モバPと高垣楓が特盛ミートボールパスタをイチャイチャしながら食べる話 (115)

pと高垣楓のSSです。

ラストまで見て頂き、読み返すと違った見え方になります。数日おきに更新します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484793425

P「…………」

ちひろ「お疲れ様です、Pさん。お茶です」

P「おお、ありがとうございます。私はまだ仕事があるので、お先に帰って頂いて結構ですよ」

ちひろ「ではお言葉に甘えて。失礼致します」

P「お気をつけて」

>熱くもなく温くもなく、ちょうどいい温度のほうじ茶が視界を曇らせる。

>ぼんやりと、頭の中で仕事を整理した。

P(いや、今日は自分も帰ろう。詰めすぎたせいかさすがに疲れた。飯も食わないと)

P(22時30分……)

>目に焼き付いていた青白い光が消える。しょう油味の何かが食べたい、そんな事をぼんやり考えながら、先日買った真新しいジャケットを手に取った。

……

>タクシーに乗り、ファッション雑誌のモデル特集をチェックしながら揺られていると、自宅最寄りの駅前に着いてしまった。

P(さて、明日は朝からまた詰めないと)

P(しかしただでさえ多忙な時期に新規プロジェクトの立ち上げとは……やる事が山積みだ)

>チープなオレンジ色に緑のラインが光る吉野家の看板が目に入る。

>あぁここでいいか、そんな気持ちで入る客が大多数いる事は間違いないだろう。

>無意識に向いていた足をぴたりと止める。

P(牛丼か。甘いものが食べたい気分なんだよな)

P(だったら……)

~スーパーマーケットSEIRYU~



>大きめの出入り口のそばで、白とオレンジを基調にしたチラシを手に取った。

P(結局いつものスーパーだ。ま、やっぱり深夜近くまで営業してるのはサラリーマンにとっては嬉しい)

P(今日の腹は……甘いものと)

P(パスタだな。この緑色の安っぽいカゴ、やっぱりいいね。機能性だけって感じで)

P(豚肉、しめじ、ベーコン、あとは何だ。ザクッと行きたいよな。どんどん買うぞ)

>お菓子コーナー、惣菜コーナー、野菜コーナー等はもちろん、洗剤や食器、雑貨まで置いてあるのがSEIRYUの魅力だ。

>やはり買い物は楽しい。

>十数分、カゴが重くなっていく事に僅かな快感を感じながら買い物を満喫する。

P(……梅か?ペーストがチューブに入ったものまで最近のスーパーはあるのか?)

P(うわ。安いな、内容量から考えると梅干しを買うより圧倒的に安い)

P「うっ。じゅる」

>いつの間にか出てきた涎を、間一髪で口に戻す。

P(でもなんだか、違うよな。風味が無さそうだ。色も真っ赤で、一人暮らしにゃとてもじゃないが使い切れない。戻そう……)

P「やはり買い物は楽しいな……」


?「あっ」

P「ん?」

>声のした方向に目を向ける。

>高垣楓だ。

>おろしにんにくチューブを持った、高垣楓がこちらを見ていた。

>お互いに驚いた表情で、しばし見つめあった。

>カゴの中には、モチ米や玄米等が入っていて重そうだ。

楓「……Pさん。こんな時間にどうしたんですか?」

P「……………こんばんは。仕事終わりでして」

楓「お疲れ様でした。いつもお仕事、ありがとうございます」

P「いえ。あなた達あっての私達ですから」

楓「ふふ。今からごはんですか?」

P「ええ」

楓「……自炊、するようになったんですね」

P「身体が資本のようなものですから。健康だけは気を使っています」

楓「あら?でもこれ……」

>楓が買い物かごの中にあった「まるごとイチゴ」を取り出した。

楓「ふふ。まるごとイチゴ。私もこれ大好きです」

P「参りましたね……」

P「しかしこんな時間に、高垣さんこそどうしたんですか」

>薄手のシャツに短パン。しかし目深帽にサングラスと変装にしては物足りず、ちぐはぐな格好だ。

>露出が多いため、肌寒いのだろうか肌が僅かに紅潮している。

楓「急に健康志向になっちゃって。新しく炊飯器を買ったので、いろんなお米を食べてみようかと」

楓「今日はたきこみごはんを作る予定です」

P「そうですか」

P(この時間から?何時に食うつもりなんだ)

楓「たきこみごはんを口いっぱいにかきこみたい、なんて」

P「はは。うまいですね、さすがは高垣さんだ」

P(炊き込みごはんか。久しく食べてないな)

