦士「そうすると別行動は避けるべきだな」


エルフ「御手洗いとかどうする?」


赤魔「鏡を割って二つにするのはどうだ? お、我ながらいい考えな気がするぞ」


商人「なっ……それを割るだなんてとんでもない!」


赤魔「名案だと思うんだけどなぁ」


盗賊「その時が来たら男たちには犠牲になってもらうしかないか」


銃士「ひどいなぁ!?」


盗賊「冗談だ」


戦士「(冗談に聞こえないが……)」


エルフ「最低でも鏡が二つあれば良かったんだけど」


盗賊「やっぱり割るか」


商人「ちょっと!?」


盗賊「割ると本当に効果が消えるの?」


商人「ええっ……綺麗に分割すれば多分……いやでもレアアイテムを傷付けるなんて……」



盗賊「はっ」ズバッ



盗賊は『真実の鏡』を真っ二つにした!



商人「」


エルフ「おおー」


銃士「な、なんで手刀で鏡を真っ二つに出来るん……?」


戦士「もはや達人だな……」


赤魔「盗賊にかかればこれくらい朝飯前だぜ!」どやっ


盗賊「だからなんでアンタがイキるの」はぁ…


商人「レ、レア……レアアイテムががが……!」


銃士「あらら、商人くんが壊れてもうた」


エルフ「状態異常を治す魔法」ゴッ


商人「いたいっ!」


戦士「お前は鬼か」



赤魔「幻を破る効果は残ってるか?」


商人「はい……」どんより…


赤魔「やった! これで解決だな!」


盗賊「上々ね」


商人「……生存した冒険者は共通して少女の幻を見ています。気を付けるべきでしょう」どんより…


エルフ「元気出してよ」


商人「もう少ししたら立ち直ります……多分」


エルフ「二つに割っても効果があるなら便利じゃん? どうせ売れないんでしょ?」


商人「価値が付けられないほど高価なんですよ!」


エルフ「価値が付かないならそんなの無価値と同値だよ。いっそ6等分する?」


商人「これ以上の分割は効果が消えちゃいます!」


エルフ「ちぇっ。じゃあ、男女それぞれで持とうか。そっちは童貞くんが持っておいて」


銃士「その呼び方はやめてくだはる!? 俺でええんか?」



エルフ「いざという時は君が一番冷静そうだからね」


銃士「お、信頼されとるぅ」


エルフ「やめて、キモい」


銃士「ほんま辛辣やわ……」


エルフ「でもお好きなんでしょう?」


銃士「エルフはん、分かっとる。ぶっちゃけ女の子に童貞呼ばわりされるとかご褒美やと思う」キリッ


エルフ「……あまりにも気持ち悪いから今後はやめるね。名前も呼びたくないくらいだよ」


銃士「おうふ」


盗賊「……赤魔、絶対に銃士と二人きりになっちゃダメよ?」


赤魔「あ、ああ」


銃士「それリアルに傷つくやつや……」


戦士「そろそろ無駄話は切り上げて進もうか」


商人「そうですね」


・・・
【幻惑の街・時計塔前】


エルフ「とりあえず街の中心の時計塔に来たけど……んー、開かないね?」


赤魔「これ封印かかってるな」


盗賊「例の『解放の宝玉』は使えないかしら?」


商人「無理です。あれはあくまで憤怒の火山の封印を解くものですからね」


エルフ「使えないなぁ」


銃士「そういえば、そういうのどこ情報なん?」


商人「はい?」


銃士「『解放の宝玉』や封印の解除方法なんて俺は知らんかったわ。どこでそういう情報を得てるん?」


商人「基本は図書館の資料です。あとは官公庁の資料ですかね。申請して許可が降りれば一部は閲覧できますから」


エルフ「まあ、勝手にダンジョンを封印したら、色々と言及されるよね。精確なのかは別として」


商人「もちろん全ての情報が精確なわけではありませんが、ご存知の通り我が国はかなりの文書主義ですよね。それに大賢者は政府からの派遣で火山に行ったため公式の記録にあるんですよ」


銃士「ほへー。紙に残すのはええこっちゃな」



商人「トレードオフとしてレッドテープが深刻ですけどね」


エルフ「横文字大好き商人さん」


商人「……二者択一として繁文縟礼が深刻ですけどね」


エルフ「難しい言葉大好き商人さん」


商人「……悪い点として、書類の書き方とかにうるさくてかなり時間がムダになってる側面もありますけどね」


エルフ「もう少し砕いてみようか?」


商人「…………」


戦士「……」ぽんぽんっ


商人「な、なんです……?」


戦士「なんとなく」わしゃわしゃ


商人「……」


銃士「俺もやる俺もやる」


商人「え、やめてください」


銃士「……」


戦士「……」ぽんぽんっ


銃士「お前にやられても喜びもトキメキもないわ!」べしっ


商人「それと僕自身、アイテムを見るとその概要が分かるんですよ」


銃士「なんやそれ」


商人「生まれつきそうなんですよね。上手く説明できないですけど……」


銃士「ほぉ……奇特な才能やなぁ。なんにせよ商人くんは色々と頼りになるな」


エルフ「まあ、エルフちゃんが一番賢いけど」


赤魔「あはは、よく言うぜ」


エルフ「おりゃっ」ぶんっ


赤魔「あぶねえな!?」


エルフ「この黒チビはいちいちケンカ売ってくるねぇ……喜んで買うよ?」


赤魔「事実を言って何が悪いんだよ。まあ、そっちがその気ならやってやるよ」


盗賊「……」ゴリリッ


エルフ・赤魔「……」びくっ


戦士「(指を鳴らすだけで黙らせるとは……)」



戦士「……俺たちはいちいち無駄話が多いな。さて、時計塔に入れないなら別のところを周るしかないか」


銃士「本当に開かないんか?」チャキッ



銃士の『クリティカルショット』!



キィィンッッ!


銃士「あらら、ダメみたいやな」


商人「ダンジョンで力業は大抵ロクなことになりませんよ……」


ブブブゥゥゥーーッッ!


銃士「ほあ?」


銃士に即死トラップ!


銃士「ぬわぁぁーっ!」どがんっ


ぱたりっ


赤魔「大丈夫かよ!?」


銃士<<ちーん……


エルフ「あほー……」


商人「気付薬……」ごそごそ…


盗賊「バカにつける薬なんてないわよ。私が蘇生させるわ」


エルフ「意味が違うと思うんだよね。とにかく蘇生魔法が使えるならよろしく」


盗賊「ええ……はっ」ドスッ



盗賊の『蘇生魔法(物理)』!



銃士「ぅぱぁぁっ!?」



銃士は復活した!



エルフ「えぇ……」


赤魔「相変わらず見事な『蘇生魔法(物理)』だ!」


商人「えぇ……」


銃士「いっだぁぁっ! いっだ……いっだぁぁぁぁっ!」


戦士「……今のは魔法ではないんじゃないか?」


盗賊「魔法(物理)だ」


戦士「……そ、そうか」


銃士「俺の扱いひどぉない……? 世界はもっと優しくあるべきや……」しくしく


赤魔「(わりと自分からいじられにいってるだろ)」


to be continued...


○戦士メモ

・幻惑の街:20年前までは地理的条件にも恵まれて商業都市として栄えていたそうだが、ある日ダンジョン化した。ダンジョンからの生還者は比較的多いが、軒並み廃人になっていることを考慮すると難易度自体は高いといえる。



○エルフメモ

・横文字:ナウでヤングなエルフちゃんはレターをコラムからローにリプレースだよ.『、』と『。』のサブスティテューションに,カンマとピリオドもユーズしちゃう.

・即死トラップ:銃士は死ぬ。

・魔法(物理):常識を疑え! インスパイア・ザ・ネクスト!


【幻惑の街・商業区跡地】


『ディフェンダー』を手に入れた!


商人「これは『ディフェンダー』ですね。厚みで非常に頑丈なため盾としても機能します。売値は200Gです」


エルフ「高い! 飛竜草と一緒だよ!」


商人「幻惑の街のアイテムは今までのダンジョンに比べると高価なものが多いですね」


盗賊「難易度もかなり高いから、そう簡単にはアイテムが入手できないのが原因だろう」


銃士「需要に対して供給が少ないから価格が上がるんやなぁ」


赤魔「せっかくだから装備するだろ?」


戦士「そうだな……少し重いが俺の戦い方と相性が良さそうだ……」


エルフ「200G剣……」


戦士「ダメか?」


エルフ「……200G分以上に私を守ってよ?」


戦士「ああ」


戦士は『ディフェンダー』を装備した!



『ホットドッグ』を手に入れた!

『唐揚げ詰め合わせ』を手に入れた!

『小枝チョコ』を手に入れた!



エルフ「食べ物がいっぱいだね」もぐもぐ…


銃士「俺、未だにダンジョンのアイテム食べるの抵抗あるわ……」


商人「大丈夫ですよ。食べられなくなったアイテムはすぐさま消えますから」


赤魔「包装もされてるしな」もぐもぐ…


盗賊「……」ポリポリ…


戦士「食べながら喋るのは行儀悪いぞ」


エルフ「ふぁいふぁい」もぐもぐ…


戦士「ったく……それに二人とも口の周りも汚れてるぞ」ふきふき…


エルフ「んー」


赤魔「サンキュー……戦士ってたまにお母さんみたいだよな」


エルフ「戦士ママー」


銃士「こんなにゴツいママは嫌やわぁ」



エルフ「そういえば銃士の強さはどんなもんかな」カシャッ


戦士「ああ、まだ測ってなかったか」


ステータス解析マシン<<ピピッ……ピロンッ


銃士「お?」


エルフ「戦闘力……たったの5か……ゴミめ」


銃士「よう分からんかどひどぉない!?」



・銃士
HP:1000
こうげき:1000
まほう:350
ぼうぎょ:150
すばやさ:500


エルフ「紙だなぁ」


戦士「やっぱり攻撃力は大したものだな」


商人「武器による攻撃力も加算されるみたいですね」


銃士「さすが俺やん?」


エルフ「儚くて可愛いエルフちゃんよらもか弱いことが分かったよ」


銃士「エルフはんより、まいてはんなりしとるわけやね」


エルフ「うざっ」



赤魔「おっ?」


『天使のペンダント』を手に入れた!


商人「これは『天使のペンダント』ですね。これをつけると幸運なことが起こりやすくなると言われています。具体的な効果としては敵の状態異常攻撃が効き辛くなります。売値は150Gです」


エルフ「またいいお値段だね」


赤魔「戦士にやるよ!」にっ


エルフ「えー」


盗賊「戦士が身に着けておくと盤石だろう」


エルフ「まあ、いいけどね。命あっての物種だし、安全性を高めるのには文句ないけど」


赤魔「それなら最初から不満そうな顔するなよ。構って欲しいからって少しうざったいぞ」


エルフ「はぁっ!?」


銃士「ええやんええやん、いじらしくて可愛ええもんや。なあ?」


エルフ「キモい!」


銃士「酷いわぁ……」よよよ…


戦士「まあ、赤魔とエルフがそう言うなら、俺が使わせてもらおうか」


戦士は『天使のペンダント』を装備した!


戦士「俺ばかり悪いな。その分の守りは任せろ」


赤魔「期待してるぜ!」にっ


赤魔「それにしてもこのダンジョンは一気に大金を稼げそうだなぁ」


エルフ「魔物も全然出ないしねぇ」


ザッ……


銃士「ルーモアをすればシャドーがカットインやな」


盗賊「なぜ横文字にした」


銃士「商人くんの真似や」


商人「僕、そんな頭の悪そうなことを言ってるように思われてるんですか……」


戦士「お前ら、少しは危機感を持ってくれ……!」


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ


・アーミードール
HP:100
こうげき:100
まほう:0
ぼうぎょ:0
すばやさ:200


エルフ「なんだ、弱っちいよ」


赤魔「肩慣らしにさっさと倒しちゃうか!」


盗賊「……そう簡単には行かないみたいよ」


わらわら……わらわら……


商人「ひっ、な、なんて数ですか……!」


戦士「くっ、百はいるか……!」


エルフ「どこに隠れてたの!?」


銃士「んんー、これアカンなぁ。逃げましょ」


戦士「しんがりは任せろ!」


盗賊「さきがけは私だ! ついて来い!」



エルフたちは逃げ出した!



アーミードール<<わささっ……


盗賊「邪魔だ」


盗賊の『加速蹴り』!

盗賊は更に加速する!


商人「ひぃ……!」だだっ


エルフ「エルフちゃんも大人しく逃げとくぅ」だっ



銃士「邪魔やで!」


銃士の『ラピッドショット』!


赤魔「燃えろぉ!」


赤魔の『火炎魔法』!



アーミードールは更に仲間を呼んだ!


アーミードールの大群はナイフで斬りつける!


戦士はパーティを庇った!


戦士「(単体がいくら弱くても数で押されるのはやはり辛い……! 加えて人形だからか怯みもしないか……!)」


盗賊「……!」キュッ


エルフ「どうしたの!?」


盗賊「前方に転移トラップ複数! 私の真後ろ以外を通るな!」


盗賊「(くっ、少し迂闊だったな。幻覚以外も危険なダンジョンだ)」


商人「は、はい……!」


エルフ「(パーティで来た冒険者を分断させたいのかな? 幻覚見せる上に仲間とはぐれさせようなんて趣味が悪いダンジョンだね)」


盗賊「絶対にここより左によるな!」


エルフ「(まあ盗賊がいれば問題ないけどね)」



シャドウサーバント<<ズズズ…


戦士「……!?」


シャドウサーバントはアーミードールの大群を握り固める!


シャドウサーバントの『ドール・キャノン』!


戦士「(これは絶対に防がないとまずい……!)」


戦士はパーティを庇った!


戦士は大きく吹き飛んだ!


戦士「ぐっ……! 避けろ!」


赤魔「いっ……ふにゃぁっ!?」どんっ


銃士「へっ、ちょぉっ!?」どんっ



戦士と赤魔と銃士に転移トラップ!



盗賊「赤魔……!」


エルフ「戦士!」


商人「落ち着いてください! まずは安全を確保しましょう!」


・・・

盗賊「くそっ……! もっと私が警戒していれば……!」ギリッ


エルフ「……」


商人「三人とも重なり合ってたので同じ場所に転移したと思われます。銃士さんが真実の鏡の片割れを持ってますから、すぐに窮地に陥ることはないかと」


盗賊「飛ばされた先が出口のない地下や針の山だったら!? 鏡転移の際にを落としていたら!?」


商人「……それは無事を信じるしかありませんよ。落ち着いて行動しなければ僕たちも危ないですし、助けられるものも助けられません」


盗賊「ああ、そうだろうな。アンタは戦えないものな。自分の保身に走るのも当然だ」


エルフ「盗賊!」


盗賊「……すまない。今のは完全に八つ当たりだわ」


商人「事実ですからお気になさらず。それよりも方針を考えましょう」


エルフ「そうだね。あいつら回復も蘇生もできなくて頼りないし、早く合流しなきゃ」


盗賊「……ああ。悲観的に考えるのもすぐに熱くなるのも私の悪い癖だ。本当にすまない」


エルフ「そういう素直なところ好きだよ、うんうん」




盗賊「転移にも法則がある。計算で方角は求められるわ」カリカリッ


エルフ「へえ……サモナーから教わったとか? それともパイオツ姉ちゃん?」


盗賊「その通り……憎いヤツの教えだろうと使えるものは使う主義よ」カリカリッ


商人「素晴らしいです」


盗賊「……北西ね。距離を出すのはほとんど不可能だが、規模からするとそんなに飛んではいないはずだ」


商人「……ここから北西ですと、かつての行政区でしょうか」

エルフ「行政かぁ……官憲の署とかあるなら、そこに囚われてるとかありそうだよね」


盗賊「ああ。出来る限り敵との戦闘を避けながら進むぞ」


エルフ・商人<<こくっ


・・・
【幻惑の街・行政区】


盗賊「……今だ」


さささっ……


クレイジードール「ケケケ……?」


盗賊「……よし」


商人「はぁはぁ…………はぁはぁ……ぜぇっ……ひゅぅ……」ぐてっ


盗賊「……少し休憩するか」


エルフ「あー、疲れた……お腹もすいた……」


盗賊「だいぶ神経を張り詰めて進んだものね……」


エルフ「……お、食べ物だ!」



『ソイレント缶詰』を手に入れた!




盗賊「カンヅメか。先に備えて腹拵えしておくか」


エルフ「結構あるよ。はい」ぽいっ


盗賊「これは何のカンヅメかしら?」パシッ



商人「……はぁ、ふぅ。もう大丈夫です。バテてすみません」


エルフ「盗賊が早いし仕方ないでしょ」もぐもぐ…


盗賊「すまない。付いてくるからつい、な」ぱかっ


商人「アイテムを食べてるんですか? えーと、それ、は……」ぴしっ


エルフ「このカンヅメ、あんまり美味しくないね」


盗賊「そうか? 私は結構好きよ。二つ目を開けてしまったわ」


エルフ「えー? 商人も食べる?」


商人「……いえ、僕は遠慮しておきます」


盗賊「そういえば、これは何のカンヅメか分かる?」


商人「えっ……さ、さあ……? 『ソイレント缶詰』という名前みたいですけど……」


エルフ「豆類を潰したものかな? なんか健康に良さそうだねー」


商人「……」


商人「(知らない方が幸せなこともありますよね……)」


to be continued...


○エルフメモ

・アーミードール:単体は大して強くないけど百体近くに囲まれれば非常に危険だよ。

・シャドウサーバント:急に現れていた巨大な黒い魔物。アーミードールを雪だるまの如く固めて投げつけてきたよ。

・転移トラップ:方角の割り出しは手計算で何とかなるけど、距離は陽に解けないから高性能な計算機で近似値を求めるんだって。

・クレイジードール:顔がイッちゃってるドールの魔物。油断しているところにこいつが急に現れたら、失神しちゃうかも。



○商人の鑑定

・ホットドッグ:売値は0.2G。粒マスタードが美味しいです。

・唐揚げ詰め合わせ:売値は0.8G。衣はサクッ、お腹はジューシーで、下味は濃い目なため調味料は不要でしょう。レモンはお好みでどうぞ。

・小枝チョコ:売値は0.2G。小枝の形をしたチョコレート菓子です。クランキーとチョコのハーモニーがクセになりますね。

・ソイレント缶詰:売値は10G。人口は指数的に増えても食料の増加はそうはいきません。飢えた世界は悪徳が蔓延ることでしょう。異世界は複数あるように思われるのですが、その全てが豊かな世界ではないようです。


・・・
【幻惑の街・行政区跡地の地下】


赤魔「転移先は檻の中かよぉ……」


銃士「拘留場みたいな造りやな?」


戦士「そうなのか。経験者なだけあるな」


赤魔「えっ」


銃士「生きてればそういうこともあるやろ」


赤魔「普通ないだろぉ……」


戦士「何はともあれ、バラバラにならなかったのは不幸中の幸いか」


銃士「せやせや。明るくいきましょ」


赤魔「そうだな! レアアイテムを見つけてあいつらをびっくりさせようぜ!」


戦士「まずは脱出しないとな」



銃士「また即死トラップあったらどないしましょ。誰か気付薬もっとる?」


赤魔「えっ……?」


銃士「……戦士」


戦士「二つ持ってる」


銃士「さすが戦士、準備がええな」


戦士「普通は保険で持つだろ?」


赤魔・銃士「……」


戦士「お、お前ら……」


赤魔「ほ、ほら、盗賊がいれば何とかなったからさ!」


銃士「どうせ他の誰かが持って来とると思っとったからな」


戦士「ダンジョンを舐め過ぎだろ……」


・・・

赤魔の『大地魔法』!


バキキッ!


銃士「ええ感じや」


戦士「ああ……だぁっ!」ガンッ


戦士たちは柵を破壊した!


