カヲル「僕が…レイくんと暮らす…」 (57)


NERV本部。


ミサト「シンクロテスト、お疲れ様〜上がっていいわよ〜」

シンジ「…はい」
レイ「…」
アスカ「ん〜」
カヲル「…」

ミサト「着替えたら話があるから休憩所に集まってね」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370747412


休憩所。


ミサト「お〜し、集まったわね」

シンジ「何ですか、話って?」

ミサト「えっとね…渚カヲルくん、あなた…レイと一緒に暮らしてくれない?」

レイ「!!」

シンジ「えっ!」

アスカ「…」

カヲル「僕が…レイくんと暮らす…」

カヲル「…どうしてですか?僕はこのままで構いませんよ。」

ミサト「あなたのことはどうでもいいの!!」

カヲル「…」

ミサト「レイが寂しいんじゃないかと思うの…1人暮らしでさ…」

レイ「…」

ミサト「だって、レイってうさぎみたいじゃない…そう、うさピョン」

シンジ「ピョンって…死語ですよ、ミサトさん」

アスカ「いいじゃない、かわいいわよ」

ミサト「で、どうなの?カヲルくん」

カヲル「そういうことなら…もちろん、いいです———」
レイ「嫌です。」

レイ「この人とは暮らしたくありません。」

カヲル「…」


アスカ「…確か、エコヒイキの家ってワンルームじゃなかたっけ?」

レイ「ええ。」

アスカ「だったら、少しかわいそうじゃない?ミサト」

ミサト「それだったら問題ないわ、レイには私たちの部屋の隣の号室に引越しってもらうから」

アスカ「えぇ〜!」

ミサト「だから〜レイ、カヲルくんと———」
レイ「嫌です。」

レイ「この人とだけは嫌です。」

カヲル「…」

ミサト「…じゃ〜レイとアスカを交換して、アスカがカヲルくんと暮らすのは、どう?」

アスカ「ずえぇったいイヤ!!なんで私がナゾポエムと一緒に暮らさなきゃなんないのよ!!」

カヲル「…」

シンジ「いい加減にしてよ!カヲルくんを除け者にしないでよ!!」

シンジ「カヲルくんはすごく良い人なんだ、優しいんだよ」

シンジ「2人ともなんにもわかってないよ!」

アスカ「…」

シンジ「綾波…」

レイ「…」

シンジ「カヲルくんと暮らしてみてよ、きっと楽しいから」

レイ「でも…」

シンジ「ミサトさんこれは命令ですよね?」

ミサト「え、ええそうよ」

シンジ「だったらさ、綾波…一緒に暮らさなきゃいけないよ」

レイ「…」

アスカ(自分は散々命令違反してんじゃなかったけ…)

シンジ「大丈夫、絶対楽しいよ…僕は、2人に仲良くしてほしい…」

レイ「…碇くんがそう言うならそうする。」

シンジ「カヲルくんも…綾波と仲良くしてくれる?」

カヲル「もちろん、君の願いは必ず叶えるよ。」



夕方。
レイの号室。(ミサトのマンション)


シンジ「ふぅ、これで引越し完了だね」

アスカ「まさか、女の引越しがこんな簡単に終わるなんて…アンタ、少しは女らしくしたら?」

レイ「…」

カヲル「やぁ」スタスタ

シンジ「あ、カヲルくん」

カヲル「レイくんの引越しは終わったのかな?」

シンジ「うん、カヲルくんの荷物は…それだけ?」

カヲル「あぁ、特に大切にしているものもなくてね…この寝袋だけで充分なのさ。」

カヲル「レイくん、よろしく。」スッ

レイ「」プイッ

カヲル「…ずいぶんと嫌われているようだね…」

シンジ「……まあ…これからゆっくり仲良くなればいいよ…」

シンジ「僕らは隣にいるから7時になったら晩ごはん食べに来てよ」

カヲル「ありがとう。シンジくん」ニコッ

シンジ「そ、そんな大したことじゃないよ///」

アスカ「ほら、はやく帰るわよ…やりたいことがあんの」スタスタ

シンジ「じゃ、仲良くね」タッタッタ


プシュン、ピシャ


カヲル「…」

レイ「…」

カヲル(第1の少女、綾波レイと仲良くなる…シンジくんの願いを叶えなければね。)

