悪魔ほむら「さようなら」 (65)

※叛逆の物語のネタバレ注

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――教室、昼休み

悪魔ほむら「……ふぅ」

さやか「あいつまたこっち見てる。気持ち悪い」

まどか「そ、そんな言い方ってないよ。さやかちゃん」

さやか「ごめんまどか。なんか気に入らないんだよね。あいつ」

まどか「……行こ、さやかちゃん」

さやか「そうだね」

ガラッ、バタン

悪魔ほむら(……どうしたものかしら)

キーンコーンカーンコーン……

さやか「あんた!」

バンッ

悪魔ほむら「何?」

さやか「ちらちらちらちら!
    鬱陶しいのよ! やめてよね!」

まどか「さやかちゃんやめて。帰ろうよぅ」

悪魔ほむら「ごめんなさい」
さやか「……もう、腹立つっ」

ガラッバンッ

まどか「あっ、さやかちゃん待ってよぉ!」

ガラガラ……パタン

悪魔ほむら(リボン、してないのね)

――崖の上

悪魔ほむら「出てきなさい!」

QB「なんだい?」

悪魔ほむら「首尾はどう?」

QB「相変わらずかな」

悪魔ほむら「そう」

QB「……また行くのかい?」

悪魔ほむら「当然よ」バサ

ひゅうぅ……

QB「……帰りたい」

さやか「何なのよあの悲劇のヒロインみたいな目!
    気に入らない!」

まどか「……ほむらちゃん、悩んでるように見えた」

さやか「へぇ。気になるんだ」

まどか「そう、なのかな
    ほむらちゃんを見るとこう……」

さやか「まどかに心配させるとは隅に置けない女ですなぁ」にやにや

まどか「そ、そんなんじゃないって!」ふるふる

さやか「……あの女は駄目だよ。まどか」

まどか「えっ?」

さやか「あっいやぁ、なんでもないなんでもない
    それじゃっ!」タッタッタ

まどか「さやかちゃん……」

さやか「あほらし。なんであんな女が気になるんだろ」

悪魔ほむら「“あんな女”とは心外ね」バサ、すとんっ

さやか「あ、あんたその姿……っ!」くらっ

悪魔ほむら「大丈夫? 手貸してあげましょうか?」

さやか「……結構よ。悪魔!」バシャーンッ

悪魔ほむら「そうでしょうね」

さやか「あんた、どういうつもり?」

悪魔ほむら「実をいうと心境の変化があったの
      だから、貴女の邪魔もまどかの邪魔もしないことにした」

さやか「白々しい」

悪魔ほむら「付いて来て。貴女にも関わることだと思うから」

――崖の上

さやか「あたしを突き落とすつもり?」

悪魔ほむら「貴女はまどかの親友。そんな酷いことしないわ
でもまぁ、最もね」

ぱんっ

偽街の子供達「わーい!」

悪魔ほむら「わたしが良いっていうまでこの子たちは離さない」

さやか「……」

がらっぱらぱら

さやか「な、なにあれ……!」

悪魔ほむら「説明してやりなさい。インキュベーター」

QB「はい。やあ、さやか」

さやか「……恐ろしい女」

QB「……あれはね、理が排出した呪いさ」

さやか「あんなに呪いが溜まるんだ」

QB「溜まる、という表現は少し違う
なにかを求めているようだし、渇望しているが正しい」

さやか「まどかか……」

QB「ま、どか?
あっあああ! ごめんなさい! ごめんなさい!」

さやか「えっ、えっ……?」わたわた

悪魔ほむら「……美樹さやか。こいつの前でその名を言ってはいけない
良いわね?」

ぱんっ!

