【ミリマス】このみ「箪笥の中に閉じ込められた子」 (45)


ミリマスSS
雑談スレからほっこりホラーが、って見たので。
40行かないくらい。

※元ネタあるので終わったら載せます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492692311




このみ「はぁ~~……あ、お疲れ様、プロデューサー」

P「ああ、このみさん。お疲れ様です。レッスンどうでした?」

このみ「もう~大変よ。莉緒ちゃん張り切ってて」

P「はは、それは振り回されてそうですね」

このみ「ええ。まあでもあの子も元気になったもんよ」

P「元気に……? 何かあったんですか?」



このみ「ああー、そっか。あなたはまだ入って1年目だし知らないのよね」

P「……?」

このみ「私たちもう4年目のアイドルとかになるけど莉緒ちゃんね、
     最初の頃酷いストーカー被害にあってたのよ」

P「ええっ!? そうなんですか!?」

このみ「うん、このストーカーの方の話題は一応あの子にはタブーよ?」

P「は、はい」

このみ「あれは……もう本当にだめになる寸前だったのよ……」



………………
…………
……




莉緒「……私もうだめ……」

このみ「何言ってるのよ。
あなたはまだまだこれからじゃない」

莉緒「悔しいけど、私、こんな事で折れそうになってるし、向いてないのよ……」

このみ「もうっ、とにかく、まずは引越しよ引越し!」



莉緒「……うん」

このみ「ほら、シャキッとして!このみ姉さんも手伝ってあげるから!」


深刻なストーカー被害にあっていた莉緒ちゃんは
もう毎日毎日見る見るうちにやつれていって、
それはもう本当に見てられないくらいだったの。



だから私もよく莉緒ちゃんと一緒に飲みに付き合ったり
色々励ましてあげてたのよ。

でも、それも限界で。




1度警察にも相談したことがあったのよ。
でも、酷いのは私たちがアイドルという職業故に
「そんなにファンに追いかけられるのが嫌なら退職する選択もある」なーんて、言ってくれて。


怒る気力もない莉緒ちゃんの代わりに私が怒ってあげたのよ。
そしたら「妹さんは静かにしてて」とか!
酷いと思わない!?


おっと、話が逸れたわね。
だから私たち2人は相談して、とにかくすぐに引っ越すことにしたのよ。
夜逃げよ。夜逃げ!


