チンピラ「何でヤクザなんかになっちまったんだろう…」 (9)

俺は地元の弱小ヤクザ組織に所属する末端組員の18歳だ。喧嘩で負けた事がない俺ならこの世界でのし上がれると
思っていたがそれはあまりにも甘すぎる考えだったのだ。高校へも進学せずに親と縁を切ってまでヤクザになって3年が
経つが未だに末端で借金の取り立てや風俗店や飲食店の用心棒といった力仕事しか出来ずに出世街道からは程遠い。

兄貴「よう!俺!例の店から取り立ててきたか?」

チンピラ「はい…全部取り立ててきました。」

兄貴「そうか…あとで親父の所へ持って行ってくれ…親父も喜ぶはずだ。」

チンピラ「兄貴、俺いつになったら出世できるんすかね?もう3年っすよ?」

兄貴「切った張ったの時代はもう終わったんだ…俺らみたいな金の稼げない連中は大きな功績をあげないと早々出世なんかできない。」

チンピラ「確かにそうっすね…今じゃウチのシノギの6割ぐらいが株と不動産関係だって聞きましたしね。」

兄貴「不動産って言ったって、お前あれだぞ?地上げじゃないぞ?土地転がしやらマンションビジネスだ。」

チンピラ「しっかし、最近のヤクザってよっぽどカタギよりカタギやってんじゃないっすかね?」



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兄貴「まぁあれさ、チャンスってのはよぉいつか降ってくるもんだ。チャンスに成功しない人間はいても生きてて一度もチャンスが訪れない人間はいない。」

チンピラ「兄貴、かっけーこと言いますね!小説家でも目指したらどうっすか?」

兄貴「バカ野郎っ、小学校中退の俺がんなもんになれるかよ。」

チンピラ「学歴では俺の方が勝ってるんすね!」

兄貴「さて…そろそろ親父の所へ戻るか…」

チンピラ「そうっすね!あんまり遅くなるとドヤされるんで!」

組事務所

組長「チンピラ、兄貴、取り立てご苦労だった!」

チンピラ「いいえっ!これが自分の仕事なので!」

兄貴「仕事ってお前…」

組長「チンピラ…お前最近、豪い取り立ててるらしいな。お前にならあの仕事を任せてもいいかもしれんな。」

兄貴「あの仕事…?」

チンピラ「なんすか?それ?」

組長「兄貴、少し席をはずしてもらっていいか?」

兄貴「はっ、はい…」

組長「最近、ウチをやたらと目の敵にしている弁護士がいるんだが…そいつをちょいと痛めつけてほしい。」

チンピラ「ボコボコにすればいいってことですか?」

組長「奴は頭が切れる。下手に暴力で向かえば法で対処されるのが関の山だ…」

チンピラ「じゃあどうすればいいんですか?」

組長「その弁護士には女子大生の娘がいる…そいつをお前の女にしろ。」

チンピラ「それだけでいいんですか?」

組長「テレビに出てるお偉い弁護士の娘がヤクザと付き合ってるとなればとんでもないスキャンダルだ…ましてや奴は政治家を目指している。」

チンピラ「なるほどそれをネタに強請るって事ですね?」

組長「そうだ…お前の女にさえすればあとはこっちがどうにでも出来る。」

チンピラ「ですが…何で俺に?」

組長「ワシはお前を気に入っている。この件が上手くいけば幹部候補生に推してやってもいいとも思っている。」

チンピラ「ってな訳なんです兄貴…俺、この仕事引き受けていいんすかね?」

兄貴「自分の事は自分で決めろ…」

チンピラ「何か冷たくないっすか?」

兄貴「そんな事はない。」

チンピラ「でも俺…正直やりたくないんすよね…なんか性に合わないっーか」

兄貴「ひとつだけ教えといてやる。この時代、仁義なんて捨てろ。それにお前が断ってもほかの奴がやるだけだ。代わりはいくらでもいる。」

チンピラ「んじゃ俺やります!」

兄貴「…そうか頑張れよ!」

それから俺はターゲットの女に近づいて肉体関係も結んで恋人になった。

女子大生「ねぇ?大学辞めて結婚してもいい?」

チンピラ「バカ言うなよ…俺はまだチンピラだお前を養っていける余裕はないぞ」

女子大生「でもチンピラといるためなら私、風俗だっていいよ?」

チンピラ「それよりさ…今度、お前の親父さんに会わせてくれないか?」

女子大生「なんで?」

チンピラ「いやっ、もう付き合って3ヶ月だろう?挨拶をしてもおかしくないだろう?」

女子大生「パパは絶対に会わないと思うよ?」

チンピラ「娘の頼みなら聞いてくれるんじゃないのか?」

女子大生「っていうかチンピラってパパを強請る事が目的で私に近づいたんでしょ?」

チンピラ「はっ!?何言ってんだよお前!」

チンピラ「何時から気づいてたんだ?」

女子大生「最初から気づいてたわよ!」

チンピラ「じゃあどうして…?言わなかったんだ?」

女子大生「最初は逆に少し遊んでやろうと思っていたの…でも次第にアンタの事が好きになったの…」

チンピラ「…」

女子大生「私を利用するなら利用していいよ?」

チンピラ「いや…お前と出会って分かった。やっぱり俺には人を利用したり蹴落としてのし上がる事なんて出来ねぇ…この件…降りさせてもらう様に言う」

女子大生「そんな事したらただじゃ済まないはずよ?」

チンピラ「やっぱよぉ…俺は俺のやり方でのし上がる…何年かかっても…」

若頭「その必要はねぇ…お前さんにはここで死んでもらう。」

チンピラ「頭ぁ!?どういう事ですか?」

若頭「元からこうなる予定だったんだ。」



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