QB「……どこまで喋ったかな?」

悪魔ほむら「呪いの話が終わったあたりかしら」

QB「そうか。じゃあ質疑応答だね」

さやか「……」ごくり

QB「質問はないのかな?」

さやか「……どうにかなるの? あれ」

QB「僕達だけじゃ、浄化しきれない域にまで達しているけど
最近は暁美ほむらが少しずつ汲み取ってくれているから落ち着いてはいる」

さやか「もし、もしもこの空間がなくなったらどうなるの?」

QB「あれは理に対しての不満が大半を占めている
だから真っ先に理に帰っていくだろう」

さやか「……なるほどね」

悪魔ほむら「もう良いわ」

偽街の子供達 ケタケタ

悪魔ほむら「離れなさい。忙しいの」

偽街の子供達「えーっ」

さやか「……どうしてわたしに教えたの?」

悪魔ほむら「疲れたから」

さやか「へぇ、珍しい」

悪魔ほむら「このまま自滅したら、今度はなにになるのかしら?」

さやか「……考えがないわけじゃない」

悪魔ほむら「そう」

さやか「あの程度の呪い浄化できなきゃ鞄持ちの名が廃るしねっ!」

ひゅうぅ……

さやか「う、おぉーっ!」

QB「……良かったのかい?」

悪魔ほむら「言って聞かせるより解り易いと思うの」

QB「へぇ」

悪魔ほむら「ねぇ。いい加減にしないと怒っちゃうから」

偽街の子供たち ケタケタ

――深淵

――モット愛情ガ欲シイ。モットモット。マダ足リナイ

さやか「なに、これ……体が、だるい」

恭介「仁美。今日の弁当は何かなぁ?」

仁美「ふふ、あなたの好物を用意したわ……楽しみにしてて」

さやか「……」

仁美「はい。上条君。あーん」

恭介「うーん。美味しいよ」もぐもぐ

さやか「なぁんだ。それだったらもう」

さやか「克服、してるから!」ぐさっ

バシャーン!

さやか「恭介が幸せならそれでいいじゃない!」

オクタヴィア「オオオッ!」

恭介「あれ? さやかじゃないか」

さやか「くっ……!」

恭介「どうしたんだい? 斬ってみなよ」

がしっ

さやか「あっ」

恭介「ずっとこうしたかったんだよね?
辛かった? 悲しかった? もう良いんだよ」

さやか「は、離せ。おまえは恭介なんかじゃない!」じたばた

恭介「ああ。さやか……こんなに傷ついて。血だらけじゃないか
君だって僕の大切な幼馴染みさ」ぎゅっ

さやか「くそ。くそっ! 騙されるもんか!」

オクタヴィア「オォォ……」すぅっ

恭介「……ずっとこうしたかった。そうだろう?」

さやか「くあ、力が、抜けて……っ」

恭介「サァ。キミモコレデ……」

バシュン、トスッ

――サビシイ……サビシイ……

さやか「あ、ああっ」

「掴まってて。暴れたら承知しないから」

――崖の上

バサバサ、すとんっ

さやか「……」ばたっ

悪魔ほむら「耐える所か、ほんの少しでも浄化してしまうとはね
凄いわ。美樹さやか」ぱちぱち

さやか「うぇっ」

悪魔ほむら「……刺激が強すぎたかしら」

さやか「はぁ、はぁ。あ、あんなのと戦ってたわけ?」

悪魔ほむら「わたしが見る幻惑は貴女のそれとは違う
だから、立ち向かうことが出来る」

さやか「……ちょっと。ほんの少しだけ。見直したかも」

悪魔ほむら「嬉しいわ。もう少し頑張れそう」

さやか「……また抱え込んでる。直ってないじゃん、全然」

悪魔ほむら「そう思うなら急ぐのね」すっ

さやか「……っ」

悪魔ほむら「大丈夫。もう引き裂く元気はないから」

QB「……へぇ」

ぱしっ

さやか「……魔法少女はあたしだけじゃない
杏子やマミさんに相談してみる」

悪魔ほむら「賢明ね」にこ

さやか「……それじゃ、また学校で」

悪魔ほむら「そうね。また」

QB「……」

悪魔ほむら「面白い話を聞いたって顔してるでしょう?」

QB「……」

悪魔ほむら「答えなさい」

QB「……否定はしない」

悪魔ほむら「安心して。貴方達のことも考えてるから」

ひゅうぅ……

QB ぷるぷる

――教室、昼休み

悪魔ほむら(何もかも中途半端。わたしらしい)

