【リレーSS】モバP「海からアイドルが採れるようになってからそろそろ5年ですよ」 (97)

リレー形式SSです。
好きに展開させてください。
酉はあってもいいけどなくてもいいです。
>>○○からの続きとレスにつければパラレルになっても問題にならないと思います。
では始めましょう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497764308

P「懐かしいですねえ」

ちひろ「ええ、本当に」

P「そろそろ、あいつらの命日ですかね」

ちひろ「そうですね……あと、あの子たちの命日が明後日に差し掛かってます」

P「初代と7代目と19代目の命日が一緒、と言うのは皮肉なのかなんなのか……」

P「こう言う日が続いてしまうと、どうも人間の死とか、尊厳とかわからなくなってきますよ」

ちひろ「……」

P「どうして我々が今生きているのか……」

P「なぜ生まれてきたのか……」

P「決して慣れることのない死を、何度も何度も間近に見てしまうと、どうしても考えてしまう」

ちひろ「昔の戦時中も、そうだったんでしょうか」

P「わかりませんね」

P「でも、一つだけ言えます」

P「こんな時代、狂ってる」

ちひろ「……」

ちひろ「そんな時代で、こんなことやってる私たちも、すでに狂ってるんですよ」

P「……違いありませんね」


続く

P(ヘイケガニというカニがいる)

P(壇ノ浦の合戦で命を落とした平家の者の亡霊が乗り移ったとされるカニで、
 甲羅には亡霊達の無念や怒りで歪んだ顔が浮かんでいると言われている)

P(あいつらもこの世に遺した想いが強いのだろう)

P(あの事故から5年が過ぎても、彼女達ははまだこの世に留まっている)


続く

>>2からの続き
数レスに跨る

海産アイドルとは何かを説明せねばなるまい。順を追って説明しよう。
日本国の職業には「アイドル」と呼ばれるものがある。あるときは人間の憧れになり,
あるときにはモテないオタクのオカズなど性欲の対象になったり、嫉妬や尊敬の的となる。そういう職業がアイドルだった。
一般人がアイドルになる方法は幾種種かがあるが、その中でもとりわけ多かったのがオーディションとスカウトの2つだったろう。
どちらの方法も、数多ある有象無象の中で特別に光るものを持ってなければ通り抜けることのできない関門であった。

>>4からの続き

なる側、否、この場合はなろうとする側の人間か。そんな人間たちにとって、これら関門はまさに狭き門であった。
スカウトなんて奇跡そのものだ。オーディションを勝ち抜くのも易しくはない。
そういう数多もの篩にかけられ、アイドルというものは選ばれたのだ。

苦しく、そして険しいのは選ばれる側ではない。
選ぶ側もまた、押し寄せる美少女たちから光るものを見極め、多きを捨て、寡なきを拾い上げていくのだ。

1日に何人も、というものではない。
その時の時代の流れや、需要がある。
求められる美の像、憧憬の像がその時代のものに合致しなければ、
いくら美貌に秀でていても、歌唱力に優れても、踊りの能力が抜きん出ていても、採用されることはないのだ。

>>5からの続き

そんな日本のアイドル界隈に光明と同時に暗雲が垂れ込めたのは2012年の夏のことであった。
震災から1年、まだまだ復興と再生が始まったばかりの東日本は昨年度落ち込んだ娯楽消費の巻き直しに四苦八苦していた。

そんな時に現れたのが「海産アイドル」だった。
海産のアイドル。読んで字の如く、日本近海から採れるアイドルを総称してこう呼ぶ。
英語圏で採れるものは「Seirenes」と呼ばれ、日本以外の漢字圏では「美人魚」と呼ばれる。

>>6からの続き

なんのことかわからないだろうか。アイドルグループの解散ならともかく、
海産のアイドルなんて耳馴染みがないと。
私がこの5年間を家に引きこもって過ごしていたならそう言うだろう。尤もだ。

海産のアイドルは当時の日本国そのものにとっては正に恵みであったのだ。
かつて日本列島の多く人間を悲しみの淵に追いやった海が、
まるで自らその仕打ちを償うかのように、とれたてピチピチの美少女美女たちを海岸に次々と産み落としていったのだ。

年齢はそれこそ生まれたての胎児のようなものから、妙齢の熟女まで幅広かった。
そして、そのどれもが、当時を生きた、どんな人類の目をも惹くであろう美幼女美少女美女美熟女ばかりであったのだ。

