凛「乃々は私が引き取るから」 (13)


森久保「うぅ……」
 

凛「ねぇ乃々…大丈夫?さっきからずっとうなってるけど…」
 

森久保「ちょっとお腹の調子が悪いだけなので…平気です…たぶん…」


凛「最近仕事が増えてきてストレス溜まってるんじゃない?顔色も悪いよ?」
 

森久保「い、いえ…ちょっと胃もたれしているだけなので…」
 

凛「…ねぇ、乃々。それって病院行ってきた方がいいんじゃない?」
 

森久保「えっ…そんな…森久保は死んじゃうんですかぁ〜…」
 

凛「違うよ。乃々だってアイドルだし、自分の体はちゃんとケアしなくちゃいけないじゃない?」
 

森久保「た、たしかにそうですけど…」
 

凛「少しでも体調悪かったらすぐプロデューサーに言った方がいいよ?体調管理は大事だからね。」
 

森久保「わ、わかりました…とりあえず、プロデューサーさんに相談してきます…」
 

凛「うん、お大事にね。乃々。」
 

森久保「ありがとうございます、凛さん…では、森久保はこれで失礼します…」


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〜森久保、病院で診察終了〜


凛「…で、乃々の胃に穴が開きそうだって?それでアンタはどう責任取るつもりなの?」
 

森久保「り、凛さん…あまりプロデューサーさんを責めないでください…もう森久保よりちっちゃくなってますし…」
 

凛「担当アイドルの体調を把握できてないってプロデューサー失格じゃないの?」
 

森久保「り、凛さん…そこまで言わなくても…それに、まだ穴は空いてない初期の段階みたいですし…」
 

凛「もういい。アンタは信じられない。乃々は私が預かるから。」
 

森久保「…え?」
 

凛「乃々、ほらおいで行くよ。」
 

森久保「えっ…ちょっと…凛さんどこに行くんですか?」
 

凛「どこって…決まってるでしょ。私の家だよ。さぁ、寮に荷物を取りに行くよ。」
 

森久保「えっ…ちょ、ちょっと待ってください!凛さん!凛さん〜…」



凛「さぁ乃々、ここがわたしの部屋だよ。」
 

森久保「ここが…凛さんのお部屋…やはり、きちんと整理されてますね…」
 

凛「まぁ自分の部屋だと思ってくつろいでよ。あ、寝るときはどうする?一緒に寝る?」
 

森久保「い、いえ…森久保は床で十分です…お構いなく…」
 

凛「お構いなくって…乃々はお客さんだよ?遠慮なんかしなくていいよ。」


森久保「凛さん…なにか企んでいらっしゃるんですか…?」
 

凛「わかったよ、ベッドの横に布団敷くからそれでいい?」
 

森久保「森久保には、もったいないくらいですけど…お願いします…」
 

凛「…一緒に寝たかったのになぁ…残念だなぁ…」

 
森久保「…凛さん?なにかおっしゃいましたか…?」

 
凛「ううん、なんでもない。そうだ、乃々にハナコを紹介しなくちゃね。ハナコ、おいで。」

 
森久保「この子が噂に聞くハナコちゃんですね…お世話になります森久保と申します…ひっ!」

 
凛「こらハナコ。乃々に吠えることはないでしょ?乃々ごめんね。大丈夫?…乃々?」

 
森久保「……」

 
凛「いつの間に私の机の下に…」

 
森久保「む、無理です…森久保はハナコちゃんに歓迎されてないみたいですし…」

 
凛「乃々ごめんね。ハナコは普段吠えないんだけどなぁ…」




森久保「…森久保はハナコちゃんに害をなす俗物です…森久保にこの部屋で寝泊まりする資格はありません…森久保の寝床は床ですらおこがましい…土の上で寝ます…」

 
凛「ま、まぁそんなこと言わないでって。私の部屋はハナコの縄張りになってるから吠えられたんだと思うよ?」

 
森久保「…それでは、森久保がここから出ていきます…」

 
凛「い、いやそこはハナコに我慢してもらうから…ね?ハナコ?乃々が私の部屋にいてもいいでしょ?」

 
森久保「…ハナコちゃん不満そうですね…」

 
凛「ハ、ハナコお願いだから…そうだ!乃々がうちにいる間おやつを増やしてあげるから!ね?いいでしょ?」

 
森久保「…こんなにたじろいでる凛さんなんて初めて見ました…」

 
凛「乃々!ハナコもいいって言ってくれたよ!うん、これで大丈夫。」

 
