男「人の人生終わらせたったwww」 (10)

N国のとある都市の一角に、K氏の会社の事務所はあった。

煩雑な表通りから、細く曲がりくねった薄汚れた裏路地を5分ほど歩くと、事務所の入ったビルにたどり着く。

周辺にはカラスが食い散らかしたゴミがまき散らされ、塗装が所々はがれた建物の壁面を、深緑の蔦が覆い隠している。

そんな廃墟のようなビルに入っているK氏の事務所だが、内装は外面と打って変わって中々に豪華だった。

この事務所の内装を美しく装飾している物は、この国に溢れかえっている、恨み、憎しみ、嫉みと言った負の感情であった。

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K氏の仕事は簡単にいうと、そんな負の感情を抱え込んだ客のストレスを解消してやり、笑顔に変えてやることだ。

社会に貢献する、なんとも素晴らしい仕事である。

今日も客との商談が1件入っている。

K氏がコーヒーを飲んでいると、扉がギイと音をたて開き、今日の商談相手が入ってきた。ガマガエルのような顔をした20代半ばぐらいの女だ。

「あのー、Kメンタルケアはここでしょうか?」

「いらっしゃいませ。私はKメンタルケア社長、Kでございます。……お客様、予約番号をお持ちでしょうか?」

K氏は笑顔で女に尋ねた。

「……腐った百合を貴方に」

「なるほど、貴方は確かに私のお客様の様だ。では、こちらへお掛けください」

K氏は女をソファーに案内する。

女は太った体をどっかりと椅子に沈み込ませる。

重みでソファーの足が床にめり込んだような音がした。

K氏は女に書類を差し出す。

「S美様、こちらが今回のご契約内容になります。同意いただける様でしたらサインを」

女は醜悪な顔面をにたりと歪ませ、サインをした。

~~~~~

朝の通勤ラッシュの人混みにもまれながら、A氏は残業で疲れた目を右手で揉んだ。

しかしそれでもクマが出来た目元から疲れの色が消える事はない。

A氏は50過ぎの体に鞭打って、仕事に励んでいた。

腰痛や肩こりと闘いながら仕事に忙殺される日々。しかし愛する家族のため、A氏は決して弱音をはかず毎日仕事をこなしている。

A氏の家族はたった一人の愛娘、T子だけ。愛する妻は3年前、病気で他界した。

T子は高校三年生。母と同じ病の人を救いたいと、医学科を志望している。

医学科の学費や教科書、学術書は値が張り、経済的には多少つらくなるが、A氏は娘の夢を応援していた。

毎夜遅くまで勉強に励む娘のために、A氏も深夜まで残業に精を出した。


そんな良き父親のA氏だが、職場では鬼上司として有名だった。

特に最近入った新人のS美にはよくA氏の雷が落ちていた。

  

最近少し言い過ぎたかもな……。そういえば、最近の子は褒めて伸びるタイプも多いと聞いた。どれ、今日は少し褒めてやるか。


そんな事をA氏が考えていると、突然誰かに腕をつかまれた。A氏は驚きと戸惑いで目を見開く。何事だと口をひらこうとした。

しかし、A氏が声を出す前に、電車内に響き渡る女の悲鳴。

「この人、痴漢です!」

そこから先はとんとん拍子に事が進んだ。

A氏は痴漢の容疑で逮捕。

会社は首。

裁判では、複数の目撃証言が決め手となり有罪。

T子には性犯罪者の子供というレッテルが貼られた。

学校では毎日嘲笑され、祖母の手作り弁当はゴミ箱に放り込まれた。母の形見の髪留めも、ばらばらにされてトイレの下水に流れていった。

祖母は自殺。

T子は鬱病になった。医師になる夢も捨てた。

~~~~~

「有り難うございました。またのご利用をお待ちしております」

S美から代金を受け取ったK氏は、事務所を後にしようと踵を返した彼女の背に挨拶をした。

S美は扉の前で一度こちらを振り返った。彼女の顔にはすっきりとした笑顔。

「……驚いたわ。こんなにうまくいくなんて」

K氏も彼女の表情を見て顔をほころばせた。

何という達成感。これだから人を笑顔にする仕事は辞められない。

K氏は彼女に向かって満足げに呟いた。

「男とは、あまねく女性には弱い生き物なのですよ」

以上で終了です。

痴漢は男女共通の敵。許すまじ。

女性の方も男性の方も痴漢冤罪には注意しましょう。

専門の弁護士をすぐ呼べる保険なんかも確か月額500円くらいであるっぽい。事件発生から48時間が踏ん張りどころみたいです。
弁護士がいてくれたら心強いでしょう。

最後に、これじゃ胸糞悪いという方向けに続編も用意してます。

よろしければどうぞ。




5年後

K氏はいつも通り仕事を終え、一杯引っかけてから帰路についていた。

K氏が乗っている電車の車両はかなり空いていた。

仕事柄、通勤ラッシュの時間帯は避けるようにしている。

痴漢冤罪の恐ろしさは身にしみて理解していた。

K氏は端の席にこしかけた。

そのまま仕切り板に寄りかかって目をつぶる。

すると、突然誰かに腕を捕まれた。K氏は驚きと戸惑いで目を見開く。何事だと口をひらこうとした。

しかし、K氏が声を出す前に、電車内に響き渡る女の悲鳴。

「この人、痴漢です!」

『続いてのニュースです。女性の敵である痴漢に新たな手口が現れました。被害者は容疑者に、髪の匂いをかがれたと言うことです。目撃証言や証拠などは発表されていませんが、警察は
男を迷惑防止条例違反の疑いで逮捕、起訴する方針です。次はスポーツの話題です……』


匂い痴漢の被害者の正体は……

偽の目撃者がいないことから分かるように、彼女は闇取引には手をそめてませんよん♪

最後に、このネタで深いになった方、ごめんなさい。
ネタバレになるかと思って、冒頭に注意書きは書かなかったんですが、書いておくべきでしたね。

では依頼出してきます。


案外現実でもこんな取引あるかもしれんね
あと関係ないけど星バーーーローーの「殺し屋ですのよ」を思い出した

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