悪魔ほむら「はぁ……」

まどか「暁美さん。これ、やっぱり返すよ」すっ

悪魔ほむら「……そう」

さやか「……」

まどか「わたし、鹿目まどか」すっ

悪魔ほむら「暁美ほむらよ。よろしくね」すっ

まどか「ほむらちゃんか。なんだかカッコいいね!」

悪魔ほむら「燃え上がる感じ?」

まどか「そうそう! あっ、わたしはまどかでいいよ!」

悪魔ほむら「……鹿目まどかでいいかしら?」

まどか「長くない!?」

悪魔ほむら「それが良いのよ」

まどか「そ、そうなんだ。呼びやすいならいいよ」

悪魔ほむら「ええ。ありがとう」にこり

まどか「……ほむらちゃんの手、冷たいね。可哀想に」すりすり

悪魔ほむら「可哀想ではないのよ。まどか」

まどか「えっ……う、うん」

悪魔ほむら「……転校初日の時、抱き付いてしまってごめんなさい」

まどか「ううん。良いの」すりすり

悪魔ほむら「気持ち、悪くなかった?」

まどか「ふぇっ!?」

悪魔ほむら「……いえ。なんでもない」

まどか「そっか」すりすり

さやか「よかったじゃん。まどか」

まどか「……うん
さやかちゃんも仲直りできたみたいで嬉しいよ」

さやか「誰がこいつなんかと」

まどか「えぇっ、仲直りしたんじゃないの!?」

さやか「違う違う」

まどか「そんなぁ。みんなで仲良くしようよぅ」

キーンコーンカーンコーン……

悪魔ほむら「時間ね」

まどか「むぅ……またね。ほむらちゃん!」ぱっ

悪魔ほむら「さようなら」ひらひら

さやか「……同情じゃ、ないからね」

悪魔ほむら(ありがとう。美樹さやか)

――崖の上

悪魔ほむら「へぇ。本当に連れてくるとはね」

さやか「どういう意味よ」

悪魔ほむら「あまり期待してなかったってこと」

さやか「可愛くない奴」

杏子「……なぁ、普通に喋ってるけどさ
本当に大丈夫なのかそいつ?」

さやか「今のところはね」

マミ「ごめんなさい。実際にこうして目の前にすると怒りしかわいてこない」

なぎさ「……ちゃんと自分の口で説明するのです!」

悪魔ほむら「……ごめんなさい。一人一人答えるから」

さやか「……」

悪魔ほむら「佐藤杏子。大丈夫か大丈夫じゃないかで言うと大丈夫じゃないと思う
わたし、とんでもないことをしてしまった自覚はあるの」

杏子「……譲れないものが、あったのかよ」

悪魔ほむら「わたしは鹿目まどかに固執してるだけ
そんな綺麗なものじゃない」

杏子「じゃあなんだ。殺 してほしいってか?
いいぜ。やってやる」ジャキンッ

さやか「杏子……」

悪魔ほむら「……わたし、生きようと思って」

杏子「はぁ!?」

悪魔ほむら「死はわたしにとって逃げだった
……気が付くのが遅すぎたけど」

杏子「へぇ。生きたいんだ」

悪魔ほむら「今はそう思う」

杏子「……まぁいいや
ぐだぐだいっても起こっちまったもんは仕方ねぇし
今度は変なことしねぇか?」

悪魔ほむら「誓いましょう」

杏子「そうかい。ならいいや」

マミ「……えぇっ信じるの!?」

杏子「そういう訳じゃねぇけど
こいつなりにケジメ付けるつもりならとやかく言わねぇ」

マミ「……」

悪魔ほむら「……巴マミ。百江なぎさも聞いて」

マミ「ええ」

なぎさ「……はいです」

悪魔ほむら「わたしに怒りを覚えるのは当然だと思う
みんなでわたしを救い出してくれたこと、忘れた日はないの」

マミ「……なにか、事情があったの?」

悪魔ほむら「なかった。なかったから怖い」

マミ「……」

悪魔ほむら「わたし、今でも自分で自分を呪ってる
でも、それだけじゃダメだって最近気が付いたの」

マミ「得る物はあったのね」

悪魔ほむら「はい」

なぎさ「わからない! とにかく早く理を元に戻すのです!」むぅっ

マミ「そう、そうね。なぎさちゃん。円環の理を直さないと」

悪魔ほむら「さやか、佐倉さん、巴さん、なぎさちゃん。ごめんなさい」

ぱら、がらがら

マミ「――ねぇ。あれ、黒い渦に見えない?」

杏子「そうか? 馬鹿でかいあんこに見えるけど」

さやか「杏子ちゃんはお腹空いちゃったかな?」にやにや

杏子「本当にあんこの中ならいいんだけどな」

さやか「杏子、マミさん……ありがとう」

杏子「水くせぇ。今さらだろ」

マミ「そうそう。でも、なぎさちゃんはちょっと待っててね」

なぎさ「い、嫌です! そんなのあんまりです!」

マミ「すぐに戻るから。いい子にしてて」なでなで

なぎさ「うん……」なでられなでられ

悪魔ほむら「……いいんですか?
なぎさちゃん、わたしと二人きりになりますが」

マミ「それ、貴女が言う?」

悪魔ほむら「……」

マミ「……信じてるわ。暁美さん」

悪魔ほむら(巴さん……)