森久保「…わかりました…凛さんにそこまでやっていただけたのなら、森久保はその好意に甘えさせていただきます…」

 
凛「うんうん。いつまでもうちにいてもいいよ?一人暮らしは寂しいだろうし。」

 
森久保「…でも森久保が凛さんの家にいると、ハナコちゃんの体に障ってしまうのではないですか…?」

 
凛「え?…たしかにそうだね…うーん…どうしようか。」

 
森久保「…森久保はそんなに長い間お世話になるつもりはありません…」

 
凛「そうなの?まぁいつ帰るかは乃々に任せるけどさ。ところでほんとに私と一緒に寝なくていいの?床だと寒いかもよ?」

 
森久保「…凛さんは森久保のことをペットか何かかと思ってませんか…?」

 
凛「うっ…い、いやそんなことないよ?ただ乃々が寒い思いしたら嫌だなーって…」

 
森久保「………」

 
凛「ほ、ほんとだよ?」

 
森久保「…凛さん。」

 
凛「な、なに?」

 
森久保「…お構いなく…」


~とある平日~


凛「乃々、準備できてる?」

 
森久保「はい…」

 
凛「よし、じゃあ行こうか。いってきます。」

 
森久保「い、いってきます…」

 
凛「ふふ、なんか不思議な感じだね。」

 
森久保「そうですね…人の家から学校に行くというのも、初めてのことですし…」

 
凛「いや、それもそうだけどさ。なんか妹ができたみたいだよ。」

 
森久保「…森久保の扱いはペットなのか凛さんの妹さんのかはっきりしてください…」


凛「うーん…まぁどっちも似たようなものじゃないかな?」

 
森久保「…森久保はありのままを受け入れます…」


凛「うんうん。早くうちの生活に慣れてくれるといいな。」

 
森久保「…郷に入ったら郷に従えという言葉もありますしね…」

 
凛「そうだね。あ、学校は反対方向だったね。じゃあ駅でお別れだ。今日私はレッスンがあるから帰りは遅くなるけど、大丈夫?」

 
森久保「…はい…たぶん…」

 
凛「ま、私の部屋でくつろいでいてよ。またあとでね。」

 
森久保「…はい、凛さんもお気を付けて…」

 
凛「乃々もね。じゃあいってきます。」

 
森久保「いってらっしゃい…それと、いってきます…」

 
凛「うん。いってらっしゃい。」


森久保「うぅ…やっぱり不安ですしぃ…」




~凛帰宅~

 
凛「ただいまー。」

 
森久保「い、いっらしゃいませぇ…!」

 
凛「…なにしてるの?乃々…」

 
森久保「は、はうっ…り、凛さん~…」

 
凛「ち、ちょっと乃々、シャワー浴びてないんだから抱きつくのはやめてって。」

 
森久保「森久保は…凛さん…!森久保はぁ…!…せ…せ…」

 
凛「せ?」

 
森久保「せ、接客という…!地獄の所業を…!森久保に…!凛さんの…!母上様が…!」

 
凛「わ、わかったから!とりあえずもうあがっていいよ。シャワー浴びたら私がやるから。」

 
森久保「あ、あぁ…はい…失礼させていただきます…」


凛「もう、乃々にこんなことをやらせるなんて…本当に乃々の胃に穴が開ちゃうよ…」


森久保「…凛さん~…」


凛「あぁもうほら、そんな情けない声出してないで、早く部屋に戻りなよ。」


森久保「は、はいぃ~…」

 
凛「…なんかお姉ちゃんの気分になっちゃったよ…もし妹がいたらこんな感じなのかな?」


森久保「ひっ!ハ、ハナコちゃん…そこまで吠えなくても…」

 
凛「…いや、乃々はペットだね。」



~とある週末~


森久保「…ん…朝…?」

 
凛「おはよう乃々。よく眠れた?」

 
森久保「…凛さん…なんで毎朝森久保の布団に入ってるんですか…」

 
凛「まぁまぁ。ところで今日は休日だけど、どこか出掛けない?」


森久保「…いえ、遠慮しておきます…」

 
凛「そんな固い事言わないでよ。ここ3日間学校に行く以外に家から出てないでしょ。今日くらい私の買い物に付き合ってよ。」

 
森久保「凛さんのお買い物ですか…?」

 
凛「うん。」

 
森久保「…森久保は居候の身ですし…凛さんの頼みは断れませんね…わかりました。今日は凛さんにお供させていただきます…」

 
凛「うん。いい子だね乃々は。」


森久保「それで、お買い物とはいったいどこに行くんですか…?」

 
凛「とりあえずハナコのご飯を買いに行くかな。乃々も体調はそこまで良くないし、ちょっとだけね。」

 
