ライナー「地下室」(11)

※薄暗い転生ネタ。見切り発車。

※記憶ありエレンと記憶なし巨人組の話

※11巻までぐらいの頃に書いてたやつ。なのでベルトルの最後とかちがう。

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ピチャン……ピチャン……


ライナー 「うっ……」パチッ

遠くから聞こえる水音に、目を覚ます。
まるで墜落したみたいに意識が落ちていた。


ライナー (もう朝……いや、夜か?太陽が見えないせいで分からないな)ググ…

ライナー (くそ、体に力が入らない。当たり前だ、狭苦しい地下室で、しかもベッドの上から
      ほとんど動けやしないんだから)

ライナー (せめて、この鎖さえどうにかなりゃ……)ジャラッ

ライナー (『あいつ』が俺をこの地下室に閉じこめてから、もう何日目だ……?)


この地下室で目覚めたばかりの頃は、とにかく色々なことを考えていた。
愛妹.アニのバースデーが近いこと。通っているハイスクールのこと。幼なじみのベルトルトのこと。


その中でも一番考えていたのは、俺をベッドに縛りつける手錠をどうにかできないかということだった。
引っぱったり、歯を立ててみたりしたが、無駄だった。
手錠からは長い鎖が伸びていて、根元は壁に溶接されている。

ライナー (まるで地下牢の囚人だな。……ただ、俺のなにが悪いっていうんだ)

ライナー (通っている学校か?名前か?見た目か?それとも父親の仕事か?)

ライナー (一体、あいつは俺の何がそんなに気に喰わないんだ……)


ガチャッ、ギィィ…


ライナー 「!」

カツン…カツン…カッ


エレン  「よお、害虫野郎。まだ死んでねえのか」

ライナー 「……悪かったな、生きてて」

声がかすれている。舌ももつれて、上手に発音できない。
俺がベッドにぐったりしているのを見て、エレンは「チッ」と舌打ちした。


エレン  「呑気に寝てんじゃねえ!!起きろ!!!」ドスッ

ライナー 「がふっ…!」


腹に拳を叩きこまれた。呼吸を整える暇もなく、今度は顔を殴られる。

ガキッ、ゴツンッ、バキッ!

ライナー 「かはッ、あ、がっ…!…ゴホッ、ごほっ…」

うずくまって、口から血と胃液の混じったものを吐き出す。
その中に白い歯の欠片が見えた。

エレン  「はあ、はあっ、はあ……」ポタポタ

ぼんやりした視界の端に見える拳から、血が滴り落ちていた。
俺が起き上がらないのを見て、エレンはハッと我に返る。

エレン  「お、おい……お前、まさか死んでねえよな、なあ」

その声に、少しだけ怯えのようなものが見えると思うのは気のせいだろうか?

エレン  「なんで治さねえんだよ!!お前巨人なんだろ、だったらこんなの
      すぐに治っちまうんだろ!?」

ああ、またこいつの妄想が始まった。もはや「治るわけねえだろ」と言い返す
気力すらない。頭がぐらぐらして、まともに考えられない……。


エレン  「……ああ、そうか。体力がねえから、治す方に回せねえんだな……」


また髪をつかまれて、無理やり体を起こされた。こいつは介護職にだけはつかない方がいいな。
何余計なことを考えてるんだ、俺は。


エレン  「おら、食えよ!わざわざ人間と同じ飯をやってんだからよ!」グイグイ

ライナー 「おぶっ!…ん、むぐッ…!」

口の中に無理やり固いパンをねじこまれる。
息が苦しい。気が遠くなりそうなのを、それでも何とか奥歯で噛んで、少しずつ呑みこむ。
それを見たエレンはまた胸ぐらをつかんだ。


エレン  「なんで、お前なんかが生きてんだよ……人殺しのくせに!!
      巨人のくせに!!」バキッ

エレン  「お前は人類の敵だ、俺の母さんも、ハンネスさんも、マルコも、リヴァイ班の人たちも!!
      みんなっ……お前のせいで!!お前が門を破った所為で!!」ガキッ

聞き覚えのない名前。暴力。慣れてきている自分が恐ろしい。

――ガキッ。

エレンの拳が、俺の右目に沈んだ。

ライナー 「……っ!ぐあ、あああっ…!!」ゴロッ

目の奥が熱い。まばたきするたびに何か熱いものがこぼれてくる。絶え間ない痛みに、
ベッドの上で丸まった俺は悶絶する。

エレン  「……ッ、…!……!!……」

あいつがまだ何かしゃべっているのに、聞こえない。

エレン  「……!!!っ、……!……」

必死に揺さぶられる感覚が、少しずつ遠ざかる。

ライナー (だめだ……また、意識が……)


◆◆◆◆◆


どこか分からない街で、俺は仰向けに倒れていた。――空が青い。
雲もゆっくり流れていて、いつまでも見ていたいくらい綺麗だ。

「……」

起き上がろうとして、両足がないことに気づく。足があったところから、
いや、体のあちこちから蒸気が上がっていた。

「おい」

聞き覚えのある声。首だけを動かしてみると、緑色のマントを着たエレンが立っていた。
カッターナイフのような変わった剣を持って、俺を――

「……なんだよ、なんで」

てっきり憎々しげに睨みつけていると思ったエレンは、
泣きそうな顔をしていた。

「なんで、そんな顔してやがんだ」
「巨人のくせに、人類の仇のくせに、裏切り者のくせに」

――なんで、そんな……


◆◆◆◆◆


ライナー 「…………」

ライナー 「……ん……」パチッ

ライナー 「ここは……いってぇ!!」ズキッ


目を開けると、そこは元通りの地下室だった。
やけにリアルな夢だったな。……俺もあいつの妄想にあてられて、おかしくなってるのか。

ジャラッ…

ライナー (まさか、あいつが手当てしたってのか……?)

視界の半分を塞ぐ包帯。見ると、体のあちこちに絆創膏や湿布が貼られて、
簡単だが傷の手当てをされていた。

ライナー (……そういえば、あんだけ殴られたのは初めてだったな)

ここに連れてこられた最初のうちは、家に帰せだの何が目的だ、だの言うたびに殴られて、
体のあちこちがアザと打撲だらけだった。それでも、さすがに気を失うまでの暴力はまれで。

ライナー 「……っつ!」ズキッ

ズキズキと痛む右目をおさえて、サイドテーブルに目を向ける。

ライナー 「……薬?」

普段はロウソクが置かれているだけのそこに、薬と水差しが置かれていた。
手に取ってみると、市販の鎮痛薬らしい。

ライナー (なんなんだ、あいつは……死ねと言いながら食事を与えて生かしてみたり。
      ここまで暴力を振るっておきながら手当てしたり)

ライナー (あいつは俺にどうしてほしいんだ?)

切ります

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