渋谷凛「お内裏様と」 佐城雪美「お雛様……」 (16)

ありす「くしゅんっ………うぅ」

凛「風邪?」

ありす「では、ないと思いますけど……今日は寒いですね」

泉「最近、日によって気温がまちまちだからね。昨日は暖かったのに、今日は肌寒いし」

泉「しっかり体調管理しないと」

ありす「そのあたりは気をつけています。毎朝天気予報はチェックしていますから」

泉「さすが」

凛「私たちはアイドルだし、身体を壊さないようにするのは基本だね」

ありす「はい」

ありす「……ところで、凛さん。今日、結構薄着ですね」

凛「うん」

ありす「寒くないですか」

凛「………」

凛「ちょっと寒い」

ありす「はあ……」

泉「あはは……」

凛「しょ、しょうがないでしょ。今朝、天気予報チェックする時間なかったんだから」


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雪美「………」

雪美「凛………」ツンツン

凛「ん? どうしたの、雪美ちゃん」

雪美「ペロ……あたたかい……」

ペロ「にゃあ」

凛「ペロ……そうだね。毛がいっぱいで温かそう。うちのハナコと同じ」

雪美「……あたたかい……だっこ、する……?」

凛「いいの?」

雪美「………」コクリ

凛「じゃあ……ありがとう」

ペロ「にゃー」

凛「わ。思ったよりあったかい」

雪美「私が……あたためたから……」

凛「そっか。さっきまで、膝の上に乗せていてあげたもんね。なら、ふたりぶんの体温をわけてもらうことになるのかな」

雪美「………」コクン

ペロ「にゃにゃ」

凛「よしよし。ペロも、ありがとう」ナデナデ

ありす「………」ウズウズ

ありす(薄着してくればよかったかも……)

泉「抱きたいなら、素直に言えばいいと思うわ」

ありす「そ、そんなこと思っていません」

泉「そう? なら、次は私が抱かせてもらおうかな」

ありす「えっ? いや、その……」

泉「その?」

ありす「……次は、私がペロをだっこしたいです」

泉「ふふ、最初からそう言えばいいのに」

ありす「泉さんに心をハッキングされました……」

さくら「でたぁ! イズミンの必殺技『アナタの心、ハッキングしてあげる!』だ!」

亜子「やっぱりサイバーキャラやねぇ」

泉「あなた達どこから出てきたのよ」

さくら「ちなみに超必殺技も考えてありまぁす」

ありす「なるほど……」

泉「ありすちゃんも食いついちゃダメ」


さくら「でもイズミン、そういう必殺技の名前考えるの得意だよね」

ありす「そうなんですか?」

泉「え? そんなこと全然ないけど」

さくら「でも、ほら。よく言ってるじゃん、『ふぁいあうぉーる!』とか『とらぶるしゅーてぃんぐ!』とか」

泉「それ、PC用語というかインターネット用語というか……とにかく違う」

さくら「あれぇ?」

亜子「さくらはホント天然やなぁ」

亜子(まあ、アタシもファイアウォールは最初ゲームの技名かなにかやと思ってたけど)