>その時、どこからともなくソーセージが焼けた時の、脂の乗ったうまそうなにおいが流れてきた。

楓「……私もごはんまだなんです。良かったら一緒に食材を選んでもらえませんか?」

P「ええ、荷物お持ちします」

楓「あら。モチ米をお持ち、してくれるんですか」

P「もちろんです」

楓「わぁお上手!ふふふ」

P「……」

……

P「高垣さん、他に買うものはありませんか?」

楓「そうですね。あとは大葉があればよかったんですが」

P「大葉」

P(大葉ってあのシソの葉っぱのような……)

P「あれが必要なんですか?」

楓「そうですよ?」

P(……彩りということか)

P「ん?」

>スーパーの出入り口に目を向けると、ばたばたと客が駆け込んできた。

>なにやらみんな目が血走っている。

楓「特売の時間ですかね」

P「さて、どうでしょうか」

楓「豚こまがチラシに乗っていた……気がします。曖昧ですが」

P「しっかり自炊するようになったんですね、偉いです」

楓「……え、えぇ。まぁ」

>以前、好きなものを聞くとお好み焼きやたこ焼き、イカの一夜干しや刺身と答えていた事をふと思い出した。

P「もしかして、まだ居酒屋でごはんですか」

楓「うふふ。さぁどうかしら」

P「身体に悪いですから程々にして下さい。貴女はうちのエースなんですから」

楓「やめろとは言わないのですか?」

P「仕事中に禁断症状が出ては困ります」

楓「優しいんですね」

>ツン、と脇腹を少し強めにつつかれた。

>ゾクッ!とした感覚に、思わず身を逸らした。

>流し目の彼女の端に、どことなく嬉しそうな表情を感じる。

>いっしょにゆったりと食材を選ぶ。

P「居酒屋ではどんなものを?」

楓「焼き鳥、刺身、焼き物、気分ですね。イカの一夜干しで日本酒を飲むのが好きです」

P「……」

楓「あら、なんですかその間は?」

P「いえ。私も好きです、その組み合わせ」

P「ずっと噛んでても味がして、酒で流すのがもったいなく感じます」

楓「ああ!やっぱりみんなそう思ってるんですね」

P「姫川さんもそう仰っていましたよ」

楓「やっぱり。ふよふよの食感の中にイカの味とみりん、七味としょう油とマヨネーズも相まって……」

楓「しょう油とマヨネーズ、どっちにしましょーね?」

P「今度、食レポの仕事でも入れましょうか。居酒屋メニューではありませんが」

楓「ふふ。それは良かった。最近はそれを食べ過ぎて、イカはもういーかって」

P「食傷気味」

楓「そう。だからにんにくチャーハンとか、揚げ銀杏とか明太だし巻きとか」

P「……」

楓「……もう。間を空けないで下さい」

P「いえ、決して高垣さんを貶めているわけではありません」

P「前と変わらずその全く飾らないところが、アイドルとして、魅力的だと。そう思いまして」

楓「……」

「本日はご来店頂きまして、誠にありがとうございます。本日の営業は終了致しました。繰り返します、本日の営業は……」

P「失礼しました……さぁ、急いで会計してしまいましょう」

楓「はい」

……

今日はここまでで・・・

P「…………」

楓「…………」

>外はとんでもない土砂降りだった。

>スーパーのビニールの屋根から十分な距離を取っているにも関わらず、ビチビチと音を立てて雨粒が靴を叩く感覚が伝わってくる。

P(さっきお客さんが駆け込んできたのはこういう事だったのか。そう言われると傘を買っている人がいたような……)