赤魔「よしっ!」


銃士「四精霊の魔法ええなぁ」


赤魔「まあな! ……他の属性に比べると人気ないけどなー」


戦士「へえ」


銃士「火以外はマイナーやから、中々習得する機会あらへんよね」


赤魔「黒エルフも四属性派は少ないみたいだなー。俺の村だと結構多かったんだけど」


戦士「地域差があるんだな」


銃士「そういや気になってんけど、『赤魔道士』って回復魔法と攻撃魔法、しかも物理攻撃も中々っていう器用びん……器用で万能な職業やん?」


赤魔「おう!」


銃士「けどエルフはんの話やと、赤魔ちゃんは回復魔法は使えないんよな?」


赤魔「……つ、使えないことはない! 紙で指切ったときとか治りがちょっと早くなるぞ!」


戦士「(自然治癒と大差ないんじゃないのか)」


銃士「エルフはんは回復魔法が使えて攻撃魔法も使えるし、エルフはんの方が赤魔道士として優秀なん?」


戦士「あいつは自分では違うっていってるけどな」


銃士「でもエルフはんの方が中身は赤魔道士っぽいよなぁ?」


赤魔「いやいや俺の方が赤魔道士として優秀だぞ! え、えーと、ほ、ほら! 赤魔道士といえば『魔法剣』が真骨頂だから! 魔法剣が大事だから! うん!」


銃士「えっ、でもエルフはんも杖に魔法を宿らせて戦うよな。実質的には魔法剣やん?」


赤魔「うっ……お、俺の方が赤い!」


銃士「それは服装の問題やん? 職業って服装で決まるもんやないやろ?」


赤魔「うぅ……私の方が赤魔道士だもん! そのうち『連続魔』も覚えるもん!」


銃士「今は使えへんの?」


赤魔「うぅ……」うるっ


銃士「うぇっ!? な、泣かんといてぇな」


赤魔「べ、別に泣いてない……!」ぐすっ


戦士「赤魔はまだまだ強くなるし、今でも十分立派な赤魔道士だ。ほら、飴でも食うか?」


赤魔「……うん。銃士はいじわるだ」ぱくっ


銃士「そんなつもりはさらさらなかったんや。堪忍してえな」


戦士「こいつは無神経なだけで悪いやつではないんだ。どうしようもなく無神経なんだが」


銃士「二回も言わんでええわ」


赤魔「銃士きらい!」ぷいっ


銃士「また女の子に嫌われてもうたか……」


戦士「おおよそ全部お前が悪い」


銃士「俺は責めとるつもりも悪口言っとるつもりないのに、色んな人に毎回そう言われるんよなぁ」


戦士「相手の心情にもっと配慮して発言しろということだろう」


銃士「商人くんなら『ポリティカリィコレクトな発言をするべきです』とか言うんやろなぁ」


戦士「商人は横文字が好きだからな」


赤魔「戦士、戦士、この飴おいしい」


戦士「もう一つ食べるか?」


赤魔「おうっ♪」


銃士「(飴ちゃんで機嫌治るなら楽なもんやなぁ)」


銃士「どうせなら俺のとっときのキャンディでも舐めとく?」


赤魔「銃士きらい」ぷいっ


銃士「あらぁ」


戦士「お前……盗賊がいたら殺されてたぞ……」


銃士「ちょっとしたジョークやん。それに今はおらんからな」


戦士「とりあえず俺が代理で殴っておく」バキッ


銃士「あだぁっ!?」


赤魔「?」コロコロ…

・・・

クレイジードール「ケケケ……」バタッ


クレイジードールを倒した!



銃士「暗闇でこいつは怖いわぁ」


戦士「ライトだけじゃどうにも索敵が上手くいかないな。盗賊がいればまた別なんだろうが」


赤魔「……」がたがた……


銃士「赤魔ちゃん、怖いんなら俺に抱き付いてもええで」


赤魔「……」ギュゥゥッ


戦士「……」ナデナデ…


銃士「けっ、お前ばっかし……」


赤魔「べ、別に怖くなんてないからな! む、武者震いだからな!」ガタガタ…


戦士「そうか」


赤魔「ほ、本当だぞ!」ブルブル…


戦士「わかってるさ」


銃士「後で戦士の浮気をエルフはんに伝えとくわ」


戦士「意味が分からん」


赤魔「べ、別に怖がってないけど、エルフと盗賊には言うなよ! バカにされるだろ! 怖がってないけど!」ガタガタ…


銃士「あー」


赤魔「銃士きらいだ!」


戦士「あんまり赤魔の嫌がることしてると盗賊が敵になるぞ」


銃士「ガチで“処理”されるヤツやん」


戦士「(この状況は俺も危ういかもしれんな)」


赤魔「出口はどこだよぉ……」


戦士「そのうち見つかるさ」


銃士「お化け屋敷デートじゃないんやで!」


赤魔「何がデートだよぉ……そんなことより階段はどこだよぉ……!」


戦士「銃士、ここはダンジョンだぞ。あまり気を緩めるなよ」


銃士「腕組んどるお前らに言われとうないわ! 俺と戦士、どこで差がついたのか……慢心、環境の違い」


戦士「お前は何を言ってるんだ」



銃士「はあぁ……かわええ女の子でも落ちとらんかなぁ」


戦士「……っと、階段だ」


赤魔「やったぁ!」


銃士「……ちっ、おきまりのごとく何かおるな……」



「……ここから出て行ってはダメよ」



銃士「か、かわええ女の子きたー!」



「ねえ、一緒に遊びましょうよ」



銃士「ええねええね。何しましょ? お馬さんごっこ? お医者さんごっこかいな?」


戦士「おい……」


銃士「まあ、チャンバラやろ」チャキッ



銃士の『クリティカルショット』!


ミス!



銃士「物理攻撃は当たらん感じか?」


銃士の『アルカナショット』!


ミス!



銃士「うん、そもそも攻撃が効かんタイプやな。あきまへんな」



戦士「躊躇いなく撃ったな」


銃士「ドアホ。ダンジョンに美少女がおったら魔物かトラップに決まっとるやろ」


戦士「それもそうか」


「ただでさえ幻覚が効きにくそうね。そういう面倒な人は嫌いだわ」


少女はシャドウサーバントを呼び寄せた!


シャドウサーバント「ーーーー」


戦士「またこいつか!」


赤魔「さっきはよくもやってくれたな
! お返ししてやる!」


赤魔の『疾風剣』!


銃士の『クリティカルバースト』!


クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!


戦士の攻撃!



シャドウサーバント「オオオオーーッッ」


シャドウサーバントの『怨嗟刻呪』!


戦士は銃士を庇った!


銃士「げっ、それスタンする技やないか!?」


戦士「……いや! 天使のペンダントが効いたみたいだ!」



赤魔「ラッキーだな! おりゃぁっ!」


赤魔の『火炎剣』!



銃士「ガンガンいくで!」


銃士の『クリティカルバースト』!

クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!



戦士の攻撃!



「ああ、私のお友達にひどいことしないで」


赤魔「お友達? やっぱりお前は魔物なんだな!」


「ああ、ひどい人たち。けれど、大丈夫よ。私がお友達になってあげるわ」


少女はシャドウサーバントに囚われた魂を注ぐ!



「お友達の数が減ってしまうのは悲しいけれど、仕方ないわ」


シャドウサーバントはその姿を変化させる!



シャドウサーバント<<ボココココ……


赤魔「うわわ……!?」


戦士「悍ましいな……っ」


カオスサーバント「ーーーー」


カオスサーバントが出現!



銃士「一段と不気味な姿になりよったな!」


銃士の『クリティカルバースト』!

クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!
クリティカル!



赤魔「こっち来んなぁ……!」


赤魔の『火炎魔法』!



戦士の攻撃!



戦士「(こいつの攻撃は防げるか……!?)」



カオスサーバント「ギョエエェェエェェエエエエエーーーーッッッッ」


カオスサーバントの『負響和音』!



銃士「うぉぉ……!」ガクッ

赤魔「あぅっ……」ぺたんっ


銃士と赤魔は体が動かなくなった!



戦士「くっ……! うぉぉっ!」


戦士の攻撃!


「天使のペンダント……真実
の鏡といい、私の嫌いなものばっかり持ってるのね。不快だわ、不快だわ」


カオスサーバントの『散乱する悪意』!


戦士はパーティを庇った!


戦士「くっ……!」



「けれど大丈夫よ。私がお友達になってあげるわ。一緒に遊びましょう。日が暮れるまでいつまでもいつまでも」


戦士「断る!」


戦士の攻撃!


「断るなんてできないのよ?」



カオスサーバントの『散乱する悪意』!


戦士はパーティを庇った!



戦士「(このままじゃジリ貧だ! 何か打開策はないか……)」


銃士「……へんひ!ははひ!」


戦士「!」


「ああ、鬱陶しい。あなたは気に入らないわ。あなたは要らない」


戦士は銃士の道具袋から『真実の鏡』を取り出した!



戦士「お前にとっては不要でも、俺にとっては大事な仲間だ!」



戦士は『真実の鏡』を使った!



カオスサーバント<<ウゾウゾウゾ……!


カオスサーバントは悶えている!



「大丈夫、大丈夫よ。私がいるわ。あなたは私のお友達よ。あなたたちは私のお友達よ」


カオスサーバント<<ウゾウゾウゾ……!


「ああ、もう。どうして私の言うことを聞かないの? お友達の言葉は絶対なのに。……あなたたち覚えていなさい。絶対にお友達にしてあげるわ」スゥ……


カオスサーバント<<ズズズ……


少女とカオスサーバントは姿を消した!



赤魔「た、助かったみたいだな……?」


銃士「ったく、何がお友達やねん。しかも俺は要らないってどういうことや。ちょっと傷付くわ」


戦士「今のはダンジョンのボスなのかもしれないな……二人とも動けるか?」


銃士「オーケーや。鏡が少し緩和してくれたみたいやな」


赤魔「む、無理かも……」


戦士「それなら俺がおぶろう」


赤魔「うう、ごめん……」


戦士「気にするな。仲間だろう」


銃士「階段やけどいけるんか?」


戦士「伊達に鍛えてない」


銃士「知ってたわ……おっ、あのお嬢ちゃん何か落としとるな」


『カースドレイン』を手に入れた!


銃士「なんやろ?」


戦士「……さあな。商人に聞けば分かるだろ」



赤魔「……戦士の背中、落ち着くなぁ。なんだかクマみたい」


銃士「クマかい。父親やないんかい」


戦士「クマの背中は落ち着かなそうだがな……」


赤魔「……」すやっ


銃士「ね、寝とる……はやっ」


戦士「怖かったんだろ。さっきの敵の攻撃もあったしな」


赤魔<<すやすや…


銃士「うーん、守りたい、この寝顔」


戦士「そろそろ行くぞ」


銃士「へいへい」



・・・

盗賊「嫌な予感がするな……急ごう。赤魔が銃士に汚される前に」


商人「(盗賊さんの中で銃士さんの評価ひく……)」



to be continued...


○戦士メモ

・飴:『魔物の洞穴』でしばしば手に入る飴。エルフの機嫌が悪い時に与えておくと少し機嫌が良くなるため常備するようにしている。赤魔も好きなようだ。

・少女:このダンジョンのボスなんだろうか。随分と都合のいい友人の観念を持っているようだ。

・カオスサーバント:シャドウサーバントが変化した魔物だ。こちらの動きを封じる攻撃をしてくる面倒な敵だ
攻撃力も低くないため長引けば俺たちが負けていただろう。どうやら真実の鏡に弱いようだ。



○盗賊のtips
赤魔に関する重大な情報

・赤魔の声:かわいい
・赤魔の笑顔:眩しい
・赤魔の慌て顔:癒される
・赤魔のむすっとした顔:ときめく
・赤魔の泣き顔:中毒性がある
・赤魔の照れ顔:国宝に指定するべき
・赤魔の寝顔:天使は現実にいた
・赤魔に害を与えるもの:“処理”する
・赤魔:私の生きる意味


・・・

『RPG改造キット・R16ver.』を手に入れた!

『簡易医療缶』を手に入れた!

『グレートハチマキ』を手に入れた!



エルフ「1000Gドールは出ないか」


商人「そうですねぇ」


盗賊「……三人を探す気があるのか?」


エルフ「あー、そうだねぇ……あっ、もし囚われてたら助けるのにもアイテムが必要かもしれないじゃん?」


盗賊「今ちょうど思いついたみたいな反応だったな」


商人「たまたまアイテムを見つけてるだけですよ。決してアイテムをメインに探してるわけじゃないんです。『ビスクドール』や『セフィロトの杖』を探してるわけではないんです。決して。そう、決して」


盗賊「そこまで念を押されると逆に詭弁にしか聞こえないのだけど」


エルフ「それは心が曇ってるよ。ほら真実の鏡でも見て無垢な心を取り戻して」



盗賊「……」


エルフ「無言で不快感を示すとかダメだよー。そこはビシッと突っ込まなきゃね」


商人「ボケ殺しは悪徳ですからね」


盗賊「私はマンザイをしてるつもりもなければ、そんな美徳も持ち合わせてない」


エルフ「ノーノー、そこはスカした感じでなくビシッといくべきだよ。ねえ?」


商人「緩急が大事ですよね」


盗賊「なるほど」



ゴチッ、ゴチッ



盗賊「少しは緊張感を取り戻したか?」


エルフ・商人「……はい」ぐすっ



ギルティドール<<ユラユラ……



エルフ「やっぱりドールとか無機物の魔物が多いね」こそっ


商人「ダンジョンによってアイテムも違えば魔物も違いますからね。ただ、情報通りの魔物ばかりなのでここには『転移石』はないかもです」こそっ


エルフ「てっきりこのあたりにもパイオツちゃんが何か仕掛けてるかと思ったけどね」


盗賊「……」


エルフ「またシリアスな感じ出そうとしてるー」


盗賊「何よそれ…………さっきは悪かったわ」


商人「はい?」


盗賊「あなたたちは私の張り詰めた気持ちを和らげようとしてくれていたのかと思い至ってね。そうだとしたらさっきは悪いことをしたわ。……ごめんなさい」


エルフ「あはは」


エルフ「(別にふざけてただけなのに好意的に解釈されてるしぃ。真面目かよ。まあ、怒らせたくないし恩着せるために黙っておこー)」


商人「(などとエルフさんは考えてるでしょうし、僕も黙っておくのが最適な反応でしょうね)」


盗賊「……急に黙ってどうした?」


エルフ「えー? 照れてたんだよー?」


商人「そーですねー」


盗賊「……そう」



盗賊「しかし商人はいつもと違うな。普段はもっと真面目な気がしたけど」


商人「バランスを取るタイプですから」


エルフ「君は横文字を入れないと死ぬ病気かね? うん?」


商人「そういうエルフさんも結構横文字使うじゃないですか」


エルフ「エルフちゃんは賢くて可愛いからいいのさー」


盗賊「ふっ」


エルフ「えっ、ちょっ、鼻で笑うのはどうなの?」


盗賊「あら? てっきりそういう反応待ちかと思ってたわ」


エルフ「そんな銃士みたいなことはしないよ。私は反応する側だもん」


商人「エルフさんは攻められると弱そうですよね」


エルフ「うるさいよ」



盗賊「しっ……」


ズルズルズズズ……


エルフ・商人「!!」



カオスサーバント<<ズルズル……



商人「ひっ……」


エルフ「うわー……」


盗賊「……やり合いたくないな。迂回するか」



「私のお友達を無視しないで」



「「「!?」」」


「これから貴方のお友達にもなるのよ? なにせお友達のお友達はやっぱりお友達でしょう?」


盗賊「(気配が全くなかった……どういうこと?)」


カオスサーバント<<ズルル……ッッ


エルフ「こっちくんな」カシャッ


ステータス解析マシン<<ピピッ……ピロンッ


・カオスサーバント
HP:8000
こうげき:500
ぼうぎょ:900
まほう:500
すばやさ:400


・幻惑の少女
HP:0
こうげき:0
ぼうぎょ:0
まほう:0
すばやさ:0


エルフ「なんだこれ? 故障ではなさそうだけど」


盗賊「実体じゃないようね。それならあのバケモノから片付けるべきだ」


商人「真実の鏡は効きませんかね……?」


盗賊「試す価値はある」


「はぁ……あなたたちはすぐに気付いてしまうのね……」


エルフ「あなたたちは?」じろっ


商人「戦士さんたちに何かしたんですか!?」


盗賊「……」



「これ以上お友達を傷付けてほしくないの。大人しく私のお友達になってくれないかしら」


盗賊「するわけないだろ、馬鹿か。あなた、赤魔に手を出したの……?」


「……私の言うことなんてちっとも聞いてくれない。あなたたちは嫌な人たちね」


エルフ「勝手に嫌ってなよ、構ってちゃんのメンヘラわがまま娘め」


「どうしてそんなヒドいこと言うの?」


エルフ「あーん? 被害者ぶってんじゃないよ。美少女だからって容赦しないよ? むしろ美少女だから容赦しないよ?」


盗賊「ただの嫉妬ね」


エルフ「ちがわい!」


商人「銃士さんみたいになってますよ」


エルフ「あんなのと一緒にしないでもらえる!?」


「ああ、ああ……どうしてそんな汚い言葉を言えるの……どうしてお友達どうしで憎しみあえるの……」


エルフ「はあ? 憎しみ合う~? お目目が腐ってるのかな?」


「ひどいわ……! そんな汚い言葉遣いをお友達になる私にするなんて……!」


エルフ「なんなのコイツ……病気かな?」



商人「(……ダンジョンで目撃されていた少女はおそらくこの娘ですよね。魔物をお友達と呼んで、かつ僕たちもお友達にしたいということは、この魔物も元は人間でしょうか? 他の冒険者も同様の目にあったと考えるのが自然ですね)」


盗賊「(今までの会話を踏まえると“お友達”が欲しくて冒険者に幻を見せて魔物化させた? 表情に悪意はない……子どもの純真さのままに悪魔の所業を行っているのか?)」


「私、あなたたちとはお友達になりたくない……! こんな気持ちは初めてだわ……!」


エルフ「頭がお花畑のメルヘンでメンヘラなビッチと性なるフレンズになりたいのは銃士だけだから」


「あの人も嫌い!」


エルフ「わかるー」


銃士「なんでや!」


エルフ「うわっ、出たよ」


銃士「どこぞの黒光りはんみたいな扱いはやめてくれはります……」


エルフ「黒光りGだね。GはガンナーのGだよ?」


銃士「悪意の塊やわぁ……」


商人「Gさんがいるということは……」


戦士「待たせたな」



戦士たちが合流した!





盗賊「赤魔!」


赤魔「よかった、無事か」


盗賊「私のセリフだ! バカ!」


赤魔「バ、バカじゃない!」


戦士「エルフ、まずは鏡で魔物を追い払うぞ!」


エルフ「悪霊退散!」


商人「ノリノリですね……」


赤魔「(俺も言ってみたい)」



戦士とエルフは『真実の鏡』を使った!


カオスサーバントを倒した!



エルフ「ふはは、弱い弱い。美少女退魔師エルフちゃんの敵じゃないよ」


赤魔「いつジョブチェンジしたんだよ」


銃士「成人向けRPGで陵辱されそうな肩書きやな」


エルフ「うるさいよ!」


商人「(触手責めで『んほぉ』しそう)」



「私のお友達を消すなんて……許せない」


盗賊「真実の鏡で消えるお友達だったな」


商人「 まさかとは思いますが、 この『お友達』とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」


エルフ「すごーい! 君は妄想のお友達と戯れるフレンズなんだね!」


「お友達はお友達よ……!」


戦士「やめてやれよ。流石に可哀想になってきた」


赤魔「うん……」


銃士「せやかて、この嬢ちゃんのせいで人がぎょうさん死んどるんやし」


盗賊「ああ。特に同情の余地はないように思う」


「どうして……」


エルフ「可愛いからっていつも構って貰えると思ってはいけないよ。可愛いからってね。ブスだったらもっと酷い目にあってるよ? エルフちゃんくらい可愛くなってから出直しなさい」


戦士「お前はもう色々とすごいな」


銃士「可愛いは正義やからなぁ」


商人「美形プレミアムは実際に確認されてますからね」


「……もういや」


幻惑の少女は姿を消した!



