綾「素直になれる魔法?」 (40)

きんいろモザイクのSSです。

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帰り道


綾(陽子と二人きりの帰り道…… 今日こそ陽子に好きって伝えよう……)

綾「ね、ねぇ陽子……」

陽子「んー?」

綾「わ、私のことどう思う?」

陽子「綾のこと…… そりゃまぁ大切な友達で、いつもわたし宿題見てくれるのほんと感謝してるよ」

綾「あ、ありがと……」

陽子「てか急にどしたの?」

綾「え、えっと……」

綾(言おう、言うんだ…… 素直に…… !)

綾「よ、陽子! 私は貴女のこと……」

陽子「あ…… お腹鳴った……」

陽子「綾、良かったらこれから何かご飯食べにいかない?」

綾「……」

陽子「ん、どした?」

綾「陽子のバカー!」

陽子「えぇー!?」

綾「何でそんなに空気読めないのよ!」

陽子「そ、そっか…… 綾はお腹すいてなかったのか…… 無理に誘ってごめんな」

綾「あ……」

陽子「じゃあまた明日!」

綾「ま……」

綾「うぅ……」

綾「はぁ……」

綾(何で私ってこんなにひねくれて弱虫な性格なのかしら……)

綾(ほんとは『待って』って陽子のこと呼び止めたかったのに……)

綾(それに告白なんてご飯食べた後でも良かったのに自分のタイミング邪魔されたからって陽子に当たって……)

綾「うぅ…… 何で言いたいことが言えないのかしら……」

綾「いっそ何か…… 素直になれる魔法でもあったなら……」

綾「…… あ」

何となく立ち寄った雑貨屋さん、そこにあったのは『思ったことが口に出ちゃうチョコ』

まぁこんなのよくあるちょっとしたパーティーグッズみたいなもので、こんなので本当に素直になれる訳無い

だってどう考えたっておかしいでしょ? 思ってることが口に出ちゃうチョコってそんなものがあるわけ……


綾「……」

綾(結局買ってしまった……)

綾「ま、まぁちょっと甘いもの食べたいな~って思ってたし、何だかんだ私チョコレート好きだから……」

綾(誰に言い訳してるんだろ……)

綾(えーっと…… 『このチョコレートは1粒食べるだけで思ったことかつい口に出てしまう魔法のチョコレートです』)

綾(『食べてから6時間後から効果が表れて、その17時間24分後に消えます』 やたら細かいわね……)

綾(今が5時くらいだし、明日の5時半くらいに効力が切れるってことか)