森久保「…凛さんの買い物というより、ハナコちゃんの買い物ですね…」

 
凛「まぁね。ハナコ用のおやつが無くなっちゃってね。ご飯も残り少ないし、丁度いいかなって。」

 
森久保「う…森久保の存在がハナコちゃんのご飯代にも影響を及ぼして…」


凛「大丈夫だよ。ハナコのおやつ代はそんなにかかってないし。それに、私のお給料から出してるからそんなに心配しなくていいよ。」

 
森久保「り、凛さんのお給料でハナコちゃんのおやつを買ってるのですか…!」

 
凛「そうだね。」

 
森久保「森久保はなんということを…」

 
凛「いやだから平気だよ?」

 
森久保「いえ…不肖森久保、自分を養ってくださっている方に失礼は致しません…宿泊代をお支払いいたします…」

 
凛「…はぁ、話が進まないね。もういいから出かけるよ、乃々。」

 
森久保「あの…凛さん…せめて着替えさせてください…」

 
凛「だーめ。」

 
森久保「えっ…」



凛「私の言うことを聞かないような悪い子のお願いは聞かないよ。」

 
森久保「…凛さんは、ずるい人ですし…」

 
凛「で、どうするの、乃々?パジャマ姿のまま出掛けるか、私の言うことを素直に聞いて着替えて出掛けるか。」


森久保「わ、わかりました…森久保は凛さんと凛さんの家族の皆さんの優しさを、ありがたく享受させていただきます…」

 
凛「うん。そうだね。ペッ…家族っていうのはそういうものだよね。」


森久保「あの…」

 
凛「さぁ早く着替えて乃々。そろそろいい時間だよ。」 

 
森久保「そんなに急かさないでくださいぃ…」



~最後の日~


森久保「…それでは凛さん、お世話になりました。」
 

凛「乃々…もっといてもいいんだけどな…」

 
森久保「いえ、森久保にもアイドル活動がありますので…それに、寮の部屋も気になりますし…」

 
凛「そっか…そういえば病院には行ってきたんでしょ?先生はなんて言ってた。」

 
森久保「それがですね…」


凛「大丈夫だった?前より酷くなってるとか…」

 
森久保「あ、いえ…むしろ良くなってまして…もう大丈夫だそうです…」

 
凛「ふぅ…安心した。本当によかったよ。」

 
森久保「おかげさまで、森久保は健康になりました…凛さん、本当にありがとうございました。」

 
凛「お礼なんていいよ。半ば無理やりうちに連れてきちゃって、ほんとにそれでよかったのかなって思ってたんだ。」

 
森久保「そうですね…あの時は森久保もびっくりしました…」

 
凛「結果的になんとかなってほんと良かったよ。」


森久保「…凛さんは、駄目だったときのことは考えてなかったんですか…?」

 
凛「え…?でも治ったんだから大丈夫だったでしょ?」

 
森久保「えぇ…」

 
凛「冗談だよ。まぁ乃々はお仕事云々より環境を変える必要があったって思ったんだよ。」 

 
森久保「…そうですね…こっちにきて一人暮らしをしていたので…久しぶりに家族と一緒にいれた気がします…」

 
凛「うん。そう言ってもらえて本当によかったよ。」

 
森久保「でもペット扱いだったんですよね…?」

 
凛「え、いやぁそんなつもりはないんだけどな…」

 
森久保「…目が泳いでますよ凛さん…まぁでも…ペットだって立派な家族の一員ですし…」

 
凛「うん。そうだよ。寂しくなったらいつでもおいで。ハナコ含めてみんな歓迎するからさ。」

 
森久保「…わかりました…その時はお言葉に甘えさせていただきますね…」

 
凛「うん。じゃあ乃々、また明日事務所でね?」

 
森久保「はい、お世話になりました…それでは…」

 
凛「うん、また明日。」



・・・
 

凛「ふぅ…乃々帰っちゃったな…ハナコはいつもより多くおやつもらってたから少しご機嫌かな?」

 
凛「……なんか部屋が広く感じる…」

 
凛「…だめだだめだ。妹が欲しくなっちゃったよ…」

 
凛「…でも…事務所に行けばいつでも会えるし、そこは我慢かな…よし!気はらしに散歩でも行こう。おいで、ハナコ。」





おしまい

これはいい凛のの

これは綺麗な凜
ハナコがゴリラじゃない
森久保は抜けた姉でも輝く気がする
おつ

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