【ミリマス】セカンドキスは何度でも【みななお】 (38)

ミリマス、みななおの百合SSです。

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【ミリマス】ファーストキスは突然に【みななお】
【ミリマス】ファーストキスは突然に【みななお】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495543562/)

の続編的位置づけとなりますが、
みななおがなんやかんやでちゅっちゅした
ってことだけ覚えておけば問題ないと思います。

キャラ崩壊等含まれる恐れがありますので、百合的描写含め、そういったものが苦手な方は回れ右をお願いいたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1495673010

 彼女、横山奈緒は一人暮らしである。
 大阪から東京に出てきて一人暮らしを始め、元々母親から家事全般に関しては教わっていたこともあり、特に不都合はなく暮らしていた。
 それでも劇場に仕事にレッスンと、奈緒の体力をもってしてもヘトヘトになるような日々を送っていれば、まあ多少家事が滞るのも致し方ないことといえるだろう。
 事実、オフの日にはまとめて部屋を片付けたりだとか、作り置きの料理を作ったりだとか、なんとも主婦スキルの高い行動はしていたのだから。

 そんな彼女の暮らしが一変してから、はやくも一ヶ月が過ぎようとしていた。

「奈緒ちゃんおはよー!」

 時刻は朝の7時きっかり。奈緒の部屋に元気な声が響くのと同時、未だうつらうつらとまどろみから抜け切らない奈緒の体から、布団が勢いよく引き剥がされる。

「う~、美奈子~……今日オフやねんからもっと寝かせてぇやー」

 美奈子の手によって開け放たれていた窓からは、朝のまだ涼しげな空気が流れ込んでいて、その外気に触れれば否が応にも奈緒の意識は現実世界へと浮上せざるを得ない。
 それが奈緒にとって好ましいかどうかは、また別問題ではあるのだが。

「ダメだよー、ちゃんと朝ごはんいっぱい食べて、元気出さないと!」

「わかった、起きる。起きるから先に用意しとって~」

 そう言いながらふらふらと寝ぼけ眼で洗面所へと向かう奈緒を見届けてから、美奈子はキッチンへと戻る。
 奈緒を起こしに来た時点でほとんどの調理は完了している。あとは仕上げと、盛り付けだけだ。

(奈緒ちゃん低血圧なのかな……やっぱりたくさん食べてもらわないと!)

 美奈子がまた少しずれた方向に決意を固めたことは、今は本人しか知るよしもないことであった。

「「いただきます!」」

 白い湯気の中に煌く中華粥。鶏がらスープの香りが漂い、散らされたネギの緑色が鮮やかだ。さらにザーサイと白髪ネギが添えられ、この粥一つとっても食感で飽きることはないように工夫されている。
 見るからに熱々だと分かる小龍包。蒸しあげられたぷりぷりの生地を一度噛めば、中からは肉汁の旨みがふんだんに染み出た熱々のスープが口内を満たすだろう。
 さらに焼き餃子。パリッと焼き上げられた表面は絶妙な焼き加減の焦げ目に彩られ、見ただけでその美味しさが伝わるかのようだ。
 加えてテーブルに彩りを添えるのはクラゲとキュウリの和え物。瑞々しいキュウリの緑色が目に眩しいばかりでなく、口の中に入れればキュウリのシャキシャキ感とクラゲのコリコリ感が合わさって舌を楽しませようことは想像に難くない。

 とまあ、ここまではいい。ボリュームに目を瞑れば普通の中華風朝食である。
 テーブルに乗り切らなかったため横に置かれている、エビチリと、ホイコーローと、卵とキクラゲの中華炒めを見なければ、であるが。

「ごちそうさまでした!」

「うん、お粗末様!」

 しかしこれが普通に全て空になるのが、この横山家の日常でもあるのだった。
 もちろんそれには美奈子によってバランスを考えられた味付けであったり、普段から体力を使う二人の仕事内容によるものだったり、様々な理由があるわけなので、よい子はまねしてはいけない。