エルフ「はー、都合が悪くなるとすぐ姿を消すとかこれだからメンヘラな構ってちゃんは」


銃士「メンヘラいうやつも大概メンヘラやけどな」


エルフ「うっさい! エルフちゃんは健康優良児だよ!」


戦士「(わりと構って欲しそうにはしてるけどな。別に俺は嫌じゃないが)」


商人「(とか考えてるんでしょうねえ)」


赤魔「とにかく合流できてよかった!」にっ


盗賊「あまり心配をかけさせるな」


赤魔「ご、ごめんなっ」


盗賊「(可愛い。許す)」はぁ…


商人「(とか考えてるんでしょうねえ)」


・・・

エルフ「まあ、何はともあれ無事に合流できたわけだけど、1000G人形を取るくらいしたわけだよね? まさか失態を晒して手持ち無沙汰とかないのねえ?」


赤魔「こっちだって大変だったんだからな!」


エルフ「やかましい! 私たちの方が大変だったよ! どんだけ走ったと思ってるの!」


商人「そうですね……」


盗賊「(赤魔が無事ならそれでいい)」


銃士「まあまあ、全くの手ぶらってわけやないんや。ところで、手ぶらって何か卑猥やな?」


赤魔「?」


盗賊「……」ゴゴゴ…


銃士「なんでもないのね」


戦士「ところで商人、あの少女がこれを落としていったんだが」すっ


商人「これは『カースドレイン』ですね。一度だけ時計塔の封印を解けます。売値はつきません」



銃士「お、これがあれば時計塔の中に進めるんやな」


戦士「もう即死して盗賊に蘇生魔法(物理)やられることもないな」


銃士「思い出させんといて。とにかく即死の心配はないわけや」


盗賊「赤魔の前で不用意なことを言ってると私の即死魔法(物理)がとぶかもな」


銃士「おぅふ」


赤魔「銃士は嫌なところもあるけど良いところもあるからやらないであげてな?」くいくいっ


銃士「天使がおるぅ……」


盗賊「赤魔は本当に天使よ(……仕方ないな)」


エルフ「盗賊も大概アレだよねー」



商人「あの、そろそろ気を引き締めて進みません?」


戦士「まったく……魔物が蠢くダンジョンってことを忘れそうだ」



to be continued...



○戦士メモ

・合流:騒ぎを聞きつけて合流できたが、何とも緩い雰囲気だった。魔物がいつ急襲してくるか分からないのに呑気なものだ。盗賊はふざけたようにしていても警戒しているだろうが、俺も気を張っておこう。

・美形プレミアム:『美醜が全て』という言葉には全く説得力がないが、『美醜は関係ない』という言葉もまた同様だ。俺たちが生物である以上は美人を好ましく感じるのは仕方ないことだろうが、それを認識した上で出来る限り公平性を失なわず接するように配慮したいものだ。



○エルフメモ

・メンヘラ:エルフちゃんはメンヘラじゃない。むしろ可愛いエルフちゃんならメンヘラなくらいでちょうどいいすらあると思うんだ。

・退魔師:戦士が『魔物の洞穴』で拾ってきた『ファンタジーRPG:キル・ゴッデス』を赤魔とかとやってて、私は退魔師をプレイヤーとして使ってるよ。魔法職のくせに肉弾戦が得意なあたり私と似てるかも。



○商人の鑑定

・RPG改造キット・R16ver.:売値は4G。ダンジョンで拾える既存のRPG(別アイテム)を主に成人向けに拡張できます。実は改造といいつつも本体の隠された領域に既に内蔵されていてそれを表示できるようにしてるだけだったりします。

・簡易医療缶:売値は30G。簡易といえど、異世界の医薬品は現代の技術では高価なものを当然のように入ってたりします。国立研究機関等が買い取ることが多いようです。

・グレートハチマキ:売値は2G。これを額に巻くと気分が高揚するようです。『いざビッグサイトーー最高の夏』という異世界文字が刻まれているそうですが、解釈に困っているようです。

・・・

銃士は『TS薬』を手に入れた!


銃士「こ、これは……!」


商人「何か見つけました?」ひょこっ


銃士「お、おう……しー」


商人「……それは『TS薬』ですね。服用すると24時間ほど性別が逆転します。売値は50Gです」


銃士「やっぱし『TS薬』やったか……しかし高い価格で売れるっちゅうことは需要があるんやなぁ」


商人「まあ、銃士さんが隠し持とうとしたくらいですしね」


銃士「ま、まさか、わはは」


商人「そうですか? まあ、いつも通り僕が預かりますよ」


銃士「……いくら欲しい?」


商人「50Gですね」


銃士「高いわぁ……売値やん」


商人「パーティが得るはずの金額です。買値よりは安いでしょう?」


銃士「……仕方あらへんな」


銃士は50Gを商人に払った!



商人「確かに受け取りました。悪用はやめてくださいね」


銃士「犯罪はせえへんよ。秘密にしといてな」


商人「顧客のプライバシーに関しては守秘義務がありますから」


銃士「さっすが」


エルフ「なにやってんのー?」ひょこっ


赤魔「面白いものであったかー?」ひょこっ


商人「じゅ、銃士さんの猥談に付き合わされていただけですよ」


銃士「うおいっ!?」


エルフ「こんなとこまで来て銃士きもちわる……」


赤魔「わいだん?」


エルフ「エロ話してたんだって」


赤魔「エっ……お、俺は盗賊のトラップ解除を見てくる!」ぴゅー



エルフ「逃げたねぇ」


商人「赤魔さんはそういうの耐性なさそうですもんね」


エルフ「むっつりスケベだよね。やれやれ、これだから子どもは」


銃士「エルフはんも耳年増なだけのくせにー」


エルフ「は、はぁ!? 違うしー! 超違うしー! だ、だいたい変態キモ童貞にとやかく言われたくないしー!」


銃士「じゃあビッチなん?」


エルフ「んなわけあるか! キモいからもう口を開くな! 息を吸うな! 心臓を動かすなぁ!」


銃士「わはは、必死か」


エルフ「~~!」


商人「銃士さん、セクハラ発言はよろしくないですよ」


エルフ「はっ、モテないわけだよ! 話してて不快だもん!」


銃士「そ、そこまでか……堪忍な」


戦士「お前ら、何度でも言うが、ここはダンジョンだからな?」


銃士「ダンジョンだからって全員が常に気を張っとる必要もないやろ。柔軟性に欠けるパーティは脆いで」


エルフ「それっぽいこと言ってるー」


戦士「相変わらず口達者なやつだな」


盗賊「それで本音は?」


銃士「めんどいことは他人に任せたい」キリッ


盗賊「死ね」


銃士「わずかに不快そうな表情と声音から繰り出される、シンプルかつ洗練された罵倒……うーん、マンダム」


エルフ「ソムリエかな?」


盗賊「……」


商人「(無表情こわっ!)」



赤魔「なーなー、銃士ってたまに変だよな?」


戦士「あいつはだいたい変だぞ」


エルフ「街中で見かけても目を合わせちゃいけないタイプの人だよ」


商人「無益な危険に近寄らない、それも賢く生きていくのに必要なスキルです」


銃士「ちょいちょい、危ない人扱いせんどいて。んまっ、時代を先取りし過ぎて時代が俺に付いてこれへんのかもな」


盗賊「自意識過剰のバカか死ね。まずは自分をもっと客観的に見ろバカか死ね」


銃士<<ゾククッ


エルフ・商人「(うわぁ、あの表情は喜んでる……)」


盗賊「救いようがないな」ゴリリッ


戦士「まあ、落ち着こうか」



商人「アイテムトラップの解除はどうです? 進捗ありました?」


盗賊「解除に成功したから呼びに来たんだ」


エルフ「レアいレアい? お金になりそう?」


盗賊「……これよ」スッ


商人「……これは『秘蔵のポルノ本』ですね。売値は1.5Gです」


盗賊「やっぱりレアアイテムでも何でもなかったか……」


戦士「どうしてあれだけ厳重なトラップの中にこれがあるんだか」


エルフ「ある意味では納得だけど時間を返して欲しいよ」


銃士「俺としては本の中身がめっちゃ気になるわ」わくわく


赤魔「無駄に良い目をしてる……」


盗賊「はっ」バリィッ


銃士「んああ!?」


エルフ「本を横に引き裂くとかどんな握力だよぉ……」


銃士「いいや、まだ読める! 封された本の僅かな隙間を除いて妄想で補っていた頃に比べればこの程度……!」


盗賊「焚書だ。有害図書は燃やすに限る」


銃士「ちょっ、表現の自由を守れ! 本の遺棄は文明の衰頽を招く!」


盗賊「赤魔、やれ。華氏451度だ」


赤魔「か、火炎魔法!」メラッ


パチパチッ…


銃士「あ、ああ、ご無体な……お前はPTAか!」


エルフ「必死かよー、えろー」


銃士「男はみんなエロなんや! なあ、戦士!?」


戦士「沈黙は金」ふいっ


銃士「裏切り者めッッ! なあ、商人くん!?」


商人「僕は分別があります」ふいっ


銃士「なんでちょっとカタコトなん!?」


盗賊「ふん」


銃士「戦士と商人くんが裏切ろうと俺が世の男どもを代表して言っちゃる! 男はなぁ! いくつになろうとポルノの前では純情な少年なんや! いくつになろうと捨てられたゴミ捨て場や河川敷でポルノを探した青春の日々を忘れられへんのや!」


盗賊「何の話だ」


エルフ・赤魔「えろー」


盗賊「救えないやつだな。生まれ直して来たらどう?」


銃士「俺が罵倒されると喜ぶと知っときながらそれでも罵倒する。それはもうセックスなのでは?」


盗賊「即死魔法(物理)」ズドッ


銃士「うぼぁ」


銃士は力尽きた!



エルフ「童貞を拗らせるとこうなるのか……」


戦士「(銃士は目を合わせただけでも同じことを言いそうだ)」


商人「(女性にイかされて、銃士さん的には本望かもしれませんねー)」

・・・
【幻惑の街・時計塔前】



商人は『カースドレイン』を使った!


即死トラップが解除された!


赤魔「これで時計塔の中に入れるぜ!」


エルフ「ここに1000Gドールがあるといいね。あとパチスロの杖」


盗賊「エルフは金の亡者よね」


エルフ「マニーイズパワーだよ」


銃士「はぁ、いてて……戦士もう下ろせ」


戦士「まだ無理しない方がいいんじゃないか」


銃士「男におんぶされるとか何の罰ゲームっちゅう話や」


戦士「そうかよ」すっ


エルフ「運んであげたのにそんな口の利き方されたら、私なら足掴んだまま回転させて頭から落とすけどねぇ」


銃士「戦士やからな」


戦士「そうかよ……」


・・・

盗賊「魔物はいないようだ」


エルフ「さくさく快適だね」


赤魔「どんどん進もうか!ふんふーん♪」


戦士「油断し過ぎだぞ」


赤魔「盗賊がいるから大丈夫だ! なんてたって俺の盗賊だからな!」


盗賊「アンタのものになった覚えはないわよ」


商人「……『セフィロトの杖』です!」


赤魔「おお!」


エルフ「なんだ、さくっと見つかったね」


銃士「えぇ……『解放の宝玉』に比べてこのチョロさは何なん?」


エルフ「ふっ、美少女エルフちゃんの前にはアイテムが進んで出てくるのさ」


戦士「商人がアイテム発見の天才だからな」


盗賊「道中のアイテムもあらかた商人が見つけるものね」



エルフ「~~」


赤魔「……」ぷっ


エルフ「……!」バッ


赤魔「!?」ガシッ


ジタバタ…ゴロゴロ……


ゴチッ、ゴチッ


エルフ・赤魔「……」ぐすっ


銃士「さっ、取ってまうか」


商人「はい」


戦士「(今のエルフたちは流すのか)」


商人「うーん……歯車に引っかかってますね」


盗賊「よく折れないな」


銃士「時計が止まっとるみたいやけど、これを引き抜けば動くんちゃうん?」


戦士「流石にそんなに単純な機構じゃないだろ。というか、これ抜けるのか?」



「……抜いてはダメよ」



幻惑の少女が出現!



エルフ「また出たね! 現れたり消えたり君は何がしたいのかな!?」


「みんなと友だちになりたいのよ。あなたたちとも」


エルフ「はあ!? なんで!?」


「むしろ何で友だちになりたいと思わないの? 私の気持ちが分からないの?」


エルフ「はああ!? 分かんねえから聞いてんだろ! なぞなぞマンかよぉ!?」


戦士「落ち着け」


「とにかく時を動かしてはいけないわよ。この街は……ダンジョンが地獄と化してしまうから」


銃士「誰にとっての地獄なんやろねぇ。ところで、お嬢ちゃんはダンジョンのボスなん?」


「私は選ばれたの、このダンジョンを統べる者として」


戦士「選ばれた? 誰に?」


「人外の理よ。そうとしか言えないわ」


エルフ「はあーん? 毒電波受信しちゃった系女子なの?」


商人「(選ばれたという言い方からすると、元はただの人間だったんですかね。ダンジョンによって異質な存在に変容した? それにしてはあまり気にしていないようですが、開き直りでしょうか? それとも人間だった頃にいい思い出がない? やたらと友だちが欲するあたり孤独だったのかもしれません)」


「本当は時計塔に貴方たちを入れたくなかった……けれどこれも理なの。そういう呪縛のもとにダンジョンは成り立つの」


盗賊「(……制約条件か? そうするとダンジョンは魔法によって築かれたのか? サモナー? それとも別の誰か?)」


「質問に答えたのだから抜こうとしないで。人間に抜けるわけはないけれど」


盗賊「制止しているのに悪いが必要なんでな」がっ……


すぽんっ


「えっ」



『セフィロトの杖』を手に入れた!


盗賊「まあ、こんなものだ」


赤魔「俺の盗賊を舐めるなよ!」どやっ


エルフ「はぁ……こういう時こそ図体の無駄に大きい戦士が活躍するところじゃないの? 毎回黒チビに無駄にドヤ顔されてムカつくぅ」


戦士「そんなこと言われてもな」



歯車<<ガガガ……



銃士「お、歯車が動き出しよった。ずっと動ける歯車を止めてた杖の強度どないなってんねや」


商人「まあ、ダンジョンですから」


戦士「便利な言葉だ」



「あ……ああ……!」


エルフ「ねえ、どんな気持ち? ドヤ顔で抜けないだろとかほざいてあっさり抜かれてどんな気持ち? 笑わないから言ってみなよ?」にやにや


赤魔「既に笑ってるだろ!」


「……嘘、いや、いや……お父様、いや……閉じ込めないで……仕返しなんかじゃなかったの……私はただ友だちが……ごめんなさい、ごめんなさい……」ガタガタ…


エルフ「ど、どうしたの? 大丈夫……?」



「やだ、やだ……あぁ……っ!」



ギィィィィィンーーーーッッ!



「「「「「「……っ!?」」」」」」



『幻惑の街』は『死霊の街』へと変容するーー!



「たすけーー」


幻惑の少女は姿を消した!


エルフ「ちょ、ちょっと……!」



ズゥゥゥンッッ……! ズゥゥゥンッッ……!


商人「ひっ!?」


赤魔「な、何の音だ!?」


盗賊「……足音か!? 」


銃士「はあ、あきまへんな。嫌な予感しかせえへん」


戦士「さっさと時計塔を出るぞ!」



エルフ「何がどうなってるんだよー!」



to be continued...



○戦士メモ

・時計塔:セフィロトの杖により時計が止まっていたが俺たちが取ってしまったことで動き出した。この止まった時計も一つのトラップだったのだろうか。

・人外の理:少女はおそらく特定の人物ではなく、何か超自然的な力を示しているのだろう。やはりダンジョンの出現は超自然的な力によるものなのだろう。

・足音:時計塔の外に響く巨大な足音だ。どうやら二足歩行のようだが、少しもたついてるようにも聞こえる。



○エルフメモ

・秘蔵のポルノ本:銃士って何であんなに気持ち悪いんだろう。童貞やら非モテを拗らせると異性との接触の全てを性的に解釈してそうで怖い。そういう人がやがて「楽器は男根のメタファー」とか言い出すのかもね。

・PTA:子どもへの悪影響絶対に排除するマンたちの別名。結構な頻度で物事に過敏だったりする。全く関係ないけど、暇を持て余した人間はろくなことしない。全く関係ないけどね。

・毒電波:メンヘラがよく受信したふりをする。本当に受信したら受診だ。お薬はちゃんと処方された通りに飲もうね。



○商人の鑑定

・セフィロトの杖:売値は貴重なためつけられません。異世界に生える生命の樹から作られた杖です。その力は明らかにこの世界の理から逸脱しており、使用者に莫大な力を与えます。

【死霊の街・時計塔前】


エルフ「……なんじゃこりゃ!」


<<フヨフヨ……


銃士「んー? 人魂かしらん?」


商人「い、至る所に浮いてますね」


赤魔「ゆ、幽霊……!?」ひしっ


盗賊「赤魔かわいい」


<<アー……アウー……


エルフ「なんかアンデッドっぽいのもいっぱいいるんだけど」


赤魔「もうやだぁ……!」


<<ズゥゥゥン……ズゥゥゥンッッ……!


戦士「それより後ろの巨大人骨が一番まずいだろ!」


銃士「ほんとデカいわぁ……」


エルフ「んもう、次から次へと忙しないなぁ」カシャッ


ステータス解析マシン<<ピピッ……ピロンッ


・ドレッド・ダド
HP:100000
こうげき:500
まほう:0
ぼうぎょ:400
すばやさ:100


エルフ「んん!? カルシウムをいっぱい摂ったのかな!?」


商人「た、体力オバケなガイコツですね……」


赤魔「こっちくんなぁ……」


銃士「いうて防御も攻撃も大したことあらへんようやし、焦らずに観察して対処法を見つければええやろ」


戦士「ああ、少し下がるか」


盗賊「……そうもいかないだろう」



ドレッドダド「ォォォォォォーー」グパァッッ


戦士「(口を開いて何をする気だ?)」



ズルルルゥゥッッ……!



ドレッド・ダド<<グチュグチュ……!


ドレッド・ダドは死霊を貪る!


銃士「なんや? 魔物どうしで共喰いかいな?」


赤魔「周りの幽霊っぽいのが減った!」ほっ


戦士「嫌な予感しかしないんだが……」


盗賊「同感ね」



ドレッド・ダド<<ボココ……



赤魔「ひゃぁぁぁ……!?」


商人「あばばばばば……」


戦士「に、肉がついたぞ……っ?」


銃士「おぞましいわぁ」


盗賊「エルフ、ステータスをもう一度確認して」


エルフ「ったく、皮もつけてよ。剥き出しでキモいなぁ……」カシャッ


ステータス解析マシン<<ピピッ……ピロンッ


・ドレッドダド
HP:150000
こうげき:1500
まほう:100
ぼうぎょ:1000
すばやさ:300



エルフ「成長してるしぃ……死霊を食べると強い子になれるのかな?」


商人「僕もいっぱい食べたいですね。あははははは」


銃士「逃げるで! 商人くんしっかりしいや!」


戦士「盗賊!」


盗賊「ああ」


エルフたちは逃げ出した!