でもね……そこでもまた色々あったのよね。


不動産に行った時に本当にいい条件の部屋が見つかったの。


都心繁華街に近くて敷金礼金無し!
築年数は普通だけど、2LDKで6万切ってる!
こんないい部屋他にないわ!って2人して喜んでたんだけど……



まあ、そんないい条件には裏があるのよね。




「……この部屋、出るんです」

このみ「ええっ!? で、出るってまさか!?お、おばけ!?」

「……」


不動産屋は実際に言葉では言わなかったけれど、確実に目が「yes」と言ってたわ。

実際に「霊がいる」というのはNGワードなのか知らないけれど、
何がそこであったのかは教えてくれたわ。



「むかし、死人は出てないらしいが傷害事件が起きてね」

「……1度は警察を呼ぶことになるくらい、
 帰ると部屋が荒らされてる。女がいるって半月もしないで皆出ていく」

「お祓いやら何やらも無意味……」


でも莉緒ちゃんってばもう部屋決める条件が「安ければ……」みたいな所あって
そこに即決したのよ。


そう、それから莉緒ちゃん、どんどん元気取り戻してるみたいで。
私も幽霊が出るなんて忘れるくらい何ともなく過ごしてるのよね。

だから忘れかけてたんだけど、思い出した時に聞いてみたの。


このみ「そういえば、幽霊はいなかったの?」

莉緒「いるわよ?」

このみ「え゛ッ!?」



莉緒「いるわよ~もう。すんごい元気なお転婆な女の子よ」

このみ「元気……!?お転婆!?
     な、なんかされたりしないの?」

莉緒「うーん、お風呂入ってたら、脱衣場に人影が見えたり……」

このみ「えっ!?あの擦り戸っていうか
    ……あそこに立ってるのが見えるの!?」

莉緒「うん、でもそれだけよ?」

このみ「ひぇぇ……」



百瀬莉緒恐るべし……。
というか、あの子よっぽど精神参ってたんだと思う。

その立ってる人影に話しかけてたんだって……。


莉緒「あとは……やっぱり帰ってたら靴が左右違うのになってたり、
   クローゼットがぐちゃぐちゃになってたり……」

このみ「中々迷惑な幽霊ね」



莉緒「あとはクローゼットに入る人影が見えたり……」

このみ「ひぃぃ……」

莉緒「ああ、でもね、いつも笑っちゃうんだけど、
   私結構服持ってるし量も多いじゃない?」

このみ「うん、何着か捨てたらいいのに」

莉緒「うちの子さ、私の服で遊んでるみたいで
   毎朝上から下まで、カバンとか靴までコーデしてくれるの」

このみ「えぇ……そ、そうなんだ」


うちの子って……。



うちの子て……。

莉緒「でもそれが、すっごいダサくて!」

このみ「結構可愛いしお洒落な服しか持ってないのに?」

莉緒「組み合わせ次第で大変なことになるのよ。
   で、毎回私が点数つけてあげるの。5点とか」

このみ「何点満点かによるけど、たぶん低いわよね」


莉緒「そうそう、で、そういう日は家に帰ってくるとだいたい服散らかってるのよねえ」

このみ「逆ギレかい」

莉緒「そう、本当そうなの。だから私も負けじと
    だったらセンス磨きなさいよ!ってファッション誌数冊買ってきて
    クローゼットに投げ込んでる」

このみ「で、改善したの?」

莉緒「全然!」


そうケラケラ笑ってたわ。
何わろてんねん。



それから私は風花ちゃん誘って莉緒ちゃんの家に行ったのよ。
風花ちゃんは「絶対嫌です。行きたくないです」って言ってたけど
無理やり連れて行ったわ。


私だって莉緒ちゃんいるけどそれ以外は私一人は嫌だもの。
怖いもん。



で、実際にいってきたの。
やっぱりいいところにあるマンションでね。

また、莉緒ちゃんの家がこれまた小綺麗で。
部屋に入っても普通の綺麗な家なの。

まあ部屋は一生懸命掃除したって
本人は言ってたけど。
あれは多分嘘ね。そういうキャラ作りよ。
あの子いつも部屋綺麗だもん。



風花ちゃんは私の後ろにずっと隠れてたけど。
まあ隠れきれてない……ってうっさい!


ごほん。
まあそんなこんなでお酒とか買い込んで
パーティしようなんて言ってて、
莉緒ちゃんが「パジャマ貸してあげるからどれか選んで」


なんて言うもんだから莉緒ちゃんに着いていったのよ。



そしたらクローゼットに
首釣ってる人影があって……


風花「いやああああああ!!」

このみ「うおおっ!? ちょっとおおお!」


莉緒「わお、新技!? そんなこともできたの!?」




一人だけリアクション違うけれど……。

いやこの時はまじでびっくりしたわ。
心臓飛び出るかと思ったもの。
一応警戒はずっとしてたんだけど、まさかこんなことしてくるなんて聞いてなかったもの。


でも莉緒ちゃん曰くこの時のは
新技でこんなことしてくることは初めてだったって。
お客さんきたことでテンション上がってるのかも、とか言ってたわね。



ドア開けてすぐのことだったから、
莉緒ちゃんが電気をパッとつけるともうそこには
首釣って宙ぶらりんの人は居なくなってたの。


莉緒「まあよくこのクローゼットの隅っこに小さく座ってるよ」


とのこと。だいたいはこの辺りにいるらしい。
莉緒ちゃんも慣れすぎじゃないかしら。



で、食事もお酒もだいぶ進んで、
莉緒ちゃんが問題のお風呂に入れっていうの。


先に聞いてたけど、擦り戸の所に人影が立つこともあるけど、
そういう扉の模様だと思えばなんてことないから、とか
軽く言われて……


仕方なく入ることにしたのよ。



ばばーっと脱いで
入ったら浴室中に手形がびっしり……!!!



