ライブ会場μ`s控え室


絵里「たくさん練習して、ついに迎えた本番のライブ･･･」

絵里「楽しみに待ってくれているファンのためにも、そして一緒に厳しい努力を重ねた仲間のためにも、気合いをいれなきゃね」

絵里「･･･不安で先走ってみんなよりも早く会場に来てしまったけれど、もう衣装に着替えておこうかしら」ｺﾞｿｺﾞｿ

絵里「うん！　うまくできるか不安でいっぱいだけれど、せっかくのライブだもの。楽しまなきゃね！　･･･衣装はこれね」ﾊﾞｻｯ

絵里「さっそく着替えましょう」

着替え中

絵里「あれ･･･ここのリボンどう結ぶんだったっけ･･･こうか･･･」

絵里「･･･ふぅ。こんなものかしら･･･」

絵里(うん。サイズも私に合わせられててぴったりだし、大丈夫ね)

絵里(鏡に写してみても、おかしいところはないわね･･･)

絵里(･･･というか･･･)ｼﾞｲｯ

絵里(･･･衣装を着た私カワイイ･･･)

絵里(べ、別にナルシストってわけではないけど///)

絵里(衣装が素晴らしいのよ。着ることで体のラインが強調されるし、デザインのはなやかさや色合いが私の体を素敵に見せてる･･･)

絵里(さすがことりね。実際着てみると衣装のすごさが良くわかるわ！)

絵里(･･･)

絵里(早くこのカワイイ私をみんなに見せたい･･･なんておこがましいかしらね)

絵里(･･･時間まだあるわね･･･)ﾁﾗｯ

絵里(やっぱり着替えるの早かったかしら･･･)

絵里(･･･衣装に着替えると背筋が伸びるというか気持ちが引き締まるというか･･･)

絵里(･･･窮屈で、か、堅苦しい･･･)

絵里(せっかくの衣装を汚せないから変なことはできないし･･･)

絵里(･･･というか、衣装を着てみて思ったんだけど･･･)

絵里(この衣装汗臭くない･･･？)

絵里「･･･」ｸﾝｸﾝ

絵里(うん･･･ほのかにだけど･･･やっぱり汗臭い･･･)

絵里(どうしましょう･･･)

絵里(ふつう衣装なんて歌って踊るんだから、汗臭くなるもので、しょうがないことなんだけど･･･)

絵里(ライブが始まる前から臭いなんて、そんなの恥ずかしいわ･･･)

絵里(前の練習で着たときに汗かいちゃったのかしら･･･？　クリーニングしてなかったっけ･･･？)

絵里(どっちにしても、汗臭い･･･)

絵里(私ってどちらかといえば汗かきだし、遺伝子的にも臭いがするほうだから、しかたないのだけど･･･)

絵里(･･･みんなから汗臭い人なんて思われたくない･･･)


『絵里ちゃんなんか汗臭くない？』

『わかる。いつもちょっと臭ってるよね』

『これだから汗っかきのロシア人は･･･』


絵里(嫌ぁ！！　そんなこと言われたくない！！)

絵里(･･･)ﾄﾞｷﾄﾞｷ

絵里(みんなが来る前に消臭スプレーでもかけてやりすごすしか･･･)

絵里(なんでないのよー！！)

絵里(この部屋のどこにも消臭スプレーがないじゃない･･･！)

絵里(ど、どうするのよこれ･･･むざむざ私が汗臭いって噂を立てられるわけにはいかないのに･･･)


ｶﾞﾁｬｯ

絵里「！？」

穂乃果「おはよう絵里ちゃん！　なんでみんなと一緒に来なかったの？」

絵里「ほ、穂乃果！」

穂乃果「どうしたの？」

絵里(･･･まずいっ！　まだ私汗臭いままなのに･･･！)

穂乃果「わあ、やっぱり絵里ちゃん衣装似合うね！　スタイルがいい分ひときわ素敵だよ！　いいなぁ～」

絵里「え、えぇ･･･ありがとう･･･」

穂乃果「もっと近くでよく見せて！」

絵里「それはダメ！！」

穂乃果「･･･え？　なんで？」

絵里「そこから動かないで！」

穂乃果「な、なに･･･絵里ちゃんどうしちゃたの･･･？」

絵里「･･･」

穂乃果(絵里ちゃんものすごい顔してるよ･･･これから歌って踊るアイドルの顔じゃないよ･･･)

絵里「･･･穂乃果、ひとりだけ･･･？」

穂乃果「う、うん･･･遅刻が不安だから早めに来たの･･･」

絵里「･･･」

穂乃果「･･･え、絵里ちゃん？」

絵里(とにかく控え室を出るしかないわね･･･)

絵里(とにかく控え室を出るしかないわね･･･)