ドレッドダド「アァ……ウナァァァ……」ズゥゥゥン……グチャ……ズゥゥゥン……グチュュ……



赤魔「音が気持ち悪いっ!もうやだぁ!」


盗賊「……」ほっこり



・・・
【死霊の街・出口】


銃士「よっしゃ、出口やん」


エルフ「1000Gドールは無理だったかぁ」


商人「命あっての物種です!」


銃士「消費できへんもんな」


戦士「最後まで気を抜くなよ……!」


赤魔「やっと逃げれるぅ……」えぐえぐっ



盗賊「……ちくしょう!」


「「「「!?」」」」



エルフ「え、な、なに……」


盗賊「……即死トラップで封鎖されてる。このままじゃ出られない」


赤魔「そ、そんなぁ……!」


ドレッド・ダド<<ズゥゥゥン……グチャチャ……ッ


戦士「このままだと追い詰められるぞ……!」


銃士「しゃあない、あっちの建物群に逃げようや」



ドレッド・ダド「……クナァァァーーッッ」コォォ…!


ドレッド・ダドの『エゴイックプラズマ』!


銃士「あれはあかん……!」



戦士「くっ!」



戦士はパーティをかばった!



戦士「うぉっ……がぁぁ……ッッ!?」ドガァッ!



戦士は力尽きた!




エルフ「うおい!?」


商人「せ、戦士さんが一撃で撃沈なんて……!」


エルフ「あー、もう! 重いんだから勘弁してよね!」ぐいっ


盗賊「私が背負う! さっさとしろ!」ひょいっ


エルフ「力持ちぃ」

・・・
【死霊の街・住宅区跡地】


死霊<<フヨフヨ……


赤魔「……」ぶるぶる…


エルフ「ここならあっちも見つけるのに手間取るかな」


商人「そ、そうですね。浮いてるのがいっぱいいますけど」


盗賊「直接の害はなさそうに思われるが……まあ、触れない方が無難ね」


銃士「あのデカ屍肉はんよりマシやけども、得体がしれへんからな」



エルフ「とにかく戦士さんを蘇生させますね」ぐいっ


戦士<<グビッ


戦士「ぐふっ…!?」ごほっ



戦士は復活した!



戦士「おえっ……」


エルフ「気付け薬マズイよねぇ」


銃士「戦士には蘇生魔法(物理)じゃないん?」


商人「あれは銃士さんの勝手な自爆でしたからね」


銃士「否定できひんな」


盗賊「そんなことより脱出するための方法を見つけ出すぞ」



死霊<<フヨフヨ……


赤魔「早く帰りたい」ほけぇ…


商人「気持ちは痛いほど分かりますけど、気をしっかり持ってください」


「もし」


盗賊「っ!」バッ


「ああ、お辞めください。私は悪いドールではありません」


エルフ「悪いドールはみんなそう言うんだよ」


「暴論です。まずはお話だけでもお聞きください」


盗賊「……」


エルフ「そう言って呪詛だったりしないの」


商人「トラップかもしれませんよね」


「潔白を晴らすにもどうすればよいのやら……ひとまず旦那様はこの一帯にはまだお入りになれない筈です。こちらにどうぞ」


銃士「エルフはん、どうするん?」



戦士「悪者には見えないけどな」


エルフ「君のその発言にはカケラも説得力がないよね」


商人「前例もありますからね」


銃士「せやね」


戦士「……」



エルフ「とりあえず測ってみよう。迷ったらまず計測」


ステータス解析マシン<<カシャッ……ピピッ……ピロンッ



・バウンデッドバトラー
HP:1200
すばやさ:640
まほう:420
こうげき:430
ぼうぎょ:210



赤魔「……順番がぐちゃぐちゃ」


エルフ「あるぇ?」


盗賊「……」ピッピッ…



・バウンデッドバトラー
HP:1200
こうげき:430
ぼうぎょ:210
まほう:420
すばやさ:640



エルフ「あ、直った……直った? まあ、いいや」


盗賊「これでボタンロックできそうね。うん、確かにかかってる」カチッ…ポチッポチッ


エルフ「どもども。……しかし、判断に困る。普通に強いから不意打ちされると危険だよねぇ」


バトラー「そう言われるのでしたら、多色の無力化は甘んじて受け入れましょう。私としてもあなた方の他に頼れる方もおりません」


銃士「頼る、ねぇ」



バトラー「みだりに留まっていると流石に旦那様がいらっしゃいます」


<<ズゥゥゥンーーッッ


銃士「あかんな」


戦士「(旦那様というのはあの魔物のことみたいだな)」


赤魔「よしっ、行こう! 早く行こう! はやくぅ……!」


商人「(赤魔さんは正常な判断が出来そうにありませんね)」



バトラー「こちらです。どうしても信頼できないと言うのならば諦めざるを得ませんが」


盗賊「エルフ、どうする?」


エルフ「えー……うーん……」


商人「あっ、中に『ビスクドール』がありますよ!?」


エルフ「1000Gドール!?」


バトラー「ビスクドールならば屋敷内にも幾つかあります」


エルフ「ついてくついてく! 金は命よりも重い!」


盗賊「清々しいまでの拝金主義ね」


エルフ「当たり前じゃん!? お金で買えないものはあるけど、それ以外のものはお金で買えるんだよ!?」


戦士「生命は金じゃ買えないだろ……」


銃士「売ることはできるんやけどな」


赤魔「はやく入ろぉ……」ぶるぶる…


商人「(産まれたての子鹿みたいです)」



to be continued...

○戦士メモ

・死霊の街:俺たちが『セフィロトの杖』を引き抜いたことで『幻惑の街』は変貌を遂げた。しかし大賢者が杖を安置したことを考えると死霊の街こそがこのダンジョンの本当の姿だったのかもしれない。

・ドレッドダド:巨大な骨の魔物。街に漂っている死霊を取り込むことで血肉を纏い、恐ろしい見た目となっている。非常に強力な魔物で正攻法では勝てそうにない。

・バウンデッドバトラー:執事のような姿をしたドール。非常に理性的な魔物のようだが……。



○エルフメモ

・お金:10億Gほしい。



○赤魔の似顔絵ノート

エルフ
・ぶき:セフィロトの杖(その前はマジックワンドだった)
・からだ:魔道士のケープ
・アクセサリ:理力のペンダント
・小憎たらしい笑顔のエルフの似顔絵が添えられている…


戦士
・ぶき:ディフェンダー(その前はショートソードだった)
・たて:ウインドシールド
・からだ:鉄の鎧
・アクセサリ:天使のペンダント(その前は堅身のアミュレットだった)
・少し美化された戦士の似顔絵が添えられている…


商人
・ぶき:チキンナイフ
・からだ:魔防の前掛け
・アクセサリ:大容量バックパック
・困り笑顔の商人の似顔絵が添えられている…


銃士
・ぶき:汎用型魔導銃
・からだ:ハンタージャケット
・アクセサリ:鷹目のイヤリング
・軽薄そうな笑顔の銃士の似顔絵が添えられている…


盗賊
・ぶき:バトルブーツ
・からだ:アサシンの服
・アクセサリ:身躱しマント
・優しそうに微笑む盗賊の似顔絵が添えられている…


【死霊の街・名家地下】



エルフ「はー、地下さむぅ……」


戦士「これを羽織るといい」ひらっ


エルフ「うむうむ、でも私が寒がる前に出さないとダメだよもう」


戦士「へいへい。赤魔も羽織るものいるか?」


赤魔「もう盗賊にもらったぜ! あったかい♪」


盗賊「……」どやっ


戦士「お、おう」


銃士「(ふむふむ、こういうところで差が出るんやな。俺は学習した)」


銃士「商人くん、寒いなら俺の……」


商人「防寒着を用意してるのでお気遣いなく」


銃士「あ、はい」


バトラー「ふむ、身動きが取れませんな」ギチッ


銃士「完全に信用は置けへんから堪忍してや」


戦士「少し我慢してくれ。すまないな」


バトラー「仕方ありません。譲歩いただいて頼みを聞いていただけるならば有り難いですから」


エルフ「うぇいうぇい、まだ聞くとは言ってないよ?」


バトラー「そうでしたか?」


盗賊「魔物のくせに調子に乗るなよ」ごりっ


赤魔「盗賊、そういう言い方はイヤだ」


盗賊「む……」


バトラー「私なりのアイスブレイクですよ」


商人「むしろ場が凝ったのでは……?」


バトラー「それは失敬」


銃士「アイスブレイクでもテクノブレイクでも何でもええねん。まずは色々と説明をして欲しいわ」


エルフ「いちいち下ネタを挟まないでよ。やれやれ、これだから拗らせた童貞は」


銃士「どどどど童貞ちゃうわ!」


商人「(それはやめるんじゃなかったんですか?)」


エルフ「やーい、非モテー」


銃士「くぅぅ、戦士、商人くん、言い返しちゃれ!」


戦士「商人、LEDライトをもう一つ出してくれないか」


商人「はい」


銃士「シカトせんどいてぇな!」


盗賊「エルフも耳年増なだけで初心だろ」


エルフ「想定外の横槍だ!? ……いやいや、むしろ付加価値だしー? プレミアムつくしー? 明らかにキズモノっぽいクールぶったお姉さんとは一緒にしないで欲しいね」


盗賊「……そう」


エルフ「え、なに、えっ?」


商人「(藪蛇ですよエルフさん。盗賊さんは経歴的にそういう点でも不幸な目に遭っててもおかしくないんですから。あまり他人を信頼しない辺りとかからも察しておくべきですよ)」


エルフ「(エルフちゃん重い話は嫌いじゃないけど好きでもないよ)」


赤魔「……」バシッ


エルフ「いだっ! 何すんだ黒チビ!」


赤魔「……お前のそういうところ本当にイヤだ!」ムスッ


エルフ「んぐっ……べ、べつに私わるいことしてないのに……そりゃ、ちょぉっと軽率だったかもしれないけどさぁ……ちぇ……」


盗賊「(……ん、もしかして妙な勘繰りをされている?)」



銃士「バトラーはん、ダンジョンについて質問タイムね」


戦士「ああ。このダンジョンについて詳しく教えて欲しい」


商人「そ、そうですね。この街の変わりようは一体何なんですか?」


バトラー「時計塔の時計が動き始めて、旦那様がお目覚めになったのです」


銃士「旦那様っちゅうのはあのデカ骨からゴッツい肉塊に変化した魔物やんね?」


バトラー「ええ。元々は魔物ではなかったのですが、20年前に街がダンジョン化すると共に魔物にお変わりになられました」


戦士「もしかして、ここの魔物たちも元は人間だったのか……?」


バトラー「私などはそうですが、多くは新しく湧き出た者たちかと。死霊……浮遊している淡い赤い光などは元は街の住人かと存じます」


商人「ど、どうして街はダンジョン化したんですか!? ご存知!? ご存知ですか!?」


銃士「(商人くんがやけに興奮しとるな。まあ、誰も知らない謎の答えがあるかもしれへん状況やし無理もないか)」


バトラー「それは私が与り知るところではございません」


商人「そ、そうですか……」



盗賊「ダンジョン発生の経緯はおそらく私のほうが詳しい」


エルフ「ほわっつ?」


盗賊「それよりも聞きたいのは『セフィロトの杖』と大賢者だ」


商人「え、ま、待って! 待ってください! ダンジョン誕生について何か知っているんですか!?」


盗賊「それは後で話す。私も全てを知ってるわけではない」


エルフ「えぇ……もっと早く話してよ」


赤魔「ふふん、そんな大切な情報を俺の盗賊がそう簡単に話すわけないだろ」ドヤッ


エルフ「次に盗賊は『なんであなたがイキるのよ。それに私はあなたのものじゃないわ』と言う!」


盗賊「ダンジョン化してから最初のうちは逆に現在の状態だったのよね?」


エルフ「ノリが悪いなぁ」


エルフ「(まだ怒ってるかな……?)」




戦士「エルフ、飴をやるから少し大人しくしてろ」


エルフ「君、ちょっとエルフちゃんを安く見過ぎじゃない?」コロコロ…


銃士「そう言いつつ舐めるんかい」


赤魔「あめ……」クイクイッ


戦士「ああ、ほら」


赤魔「やった♪」


盗賊「(可愛過ぎる。箱にしまいたい。私だけのものにしたい)……こほっ、どうして大賢者はセフィロトの杖をこのダンジョンに安置した? ダンジョンを様変わりさせた目的は?」


バトラー「私には皆目見当がつきません。ただダンジョンの魔物と化して分かりましたが、私たちはあくまでギミックに過ぎないのです」


商人「……どういうことですか?」


バトラー「上手く表現できませんが、ダンジョンはどこかでその存在を壊して欲しがっているような……言うなれば攻略されたがっているように思うのです」


銃士「RPGじゃあるまいしアホか……とは言えんわな。難易度はどうあれトラップには解除する手段が存在しとる」


商人「ダンジョンは攻略されたがっている……うーん……?」


盗賊「解釈を間違えているだけで、別にそれは不自然な話ではないわ」


銃士「解釈違い……ダンジョンはドMっちゅうことかいな……?」


戦士「それはお前だろ」


エルフ「戦士も大概じゃん」コロコロ…



盗賊「大賢者は重要なギミックに歪みを与えることで、この場合はあの少女と時計塔に魔法を用いることでダンジョンを変容させた」


バトラー「そのようですね。もうどれほど前かは私には分かりません」


商人「『憤怒の火山』の封印は18年前ですから、それよりは後ですね」


盗賊「18年前……ドレッドダドが邪魔だった……ダンジョンがこのままだと不都合だった……時を止めたかった……あの少女に力を与えたかった……これだけじゃ絞り切れないな……」ぶつぶつ…


商人「大賢者は何を考えてたんでしょうね」


銃士「『なぜ?』を考えるとダンジョンの出自やら発生原因が謎過ぎて分からへん。盗賊はん、はよ情報をくださいな」


戦士「それもいいが、俺たちの一番の目的は街から出るために即死トラップを解除することだ。そこを誤るなよ」


エルフ「やっぱり青リンゴ味が一番美味しいよ」


赤魔「レモン味の方が美味いだろー」


盗賊「(盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味盗賊の口は今レモン味)」


戦士「(俺の言葉は聞いてくれていただろうか。しかしあの真剣な面持ち……邪魔はしないでおこう)」


商人「(赤魔さんのことしから考えてなさそうですね)」


銃士「(おっぱいや、ああおっぱいや、おっぱいや)」




バトラー「個人的な……これはあくまで私個人の当てずっぽうに過ぎないのですが、その方は純粋にお嬢様を救おうと考えたのではないかと存じます」


銃士「お嬢様?」きらんっ


戦士「あの少女だろ」


エルフ「女の子に対してすぐ反応するよねぇ。下半身に脳みそがあるのかな?」


銃士「否定できひんのが男の悲しいところやな」


盗賊「それなら邪な思考をしないように抉ってやろうか?」


銃士「ひぇ……いや、でも盗賊はんほどの女の子に去勢されるなら…………アリかもしれへん!」クワッ


盗賊「こわ……」


赤魔「盗賊を怖がらせた!? 銃士やるな!?」


エルフ「褒めるところじゃない。一切褒めるところじゃないからね」


商人「あはは……」


戦士「うちのが下品ですまん」


バトラー「いえいえ」


to be continued...


○戦士メモ

・LEDライト:『魔物の洞穴』で手に入るアイテム。商人によると、大量に獲れて従来の照明器具をほとんど駆逐してしまったらしく今では流通に制限がかかっている。異界の技術であり極めて有用であるらしいのだが、原理を深く理解して応用する段階にはまだまだ至っていない。




○エルフメモ

・アイスブレイク:あれだよね。イチゴ味が美味しいよね。あと体力回復するよね。……すぐに横文字を使うのは思考停止なんじゃないの!?

・耳年増:盗賊はただの年増だ! おばさんめ!ばーか! ……メモを見られたら頭を潰されちゃう。


盗賊「また随分と話が逸れた。お嬢様……幻惑の少女を救うとはどういうことだ?」


バトラー「その前にかつてのお話を致しましょう」


エルフ「別に興味ないけどね。まあ、続けて」


バトラー「私がお仕えしたマーチャント家は由緒あるものの先代の御当主様よりも以前は細々と続く家系でございました」


銃士「ふうん、親近感わくわ」


戦士「旧家の末っ子だったな」


銃士「お前に言ってたか? よう覚えとるな」


商人「本当なんですか?」


銃士「せやせや、やんごとなきお家の出なんやで」


赤魔「へー! すげー!」


盗賊「こんなのが上流階級か……」


銃士「辛辣や。んまっ、今は完全に名ばかりな上に、末っ子にゃ家に関する権利はほぼほぼ存在しとらん。ご覧の通り俺はやくざな仕事しとるパンピーや」


商人「(発言はアレですけど所作などがどことなく上品な感じなのはそういうことですか)」



バトラー「お話を続けさせていただきます」


戦士「いちいち話の腰を折ってばかりですまないな」


バトラー「先代さまは類稀なる才能と努力の方であり、一代でマーチャント家およびこの街の発展に寄与した偉大な方でした。稀代の大商人と人口に膾炙なされたほどです」


商人「すごい……」


赤魔「商人もそうならないとな!」


商人「あはは……頑張りマス……」


盗賊「その話がなんだと言うんだ?」


エルフ「分かりづらいなぁ。どうダンジョンと結びつくの?」


バトラー「これはその後の背景となる話なのです」


エルフ「なるほど、君は説明をするのがヘタクソなんだね。時系列にそって仔細に話すよりも全体の概要をまず話してくれないかな?」


銃士「せやな。話の鳥瞰図がある方が理解しやすいんや」


バトラー「左様でございますか。結論から言ってしまいますと、御当主さまとお嬢様の間には悲劇がございまして、それが街のダンジョン化の際にギミックとなったようです」


戦士「無知ですまん、ダンジョンのギミックの意味がイマイチ掴めていないんだが」


バトラー「なんといえば良いのでしょうか」


盗賊「ギミックは、ダンジョンを特徴付けるものだ。そのダンジョン固有のトラップや固有の魔物などがあげられる」


戦士「ダンジョンを特徴付けるもの……なぜギミックはダンジョンで異なってどのようにしてそれが決まるんだ」


商人「ダンジョンが何たるかをはっきりさせない以上、今は外生変数とすべきでしょう」


エルフ「分かりづらい」


商人「……今は既にそう決まっていて僕たちには変えられないものとして扱うべきでしょう」


銃士「ホントに噛み砕いて表現するなんて商人くんはぶきっちょ真面目くんやね」


赤魔「難しい言葉は分かんないから最初から易しく言って欲しいな」


商人「すみません……」


銃士「ギミックいう表現がメタな上に、ちゅーしょー的やから俺や戦士みたいなおバカには分かりづらいんや。要はパパと娘の問題を解決して欲しいという話やろ?」


バトラー「乱暴にまとめれば左様でございますね」


戦士「なんだ、そういうことか。ようやく腑に落ちた」


赤魔「解決すればこの怖い……い、いや怖くはない! うん! この怖くないダンジョンから出られるんだな!?」


バトラー「ええ、そうでしょう」


エルフ「ご都合主義の塊だね」


盗賊「ダンジョンは仕様上そうなっているんだ」



エルフ「父親と娘の問題ね……具体的に何をしろって?」


バトラー「お嬢様を旦那様より救い出して欲しいのです」


エルフ「……ふうん」


戦士「任せてくれていい。しかし具体的に何をすればいい?」


バトラー「ダンジョン化前のお話をしますと、旦那様は先代さまの偉大な御栄光もございまして過大な期待をお背負いになられておりました。それは清廉潔白であった旦那様を患わせ、とうとう旦那様は凶行とも狂行ともいえる恐ろしい所業をなさったのです」


銃士「チャカポコチャカポコ」


赤魔「急にどうした?」



盗賊「……当主は具体的に何をしたんだ?」


バトラー「お嬢様を軟禁……いいえ監禁なさり、そして……ああ、これ以上は私の口からは到底申せませぬ」


商人「ダンジョン化前の話ですよね? 事後はどうなったんです?」


バトラー「あなた方も旦那様を目の当たりにしましたでしょう? そういうことです」


商人「変わらないということですか。大賢者はその現状を是正したいから死霊の街を幻惑の街に変化させたというのがバトラーさんの意見でしたね」


バトラー「はい」


エルフ「つまり魔物となった後も娘を抑圧して悦に入ってるわけ? クソ変態最低鬼畜ゴミクズ親父じゃん。滅びろ」


バトラー「しかし、旦那様がお狂いになってしまったのは先に話したような経緯がございまして……」


赤魔「辛い目にあったからって、それを誰かにぶつけちゃダメだろ! 腹が立ってきた!」


銃士「女性陣がお怒りや。くわばらくわばら」


戦士「救い出すにしてもどうすればいい? 正直、ドレッド・ダドを倒すのは厳しいぞ」


バトラー「お嬢様は何処かに囚われているはずです。お嬢様が救われることでダンジョン周囲に存在するトラップは解けるでしょう」


商人「何処に囚われているんでしょうか?」


バトラー「かつてはこの屋敷の地下部屋でした。しかし現在は何処なのか存じません」


エルフ「使えないねぇ」


バトラー「何せ、私はかつてお嬢様をお逃しになろうとしたことが旦那様に見破られ、拷問の末に死んでしまったのです。おそらく私の死後、監禁なさる場所をお変えになりましたでしょう」


エルフ「おおう……」


赤魔「なんだよ、それ……!」



バトラー「一度は朽ちたこの身、こうしてギミックとして復活したのは此度こそお嬢様を救い、そして旦那様をその狂気から解放致すためと存じております」


戦士「死んで尚、その忠誠と慈悲深い心に感服した。俺たちがお前の悲願を達成してみせる」


商人「(すぐ人の言葉を鵜呑みにしますよね)」


エルフ「お人好しめぇ。というか、リーダーは私なんだから勝手に決めないでよ、もう」


バトラー「ありがとうございます。旅の方々」


エルフ「街荒らしみたいなもんだけどね。ところで何か報酬はないわけ?」


銃士「銭ゲバやなぁ」


バトラー「このお屋敷マーチャント家の私有財産です。しかし今では新たに出現したものがほとんどであり、それをあなた方が獲得することは私が関知するところではございません」


赤魔「???」


盗賊「屋敷内のアイテムは持って行っていいそうよ」


エルフ「商人、1000Gドールの確保!」


商人「6つ確保しました!」


戦士「仕事が早い……」



エルフたちは『ビスクドール』を6つ手に入れた!