>こめかみを揉む。ついさっき出入り口も閉められてしまった。買おうにも買えない。

楓「……どうしましょう。傘も持ってないし」

P「高垣さんはタクシーを使ってください。必ず領収書を。私は折りたたみ傘があるので大丈夫です」

楓「でも、こんなに土砂降りじゃ傘では」

P「私は身体が資本ですからね。少し濡れた程度で風邪はひきません」

楓「……タクシー、深夜近くでこの辺りって通ってないですよね」

P「心配ありません。電話で呼べば来てくれますよ」

>手慣れた手つきでダイヤルを押す。程なくして初老の男性の声が電話口から聞こえてきた。

P「MKタクシーさんですか。346プロダクションアイドル事業部東エリア統括副マネージャーのPと申します。いつもお世話に……はい、今から。場所は---」

P「……」

P「……」

P「2時間。出払って……冠水?そうですか……はい。いえ結構です、他に当たります」

P「はい。では今後とも……はい」

P「高垣さん。ご自宅は以前と変わらず?」

楓「えぇ」

P「……。少し待ちましょうか」

>言ったそばから、しまったと思った。彼女の格好はまだ暖かい時期とはいえ薄着すぎた。

>雨もどうやら止む様子が無い。

P「いや……もし良ければなのですが。私の自宅に来ませんか」

楓「え?」

P「いえ!いえ。もちろん嫌であれば結構です」

P「しかし、風邪を引いてしまってはいけませんので。タクシーが来るまで雨宿りして下さい」

楓「……お風呂を借りても?」

P「いいですよ」

楓「えっ!?」

P「はい?」

>雨の飛沫で、楓の足元がじっとりと濡れていた。

P(……急いだ方が良いかもしれない)

P「これはいけない。散らかっていますが、急いで行きましょう」

>風邪を引いたら、明日の仕事に支障が出る。

楓「……」

P「さぁ」

楓「は、はい」

>左手に二人分の買い物袋とビジネスバッグ、右手に傘を持つ。

楓「私のは持ちますよ」

P「健康第一です」

>楓は、意味がわからないと言いたそうに、諦めたように笑った。

楓「じゃあ……本当にありがとうございます、お邪魔します。重くないですか?」

P「身体が資本ですから」

>楓が無言で、Pの向ける傘の下に入る。

>どちらからともなく、心地良い早さで歩き出した。

楓「わぁ、ほんとにすごい雨。地面から雨が降ってるみたい」

楓「……Pさんにお世話になってすぐの頃、こうやって送ってもらいましたよね」

楓「…………つい、この間も」

P「そうでしたね」

楓「そうですよ。覚えてます?」

P「ええ……」

楓「……せめてもっと寄ってください。濡れてしまいますよ」

P「お、お気遣いなく」

楓「もう!」



……

皆さんコメントありがとうございます。
地頭悪いのに変な言葉回ししたらボロが出た感じです
なんとなくで脳内補完して頂ければ・・・

P「どうぞ、散らかってますが」

楓「お邪魔します」

P「すぐにお風呂の準備しますので、居間で待っていてください」

P「ああこれ、濡れたところはこのタオルで拭いて下さい」

>楓はPから、真新しく高そうなバスタオルを受け取った。

>乱暴にジャケットを椅子に掛け、ばたばたとPは浴室に向かって行った。

楓「おかまいなく」

楓「…………」

>楓はさらりと自分の服をまんべんなく撫でてみる。足元だけはビシャビシャだが、服自体はカラリとしている。

>次にPの脱ぎ捨てたジャケットを手に取る。

>左半分だけが水に浸したようにずぶ濡れになっていた。

楓「ふふ。あの日と全く同じ串カツ状態ね。半分だけソースに浸かった……」

楓「はぁ。にんじんソテー食べたい」

>手でPのジャケットの左半分を叩くも、かえって床に雨粒が散ってしまった。

>手近にあったプラスチックのハンガーにかけ、窓枠にぶら下げた。

楓(本当に、不器用な人)

楓(……)

楓「バカ、それは私ね……このバカ」

P「高垣さん」

楓「はいっ!?」

P「……どうしました?」

楓「なにもないですよ」

P「は。湯船はまだ貯めてる途中ですが、ミストは炊けたので入っては?すぐ貯まると思いますので」

楓「ありがとうございます。じゃ、じゃあ」

>何かまずいことがあったのか、そそくさと浴室に向かって行った。

P「バスタオルは浴室に用意しているので!」

楓「はーい!」

P「……ふう。ひと段落したか」

>遠くで浴室の鍵が閉まった音を確認してから携帯を取り出し、手慣れた手つきでまたダイヤルを押す。留守電専用の夜間回線だ。

P「…………………………お疲れ様です。東日本チーフのPです。えー、本日自宅付近のスーパーで高垣楓と会いまして、雨が降ってしまい止むを得ず私の自宅へ連れてきました。カメラは無かったと思います」

P「程なくしてタクシーで帰らせる予定です。経費精算と、万が一のゴシップ対応お願いします。また明日報告します。失礼します」

P「……む。気を遣わせてしまったか」

>自分のジャケットが窓枠にぶら下げてある。手近にあったタオルを取り無雑作に顔や頭についた雨を拭き取る。

>いつもの部屋着ではなく小綺麗なシャツに着替える。濡れた服を全てクリーニング用のプラスチックカゴに放り込んだ。

P(さて。あとは飯か)