「美奈子ありがとな~、今日もこんな早くから来てもろて」

「大丈夫だよ~! お店の仕込みで元々朝は早いし、何より奈緒ちゃんのためだし!」

「こそばいからやめぇや~、そういう言い方」

 そういう奈緒ではあるが、声色も表情も、全くもって嫌そうな欠片もない。

 あの出来事があってから一ヶ月、美奈子は週に二日ほどのペースで奈緒の部屋に通っている。
 それは今日のように朝早くであったり、仕事の合間であったり、仕事が終わったあとの夜であったりと時間は様々だが、とにかく奈緒の部屋に寄ってご飯を作り、時にはゴミをまとめ、食器を洗い、なくなりそうな日用品を買い足している。
 その様子を聞いた事務所一のセクシーアイドル(自称)、馬場このみさんはこう評したという。

『それ……ただの通い妻じゃない』

 そう、今や美奈子は自他共に認める奈緒の通い妻状態であった。

「奈~緒ちゃん」

「ん、なんや? 美奈子ー」

「私、今日のご褒美が欲しいな~」

 朝食を終え、食器を全て洗い終わった後、ソファに座って雑誌に目を通す奈緒の横に、美奈子が座る。
 体重を預けるように奈緒の肩に頭を乗せながら、美奈子はいつもの声色とは少し違う、甘えたような声でそうつぶやいた。

「んー、せやったらなんか買い物にでもいこか。ちょうどほら、新しくオープンした雑貨屋さんがあるんやて」

「むぅ~、意地悪……」

 美奈子の甘えたおねだりをさらりと流すように、手元の雑誌に掲載された雑貨屋の記事を指差す奈緒の顔は、なんとも悪戯っぽく、意地の悪い笑みであった。
 その笑みを見て奈緒の思うところを悟った美奈子は不満そうに唇を尖らせて、身体を預けている奈緒の腕をぐいぐいと引っ張っている。

「なーんてな。ちゃんと分かっとるから、そんな顔せんで?」

 言葉とは裏腹に、存分に美奈子の不満顔を堪能してから、奈緒は雑誌を一度閉じて美奈子の方へと視線を移す。
 その細められた瞳は、一瞬美奈子の脳裏にあの夜の奈緒を想起させた。

 体重を預けている美奈子の身体を少しだけ離し、奈緒はその頬に手を沿わせる。
 ピクン、と微かに肩を震わせる美奈子の顎先を指で軽く上向かせ、真っ直ぐに瞳を見つめながら、奈緒は美奈子の唇に自分の唇をゆっくりと重ねた。

「ん……これでええんやろ?」

 一瞬のキスの後唇を離した奈緒は、満足そうな表情でそう美奈子に問いかける。
 正確には、問いではなく確認であるのだが。

「奈緒ちゃんって、こういうときだけ意地悪だよね」

 頬を赤く染めながらもまだ少し不満げな表情の美奈子だったが、その表情がネガティブなものでないことは、奈緒もわかっている。
 結果として奈緒の手玉に取られたような形になっているのが、嬉しいようで悔しいようで、なんともいえない表情になっているだけだ、と。

「なんでなんかな~、美奈子にはなんでか意地悪したくなんねん」

 そんな表情をされるから、意地悪したくなるんやけどな。
 と心の中で付け足しながら、意地悪のお詫びに何かプレゼントでもしたろかな、とこれからさっきの雑貨屋へと向かう算段を立て始める奈緒であった。