>>7からの続き

海産のアイドルがまだ海産アイドルと呼称される前、
被災地やそれ以外の海岸に大量に打ち上げられた見目麗しい女性の裸体群は、それはそれはセンセーショナルに報道された。
最初の海産アイドルが発見されて数週間は裸体が一面を独占したし、
2012年の流行語は「打ち上げられた裸体」「漂着裸体」「海の贈り物」「マッパ海岸」などだったし、
2012年の『今年の漢字』は『裸』だったのも我々の記憶に新しい。

海産アイドル法が制定される前に、打ち上げられた裸体に非倫理的なイタズラをし、
その様子を動画サイトにアップロードしたとある動画に対して、
某男性アイドルが「ヤっちゃうよあれはもうしょうがないよ」と発言し、干されたこともあった。

「回収が遅れた津波の犠牲者」だとも「誰かの悪質ないたずら」だとも、
当時はあらゆる憶測が飛んだものだった。しかして、そのどれでもなかった。
彼女らは文字通り海からやってきた、生きた人間であった。

であったからこそ、海産アイドルと人類の最初の邂逅は戸惑いとともに訪れた。
打ち上げられたばかりでなく、2日以上は放置された裸体もあり、そのほとんどはすでに命がなかった。
生命反応があると見られる海産物は救助隊の手によって全て保護、回収された。

その様子は1年前の津波遭難者を救助する様子と重なるようだった。
怪訝そうな、そして悲痛な面持ちの救助隊員の顔を除いては。

>>8からの続き

「助けて」「寒い」「お母さん」「怖い」「痛い」「やめて」「帰して」

これらは海産アイドルの、我々人類に向けて発せられた最初の言葉である、とされている。
海産アイドルは、秀でた見た目を除けば、所作や話す言葉も全く人間のそれそのものであった。
全裸で外に打ち上げられたことに気づくと羞らい、救助隊に礼を言い、空腹を訴え、食べ物を求めた。
それだけではなく、瀕死の海産アイドルの救命に用いた薬品類や、
その際に採血した血液からわかった血液型や免疫系統その他諸々が普通の平均的な人間とそう違ったものが見られなかったため、彼女らは「人類である」とみなされた。

回収され保護された彼女らは、次は日本政府に行方不明者の何物かと一致するかどうかの確認を求められた。
遺族によって確認されたり、故人の関係者らに面会をさせることによってそれを試みたが、
多くの場合は「これはあの人と違う」という一言で潰えた。

遺族の中にはショックで故人と誤認したり、下心から虚偽の申し出を行なった者もいたが、
しばらくして『未だ嘗て過去に戸籍を有していない者たちである』と自治体や政府の宣言が出ると、その誰もが引き下がっていった。

>>9からの続き
こうして海産アイドルは「過去と未来に接点を持たない人類」となった。
そうなると困るのは彼女らのこれからの居場所と、生きていくために必要な最低限のこと。
彼女らには家がなく、そして戸籍がなく、当然職業もなく所得もない。
最初は税金で賄おうとしたそれら保護も、ただでさえ逼迫していた財政を痛めつけ、
二進も三進も行かない状況をさらに悲惨にさせていた。

困った政府は彼女らの保護を民間に丸投げした。そして真っ先に手を挙げたのが、
当時アイドル部門において最大手となったばかりの346プロダクションであった。
346が手を挙げると、それに続かんばかりの勢いで各社プロダクションが手を挙げ、
結局彼女らはそれらアイドル関連企業に余すところなく収められていった。

彼らの思惑は彼女らの「美貌」にあると言えば説明も不要だろう。
そしてこれが娯楽巻き直しのきっかけになると踏んだアイドル界隈は、
この千載一遇のチャンスを逃すまいと、当時のリソースをこれら海産アイドルにつぎ込んだ。
突如降って湧いた厄介者が早々に捌けることがわかって安堵する当時の首相のなんとも言えない表情は印象的だった。
当然、当時の政権はこれが理由で不信任決議に至り、解散となり、政権交代のきっかけとなったのは言うまでもない。

政権が交代して間も無くの政府はこの海産アイドルたちを「海来人種保護に関係する法案」を制定、
発効させ、これによって各社アイドル企業が彼女らを保護ならびに自立させることを義務付けた。

同時にアイドル企業は国の半分"お抱え"のようなものになり、政府要人の天下り先が増えたではないかと叩かれる原因にもなった。
尤も、叩いているその野党こそ前政権時代にアイドル企業を国営にしようと企てていた為、とんだ猿芝居ではないかと笑い草になったものだった。