カヲル「シンジくんの料理、楽しみだね。」

レイ「話しかけないで。」

カヲル「…」

カヲル「しかし、君の荷物も少ないね、リリンの少女はもう少しおしゃれにしているものさ」

カヲル「リリンの形をしているなら、真似をしてみたらどうだい。」

レイ「? あなたには関係ない。」ムッ

カヲル「…ん、これは…」スッ

レイ「! それはダメ!」タッ、ダキッ

カヲル「それはなんだい?」

レイ「これは…碇くんにもらった星座図鑑…碇くんが解説を書き込んでくれた…」ギュ~

カヲル「大切にしているのかい?」

レイ「…宝物。」

カヲル「意外だよ…まさか君にそんなものがあるなんて…リリンと共に過ごすことでリリンの感情を理解し始めたということなのかな。」

レイ「」ムッ

レイ「…あなたにあげたいものがある。」ガサゴソ

カヲル「フフ、やっと心を開いてくれたのかな。」

レイ「…ガム。」スッ

カヲル「?…ありがと———」バッチーン!!

カヲル「ツッッアァ!!!」

レイ「…ガムパッチン…ネズミ捕りの仕組みを人間に応用した嫌がらせの道具。」

カヲル「ツッ〜〜〜………まさか、第1使徒のこの僕が…こんな罠にかかるなんて」

レイ「えっ!!」

カヲル「?」


レイ「あなた…使徒なの?」

カヲル「えっ、君も同じだろ?」

レイ「違う。私は人間。」

カヲル(時々話がかみ合わないと思ったら、そういうことか!)

カヲル「どうやら…君は気付いていないようだね…いや、それ———」
レイ「このことは碇司令に報告する。」ピッピッ

カヲル「ま、待つんだ!…話し合おう!」

レイ「なぜ?」

カヲル「………このことを報告していったい誰が幸せになるんだい?」

カヲル「僕は危害を加えるためにここにいるんじゃない。シンジくんを幸せにするためにここにいるんだ。」

レイ「…」

カヲル「彼の幸せを望むのは君も同じだろ?」

レイ「…碇くんの幸せ…」

カヲル「そう、君が報告すれば否が応にもシナリオは進み始める…この日常を壊すことをシンジくんは望まないはずさ。」

カヲル「そうだろ?」

レイ「…」

レイ「……報告は…保留する。」

カヲル(乗りきれたようだね…話を逸らそう。)

