神谷奈緒「愛してるって伝えたい」 (16)

奈緒視点で書いていきます。

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あたしがプロデューサーさんと出会ったのは本当に偶然だった。

あたしは街中で友達を待って居た、ただそれだけだった。
そしたら見知らぬ男が近づいて来て…最初はティッシュマンかと思って警戒したたら、あたしをスカウトするだの言いだして…。


ほんと、夢みたいな話だよな。今でもたまに夢だったんじゃないかって思う時がある。

…けど、今あたしはこうしてアイドルをしている。


プロデューサーさんにスカウトされ、アイドルの神谷奈緒として生きている。



こんな事、スカウトされる前は考えた事も…なくはないか。
正直、テレビの向こうでキラキラ輝いて可愛い服を着て楽しそうに踊るアイドルに憧れた事はあった。

けど、あたしはそんなキャラじゃないし…って言い訳して自分の気持ちに蓋をしていた。


それをプロデューサーさんはいとも容易く見抜いた。


…見抜いて、くれた。


あたしの上部だけの否定を暴いて、無理矢理アイドルにして可愛い服を着せて…いや待てよ、よくよく考えたら中々酷くないか?プロデューサーさんはあたしの話全然聞いてくれないし…。


でも、本当は嬉しかった。


可愛い服を着れたのも嬉しかったし、アイドルになれたのも嬉しかった。



一番嬉しかったのは、そんなあたしのことを可愛いって言ってくれた事。


だけど、あたしは素直になれなくて照れ隠しで自分の気持ちを誤魔化した。あたしの悪い癖だ。

分かってはいるけど、こればっかりは恥ずかしくてどうしようもない。


それでもプロデューサーさんはあたしの事を可愛いと言う。


本当に…本当に変な人だ。こんなあたしの何処が可愛いんだろう。

アイドルになって、たくさんいい事があった。

色んな子たちと出会えてたくさんの友達が出来た。特に加蓮と凛は一緒にユニットを組んだメンバーという事もあって、今ではあたしの親友だ。


まぁよくからかわれるけど…。

自分だけの曲も作って貰えた。


こんな事、誰にも言えないけど、この曲の歌詞はすごくあたしらしいって思うんだ。

恥ずかしがり屋だけど、本当は自分の素直な気持ちを知ってほしい。


だから、この歌を歌うときは心を込めて歌える。あたしの気持ちを、聞いて欲しいって。


虹、そうだ。

虹もプロデューサーさんと一緒に見たなぁ。


あの時は、すごくどきどきした。そりゃもう心臓が口から飛び出すんじゃないっかってくらいに。

一つ傘の下で肩を並べて歩いた時間は…あたしにとって忘れられない大切な思い出だ。


プロデューサーさんはあたしが濡れてしまわないように、傘を傾けてるのにあたしは気付いていた…けどそれが嬉しくて、何も言わなかった。



…あたしってずるいよな。


雨が上がって、もう少しだけ降っていて欲しかったけど、空には虹が架かってさ。すごく綺麗だった。

だから、あたしは勇気を出して少しだけ素直になってみようって思った。


『あたしたちは、雨の後の晴れ間をめざして頑張ってるから!』


あたしなりの言葉でプロデューサーさんに感謝の気持ちを伝えたつもりだった、辛い事があっても、プロデューサーさんと一緒なら乗り越えていける。そう言いたかった。


ちゃんと伝わったかは分からない。


…けど、プロデューサーさんは優しい笑顔であたしの事を褒めてくれた。


すごく恥ずかしかったけど、あたしの気持ちはきっと伝わっていた…と思う。多分。


その後のライブは…最高だった。

もちろん、いつも最高だよ?けど、あの時だけはステージの上で真っ直ぐな気持ちを届けられた気がするんだ。


キラキラ輝く虹が、あたしに勇気をくれた。


あたしは特別可愛くない、かといって面白いわけでもない。


でも、そんなあたしでもアイドルになれるんだってプロデューサーさんが証明してくれた。



だから、この胸の中に仕舞ってある気持ちをプロデューサーさんに…



愛してるって、伝えたい。


短いですが、これにて終了です。

これからも神谷奈緒をよろしくお願いします。

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