緑谷「僕と」ケンイチ「僕の」秋雨「ヒーローアカデミアだね」 (8)

??side
「ごっふっ……」
金髪のやせ細った男が路地の裏で血を吐く。
「HAHAHA……やはりきつい」
その表情は、苦悶に満ちていた。
「しかし、この程度の事で死んだりはしない」
白目が消えた真っ黒い影だけの瞳は緑の光が宿っていた。
「私は、ヒーローなのだから」
彼は、決意を固め直す。

「ふぉっふぉっ……知り合いを見かけたと思うたらまさかお主だったとはな」
そこに、金の髭を携えた長身の老人が、何処からともなく現れる。

「貴方は……まさか……」
やせ細った彼は、その老人を見て驚愕する。
それは、その老人の出で立ちに驚いたからではない。

「久しぶりじゃの……ーーちゃん……いや、オールマイトと呼んだほうがいいかの?」
老人は、ペロペロキャンディーを懐から出しながらウィンクする。

「風林寺隼人殿!!」
史上最強の男と、英雄最強の男の再開だった

オールマイトside

「何故、貴方がここに……」
金の髪に、金の髭、私のヒーロー状態の時をも超す身長に筋肉。
そして、その身に纏う達人の覇気。
忘れもしない、私がヒーローを目指すキッカケとなった御老人。

「なに、先程君がヴィランを倒してる所を見かけたから、ちょっと散歩がてらに追いかけてきたんじゃよ」

彼は、片手でキャンディーを持ち、もう片方の手で髭を撫でる。
いや、そんな事はどうでもいい。
彼は、私のヒーロー状態のスピードについてきたのだ。
しかも、散歩気分で。
やはり、彼にはかなわない。
いや、彼と自分を比べてはならない。
彼は、私とは次元が違うのだから。

「HAHAHA……散歩がてらにですか……」

「うむ……して、お主……弟子を取ったか?」

目の前の、御老人風林寺隼人は観察眼にも優れている。
恐らく、あの場にいた緑谷少年に向けた私の意思を読み取ったのだろう。
「えぇ……彼は、いいヒーローになる……これだけは断言できます」
彼の目を、真っ直ぐ見てそう宣言する。
彼は、いや彼等は弟子を取らない
だからこそ、私は、緑谷少年を貴方達を超すヒーローにする。
そういった意志を秘めた瞳で、彼の目を見る。

「……うむ……しかし、儂らの弟子も負けておらん」

「え?」
彼の、言った言葉に思わず間抜けな声が出た。
彼等、梁山泊に居る『達人』と呼ばれる方々は弟子を取らないで有名だった。
私も、昔弟子にしてくれと頼んだことがあったが断られた経験がある。
そんな、彼らが弟子を取ったというのだ。
間抜けな声が出ても仕方が無いというものだろう。
「はっ……そのお弟子さんは、とんだ才能の持ち主なようだ……何せ、貴方達の弟子になれたのだから」

「え?才能なんかこれっぽっちもないよ?」
彼も、私の言った言葉に目を見開き、間抜けな声を上げた。

「え?……嘘ですよね?貴方々の弟子になるのだ、相当の才能が!」
思わず、声を荒らげてしまう。
正直、言えばそのお弟子さんには嫉妬してしまっている。
何せ、達人の中でもさらにその上を行く達人の弟子になれたのだから。
だからこそ、そのお弟子さんは相当な才能があるはずなのだ。

「いいや、彼に……ケンちゃんには才能はない」
「だが、ケンちゃんは努力をやめることは無い……儂等の修行で死にかけようとも決して諦めない。」
「ケンちゃんは、君を超えるヒーローになれる……儂はそう確信しておるよ」

言葉が出ない。
『無敵超人』とまで呼ばれる彼にそこまで言わせた少年。
会ってみたい。
そう思わずにはいられない。
もし、彼のいうことが本当なら、その少年は確かにヒーローになれる。
「隼人殿……そのお弟子さん……雄英に入学させてみませんか?」
これが、私、No.1ヒーロー『オールマイト』と
『史上最強の弟子』との物語の始まりだった

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