カヲル「そうだ、シンジくんの所へ行こう。そろそろ夕食の時間だ。」

レイ「…ええ」



シンジ達の号室。
玄関前。


ピンポーン

プシュン


カヲル「やあ。」

シンジ「カヲルくん」

カヲル「手伝いに来たよ…レイくんと一緒にね。」

レイ「…」

シンジ「ありがとう、でももう準備はできてるんだ」

シンジ「今呼びに行こうと———」
アスカ「バカシンジー…ルール厳守!」

シンジ「………呼びに行こうとしてたんだ……ピョン///」

レイ「…ピョン?」

アスカ「いい子よ!ウサシンジ!」

カヲル「…頭につけてるのは、ウサ耳かい…?」

シンジ「う、うん…今、アスカと遊んでたんだ…ピョン///」

アスカ「ほら〜はやく人参スティック食べなさいよ〜」

レイ「…」

シンジ「アスカ…やっぱり恥ずかしいよ…」モジモジ

アスカ「大丈夫よ、アンタがちゃんとやれば私もウサアスカになるから」

シンジ「本当?」

アスカ「本当…だピョン!」

シンジ「ハハ、かわいい」ニコニコ

レイ「…」



イチャイチャ


レイ「…碇くん…私、夕食いらないから。」タッタッタッ

シンジ「えっ!綾波!」

カヲル「…」

シンジ「どうして…」

カヲル「…」

カヲル「………実は、僕がレイくんと友情を深めるために、向こうの部屋で食事をすることを提案したんだ。」

シンジ「そっか…」

カヲル「鉄は熱いうちに打つということさ…リリンの心は複雑だからね。夕食、持っていっていいかな?」

シンジ「うん、今用意するよ」



レイ達の号室。


レイ「…」


プシュン、ピシャ


カヲル「…夕食、もらってきたよ。」スタスタ

レイ「…」

カヲル「…どうして帰ってしまったんだい?」

レイ「…わからない…」

レイ「ただ…碇くんと2号機の人が楽しそうにしてるのが…嫌だった。」

レイ「碇くんが笑顔でいるのは嬉しいはずなのに…2人ともポカポカしてたのに…」

カヲル「……君は嫉妬してるんだね…アスカくんに…。」

レイ「嫉妬…わからない。」

カヲル「…シンジくんを自分にものにしたいんじゃないかい?」

レイ「…違う。…碇くんの自由を奪いたくない。」

カヲル「難しいね……じゃあ…」

カヲル「君がシンジくんを幸せにしたいのかな。」

レイ「…」

カヲル「アスカくんは見ての通りシンジくんの笑顔を引き出してる…」

カヲル「だけど君はどうなのかな?」

レイ「…」

カヲル「あまり…笑顔にできていないんじゃないかい?」

レイ「…ええ…」

カヲル「このままだと君はシンジくんにとって必要じゃなくなるかもしれない…」

カヲル「それが“嫌”であり…怖いんじゃないのかな。」

レイ「…そうかもしれない…」


カヲル「………君は、気付いていないようだね…シンジくんは君ともっと仲良くなりたいと思ってるんだよ。」

レイ「…」

カヲル「君がシンジくんの幸せを願うようになったきっかけはなんだい?…彼の優しさに触れた時じゃないかい?」

レイ「…」

カヲル「シンジくんが君の“本当の気持ち”知ることが出来たらとても喜ぶだろうね。」

レイ「本当の気持ち…」

カヲル「君がシンジくんを好きってことさ。」

レイ「好き…///」

カヲル「…そうだ、シンジくんに告白してみたらどうだい。君の本当の気持ちをさ。」

レイ「えっ!」

カヲル「そうすればシンジくんとの距離も縮まって、君がシンジくんを幸せにすることができるようになるよ。」

カヲル「そして君の嫉妬も解消される。どうだい、告白してみないかい?」

レイ「…わかったわ。」

カヲル「フフ、シンジくん喜ぶよ。」

カヲル(この告白を成功させたら彼女も心を開いてくれるだろう…。シンジくんの願いを叶えられる。)

カヲル(もしかしたら、もう開いてるかもしれないな…)

レイ「あなた…使徒のくせにいいこと言う。」

カヲル「…」

レイ「でも、もう少し短く話して欲しかった。」

レイ「あなたとは極力話していたくないから。」

カヲル「…どうして、そんなに僕のことを嫌うんだい?…もしかして、僕とシンジくんの仲に嫉妬してるのかい?」

レイ「…そういうところが嫌い。気持ち悪いから。」

カヲル「…」

カヲル「…夕食にしようか…」



サッサッ、カチャ、パク、パク


レイ「…おいしい。」

カヲル「素晴らしいよ、シンジくん。」


パク、パク、カチャ


カヲル「ごちそうさま。」
レイ「ごちそうさま。」


カチャ、カチャ、ザッザッ


カヲル「…」

レイ「…」

カヲル「…どういう告白をするつもりなんだい?」

レイ「…私が…碇くんともっと仲良くなりたい…もっと側にいたい…ということを伝える。」

カヲル「いいね……告白の練習、してみるかい?」

レイ「…」


カヲル「僕がシンジくんのふりをするから君が告白するんだ。」

カヲル「本番で失敗しないためにさ、やってみようよ。」

レイ「…わかったわ。」

カヲル「じゃあ、始めるよ。」

レイ「…碇くん、伝えたいことがあるの。」

カヲル「…綾波…」

レイ「…碇くん…わ、私は———」
カヲル「もう僕はエヴァに乗りたくないんだよ!!」

レイ「えっ」

カヲル「エヴァに乗ってもいいことないんだ、誰も僕に優しくしてくれない…僕はいらない人間なんだ…」

レイ「…」

カヲル「だから…もう来ないでよ…綾波…」

レイ「………あなた、碇くんが嫌いなの?」

カヲル「? なんか変だったかな?」

レイ「いつもの碇くんはそうじゃない。」

カヲル「…いつものシンジくんか…そうだね、やってみるよ。」

レイ「…」

カヲル「じゃあ、気を取り直して始めるよ。」

レイ「…碇くん。」

カヲル「やあ、綾波」

レイ「…伝えたいことがあるの。私は———」
カヲル「僕はカヲルくんが大好きだ!!」

レイ「…」

カヲル「今日もカヲルくんと話したよ、楽しかったな〜」

カヲル「で、なんの用なの綾波」

レイ「…ふざけないで。そんな碇くん見たことない。」

カヲル「そうかな…」

レイ「真面目にやらないなら、もう練習しないでいい。」

カヲル「分かった、次こそはしっかりやるよ。」


カヲル(このままではレイくんとの溝が広がってしまう…何とかしなければ…)

