ダージリン「これが私の戦車道」 (64)

ダージリン「こんな格言ご存知かしら?」

麻子「ウザい、やめろ」

沙織「ダジりんって本当に格言と紅茶が好きだよねえ、もうそれ以外に人間としての
内面がないくらいに」

ダージリン「あらあら、ほめても何も出ないわよ?」

沙織「いや、ほめてないって」

華「ダージリンさん、生徒会の人たちが呼んでますよ」

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杏「あのさあ、必修選択科目なんだけどさあ、戦車道取ってね。よろしく」

ダージリン「お断りします、私は二度と戦車に乗らないつもりで転校したんです」

杏「そんなこと言ってると学校に居られなくしちゃうよ?」

ダージリン「お好きになさったらよろしいでしょう!そんな恫喝には屈しませんわ!」

杏「じゃあさ、生徒会長の権限で艦内の紅茶の流通を止めちゃうから」

ダージリン「ひどい!私が重度のタンニン中毒で一日5リットルは紅茶を飲まないと禁断症状が出て
サッカー場やラグビー場に放火してまわる体質なのを知ってて…!」

ダージリン「わかりました…。私の負けです…」

杏「じゃあまずは学園艦に眠ってる戦車を探すとこから始めようか」

沙織「というわけで1輌見つけてきたけど、これ変な戦車だね」

ダージリン「これは私も知らない型ね…」

優花里「これはボブ・センプルですね。スコフィールド軽戦車と並ぶニュージーランド初の国産戦車です。
農業用トラクターを装甲と武装を載せただけで火力・機動力・装甲・操縦性、どれを取っても最低で製造した
意義を疑われるような最弱戦車です」

ダージリン「戦車道経験者が私しかいない中で、優花里さんのその知識は本当に役に立つわ。経験のなさを
補って余りある能力よ」

優花里「いやあ、そんな…」

ダージリン「このダージリンがあなたに『日東ティーバッグ』のソウルネームを授けてあげましょう」

優花里「それやめてください。ていうか今度そんなあだ名で呼んだらぶっ飛ばしますから」

華「まあまあ優花里さん、気持ちはわかりますがそんなに怒らないで」

ダージリン「ありがとう爽健美茶さん」

華「ブチ殺すぞ貴様」

杏「みんなー、聖グロと練習試合することが決まったよー」

一同「ええっ!?」

ダージリン(聖グロリアーナ女学院…、かつての私の母校…。私が去った後、アッサムが隊長になって
新しくやって来た転校生が副隊長になったと聞いているけど…)

試合当日…

オレンジペコ「ダージリン様…」

ダージリン「ペコ、久しぶりね」

アッサム「お久しぶりですね隊長、いや、今は元隊長ですか?ウザい格言聞かされなくなって
みんな清々してますわ」

オレンジペコ「その代わりサブいジョークを四六時中聞かされるようになって気が狂いそうに
なってますけどね…」

アッサム「あなたがウチを去ることになったあの試合、あのときの借りを
返すときがきましたわ。そちらの装備と練度では我々に勝つ確率は1割を
切っています」

みほ「はじめまして!副隊長の西住みほです!」

アッサム「ちょっと!もう忘れたの!?ウチに転校したからにはその名前は捨てろと言ったでしょう!
今のあなたの名前は『熊本産鉄観音茶』なの!何度も同じこと言わせないでちょうだい!」

みほ「うう…ふ…副隊長のく…熊本産鉄観音茶です…」

オレンジペコ「私も最初はいやでした。すぐに慣れますから」

みほ(慣れたくない…こんなの慣れたくないよ…)

『試合開始!』

ダージリン「日東ティーバッグ、榴弾装填、信管は着発で」

優花里「だからそれやめろって言ってんだろがぁぁぁぁ!」

沙織「ゆかりん、落ち着いて!」

ダージリン「特保黒烏龍茶、僚車との連絡を絶やさないように」

沙織「誰が特保黒烏龍茶だゴルぁぁぁ!」

ダージリン「スジャータ、前進全速」

麻子「私なんてすでにお茶ですらないし」

その夜、聖グロリアーナ女子寮…

みほ「もしもし、お姉ちゃん?ごめん、こんな時間に電話して…、うん、声が聞きたくなって…
もうこの学校いやだよ…。みんないい歳して変なあだ名で呼び合って、私も変なあだ名つけられて、
それが正式な登録名になっちゃって…全員日本人なのに…。今日は大洗女子学園ってとこと練習試合
やったんだけど、『何しに来たんだ』ってレベルで楽勝だったよ。でも罰ゲームだってアホみたいな
格好で踊らされてて、あそこにだけは転校させられなくてよかったな…。あと、こっちは食べ物も
最悪だよ…。なにあのウナギのゼリー寄せって…、もう一度お姉ちゃんが作ったカレーが食べたいな…、
お嬢様学校に転校できたって喜んでた私がバカだったよ…」