エルフ「6000G……1人頭1000G……ふへへ……!」


銃士「女の子がしちゃダメな顔しとる」


戦士「男でもダメだろ」


エルフ「うるさいよ!」


赤魔「うう、また外に出なきゃダメか? あのデカい魔物どうするんだ? 白いフヨフヨもいっぱいだろうし……」


盗賊「その必要はないわよ」コンコンッ……カリッカリッ


エルフ「ん?」


盗賊「はっ」バゴッ…!



盗賊は隠し通路を見つけた!



バトラー「!!」


商人「流石ですね!」


エルフ「やるねぇ……」


銃士「……このパーティ、盗賊はんと商人くんだけでほぼほぼ回りそうや」


赤魔「俺だって必要だろ!?」


戦士「全員がそれぞれのやるべきことをやる。それが大事だろ」


エルフ「そういうことだよ、肉壁二枚たち」


戦士「相変わらず言い方がひどいな……」


銃士「俺はエルフはんより華奢なんやけどね」


エルフ「私が太ましいみたいに聞こえるからやめてくれる?」



バトラー「おそらくこの先には再び旦那様……旦那様の御分身がお出になるかもしれません。私はこのお屋敷からあまり離れることはできませんからついていくことは出来ません。お気をつけて」


エルフ「あの肉塊、分身すんのかよぉ……」


赤魔「うぅ、やだなぁ……」


銃士「あたち、怖いのキライー!」


エルフ「きっも」


銃士「ふえぇ……」


盗賊「こんなのが上流階級か……」


銃士「それはちょっとやめてくだはる?」


赤魔「銃士はなー、もう少ししっかりしてたらなー」


銃士「えっ、なになに? 素敵なお話聞けそうな感じかいな?」


盗賊「ない。死ね」


銃士「女性陣は辛辣やわー」


戦士「すぐに死ねとか言うのはダメだぞ」


盗賊「……」


商人「(戦士さんはすっかりパーティの保護者ですね)」


赤魔「早く帰りたい……」


・・・
【死霊の街・地下道】


死霊の大群<<フヨフヨ…


赤魔「……」ぶるぶる…


エルフ「地下深いだけじゃなくてこんなに広いとはね。フヨフヨのせいで仄かに明るいけどさ」


戦士「崩れたりしたら生き埋めだぞ……崩落しないだろうか」


盗賊「おそらく大丈夫だとは思うが……この広さは何なんだ? 街全体に広がっていそうだ。それにあまりにも分岐が多い」


商人「道順の記録は任せてください」


銃士「俺も一応やっとくわ。それにしても、地下道はダンジョン化で新しく生まれた場所やと思うんやけど 」


商人「そう考えた方が妥当ですよね。普通の都市にこんな広大な地下があったとは少し考えられません」


エルフ「作る意味も分からないしね」


赤魔「怖くない、怖くなんてない……俺は最強、俺は無敵……」ぶつぶつ…


エルフ「……」ニヤッ


エルフ<<ススス…


赤魔「……オバケなんていないさ、オバケなんてうーそさ」ぶつぶつ…


エルフ「わぁっ!」


赤魔「ひゃぁぁっっ!?」


エルフ「ぷっぷくぷー♪」


赤魔「う……」


エルフ「随分かわいい悲鳴ですこと♪」


赤魔「うう……」ぷるぷる…


エルフ「おこなの? ねえねえ、おこなの?」



赤魔「うぅぅ……っ」ぐすっぐすっ


エルフ「えぇっ、ガチ泣き……?」


盗賊「赤魔……」なでなで…


戦士「大丈夫だぞ」さすさす…


銃士「せんせー、エルフはんが赤魔はんを泣かせましたー」


商人「エルフさん……」


戦士「エルフ、なんでこんなことしたんだ?」


エルフ「つい出来心で……」


盗賊「人の嫌がることをするのはそんなに楽しいか?」


赤魔「……」ぐすぐすっ


エルフ「えと……」


商人・銃士「……」


戦士「エルフ、赤魔に謝るんだ」


エルフ「は?」


盗賊「謝れ!」ぐいっ


エルフ「いたっ!」


赤魔「と、盗賊、やめ、やめて……」ぐすっ…


盗賊「……」チッ…


エルフ「……」


戦士「エルフ、今回は全面的にお前が悪いぞ。チームのリーダーならふざけたりせず、もう少し責任感を持った行動をするべきじゃないのか? それに他人の嫌がることを人にするのは……」


エルフ「……うっさいな」ボソッ


戦士「……エルフ」


エルフ「はいはい、ごめんなさいってば」


戦士「エルフ」ぎゅっ


エルフ「腕つかまないでよっ! 変態なのッ!?」


戦士「エルフ」


エルフ「う……ぅぅ……っ」ぽろっ…


ぐすぐす……



商人「(なんというか、十代前半って感じですね)」


銃士「(エルフはん、自分で考えて判断できる賢い娘なんやろうけど、こういうところはまだまだ子どもなんやなぁ……俺の視点、完全にオッさんや)」



エルフ「……ごめんなさい」


赤魔「うん、いいよ……」


戦士「よしっ、謝れて偉いな。許せて偉いな」ぽんぽんっ


エルフ「子ども扱いすんな……」


赤魔「そ、そうだ!」


戦士「すまんな」


盗賊「……」


銃士「盗賊はんも謝っておいた方がええんちゃう?」


盗賊「はあ?」


銃士「いやぁ、ちょっと感情的になり過ぎやん? エルフはんの胸ぐら?みかかるのは適切やないやろ?」


盗賊「……」


銃士「エルフはんが謝ったのなら、盗賊はんも謝っておいた方があと腐れなくてええ。年下やから頭下げるのを嫌がるとか言っとるど俺みたいにロクな大人にならへんぞ」


盗賊「……銃士みたいにはなりたくないな」


銃士「わっはっは」



盗賊「悪かった。すまない」


エルフ「べつにいいよ……」




戦士「さて、進むか」


エルフ・赤魔・盗賊「…………」


商人「(空気が重いです……)」


銃士「戦士ー、おいちゃんあまり恐ろしうておしっこチビりそうやわー」


商人「絶対にやめてくださいねっ!」


銃士「いざとなったら商人くんにかけるわ」


商人「『最も強い言葉』で非難します!」


戦士「(具体的にどんな言葉なんだ?)」



銃士「はー、こわこわ。はよ帰りたいわ」


赤魔「銃士も怖いんだな」


銃士「年取っても怖いもんは怖いでほんま。まんじゅう怖い。一杯のお茶が怖い」


盗賊「それは本当に怖がってるのか?」


銃士「おっぱい怖い」


エルフ「下ネタを挟まないと死ぬの?」


銃士「俺の熱き魂が死ぬんや」キリッ



えろー

男はみんなエロなんや!



商人「……」ほっ


戦士「(……ここからは波乱なく事が運べばいいが)」」ふぅ…




「ふふふ……ついに来たみたいだね……!」


to be continued...


○戦士メモ

・ギミック:各ダンジョンによって固有なトラップや魔物などのことを差す。どうして様々なギミックが存在するのかは分からない。ダンジョンの存在と関係があるんだろうか。

・マーチャント家:現在の死霊の街にかつて栄えた名家。ドレッド・ダドの父にあたる人物が交易にて隆盛させたが、ドレッド・ダドはその偉大な父と比較されて心を病んだようだ。そして自身の娘に非道な振る舞いをしたようだ。単純で愚かしい話だ。

・地下道:死霊の街の地下に広がる幾つにも分岐した通路が続く。地図をしっかりと残さなければ道迷いになりかねないが商人と銃士が記録を取るならば問題はないだろう。



○エルフメモ

・上流階級:べつに良いことばかりでもないでしょ

・謝罪:ぷっぷくぷー



○商人の鑑定

・ビスクドール:売値は1000G。非常に精巧な陶器の人形であり、その品質や技術は現在のドール製造の技術とは全く異なっており謎に包まれています。あまりに精巧すぎて本物の小人にすら見えます……あれ、いま目が動いたような……気のせいですかね?

・・・


『乙女の涙』を手に入れた!

『黒色クレジットカード』を手に入れた!

『魚っとっと』を手に入れた!


商人「地下にもアイテムがあるんですね」


銃士「ダンジョン化が地下にも及んどる証拠やな」


戦士「それはつまり地下にも魔物がいるってことだろう?」


<<ゥゥゥ……


ファザーシャドウが出現!



エルフ「はいはい、噂をしたら出てくるよね」カシャッ


ステータス解析マシン<<ピピ……ピロンッ


・ファザーシャドウ
HP:100
こうげき:0
ぼうぎょ:0
まほう:400
すばやさ:0


銃士「また特殊そうな敵やな」


盗賊の『加速蹴り』!


しかし効果は無かった…


盗賊「ちっ……」



赤魔の『火炎魔法』!


ファザーシャドウ<<メラメラ……シュゥゥ……


ファザーシャドウを倒した!


赤魔「いよっし!」


戦士「物理的な攻撃は効かないのか? 俺と盗賊は力になれなそうだな」


赤魔「俺とエルフに任せろ! 二人の分も倒してやるさ!」


エルフ「しっかたないなぁ」


銃士「俺も魔法攻撃できるから忘れんどいて」


・・・


『ミスリルナイフ』を手に入れた!


商人「わっ、魔法金属ミスリルでできたナイフです!」


赤魔「ミスリル!?」


エルフ「ミスリルかぁ。RPGなら冒険も中盤に差し掛かったって感じだよね」


銃士「おいくらで売れますのん?」


商人「400Gです。ミスリルはまだまだ希少ですから」


エルフ「ふへへ、がっぽしがっぽし」


赤魔「ミスリルのナイフかぁ。魔法剣にピッタリなんだよな」キラキラ…


戦士「エルフ……」


エルフ「へいへい……ちゃんと価格分の働きをしてよね」


赤魔「えっ、私が使っていいの!?」


エルフ「要らないなら売るけど」


赤魔「要る要る! すごく要る! これで私もミスリル持ちだ! やったぁ! 」


戦士「良かったな」


赤魔「うん!」にこにこ


銃士「(盗賊はんはこの赤魔はんを見てどんな表情してるんやろか)」ちらっ


商人「(盗賊さん、もしかして鼻血を出してたりしてないでしょうね?)」ちらっ


盗賊「……」


銃士・商人「し、死んでる……」

・・・

赤魔「さあー、敵出てこい! ミスリル魔法剣で八つ裂きだー!」ふんすふんすっ


エルフ「さっきまであんなに怖がってたくせに……現金なやつ」


戦士「お前が言うか」


盗賊「……トラップがあるな」


商人「た、宝箱?」



宝箱?「……」



銃士「デカい箱やなぁ。誰か入っとるんやないの?」


宝箱?「……!」ぎくっ


エルフ「というか宝箱って……他のアイテムは宝箱に入ってないじゃん……」


赤魔「盗賊、これはトラップなのか?」


盗賊「間違いなくトラップね。何故宝箱なのかはちょっとよく分からないけど」


エルフ「こんなアホらしいトラップ、誰が引っかかるの?」


戦士「まあ、そのまま馬鹿正直に開けようとする奴はいないだろうな」


商人「でも中身はなんでしょう? やっぱり魔物ですかね」


エルフ「そうなんじゃない? けど、爆弾とかだったら嫌だし、アイテムじゃないならスルー安定でしょ」


赤魔「そっかー、魔物以外の可能性もあるんだよな。攻撃しないでおこ」


銃士「こういうタイプは魔物でも移動しないやろうし、放置で構わへんやろ。ほな進みましょ」


ぞろぞろ…


宝箱?「……」


宝箱?<<パカッ


「こら~! 無視はダメ、絶対!」


赤魔「うわ、箱から出てきた!?」


銃士「女の子! 女の子や!」


エルフ「うるさいよ童貞」


少女?「あのさ~、君たちさ~。ダンジョン冒険者ともあろうものが目の前の宝箱を開けないってどうなの?」


商人「だってトラップだって分かってますし……」


少女?「か~、ひよってるな~。ひよってるよ~。たとえ中身が私みたいにミミックだって開けて見るのが真の冒険者ってもんじゃないの? これだから最近の若人は~」


エルフ「そんな何千年も前から使い古されてるフレーズで暴論を言われてもね」


銃士「いやしかし、トラップでも箱の中身が女の子やったら、確かに開けるべきやね! これからもトラップと分かっても開けていく強い意志を持つわ!」


エルフ「危ない目に遭ったらどうせどっかのアホ戦士が助けに行くからダメ」


銃士「ああ、せやな」


戦士「……」



戦士「それで何か用か」


ミミックガール「そりゃ、ミミックは宝箱を開けた相手に襲いかかるでしょ」


盗賊「開けてない。そっちが勝手に出てきたんでしょ」


ミミックガール「……確かに」



「「「「「「「…………」」」」」」」



ミミックガール「あ、じゃあ一度引っ込むから開けてもらっていい?」


赤魔「なんでだよ!?」


ミミックガール「じゃあ、このまま私との戦闘になってもいいの!? グダグダじゃん!」


赤魔「もう既にグダグダだよ!」


ミミックガール「それ確かに~!」


エルフ「もう、何なの……」げんなり…


銃士「わはは、面白い魔物ちゃんやな」チャキッ


ミミックガール「んにゃ?」


銃士の『クリティカルショット』!


ミミックガール「ミミック相手に不意打ちなんて効くわけないじゃん?」ピシッ


ミミックは指先で弾丸を弾いた!


銃士「!?」


ミミック「ばーん」ぱしっ


ミミックの『究極指弾』!


銃士「ぐぶっ……」


銃士は力尽きた!


戦士「銃士!?」


エルフ「もしかして……強い?」カシャッ


ステータス解析マシン<<ピピ……ピロンッ


・ミミックガール(?)
HP:N/A
こうげき:N/A
ぼうぎょ:N/A
まほう:N/A
すばやさ:N/A


エルフ「えぇ……」


ミミックガール「……さあて、楽しいケンカの始まりだね」にやっ



商人「待ってください!」


ミミックガール「うん?」


商人「僕たちは貴女を一度スルーしたはずです。それなのに襲いかかるというのは一般的なミミックとしては有り得ない行為です。ダンジョンにも一定の法則があるはずなのに貴女はそれに違反していませんか?」


ミミックガール「え~、積極的に襲いかかるミミックがいてもいいじゃんいいじゃん?」


エルフ「良くないっ」


ミミックガール「なんでよ?」


エルフ「私たちが困るから」びしっ


ミミックガール「……」


エルフ「……」ふんすっ


ミミックガール「それ確かに~!」


赤魔「なんなんだコイツ……」



銃士「」ちーん…


盗賊の『蘇生魔法(物理)』!


銃士「とげっびゃぁぁっ!」


銃士は蘇生した!


戦士「……変わった魔物もいるんだな。ずっとこの地下にいたのか?」


ミミックガール「うんにゃ。私は回遊する魔物なんで~。ミミックなのに回遊するとか面白いでしょ?」


赤魔「普通のミミックだってたまには移動するだろ。……しないのか?」


ミミックガール「さあ? 普通のミミックの生態なんて私の知るところじゃないし~興味もないんで~」



赤魔「なんか適当なやつだな……」


商人「(そもそも知る限りの他のミミックは宝箱に入ってなければ人型でもないんですけどね……)」


ミミックガール「とにかく私は色んなダンジョンを行き来できて、それなりに奥じゃないと出現できないんだよね」


商人「一体なぜです?」


ミミックガール「そりゃ情報エネルギーの濃度の問題でしょ」


エルフ「あん?」


ミミックガール「あれ? もしや情報空間のこととかご存知でない感じ? それなら、このお話はやめやめ」


盗賊「貴様、何を知ってる? 話しなさい」


ミミックガール「うっせ~、自分で調べろ魔人やろ~」べーっ


盗賊「!」



戦士「魔人……?」


銃士「神話に出てくる滅びた伝説の種族やで。かつて大陸を支配したものの神の怒りをかって滅んだいわれとる種族や」


エルフ「歴史の教科書の初めのコラムとかに神話の話って出るよね。……で、マジなの?」


赤魔「……」


盗賊「……何故私が魔人だと分かった?」


ミミックガール「ミミックガールだからねっ」パチンッ☆


エルフ「ウインクで星を飛ばしてんじゃないよ。幼児向け作品か」


商人「えーと……色々と聞きたいことがあるのですが」


ミミックガール「私を倒したら教えてあげてもいいけどねー。言っておくけど私はめちゃんこ強いよ?」にやっ


戦士「(自惚れでも冗談でもなさそうだな……ふざけた態度をとってるが、正統派の強者の風格だ)」


赤魔「RPGなら負けバトルなやつじゃないか?」


エルフ「むしろランダムでたまに出てくるレア敵って感じ」


盗賊「……」


戦士「盗賊。やめておけ。おそらく勝てない」


盗賊「……そうね」


ミミックガール「ありゃ、やらないんだね。ざーんねんっ」


商人「(色々とダンジョンのことについて深く知っていそうなのに……)」



ミミックガール「……ところでお嬢ちゃん」にゅっ


エルフ「うぎゃっ」


ミミックガール「『セフィロトの杖』に『解放の宝玉』? ははあ、『憤怒の火山』に行くつもりだ? ここを脱出したらあとは『蠢く砂漠』だけじゃん~、やるじゃ~ん」ベタベタ


エルフ「ちょ、離れ……やめろっ!」べしっ


ミミックガール「あいた~!」


エルフ「はあはあ……」


ミミックガール「ひどいな~。せっかくアイテムを合成してあげたのに」


エルフ「はあ?」


商人「エルフさん! アイテムが変化してます!」


エルフは『破魔の杖』を手に入れた!