カヲル(シンジくんが持ってる独特の雰囲気をかもしだすんだ…第1使徒の僕にならできる!)

フワッ

カヲル「やあ、綾波」

レイ(えっ…碇くんが目の前にいるように感じる…)

レイ「あ、あの、碇くん」ドキドキ

カヲル「なに?」

レイ「つ、つたえたい………」

カヲル「…」

レイ「…」

カヲル「…」

レイ「…」

カヲル「…どうしたんだい?」

レイ「…出来ない。…胸がドキドキして何も言えなくなる。」

カヲル「…気持ちを伝えるのは難しい行為なのかもしれないね。」

カヲル「目的はシンジくんともっと仲良くなって側にいることだからね、方法は他にもあるさ。」

レイ「…」


カヲル「…アスカくんに相談してみようか。」

レイ「…なるべく2号機の人には頼りたくない。」

カヲル「気持ちはわかるけど…」

レイ「赤木博士に相談する」ピッピッ、テゥルルル

リツコ『あら、レイ、何の用』

レイ「…碇くんと仲良くなるにはどうすればいいですか?」

リツコ『あなたがそんなことを言い出すとはね…』

リツコ『思春期の少年は性欲に抗えないものよ、体を使いなさい。そうすればシンジくんはあなたの虜よ』

レイ「シンジくんを自分のものにしたいわけじゃないです。」

リツコ『ありえないわ。正直になりなさい。』

レイ「もういいです。」プツン

レイ「葛城一佐にする…」ピッピッ、テゥルルル

ミサト『あ、レイ〜どうしたの〜』

レイ「…碇くんと仲良くなるにはどうすればいいですか?」

ミサト『あら、プフフ、レイもお年ごろなのね〜』

レイ「…」

ミサト『シンちゃんは〜裸で抱きついちゃえばイチコロよ!!…まあ、これは冗———』プツン

レイ「…なぜ…」

カヲル「大人には君の純粋な気持ちは理解できなさいのさ。」

レイ「…」

カヲル「同い年で君の気持ちがわかるアスカくんに相談しようよ。」

レイ「…わかったわ。」

カヲル「僕が呼んでくるよ。」スタスタ



シンジ達の号室。
玄関前。


ピンポーン

プシュン


アスカ「何の用ピョン」ピョコン

カヲル「…」

シンジ「アスカー パンの耳、食べやすいように揚げて砂糖をまぶしてみたんだ、食べてよ」

アスカ「わかったピョン」ポリポリポリポリ

シンジ「ハハ、食べ方が本物のウサギみたいだよ。」

アスカ「ん〜合格ね。これだったら食べられるピョン」

シンジ「よかった…」

カヲル「えっと…アスカくんに用があって来たんだ。」

シンジ「アスカに?」

カヲル「ちょっとこっちの部屋に来て欲しいんだ、アスカくんだけ。」

シンジ「…」

アスカ「…めんどくさいから、イヤ〜」

カヲル「お願いだ、アスカくん。」ペコリ

シンジ「ウサアスカ!」

アスカ「う〜、しかたないピョン」ウサミミ、ポイッ



レイ達の号室。


カヲル「———というわけでシンジくんとレイくんを仲良くするのを手伝って欲しいんだ。」

アスカ「イヤよ、なんで私がそんなことしなきゃいけないわけ」

レイ「…」

カヲル「…できないのかい?」

アスカ「できるわ!私なら簡単よ!」

カヲル「なら、頼むよ。」

アスカ「イイイヤッ!!」

レイ「…」スタスタ、ガサゴソ

レイ「これ。」スッ

カヲル「!! それは、君が宝物だと言っていた星座図鑑じゃないか!!」

レイ「…いいの。」

アスカ「」パラパラ

アスカ(…バカシンジの字でなんか書いてある…バカシンジからのプレゼントってとこね)

