【モバマス】「繭になったまゆ」 (33)

むかしむかしあるところに、ちいさな国がありました。

その国には3人のお姫さまがいました。

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1番下のお姫さまはののお姫さま

ひっこみじあんで、はずかしがりやさんのお姫さまです。

だから、つくえの下やタンスの中によくかくれています。

「あー! ののお姫さま見つけたー!」

「ひうっ!」

「やったー! 私何かいいことあるかも!」

あまりにもたくさんかくれるものですから、かくれたののお姫さまを見つけたらいいことがあるなんて話が広がるくらいです。

「それじゃ、いっしょにあそぼ!」

「……まあ、かまいませんけど」

「やった!」

見つかったあとはこうしていっしょに遊んでくれるので、こどもたちに人気のお姫さまです。

まん中のお姫さまはしょうこお姫さま

しずかですが、キノコが好きで、よく山に登ってキノコをとりにいったりするくらいげんきなお姫さまです

今日も何人かの人をつれて、山へむかおうとしていました。

「今日もよろしくお願いします、しょうこお姫さま!」

「フヒ……まかせろ……おいしいキノコを見つけてやる」

「それじゃあ……すぅ……」

「お前らああああぁぁ!!! いくぞおおおぉぉ!!!」

「おおおおおぉぉぉ!!!!」

しょうこお姫さまは、たまにいつものしずかさが嘘のようにさわがしくなります。

いつものしずかさとテンションがあがったときのさわがしさ。

その2つのギャップもあって人気のお姫さまです。

1番上のお姫さまはまゆお姫さま

やさしくて、家事をすることが大好きなお姫さまです。

「よし、今日の夜ごはんもできました……♪ みなさんもおつかれさまです」

「まゆお姫さまこそ、いつもありがとうございます」

メイドたちにまぎれていっしょに料理や掃除や洗濯をしたり。

まゆお姫さまはだれかにまかせずに、自分もいっしょに行います。

そういった、したしみやすいところが人気のお姫さまです。

「うふ……まゆも楽しくてやってるだけですから」

「さあ、みんなを呼びましょうか」

まゆお姫さまがお城のかねを鳴らすと、みんながお城にあつまります。

遊んでいたののお姫さまたちも。

山にキノコをとりに行っていたしょうこお姫さまたちも。

みんながお城にあつまります。

みんながあつまったことをかくにんし、まゆお姫さまは「いただきます」と号令をかけました。

すると、みんなが「いただきます!」と言い、ご飯を食べ始めました。

この国では、こうして夜ごはんはみんなで食べることになっています。

「まゆたちは家族のようなものですから」

そういってまゆお姫さまが決めたきまりです。

ののお姫さまも、しょうこお姫さまも、ほかのみんなも、だれも文句は言いませんでした。

なぜなら、みんながまゆお姫さまと同じことを思っていたからです。

この国はちいさな国です。

他の国と比べても人はすくないですし、ゆたかなくらしをしているとはいえません。

こうしてお城でみんなで食べているご飯だって、他の国にいけばどこでだって食べられるようなものです。

それでも、この国ではみんなが家族のように幸せにくらしていました。

お姫さまがいて、メイドがいて、国民がいて……それでもそこに上下関係はありません。

みんなが仲良く家族のようにくらしていました。

そんな、このちいさな国が3人のお姫さまは大好きで、みんなも3人のお姫さまのことが大好きでした。

ある日、3人のお姫さまにうつくしい魔女が訪ねてきました。

魔女は言いました。

「ちーっひっひっひ! 私の力を使えば、みなさんをもっとゆたかに、幸せにすることができますよ!」

ののお姫さまは尋ねました。

「私の力ってなんですか……?」

「もちろん魔法です。魔女ですから!」

しょうこお姫さまは尋ねました。

「どうしてそんなことを……?」

「私の力を使って、みんなを幸せにしたいので!」

まゆお姫さまは尋ねました。

「本当にゆたかになるんですか?」

