東郷あい「おや、どうしたんだい?」 (19)



P「あいさん。いえ、今進めてる企画が行き詰まってまして」

あい「ふむ………そうだ、Pくん。一度休憩しないか?頭を休めれば見えることもあるだろう」

P「確かにそうですね……ずっと液晶画面とにらめっこでしたし」

あい「それじゃあコーヒーでも淹れてくるよ。いつものお礼だ」

P「いえいえ、大事なアイドルにそんなことさせられませんよ。俺がやりますから座ってて下さい」

あい「私がしたいんだ。たまにはお返しさせて欲しい」

P「………そこまで言うなら、お願いしてもいいですか?」

あい「ああ、承った。お礼の気持ちと………愛情を、たっぷり入れてくるよ」

P「か、からかわないでください」

あい「からかってなんかいないさ。でもそうだね、からかうとしたらもっと………こう……………」

P「……あの、ちょっ、あいさん近い近いです息が当たってます離れてくださいというか早くコーヒー淹れてきてください!!!」

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あい「おや、どうしたんだい?」

P「いえ、今度やる仕事の衣装なんですけど………」

あい「ほう、どんなデザインなんだい?」

P「…………こんなです」

あい「これは………フフッ、なかなか面白いじゃないか。メイド服なんてね」

P「あいさんなら絶対似合いますよ」

あい「そうかい?Pくんが言うならそうなんだろう。しかし………」

P「どうしました?」

あい「こんな仕事を持ってきたということは、君は私にメイド服を着せたかったのかい?」

P「え?」

あい「それともメイド姿の私に何かして欲しいことでもあるのかな?」

P「そそそそんなわけないじゃないですか!!」

あい「フフッ、一体どんなオーダーをするんだろうね、ご主人様?」


あい「おや、どうしたんだい?」

P「いえ、あいさんのスカート姿なんて珍しいなーと」

あい「確かに、普段は履かないからね。どうだい?似合っているかな」

P「えぇ、もちろんです」

P(でも、脚がいつもより出てて………)

あい「それより座ったらどうだい?君の為にベンチの隣を空けておいたんだが………それとも」

P「?」

あい「そちらで見ていたいものでもあるのかな?」

P「どっ、どこも見てませんよ?隣失礼しますね」

あい「フフッ、見たいならいくらでも見ていいんだよ。私の脚くらい」

P「分かってるなら脚組み直さないでください………」


あい「おや、どうしたんだい?」

P「あいさん。少し撮影セットの確認を。他のスタッフが出払っているので俺がやってるんです」

あい「ふむ、古い洋館か………そして私はそこの執事というわけだ」

P「はい。衣装の方は大丈夫ですか?」

あい「あぁ、問題無いよ。しかし、メイドになったと思ったら今度は執事か……我ながら忙しいね」

P「あいさんのイメージにぴったりです。いい出来になりますよ」

あい「フフッ、見る者全てを魅了してみせよう。そうだね、まずは………」

P「───えっ、と。あの」

あい「君からかな?」

P「そ、その、顎から手を離してもらえると嬉しいのですが」

あい「こうすれば私しか見えないだろう?」

P「あいさんってばまたからかって……」

あい「ふむ、ではからかいでここまでするかな……?」

P「へ?」




あい「………ほら、もっと近くに」











P(あいさんの、唇が─────)











P「~~~~っ!!!そっ、そういえばまだセットの確認済んでませんでした!!ちょっと失礼しますね!!!」

あい「ああ、そうだったね。邪魔をしてすまなかった」

P「いえ!!大丈夫です!!それでは!!!」











あい(Pくん、顔赤かったな)