レイ「物で満足してちゃダメ…それは一方的な満足」ジワッ

レイ「私は碇くんと心を通じ合わせたい…だから…それをあなたにあげる」ポロポロ

アスカ「わ、わかった…手伝ってあげるわよ…」

レイ「!!」

カヲル「アスカくん!!」

アスカ「これも返すわよ…こんなもんもらっても嬉しくないから」スッ

レイ「ありがとう。」ダキッ、ギュ〜


カヲル「で、どうするんだい?」

アスカ「焦んないで…今ちょっと考えてるから」

アスカ(バカシンジと仲良くなる方法…そんなもんバカシンジに甘えまくっちゃえばいいじゃない…エコヒイキは距離を置き過ぎなのよ…)

アスカ(でも…エコヒイキがバカシンジに甘えまくるのは、なんかイヤね…となると他の方法か…)

アスカ「エコヒイキ!!まずはハッキリさせるわ!」

アスカ「アンタ、バカシンジが好きなのね!」

レイ「///」コクッ

アスカ「そう…」

レイ「好き…愛を表す言葉…///」

アスカ「“愛を表す言葉”ああ〜、そこがダメなのよ!!」

レイ「…」

アスカ「アンタの言い方は、かわいくない!!」ビシッ

レイ「!!」

アスカ「そんなんで女として見てもらおうなんて、どだい無理な話ね」

レイ「…」

アスカ「…アンタ、字は読めんのよねー」

レイ「ええ。」

アスカ「だったら勉強あるのみ!感情ではなく知識として取り込んで、恋愛偏差値を無理やり上げんのよ!!」

レイ「はい。」

アスカ「本屋は…まだ開いてるわね、アンタは待ってなさい、ナゾポエムは荷物持ち!」

レイ「…」

カヲル「…わかったよ。」



———1時間後。


バンッ、ドサッ


アスカ「恋愛用語大辞典、男をオトすテクニック百科、女として生きる…などなど計10冊!」

アスカ「これを全部頭に詰め込むの、期限は1週間!」

レイ「はい。」

カヲル「…重かった。」

アスカ「それとね…あんたバカだから言っておくけど、それをただ暗記してまねするだけじゃダメなのよ」

レイ「…」

アスカ「相手のことを想って、相手が喜ぶように応用する…それが大事なの」

アスカ「要は、アンタのバカシンジへの愛が試されるのよ」

レイ「碇くんへの愛…」メラメラ

レイ「わかったわ。」

アスカ「ふん、いい意気ね…だけどね、これはまだ前段階、つまりただの準備なのよ…私のシナリオを実行するためのね…」

レイ「…シナリオ?」

カヲル「いったい何をしようとしているんだ、君は…。」

アスカ「その名も…“シンデレラ大作戦”!!」ババーン!!