「もちろん!」

魔女はすべての質問にすぐに答えました。

3人のお姫さまは話しあいます

「どうする?」

「どうするんですか?」

「どうしましょう?」

うーんうーん、と考えます。

「そもそも……よくわかりませんからねぇ」

「そうだな。いきなり魔法が使えるって言われても……」

「信じきれないんですけど……」

「それなら、今ためしにひとつ魔法を使ってみましょう!」

3人の話をきいていた魔女が言います。

「それっ!」

「!」

魔女が持っていたつえをふると、つくえの上にはおいしそうな食事がならびました。

「ねがったものをいつでもどこでも出せる魔法です♪」

「す、すごいんですけど……」

「わぁ……」

いまいち信じきれなかったお姫さまたちも、今魔女が使った魔法を見て信じることにしました。

「ふふ、こんなにたくさんのごはんをいつでもどこでも食べられるようになるんですよ!」

「ほかにもたくさんの魔法が使えるようになりますよ♪」

「さて、どうしますか?」

もういちど魔女は尋ねました。

3人のお姫さまはおたがいの顔を見て、ほんの少しだけ話して。

「……それじゃあ、お願いします」

まゆお姫さまが代表して答えました。

この国はちいさな国です。

みんなが幸せにくらしていますが、みんながぜいたくにくらせているわけではありません。

しかし、この魔法がもしこの国のみんなにわたったら、きっと今よりももっと幸せにくらせるんじゃないか。

3人はそう考えていました。

「わかりました。それっ♪」

魔女はつえをふりました。

すると、魔女の持つつえからたくさんの星がとびだしてきました。

その星はまゆお姫さまの周りをくるくると回ります。

「きゃっ……!」

「なんだ……!?」

「な、なんなんですか……!?」

3人のお姫さまはそれぞれおどろきますが、それでも星は動きを止めません。

くるくる、くるくる、くるくると、だんだんとはやくなりながら回り続けます。

星の数も多くなって、いつしかまゆお姫さまの姿も見えなくなってしまいました。

それから、すぐに星はすがたを消します。

すると、そこに残っていたのは白い繭だけでした。

「ま、まゆお姉さん! だ、だいじょうぶですか……!?」

ののお姫さまが白い繭に話しかけます。

「はい、だいじょうぶですけど……なんでしょう、これは……?」

白い繭からはちいさな声がかえってきました。

まゆお姫さまが無事だということがわかり、2人のお姫さまはほっとします。

しかし、それもほんのいっしゅんの間だけでした。

「これがみんなが幸せになる魔法なんですか……?」

「いや……ちがうだろう。さっきコイツがやった魔法とぜんぜんちがう」

「……まゆ姉さんに何をした?」

おこった2人が、魔女をジロリとにらみます。

けれど、魔女は笑いつづけます。

「ちーっひっひっひ! ちぃーっひっひっひ!」

それどころか、高笑いをしました。

「引っかかりましたね! 今の話はぜんぶ嘘! うそ!」

「ちっひっひ! 本当はお姫さまのすべてを私のものにするためにここに来たんです!」

「力も、美しさも、若さも、なにもかもを私のものにするために!」

この魔女はなんと自分がかんぺきな魔女になるために、いろいろな人からたくさんのものをうばうわるい魔女でした。

「ま、まゆお姉さんを元にもどしてほしいんですけど……!」

「そうだ、まゆ姉さんを元にもどせ……!」

2人は魔女にぐいっと近づきます。

しかし、魔女がつえをくいっとふると、2人の手のとどかないところまで飛び上がりました。

「ちーっひっひ! ここまできたらとどかないでしょう!」

「くっ……!」

2人がどれだけ手をのばしても、どれだけはねても、魔女にはとどきません。

「まゆ姉さんをもどせええええぇぇっ!!!」

しょうこお姫さまが全力でさけびますが、魔女は耳をふさぐばかりで、何も答えません。

「それでは、もうここには用はないので……バイバイ♪」

魔女はもういちどつえをふり、そのまま外へととんでしまいました。

「ど、どうしましょう……」