P(高垣さんの分も作った方がいいか。ぱっと出来るものでないと)

P(パスタだな)

>これしか作れないのだが。

>買い物袋を漁る。これだけあれば食えるものは作れるだろう。

P(やっぱりサラダとか食べさせないとな。野菜なんてあったか)

P(いや、野菜がないならその不足分は他で補えば良い)

>大鍋にとっぷりと水を入れIHコンロを最大火力にし、適当に塩をザッと投入する。鍋いっぱいの水に対して大さじ3つは入っただろう。

>ベーコン、しめじ、長ネギ、ひき肉、スイートコーン。そしてウェイパー、醤油、みりん、塩胡椒、オイスターソース、コンソメ。使う具材と、使えそうな調味料を手当たり次第に調理台に広げた。

ちょい出しですみませんが、きょうはここまでで
明日も投下します

毎日は・・・出来たらがんばりますね!

楓「Pさーん……ありがとうございました。ゆでだこみたいになっちゃ」

楓(あ、いいにおい?)

P「高垣さん。調子はどうですか?」

>キッチンの薄扉の向こうから声がした。どうやらこのにおいもここから来ているようだ。

楓「ええ。超イイ調子です」

P「よかった。嫌いなものはお変わりなかったですか」

楓「……覚えてるんですか?」

P「プロデューサーですから。あなた達の事は何でも」

楓「ふーん……」

P「いま夕飯を作っていますが、食べて行って下さい」

楓「ありがとうございます。ご馳走になります」

P「良かった、お口に合うかは分かりませんが。遠慮せずくつろいでいて下さい。お酒は好きにそっちの冷蔵庫から取って下さい」

楓「そんな、そこまでお世話にはなれません」

P「はは。高垣さん、あなたからそんな言葉が出るとは。……今さら何を言っているんです」

楓「……。ふふ、そうかも」

>頭に巻いたバスタオルを手直ししながら、ファイバーラグのカーペットに腰を下ろした。

楓(……そうね、確かにお世話になりっぱなし)

>今さら、その一言が楓に多くを思い出させた。

楓(Pさん……最初は、一緒にお弁当を食べてくれたんだっけ)

>少し躊躇うも、テレビのリモコンを手に取り電源ボタンを押す。

>ちょうど彼女が最近気に入っている番組「月曜から夜ふかし」が始まっていた。

楓「あ。マツコデラックス。やっぱりお団子頭にしてると、ピーナッツみたい」

楓(………………。あの日のお弁当、はっきり覚えてる。ごはん、ハンバーグ、ブロッコリー、ポテトサラダ、ピンクのお新香……ごまがごはんに振りかけられてて)

楓(一人居酒屋のメニューが恋しかった。全然味がしなくて……ハンバーグ大好きなのに)

>長い爪の先で絨毯のラグの繊維をいじる。ふわふわとしてて、昨日下ろしたばかりのような触り心地だ。このまま突伏したくなってくる。

楓(……)

楓(ごはんの上のごまを、お箸でかぞえて、時間を潰してた)

楓(……そんな時だったかしら)

>マツコ『ふざけんじゃないわよアンタ!』

>村上『ゆーて俺のせいですかぁ!?』

>わはははは……

楓「うふ。笑うたびにおなかが……すいかみたい。美味しそう」

楓「すいか、おいすぃーか?うふふ、きらりちゃんみたい」

>マツコ『アンタ謝りなさいよぉ!』

>村上『あんたが怒りすぎなんでしょうがぁ!』

>わーわー……

楓(…………)

P「考え事ですか?」

楓(そう……こんな風に)