エルフ「え、勝手に何してくれてんの?」


エルフ「(なんかすごく強力になってるんだけど……)」


ミミックガール「『開闢の台座』を持ってる時にまた会ったらまた合成してあげるよ~。合成しなくても大賢者の封印は破れるけどね」


銃士「……つかぬことをお聞きしますが、ダンジョン全体の黒幕さんだったりしますぅ?」


ミミックガール「んっふっふ」


盗賊「……」


赤魔「……」ごくっ


商人「……」どきどきっ


ミミックガール「ざんねん! それは私じゃないんだな!」


商人「あ、違うんですか」


ミミックガール「まあ~、もしかしたらいつかはちゃんとした態で会うかもね~」


エルフ「ちゃんとした態?」


ミミックガール「じゃねじゃね~」


ミミックガールは逃げ出した!



戦士「……嵐みたいなやつだったな」


盗賊「……」


エルフ「魔人なんだ?」


盗賊「ああ。……忌避するか?」


エルフ「は、なんで?」


盗賊「……私はかつて恐怖の象徴だった種族の末裔だ」


エルフ「いや、魔人だから何だって感じだけど。むしろその事実を話してくれてなかったことの方がムカつくよ」


銃士「珍しい亜人なんや、ぐらいの印象やな、ぶっちゃけ。エルフはん、盗賊はんにも事情があるやろし」


商人「神話で滅んだ種族が実在して、今も生き残ってることは驚きますけどね」


戦士「魔人族がどうだとかは置いておいて、盗賊が本当はとても仲間思いで真面目な良いやつってことは知ってる」


エルフ「すぐまたそういうクサいこと言う……」


赤魔「俺の盗賊なんだから口説いちゃダメだぞ!」


盗賊「……いつアンタのものになったのよ」ふっ


戦士「別に口説いてるつもりはないんだが……まあ、いい」


銃士「はいはい、積もる話はあれどまずは進みましょか。戦士は往ね」



to be continued...


○戦士メモ

・情報空間:ミミックガールの発言に含まれていた不可解な言葉。情報エネルギーとも言っていた。どうやらダンジョンに関わる用語のようだがその定義は不明なままだ。

・魔人:神の子が生まれる遥か以前に世界を手中に収めていたとされる伝説の種族。非常に獰猛で悪の象徴として創作のモチーフになることもある。神へと至る塔を建設し始めた結果、神の不興をかって滅んだとも、力に驕れて滅んだともいわれるが真相は定かではない。盗賊が本当に魔人族ならば神話は拡大解釈を多分に含んでいるのかもしれない。



○エルフメモ

・ミミックガール:今まで魔物とは色々と異質な人型の魔物(?)。目的もよく分からないし、色々とダンジョンのこととかにも詳しそうだけど何なんだろうね。正面衝突にならなくて良かったよね。

・究極指弾:いわゆる跳ぶデコピン。たぶん相手に9999ダメージを与える。チートだ!

○商人の鑑定


・乙女の涙:売値は20G。乙女の涙というロマンチックな名前が付けられた赤い小石。とてつもない悲恋に打ちひしがれたためにその涙が赤くなったという噂話のためにそれなりの価値がついています。実際はガーネットなんですけどね。

・黒色クレジットカード:売値は0.1G。ただのプラスチック製の黒いカードですが、僕には分かるんです。このカードは本当は0.1G以上の価値があることを……しかし0.1Gでしか売れません。

・魚っとっと:売値は0.1G。軽やかな食感でさくさく食べられるスナック菓子です。様々な魚介類の形は見て楽しく、また爽やかな塩味にもマッチしてます。袋は小分けされていて食べる量の調節がしやすく持ち運びも便利ですよ。僕の働いてるお店でも取り扱ってますから是非お試しください、と宣伝しておきます。

・ミスリルナイフ:売値は400G。魔法金属ミスリルは原料も少なく、精製も加工も複雑で熟練の冶金職人によってのみ行われます。高純度のミスリルは非常に貴重でかなり高価になるためほとんど工業用に用いられており、日常的にミスリル金属を使うことはあまりありません。応用の有名な例としては高い魔法伝導性とエネルギー変換に対する柔軟性、耐久性から魔法を動力源とした炉の開発などがあげられるでしょうか。魔法剣としてはこれ以上適した金属はそうないでしょうね。

・破魔の杖:売値は貴重なためつけられません。ミミックガールさんによって『セフィロトの杖』と『解放の宝玉』を合成して得られた杖です。とんでもない力を秘めていて、使用者の魔法を非常に強力なものにするでしょうが、扱いは非常に難しいでしょう。エルフさんなら大丈夫だと思いますが。

エルフ「魔人族は本当にかつて大陸を支配してたの?」


盗賊「そうらしいけど、正直言って私はほとんど知らないのよね」


エルフ「またどうして?」


盗賊「私が10歳にも満たないうちに家族も住んでいたところも無くなったから」


エルフ「あー……サモナーね」


銃士「はいはーい。俺たちヒトとの違いはどこなん?」


盗賊「バケモノに変身できる」


銃士「どういうこっちゃ」


盗賊「そのままの意味だが」


赤魔「盗賊が魔人化するとびっくりするくらい強いぞ!」どやっ


盗賊「……」


戦士「それは頼もしいな」


商人「それなら常に変身していて欲しいですけどね。そうしないということは何かデメリットがあるんですよね?」


盗賊「体力の消耗が激しいから3秒が限界なのよ」


エルフ「みじかっ。せめてカップラーメンがわく時間くらいは頑張ろうよ」


盗賊「しかも解除後は大抵気絶するわね」


商人「そうなると確かに変身場面が限られそうですね」


赤魔「で、でも本当に強いからな! 本当だぞ!」


戦士「話は変わるがさっきの変わった魔物は何者だったんだ? 色々とダンジョンの謎について詳しそうだったが」


商人「異様に強い上に、貴重なアイテムを変化させたりもしてましたよね。盗賊さんは情報エネルギーや情報空間という言葉はご存知ですか?」


盗賊「遥か昔に聞いたような……いや、何も分からないわね」


商人「そうですか……」


商人「(『不帰の虚』に来いと言ってましたよね。あとは情報エネルギーの濃度とやらが出現に影響を及ぼしているといったことを言ってました。……基本的には不帰の虚にいるのでしょうか。……色々と推測は出来そうですけど、流石に情報が断片的過ぎて頑健な推論はできないですね)」


エルフ「しかし『不帰の虚』なんて行くわねないじゃん。生還者ゼロは流石に尻込みするよ。そりゃあ10億G貰えるなら考えるかもだけど」


商人「盗賊さんは『不帰の虚』について何か詳しく知っていることはありますか?」


盗賊「……特にないが、おそらくダンジョンの中では一番特別なものだろう」


戦士「重要?」


盗賊「説明が難しいな……この際だから言ってしまうが、ダンジョンの発生には私たちの一族が関わっているんだ」


銃士「えっ!」


エルフ「まあ、何となく予想はついてたよ」


商人「それでダンジョンについて詳しかったんですね」


赤魔「待て! それは聞いてなかった!」


盗賊「言ってなかったから」


赤魔「お、俺とお前の仲だろぉ……」


盗賊「な、泣くことないじゃない」


盗賊「(赤魔の涙! 甘露にも等しい奇跡の雫! 見ているだけで浄化されそう。この世のありとあらゆる穢れをそそぎ落としてしまいそう。もしも舐めとったら……いや、私の穢れきった心身では化学反応が起きて爆発する。いや、そもそも天使を泣かせるなんて私はなんてことを……)」



戦士「ということはイカサマ師も魔人で、ダンジョンの発生に関わってるわけか」


盗賊「アイツもまだまだ赤子だったから直接は関係ないがな。とりわけ大きく関わっていたのは……というかダンジョン発生の提案と指揮をしたのはサモナーだった。当時私は生まれていなかったが、そう聞いている」


銃士「(あら、ということは20よりも下なんか。やっぱ俺が一番年長みたいやな)」


エルフ「とんでもない事実を隠していたよね。じゃあサモナーも魔人?」


盗賊「ああ。一族の有力者だった。急進的で、対立した者たちを村ごと焼くような奴だがな」


赤魔「……」


商人「そもそもどうして魔人族の方々はダンジョンを生み出そうとしたのですか?」


盗賊「再び世界を支配するための手段としてと聞いた……最初は強大な兵器を生み出す計画だったらしい。出てきたのは何故かこのような奇妙なダンジョンだったが」


エルフ「サモナーの陰謀かな。おかげで稼がせてもらってます!」


赤魔「おい!」


戦士「そんな危険人物がまだ野放しなのは気がかりだな。転移石のことを考えると、近いうちにダンジョンだけでなくて市街地にも被害が出るようなことをしそうだ」


商人「その人を見つけるためにもまずは火山に行ってイカサマ師さんに会わないといけませんね」


銃士「そんで、その為には蠢く砂漠で『開闢の台座』を手に入れる必要があるわけやね」


赤魔「さらにさらにそのためには、まずはこの幽霊だらけのダンジョンから脱出する!」


エルフ「それには、街の中を暴れてるあのデカい魔物を何とかしなきゃいけないわけで」


盗賊「そのヒントが隠されているだろう監禁部屋がこれか」バキィッ


盗賊は隠し部屋の扉を蹴り破った!


エルフ「この部屋は一際ホコリっぽいね」ごほっ


盗賊「魔物が潜んでいる気配はないわね。トラップもないだろう」



戦士「6畳ほどか。古ぼけたベッドと机、本棚……これだけか」


赤魔「……ここにあの娘はずっと閉じ込められていたのか? そんなのひどいよ……」


戦士「……本棚には小説が数冊か。申し訳程度の気晴らしだな」


銃士「お、机の引き出しに日記が入っとるな」


赤魔「人の日記を勝手に呼んじゃダメだろぉ……」


銃士「こちらも命かかってるんやから堪忍な」ぺらぺらっ


エルフ「ホコリっぽいから静かにめくってくれる?」こほっ


銃士「すんまへん」ぺらっ


戦士「これは少女が書いた絵か。家族の絵か?」


戦士「(母親とおそらく執事だろう老人は普通に描かれているが……父親の絵は目がやたらと怖いし、少女は顔も書いてないし、体の輪郭が大幅に歪んでる。他の絵もあるが色使いといい、少し常軌を逸してるな)」


エルフ「うわぁ……流石にちょっと怖くなってきたかも」


商人「ここに一人で来たら泣き出しそうです……」


赤魔「ほんと帰りたい……」


盗賊「銃士、日記の中身は?」


銃士「創作の物語やな。少女がお供を連れて色んなところに冒険に出る物語や」


エルフ「なに、私の話?」


銃士「この日記の持ち主の話やろ。体はこの狭い部屋にあっても想像の力で世界に飛び立とうとしたんやね」


エルフ「銃士にしてはやけにエモいこと言うね」


銃士「不憫すぎておセンチにもなるわ」


商人「と、ところで、先程から気になってるんですけど、この布団、やけに膨らんでますよね……?」


赤魔「ま、魔物か……?」


銃士「動いてるようには見えへんけどな?」


盗賊「違うとは思うが……」


エルフ「あー、銃士くん、ちょっとめくってみたら?」ひしっ


商人「銃士さん、お願いします」すっ


赤魔「……」ぶるぶる…がしっ


戦士「俺と盗賊はこの通りだから、手ぶらなお前に任せろ」


銃士「くそっ、商人くんは俺にくっついてくれる思うとったんに!」チャキッ


盗賊「重要なアイテムかもしれないから撃つな」


銃士「えぇ……」


盗賊「もしも即死したら蘇生はしてやる」


銃士「あれ、えろう痛うから堪忍してほしいんやけどなぁ」



ドクンドクンッ……


銃士「ほ、ほな、めくりまっせ。ほんまめくりまっせ?」


エルフ「しつこいよっ」



バクンバクンッ……



銃士「……」そーっ



バクンバクンッ……



エルフ「……っ」ゴクッ



ーーバッ



銃士「ひっ…………女の子の人形? 他は特に何もない」



エルフ「……なんだ」ふぅ





「それは私の人形」ピトッ





エルフ「」



銃士の『アルカナショット』!


ミス!


少女「すぐに撃つのね……私は何もできないのに」


銃士「ヘタレやからね」



エルフ「」←腰砕け


赤魔「」←失神


商人「」←思わず死んだふり



盗賊「……現れただけでパーティが半壊だ」


少女「少しだけ驚かそうと思ったんだけど」


銃士「(さっき外で見たんと同じ少女のはずなんに、今は痣やら傷やらでボロボロやな……父親にやられた傷か?)」


戦士「……君がこの部屋の少女でいいんだな?」


少女「そう。私はここにずっと閉じ込められてここで死んだの。最期はお父様に首を絞められて」


銃士「ひどいパパもいるもんやな。この人形は?」


少女「お父様が私を殺した後に作ったのよ。私の死体を詰めてね」


盗賊「狂ってるな」


戦士「俺たちは君を父親から救いに来た。来たが、どうすればいい? どうすれば君を救える?」


少女「あはは、私を救う? 私はもう死んでいるのに?」


戦士「……そうだとしても、死して尚、こうして囚われている君を解放したい」


少女「綺麗事ね。私のことなんか本当はどうでも良くて自分たちが助かりたいだけのくせに。それとも人を救った気分になって悦に入りたいの? どうせみんな汚い心をもって生きてるのよ。誰も私に本当の優しさなんてくれないのよ」


エルフ「めんどくさいやつだなー。そっちも解放される。私たちも解放されるでウィンウィンじゃんかよ。本当の優しさとか無償の奉仕とか真実の愛とかほざいてぐずってるヒマがあったら立ちあがれよ」ぷるぷる…すくっ


少女「私の苦しみが分からないからそう言えるのよ……」


エルフ「わかるわけないじゃん。みんな別の人間なんだよ。少しでも幸せになりたいなら幸せになれるよう自分からもがいてみなよ」


銃士「天は自ら助くる者を助く、やね」


少女「……私はもう死んでしまっているのに、幸せになんてなれないわよ。私の人生は絶望しかなかった。もう救われないのに何をもがくのよ……!」


戦士「でも、君はここにいるじゃないか」


少女「けれど私は……」


エルフ「私から言わせれば、君は生前も全く生きてなんかいなかったね。死んでいなかっただけだよ」


少女「……」


エルフ「だから私たちがもう一度、君に生命をあげるよ。あのクソ馬鹿親父をぶっ倒してね」


少女「……そんなことできるわけがない」


エルフ「自由を求めて立ち向かう。きっとその時はどんな時よりも確かに生きてるでしょ。君が君でいるうちにもう一度生きるべきじゃないの」


少女「……」


エルフ「分かったら協力して! 分からなくても協力して!」


少女「……本当に自分勝手なのね。こんな人知らない」


エルフ「私は主人公だからね」ふんすっ


少女「主人公……私は……私だって……」


エルフ「……」


少女「……もし、いつかまた会えたら今度は本当に友だちになってくれる?」


エルフ「えー、それは別の話かな」


少女「ふふ、本当にひどい人ね」


エルフ「……ま、考えておくよ」


少女「……」にこっ



少女「……その人形の中」


エルフ「ん?」


銃士「……」ぶちっ…ごそごそっ


『おもちゃの剣』を手に入れた!


少女「……きっと私の力だけじゃ足りないだろうけど、私にできるのはこれくらい」


エルフ「……ま、足りない分は貸しにしておいてあげる」


少女「ええ……」すぅ…


少女は姿を消した



銃士「エルフはんにしてはやたら熱く語ってたなぁ」


エルフ「うるさいよ。ちょっと思うところがあったんだよ」


戦士「(……思うところ、か)」



エルフ「さて、最低変態親父の妄執を終わらせにいきますか」


盗賊「赤魔と商人を起こしてからな」


エルフ「いつまでくたばってんの、もう」



to be continued...

○戦士メモ

・アルカナショット:魔力で生成された弾丸は実体のない魔物にも効く……はずだが幻惑の少女には全く効かなかった。地下通路では実体のない魔物を数多く倒していたのだが、どういうわけか攻撃が無効化されている印象が強い。


○エルフメモ

・死んだふり:一部の動物は身の危険を感じると『擬死』といって実際に身体が硬直して動かないような状態になるらしい。……商人、君は人間だから擬死しないでしょ! ヘタな言い訳すんな!

・主人公:私は私の物語の主人公だし、他の人は私を引き立てる物語の主人公だ。


○商人の鑑定

・おもちゃの剣:売値はつけられません。誰も傷付けられそうにないハリボテの剣ですが、それでもある虐げられた少女のささやかな反抗はその少女にとって会心の一撃たりえるでしょう。


エルフ「さて、死んだふり名人な商人くんの による鑑定の結果、『おもちゃの剣』はドレッドダドに有効そうだと分かったね」


商人「擬死なんだから仕方ないです……」


エルフ「タヌキか昆虫かよ……まあ、だからこれを活用してドレッドダドを倒しちゃおう」


銃士「しっかしほんまにあの巨大魔物を倒すだけで外に出れるんやろか? いくらダンジョンはそういうもんと言われてもな」


戦士「お前が悪魔の湿原で『解放の宝玉』を手に入れた時はこういうことはなかったのか?」


銃士「あらへんかったね。……せやかて、ほかに当てもないし……まずは試してみましょ」


エルフ「それなら冷や水をかけるようなこと言わないで欲しいよ」


銃士「あれ? これだけでシラけてまうん?」


エルフ「心の機微が分からないからモテないんだよ」


銃士「それ言われると説得力はんぱないわ」


赤魔「銃士はそういうとこあるよな」


盗賊「ああ」


銃士「oh...」


戦士「作戦はどうする?」


赤魔「刺せば終わりじゃないのか?」


盗賊「あの少女の話だとそれだけで決定的な一撃になり得るわけではないみたいよ」


エルフ「まあ、けど刺せば弱るでしょ」


戦士「作戦はどうする?」


商人「挟み撃ちにしてしまったほうが、おそらく敵も対処し辛くて有利かと」


銃士「デカブツ相手に固まっとったら不利やろうしな」


盗賊「……とりあえず地下から出るべきだ。ここは監禁のためのスペースだけあって袋小路だ。加えて息苦しいし黴くさい」


エルフ「さんせー」


赤魔「よしっ、脱出だ……ひゃぁぁっ!?」




ドレッドダド「……」ジィィ……




ドレッドダドの一部分が出現!



戦士「ここまで来たか!」


エルフ「ここには入れないんじゃなかったの!? ほんと気持ち悪い見た目しちゃって!」


商人「(逃げ場がないです、これはまずいです)」ゴクッ


ドレッドダド「おもちゃの剣を取ったな?」


エルフ「うわ、喋るのかよ!」


商人「(敵は間違いなくパワーアップしてますね。僕たちが地下にいる間もさらに死霊を喰らっていたのでしょう)」


ドレッドダド「俺の娘を奪うやつは許さん。俺の娘は俺のものだ。どこにもやらせん。永遠に俺の愛と共にあるのだ」


赤魔「……っ、いい加減にしろぉぉっ!」


赤魔の『火炎魔法』!



ゴオオオ……ッッ!!



エルフ「(え、なにその威力……)」


ドレッドダド<<ズズズ……


ドレッドダドは逃げ出した!