マミ「結構高いわね……」

さやか「……手、繋ぎませんか?」

杏子「賛成」

マミ「そうね」

ぱしっ、ぱしっ

さやか「3、2、1で跳ぶよ」

マミ「アン、ドゥ、トルァーではダメかしら」

杏子「マミに賛成。勇気でそう」

さやか「……わかった」

マさ杏「アンッ!」

マさ杏「ドゥッ!」

マさ杏「トルァーッ!」

ひゅうぅ……

杏子「あっはっは! 景気いいじゃん!」

さやか「うんうんっ!」

マミ「ふふふ」

――深淵

さやか「くっ、またこの感じ」

杏子「こりゃあひでぇ。碌に動けねぇ」

マミ「みんな、手を離さないで」

杏子「……っ、なんか来る!」

アハハ……アハハハ……っ!

さやか「ええっ」

杏子「あ、ありゃあ……!」

ワルプルギスの夜「アハハハッ!」

さやか「体もうまく動かないってのに……」

杏子「ぐだぐだぬかすな。やるしかねぇ」

マミ「佐藤さんの言う通りよ」チャキッ

バンッバンッ!

ワルプルギスの夜「アハハハッ!」

マミ「……出し惜しみしている場合じゃなさそうね
ティロ・フィナーレ!」

ドォンッ!

杏子「……やったか!?」

ワルプルギスの夜「アハハハッ!」

マミ「……くっ」

杏子「くそ、ロッソ・ファンタズマ!」

ザシュザシュザシュッ

ワルフルギスの夜「アハハ、アハ」

さやか「くっ」ぐさっ

オクタヴィア「オオオッ!」チャキン

ズバッ

マミ「おまけよ。ティロ・フィナーレ!」

ワルプルギスの夜「あ、は……」ふっ

杏子「ちょっとやりすぎちまったかな」へた

マミ「ふふ、みんないいチームワークだったわ」

さやか「切腹した甲斐あったよ……」

ワルプルギスの夜「アハハハ!」

杏子「う、うそだろ」

マミ「まさか……そんな」

さやか「……やるしかない。唸れオクタヴィア!」

オクタヴィア「オオオッ!」

「そこまでよ」

バサバサ

悪魔ほむら「任せて」

杏子「おい、そりゃどういうこった!
こっからがいい所なんじゃないか!」

さやか「そ、そうだそうだ!」

悪魔ほむら「……」

ぎりり……っ、バシュンっ!

ワルプルギスの夜「アハ……あ、は」すぅっ

杏子「……一撃かよ」へたっ

悪魔ほむら「……巴マミ。二人をお願い」

マミ「……わかったわ!」

杏子「ごめん。気が抜けたら一歩も動けねぇ」へた

さやか「同じく」へた

マミ「ちょっと痛いかもしれないけど我慢して」

シュルル……

杏子「助かる」シュル

さやか「ほ、むら」シュル

ワルプルギスの夜「アハハ――」

悪魔ほむら「……」バサバサッ

ぎりり……バシュンッ

――崖の上

悪魔ほむら「……みんな、無事かしら」すたっ

杏子「おぇえっ!」

さやか「うぇえっ!」

マミ「うぷっ……」

悪魔ほむら(……似てるわ。この状況)