楓「!?」

>振り返ると、腕まくりをしたPがそばに立っていた。マグカップを一つ持っている。

>程なくして、マグカップを受け取った。……中は水だった。冷たい。楓はそのギャップに少し笑ってしまった。

楓「……黙っている方が良いと、スタッフさんに言われたことを思い出して」

P「ああ。彼は……しっかり反省しています。許してあげて下さい」

P「って、高垣さん」

楓「はい?」

>楓が風呂場で使った真っ白のバスタオルをPが指差す。

P「新しいの用意しておきましたよね。私の普段使いのものですよ、それ。洗濯カゴからわざわざ取り出して使ったんですか?」

楓「ごめんなさい。でも、洗濯物増えちゃうと思ったから」

P「…………。あなたって人は」

>乱暴に、その綺麗に折りたたまれた自分のよく知っているタオルを乱暴にに取り上げた。

P「後で痒くなっても知りませんよ」

楓「そう言われれば……」

P「え!?」

楓「ウソです、怒りました?」

P「……知らんと言いました」

>隅にある、左半分がぐしょぐしょの先客がいるカゴの中に、よく見知っているタオルを放り投げた。

P「てっきりお酒を飲んでいると思って水を持ってきたのですが……」

楓「?」

>言って、Pはため息を付きながら台所へ向かった。かと思ったら大皿を二つ携えてすぐ戻ってきた。

P「お待たせしました。ミートボールの和風パスタです」

楓「わぁぁ!」

>・・・

楓「……お……」

>楓は、目の前のそれがPの手からテーブルに置かれるまで、無意識に追ってしまった。

>Pが一足動かすだけで、左右に艶かしく揺れるそれはまさしく麺の山。見る人によってはふざけた量だ。ゆうに一皿で500gはあるだろう。

>わぁ、と微かに楓から色々な感情のこもったため息が漏れた。

>困惑、驚き、そして喜び。

>鼻の奥に突き抜けるこのにおいは、やはりしょう油だ。油を吸ったベーコンと絡み全体が茶色に光っている。そこに長ネギとしめじが彩り、ひき肉とコーンで作ったつくね団子が顔を出す。

>その様相に驚いたのは確かだが、楓は、否応なく先日の出来事を思い出す。

>先日、事務所で暇そうにしてた子達にたまたまレンタルビデオ屋で借りたDVDがあったので、見せて世話してあげたのだった。

>そのDVDの一遍に、とんでもない量のミートボールスパゲッティーを分け合っていたシーンがあった。このパスタはまさしくそれそのものだ。

>……見ていてくれたんだ。

>純粋に、とても、とても、嬉しい気持ちが湧き上がってきた。

楓(嬉しい……!)

楓「あの、これ……!」

>粗末な出来ですみませんと言いながら、Pは向かいに腰を下ろした。

P「ほんのすこし立ち寄っただけです。声をかけて邪魔しては悪いですし」

楓「ふふ、そうですかっ」

楓「……すごい量。パスタの山が揺れて、プリンみたい」

楓「これならたっぷりん食べられそう」

P「……良かった。あとはお口に合うと良いのですが。あとは」

>ゴトンと、これまた大きな金色の500mlロング缶が2本置かれた。モルツビールだ。しっとりと結露し、良く冷えているのが分かる。

P「お酒は食い物がなくては美味しさ半減ですからね。気が効かなかった」

楓「……遠慮する方が、かえって失礼なようですね」

P「そういう所も高垣さんの魅力かと。缶ですみませんが」

楓「そんな。頂きます」

P「どうぞ」

>小気味のいい音を立ててプルを開ける。缶のまま、とっぷりと太った音で乾杯した。

>そして楓は思った。

楓(私はやっぱり、Pさんが好き)


