【モバマス】そのシンデレラの靴音は【佐藤心】 (68)

佐藤心さん誕生日SS
書き溜めあり
地の文

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カツ、コツ、と少女趣味な赤い、リボンのあしらわれた靴が寂しい音を立てる

都会の喧騒のなかであれば聞き取ることは難しいだろう

しかしその持ち主が今歩くのは大通りを外れた寂れた小道

通る人は他にはおらず、ビルの空調のゴウンゴウンという重音が響くだけである

その女性は靴だけでなく全身をーー服も、鞄も、髪飾りまでもーー靴のような少女趣味なもので着飾っており、場にそぐわないというのが傍目から見た感想になるだろう

合っていないのは場所だけではない。こう言っては悪いが、女性の年齢から考えると少女趣味はいささか不相応、見る人が見れば眉をひそめるものだ

そのようなことを気にしたそぶりはなく女性は歩を進めていく
目指すところは決まっているのか足取りに迷いはない

一つのビルの下で立ち止まると手元のファイルーーそれだけはこの路地に合うようなーーから紙束を取り出し、目を通す

確認が取れたのだろうか。ビルの無骨な金属製の扉に手をかけると中へと引き寄せられるように入っていった

エレベーター前でもう一度ファイルを確認し、3階のボタンをゆっくりと爪の先まで色とりどりに飾られた指でそっと触れる
数度、逡巡した様子を見せた後に意を決し強く押す

彼女の決意とは無関係に機械の箱はチン、と軽い音を立てて扉を開いた
その中に乗り込むと、軽く、深呼吸。最後に完璧に整っている髪を更に撫でつけ、先に続く廊下を歩んでいく

「芸能事務所:シンデレラプロジェクト」

ただガラスにそう書いてある薄い扉。しかし彼女にとってはここが引き返し、日常に戻る最後の壁だろう

ゴクリ、と唾を呑む。しかしここで立ち止まるようならもとより長野から訪れることはないだろう

取っ手に手を掛け、開け放つと一言

「佐藤心こと、しゅがーはぁとだよ☆みんなのアイドル目指して頑張ります☆」

そう型破りな言葉を事務所内へ投げかける

その声に一瞬だけビクリと肩を震わせ、振り向いて応じるのは1人の冴えない青年

「ああ、佐藤心さんですね。こんにちは、話は社長より聞いてます。担当プロデューサーになるPです」

あくまで事務的、人によれば冷たいとすら感じるような返答…その程度では佐藤心は止まらない

「はぁ~い♪よろしくね☆プロデューサー。しゅがーはぁとって呼んでね☆」

しゅがーはぁと。砂糖な心。自分のアイドルとしての決め台詞をそんな中でも主張する

「はぁとさんですね。分かりました。これからよろしくお願いします」

面食らった様子もなく青年は立ち上がるとそうバカ真面目に告げて頭を下げる
社会人としては確かに正しいだろう
女性も慌てて頭を下げる
型破りではあっても常識くらいは知っている。そもそも自分の方がおかしいのだ
いくらアイドルのイメージとしてキャラ付けをしているとしても、それは初対面の、これから同僚となる人の前できちんとした挨拶をしない理由にはならないだろう