マミ「ね、ねぇ。鹿目さんに相談するのはダメなの?」

なぎさ「それが良いのです!」

さやか「ダメです……まどかに全部押し付けられません」

杏子「同感だ」

悪魔ほむら「……名案かもしれない」

さやか「えぇっ!」

杏子「なんでだよ!?」

悪魔ほむら「貴女達のお蔭で随分呪いが浄化された
ある一点では彼女の一人の愛よりも、余程効果があったはず」

さやか「そんなのハッタリでしょ!?」

杏子「そうだ。まだやれる……まだ何とかなる!」

悪魔ほむら「ハッタリは貴女達よ。体を厭いなさい」

さやか「あんた、それでいいの?」

悪魔ほむら「全然良くない
出来るなら貴女達を見捨ててこの世界の寿命をまどかにあげたかった」

さやか「……小さくなったのは一時的なんだ」

悪魔ほむら「とにかく、無駄にはしないつもり」バサッ

さやか「ちょっと、どこいくつもり!?」

悪魔ほむら「まどかを、連れてくるわ」

――まどホーム

すたっ

悪魔ほむら「……」ピンポーン

ガチャッ

知久「えっと……どちら様?」

悪魔ほむら「まどかに大切な話があって来ました」

知久「そうなんだ。わかった。あがって」

悪魔ほむら「えっ!?」

知久「いいから」

悪魔ほむら「……お邪魔します」

知久「まどかー。お友達が来てるよー!」

まどか「ふぇっ、ほむらちゃん!」たったった

悪魔ほむら「ごめんね。寝てた?」

まどか「う、ううん! なんかぼーっとしちゃって……
どうしたの?」

悪魔ほむら「……お母さんは?」

まどか「仕事、だけど」

悪魔ほむら「……そう」

ぱんっ!

詢子「うわわっ」どたどたっ

知久「おうふっ」

まどか「えっ……?」

悪魔ほむら「最後かもしれないから。挨拶くらいしなさい」

まどか「な、なにいってるのほむらちゃん……冗談きついよ?
さっきのは手品?」

詢子「おっかしいなぁ。さっきまでオフィスにいたのに」

知久「退いて……くれなくてもいいかも」

タツヤ「パパ、ママ仲良しー」

まどか「……」

悪魔ほむら「まどか。貴女は愛されていたけど、自分の道を見つけたのよね?」

まどか「自分の、道……?」

悪魔ほむら「そう。貴女は誰にもなし得ないことをしたのよ」

まどか「そっか……そうだった」ゴゴゴ……

詢子「待って、まどか!」がばっ

まどか「お母さん……っ
わたし、わたし……っ」ぎゅっ

詢子「……あのさ、忘れちまうってのはやっぱり嫌だよ」

まどか「……うんっ。う、んっ」

知久「……まどか。僕はまた会えて嬉しいよ」

タツヤ「まろか! まろか!」

まどか「こんな、こんなに近くにあったのに
なんで、どうして、気が付かなかったんだろ……」

悪魔ほむら(心を鬼にするのよ。暁美ほむら
――いえ。寧ろ無にしなさい。暁美ほむら
可哀想だなんて思ってしまってはダメ)

詢子「まどか。貴女を産んで良かったよ……」

まどか「うくっうあぁっ! ああぁっ!」

悪魔ほむら「く……ぁっ」

知久「まどか……良い友達を、持ったね」

タツヤ「まろかまたね!」

まどか「みんな、ありがとう」ゴゴゴ……

悪魔ほむら「……」

神まどか「行こう。ほむらちゃん」

悪魔ほむら「そうね」

バサバサ

詢子「ううっ、まどか。畜生、綺麗だなぁ!」

知久「まどかぁっ……」

タツヤ「……まろか」

――崖の上

神まどか「みんなお待たせ」

さやか「遅い。何回か挑戦しちゃった」

悪魔ほむら「……無理しすぎよ」

杏子「おまえに言われたくねぇ」

マミ「こればかりは同感ね」

なぎさ「わたしだって外からラッパを吹いたのです!」

悪魔ほむら「怪我はない?」

なぎさ「はいです!」

マミ「……わたしはリボンで二人を引き上げただけだから」

杏子「そう卑下するなって」

マミ「ええ……」

悪魔ほむら「佐倉杏子の言う通りよ。巴マミ」

マミ「……わかってますっ」

悪魔ほむら「ならいいわ」

神まどか「この世界、どれくらい持ちそう?」

悪魔ほむら「いつ崩壊してもおかしくない」

神まどか「そっか。じゃあわたし、行くね」

悪魔ほむら「待ってまどか。やり残したことがあるの」バサバサッ

神まどか「えっあっ、ほむらちゃん!」

悪魔ほむら「大丈夫。すぐ戻るわ。信じて」

ひゅうぅ……

杏子「ありゃ、止めても無駄だな」

神まどか「……ほむらちゃん」

――深淵

バァン!

悪魔ほむら(もう、何度目になるかしらね)

バァン!