穂乃果「絵里ちゃん･･･」

絵里「私、ちょっと外へ出てくるわ！　ライブまでには戻るから心配しないで！」ﾀﾞｯ

穂乃果「ああっ！　絵里ちゃんどこ行くの！？」

ｼｰﾝ

穂乃果「･･･行っちゃった」

穂乃果「絵里ちゃんいったいどうしちゃったのかな･･･衣装を着た絵里ちゃんとってもかわいかったから、もっとよく見たかったのに･･･」

絵里「･･･ふぅ。まずは穂乃果に臭いがばれる心配はなくなったわね」

絵里「この建物のどこかで消臭スプレーを探しましょう」


スタッフ「今日はよろしくおねがいします」

絵里「！？」

スタッフ「･･･？　衣装素敵ですね」

絵里「あ、ありがとうございます･･･」ｼﾞﾘｼﾞﾘ

絵里(この人･･･いつのまに私の近くに･･･)

絵里(そうだわ！　スタッフさんなら消臭スプレーのありかを知ってるかも！)

絵里(･･･でも直接聞くのは私が臭いを気にしてるって言ってるようなものだし･･･)

絵里「メンバーが──」

スタッフ「？」

絵里「メンバーの一人が臭いを気にしてて･･･消臭スプレーとかないですか？」

絵里(μ`sのみんなごめんね。でも、今はこのやり方しかないの･･･！)

スタッフ「ああ、年頃の女の子ですもんね。臭いは気になりますよね」

絵里「そうなんです。恥ずかしいって悩んでて･･･」

スタッフ「でもごめんなさい。ちょっとどこにあるかわからなくて･･･」

絵里「そ、そうですか･･･」ｼｭﾝ

スタッフ「それにしても素敵な衣装。ちょっとよく見てもいいですか？　私カワイイ服好きで」

絵里「ダメ！！」

スタッフ「あ･･･すみません･･･」

絵里「私は急ぐのでまた！」ﾀﾞｯ

スタッフ「変な子･･･」

スタッフ「･･･それにしてもさすが人気のスクールアイドルだけあるわね。カワイイ衣装がとっても似合っていて素敵な子だったわ。それだけによく見れなかったのが残念だけど」

絵里(･･･よく考えたらこの広い会場を一人で探すのは不可能に近いわ･･･)ｽﾀｽﾀ

絵里(外に出て、お店で買ってこようかしら)

絵里(ってこの衣装で？　それはまずいし、恥ずかしい)

絵里「･･･どうしよう･･･」

絵里(あれ、この道･･･)

絵里(ここって一般の人も入れるところじゃない！　いつのまにかスタッフ専用の道から出てたんだわ！)

絵里(･･･まだ時間も早いし大丈夫よね･･･？)


ファン「絵里ちゃん！？」

絵里(大丈夫じゃなかった！！)

絵里(こんなに早く会場に来てなにをするつもりなのよ！)

ファン「サイン！！　サインください！！　ファンなんです！！」

絵里「ご、ごめんなさいっ！　今急いでるから！」

ファン2「あ！　絵里ちゃんがいる！？」

絵里「･･･」

ファン3「マジでいるじゃん！」

絵里「･･･」ﾀﾞﾗﾀﾞﾗ

ファン45678「エリーチカだ！」「どこ？」「カワイイ！」「サイン！」

絵里(ヤバい･･･)

ファンの群れ「絵里ちゃーん！！」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ

絵里「いやぁぁぁ！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！

絵里「なんでこうなっちゃったのよー！！」

絵里(私はただ消臭スプレーを探していただけなのにー！！)

絵里「･･･ごめんなさい･･･」

海未「まったく。なにを考えているのですか？　幸い注意を受けるだけで済みましたが」

にこ「騒ぎのせいであやうくライブが中止になるところよ」

絵里「･･･反省してます」

穂乃果「絵里ちゃんどこに行ったんだろうって思ってたけど、大変なことになってたんだね」

ことり「絵里ちゃんって熱狂的なファンが多いからね～」

真姫「どうして一般の通路なんかにいたの？」

絵里「ま、間違って入っちゃって･･･」

希「えりちってたまにとんでもないおっちょこちょいしでかすもんなぁ」

凛「･･･絵里ちゃん汗臭いよ･･･」

絵里「！」ﾋﾞｸｯ

花陽「ちょ、ちょっと凛ちゃん･･･！」

絵里(･･･もうこの際汗臭いと思われてもいいわ。それよりも大きなことをしでかしちゃったんだから･･･)

海未「今の絵里が汗臭いのは当たり前です。大勢のファンから走って逃げていたのですから」

絵里「！」

凛「絵里ちゃん頑張ったにゃ」

花陽「うん。ライブ前にがんばったね」

絵里(私が元から汗臭ったってバレてない･･･？)

絵里(ハ、ハラショー･･･これで私の風評は守られる･･･)

穂乃果「うん！　ライブができるんだから精一杯がんばろう！」

真姫「ま、いつまでも落ち込んでても仕方ないしね」

絵里「ありがとう」

穂乃果「せっかく練習もがんばって、そして素敵な衣装でかわいくなったんだからさ！」

絵里「ええ！」


絵里(結果的にライブができるにせよ、まさかこんな大変なことになっちゃうなんて･･･)

絵里(･･･これからは消臭スプレーをしっかり準備しておかなきゃね)