そして実は2017年現在、この346の今の専務の下についてるお偉いがたは天下り連中だということだ。閑話休題。


こうして「海産アイドル」がめでたく生まれたと言うわけだ。




続く

はよ書けよ
いつまでスレ止める気だボケ


長き時が過ぎ、モバPは少し老いた。
だが、モバPは立ち上がった。
必ず、かの海産アイドルたちの不幸を、不遇の時代を除かなければならぬと決意した。
モバPには政治がわからぬ。文字が読めぬ。
モバPは346プロダクションのプロデューサーであり、ただの課金兵である。金を稼ぎ、金を溶かして暮らして来た。
けれどもちひろに対しては、人一倍に辛辣であった。彼女を天使と呼ぶ傍ら、鬼、悪魔と罵るほどに。

P「あいつらはもっと幸せになってよかったはずだ…」

既に失われた、彼女らであって、彼女らでない、黎明期の海産アイドルたちを想う。

P「まずは池袋Ⅲと…一応一ノ瀬Ⅶに相談だな」

きょう未明モバPは家を出発し、野を越え山越え、十里離れた此このトーキョーの街にやって来た。
モバPには金も、学も無い。髪も無い。アラサーの、守銭奴ちひろと二人暮しだ。
このちひろは、346プロダクションのとある毛無げなプロデューサーを、近々、花婿として迎える事になっていた。
結婚式も間近なのである。
モバPは、だがしかし、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに行かず、はるばるこの街にやって来たのだ。
モバPは決意した。


◇ ◇ ◇


晶葉Ⅲ「それでいったい何の用だ?私も暇じゃないのでな。手短に頼む」

P「あぁ…不可能を…可能にしてほしいと言ったらどうする?」

俺は池袋晶葉の研究所に来た。彼女に、お願いをするために。


晶葉Ⅲ「気が触れたとしか思わんな。不可能であると分かり切っている事象に望みを抱くなど」

一ノ瀬Ⅶ「どしたの?なんか辛いことでもあった?あたしがぜ~んぶ何もかも忘れさせてあげよっか♪にゃはは~」

P「遠慮しておくよ。お前のソレは洒落にならない」

一ノ瀬Ⅶ「じゃあいったいどうしろってのさー。あたしたちのこと便利な道具だと思ってんのー?」




晶葉Ⅲ「初代の池袋晶葉と一ノ瀬志希は確かに君が担当していた」

晶葉Ⅲ「だが既に私は3代目。志希に至っては7代目となり、担当しているプロデューサーは別にいる」

晶葉Ⅲ「経歴を継承しているとはいえ、君に受けた恩義を覚えているとは言い難い」

晶葉Ⅲ「だが、初代が君に助けられたのも事実」

晶葉Ⅲ「だからこそ、私達がこうしてわざわざ時間を作っているということを忘れないでくれたまえ」



彼女の言葉が俺に刺さる。そう、もう俺の知っている彼女たちではないのだ。

P「そうだな。すまない。君たちに俺は…あの頃の晶葉と志希を重ねてしまっている」

P「失礼なことをした。だが、それでも、どうしても聞いてほしい願い事がある」



P「俺を…俺を過去に戻してくれ」

P「冗談を言っているつもりはない。気が触れたわけでもない」

P「真剣に、俺は君たちにお願いしたい」


そう言って俺は静かに膝を折った。



志希Ⅶ「んふふ、土下座なんてする人初めて見ちゃった」

晶葉Ⅲ「動機はなんだ?」

P「世界を変えるため」

ーーーーーーーー『私…私、消えたくないよプロデューサーさん……!!』

脳裏に初めて担当し、そして”次”へと代替わりをしたアイドルの最期が浮かぶ。

P「そして、海産アイドルたちを守るため」

絶対に、変えて見せる。

P「だから…!だから頼む!俺は、戻らなくちゃならないんだ…!」

彼女の、彼女たちの最期が、あんな顔で終わっていいわけがない!