「あ、こちらこそよろしくお願いします。はぁとをトップまでプロデュースしてね☆しろよ!」

……挨拶をしない理由では無くても、自分のキャラを曲げる理由にもならないという考えか

プロデューサーである男性はうっすらと笑い、当然です。はぁとさん
などと本気か、面白がってかしゅがーはぁとを認める

「うちは弱小事務所ですが、女性をシンデレラにすることが目的です。トップまで魔法使いが手伝いますよ」

そんなおどけたことまで言ってのける
ただ、その女性からすればそれは救いであった

彼女がアイドルを目指す…その夢はかつて志し、そして諦めたものである
自身の年齢も相まって不安を背負いこんでいた

その彼女を肯定し、トップまで連れて行くと言ってくれたのだ

女性は手に持ったファイルから何枚かの書類を取り出すとその場で躊躇いを上書きするかのように勢いよく、ポンッと判を押し、プロデューサーへと手渡した

ここから彼女、しゅがーはぁとのアイドルとしての人生が始まることを知らせたその快活な音は彼女の耳から離れることはないだろう

それからの彼女はビル群から少し外れた事務所の小さな寮で生活することになった

朝起き、路地を抜け、事務所へ向かい、その上の階でレッスンを受ける
ひたすらその繰り返し

こうなることは知っていた
いきなり舞台に立てるわけもない、突然テレビのオファーが来るわけでもない
まずは下積みやレッスン。そこから結果がついてくる

しかしそれを理解し、納得する女性は少ない

日々のハードなレッスン。一向に受からないオーディション。先輩の荷物持ち程度しか出来ない営業。
それらに嫌気がさし抜けていくものが大半である

佐藤心は数少ない理解あるものだった
自分の実力を知っていた…というより身の程をわきまえていたという方が正しいだろう
必要なことは努力と忍耐。
そういうことを、まだ少ないであろう社会経験から学んでいたし、アイドルを目指す厳しさというものも身をもって知っていた

今日も彼女は事務所を訪れる
いつものようにすでにデスクについているプロデューサーや事務員と挨拶を交わす

事務所奥の個人ロッカーに化粧道具や裁縫道具の入った荷物を置いて備え付けられた階段を上がっていく

「おはようございまーす☆今日もよろしく♪」
トレーナーや先輩に挨拶をしていく

それが年下だろうと自分へのけじめとしてか頭を下げていく
アイドルとして必要なこと。それならばしゅがーはぁとは佐藤心を殺せるのだろう


レッスンにひたすら打ち込む
右、右、左、ターンして手を振る…一曲踊れるようになれば簡単なミニライブに出られる
それを目標に、トレーナーさんに自主レッスンまで申し出ていた

「心さん。レッスンはたしかに大切ですけどそれ以上に体が一番ですからね?」

何度も釘を刺される
1日の運動量で言えば大したことではないだろう

しかし彼女は詰め込みすぎている
彼女の運動靴の裏は数日でうっすらとすり減り、レッスン着にはほつれが見られる

その程度を見抜けないでプロのトレーナーをやっているわけではない

「分かってますってトレーナーさん☆はぁとはきっちり頑張ります☆」

トレーナーと先輩が引き上げた後にも1人残り鏡の前で振り付けを確認する

ふと、時計を見て水分を取ろうと座りこむと、縫い付けられたようにそこから膝が動かない
息が上がり、手を後ろにつく

体からこぼれ落ち続ける汗もそのままに頭の中はダンスのイメージを思い描き続ける

「お疲れ様です、はぁとさん。お水とタオルどうぞ」

上から声をかけられる
覗き込んでいたのは自身のプロデューサー。手に持ったペットボトルとタオルは察するに彼女に対してのものだろう

「お、サンキュ。プロデューサー」

受け取り、空になった自分のボトルを差し出す
青年は嫌な顔一つせずに受け取る
ここ数日のお約束ごとになっていること…この後プロデューサーが、がんばってください。とだけ声をかけていくことが日課だが、今日だけは違った

「はぁとさん。ダンスと歌は完成しそうですか?」

そんなことを探るように聞いてきた
まだ詰めなければいけない部分もある。だが大筋で言えば覚えたと言ってもいいだろう
わずか数日のうちに形にまで持っていった彼女の努力は想像に余りある

「もちのロンだよー☆ハートバッチリ☆」

軽薄そうな返事ではあるがプロデューサーもそのことは分かっていた
だからこそ話を続ける
もし彼女がダメだと判断していればいつものように疲れを労って励ますだけであっただろうが違ったのだ

「…今月末にデパートでのミニライブに出番があります。前座ではありますが第一歩として用意しました。どうでしょうか?」

迷いはない。彼女に立ち止まる理由はないのだ

「はぁとの最初のライブだね☆ばっちりファン増やしてやるから頼むよ☆」

青年はほっと一息いれてはにかむ
新人に1ヶ月やそこいらで持ってくる仕事ではない
このプレッシャーが心を潰さなければいい、と思っていたが心配は無さそうだ

はぁとは挑戦的な目を壁へと向けると、ぼそりと

「アイドルしゅがーはぁとの第一歩だよね…うん。はぁとはアイドルだから…」

と呟く
彼女の言うことはプロデューサーにとってはよく聞くセリフである
もっともそのセリフ自体は彼女ではなく他のアイドル…いや、アイドル候補生から聞くものだ

夢を叶える最初の一歩として言うセリフ

「はい。アイドルになったんです。ここから頑張りましょう」

彼女のセリフの重さが、少女達とは異なったものだと気が付いてはいなかったのだろう
彼女がどんな思いでアイドルをしているか
この青年が分かっていれば何か変わったのだろうか

