友人「お前未だにガラケーなのかよwww」男「ちくしょう……!」 (34)


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「ちくしょう……!」

友人「オレなんてPHSだぜ!」

男「PHS!?」


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男「PHS……久々に見たな」

友人「PHSは料金が安いし、災害時に繋がりやすいんだぜ!」

男「へぇ~」

友人「ま、お前も気が向いたら買い換えるこったな! ハッハッハ!」


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「ぐっ……!」

友人「オレなんてポケベルだぜ!」

男「ポケベル!?」


男「ポケベルか……懐かしいな」

友人「ポケベルはちっこいから持ち運びが楽チン!」

友人「しかも、メッセージを伝えることもできる優れもんだ!」

男「へぇ~」

友人「お、メッセージが来た! どれどれ……『アイタイ』か」

友人「よぉし、会いに行くぜ! じゃあな!」タタタタタッ

男「お幸せに~」


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「くそう……!」

友人「オレなんてトランシーバーだぜ!」

男「トランシーバー!?」


男「今でも警備員の人が持ってたりするな」

友人「トランシーバーは機器同士が直接電波のやり取りをするから」

友人「通信距離こそ短いが、いわゆる圏外がないし」

友人「しかも通話料もかからないんだぜ!」

男「マジかよ」

友人「ただし、電波利用料ってのはかかるけどな!」

友人「あーテステス、こちらコードネーム・ダークドラゴン……」ザザッ…

男(ずいぶん大げさなコードネームだな)


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「ううっ……!」

友人「オレなんて黒電話だぜ!」

男「黒電話!?」


友人「見ろよ、この美しいフォルム!」ドスンッ

男「うおっ!」

友人「黒光りするボディ! でかい受話器! どっしりしたデザイン! 全てにおいて完璧だ!」

男「まあ……一種の骨董品のような風格を醸し出してるな」

友人「だろ?」

友人「しかも、このダイヤルを回す時の音がたまらないんだぁ~」ジーコジーコ…

男「……俺にもやらせて」


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「ほっといてくれ!」

友人「オレなんて矢文だぜ!」

男「矢文!?」


男「こりゃまた、ずいぶんさかのぼったな……」

友人「矢文は離れた相手に手紙を送ることができる優れた通信手段なんだ!」

友人「オレクラスになると、数百メートル離れた相手にも正確に矢を送れるぜ!」

男「お前、弓道かなんかやってた方がよかったんじゃ……」


友人「お前未だにガラケーなのかよwww」

男「うっ、うるさいっ……!」

友人「オレなんて狼煙だぜ!」

男「狼煙!?」


友人「煙の数や色で、遠く離れた相手にメッセージを伝えるんだ!」

友人「緊急時も、狼煙をあげればすぐに救援が駆けつけてくれる!」

男「やってみてもらってもいいか?」

友人「いいとも……」シュボッ

モクモクモクモク…

友人「うわっ、風向きが……! ゲッホ、ゲッホ!」

男「ゴッホ、ゴッホ!」


友人(お前未だにガラケーなのかよwww)

男「こいつ……直接脳内に!?」

友人(オレなんてテレパシーだぜ!)

男「テレパシー!?」


男「なんでお前、テレパシーなんか使えるんだよ!?」

友人(いや……かつて人類はみんな、このテレパシー能力を持っていた)

男「そうなの!?」

友人(しかし、言葉が作り出され、文明が発達していくにつれ、この能力はなくなっていった……)

友人(なぜなら文明人にとって、心の中のことをありのまま伝えるなんて、デメリットしかないからな)

男「たしかに……そうかも……」

友人(現代人が持っていても憎しみや争いしか生まない悲しき能力……それがテレパシーさ)


お前未だにガラケーなのかよwww

男「悪かったな……!」

男「ってあれ!? 声はすれど、お前の姿が見えない!?」

そりゃそうさ…… オレはもはやこの宇宙そのものと一体化した……

男「なんだって!?」

だけど、安心して欲しい……

オレはみんなの心の中に存在しているから…… いつも一緒にいるから……

男(どんどん声が小さくなっていく……)

男「待ってくれ……待ってくれーっ!!!」

男(何も……聞こえなくなった……)


男(通信手段の進歩は、我々人類に多大なる恩恵をもたらした)

男(しかし、それと引き換えに我々は、かけがえのないものを失くしてしまったのではなかろうか……)










― 終 ―

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