志希Ⅶ「すっごぉい。こんな笑っちゃうようなこと言ってるのに嘘ついてる匂いがしないんだよね~♪」

晶葉Ⅲ「本気…というわけか。だが計画はあるのか?一人の人間に出来ることなんて限られているぞ」

P「まずは”原初”の海産アイドルたちの保護だ」

海産アイドルには「原初」といわれる者たちがいる。
初期に浜に打ち上げられていた者であり、真に過去と未来に接点を持たない183名の人類。
その美貌は筆舌に尽くしがたく、歴代のシンデレラガールは全て彼女たちの美貌を持つ者である。
それ故に乱暴を働かれたこともあった。

P「そして、誤った情報の流布を止める。「生まれ変われる」なんていうデマをな」

モバPは知っている。生まれ変わった自殺者など、存在しないということを。
誤った情報に踊らされた馬鹿どものせいで、消えた命があったことを。




自殺者が身投げをした場所から生まれた海産アイドルたちは皆一様に記憶がない。
だが、例外は存在した。原初と同じ美貌を持つ海産アイドルたちだ。
彼女らは記憶がおぼろげに存在する。それは先代、先々代の原初の経歴と酷似していた。
一部の学者たちはこの差分に疑問を持ち研究し、とある意見を出した。


記憶を持たない者たちは、複製に失敗した劣化品なのではないか?
自殺者が生まれ変わるのではない。自殺者を糧に、「原初」が生まれ変わろうとしているのでは?、と。


仮説の域を出ないが、これは大きく支持された。
何故ならば、原初は泡となり消えるからだ。酷似した海産アイドルが見つかる直前に。
保護された後は、欠けた記憶を埋め合わせるよう、情報を刷り込まれていく。
そして完成するのは以前と全く変わらない、新たな海産アイドル。
画面越しに彼女らを見る者たちからすれば、何も変わらない今までと同じ可愛いアイドル。
同じ顔を持ち、同じ記憶を持つ。ならばこれは同じ人間である。
政府はそう判断した。

だが、モバPは彼女らをプロデュースした故に知っている。
彼女らは決して同じではない。

P(同じだというなら……何故、彼女たちは消えることに恐怖する!涙を流す!)

モバPは忘れない。初めて消える瞬間に遭遇した時のことを。
流れた涙を。交わした言葉を。最後の笑顔を。

P(俺は助けて見せる)

自殺者を減らせば、およそ一年に一回ある代替わりの頻度も長くなるはず。
モバPは額が地面に着くまで頭を下げた。



晶葉Ⅲ「世界を変える、海産アイドルを守る……か。正直私は今の待遇に不満など持っていないんだがな」

それはそうだろう、とモバPは思う。黎明期と違い、今は人権が認められている。

志希Ⅶ「あたしは~協力してもいいかな~」

P「ホントかっ!」

思わず大声を出してしまった。

志希Ⅶ「でもこれほとんど晶葉ちゃんの領分だからね。結局は晶葉ちゃん次第」

晶葉Ⅲ「ここで私に振るか…」


志希Ⅶ「まぁまぁ♪初代が残した設計図、今でもいじってるんでしょー?意地張ったって意味ないよん」

晶葉Ⅲ「んなっ!何故知っている!」

志希Ⅶ「んふふー、で、どうするの?」

晶葉Ⅲ「くっ…一つ聞きたい。君は池袋晶葉をどう思っていた?」

まーたADHDが暴走してるの?


突然のクエスチョンに俺は戸惑いながらも答える。

P「そうだな…大切な相棒であり、ちょっと変わった可愛い女の子であり…俺の大切なアイドル、かな」

晶葉Ⅲ「………………そうか…初代は…きっと……」

P「晶葉?」

少しうつむいてぶつぶつ何かを言っているようだが俺の耳には届かない。


晶葉Ⅲ「ふっふっふ…幸運だな、君は」

P「ん?」

晶葉Ⅲ「偶然にも過去へとタイムリープする機械は既に開発中だ」

P「何っ!」

晶葉Ⅲ「これからテストプレイをするんだが、もちろん手伝ってくれるだろう? 優秀な助手が必要だからな! 」

P「もちろんだ!」

志希Ⅶ「よーしあたしも気合い入れてハスハスしちゃう~!」

P「いやそれ関係ないだろ」

俺はよく分からないが協力を取り付けることに成功した。

他に書く人いないんだからいいんでないの
ただこれだとリレーじゃなくて乗っ取りになるから板のルールに引っかかるけどな

>>32
誰も書かないなら、まぁ書くしかないじゃん?