雪美「……スクリーンセーバー……」

凛「それもたぶん、パソコン関係の言葉だね」

雪美「……強そう……」

凛「それはわかる」

亜子「まあ、得意かどうかは別として。いずみはそういうかっこいい技を使う役、ハマりそうやない?」

泉「そうかな」

さくら「そうだよっ。どうして今までやったことないのかなぁって思うくらい!」

さくら「わたしは正義のヒーロー役で公演に出たことあるのに」

亜子「アタシもムァッドサイエンティスト的な役やったことあるで」

ありす「私も、魔導師役なら経験があります」

泉「……考えてみれば、みんなそういうのやってるのね」

亜子「これはいずみもとっととファンタジーな役柄をやるしかないねー」

さくら「ねー♪」

泉「ねーって言われてもね……」

ありす「魔導師、楽しかったですよ」

泉「ありすちゃんまで……」

凛「ふふっ。人気だね、泉」

泉「これはそういうものとは違うような……そういえば、凛さんはそういうファンタジーな役をこなした経験は」

凛「私? 私はそもそも、本物の剣と魔法の世界に行ったことが」

泉「え?」

凛「……ごめん、やっぱりなんでもない」

ガチャリ

P「おお、ちょうど暇そうにしてるメンバーがたくさん。みんな、ちょっと手伝ってくれないか」

凛「あ、プロデューサー。手伝うって、なにを?」

P「ひな壇を出すんだ。それの運搬と、飾りつけだな」

ありす「ひな壇ですか」

さくら「もうすぐひな祭りかぁ。女の子の日ですね!」

さくら「春はわたしの季節ですし、ポイント2倍!」

泉「ポイントって、なにの?」

さくら「特に考えてないよ」

泉「そこは考えておこう?」

さくら「でも、とりあえずポイントが増えるとお得な感じはすると思って」

亜子「わかる」

泉「亜子は絶対そう言うと思った」

雪美「………」

ありす「無言で親指を立てていることから、雪美さんも理解を示しているようです」

泉「そっちは予想してなかった」

凛「しっかり者だね」

P「おーい。ほのぼの漫才するのはいいけど、こっちを助けてくれー」

一同「はーい!」



雪美「……お内裏様と、お雛様……」

ありす「そのふたりは一番上の段ですね」

雪美「………っ。………んっ」プルプル

ありす「雪美さんだと背伸びしても届かないようですね。貸してください、私がやります」

ありす「んーっ! んーっ!」

凛「ほら、パス」

ありす「お願いします……」

雪美「………牛乳……飲む……」

ありす「私も飲みます、毎日」

凛「そんなにすぐには伸びないけどね。身長」

泉「それにしても、ずいぶん大きなひな壇だね。こんなのうちの事務所にあったんだ」

P「部長のちょっとしたツテでな。実質タダで譲ってもらったらしい」

亜子「ほう~。すごいね」

さくら「おうちのひな壇よりも大きいでぇす」

雪美「………」ジーー

泉「雪美ちゃん? どうしたの、お内裏様をずっと見つめて」

雪美「……お内裏様……Pに似てる……」

泉「プロデューサーに? そうかな……ちなみに、どのあたりが?」

雪美「なんとなく……」

泉「なんとなくなんだ。それじゃあ、お内裏様の隣のお雛様は誰に似てる?」

ありす「」ピク

雪美「お雛様は……」

ありす「………」ソワソワ

雪美「………」

雪美「……ありす……?」

ありす「!」ガッツポ

泉「そうなんだ(雪美ちゃん優しい)」

泉「ちなみに、雪美ちゃんはどこにいるの?」

雪美「私は……お内裏様の……ひざの上……」

泉「ちゃっかり特等席とってるね」

夕方


P「………」カタカタ

P「なんか、部屋にひな壇と自分しかいないとちょっと怖いな」

P「顔あげたら視線合うし」

凛「デスクの位置が悪いんじゃない?」

P「あれ、凛、まだいたのか。てっきりみんなと一緒に帰ったかと」

凛「学校の宿題やってから帰る」

P「そうか」

凛「うん」


凛「ちなみにさ」

P「ん?」

凛「お昼、お内裏様とお雛様の話になってたけど。あれ、プロデューサー的にはどうなの」

P「俺的には?」

凛「だから。自分がお内裏様だとして、お雛様には誰を置きたいかって話」

P「………」

凛「迷うってことは、候補はいる感じ?」

P「別にそうとは限らないだろう」

凛「ふーん」

P「ニヤニヤされると困る」

凛「ニヤニヤ」

P「はあ……言っておくけど、アイドルの中にはいないからな。お雛様候補」

凛「本当に?」

P「そこは本当」

凛「ふーん……そっか」

凛「じゃあさ、こうしようよ」

P「?」

凛「うちのお内裏様は、一番上の段ですましているよりも」ヒョイッ

凛「こうして、真ん中の段でみんなに囲まれているほうがお似合いじゃない?」

P「………かもな」

凛「でしょ?」フフッ

その日の夜


泉「………」カタカタカタ

泉「……ふう。ちょっと手直しするだけのつもりだったのに、もうこんな時間か……」

泉「………」

泉「トラブル……シューティング」←鏡に向かってバキューン

泉「………」

泉「ない。ないわ。寝よう」

同時刻


ありす「スクリーンセーバー!」←昼の影響



雪美「ファイアウォール……」←昼の影響



凛「アイオライトブルー!」←なんとなくやりたくなった




泉「深夜テンションって怖いわ……流されないようにしないと」







おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
雪美と泉の新SR、とても好みでした。
泉がかっこいい必殺技考えるの得意、みたいなことはヒーロー公演の時の劇場でさくらが言ってます

シリーズ前作:橘ありす「雪ですね」 佐城雪美「呼んだ……?」

その他過去作
栗原ネネ「まってちがう」
小松伊吹「なんだよエスパーか!?」

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