綾「何本気にしてるのよ私……」

綾「ん…… このチョコレート美味しいわ……」

次の日 朝


綾「はぁー、昨日『バカ』って言ったこと陽子にちゃんと謝らないと……」

綾「いくら陽子がおおらかな女の子だからって、こういっつも当たってばかりじゃきっとストレスも貯まってるはずよね」

綾「うん、今までの分もちゃんと謝ろう!」


忍「おはようございます、綾ちゃん」

アリス「おはよう、アヤ」

綾「おはよう、二人とも今日はちゃんと起きられたのね」

アリス「うん! 早起きして朝ご飯に食べる納豆はおいしいよね~」

綾「ふふっ、やっぱりアリスは日本人より日本人らしいわね」

アリス「そんなことないよ~」

綾「あるわよ、納豆なんて日本人でも好みが別れる、っていうか私は納豆は嫌いよ」

アリス「そ、そうなんだ……」

忍「今日はずいぶんストレートですね」

綾「そうかしら? 思ったことを言っただけなんだけど……」

カレン「オハヨーゴジャイマース!」

忍「おはようございます、カレン」

綾「カレン、ずっと思ってたんだけどなんで『ゴジャイマース』なの? 他の部分はともかく『ジャイ』って何?」

アリス「言われてみれば……」

カレン「考えたこともなかったデース」

忍「今日の綾ちゃんはよく喋りますね」

綾「そうかしら?」

忍「はい、綾ちゃんはよく顔を真っ赤にして黙ってることがありますよ」

綾「そ、そうなの!?」

綾「…… それにしても陽子遅いわね、何かあったのかしら…… 心配だわ」

アリス「え?」

綾「え? 私何か変なこと言った?」

アリス「え、いや……」

カレン「綾が陽子のこと素直に心配するのなんて変デス」

綾「そんなこと無いわよ」

陽子「ごめーん! 遅れちゃったー!」

忍「陽子ちゃん、おはよ

綾「遅い! 何してたのよ陽子!」

カレン「あ、いつものアヤヤデス」

綾「もしかして陽子が事故にでもあったんじゃないかって心配だったんだから……」

アリス「いつものアヤじゃないよー!」

陽子「いやぁ…… 朝ご飯食べた後なんかお腹空いちゃって、今日のお弁当まで食べちゃったらいつの間にかこんな時間になってて……」

綾「そんなバカバカしい理由だったの!? 心配して損した……」

陽子「あはは、ごめんごめん でも心配してくれてありがとな」

綾「心配するのは当たり前じゃない…… 私、陽子のことが好きなんだから……」

陽子「え」

アリス「あ」

カレン「ダイタンな告白デース」

綾「あああ……」

綾「わ、私何言ってるのよ! 陽子のこと好きなんて…… こ、こんなところで言うことじゃないでしょ!?」

アリス「だ、大丈夫、綾? 何か変なものでも食べたの?」

綾「変なもの…… あっ! まさか……」

忍「心当たりがあるんですか?」

綾「昨日チョコレートを食べたのよ! 『思ったことが口に出ちゃうチョコ』」

陽子「ああ、よくあるパーティーグッズの奴ね」

綾「それが効果出ちゃったのよ! だから今私は思ったことをそのまま素直に口に出しちゃってるんだわ!」

陽子「そ、そんなバカな……」

カレン「アヤヤの様子が変だったのはそのチョコのせいデスか?」

綾「そうよ! そうに違いないわ!」

アリス「あわわわ……」

忍「…… ということは」

陽子「ん? どした忍」

忍「今綾ちゃんが素直な気持ちを話してるってことは、さっき陽子ちゃんのことが好きって言ったのもほんとの気持ちなんですね」

陽子「あぁ、確かに」

綾「」

忍「綾ちゃんも陽子ちゃんも凄く仲良しですもんね」

綾「」

カレン「アヤヤ、無言で固まってマス」

陽子「あ、綾! 大丈夫かー!?」

忍「なるほど、絶句してしまった時は無言になるのですね」

陽子「いや冷静すぎだろー!」

綾たちの教室


綾「朝はあまりの恥ずかしさに気絶してしまったわ……」

綾「それにしても思ったことが全部口に出ちゃうなんて厄介ね…… 取り敢えず今はマスクしてるけど……」

綾「このままじゃ何回『陽子のことが好き』って言っちゃうことか……」

カレン「アヤヤ、今の心の中での呟き 全部漏れてマス」

綾「あー! もうどうすればいいのよー!」

綾「無心よ、無心! 陽子のことなんて考えちゃダメよ!」

カレン「『考えちゃダメ』って考えた時点で声に出ちゃってるデス」

綾「あーーーーー!」

忍「あ、綾ちゃんが大変そう…… な、何かわたしに手伝えることがあったら……」

綾「それよ! しのみたいに何事にも動じない穏やかな心を持てばいいんだわ!」

綾「しの! どうすればしのみたいなこけしになれるの!?」

カレン「何気に酷いこと言ってるデース」

授業中


久世橋「えー、今日の授業では……」

「無心無心無心無心無心無心無心」

久世橋「九条さん、授業中のお喋りはダメだっていつも……」

カレン「ち、違いマース! 濡れ衣デース!」

久世橋「あれ…… じゃあ誰が……」

綾「無心無心無心無心無心無心無心」

久世橋「こ、小路さん…… ?」

綾「無心無心無心無心無心無心無心」

忍「あ、綾ちゃんは今読経の修行中で……」

久世橋「そ、そうなの……」

綾「無心無心無心無心無心無心無心」

久世橋「し、静かにね……」

お昼


綾「あー! これじゃ陽子に変な子だって思われて嫌われちゃうじゃない!」

忍「な、何か治す方法は……」

綾「そう言えば…… 確か最初に食べてから23時間24分後に効果が切れるって……」

綾「でも食べたのは昨日の6時くらいだから…… 結局今日の夕方までずっとこのままじゃない!」

忍「あ、これがそのチョコですね」

アリス「シノー!」

忍「アリスー!」

陽子「おっす、遊びに来たぞー 綾ー!」