◇ ◇ ◇


P「これで完成…なのか?」

晶葉Ⅲ「あぁ、一応理論上は意識が過去に戻るはずだ」

志希Ⅶ「晶葉ちゃんすごーい」パチパチ

晶葉Ⅲ「くれぐれも悪用するんじゃないぞ」

P「よし、それじゃあ…行ってくる」カチッ

晶葉Ⅲ「気を付けるんだぞ。タイムリープに成功したという例は未だ一度もない」ギュォォォォォォォ

志希Ⅶ「戻れたとして、何か異常が起きちゃうかも♪」ギュィンギュィンギュィン

P「それでもいいさ」ガタガタガタガタ

P「このままここで後悔し続けるよりは」シュッ

>>35
待って待って一応あと数レスで終わる予定なの


ーーーーーーーーーーーー


『くっ、頭が痛い』『俺は今どうなっている』『不思議な感じだ』『体の感覚が…』『あー礼を言うの忘れた』
『失敗したらどうなるんだろう』『おえっ吐きそ』『あーきもちわりー』『くそっまだかよ』『ちくわ大明神』
『もし戻れたらまずは…』『やべっちひろさん放置したまんまじゃん』『まぁいいか』『あーお金ほしー』『おえっ』
『どこまで戻るんだろう』『まずはあいつらを…』『出来るだろうか俺に』『ええぃ弱気になってどうする』
『気付かなかったけど真っ暗だ』『あれ?俺死んだ?』『いやいやまさか』『あ!有償ジュエル使い切ってねぇ!』


ーーーーーーーーーーーー





P「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





◆ ◆ ◆


P「うぅっ、ここは……?」

気が付くと俺は見覚えのある部屋で寝ていた。

P「ここは…まさか……」

ベッドから飛び降り、机の引き出しを開ける。クローゼットを開ける。キッチンで踊る。
部屋中くまなく探索し、確信を得た。

P「俺の部屋だ……!」

そう。紛れもなく、過去に、確かに暮らしていた住処であった。

P「今日の日付は……」

まだ、世間が騒ぎだす前だ。

P「それなら俺のすることは……」

大丈夫、保護された場所なら俺は覚えている。

P「うっし!やるぞ!俺!」

さぁ、俺の戦いはここからだ ーーーーーーーー




◆ ◆ ◆





ザザァー ザザァー

「うぅ…」

「もし、大丈夫ですかお嬢さん」

「うっ……あれ…ここ…どこ…?あなた…だれゲホッゴホッ」

「うぅ…寒い…お母さん…助けて……」

「ふぅ」ファサ

「お嬢さん、アイドルに、興味はありませんか?」



以上。まぁこの後は183人のアイドルを捕獲しに行くなりモバPの過去編なり他のサイドストーリーなりどうぞ
あ、あと自分はジサツさんじゃないよ。ジサツさんなら酉つけるんじゃないかな




P(過去を、アイドル達を救うと決意して、あれから5年―)


P(結論から言えば、俺は成功をつかめたとは言えない・・・)



・・・




P(海産アイドルの発見が世間に騒がれる前に、彼女達の回収には成功した)


P(蘇る183人のアイドルにはそれぞれ元になる被災者がいる)


P(その中には大財閥の令嬢や、なかなか歴史のある名家の生まれも複数いた)




P(我ながら荒唐無稽な説得だったように思う)


P(それでも、生き写しとも言える彼女達のため、境遇を同じくする子たちのため、惜しみない支援をしていただいた)


P(発見が遅れることなく確実に守りきれると、そう断言してもいい)




P(とはいえ、それでも金はいる。自立させる必要もある。いつまでも甘えてなどもいけない)


P(だが結局のところ、俺に出来ることはプロデュースだけ)


P(生まれを秘密にし、彼女達は歴史通りアイドルとなった)


P(当然、アイドルに生まれ変われるなどという噂は立たず、アイドルの卵達が功を焦って自らの命を絶つなどということが社会現象になることはなかった)




P(Nursery Rhymes Princess of Mermaid Project)


P(絶大なバックアップの元、プロダクションの枠すら超えた多くの海産アイドル―否)


P(マーメイド達のアイドル活動を支援する、事情を知るプロデューサー達からなるプロジェクト、その始動)


P(全体を纏めながら、俺もアイドルをプロデュースした)


P(すべて、ここまでは順調だった)




浅利七海「本当に、おとぎ話の人魚姫みたいれすね~」


P「怖く、ないのか・・・? 自分が、消えるかもしれないということが・・・」




P「・・・もう、起こらないと思っていた」


P「・・・楽観的だったんだ。命の供給がなくなれば、蘇りは繰り返されないと」


P「いつまでも・・・! 生きていてくれるだろうと・・・!」


P「でも、関係なかったんだ! たった1年で! 君達は消える! なにも起こらなくても!」


P「俺は・・・! それを止めるために・・・! それを止めたくて・・・!」


七海「プロデューサー」ギュッ…


P「七海・・・!」


七海「よしよし、大丈夫れすよー」ナデナデ




P(消えたくない、そう自分のプロデューサーと抱き合う子もいた)