翌日にライブを控えた夜の寮

佐藤心は灯りを消した自室の隅に座り込んでいた
練習はした。疲れもとった。怪我はしてない。コンディションは完璧だ。

だが恐ろしい

明るい色彩とポップな調度の並んだ部屋の中でただ一点、暗く気を落とさせるのは自分自身
ステージの上は想像するだけでワクワクする。歓声を思い描くだけで夢だったアイドルになれた気がする。

だがそれだけだ

アイドルになるという夢…それは人から咎められても仕方のないものだ


昔から我が道を征く女だった

学生の間は憧れたアイドルを目指し、自らの趣味である裁縫を活かして衣装を作り、役に入り込み、何度もオーディションを受けていた

しかしそれも現実を見る年になった時、アイドルになることが夢とは後ろ指を刺される対象であった

心無い言葉を浴びせられることもあった。いや、むしろ友人は気を使ってくれていたのだろう
「そろそろ本気で将来考えないと」「心も受験なり就職なりやらないとまずくない?」

当然の心配だ。夢は夢であり叶わないことが普通
夢を持つのは大切でもそれを追いかけるのは別の話

親にも諭され、アイドルを目指す少女。佐藤心はそこで一度、終わってしまった

だから。アイドルを目指すことは周りから抑えられ、弾かれ、否定される
そんな恐怖が付き纏っていた

アイドルとしての初仕事。認めてくれる人はいるのだろうか

部屋の窓から僅かに差し込む外の光が部屋を薄ぼんやりと照らし始めても考えは纏まらなかった

「おっはよープロデューサー☆初めてのライブ!がんばろーね☆」

デパートの裏、従業員用の待合室で努めて明るくプロデューサーにそう言って挨拶する
折りたたみ式のイスが2脚、テーブルが1つの簡素な部屋の中でプロデューサーは資料のチェックをしていた