以上です。

今回ちょっと続き物にチャレンジしてみるつもりなので、今回はここまで。
とりあえずみななおがラブラブしてるところを不定期更新で書いていくつもりです。

お読みいただきありがとうございます。
願わくば、今後も宜しくお願いいたします。

本当付き合いたてのカップみたいだ
乙です

>>2
横山奈緒(17)Da
http://i.imgur.com/mvnrTYO.jpg
http://i.imgur.com/Zlk6U7u.jpg

>>3
佐竹美奈子(18)Da
http://i.imgur.com/H8nI7OX.jpg
http://i.imgur.com/BRnMwhQ.jpg

貴方のお陰でみななおの魅力を再確認できました。
ありがとうございます。

もっとチュッチュッしろ乙

「それはそれとして、やな。さっきの雑貨屋さん行ってみよか!」

 奈緒が美奈子に少しだけ意地悪な口づけをしてからしばらくして、奈緒は改めて雑誌のページを開いて美奈子に向けて掲げた。
 そのページには奈緒の部屋から少し歩いたあたりにオープンした、新しい雑貨屋の記事が書かれている。
 大きなチェーン店というわけではなく個人経営のお店のようだが、雑誌に取り上げられた以上これからしばらくは混みあう事だろう。

「ほんと!? わっほ~い! ホントはさっき見た時に気になってたんだ」

「私も気になってたんよ~。ホンマは暇な時に行こうと思ってたんやけど、美奈子と一緒に行きたくてなぁ」

「……奈緒ちゃんの天然ジゴロ~」

「え、なんで!?」

 奈緒の言葉にほんのり顔を赤らめる美奈子だったが、奈緒本人には、そうなるような言葉を言った自覚はないようだった。
 天然ジゴロという美奈子の言葉も頷けるというものである。

 二人でわいわい騒がしくも準備を済ませて、部屋から出て歩き始める。
 平日昼間の街は閑散とはしていないが賑やかというほどでもなく、どこか穏やかな雰囲気に包まれていた。

「ええ天気やなぁ、お散歩日和や」

「そうだね~、歩いたらちょっと暑いくらいかも」

 そう呟く美奈子の視線は、隣を歩く奈緒の手へ。
 少しだけの間躊躇するように自分の手を揺らしてから、意を決してその手をぎゅっと握る。
 緊張のせいか暑さのせいか、その手のひらはしっとりとしていた。

「美奈子は積極的やなぁ」

 手を握られた側の奈緒は動じる様子もなく、にやにやと意地悪な笑みを浮かべている。
 今度こそは負けない、とばかりに何ともないような顔をしている美奈子だが、その耳がほんのり赤くなっていることを奈緒は見逃していない。

「でも……私としては、こっちの方がええなぁ」

 するり、と美奈子の握られた手から自分の手を滑らせ抜き取る奈緒。
 そして美奈子に寂し気な表情すらさせないうちに、指を絡めてもう一度手をつなぎ直す。
 スムーズな手際に、思わずされるがまま繫ぎ方を変えてしまった美奈子がその意味に気付いた時には、すでに耳だけでなく頬まで赤く染まっていた。
 すなわち、いわゆる恋人繫ぎというやつである。

「奈緒ちゃん、こういうこと手馴れてない?」

 すっかり手の平で転がされっぱなしの美奈子が、未だ赤さの残る頬を膨らませながら奈緒を睨むように見つめる。
 無論、そんな状態で睨んだところでむしろかわいくしか見えないのではあるが。

「そんなことないわ。彼氏もできたことあらへん、正真正銘の乙女やで」

「こんな意地悪な乙女いないよ~」

 そんなことを話しながら歩いて雑貨屋さんが見えてきたころには、美奈子も繋いだ手に慣れてきたのだろうか、顔の赤さは随分と引いてきたようだった。
 雑貨屋はといえば、雑誌の効果もあるのだろう、平日にしては十分多いといえる客が訪れていた。

「うひゃ~、やっぱりお客さんおるなぁ」

「離れないようにしないとねっ!」

 そう言って笑いながら握る手の力を少しだけ強める美奈子。
 さすがにそこまでしないといけない程の人口密度でもないのだが、このくらいの仕返しが出来る程度には、余裕が出てきたという事だろう。