P(マーメイド達は自分の死期を悟る)


P(浅利七海はとても冷静だった)




七海「きっと、全部奇跡だったんだと思うんれす」ナデナデ


七海「人が海から生まれるなんてあり得ないれすから♪」ケラケラ


七海「・・・七海ね、最初、ほとんどのこと覚えていないかったんれすけど、すごくアイドルになりたかったなぁってことは覚えてるんれす」


七海「でも、七海がどんな女の子だったか、七海を知ってる人のお話を聞いてたらそんなことはなくって」


七海「どこにでもいるただのおさかな好きだって」エヘッ


P「・・・どこにでもなんていないよ、こんな磯臭い子」フフッ…


七海「ええ、そんな~」エヘヘ




七海「・・・それでね、こう思うんれす」


七海「アイドルになりたかったけどなれなかった七海が、この七海の姿で生まれ変わったのが、今の七海なんじゃないかなぁって」


P「生まれ、変わり・・・」


七海「はいれす」


P(結局、そうなのか・・・)


P(そんなことはないのだと、俺が思い込みたかっただけなのか・・・)




P(尾びれを捨て、足を得て人になり、その奇跡の対価に声を渡した人魚姫)


P(かつての自分を捨て、魅力的な存在を得てアイドルとなり、その奇跡には1年の期限)



P(恋が叶わず最後には泡と消えた人魚姫)


P(だから引退すれば、アイドルでなくなってもまた、泡と消えるアイドル・・・)




P(海産アイドル―)


P(それは、かつて夢破れ、アイドルとなれなかった彼女達に起こった泡沫の奇跡)




P「・・・もし本当にそうだとしたら、やっぱりそんなことは狂っているよ」


P「こういうアイドルでなきゃダメなんだ、なんてことはないんだ」


P「みんな違うんだ。そこに魅力があるんだ」


P「それを、認めないみたいじゃないか・・・」ギュッ…


七海「そうれすね~・・・でも、やっぱりだめだったんれす」ナデナデ


P「七海はクールだな・・・」




七海「さて、七海の番はそろそろ終わりみたいれす」スゥ・・・


P「! 七海! 体が!」


七海「アイドル、すごく楽しかったれす。だから、次の子にもさせてあげないと―」スゥ・・・


P「いやだ! 行かないでくれ!」


七海「次の七海もきっとアイドルになりたいはずれすから、よろしくお願いします、れす・・・」


P「何かあるはずなんだ! 人魚姫が、その手で王子を殺めていれば助かったように、何か活路が!」


七海「う~ん・・・それはちょっと~」









七海「まあ、でも―」



七海「もうちょっと七海も、プロデューサーといたかったれすね~」グスッ


スゥゥ・・・・・・


P「七海・・・!」







P「七海・・・」




P(二人目の七海はすぐに見つかった)




七海「ん~? あれ、プロデューサー?」グシグシ


P「! お、俺が、分かるのか・・・? 七海・・・!」


七海「ここどこれすか? ・・・あれ? 七海って七海のことれす? うん?」




P(二人目の七海は、わずかな記憶の中で俺のことを覚えていた)



P(見た目はそのまま。だが、同じ人間でないのならば、なぜ一部でも記憶が引き継がれるのか)



P(きっと、最初の七海がこの子の新たな門出に送ったのだろう)



P(アイドルにしてもらえ、と)



P(俺なら信用できるから、と―)





P(俺に再びのタイムリープは、七海たちの生き様をなかったことには、出来なかった)




・・・・


P(5年経ち、俺はまた七海と出逢う。俺を覚えている、彼女と)


P(たとえ泡沫の夢だったとしても、間違っていても、俺はこの子たちの願いを叶えてあげたい)


P(他のプロデューサー達は、どうなのだろう。俺は―)




七海「・・・あっ、プロデューサー!」テテテ


七海「はぁ、ようやく知ってる人に会えたれす~」


七海「あの~・・・驚かないで聞いてほしいんれすけど、七海どうやら記憶喪失になってしまったみたいで・・・」


七海「プロデューサーって、なんのプロデューサーなんれしたっけ?」




P「・・・俺は、アイドルのプロデュースをしている」


P「浅利七海の、いや、キミのプロデューサーだよ」





P(―これからも、彼女たちをアイドルにする)




続かなければおわり



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