「おはようございます、はぁとさん。最後の確認をしておきましょう」

スケジュールのチェックとして確認をとってくる。彼女はしっかり覚えているが、それでもだ

司会の方が挨拶をしたら出て行く。前口上と挨拶をしたら練習通り踊る。終わったら舞台袖に引っ込む。

それだけだが何度も反芻した
それでも緊張は溶けない

時計が時間を刻むのと同じく心音が頭の中に響いている
いくら水分を口に含んでも端から消えて、乾いていく
不安で全身が潰されそうになり、手を握りしめ歯をくいしばる

「…心さん、心配しないでください。あなたはアイドルになったんです」

プロデューサーの一言で、ふと力が抜ける
顔を上げると魔法使いが力強い目で覗き込んできている
その目線はしっかりと彼女の目を捉えていて奥底まで覗き込むよう

「アイドルとしての舞台は緊張するのは分かりますが努力は私が保証します。ドンと構えて行ってきてください」

そう、背中を押される
アイドルとしてのはぁとを一番よく見てくれている人が保証をしてくれている
魔法使いがシンデレラを励ましてくれている

司会の呼び声がかかり、立ち上がって歩き出す彼女の足取りは軽い。ステージに立つとお決まりの台詞もスラスラと出てきた

「みんなのアイドル!しゅがーはぁとだよ☆はぁとって呼んでね!呼べよ!」

小さくはあるが拍手が起こる

両脇のスピーカーからよく知った曲が流れ出す

体は重さを忘れたように動き、手足の先まで普段より意識が向く、心に羽が生え、観客の視線を釘付けにする

ただ、ただ、それだけが心地よく充足感に満ちていた

練習を重ねてきた中でも最高のパフォーマンスが終わった
今の彼女の持つ全てを出したと言えるだろう

舞台袖に引いても歓声が沸いていた
しゅがーはぁとの名前を覚えてくれた人もいるに違いない


そして主役の名前が呼ばれると、その歓声は一層大きくなり拍手が飛び交った

「お疲れ様でした、心さん。最高でしたよ」
短くそう告げる

付き合いはまだ少ないが、彼は不器用ながらも彼女を認めていた

「あったりまえだろ☆はぁとはアイドルだっての!…ありがと、プロデューサー」

付き合いはまだ少ないが、彼女は不器用ながら彼を信頼していた

「でも…やっぱり主役には敵わなかったな☆」
高望みかもしれない
それでも口にせずにはいられない
彼女の目標は、トップ。ただその一点だから

「そこまでは、まだですね。でもいずれは」

「なあプロデューサー。お祝い代わりに今晩呑みに行かない?」

彼を知りたくてそう申し出る
この後、予定がないことは彼女も彼も知っている
プロデューサーの行きつけとも言える店へと案内させられる


話すことは今日のお祝い。将来。そして、心がアイドルを目指した苦しみも吐露する

青年はそれを受け止める

自分の夢も話し出す
寂れた居酒屋ではあるがそこには夢を語らう2人

その2人の周りは、きっと魔法にかけられたように輝いていた

それからは順調に仕事が増えていった
最初のように公演での出番は着々と増えていき、テレビでも濃いキャラが受けたのかだんだんと一般にまで広がっていった

佐藤心は、しゅがーはぁとは、1年過ぎる頃には名実共にアイドルになっていった

「次の仕事はこちらです。心さん」
「お、ありがとプロデューサー☆」

仕事を取ってきてはそれをこなし、合間にレッスンを受ける
そのルーチンも安定してきた
そんな中持ってきた1つの仕事

「和装のお仕事?こういうのは初めてじゃない?」

普段の自分がもらっている仕事とは一風変わった撮影
プロデューサーの行動に口をついて出たセリフ

そんなことにまで律儀な彼は正直に答えてくれる

「心さんが以前結婚するなら和風が良いと言っていたので。アイドルは結婚とは遠いですが気分だけでもと」

やはり彼は彼女をよく知り、気がきくようだ

わかりやすく目を輝かせるアイドル
それを見て胸をなでおろすプロデューサー。少しプライベートに踏み込み過ぎたかと思ったが問題無かったか

2人の距離はそれだけ縮んでいた

撮影は順調に進んでいった
慣れない和服での撮影に戸惑うこともあったが彼女は今では十分にプロだ
問題など何もない。普段の撮影と環境が変わろうとも普 いつも通りアイドルらしく愛嬌を振りまく

「和風なはぁともスウィーティー♪」

そんな言葉と共に撮影は締めくくられた

本当だったらこれで終わりだろう
しかし、撮影用の着物を脱がず、メイクもそのままに

「なあプロデューサー、ちょっと付き合えよ☆気分だけだからさ☆」

そう彼女は告げるのだった

撮影場所の庭、その中に敷かれた石を下駄で踏んでいく
草が足を舐め、鹿おどしの音が耳をくすぐる
ふと彼女は小物の和傘から振り向いてプロデューサーを見つめる
今日の撮影は特に良かったと、楽しんでやることが出来たと、そう伝えると
彼はその言葉に顔を伏せ、ただ一言

「こちらこそ」

とだけ返した

事務所に帰り、明日の予定をチェックする
そんなことが必要になるほどには最近のしゅがーはぁとのスケジュールはパンパンだった

日が落ち、あたりのビル群の明かりがポツポツと消えていく中2人はいくつかの写真が飾られたデスクに向かい合わせに座り込んで話していた

話が途切れた時に
ぽつり、と魔法使いが呟いた

「心さん。その…普通の女性として結婚するつもりはありませんか?」

その言葉に佐藤心は固まる
慎重に、慎重に言葉を紡ぎ出す

「急に、なんでかな?」

声が上ずる
動揺が隠せない

「いえ、心さんももうアイドルとして十分一流です。普通の女性としての幸せを求めて欲しくて」

胸が締め付けられる
彼は私の夢を知っているはずだ

「…はぁとはトップを目指してるんだけど。プロデューサーはそうじゃなかった?」

冷ややかな思いが胸へと落ちてくる
信用してた。夢を分かってくれていた

「いえ…私も本気です…ただ…すみません。余計なことを言いました」

責める言葉を飲み込む
悪気があったわけじゃない
そうは分かっていても納得することが彼女にはできそうに無かった
やっとの思いで絞り出したコトバ

「ごめんプロデューサー。ちょっとだけ1人にして」

こんな時まで察しのいい彼は立ち上がると廊下へと進んでいった

バタリと、扉が閉まると同時にため息がこぼれる
別に怒っているわけではない。気を悪くしたわけでもない
ただ少し、考えを整理したい

デスクの上の写真立てを撫でる
初めてのライブの写真、初めてのテレビ出演の写真、宣伝用の写真
それぞれがプロデューサーとの足跡だった

それらをないがしろにするような
そんなプロデューサーの発言
…プロデューサーの想いには気がついていないわけじゃない
彼女だっていつまでも子供ではないのだ
ただ、それ以上に彼女はアイドルだった