…………

ミートソースじゃないですがね旨かったんでみなさんも適当に作ってみて下さい

>Pは、ガシガシと焼きそばのようにパスタをすすり食べている。

>まれに溶かしきれてないコンソメ顆粒の塊が、歯の上で自己主張する点を除けば、かなり美味しく出来上がったのではないだろうか。

>楓も、文句を言わずに黙々と食べている。

>目が合うと、楓は必ず手を止めて、Pが何か話すのではないかとじっと前を見つめてくる。

P「……」

楓「!、美味しいですね、Pさん」

>……目が合うのはこれで3回目だ。Pは流石に無視できなくなってしまったため、何かないかと言葉を絞り出した。

P「……その、この前のゲームのボイス、好評みたいですよ」

楓「あれですか?……みくちゃんと掛け声で遊んでた記憶しか」

P「その雰囲気がうけたんじゃないですかね」

楓「うふ。あ、聞いてくださいPさん。私のそれ、また風属性なんですよ?前から火属性になりたいって、スタッフさんに言ってたのに」

楓「今回もサポーターみたいで、みくちゃんは剣でバシバシ戦ってるのに……ずるい。なんて」

>そんな風にニコニコしながらスタッフに言うからではないだろうか。

P「……どうせ、火ってのも、炙られるししゃもやほっけの気持ちがとかでしょう」

楓「うふふ、ひどいPさんですね。私の血はお酒で出来てると思ってるんでしょうね?」

楓「でも当たりです」

>笑いながら、お猪口に入った日本酒をさらっと飲み干す。

>ひと笑いでお猪口一杯を数十分続けても、ここまで顔色が変わらないのは、果たして本当に同じ人類にはなのか疑いたくなる。

P「……高垣さん、ゲーム、踊り子でしたね」

楓「もう、言わないで」

>やはり高垣さんは聞き上手な性格だ。

>返事をしやすいような言葉や単語を織り交ぜ、冗談も挟むことが出来る。彼女と話していて不快になる人はいないだろう。

P「……」

>pは、苦い顔をして目を伏せた。

楓「……どうかしましたか?」

P「いえ。少し昔を思い出してしまって」

楓「……」

>楓は、ピクッと目尻を上げたのみで、それ以上は追求しなかった。

楓「……あの!Pさんって休日は何をされてるんですか?」

P「筋トレ、または残務処理です」

楓「まぁ、その身体ですものね。筋肉むきむきで、食べたらサッパリしてそう」

P「そうですか」

楓「はい。鶏むね肉って感じで」

>そういって笑った後、楓は遠慮なく4本目のカクテル缶を開ける。

>さらりと飲む楓の姿を、ぼんやりと眺めていた。

P「……………………高垣さん、自然体って感じに、変わりましたね」

楓「そうでしょうか」

P「はい。高飛車に見えて親しみやすく庶民派で、奔放そうに見えて面倒見がいい」

P「第一印象でほぼイメージが固まるアイドルで、ギャップと言うのは良くも悪くも大きく転びます」

P「高垣さんのそれは、見る人に親近感を大きく与えます。魅力的です、アイドルとして、本当に」

楓「子供なだけです」

P「卑下しないで下さい、そんな返しができるなら、貴女はもう子供なんかじゃない。変わりましたね」

楓「わーい」

>ひらりと片手を頭のあたりまであげて、嬉しそうに笑った。

楓「……でも、自然体ってなんなんでしょうね。取り繕うことのないさまってことなんでしょうか」

P「そうですね、あとは言葉を飾らなかったり、言いたいことをしっかり言うとか」

楓「……それが私と?」

P「?、えぇ」

楓「私だって、この人いいなーとか思ったら、労って一言一句選びますよ?」

P「ハハハ……」

楓「……」

P「……」

P「……。そうですよね、ふーん……」

>つい狼狽えてしまう。手持ち無沙汰で、ビールを煽った。

>あまり、この話題は好きじゃない。緊張する。特に高垣さんとなら尚更だ。

>ビール缶の向こう側に、アンニュイな表情を浮かべた高垣さんがこちらを見ている。

楓「……何か?」

P「いや」

楓「……」

P「……あー、その。」

楓「はぁ……」

>何かを、楓は呟いた。

楓「……。プロデューサー、今日は私、たくさん食べて飲みますよ」

P「え……高垣さん、飲み過ぎです。もう5本も開けてるじゃないですか」

>楓は、少しだけ目を細めて笑った。その真意はPなは想像が出来なかった。

楓「んっんっんっんっ」ゴクゴクゴク

P「………………。そのまま飲み干しちゃうんですか?……すごいですね」

楓「ぷはーーー!」

P「……。ほどほどが一番ですよ」

楓「これがほどほどです、この筋肉ダルマ」

>…………聞き流すことにした。

…………

……

楓「このパスタ、量は量ですけど、やっぱり味は美味しいです」

P「そうですか」

楓「そっけないですよPさん」

P「そうですか。高垣さん、そろそろ上着を着て下さい。さっきから何度も言ってますよね?もうすぐタクシー着くんですって」

P「ああ……ぐっしゃぐしゃじゃないですか服。せっかく畳んだんですから仕事を増やさないで下さい……!」

>時計を見ると、もう24時を回っていた。

>すっかり話し込んでしまっていた。明日もある。先ほどPはタクシーの送迎手配を済ませ、今は到着待ちだ。

P「めし下げますよ」

楓「あ゛ーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

P「うっ!……さいですねぇ、さっさと支度して下さい!!」

楓「うふふ、怒った。うっさいって」

P「怒ってないですよ」

楓「怒った」

P「怒ってないです」

P「……いや、確かに怒ってます」

>互いに吹き出して笑った。