ゴニョゴニョ


カヲル「…おもしろい、さすがリリンだ。」フムフム

レイ「…ロマンチック。」ポカポカ

アスカ「ふふん、そうでしょ」

アスカ「ガラスの靴うんぬんは無視して、どん底から這い上がるシンデレラ・ストーリーを
ベースにしたシナリオよ」

カヲル「君はロマンチストだったんだね、意外だよ。」

アスカ「うっさいわね」


レイ「予定はどうするの?」

アスカ「1週間後…ネルフで舞踏会を開く」

レイ「!」

アスカ「だからアンタには1週間で踊りを覚えてもらうから」

カヲル「! レイくんはあの本も読まなければいけないんだろう?そのスケジュールは厳し過ぎないかい?」

アスカ「あんたバカァ、いつ使徒が来るかもわかんない状況なのよ!明日にでも実行したいぐらいよ!」

カヲル「しかし…」

レイ「いいの。」

レイ「碇くんのためなら何でもできる…愛の力。」メラメラ

カヲル「…」

アスカ「…私が悪役になるんだから感謝しなさいよね、そして…絶対成功させること」

レイ「はい。」

カヲル「…舞踏会はどうやって開催するんだい?」

アスカ「そんなの、このアスカ様が司令室に行ってちょっと色目を使ってお願いすれば万事解決よ」

カヲル「…無理じゃないかな。」

レイ「…私が碇司令にお願いしてみる。」ピッピッ、テゥルルル

カヲル「…ネルフも忙しいじゃないかな…」


ゴニョゴニョ


レイ「ネルフ職員全員召集して開催してくれるって、主催者を誰にするか決めなさいって」

カヲル「…できるんだね…」

アスカ「ふん、エコヒイキなだけはあるわね、主催者は私にまかせなさい!」

アスカ「…準備を始めんのは早いほうがいいわ…今すぐバカシンジを呼ぶわよ」ピッピッ、テゥルルル


ゴニョゴニョ、プツン


アスカ「シンデレラ大作戦、始動!!役になりきること、忘れないで!!」

レイ「了解。」

カヲル「すべてはアスカくんのシナリオ通りに。」


レイ達の号室。
玄関前。


シンジ「いきなり来いって…どうしたんだろ」


ピンポーン


プシュン


レイ「どうぞ、お入りください。」

シンジ「…丁寧だね」

アスカ「ほら、奴隷!モタモタしてないで雑巾がけの続きやりなさい!」

シンジ「?」

レイ「はい。」スタスタ

シンジ「えっ!」

レイ「」フキフキ

シンジ「…アスカ…どういうこと…」

アスカ「今日からエコヒイキは私の奴隷になったの」

シンジ「なんでだよ!」

アスカ「…そういう約束だったのよ、シンクロテストで負けたら奴隷になるっていうね」

シンジ「おかしいよ…そんなの…」

アスカ「ちょっと!拭き残してるわよ!このグズ!」ペチン!

レイ「申し訳ございません。」

シンジ「ッ!カヲルくん!こんなことやめさせてよ!」

カヲル「僕はやめるように言ったんだけどさ…」

レイ「これでいいの。」

シンジ「…」

アスカ「他にもい〜っぱいやることがあるんだから、さっさと終わらせなさい!このノロマ!」ペチン!

シンジ「アスカ!やめてよ!」

アスカ「うっさい!バカシンジは黙ってて!」

シンジ「…綾波!そんな約束守る必要ないよ……奴隷だなんて…」

レイ「いいの…碇くん、ありがとう…」

レイ「心遣いだけで、うれしい。」

シンジ「…」

アスカ「…言い忘れるところだったわ」

アスカ「私、今日からこっちに住むから」

シンジ「なっ!!」

アスカ「アンタはあっちでひとりぼっちよ」

シンジ「…」

アスカ「わかったら、さっさと帰る!」シッシッ

シンジ「…」テクテク


プシュン、ピシャ


———翌日。

シンジの部屋。


ガラッ


シンジ「…おはよう」


シン………


シンジ(…そうだ…アスカはいないんだ…ミサトさんも帰って来なかったし…)

シンジ(綾波…奴隷だなんて…)


テゥルルル


ポチッ


シンジ「はい、もしもし」

ミサト『シンちゃん、うれしいお知らせよ』

シンジ「何ですか?」

ミサト『なんと!1週間後にネルフで舞踏会が開催されることになりました〜!!』パチパチパチパチ

シンジ「…」

ミサト『シンちゃんは誰と行くのかしら〜それとも、“どっちと”のほうがいいかしら、プフフ』

シンジ「そんな…」

ミサト『まあ、そういうことだから、バイバ〜イ』プツン、ツーツー

シンジ「…」

シンジ「…綾波…誘おうかな…」


学校。
昼休み。


シンジ「」スタスタ

シンジ「あの、綾波」

レイ「…」

シンジ「お弁当、作ってきたんだ」スッ

レイ「! あ、ありがと———」
アスカ「待ちなさい!!」

シンジ「アスカ…」

アスカ「私の奴隷に勝手にエサ、やらないで」

シンジ「そ、そんな言い方…」

アスカ「あとね、私とコイツには専属のシェフがついてんの」

シンジ「え…」

カヲル「…僕のことだよ。シンジくん。」サッ

シンジ「カヲルくん!」

アスカ「私のコックのお弁当、みてみなさい!」パカッ

シンジ「!!」

シンジ(美しい…!!彩りだけじゃなく、料理の一品一品の質が驚くほど高い!)