悪魔ほむら(グリープシードを撃つだけなんだもの)

バァン!

悪魔ほむら(当然よね
貴女達からわたしはあの笑顔と温もりを奪ってしまったのだから)

バァン!

悪魔ほむら「……飽きたわ。そう思わない?」

悪魔ほむら(ダークオーブ。偏った愛によって変化した歪なソウルジェム
……これが穢れたらどうなるかしらね?)

悪魔ほむら「わたしね、感謝してる。貴女達に
何故かって? この気持ちになれたのは貴女達に触れ続けたからなの」

悪魔ほむら「わたし、とっくに狂ってた」

悪魔ほむら「狂ってたところに、貴女達が抉り続けるものだから」

悪魔ほむら「わたしは自覚することが出来たのよ」

悪魔ほむら「だから、感謝してる
慈悲なんて欠片もないけど……せめて、さようなら」

ゴゴゴ……

――崖の上

神まどか「ほむらちゃん!?」



さやか「また抱え込んだ。馬鹿なんじゃないの、あいつ!」



杏子「ああ。全くだ」



マミ「なんてことなの……」



なぎさ「この罪は重いですから」



D e r  T e u f e l
H o m u l i l l y

「――オオオッ!」

神まどか「な、なぁんだ。ほむらちゃんが巨大化しただけじゃない
ほむらちゃーん!」

「オ、オオッ。マ、ドカ」

神まどか「ほら、やっぱり!」えっへん

マミ「ななんて執念……いや、愛かしら!」

杏子「驚くところ違うからなマミ!?」

さやか「……いや、あれ本当に凄いよ。普通喋れないって」

マミ「ほら見なさい。やっぱり愛よ!」びしっ

なぎさ「愛なのです!」びしっ

杏子「余裕だなおまえら」

「マ、ドカ」

神まどか「なに、ほむらちゃん?」

「撃ッテ。貴女ノ矢ヲワタシニ……!」

神まどか「そこまで出来たなら後はガッツだよ。ほむらちゃん!」

「ヤッテルノダケレド、ダメ。ダカラ……ッ!」

神まどか「……わ、わかった。わかったよ。ほむらちゃん」

ぎりり……

神まどか「えいっ!」

バシュンッ!