楓「ね、でも、まだ食べきってないです」

P「残して頂いて結構です。なんなら持ち帰りますか」

楓「……ここで食べ切ります」

P「……、じゃあ包んでおきますから早く支度して下さい」

>ここで食べるっていってます、と楓は呟く。Pは構うことなくタッパーはどこにあるのか辺りを物色し始めた。

楓「Pさん、最近笑ってくれなくなりました」

P「…………はい?」

楓「笑って下さい」

P「高垣さん」

楓「笑ってーーー?」

P「酔ってますね、さっきから話が噛み合わない」

P「……あと5分で」

楓「むーーーーりぃーーーーーーーー!……です」

P「…………」

楓「…………」

P「……帰りたくないんですか?」

楓「帰りたくない」

P「…………そうですか」

楓「…………」

>少し長い沈黙が続いた。

P「…………どういう意味かわかっているんですか」

楓「分かっています」

P「分かっていてその言葉は、正気じゃない」

P「高垣さんは利口な方ですから」

楓「……」

>楓はまた残りの缶チューハイをほんの少しだけ煽った。

>美しい瞳を飾るように、長いまつ毛が楓の視線をぼんやりとしたものに変える。

>缶のふちを指でなぞっているように見えるが、Pは楓が目の端で自分を捉えていることが分かった。

>何をいって欲しいのかが分かる。

>……たとえ死んでも、それを口にする気は、無い。

P「高垣さん」

楓「Pさん……」

>楓がふらっと、まるで何かに釣り上げられたように立ち上がる。

>Pは少し驚いた表情で楓を見た。その後、覚悟を決めたように楓を、しっかりと見つめ返した。

>お腹の辺りが、フワフワする。

>楓は両足で立ち上がると、一歩ずつPのもとに歩いていく。その一歩一歩がとても大切で愛おしそうに、地面を踏みしめフワフワとした感覚に浸っていた。

>6歩、5歩、4歩……

>3歩……2歩……

>互いの息を交換する。

>楓は、ふと目を瞑り……

>あぁ、安いカシスリキュールの香りがする。


>Pは、両手で楓の顔を、しっかりと、乾燥しきった手で、指先が頬の肉に埋まるほど、力を込めて、万感の想いを込めて、包み込み、はっきりと言った。




P「ふざけるな、高垣楓」

P「言ったでしょ高垣さん……貴女とはやっぱり仕事のパートナーとしてやっていきたいって」

楓「うふ」

P「言ってる意味、分かりますよね。賢いんですから」

>楓はまるで夢見心地と言ったように、自らの頬に食い込むPの指先を、とても愛おしそうに優しく撫でた。

>振り払うようにPは、楓の頭を強く揺さぶった。

P「……高垣さん。こんなこと言いたくないんですよ」

P「あの日、約束しましたよね。俺たちこれからは、仕事のパートナーとしてまたやっていこうねって」

楓「……」

P「…………なぁ、楓……」

楓「Pさん」

楓「……私、頑張ったんですよ?ちゃんと仕事で会えればいいって。自分に言い聞かせて頑張ってきたのに。Pさんから家に誘ってくるんですもの」

楓「我慢のガンマン、辛抱堪らん、みたいな」

P「いや……」

楓「……Pさんが誘ってきたんじゃないですか?」

P「……それは」

>言い返せなかった。

>もう最悪だ。数時間前の俺を殺してやりたい。

>あの時、家に誘う時はかなり迷った。迷ったが……

P「それはお前が、もう『改心』したと思ったし……何より雨で風邪引いたら明日の撮影が出来ないじゃないか」

P「だから誘ったというより、致し方なく雨宿りさせただけ。わかるよな?」

>分かってくれ。そう懇願した。

>だが自分は知っている。この程度で分かってくれるはずがないと。

>ふと、楓は嬉しそうに笑った。

楓「……天邪鬼ですねPさん」

楓「致し方なくなら、女の子にお風呂を貸しますか?普通」

P「だから、風邪を引いたらいけないからって言っただろ?」

楓「もう……ふふ、はいはい。分かってますから」

>あぁ、分かってない顔をしている。

>楓は、久しぶりに上がった……いや上がれたPの家中を楽しそうに眺め回している。

>互いに互いを監視するようにしてどれくらい間が空いただろうか。

>やがて楓は、自分のくちびるの形を確かめるように舌で湿らせた後、まるで勿体なさそうに問いかけた。

楓「Pさん……あのパスタ……DVDのなかの。あのシーンのパスタですよね?」

P「え?……そうだけど……」

>そうだ。ルパン3世の、あの夕飯ななパスタだ。

>Pが肯定した直後、楓が、今まで見たことがないような優しい顔で微笑んだ。

>他人が見たら一目で印象に残る、邪念を全く感じない、笑顔の美しい女性の姿だった。

>……いや、彼女には本当に邪念はいっさい無いのだろう。

>だからそれはとても美しいと思えたと同時に、Pは、そう思った自分を殺してやりたかった。

楓「覚えててくれたんですね、嬉しい……ありがとうございます」

楓「……見に来てくれて」

>いやらしい言い方だった。

>私のことを。と言葉にはしなかったが、あの顔を見てそのニュアンスが含まれないと思うほうがおかしかった。

P「…………っ」

>呆れ果てて悲しくなる。

>邪な気持ちがないからなおさら異常なのだ。

>これは夢なのか?今すぐ眠ってしまいたい。

>なんでこうなる???身体中の筋肉が弛緩してしまったような、気だるい感覚が強く全身を包み込んだ。

P「それは断じて違う。ジュニアの子達はどうしてるか探しているときに、たまたま世話してる楓を見かけたんだ。いいか?ジュニアの子の様子を見に行ったのであって、楓に会いに行ったんじゃない!」