あい「…………それは私もか」


あい「おや、どうしたんだい?」

P「え?」

あい「あまり飲んでいないみたいだからさ」

P「ええ、今日はほどほどにしておこうと思いまして」

あい「そうなのかい?打ち上げなんかではよく飲んでいるじゃないか」

P「そうなんですが………あいさんと二人きりで飲むなんてあまりないですし、迷惑かけるのも申し訳ないなーと」

あい「こんな時くらい気を遣わなくてもいいんだよ?」

P「そんなことないですよ。それに……」

あい「それに?」

P「………憎からず思ってる女性に情けないところを見られたくない、みたいな……?」

あい「…………ほう。憎からず、ね」

P「あ、えっと、深い意味は無いんですよ?」

あい「そんな口説き文句みたいなことを言っておきながら深い意味は無いなんて、君はなかなかひどい男だな」

P「これ以上掘り下げないでください……ああもう恥ずかしくなってきた………」

あい「ああ、ついでに言っておくと、私も君のことを憎からず思っているから、忘れないように」

P「………深い意味は?」

あい「フフッ、それは自分で考えたまえ」

P「……あいさん、ちょっと照れてます?」

あい「………君ほどじゃないよ」


あい「おや、どうしたんだい?」

龍崎薫「あいお姉ちゃん!今学校のしゅくだいやってるんだけど、ちょっとむずかしくて………」

あい「ふむ、どんな宿題なのかな?」

薫「えっとね、しょうらいのゆめについて作文をかくの」

あい「なるほど……薫は何かなりたいものはないのかい?」

薫「んー………アイドルにはなれちゃったし……よくわかんない………」

あい「…………薫、アイドルは楽しい?」

薫「うん!うたったりおどったりするの好きだもん!すっごくたのしいよ!!」

あい「それなら、アイドルを続けていくことを将来の夢にしたらどうだろう」

薫「あっ、そっか………そうだよね!かおる、ずっとアイドルやりたい!!あいお姉ちゃんとせんせぇとみんなで、いっしょにアイドルしたい!!」

あい「ああ、私も薫と一緒にアイドルやっていきたいよ。もちろんPくんともね」


薫「えへへー。そうだ、あいお姉ちゃんはしょうらいのゆめってあるの?」

あい「私かい?そうだね………ありきたりかもしれないけど、お嫁さんになりたいかな」

薫「およめさん!クラスの子もいってた!………せんせぇ、ごほごほってしてるね。かぜ引いちゃったのかな?」

あい「フフッ、そうかもしれないね。………でも、この夢が叶うのは当分先になるだろうね。私たちはアイドルだから」

薫「そっかー………だれのおよめさんになりたいの?」

あい「誰の、かい?………誰だと思う?」

薫「うーん、だれかなー?」

あい「ヒントは薫もよく知ってる人だよ」

薫「かおるもよくしってる人?……………あ、分かった!!せんせぇ!せんせぇでしょ!!って、せんせぇ!コーヒーぶーってしたらきたないよ!!」


あい「おや、どうしたんだい?」

P「あ、あいさんですか?急に車が近づいてきたからびっくりしましたよ」

あい「フフッ、すまない。偶然見かけたものだからね。そっちは帰りかい?」

P「はい、これから事務所に戻るところです」

あい「そうか………それなら事務所まで送ろう。さぁ、乗ってくれ」

P「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて………」

あい「おや、今日は聞き分けがいいみたいだね。ほら、助手席にどうぞ?」

P「どうも。正直に言うと少しくたびれてまして……」

あい「お疲れ様。こんな時くらい休んでくれ」

P「ありがとうございます。………今度何かお礼をしたいんですが、何がいいでしょう?」

あい「私が決めていいのかい?そうだな………それなら次の休日、ドライブに行こう。今度は私が助手席に座って、ね」

P「ふふっ、そういうことなら喜んで」

あい「楽しみにしているよ。さて、出発しようか」

P「はい、お願いします」







あい「────Pくん、到着したよ。Pくん」

P「………へ?もうつきました?」