シンジ「カヲルくんは…何でもできるんだね…」

カヲル「そんなことないさ、君の料理のほうがおいしいのは確かだよ。」

シンジ「…」

アスカ「だからアンタはもう用済みってわけ、そのお弁当はペンペンにでも食べさせることね」

シンジ「…うん」


シンジ「…あ、あのさ」

アスカ「なに、まだなんかあるわけ?」

シンジ「…舞踏会のことなんだけどさ…」

レイ「…」

アスカ「ふ〜ん、バカシンジのわりに情報はやいわね」

シンジ「踊り相手を誘って行ったりするらしいんだ…」

レイ「…」ドキドキ

アスカ「…」

シンジ「…その、だから…綾波…一緒に行ってくれないかな?」

レイ「…」パアァァァ

アスカ「ダメよッッ!!」

アスカ「コイツは連れてかないって決めてたの!…こんな汚い女、舞踏会には不相応よ!!」

シンジ「そんなことないッ!!綾波はきれいだよ!!」

レイ「///」ポカポカ

アスカ「」ギリリリ

アスカ「…なに言っても無駄よ…私がダメって言ったらダメなんだから」

シンジ「綾波!行こう、舞踏会に!」

レイ「………ご主人様がダメって言ってるから…行けない。」

アスカ「そういうこと」

シンジ「そ、そんな…」

アスカ「あ〜あ、フラれちゃったわね〜」

シンジ「…」

アスカ「これじゃあ、バカシンジはひとりで踊ることになるわね〜」

シンジ「…」

アスカ「…私が一緒に行ってあげよっかな〜」

シンジ「…今のアスカとは…踊りたくない」

アスカ「この私の誘いを断るわけ?」

シンジ「…」

アスカ「…アンタが私のいうこときいてれば…いつか奴隷を解放するかもね」

シンジ「! ………わかったよ、行くよ…」

アスカ「違うでしょ!!」

シンジ「…」

シンジ「…アスカ…僕と一緒に舞踏会に行ってくれませんか…」

アスカ「いいわよ」ルンルン

レイ「…」


舞踏会当日。
夕方。
シンジ達の号室。


アスカ「どう?」クルッ

シンジ「…うん、すごく似合ってるよ…ドレスはやっぱり赤なんだね」

アスカ「あったりまえじゃない」

アスカ「…お化粧もちょっとしてるんだけど、どう?」

シンジ「ああ、だからか…いつもより綺麗だよ」

アスカ「本当?」

シンジ「うん」

アスカ「そう」ニコニコ

シンジ「…」

シンジ(…綾波…どうしてるかな…)

アスカ「じゃあ私はやることあるから先に行ってるわね」

シンジ「うん」

アスカ「あ〜あ、迎えに来てもらうのやりたかったのにー」

シンジ「しかたないよ」

アスカ「私の開会の挨拶ちゃんとみてなさいよ」

シンジ「わかってるよ」

アスカ「いってきまーす」


プシュン


シンジ「いってらっしゃい…」


ピシャ


シンジ「」ゴロン

シンジ(…1週間あったのに…アスカどころか綾波すら説得できなかった…)

シンジ(綾波…実は、舞踏会に行きたくないのかな…?)

シンジ(…考えるのはやめよう…どうせ、綾波がアスカの奴隷をやめないと…僕にはなにも出来ないんだ…)