 しばらくの間店内の商品をあれやこれやと見て回る二人。幸いにして、変装した二人には誰も気づく事は無い。
 すると、とあるコーナーの前で二人の足が止まる。

『各種髪飾り ヘアピン・ヘアゴム・リボン・シュシュ等々取り揃えております』

 手作りなのだろう、温かみのある文字と絵で彩られたその看板の下には、確かに様々なデザインの髪飾りが並べられていた。

 お互いに何を考えたか、言わなくとも分かったのだろう。
 どちらから、ということもなく繋いだ手をほどいた二人は、並べられた髪飾りを眺め、手に取り、次々と物色し始める。
 そして、やがてその手が止まるのもまた、不思議なことに同時のタイミングであった。

「決まったみたいやな!」

「うん、私はバッチリ!」

 せーの、と小さく二人で呟いて、お互いに選んだものを見せ合う。
 美奈子の手に握られていたのは、紫色のリボン。奈緒の手に握られていたのは、薄い青のシュシュ。

「ほな、会計してくるわ」

 感想も言わないままそれだけを言って、奈緒が美奈子の手からリボンを取ってレジへと向かう。

「え!? 自分で払うよ!」

「意地悪したお詫びと、普段の感謝の気持ちや。ここは私に甘えて、先に入口で待っとって~」

 問答無用で人の間をすり抜けてレジへと向かっていった奈緒を見送りながら、美奈子は苦笑いを浮かべてため息をつく。

「ずるいなぁ、もう」

 しかしそう呟きながら一足先に店の入口へと向かう美奈子の顔には、なんとも嬉しそうな、へにゃっとした笑みが浮かんでいた。

「お待たせ~!」

 遅れて入口へと戻ってきた奈緒が、それぞれの髪飾りが入った二つの袋を美奈子に手渡す。

「私が選んでたんは美奈子へのプレゼントや! 美奈子は髪結ぶのリボン派みたいやから、たまにはシュシュもええんちゃうかな~って」

「えっ! 私が選んだのも奈緒ちゃんへのプレゼントだよ!? 奈緒ちゃんがシュシュ派だから、私と同じリボンを送りたいな~って」

「えっ、ホンマ!? なんや~、そんなとこまで一緒の考えやったんか」

 お詫びもかねて一方的にプレゼントを送ろうとしていた目論見が崩れたからか、奈緒はちょっとバツが悪そうに、美奈子に手渡した袋のうち一つを受け取る。
 しかし嬉しさを隠しきれないその表情には、奈緒には珍しく赤みがさしていた。

「なあなあ美奈子~、私リボン使ったことあらへんから帰ったら手伝ってや~」

 その赤くなった顔をごまかすように、そう言って美奈子の腕に抱きつく奈緒。
 これなら珍しく自分が主導権を握れるかな、と帰った後のことを想像して、来るまでとは違った笑みがこぼれる美奈子だった。

「ところで、なんでリボン紫なん?」

「奈緒ちゃん2月生まれでしょ? だから、誕生石のアメジストの色にしたの」

「は~……さすが美奈子、女子力高いわぁ……」

 アメジスト、2月の誕生石。その別名は、愛の守護石。
 そこまで美奈子が知っていたのかどうかは、本人のみぞ知る。

とりあえず今回はここまで。

お読みいただきありがとうございます。
願わくば、今後も宜しくお願いいたします。

完全にカップルだこれ!

みななおわっほい
コンスタントにみななおいただけるの有り難さしかない

みななおいいぞ

「おはようございまーす!」

 朝の事務所に響き渡るのは、関西弁独特のイントネーションで発せられた元気いっぱいの声。
 いつものようにサイドテールで髪を纏めた奈緒であるが、いつもと違うのはその髪留め。今日はシュシュではなく紫色のリボンが、その髪の間に揺れている。
 言わずもがな、美奈子からプレゼントされた品物である。