楓「まだなにも言ってませんよ?」

>しらばっくれやがって、とPは聞こえるように悪態をつく。楓は変わらずひょうひょうとしている。

P「クソッ、やっぱり変わっていなかったんだな。お前はいつまでもあの時のままだ」

>堰を切ったように自分の感情が爆発した。

>本当に自分は愚かだった。前に何度もあったはずなのに。過去にあった事をもう忘れ許してしまっていた。自分から離れていったのに、なぜこちらからまた近づいてしまったのか。

P「あの頃の……2年前。付き合ってた頃と一緒だ、改心してくれたと思って、こっちもああいう、パスタとか、作って!家にあげても大丈夫かって!そう、歩み寄って……!」

楓「Pさん……」

P「……何なんだこれは!?」

>笑えるし、泣きたくなった。なんなんだこの気持ちは。情けないし、許せないし、眠りたい……

>少しの沈黙が続いたが、Pはこのまま、時が止まってしまってもいいとさえ思った。

>もう先の事を考えたくない、その一心だった。

楓「……………………いえ。恥ずかしがり屋さんですね、あの頃からずっと……ほんとに世話が焼けちゃいます」

P「……」

楓「……あ、また、怒らせちゃいました……?」

P「分かってんなら……!?」

>そして、Pは楓に正面から、とても優しく抱きしめられた。

>…………。

>…………。

>困惑の間が一瞬差し込むと、理解したと同時に
頭がジワッと熱くなる。

>は?小さく口から、確かにそう漏れた。

>Pの頭に、少し離れた楓の鼻息を感じる。深呼吸するように、長く深い呼吸だった。

>Pは、控えめだが弾力のある楓の胸の中に顔をうずめながら、ゆっくりと目を閉じた。

>こいつを殴り殺さないように。

>挑発するかのように、ぶにぷにとした胸を、左、右、左、右と、感触を楽しませるように身をよじり押し当ててくる。

>互いの呼吸が荒くなる。しかしその気持ちと表情はまるで正反対だった。

楓「Pさん、胸、好きですもんね?おっぱい大好きの赤ちゃんですもんね」

楓「……また、えっちな赤ちゃんになりたくないですか?」

>黙れ、と微かな声が、楓の胸の中で聞こえた。

楓「あら、怖い赤ちゃんですね。楓ママですよー」

楓「……Pさん、泣いてるんですか?」

P「……お前変わってなかったんだな」

楓「え?」

P「変わってねーって言ってんだよ。踏み込み過ぎなんだよズケズケと、自分を中心に回ってるみたいに、色んなもんを勘違いして振り回して……!」

P「付き合いはじめの頃は良かった。お前も少しは遠慮する心があったから。でもそれがどうだ!浮気が心配だから十分おきにメール!友達と遊ぶことさえ許可がいる!所属の子と普通に話してただけでも、家のもんがぜんぶ壊れてる日さえあったよな!?」

楓「そ、それはPさんが……」

P「[ピーーー]よバカッ!!仕事なんだよそれが!!!うんざりなんだよ!!!」

楓「……ごめんなさい」

>そのごめんなさいは、まるで、よく分からないから適当に謝っておこう。語尾にクエスチョンが付くくらいの、そんなごめんなさいだった。

>何回聞いて、それで何回、俺は許して来たのだろうか。

P「……………!」

>しかし、威勢の良い事を言っても、楓の胸の中に顔を埋めている事に今更気づいた。

>両頬に柔らかい感覚を再認識すると、途端に恥ずかしくなって来る。

>どかないと……!

>かなり強い力で抵抗されたが、Pは楓の拘束を無理やり解いた。

>が、楓は飛びかかるように全身を使ってPを抱き包んだ。さながら、獲物を捕食する直前の蜘蛛のように、四肢を絡め逃さんとしている。

楓「はぁ……はぁ………!」

P「バカか、この……!」

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