あい「ああ、事務所の駐車場だよ。よく眠れたかい?」

P「それはもうぐっすりと。本当にありがとうございました。ドライブ、楽しみにしてますね」

あい「私も楽しみにしてるよ。………しかし、君の寝顔を見たのは初めてかもしれないな」

P「そうでしたっけ?」

あい「ああ、とてもかわいらしかったよ。フフッ」

P「や、やめてくださいよ!恥ずかしいですって」

あい「いやぁ、本当にかわいかった………うん、やはりそうだな」

P「え?急に携帯を見てどうし………あ。も、もしかして」

あい「ほら、よく撮れていると思わないかい?」

P「ああーー!!!消してください消してください!!」

あい「いいじゃないか、減るものでもないんだから」

P「俺の心が擦り減ります!」


あい「おや、どうしたんだい?」

P「あいさん!やっと見つけた……」

あい「そんなに急いで、何かあったのかい?」

P「え?祭りに来てる他のアイドルから『あいさんの下駄の鼻緒が切れて立往生してる』って連絡があってすぐに駆けつけたんですが……」

あい「………私の下駄は無事なようだが」

P「そ、そうみたいですね、ははは」

あい(………誰かが気を利かせてくれたのか?だとしたらこのチャンス、逃すわけにはいかないね)

P「急にすみませんでした、ではこれで………」

あい「Pくん」

P「は、はい」

あい「折角の夏祭りだ。よかったら一緒に回らないか?」

P「え、いいんですか?俺でよければ喜んで」

あい「フフッ、君だからいいのさ。さぁ、行こうか」


P「はい。ってあの、あいさん、手が」

あい「転んでもして本当に鼻緒が切れたら大変だからね、良かったら支えていてくれないか?」

P「で、でもこんなところ見られたら……」

あい「………ダメ、だろうか」

P「……俺のでよければ、どうぞ」

あい「君でなければ頼まないよ。ありがとう」

P「そこまで言われると恥ずかしいですね……」

あい「フフッ。ちゃんと掴んで、エスコートしてくれよ?」


あい「………どうしたんだい?」

P「今日のライブ、凄かったですね」

あい「ああ、アイドルもファンも、みんな楽しそうだったな。とてもキラキラして見えたよ」




P「………あいさん!!」



あい「………なんだい?」

P「俺は、必ずあいさんを大きなステージまで連れていきます。今日みたいな、いや、今日よりもずっと輝いてる場所に」

あい「………………」

P「ついてきて、くれますか」

あい「………もちろん。君と私ならできるさ、絶対に。」

P「はい。俺とあいさんなら、絶対に!」








あい「おや、どうしたんだい?」

P「いえ、いよいよだと思うと少し緊張してしまって……」

あい「おや、奇遇だね。私もちょうど緊張していたんだ。………手を握ってくれないか」

P「……はい」

あい「……………」

P「……大丈夫です。俺たち二人なら、できます」

あい「……あぁ」

P「……………」

あい「……よし、ありがとう。もう大丈夫だよ」

P「はい。………もうすぐ本番です。あいさんの全てを、ファンに見せてきてください!」

あい「もちろんだとも。この会場にいる全員を魅了してみせるよ。無論、君もね」

P「ふふっ、俺はもうあいさんの虜ですよ」

あい「………フフッ、そうだったね。では舞台袖で待っててくれないか。終わったら一番に出迎えて欲しい」

P「えぇ、横で待ってますよ。ここで最後まで見届けますから」

あい「…………そろそろ時間のようだ。行ってくるよ」

P「はい、行ってらっしゃい!」







あい(Pくんと私、二人だから届いたこのステージ……)



あい「全力で、行こうか」








おしまい。


本当は4thライブ直後に上げようと思ったのですが、間に合いませんでした。

積極的にからかってくる系あいさんもありだと思います。



シンデレラガールズ劇場のアニメにあいさんが出るのを心待ちにしています。欲を言えば肇ちゃんと乙倉くんも出て欲しい。頼む。

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