「ああ、おはよう奈緒。ちょうどいいところに」

 奈緒の声に気づいて隣の部屋から顔を出すプロデューサー。
 奈緒の記憶が確かであれば、その部屋は衣裳部屋という名の物置であったはずだ。

「これ、ちょっと着てみてくれないか?」

 プロデューサーが衣裳部屋から持ち出してきたのは、クリーニングのビニールに包まれた、一着の衣装。

「なんですか、これ? スーツ…ともなんかちゃうような……」

「スーツと違うのはさすがにわかるか。それはな、燕尾服ってやつだ。本来は違うんだが、日本だと執事服のイメージでもあるな」

「あ、そうや執事さんや! この前のドラマで見ました!」

 そう聞いて奈緒の脳裏に浮かぶのは、この前までやっていた連続ドラマ。その登場人物である執事が、たしかこのような服を着ていたことだ。

「でも本来は違うって、これって執事服やないんですか?」

「ああ、燕尾服ってのは本来正装の服なんだ。テレビで見たことないか? 毎年天皇陛下から勲章を貰う人が着てるのが燕尾服なんだよ。だから、正式な場に出席するときには着るんだろうが、普段の仕事中に着ることはないはずだぞ」

「へ~、勉強になるわぁ。ん? でもこれ、私が着るっちゅーことは」

「まあ、いわゆる男装だな」

 男装、と言われて複雑な表情を隠せない奈緒。なんとなく、自分の女性としての魅力が乏しいと言われているような気になるのだ。
 いや、プロデューサーのことだからそういう意図がないことは分かっている。しかし、そう簡単に割り切れるものでもない。

「あー……まあそういう顔をしたくなるのはわかる。俺だって逆の立場ならそうなる」

 そう言われて奈緒は女装したプロデューサーを想像する。
 ちゃんとした女装ならば見れる程度のものにはなるのだろうが、奈緒の脳内にはもはや、ギャグ漫画のようにけばけばしいメイクとマリリンモンローのようなカツラを被ったプロデューサーしか浮かんでいなかった。
 その破壊力で思わず自分で笑ってしまいそうになるが、ここで笑ってしまえば承諾したことになるのでは、と思いなおして踏みとどまる。

「というのもな、前に応援団の以上として学ラン着たことあっただろ? あれ結構評判良かったんだよ」

 そういえば、と奈緒はその言葉を聴いて思い返す。
 確かに学ランを着て応援団の格好をしたことがあったな、と。
 複雑な気持ちなのは変わらないが、評判が良かったといわれて悪い気もしない。

「で、今度うちのアイドルでCMを、って話があってな。その中でお嬢様役と執事役が欲しいみたいで、誰がいいか考えてるところなんだ」

 CM、と聞いて奈緒の心が揺れ動く。
 というより、ここまで意地を張るようなことでもない、という気持ちになってきているのも事実だった。
 多分、一度やると決めてしまえば自分のことだから普通に楽しむだろう、と。
 ただ単に、一度微妙な顔をした手前、すぐに承諾するのが癪なだけだ。

「まあ複雑なのは分かるがこれも仕事だと思って、とりあえず試着だけしてみてくれないか? 何はともあれ、着てるとこ見て考えた方がいいだろうし」

「は~い」

 ビニールに包まれた燕尾服を持って奈緒は更衣室へと歩いていく。
 その足取りが重くないのを見て取ったプロデューサーは、承諾を確信したという。
 良くも悪くも、奈緒は素直なのであった。

 さて、更衣室に入った奈緒はまずビニールを取り去って燕尾服を手に取る。
 着たことのない衣装、なにか特別な部分がないか確認しなければ、着るときにそこを破損してしまう可能性があるからだ。
 結果として、その心配も杞憂に終わるわけだが。

「なんやふつーのスーツみたいなもんやな。もっとめんどくさい構造してるんやないかと思ったけど、これなら安心や」

 元々特別な構造がないのか、衣装だから着やすいようにアレンジされているのかは定かでないが、とにかく奈緒にとっては安心だった。
 白のシャツを着て、襟にタイを通す。スラックスを履いて、ジャケットを羽織り、ボタンを留める。
 さすがにある程度の予想サイズで作られたものらしく、シャツの袖とスラックスの裾が少し余っていた。