魔女がいなくなってしずかになった部屋に、ののお姫さまの声がひびきます。

「……ごめんなさい、まゆがもっとしっかりしていれば」

繭の中からちいさく声が聞こえました。

2人のお姫さまはその声をきいてあわてます

「ち、ちがう……わるいのは、あの魔女だ」

「そうですけど……まゆお姉さんは何もわるくないんですけど……!」

そう、わるいのはぜんぶあの魔女なのです。

2人は、まゆお姫さまにかなしそうな顔をしてほしくはありませんでした。

「それより……まゆお姉さん、だいじょうぶですか?」

「はい……いまのところは……」

「でも……まゆからいろいろとられるなら……いつまでだいじょうぶかは……」

「!」

「は、はやくまゆ姉さんをたすけないと……!」

今は無事でもいつまゆお姫さまがたおれてしまうかわからず、早くもどさなきゃという気持ちが強くなります。

しかし、しょうこお姫さまも、ののお姫さまも、まゆお姫さまも、どうしたら元にもどれるのかわかりません。

どうしたらいいか、3人はうんうんと考えます。

「……あ」

ののお姫さまが口を開きました。

「あの……私が読む本だと、魔女の魔法とかのろいって、だいたい王子さまとか、好きな人とか、運命の人によってとかれるものなので……」

「もしかして、この魔法も……って思ったんですけど」

ののお姫さまは本をよむのが好きで、いろいろな本をよんでいます。

だから、そういう考えがうかんできたのでしょう。

「……どうでしょうか?」

「わからん……」

「あう……そうですよね……」

そう、いくら考えても、答えは出てこないのです。

答えを知っているはずの魔女はもういないのですから。

「……でも、何もしないよりはいいかもしれない」

しょうこお姫さまもそれがわかっていました。

だからこそ、そう答えました。

もちろん、まゆお姫さまもわかっていたので、何も言いません。

「……王子さま……好きな人……運命の人……」

「……あの人だったら」

繭の中から声がきこえます。

「あの人って……まゆお姉さんがたまに話す……?」

「……そうですね。何回か話したかもしれません」

「まゆの気になる人はとなりの国の王子さま……」

すこしむかしに、たまたま近くの森でさんぽをしていたまゆお姫さまは、遊びにきていた王子さまと出会っていました。

そのときに少しお話しただけですが、わかれたあとも王子さまのことをずっとかんがえていました。

それだけまゆお姫さまは王子さまが気になっていたのです

「あの人が運命の人だったらいいなって……いつも思っています」

「じゃあ……となりの国に行って、王子さまをつれてくるな……フヒ」

まゆお姫さまのために、しょうこお姫さまとののお姫さまはさっそくとなりの国へとむかいました。

野原をこえて。

森をこえて。

山をこえて。

となりの国へついた二人は、さっそく王子さまに会いに行きました。

「王子さま、まゆお姉さんをたすけてください」

「王子さま、まゆ姉さんをたすけてください」

二人は王子さまに会うなりそう言いました。

こまったような顔をする王子さまに二人はいままでのことを話します。

その話をうんうんとうなづきながら、王子さまはきいてくれていました。

そして、話がおわったあと。

「わかりました。私でよければ」

と、王子さまはそう答えました。

王子さまをつれて3人は来た道をもどります。

山をこえて。

森をこえて。

野原をこえて。

「まゆお姉さん、もどりました……!」

3人は白い繭のところにむかいます。

「おかえりなさい」

繭の中から声が聞こえました。

どうやら、まだまゆお姫さまは無事なようです。

「……この中にまゆ姫さまがいるんですか?」

王子さまが尋ねます。

「あ、はい……この中に……フヒ」

しょうこお姫様が答えると、王子さまは白い繭にさらに近づきました。

「こんにちは、まゆ姫さま」

「……その声は王子さまですか?」

「はい。お久しぶりですね」

「覚えてくれていたんですか……?」

「ええ。あなたとの会話は楽しかったので」