乱暴にプロデューサーの椅子に腰掛ける
キャスター付きの回転椅子は窓際まで転がっていき、光を背もたれに落としていた
慈しむように撫でると光は揺らぎ影が伸びる

結局のところ。一番近いあの人に今のしゅがーはぁとの一番が理解されていなかったことが、ただ残念なのだ

…こんなめんどくさい考えを持つ自分も嫌になる
私の答えも決まっているのに


椅子にもたれかかり、少し堪える
…しゅがーはぁとはアイドルだと

「心さん、これどうぞ」

そう言って肩に何か温かいものが触れる
顔を伏せたまま、その事務所前の自販機でおなじみの缶コーヒーを受け取る
クイ、と飲み

「スウィーティーじゃない」

などと、口先をとがらせる

見上げると困ったような、緊張して評価を待つような表情を貼り付けたプロデューサーが佇んでいた
彼女は少しはにかむと、魔法使いに寄りかかり

「はぁとはシンデレラになりたいからここにいるの…だから、よろしくね」

そう、もう一度告げて背を向ける
…そこに本心を付け加えて

「だからその後に、もう一度聞かせて」

そう言ってシンデレラは振り向くと
明日からもよろしくね、と言って一歩寄る影とこちらこそと、手を出す影は1つに重なった

総選挙

全事務所のアイドルの中で行われる年に一度の一大イベント
そこでの勝者が、シンデレラと呼ばれガラスの靴が与えられる

「心さん。授賞式です」
そこの舞台の裏にいる2人
泣き腫らした後をメイクで覆った灰被りと手助けをしてきた魔法使い

「ごめん、ちょっと待って☆メイクまた崩れそう」

そんな風に軽口を叩くが未だに夢見心地か何度も手の甲を抓っている

「そんなに泣かないでくださいって。シンデレラは笑顔でいなきゃ」

そんなことを言う彼も、落ち着きなく手首の時計を眺めたりテーブルの上の台本をパラパラとめくっている

彼だって隣で彼女を見てきたんだ
このくらいは許されてしかるべきだろう

「さ、シンデレラさん。舞台での挨拶があるから、行ってきてください」

心は最後にもう一度だけ部屋に備え付けられた鏡を見ると頬にパシンと手を当てる

「よーし☆それじゃ、アイドルしゅがーはぁとの一番の晴れ舞台、しっかり見ててねプロデューサー☆」

その手をプロデューサーの手と合わせ、シンデレラは1人舞踏会へと進んでいく

カツ、コツ、とガラスの靴が事務所の中で軽やかな旋律を奏でる
例えどのような人混みの中であろうとあらゆる人がその女性に意識を向けるだろう
しかしシンデレラが歩くのはレッドカーペットではなく事務所の冷たい床
彼女を見るファンはおらずただそこには2人だけ

女性は授賞式にでたその格好のままーー派手なドレスに豪奢な首飾り、煌めくティアラーーそのままで皺になるのも気にせず安物の椅子に腰掛けている
その身につけたものの価値をよく知るものが見れば声を荒げるだろう

それでもーーシンデレラにはそこが一番心地よく、理解者のいる場所だ

私の夢は叶えられた
それならここにいるのはシンデレラではなく、ただの佐藤心。
だから、言うことは二つだけ

プロデューサーが叶えてくれた少女の夢

「ありがとう、プロデューサー☆」

プロデューサーが叶えてくれる女性の夢

「ねえ、もう一度、あの時言おうとしたこと、お願い…今ならはぁと以外は聞いてないから」

彼女はしゅがーはぁとの終わりに懐かしい判の音を聞いた

アイドルを始めた時とは全く別の書類。それに判を押した時、しゅがーはぁととも、佐藤心とも別れを告げることになった

耳に残るその音はーーこれからを生きるシンデレラのーー新しい心の始まりになったのだろう

終わりです

総選挙、佐藤心に投票してくださった方。ありがとうございました
心さんの誕生日に駄文を書かせて貰いましたが心さんの魅力の一片でも感じ取っていただけると幸いです

次回の総選挙では是非心さんをシンデレラに導くお力添えをお願いします

html化依頼出してきます


良きしゅがはさんだった

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