「アッー!」

パァァッ

悪魔ほむら「……」ばたっ

ぐらぐら……

杏子「おい、崩れだしたぞ……!」

さやか「動けない……」

マミ「みんな掴まって!」

シュルル……

なぎさ「はいなのです!」がしっ

さやか「助かりました」シュルル

杏子「ありがてぇ」シュルル

神まどか「ほむらちゃん!」がしっ

――祭壇

さやか「……戻って、来た」とさっ

杏子「すまねぇマミ」とさっ

マミ「どういたしまして」

なぎさ「あれ?」きょろきょろ

マミ「二人とも、どこに行ったのかしら」

――

神まどか「ほむらちゃん。ほむらちゃん!」ゆさゆさ

悪魔ほむら「……まどか」

神まどか「ほむらちゃん! よかった。よかったよぅ……」

悪魔ほむら「ねぇ、まどか。これ」すっ

神まどか「……真っ黒だね」

悪魔ほむら「ええ」

神まどか「わかった。わかったよ、ほむらちゃん」

悪魔ほむら「違うの。まどか」

神まどか「……えっ?」

悪魔ほむら「……っ、持ってて。きっと、役に立つか、ら」がくっ

神まどか「そんな。イヤだよ。ほむらちゃん!
ほむらちゃーん!」ぎゅっ

――祭壇

マミ「見て。戻って来たわ!」

さやか「まどか!」

神まどか「ほむらちゃんが。ほむらちゃんが……」

悪魔ほむら「……」とさ

マミ「……暁美さん」

さやか「嘘、でしょ……」

杏子「馬鹿野郎……!」

QB「やあ」

杏子「てめぇ、どの面下げて来やがった!」

QB「障害が勝手に自滅したんだから、当然じゃないか」

神まどか「酷い。そんな言い方、酷い!
撤回してよ! 今すぐ!」

QB「やれやれ。僕も嫌われたもんだ
でもね、安心してよ。君の謎はすでに解明してあるんだ」

神まどか「う、うあっ!?」

さやか「まどかぁっ!」

QB「暁美ほむらに感謝しないとね
あの力の解明なくしては、君にたどり着くことなんて不可能だ」

神まどか「い、いやっいやだ……」ころん

マミ「あれは……グリープシード?」

QB「さぁ、僕と一緒に世界を作ってよ!」

ピキピキッパリーン

QB「……あれ?」

「――インキュベーター!」

QB「ああっ、あああ……!」

神まどか「……え、誰? ほむら、ちゃん?」

「ヨクモ、ヨクモォ!」

QB「あああーっ!」ぐにゃあ

神まどか「……っ、えぐっ、みんな。みんななんだね」

「サヨウナラ」

神まどか「そんな悲しいこといわないで。おいでよ」パァァッ

「――温かい」

QB「――ん。僕は一体なにをしてたんだ?」

杏子「……もう帰れよおまえ」

QB「今日のところはそうしようかな
……触らぬ神に祟りなしというしね」ふっ

杏子「なんなんだあいつ」

神まどか「……あっこれ!」

マミ「ほむらさんの、ソウルジェム……!」

杏子「あっはっは、やりやがった!」

さやか「回りくどいけど、あいつらしいね」

神まどか「ほむらちゃん!」

コトッ

ほむら「う、ん……」

神まどか「良かった! 良かったよぅ……」がばっ

ほむら「苦しいわ。まどか」

神まどか「あっ、もう引き裂かないよね」ささっ

ほむら「その気なら抱き付いた瞬間に引き裂いてるわ」にこり

神まどか「うぇひひ、それもそうだね。じゃあ導くよ!」

ほむら「……ソウルジェム、濁ってないけど」

杏子「そういやそうだな」

マミ「寧ろ以前より輝いて見えるわ」

神まどか「ふぇえ、導けないのぉっ!?」わたわた

ほむら「これで、良かったのよ」

神まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「わたし、戦うわ。そしてもう貴女の名を呪いのように告げない
そうやって振り返らず、生きていく」ふぁさっ

神まどか「……それで、ほむらちゃんは幸せ?」

ほむら「まどかの為にもなると思うの」

神まどか「……そっか」

さやか「……話もまとまったところで、帰りますか」

なぎさ「はいです!」

杏子「……行っちまうのか。さやか」

さやか「おお、寂しい感じですかな?
モテ気到来、みたいな!」

杏子「ふふ、こりゃあそっちに行くのは当分先になるかな」すっ

さやか「……こっちとしたら、仕事が減って助かるよ」すっ

杏子「またな。さやか」

さやか「うん……元気でね」

杏子「ゾンビに元気も何もないだろ」ぽりぽり

さやか「赤くなっちゃってぇ。このこの」ぐいぐい

マミ「なぎさ……」なでなで

なぎさ「マミ。チーズ、いっぱい、いっぱい……ありがと」なでられなでられ

マミ「……ぐすっ、駄目ね。泣かないって決めてたのに」

なぎさ「マミ。泣かないで……」

マミ「……チーズ、あっちにいったら大切に食べるのよ」にこり

なぎさ「うん」

神まどか「ほむらちゃん」

ほむら「なに、まどか?」

神まどか「がんばって」

ほむら「あなたも」にこり

神まどか「うん。頑張るよぉ」にへら

パァァッ

神まどか「さぁ、みんな。帰ろう!」ふわふわ

さやか「じゃあねー!」

なぎさ「ありがとー!」

パオーンッ

杏子「……行っちまったか。案外呆気なかったな」

マミ「……ぐすっ」

ほむら「……」シュル

杏子「あのリボン……飛ばしちまって良かったのか?」

ほむら「ええ」

マミ「……」

ほむら「……彼女達が逝ってわたしが残るのは不満じゃないですか?」

杏子「それ、悪い癖だぜ。そんなことねぇって」

マミ「そうよ。これからは3人で協力して生きていきましょう?」

ほむら「……ごめんなさい。確認したかったわけじゃないの
一人で戦おうって思っていたので」

杏子「それも悪い癖だな」

マミ「暁美さんは欠点だらけね」

ほむら「……二人とも、感謝しています
この恩は一生、忘れません」

杏子「まぁ、なんだ。困ったら頼れよ」ばしっ

ほむら「あうっ」

杏子「これでチャラな」

ほむら「……ありがとう」

マミ「後輩を助けるのは先輩の役目
それをわすれないでよね!」

ほむら「……はいっ!」

おわり

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