赤魔「はあはあ……」


エルフ「こんなとこで火炎魔法使うなよー」げほっ


赤魔「ごめん……なんかもう恐怖を通り越して怒りしかわいて来なくなった」


銃士「分かるわ。恐怖が続くと余裕がなくなるもんな」


戦士「赤魔のお陰で退却できたようだし、まずは地下から脱出だな」


盗賊「おそらく待ち伏せされてるだろうな」


戦士「……バトラーは大丈夫なんだろうか」


銃士「あんまり良い予感はせえへんな」


・・・


バウンテッドバトラー「……」


盗賊「おい、大丈夫か? ドレッドダドにやられたのか?」


バトラー「ぅ……」


盗賊「少しまっていろ。回復できる奴を呼んでくる」


バトラー「そ、それより、階上に旦那様が……街の全ての死霊を吸収……隙を作らなければ勝機は……」


盗賊「……そうか」


バトラー「……お嬢様を救っていただいて……ありが……」


バウンテッドバトラーは事切れた……


盗賊「……」


赤魔「バトラーは良いやつだったのに……っ」


戦士「ドレッドダドを倒して決着をつけよう。犠牲になった全てのものたちのために」


エルフ「……隙を作らないとダメっぽいの?」


盗賊「ああ」


商人「強化されたドレッドダドが上に待ち構えているんですよね……どうしましょう……」


銃士「そら、出て行くしかないやろ」


戦士「……先に俺が行く。銃士、支援を頼む」


銃士「しゃーない」


赤魔「あ、危なくないか?」


戦士「それは全員同じだ」


エルフ「……」


銃士「んまっ、そんな心配そうな顔せんどいてや。戦士の死にたがりを死なずにすんのが俺やからな」


エルフ「別にしてないっての」


銃士「あら、そう。俺の見間違いかぁ」


エルフ「うっといな……」


戦士「先制でやられても俺が一番耐えられるからな。それがベターだろう。他は俺の後に続いてくれ。商人は安全を確保してくれ」


エルフ「……君たちが死んだら取り分が増えるね」


戦士「残念だがそうはならない」



商人「ところで『おもちゃの剣』なんですけど……相手の知能と先入観を利用しませんか?」




・・・

ドレッドダド<<ズズズ……


ドレッドダド「ふん、やはり最初は捨て駒か」


戦士「(デカいなっ……!)」ドドドッ……


戦士「うぉぉっ!」


ドレッドダドは無数の触手で戦士を絡めとろうとする!


銃士の『クリティカルバースト』!


触手がわずかに怯む!


銃士「巨大なアンモナイトみたいな見た目に化けよって!」


ドレッドダドの『ぶん回し』!


戦士は銃士を庇った!


戦士「ぐぅぅ……っ!」


銃士「戦士! 右に展開しろ!」


ドレッドダド「(挟撃するつもりか? 恐らくこいつらはデコイだ。後続がナイフを持っているだろう)」


戦士の攻撃!


触手がわずかに怯んだ!



銃士に向かって触手が伸ばされる!


赤魔の『火炎魔法』!


触手が大きく怯む!


赤魔「炎が嫌いか! もっと燃やしてやる!」


ドレッドダド「(こいつは始めからナイフを装備している上に女児だ。こいつは要警戒だ)」


戦士「赤魔! こっちだ! 右に来い!」


赤魔「あ、ああ!」


エルフ「おりゃぁぁぁっ!」


エルフはナイフを持って直線的にドレッドダドへ駆ける!



ドレッドダド「(特攻……に見せかけたフェイクかもしれないが、こいつは無力化しなければいけない)」


エルフは触手に絡め取られた!


エルフ「やめて……! 私に乱暴する気でしょう! 同人みたいに!」


ドレッドダド「愚かな。あの娘の些細な抵抗では私をどうにもできないというに……」


エルフ「エルフの美少女だからって! エルフの美少女だからって! このロリコンど変態野郎!」


ドレッドダド「うるさいぞ小娘……! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」ギチチッ


エルフ「んぎっ……!」



戦士の攻撃!


赤魔の『火炎魔法』!



触手が怯んだ!


エルフへの拘束が解かれた!


エルフ「あいてて……かわいいエルフちゃん相手にこのグロど変態ロリコン狂気化け物野郎め」


エルフは右に移動した!



ドレッドダド「ふん……しかしナイフは奪った。後は貴様らも始末して取り込んでやる!」


ドレッドダド「(……待て!? これは、おもちゃのナイフじゃない!?)」


赤魔「落書きした俺のミスリルナイフちゃんと返せよ!」


ドレッドダド「(それでは本物はどこだ……)」ザワザワ…


盗賊の『魔人化』!



魔人「……」スッ


エルフ「盗賊選手ー!」


赤魔「大きく振りかぶってー!」


ドレッドダド「(全力でナイフを投げるつもりか!? だが……これなら防御で防げる! 他の小娘二人と大男も警戒できている!)」


銃士「まあ、おもちゃのナイフを持ってるのは俺なんだけどな」バスッ


ドレッドダド「はっ?」ズドッ


ドレッドダドは大幅に弱体化した!



銃士「武器を弩に替えたんやけど気づかんかったか? 女の子に刺されたい気持ちは叶えさせませーん」


ドレッドダド「な……きさま……っ!」


エルフ「子どもは厳しい親相手には見てないところで反抗するもんなんだよ」



魔人「……吹き飛べ」



魔人の『魔導砲』!



ーードレッドダドの半身を消し飛ばした!



盗賊の魔人化が解けた!


盗賊「……後は任せるわね」パタッ


盗賊は気絶した!



商人「盗賊さんは任せてください!」


商人は盗賊を安全地帯に避難させた!



ドレッドダド「アァァ……崩レ……マダ……マダマダァ……消エヌ……マダァ……ッ!」



エルフ「いや、消えろよ」



エルフの『滅撃・炎』!


ドレッドダド「ンギャッ!?」



赤魔「魔法剣うぃずミスリルナイフだ! 倒れるまで何度でも攻撃してやる!」


赤魔の『火炎剣』!


ドレッドダド「ギィィ……ッ!」




ドレッドダド「メスガキ風情ガ……!」


ドレッドダドの『ぶん回し』!


戦士はパーティを庇った!


戦士「これ程度の攻撃では俺一人倒せないな」


ドレッドダド「貴様ァァッ!」ウゾゾッ


銃士の『アルカナショット』!


ドレッドダドの触手は大きく怯んでいる!


銃士「お兄さん、後はサポート役に徹しますぅ」パシュッ……ガチャッ……ギギィ……パシュッ


ドレッドダド「グ……コノ……ッ!」


エルフ「これで好き放題全力攻撃できるね」


赤魔「……何度でも焼き切ってやる!」


ドレッドダド「ヒ……ッ!」




エルフの『滅撃・炎』『滅撃・炎』『滅撃・炎』……!


赤魔の『火炎剣』『火炎剣』『火炎剣』……!


銃士は反撃しようとする触手を撃ち落とす!


戦士はパーティを庇い続けている!



ドレッドダド「タ、タスケ……イヤダ……」


エルフ「ふざけんなよ……!」ドゴォォッ!!


銃士「助けを求めるにはだいぶ手遅れやなぁ。ドレッドダドさんの来世にご期待ください」パシュッ


ドレッドダド「イヤダ……死ニタクナイ……死ニタク……」


赤魔「あの娘だって、おんなじこと思ってたんだよッ!」ザクッ、メララ…ッ!


戦士「還る前に痛みを知れて良かったな、贖って安らかに眠れ」キィンッ


ドレッドダド「ゥォォォォ……」



エルフ「はあはあ……どりゃぁっ! これでラストだぁ……ッ!」ググッ……!



戦士の攻撃!


触手<<スパッ



ドレッドダドを倒した!



赤魔「あっ」


エルフ「…………」


戦士「……俺たちの勝ちだな」にこっ


エルフ「この振り上げた『破魔の杖』、どこに振り下ろすべきかな……どこに振り下ろすべきかなぁ!?」ジリッ


戦士「いやいや、仕方ないだろ……」


銃士「わはは、カッコつかんな主人公(笑)」


エルフ「ふんっ」


銃士「あぶなっ!?」




赤魔「盗賊! 大丈夫か!」ダダッ


商人「眠ってるだけでおそらく問題ないです」


エルフ「商人、意識がないからっていかがわしいことしてないよね?」


商人「銃士さんじゃあるまいしあり得ませんよ」


銃士「いや、俺かてせんけどね!?」


戦士「しかし、すごい技だったな」


銃士「なぁ? 魔人ってすごいんやな」


赤魔「な、なあ!」


エルフ「あんだよ?」


赤魔「その、盗賊のこと、できれば、怖がったりしないでほしいんだ……盗賊だって必死だったから……」


ぽんっ


戦士「誰も感謝こそすれ怖がってなんかないさ」


商人「そうですよ。魔人というからもっと恐ろしい姿かと構えていたらそうでもありませんでしたしね」


銃士「せやせや。あの姿で冷たい目で罵られたら気持ち良さそうや」


エルフ「君はちょっと黙ってようか。別に今までの人がどういう反応してきたか分からないけどさ、この最強で最高に可愛くて有能なリーダー率いるチームエルフのメンバーがたかがそれくらいでビビったりしないよ」


赤魔「……エルフ」がばっ


エルフ「ちょっ……」


赤魔「口が悪くて態度が悪くて意地が悪くてもお前はやっぱり良いやつだなぁ!」ぎゅぅぅ…


エルフ「やかましいよ!」


銃士「盗賊はん、この光景を見られず残念やなぁ」



スゥゥゥ……


商人「あ、帰れるようになったみたいですね」


エルフ「このダンジョンってもしかしてもう機能しない? それとも私たちが出た後で全て元通りになるの? ……下手したら今回の親娘も」



商人「ど、どうなんでしょうか? ボスを倒した事例はありませんからね。ダンジョンは攻略されたがっている、というのならもう戻らないのかもしれませんね」


エルフ「……下手したら稼ぎ場が一つなくなっちゃうじゃん! 商人! アイテム! レアアイテムの確保だ! 赤魔! 銃士も! 戦士なら一人背負おうが探索ぐらい余裕だよね!?」


商人「持っていけるだけ持っていきます!」


銃士「よっしゃ、荒らしたろ!」


赤魔「レアアイテムが待ってるぜ!」


戦士「元気な奴らだな……」



Chapter4:幻惑の街
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○戦士メモ


・ドレッドダド(完全体):最初の出現時は人間の骨のような姿をしていたが、決着をつけた時は触手と甲殻を持つ異様な巨大怪物と化していた。『おもちゃの剣』によって弱体化していなければ間違いなく勝てなかった。あっさりと勝てたのは運が良かったのと、相手に高度な知能があったためにむしろ騙しやすかったことに起因する。

・ダンジョン制覇:この後、聞くところによると幻惑の街はダンジョンでなくなってしまい、アイテムはおろか、魔物も出なくなってしまったらしい。おそらく称賛ばかりされることではないが、今後に出たであろう犠牲者がいなくなること、そして、少女と街の人々が安らかに眠れることは、間違いなく良いことだと俺は信じている。



○エルフメモ

・魔人化:盗賊は3秒だけ魔人に変化できる。魔力の爆発的な増加量を考えると3秒の持続でも大したものだと思う。見た目も恐ろしいバケモノになるかと思ったら、肌の色が変わってツノが生えて目が紅くなったくらいの変化だった。どうでもいいけど、盗賊が男だったら絶対にいかついバケモノの姿になってた。100万G賭けてもいい。そんなに持ってないけど。

・魔導砲:莫大な魔力を収束させて、エネルギー弾を放つ盗賊の必殺技。弱体化してもまだ体力オバケだったドレッドダドを一気に追い込んだ。使用後戦闘を離脱することもあってまさに対ボス決戦技って感じ。

・ダンジョン荒らし:幻惑の街を荒らしたことで累計で9万G近く稼いだ。これだけの金額があれば6等分しても戦士の年収よりも多い。ダンジョンってやっぱり儲かるんだなぁ。幻惑の街がもうダンジョンとして機能しないのが残念でしょうがない。商人、しっかりと換金して、盗まれないようにしてよ!


>>654
コンマ下2桁
ゾロ目:ヤンデレンジェル
ゾロ目以外:通常進行

ゾロ目ァ!!


【戦士の自宅】


エルフ「ぐへへ、9万G……ぐへへ……笑いが止まんないね」


戦士「パーティの共有財産だけどな」


エルフ「しばらく遊んで暮らせるよ……うへへ……」


戦士「換金するにも額が大きいから分割して払われるけどな」


エルフ「……人が気分よく富の悦楽に入ってるのに邪魔しないでくれる?」


戦士「すまん」


エルフ「……月割の支払いで一人1250Gか。大成功といっていいくらいなのに、ダンジョン冒険者ってあまり稼げないのかもね」


戦士「費用ほとんどなしで9万Gを一気に稼いだら大したもんだろ。死ぬリスクは負ってるとはいえ」


エルフ「まあ、世の中、労苦と報酬が釣り合ってない仕事って結構あるしね」


戦士「どこでそういう差が出てくるんだろうな」


エルフ「そりゃあ大原則は『需要と供給』でしょ。そして、需要と供給が歪むからその差が不当に大きくなったりするのさ。例えば特権を与えるような規制だとか、学歴や身分による違いだけでプレミアムがついたりだとか、『この仕事の報酬相場はこんなもの!』って根拠のない偏見が世の中に定着したりとかね。相手の足下を見て決めることも多々あるだろうし」


戦士「……商人みたいなこと言うんだな」


エルフ「基本的に私と商人は思考の論理と前提が一緒だからね。話してるとつくづくそう思うよ」


戦士「……」


エルフ「お、なに嫉妬? 嫉妬してるの?」


戦士「嫉妬? 何にだ?」


エルフ「うるせー、ばーか」


戦士「なんなんだよ……」


エルフ「……」むすっ


戦士「……俺が悪かった」


エルフ「私がなんで怒ってるか分かる?」


戦士「えぇ……」


エルフ「エルフちゃん激おこだよ。『なんで怒ってるか分かる?』なんて聞いちゃう檄おこメンヘラ構ってちゃん状態だよ」


戦士「自分で言っちゃうのか」


エルフ「相当機嫌悪いよー、簡単には治らないよー。夕食に『アシナガ豆と仙人豚のポークビーンズ』を奢ってもらわないとどうしようもないね?」


戦士「いや怒ってないだろ」


エルフ「怒ってるよ。だから奢ってもらわないと鎮まらないね。戦士の金でタダ飯が食べたい。ポークビーンズと同じくらい評判のいいクロワッサンも食べたい!」


戦士「相変わらず欲望に素直過ぎだし、欲望を素直に話し過ぎるやつだな……」


エルフ「遠慮するような仲じゃないでしょ?」


戦士「親しき仲にもだな……中央区に新しく出来た店だよな?そこそこ高いと聞くんだが」


エルフ「ごちそう様でっす♪」


戦士「既に奢ってもらう前提かよ。奢らんからな」


エルフ「しみったれてるなぁ」


戦士「そういう対応する仲でも無いだろ……」


エルフ「はいはい、けちんぼけちんぼ。じゃあ今日の夕飯はそこでいいよね?」


戦士「……奢らんからな?」


エルフ「それなら1000Gも返さないからね」


戦士「どんな理屈だ!?」


エルフ「ポークビーンズとクロワッサン~♪」


戦士「お前に一生勝てない気がする……」


・・・
【中央区・レストラン】


エルフ「~~♪」もぐもぐ


戦士「美味そうに食うよな」


エルフ「美味しいからね♪」


戦士「確かに美味い」


エルフ「そういえば、戦士、引っ越ししない?」


戦士「は?」


エルフ「だって今の部屋ボロいし狭いじゃん。少なくとも1年間は定期的な収入がみこめるし、もっと広くて綺麗な場所に引っ越したい」


戦士「……いや、お前が独りで引っ越せば良くないか?」


エルフ「……本気で言ってる?」


戦士「……どうせまた一文無しになって転がり込んで来るのが目に見えてるし、引っ越すか。1000Gを踏み倒されても困るしな」


エルフ「わー、借金を理由に美少女を囲おうとしてる。なんて最低な男なんだ」


戦士「お前な……!」


エルフ「クロワッサンのおかわり貰えるらしいよ? 戦士もいる?」


戦士「……ああ」


戦士「それでどこか引っ越しの当てでもあるのか?」


エルフ「……やっぱりメンドイから良いや」


戦士「はあ?」


エルフ「引っ越しってめんどくさいじゃん? それにどうせならもっと稼いで不動産買おうよ不動産。賃貸収入で働かずに暮らせるよ!」


戦士「いや、そんなに甘い世の中じゃないだろ。しかも不動産って……少なくとも30万Gは必要じゃないか?」


エルフ「まあ、そうだろうね。30万G……あと27万Gかぁ」


戦士「俺の財産まで含めて計算すんな!」


エルフ「30万G稼いで不労所得で生活したい。どうせならもっとデカいハコから収入を得てウハウハな生活がしたい」


戦士「夢は大きいな……」


エルフ「小さな可愛らしく整った体に大きな夢……ってやかましいよ筋肉ダルマめっ」


戦士「何も言ってないが!?」



・・・
【帰り道】


エルフ「はー、食べた食べた」


戦士「見かけによらず結構食べるよな」


エルフ「身体は資本だよ。強い胃腸を持つものが勝つ世界さ」ふんす


戦士「ご先祖さまたちはそんな世界から逸脱するために文明を築いてきたんじゃないのかよ…………うん?」


<<いいから、俺たちと来いよ


少女?「や、やめてください……!」


<<おいおい、仲良くしようってだけじゃん?



エルフ「すぐ近所だってのに、頭悪そうな迷惑やろーどもがいるね」


戦士「……!」ずかずか


エルフ「あーあー……まあ、そうなると思ったけど」すたすた…



<<おら、来いよ!


少女?「ひっ……あっ、そこの人、助けてください……あっ!?」


戦士「おい、お前ら」ギロッ


<<あ? げっ、な、なんだよ……

<<べ、別に俺たちは何にもしてない


戦士「痛い目に遭いたくなければすぐに手を離せ……すぐにだ!」


<<ひっ……!


男たちは瞬く間に逃げ出した!