第1話終、次回第2話『戦車喫茶ルクレールでの再会です!』に続く。

第2話『戦車喫茶ルクレールでの再会です!』


戦車喫茶ルクレール店内…

優花里「やっぱりボブ・センプルは役に立ちませんでしたね、1年生チームが車輌を放棄して
逃げたのは無理ないと思います。幸い艦底からTOG重戦車が発見されたので整備と修理がすんだら
そっちを担当してもらいましょう」

ダージリン「こんな格言ご存知かしら?」

麻子「だからそれやめろ、ウザい」

アッサム「あら、またお会いしましたわね隊長、失礼、元隊長でしたね」

ダージリン「そう言う貴方は私がいなくなったおかげでなし崩しで隊長になれた元副隊長、アッサム!」

アッサム「ぐぬぬ…!」

優花里「あの!第62回大会でのダージリン殿の行動はやむをえないものだったと思います!
カーデンロイドMkⅢでマウスに特攻したら、中で紅茶がこぼれても仕方がないと思います!」

沙織「どういう状況だったの?」

華「さあ…?」

ダージリン「いいのよ優花里さん…、そのせいで試合に負けた上にアッサムがお尻に火傷したのは事実だから…」

アッサム「あわててスカートとパンツを脱いで車外に飛び出してしまいましたわ。あんな大恥かいたのは生まれて
初めてです。この屈辱は決して忘れませんわ!」

麻子「うわぁ…」

沙織「これは恨まれても仕方ないね…」

華「そうですね…」

みほ「あ…あの、みなさん、他のお客さんの迷惑になるからもうそのへんで…」

オレンジペコ「そうですよ!熊本産鉄観音茶さんの言うとおりですよ!」

みほ(うう…やっぱりやだよこの名前…)

アッサム「ふん、こんなジョークをご存知かしら?ハンバーガーショップで客が店長に訊ねた、
『ねえ、あの若い店員の姿が見えないんだけどどうしたの?』『あいつだったらクビにしましたよ、
休み時間に厨房の裏でオナニーしてやがったんです』『おいおい、その程度でクビにするなんて、
ちょっと厳し過ぎないか?』『でも、作り置きのコールスローサラダの中に出してやがったんですよ?』」

優花里「うぐぅっ…」

沙織「やだもー」

麻子「おえっ…」

ダージリン「…相変わらずね」

アッサム「よっしゃ勝った!エグいジョークのおかげであいつらこれでお茶飲むどころじゃなくなったはず!」

オレンジペコ「こっちも食欲がなくなりましたよ!」

みほ「もうやだ…誰か助けて…」

アッサム「今回はこれで失礼するわ!首を洗って待っていなさい!」




沙織「華…、あんな話聞いた後でよくものが食べられるわね…」

華「別にどうってことありませんよ?あ、すみませーん、マグロ山かけ丼お願いします、大盛りで!」

優花里「あの話の後で山かけ丼はないでしょ…おえっ…」

ダージリン「こっちはミルクティーおかわり!ミルク多めで!」

沙織「ミルク多めって…」

麻子「ここにもいたよ同類」

その夜、聖グロリアーナ女子寮…

みほ「お姉ちゃん、もう限界だよ…、熊本に帰りたいよ…。黒森峰に戻して…
使い走りでも下働きでもなんでもするから…お願い…」

第2話終、次回最終回『アンツィオ高校に転校です!』に続く

最終回『アンツィオ高校に転校です!』


『アンツィオ高校フラッグ車走行不能!よって、サンダース大学付属高校の勝利!』

ダージリン総帥「試合が終わったらノーサイド!対戦相手もスタッフも等しくもてなすのが
我がアンツィオ高校の流儀ですわ!さあ皆さんたんと召し上がれ!」

一同「ドゥーチェ…ドゥーチェ…ドゥーチェ…(ものすごくテンションの低いシュプレヒコール)」

ペパロニ「さーアンツィオ名物フィッシュ&チップスだよー、滴り落ちるくらいに油ギトギトだよー。
ウナギのゼリー寄せもあるよー、素材の味が生きてるよー、ていうかブツ切りにして放り込んだだけ
だからすげー生臭いよー、小骨たっぷりだよー、見た目もグロいよー(棒読み)」

アリサ「ええっ!ピザとかパスタとかないの!?楽しみにしてたのに!」

ケイ「うーん…、揚げ物は大好物だけどこれはちょっと…」

ナオミ「この手の魚料理は苦手なんだよなあ」

ペパロニ「ダージリン姐さんが総帥になってからアンツィオも変わったなあ」

カルパッチョ「そうねえ、戦車道強化のためにスカウトしたけど大失敗だったわねえ、
どうにか1回戦は突破したけどデメリットの方が大きすぎたわねえ」

ペパロニ「早く卒業してどっか行ってくれないかなあ」

カルパッチョ「聞こえるわよ」

その後、第63回戦車道全国高校生大会は、土下座して黒森峰に戻してもらったみほの大活躍で
黒森峰女学園が他校に圧倒的な大差をつけて優勝した。


なお、大洗女子学園は隊長のダージリンがいきなり転校したので、替わりに副隊長の桃ちゃんが指揮官
になったら1回戦の対サンダース戦で壊滅した。


                  終

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