私この時、腰抜けて這いずりながら莉緒ちゃんの所行ったもん。
莉緒ちゃんは


「おお、全裸の幼女のお化けも出たかと思った」


とか笑ってやがったけど。ぷんすか。


で、莉緒ちゃん浴室に引っ張っていって



このみ「ドア越しに立ってるだけって言ったのに!!」

莉緒「……ちょっと待ってて」


莉緒ちゃんのその時の顔……今思いだすだけでも恐ろしいわ。
だって、プロデューサーもあんな顔してキレてる莉緒ちゃん見たこと無いわよ。
あの子基本優しいからあんまり怒ったりしないけれど。


急にもう鬼のような形相でクローゼットの前までドカドカ歩いていって
殴りつけるように戸を叩き出したの。


ドンドンドン!!!!



莉緒「ぉ゛いコラ!!クソデブ!!!てめえ人の家に何してんだおい!!!」

もうこれ見た私と風花ちゃんなんて
空いた口が塞がらなかったもの。



で、クローゼットに向かって説教を始めるのよ。



莉緒「家賃も払ってない分際で調子に乗るんじゃない!!」

莉緒「住まわせてもらってるんだからもっと謙虚な心を持ちなさい!」

莉緒「イタズラと嫌がらせは違うし、私の大事なお客さんを脅かすんじゃない!!」

莉緒「もっともてなしてみなさいよ!!」

莉緒「1時間くらい家を開けるからそれまでにお風呂綺麗に戻しなさい!!分かった!!?」



と、一通り怒鳴り散らしてから
タオル一枚の私とそのタオルにしがみつく風花ちゃんの所にきて



莉緒「ごめんね姉さん。ちょっとだけ外に飲みなおしに行きましょ」

っていつもの感じで。
私達も「うん」としか言えなかったもんね。




で、近所の個人経営のバーに連れて行ってもらって。
あんたすっかりこの街に馴染んでるじゃないのよ、なんて話ながらね。
そこで色々聞いたんだけどね。


今までは幽霊の仕業には別に怒ったりしなかったけど、
今回は2人も来るってことでお風呂綺麗にしたのに汚されたのがすごいムカついた、と。


クソデブ発言については
手形がデブの手形で指が太くて丸っこい手形だったとか。


あの短時間でそんな冷静に見てたんかい。



で、まあ説教して飛び出して来た訳だけど。
これが戻ってみてびっくり。


一時間ほどお店で飲んでから家に戻って三人でお風呂見たんだけど。
さっきのあれが嘘みたいにピカピカに戻ってたのよ。



莉緒「すんごい。私が掃除した時より綺麗ね!やれば出来るじゃない!
   今度からあなたは住まわせる代わりにお風呂掃除係ね!やったわね!」


とかはしゃいでた。
何がやったんだかって思ってたけど。



で、この辺りだったかな。
事務所でこの話をした時に亜利沙ちゃんが


亜利沙「なんだか修行中のアイドルちゃんみたいですね」


なんて適当なことを言ったら莉緒ちゃんもそれすっかり気に入ったみたいで、
その辺りからあの子のことはアイドルちゃんって呼ぶことにしたのよ。



まあそれからも何度かお泊りすることもあったんだけど、
それからはもう全然驚くような話はないのよ。


まあお風呂の扉越しに誰か立ってたりは見たけど、
私も莉緒ちゃんもその頃にはアイドルちゃんなんてずっと呼んでるもんだから
愛着わいちゃって、

このみ「ん? おお、久しぶり。このみ姉さんだけど覚えてる? 元気?」

なんて聞いちゃったり。
幽霊だっつーのに。


あとはトイレ入ってると楽しそうなリズムでノックしてくるのよ。
莉緒ちゃん曰くそれはノックだけの曲あてゲームらしい。
難しすぎるわ。


当てると軽快な音で連打されるらしい。
当たるんかい。