「ん~、こんな感じでええんやろか」

 姿見に自分の姿を映してタイの位置を調整しながら、改めて自分の姿を上から下までまじまじと見れば、まあそれなりには見えた。
 学ランを着たときも確か、着られていると言われるような違和感があったのを奈緒は覚えていた。
 この燕尾服を着ている自分に感じる違和感も、おそらくはそれと同じものなのだろう。

「執事か~……『かしこまりました、お嬢様』……東京弁、やっぱり練習せなあかんかな」

 執事と聞いて連想した台詞を鏡の前でお辞儀しながらしゃべってみる。
 自分では普通にしゃべったつもりだが、さすがにこればかりは関西弁だと違和感があるだろうなぁ、と考えざるを得ない。
 と、その時コンコンと更衣室の扉がノックされた。
 プロデューサーは李下に冠を正さず、と言って頑なに更衣室には近寄らないので、誰か他のアイドルが来たのだろう。

「は~い、大丈夫やで~」

 衣装ではあるが服を着ている奈緒は何の気なしにそう言って、扉の方を向き直る。

「あれ? 奈緒ちゃんプロデューサーさんと打ち合わせ、じゃ……」

 さすがに縁が強いというべきか、更衣室の扉を開けたのは美奈子だった。
 とはいえ、奈緒の姿を見た途端に固まって言葉も最後まで言えないままフリーズしてしまったが。

「あ、美奈子~! 今日はこれからレッスンやったっけ? …って、どうしたん?」

 その原因が自分にあるとはまだ思い至らない奈緒は、まず普通に美奈子に話し掛け、そしてフリーズしていることに気づいた。

「へっ!? あ、いや、ちょっとびっくりしちゃって!」

 奈緒に話しかけられて、再起動がかかったようにあたふたとそう言いながら、美奈子が更衣室へと入ってきた。
 確かにいきなりこんな格好してるのを見たらびっくりもするか、と納得しかける奈緒だったが、ここ最近中々の密度で美奈子と過ごしてきたその目は、美奈子の異変を見逃さない。

「燕尾服って言うんだっけ、その服? 次のお仕事のいしょ」

「耳が真っ赤やで、『美奈子お嬢様』?」

 美奈子の言葉を遮って、奈緒がニヤニヤした笑顔でそう囁く。
 決して大きな声ではないが、元々静かな更衣室では十分な音量を持って、その言葉は美奈子の耳に届いた。

「~~~っ!!」

 自分の心中を見透かされたようで、言葉にならない悲鳴を上げながら美奈子が奈緒の方をにらみつける。
 無論、真っ赤になった顔で睨まれたところで、奈緒にはこれっぽっちもダメージはないのだが。

「美奈子に太鼓判もらえたんなら安心やな! プロデューサーさんのとこ行って来るわ~」

 その反応に気を良くした奈緒は、足取りも軽く更衣室から出てプロデューサーの下へ向かった。
 更衣室に残された美奈子は、赤い顔をうつむかせてプルプル震えていた。

「……ばかぁ」

以上です。
ただ単に、奈緒って男装似合うと思うんだよね、というだけの話でした。

あと私の中の美奈子像は、普段他の人にはグイグイいくタイプであるが故に、自分がドキドキさせられる側に回ると弱いイメージなのです。
今更ですが、なんか書いててだれてめぇ状態になってきてる気がしたので、言い訳しておきます。

お読みいただきありがとうございました。
願わくば、今後も宜しくお願いいたします。

乙女美奈子大好物です!
続きお待ちしております!

http://i.imgur.com/thVYCrB.jpg
http://i.imgur.com/nrSGoGr.jpg
http://i.imgur.com/jWAhNGT.jpg
似合いそうだよね
乙です

みななお最高か

ごめんなさい、>>1です。
ちょっとリアルが立て込んでて出没できませんでした。

もう少し忙しい状況が続きそうなので、このスレは一旦締めということに致します。
落ち着いたらまた、みななおかどうかは別としてミリマスSS書きに来ますので、その時は何卒よろしくお願いします。

了解乙でした
今度のミリマスssも楽しみにしてます

❤ฺ

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