綾「陽子! 来てくれて嬉しいわ!」

綾「って何言わせるのよ!」

カレン「一人でボケてツッコミしてマース」

穂乃花「あ、綾ちゃん大丈夫…… ?」

綾「わ、私も好きでこうなってるわけじゃ……」

カレン「そうだ! 面白いこと思い付いたデス!」

カレン「アリス、アヤヤに抱きついてみてください」

アリス「え、うん」

綾「アリスはいつも可愛いわね」

カレン「次はヨーコ」

陽子「こうか?」

綾「ちょ…… み、みんな見てるのに……」

カレン「AHAHAHA!」

綾「ちょっとカレン!」

忍「このチョコレートおいしいですね~」

アリス「シノ!? それ食べちゃダメな奴だよー!」

綾「も、もう陽子は私に近付かないで! 陽子が近くに居たら私変なことばっかり口にしちゃう……」

陽子「えっ…… まぁ綾がそう言うなら……」

綾「あっ……」


綾「思ったことが口に出ちゃうはずの私、だけど何故かこの時は言い淀んでしまった 多分それは陽子の憂いを帯びた顔を見てしまったから」

綾「今の私の感情は後悔、自責、戸惑い」

綾「素直になれば全て上手くいくと思っていた、それなのに実際は素直になったって私は私のまま、不器用なところは何も変わってなくて……」

アリス「あ、アヤ……」

カレン「そのモノローグもだだもれデース」

帰り道


忍「ここでお別れですね」

アリス「みんな、また明日!」

カレン「さらばデース! また会うときは敵同士デス……」

陽子「また何か変なのに影響受けてるな……」

陽子「綾は…… やっぱ別々に帰った方が」

綾「一緒に帰りたいわ!」

陽子「そ、そっか……」

綾「…… 冷静に考えれば今の状況ってチャンスじゃない?」

綾「陽子と二人きりだし、今変なことを口にしちゃっても全部チョコのせいに出来るし……」

陽子「綾ー、全部漏れてるぞー」

綾「昨日のことを謝って、それと昨日言えなかったあのことも……」

陽子「昨日のこと?」

綾「陽子! 私、貴女に伝えたいことがあるの!」

陽子「何?」

綾「昨日、怒鳴っちゃってごめんなさい」

陽子「あぁ、気にしないでいいって別に」

綾「それだけじゃないわ、私普段から陽子に怒ってばっかりで…… 本当にごめんなさい!」

陽子「ははっ、だからそんなに謝らなくて大丈夫だって」

陽子「わたしいつもガサツで気が利かないだろ? そういうところをしっかり注意してくれる綾のこと、いつも感謝してるよ」

綾「陽子!」

陽子「わわっ、綾から甘えてくるなんて珍しいな」

綾「もう一つ、言いたいことがあるの…… 聞いてくれる?」

陽子「うん、いいよ」

綾(今までずっとチョコに振り回されて来たけど、なんだかんだで最後は役に立ったじゃない)

綾(こうやって思ってるだけで素直に陽子と話せる…… なんて楽なのかしら)

綾(後は陽子に『好き』ってそう伝えるだけ……)

陽子「綾ー」

綾「何かしら?」

陽子「さっきから抱きついたまま黙ってるけどさ…… ちょっと恥ずかしいかなって……」

綾「えっ……」

陽子「いやぁ…… その……」

綾「あああ……」

綾「キャー!」

陽子「いたっ! いきなり突き飛ばすなよー!?」

綾(よ、陽子に抱き付いてるなんて意識したらもう…… 嬉しいけどわざわざ口に出さなくてもいいじゃない!)

綾(あ、あれ……? そう言えば私何でさっきから思ったことがすぐに口に出てないのかしら……)

綾「…… あっ!」

陽子「どしたの?」

綾「チョコの効果が切れたんだわ……」

陽子「あーそっかそっか、だからさっきから急に黙りだしたのかー」

綾「さ、さっきまでの私そんなにお喋りだったかしら……」

陽子「うん、凄く」

綾「うぅ……」

陽子「まぁいいじゃん、なんにしろ綾が元に戻ったみたいで良かった良かった」

綾「そうね…… ずっとあのままだったら大変だったわ……」

陽子「さっきまでの綾、見てて結構面白かったぞ?」

綾「っ…… ! や、やめてよ!」

陽子「ははっ、ごめんごめん」

綾「もう……」

綾(て、そうじゃないでしょ!? せっかく陽子に告白出来るチャンスだったのにこのままじゃ何もなく終わっちゃうじゃない!)

綾(陽子が帰っちゃう…… 呼び止めないと……)

綾「よ、陽子!」

陽子「ん?」

綾「ま、待って…… もうちょっとだけ……」

綾(うぅ…… なんでこんな弱気になっちゃうの……)

綾(やっぱりあのチョコが無いとダメなの…… ?)

陽子「綾?」

綾「……」

陽子「なんでそんなに暗い顔して震えてるんだよ?」

綾「うぅ……」

陽子「…… もう一つ、言いたいことがあるんだろ?」

綾「…… うん」

陽子「綾がそれ言えるまで待っててあげるから」

綾「陽子……」

綾「ねぇ陽子、今度は陽子からぎゅってして欲しいんだけど……」

陽子「うん、いいよ」

綾「……」

綾(陽子にこうされたら…… もう一つしか言葉が出てこないわ……)

綾「陽子」

陽子「んー?」

綾「好き……」

陽子「ふふっ、わたしも綾のこと好きだよ」

その夜 チョコレートを食べちゃった大宮忍ちゃん


アリス「シノー! 夕御飯出来たってー」

忍「」

アリス「ん? 一人でぶつぶつ何言ってるの?」

忍「金髪金髪金髪金髪金髪金髪金髪」

アリス「」

忍「金髪金髪金髪金髪金髪金髪金髪」

アリス「今度はシノが変になっちゃったよー!?」


おわり

最近メンヘラばっかり書いてたからこういうバカみたいな話書けてすっきりした。
読んでくれた方ありがとうございます。質問感想ご自由にどうぞ。

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