莉緒ちゃんが家で流す音楽に影響されることが多いみたいで、
ビートルズとかストーンズとか好きで曲かけるとドアが開くんだって。


逆にあんまり好きじゃないメタルなんかのCDは中身入れ替えられたりされてるとか。



そんな中で仕事も忙しくなってきて事務所に近い所に
引っ越すことにしたのよね、彼女も。


莉緒「荷物減らしたり荷造りしたりで色々作業したりするんだけど、
    荷造りしても帰ってくると散らかされるようになっちゃって。それは困ってるのよね」


このみ「きっと出ていかれるのが寂しいのよ」



莉緒「このままじゃ引っ越しも間に合わないのに」

このみ「やばいわね」

莉緒「だいぶやばいわよ。あ、でも着物はイタズラしないのよ。
    やっぱり古い人だから着物好きなのかもね」


古い人って……。



莉緒「あれぐらいならあげてもいいんだけど、クローゼットに着物が一着置いてあるって
   それ次の買い手見つからなくなりそうじゃない?」

このみ「まあねえ」


まあそれからはどうしたのかは知らないんだけどね。
もう引っ越しはしてるはずだけど。




……
………
…………



P「……なんか信じられませんね。すごい寛大というか……」

このみ「そうよ~。懐深いのよ~?」


ガチャ。


莉緒「お疲れ様でーす。あれ?姉さん?何話してたの?」

このみ「ああ、アイドルちゃんのことよ。プロデューサーその話知らなかったんですって」



莉緒「あー、そうだっけ?」

P「初めて聞きましたよ。なんというか……今まで大変だったんですね」

莉緒「ちょっと、やめてよもう~。別に大変なんかじゃないわよ」

このみ「そういえば、アイドルちゃんは今どうしてるの?」

莉緒「今は箪笥の中にいるわよ?」

このみ「いるの!?」



莉緒「そうそう。引っ越しする時にちゃんと話ししたのよ」



莉緒「私はもうここを出て引っ越しをしないといけない」

莉緒「荷造りしたものを荒らされると困るの」

莉緒「私はアイドルとしてこれから忙しくなるし
    家にいる時間も少なくなる」

莉緒「だからあなたに部屋を荒らされると少し困るけど……」

莉緒「今まで通りお互い思いやりのある距離が保てるなら」




莉緒「私と一緒に行こう!!」




莉緒「って言ったらその日から大人しくなって。で、大急ぎで引っ越しの荷造りして
    無事お引っ越しってわけ」

P「か、かっこいい……!!」

このみ「ヤダ私ちょっとキュンときちゃった」

莉緒「今は箪笥にアイドルちゃんのお気に入りだった着物一着入れておいてあげて
   あの子のお部屋としてあげてるの」



このみ「で、一緒に着いてきてるのね……」

莉緒「そうそう、たまーにその箪笥が全開で落っこちそうなくらいに開いてる時があるけど
    もう可愛いもんよ?」

P「この懐の深さが……どうしてもっとテレビで映えないんですかね」

このみ「そうねえ……でも今のままじゃ絶対に……」

P「はい、モテないですよね」

このみ「うん。ペット飼うと婚期が遅れるとはよく言うけれど……
     霊は異常よ、誰もよりつかなくなるわよ……」

莉緒「えぇ~~~!そんなぁ~~!」



莉緒ちゃんは今でも楽しく暮らしているそう。


終わり


お疲れ様です。
ほっこりホラーってこういうことですか??


ホラーが足りないという方に以下過去作です。

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