「わぁ……嬉しい……♪」

「あなたとはなれたあとも、あなたのことがあたまからはなれませんでした」

「うふ……まゆも同じです……」

「こうして、またあなたに会えて本当にうれしい」

「……でも、顔が見えないことがかなしい」

「……どうかすがたを見せてくれませんか、まゆお姫さま」

そういって、王子さまは繭にキスをしました。

すると、繭にヒビがはいり、われ……中からまゆお姫さまがあらわれました。

「わ……われた……!」

「やった……!」

しょうこお姫さまとののお姫さまはバンザイをし、だき合ってよろこびました。

「……やはり、あなたはきれいな顔をしていますね」

「王子さまも、とってもすてきなお顔……ううん、お顔だけじゃなくて……ぜんぶ……」

「あなたこそ。私がなんども夢に見たすがたよりもとてもうつくしい……」

まゆお姫さまと王子さまはおたがいの姿をじっと見つめあっています。

「じつは、あなたにずっとつたえたかったことがあるんです」

王子さまはまゆお姫さまの手をぎゅっと握り、話しはじめます。

「私は、ずっとあなたのことがあたまからはなれませんでした」

「そして今日、もういちどあなたを見て……私は確信しました。きっとあなたこそが私の運命の人なのだと」

「……まゆ姫さま。どうか私の妻となってくれませんか?」

「……ええ」

「もちろん……!」

まゆお姫さまはにぎられた手を強くにぎりかえしてこたえました。

こうして、王子さまとまゆお姫さまは夫婦になったのでした。

それからのお話。

その後、魔女はこの国に来ることはなく、このちいさな国は魔女がくる前となにもかわらずにいました。

みんながみんな大好きでつながって、幸せにくらしています。

ただ、一つだけ、前と違うのは――。

「王子さま、そろそろごはんの時間ですよ」

「ああ、ありがとう。まゆ姫さま」

――住人が一人増えました。






めでたしめでたし。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まゆ「……どうでしょうか?」

輝子「フヒ……次、絵本を3人で作るって企画があったから……」

乃々「3人で頑張って作ったんですけど……」

モバP「……」

乃々「あの……あ、あまり読み込まないでほしいんですけど……」

乃々「恥ずかしくて……死ぬ……」

モバP「いや、読んでほしいっていたのはそっちだからな」

乃々「あうぅ……そうなんですけどぉ……」

モバP「……うん」

モバP「気になるところがないって言ったら嘘になるが……俺やちひろさんがモデルとして出ているところとか」

モバP「絵とかまんま俺たちだしな……」

まゆ「うふ……頑張って描きました♪」

モバP「……だが、企画として提出するなら問題はないだろう」

モバP「一介の事務員やプロデューサーを覚えてるようなやつもいないはずだからな」

まゆ「そうですか……よかった」

ちひろ「ふふっ、みんなかわいくて、素敵ですよ♪」

乃々「……あ、ありがとう……ございます……」

モバP「ただ、悪役の魔女にはもう少し制裁かなんかがほしかったかもな」

まゆ「あ……」

輝子「確かに……今のままだと、悪いやつなのに何も報いを受けてないからな」

ちひろ「……私がモデルなだけに少し複雑ではありますけど、確かにそうなんですよね」

まゆ「う……勝手にモデルにしちゃってすいません」

輝子「なんか想像したら似合ってて……フヒ」

まゆ「はい……すごいしっくり来てて……」

ちひろ「……」

ちひろ「……ち」

ちひろ「ちーっひっひっひ!」

まゆ「!」

輝子「す、すごい……本物だ……!」

ちひろ「最初から私は本物です!」





おしまい

唐突に絵本のようなお話が作りたくなったので。
でも、絵がかけなかった非力な私を許してくれ……。

誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。

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