エルフ「(……なんか戦士らしくないね)」



戦士「……何もされてないよな?」


少女?「う、うん……」


戦士「……」ほっ


エルフ「(やけに距離が近くない?)」


エルフ「戦士……誰? 知り合い?」べたっ


戦士「お、おい、やめろって」


少女?「えっ、えっ?」


エルフ「大丈夫だった?」


少女?「は、はい。ご心配おかけしましたっ」ペコペコッ


戦士「怖かったろ? とりあえず家に上がるか」


エルフ「は?」


戦士「ん? ああ、紹介してなかったな。妹だ」


妹「お、お手紙にあったエルフさんですよね? は、初めまして。兄がお世話になってます」


エルフ「あ、妹さん……」ぱっ

・・・
妹「お、お邪魔します」


戦士「適当に座ってくれ」


エルフ「飲み物は紅茶でいい?」


妹「お紅茶! そ、そんなハイカラなものはいただけないです!」


戦士「ダンジョンからいくらでも取れるからな。そう気にしなくていい」


妹「け、けど……」


エルフ「……とりあえず入れるね」



戦士「どうして夜に一人でうろついていた。危なかったんだぞ」


妹「ご、ごめん。もっと早く着いたんだけど、道に迷っちゃって。さ、さっきも道を聞いたら少し遠いから案内してくれるって……でもこの近所のはずだしって……それで……」


戦士「……そうだったか。それで、そもそもどうして来たんだ?」


妹「……お手紙届いてなかった?」


戦士「いや」


妹「……あっ、そういえば祝日挟んだから来週になっちゃうのか。ごめんね……」


戦士「それはいいが」


エルフ「……」ことっ


妹「ご、ごめんなさい……! ありがとうございます! 本当にごめんなさい!」ぺこぺこっ


エルフ「う、うん。戦士はコーヒーでいいんだよね? 夜だけどさ」


戦士「ああ。ありがとう」



妹「……」ほうっ


エルフ「……なに?」


妹「こんな美人さん見るの初めてで……なんか自分が恥ずかしいです……」


エルフ「まあ、私は世界一可愛いからね」ふふん


妹「世界一! すごいなぁ……! けどエルフさんなら確かに……!」キラキラッ


エルフ「……この子は純粋過ぎる子なの? 腹黒演技派過ぎる子なの?」ひそっ


戦士「困ったことに前者なんだ……優しくしてやってくれ」ひそっ


エルフ「エルフちゃんどっちも苦手……仕方ないな」



妹「あ、それで上京してきた理由なんだけど」

・・・

戦士「奉公先の下見か」


妹「うん。この街の商家に来年から下女として奉公することになったの。今は畑も忙しくないし、一回は街に行こうと思って」


戦士「なるほどな」


エルフ「奉公って……仕送りが足りてないの? 戦士は結構仕送りしてるみたいなんだけど」ひそっ


戦士「こっちの地域だと年頃の娘は大体奉公に出されるもんだ。もしくはすぐに嫁入りするかだな」ひそっ


エルフ「ふーん……どこも自由がないなぁ」



妹「……あと、お兄ちゃんに話があってね」


戦士「……ん?」


妹「最近、仕送り額が急に増えて、お母さんも大兄も心配してるんだよ。無理してるんじゃないかって」


戦士「そんなことはないさ。今は色々と仕事が上手くいってるだけだ」


妹「……本当に?」


戦士「ああ」


妹「……お兄ちゃん。私も奉公に出るし、もう糊口のために傭兵さんなんて危ない仕事しないで。また大工さんのところで堅実に生きて欲しいの」


エルフ「……大工だったの?」


戦士「丁稚奉公でな」


エルフ「そこから道を踏み外してダンジョン冒険者か……」


戦士「言うな……あと本職は傭兵だ」


エルフ「でもダンジョン冒険者としての方が稼いでるじゃん」


戦士「それを言われると耳が痛いな……」



妹「お兄ちゃん……」


戦士「そうだな……俺は体が丈夫なことくらいしか取り柄がないし、まだしばらくは今のまま行こうかと思う。末妹がもう少し大きくなるまではな」


妹「でもお兄ちゃんが死んだらどうするの!? お父さんだけじゃなくてお兄ちゃんまで……!」


戦士「……心配するな。俺はまだまだ生きるつもりだ。よぼよぼの爺さんになるまでな」


妹「だけど……」


戦士「それより泊まっていくんだろう?」


妹「うん。そう手紙に書いてたのに届いてないんだもんね」


戦士「やっぱりそうだよな……」


妹「ダメかな? 寝床ふたつあるし大丈夫そう……ふたつ?」


戦士「……」


エルフ「……もしかして私が転がり込んでること言ってない?」こそっ


戦士「言えるわけないだろ……」


妹「……」ボボボ…ッ


妹「あの、お兄ちゃんとエルフさんて……あの……ご、ごめんなさい! 宿とります! ごめんなさいっ!」


エルフ「待った待った! これは……あれだよ。そう、たまたま私の借屋が改装中でね、それで戦士のところに少しの間だけお邪魔させてもらってるんだ。特に君が想像してるようなことはないよ」


妹「だ、だけど結婚もしてない男女の同じ部屋で……もしかして既に結婚……!?」


エルフ「いやいや! いやいやいやいや! 純粋に頼るところが他になくてさ。戦士ってアホみたいに優しいから助けてもらってるんだって」


妹「……そ、そうなんですか。あ、で、でもそういえばさっきすごい密着していたような……」


エルフ「え、えと、あれは怖かったからくっついてただけ! あ、体調も悪かったんだよ!」


妹「そうなんですか……って、今は大丈夫なんですか……? 体調不良なのにお紅茶淹れてもらってすみません本当にごめんなさい……!」ぺこぺこっ


エルフ「いや、いいから! もう良くなったから! うん!」


エルフ「(め、めんどくさい)」



戦士「ま、まあ狭いが少しだけなら泊まれるから大丈夫だ。何日くらいこっちにいる予定だ?」


妹「し、明々後日の朝に帰るから3泊させてもらえないかな?」


エルフ「(3泊もかよー……)」


戦士「ああ、分かった。エルフ、大丈夫だよな」


エルフ「そりゃ、家主の妹さんならね。私が文句言える立場じゃないよね」


妹「ほんと申しわけないです……手際悪くて恥ずかしいなぁ……」


エルフ「ほんといいから……」


戦士「それでベッドなんだが……」


・・・

戦士「……」←エルフのベッド


エルフ&妹「……」←戦士のベッド



エルフ「(なんでこの配置……初めて会った人と同じ布団とか気まずいんだけど……眠れない……)」


戦士「……」...zzz


エルフ「(あっちはお気楽に寝入ってるし……!)」いらぁっ


妹「……あの、起きてます?」


エルフ「あ、うん」


妹「ほんとうにごめんなさい……。ご不便おかけして……」


エルフ「いや、大丈夫だって」


エルフ「(そんなに申し訳なさそうにされるとこっちの居心地が悪いんだよねぇ)」


妹「……お兄ちゃんがよくエルフさんのこと手紙に書いてます。『とても頼りになる』って……」


エルフ「(内緒話のつもりなんだろうけど、その手紙結構な頻度で中身見てるんだよね。実は君の手紙も怒られない範囲でたまに覗き見してるんだよね。なんかごめん)」


エルフ「……兄妹仲が良いんだね」


妹「……はい。昔からお兄ちゃんの後ろを追いかけ回してました。お兄ちゃんはいつも優しくて頼りになるし、私のこと大切にしてくれて、味方でいてくれて……」


エルフ「うんうん」


妹「……お兄ちゃんに危険なことして欲しくないんです。ダンジョン冒険者なんかやめていっそ村に戻って来て欲しいんです」


エルフ「それはさっき戦士が否定してたじゃん」


妹「けど本当に心配で……お兄ちゃんには幸せになって欲しいんです。いっつも損ばっかりして、自分のことよりも他のみんなのことばかり考えて、たびたび都合よく使われて、それでも怒ったりなんかしないで……幸せになって欲しいんです」ぐすっ


エルフ「……」



エルフ「(どうでもいいけど、この娘おっぱい大きいな)」

・・・
【赤魔と盗賊の部屋】


エルフ「……そんな訳で昨日は全然眠れなかった」


赤魔「それでそんなに眠そうなのか」



エルフ「今日は二人で買い物に行くんだってさ。邪魔者扱いされた可愛そうなエルフちゃんはここに追いやられてしまったわけ」


赤魔「家族か。俺も久しぶりに……ひいおじーちゃんとひいおばーちゃんとお祖父ちゃんとお祖母ちゃんとお母さんとお父さんとイチ姉とイチ兄とジロ兄とサブ兄とシロ兄とポチとタマとタビに会いたいな」


エルフ「……大家族だね?」


赤魔「俺も入れて12人家族で、村でも一番だったなー」


エルフ「その末っ子か……よく冒険に出してもらえたよね」


赤魔「盗賊が一緒ならいいかってなった」


エルフ「そこはどういう経緯なんだい……そういえば盗賊は今いないの?」


赤魔「調べものだってさ。最近は図書館によく行ってるみたいだ。ついてこうとすると怒られるんだよな」


エルフ「君って活字とか読まなそうだし、落ち着きなさそうだもんね」


赤魔「そんなことないぞ! 冒険の本とか読んだりするし、色々と図鑑を見たりもするっての! あとは外でおじさんの紙芝居見たり!」


エルフ「その年で紙芝居って……」


赤魔「別にいいだろ! 面白いものはいくつになっても面白いんだよ!」


エルフ「はいはい……ちょっと君のベッド貸して。ガマンしてあげるから」


赤魔「何のガマンだよ!」



エルフ「……」もぞもぞ…


赤魔「なーなー、寝る前にRPGやろうぜ。せっかくエルフが持ってきたわけだし」ゆさゆさ…


エルフ「えー、眠いよー」


赤魔「ちょっとだけ! な? な? ほら、この前ダンジョンで拾ったRPGを改造できるやつ! 商人から買ったんだ」ワクワク


エルフ「なんかやたらソレ売るの渋ってたよねぇ……改造って言っても、そのRPG自体は結構遊び尽くしたし多少の改造くらいじゃね……はあ、仕方ないなぁ」


エルフは『RPG改造キット・R16ver.』を使った!


エルフはRPGを起動した!


赤魔「……どうなるのかな! クリア後のストーリー追加とかがいいな!」


エルフ「地味にプレイアブルキャラの追加とかじゃない?」


赤魔「それも良いなー!」


エルフ「……今のところあまり変わりなさそう?」


赤魔「うーん……お、魔物とエンカウントした……魔物が女の子になってる!? しかもなんで裸なんだ!?」


エルフ「えぇ……うわ、敵めっちゃ強い。え、待って待って強い強い」


赤魔「何もできず負けた……難易度上がり過ぎだろ。ゲームオーバー……じゃない!? えっ? はっ? えっ?」


エルフ「ああ、そういう……」

・・・

エルフはRPGを終了した…



赤魔「……」ぽかん


エルフ「……世界は広いね。さて、私は寝る」


赤魔「なんだったんだよぉ……」


エルフ「知らん知らん。おやすみ」もぞもぞ…


赤魔「……お前が寝るなら俺も寝る」もぞもぞ…


エルフ「入ってくんな!」


赤魔「いやだ!」


エルフ「盗賊の方で寝て!」


赤魔「これは俺のベッドだぞ!」


エルフ「今は私のもんだ! というか君のものは私のものだから!」


赤魔「なんだと!」もぞもぞ…


エルフ「やーめーろー! 寝させろー!」


【図書館】


商人「……」ぺらっ…ぺらっ…


商人「(この本にも情報エネルギー、情報空間といった概念は載っていませんね。司書さんにも聞いて物理学や数学の本も漁ってみてもハズレ……うーん……)」パタンッ


商人「(この棚、届きそうで微妙に届かない……背がもう少し大きかったらなぁ……戦士さんや銃士さんくらい大きかったら女に間違われることもきっと減るのに)」ぐぐっ


ぴとっ…


商人「!」びくっ


本<<すっ……


商人「あ、ありがとうございます」


ぐいっ……ぴたっ


商人「っ……!?」


商人「(も、もしかして女と間違われてる!?)」あたふた


商人「ちょっーーむぐっ」


商人「(ひぃ……!)」


「館内では静かに……」ぱっ


商人「えっ……あ、その声、盗賊さん……?」


盗賊「正解。そんなに怯えてどうした?」ぱっ


商人「いや、危ない人かと……」くるっ


盗賊「……確かに商人は女に見えるものね。それに加虐性を煽るような姿態を見せる」ずいっ


商人「い、いや、あの、ち、近いです……」


商人「(盗賊さん、僕よりかなり大きいからこう迫られるとちょっと怖い……けど)」どきどきっ


盗賊「……」


商人「あ、あの……」


盗賊「やっぱり男ね」すっ


商人「え、はい……」


盗賊「……ここじゃ迷惑だし少し談話室にでも行かないか?」


商人「あ、はい」


・・・

盗賊「はい。ミルクティで良かったか」


商人「ありがとうございます。お幾らでした?」


盗賊「別に払わなくていいわよ。安かった」


商人「でも……ありがとうございます」


盗賊「今日は店が休みなのね?」


商人「午後から仕事なんです。その前に色々と調べておこうと思いまして」


盗賊「大変だな。……それで、何について調べていた?」


商人「ミミックガールさんの残した謎の言葉です。それと不帰の虚、大賢者についてなどですね」


盗賊「何か分かったことは?」


商人「ミミックガールさんの言葉については何も分かりませんでした」


盗賊「そうか……」


商人「ただし『不帰の虚』と大賢者については新しく知ったことがありました。不帰の虚はダンジョン化する前には遺跡があって、大賢者さんは遺跡について調査をしていたようです。当時は国立研究所の研究員だったと記録にあります」


盗賊「……よくそんな情報を見つけて来るな。感心する」


商人「大したことはしてないです。それで、文化人類学と魔法学を修めている優秀な人のようでしたが、大賢者と呼ばれ始めたのはこの遺跡の調査を終えた後ですね」


盗賊「その遺跡に関しては?」


商人「それがほとんど言及がないんですよね。出土してから半世紀経ってないらしいですが……何度か調査はされたもののどういった遺跡なのか不明だったようです。今は遺跡自体が失われてしまったため詳細は分かりません」


盗賊「……怪しいな」


商人「怪しいですよね」


盗賊「記憶だとサモナーは出戻りだったと聞く。おそらく、その遺跡で何かを発見したのかもしれない」


商人「ええ……その遺跡がもしかしたらミミックガールさんのいう『情報エネルギー』や『情報空間』という言葉と関連するかもと推測して調べてみたものの、ハズレでした」


盗賊「……大した進捗だ。流石ね」


商人「そう言っていただけると幸いです。ダンジョン探索の際は僕は足手まといになってばかりですから、それ以外の部分でくらい仕事しないとエルフさんに怒られちゃいますから」


盗賊「……アナタは私たちのパーティの根幹に関わってると思うわ。冒険の手配、事前調査、アイテムの発見、理性的な判断ーー高く評価してる」


商人「……」てれっ


盗賊「エルフもとやかく言うけれど、やっぱり評価してると思うわ。……引き抜かれたり独立したりするなよ?」顎クイッ


商人「あわわ……な、なんですか?」


盗賊「……色仕掛け?」


商人「色々とおかしいですよっ!」



獣人「……」ガチャッ…


<<ちっ、ケモノくせぇ……


獣人「……!」



盗賊「……」

商人「……」


獣人「……」おろおろ…がちゃっ


獣人は談話室から出て行った…



盗賊「……この前のテロ、まだ犯人グループが捕まってなかったわね」


商人「ありましたね。獣人たちの関与を否定する公式声明は出されましたが世論は中々……」


盗賊「……多数派による差別や弾圧、ヘイトスピーチ。理性を用いてる獣じみた所業……私たちはどこまで行っても動物に過ぎないな?」


商人「……世の中は良くなっていく余地がありますし、そうしようとしている人もたくさんいますよ」


盗賊「……そうだといいわね」



<<さっきから何だお前たち? 女同士で気持ちわりい。消えろや


盗賊「お前が消えたらどうだ?」


商人「ちょっと、盗賊さん」


<<女が生意気いってんじゃねえぞ! これだから半端知識にかぶれた女は嫌いなんだよ! なにが啓蒙だ! 女なんて家の中で男の機嫌とってりゃ良いんだよ!


盗賊「息をしないで欲しいわ。不快な臭いがする」


<<てっめぇ!


盗賊「きゃぁっ!」スッ


メキャッ


<<ごふっ……


盗賊「あら、大変。悪漢が迫ってきたから思わず肘を突き出したら、“偶然にも事故で”急所に入ってしまったわ」しれっ


商人「(相変わらず達人だなぁ……本当に怯えて身を守ってるようにしか見えませんでしたよ)」


<<て、てめぇ……訴えてやる……


商人「……女性に殴りかかって乱暴しようとしたこと罪を白状するんですか? 殊勝なんですね」


<<て、てめぇら……!


ボソボソ…あのオッサン、官憲に渡すか……ボソボソ……いや、まず司書員に……さっきの獣人族への差別的発言も伝えて出禁にするように要求した方が……というかアイツ、前も騒いでたよなお前が迷惑だっての老害……ボソボソ……


<<っ……バカどもが……!



盗賊「面倒ごとにそうだし帰るか」


商人「はい。……もっと良くなると思うんですけどね」

・・・

盗賊「……ただいま」


盗賊「(……この挨拶は、いつまで経っても慣れない)」


しーん……


盗賊「(赤魔は出かけてるのかしら……ん?)」


赤魔「……」すやすや…

エルフ「……」くぅくぅ…



盗賊「…………」

盗賊「…………」

盗賊「…………」



エルフ「ふわぁ……あー、結構寝ちゃってたかな」


赤魔「……んあ? あれ、盗賊帰ってたんだ」


盗賊「ああ、だいぶ前にな」


盗賊「(それからずっと寝顔を見てた)」


エルフ「あー、お腹すいた」


赤魔「なんか食べに行こうぜ」


盗賊「ああ」


・・・
エルフ「スライム春雨は安定してるよね。もはやこの地域のソウルフードって感じ」


赤魔「~~♪」ちゅるる…


エルフ「はあ、今日も戦士の妹とベッドインかぁ」


赤魔「いっそ俺たちのところに泊まっちゃえよ。お泊まり会やろうぜ。お菓子買ってさ」


エルフ「やっちゃうかー」


盗賊「別にいいけれど戦士にちゃんと伝えて起きなさいよ」


エルフ「……あ、でも泊まるのも問題があるか。言い訳に失敗したなー。でもあの娘ならコロッと騙せそう……」


赤魔「あ、噂をすれば戦士だ」


盗賊「大きいからやっぱり目立つわね。隣の娘が戦士の妹か」


エルフ「そうそう。おっぱいが大きいんだよ。イカサマ師には敵わないけど」


赤魔「何言ってんだよ! ……でも確かにここから見ても分かるくらい大きい」


盗賊「そうね。商人を含めて私たちは四人とも小さいのに」


エルフ「私はこれから大きくなるから」


赤魔「大きいのも不便そうだけどな。動き辛そう」


盗賊「(……もしや、商人が男であることを二人とも忘れている?)」


赤魔「というか商人は男だろ!」


盗賊「……」ナデナデ…


赤魔「な、なんだよ?」



【大通り】


銃士「(暇やなぁ……まあ、のんびりすんのも気持ちええ)」



<<……これがターニングポイントだな。手はずは整っている


イカサマ師「ふふ……明日は楽しいショーになりそうね」


<<……ショーと一緒にして貰っては困るな



銃士「(……あんなフェロモンむんむんな女の人がこの街にもおるんやなぁ)」


銃士「(それにショーって……なんや金持ちそうなオジさんとボインな美女だといかがわしいもんしか想像できひんな)」


銃士「(はー、この悲しみをどうすりゃいいの)」


銃士「(……酒とプリン買うて帰ろ)」



to be continued...

○戦士メモ

・妹:来年で16になる。長兄は俺と妹よりも離れているため…正確には俺には3つ上の姉がいたのだが死産した……昔から仲が良かった。昔から内気で泣き虫な子で目が離せなかった。正直言って街で奉公させるのが心配でしょうがない。変な男が寄ってきたらどうしてくれるか。

・郵便:故郷では郵便物は週に一回だけ地方のより大きな街に集荷され、それからようやく配送される。おそらく妹はそれを見越して投函したと思うが、祝日の存在は忘れていたらしい。



○エルフメモ

・アシナガ豆と仙人豚のポークビーンズ:仙人豚は白ヒゲがいっぱい生えているのが特徴の豚で、脂身は少ないのに旨み成分が凝縮されていて、アシナガ豆の繊細な甘みとよくマッチする。トマトベースの酸味と絶妙なさじ加減のスパイス、特別なオーブンによる煮込みがそれを際立たせるんだよ。

・不労所得:もらって生きていきたい。

・謎の遺跡:不帰の虚が出現する前には謎の遺跡があったんだって。とても怪しいね。余談だけど、ダンジョンの出現で大量のアイテムが手に入ることで新たに大量のゴミ問題が発生したんだ。消費すれば捨てるものも出てくるのは必然だよね。さて、ここで問題! 私たちはどうやってゴミ問題を解決しているでしょう? 同じ方法で下水処理してるおかげで劇的に公衆衛生も良くなったんだけど…………きゃんえにわんひあみー?





(Chapter5は選択肢とコンマ制にする予定,Chapter5の結果がその後にも影響が出るはず)

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