ピンポーン


シンジ「誰だろう?」ムクッ


プシュン


カヲル「シンジくん。」

シンジ「カヲルくん…」

カヲル「…元気ないね。」

シンジ「そ,そんなことないよ…」

カヲル「…君に渡したいものがあるんだ。」スッ

シンジ「…カードキー?」

カヲル「レイくんの部屋のカギだ。」

シンジ「!!」

カヲル「レイくんを舞踏会に連れて行ってあげたいんだろう?」

シンジ「でも…アスカが…」

カヲル「アスカくんは僕に任せるんだ。なんとかしてみせるさ。」

シンジ「で、でも…」

カヲル「君がレイくんを助けるんだ!!」

シンジ「…」

カヲル「レイくんも君のことを待ってるさ。」

シンジ「…わかった、ありがとう、カヲルくん!」タッタッタッ

カヲル「…」

カヲル「…すべてはシナリオ通りに。」


レイ達の号室。


プシュン


シンジ「綾波ッッ!!」

レイ「碇くん!」キラキラ

シンジ「! 綾波…ドレス、どうして…?」

レイ「…舞踏会…行きたいけど行けないから…ひとりで踊ってたの…」

シンジ「…綾波」

レイ「お化粧もしたの…」

シンジ「…綺麗だよ」

レイ「///」ポカポカ

シンジ「…綾波!舞踏会に行こうよ!!」

レイ「でも…」

シンジ「綾波が行かないって言っても、僕が連れてく!!」

レイ「…ご、ご主人様が…」

シンジ「なにがあっても、綾波は絶対守る!!」

レイ「…」

シンジ「だからさ、行こうよ」スッ

レイ「…はい。」ニギッ


NERV本部。
舞踏会会場。


司会「———それでは、2号機パイロットの式波・アスカ・ラングレー大尉の開会の挨拶です。」

アスカ「ええ、コホン、開会の挨拶———」

ナガナガ

アスカ「———という私の血の滲む努力によって、この舞踏会を開催することが出来たのです!」


パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ


アスカ「コホン、では、これより舞踏会を開会します!!」


パチパチ パチパチ イヤッホーー!! マッテマシター! カワイイー アリガトー パチパチ パチパチ

〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪ 


ミサト「盛り上がってるわね〜」

加持「日頃の鬱憤の溜まりようがわかるな」

ミサト「アスカさまさまね」

加持「…なあ葛城、踊らないか?」

ミサト「な、私はムリよ…やったことないし」

加持「俺がリードしてやるよ、ほら」グイッ

ミサト「もう、強引なんだから…」テクテク



マヤ「ネルフにこんな大きなホール会場があったなんて…驚きました、先輩」

リツコ「ここはあらゆることに対応できるようになってるのよ」

マヤ「…」モジモジ

マヤ「…先輩!あの…」

リツコ「なに?」

マヤ「わ、私と踊っていただけませんか?」

リツコ「イヤよ、なにが悲しくて女同士で踊るのよ」

マヤ「…そ…そうですね…」

リツコ「それにしても…みんな踊ってるわね…」

マヤ「…そうですね…」

マヤ「…じゃあ…私は…副司令誘ってみよおっかな…」

リツコ「えっ」

マヤ「副司令っておじいちゃんみたいで、なんか安心できるんですよね」

リツコ「…」

マヤ「先輩は司令を誘ってみたらどうですか?…なんちゃっ———」
リツコ「行くわよ!!」ガタッ

マヤ「…」


冬月「盛り上がっているな」

ゲンドウ「ああ」

冬月「第2の少女はああ言ってたが、本当はお前が仕組んだそうじゃないか」

ゲンドウ「レイの頼みだ…それに、セッティングはすべて彼女が整えた…私は許可しただけだ」

冬月「そうか…レイくんが…」

リツコ「」ダッダッダッ
マヤ「」テッテッテッ

リツコ「…」ピタッ

冬月「」ビクッ

ゲンドウ「…」

マヤ「あの…副司令」

冬月「…なんだね?」

マヤ「私と踊っていただけませんか?」

冬月「え!わ、私かね」

マヤ「はい、冬月副司令です」

冬月「なんということだ…」ウルウル

冬月「女性の優しさに触れたのは何年ぶりだろうか…いや、ただの優しさ自体もう何年も感じてないな…」

ゲンドウ「…」

冬月「ありがとう、喜んでおともさせてもらうよ」

マヤ「やったー」ウキウキ

冬月「じゃ、行ってくるぞ、碇」テクテク

ゲンドウ「ああ」

リツコ「…」

ゲンドウ「…」

リツコ「…ひとりになってしまいましたね」

ゲンドウ「…」

リツコ「もう踊ってないのは…私とあなたぐらいでしょうね」

ゲンドウ「…」

リツコ「…よかったら、私と踊りませんか?」

ゲンドウ「断る」

リツコ「」


アスカ「うわ〜人多いわねー」

アスカ「バカシンジはどこにいるのよ〜」キョロキョロ

カヲル「アスカくん。」

アスカ「あ、シェフ」

カヲル「…アスカくん、僕と一緒に踊ってくれないかな?」

アスカ「イヤよ、シンジがどこにいるかしらない?」

カヲル「…お願いだアスカくん、僕と踊ってくれないか?」

アスカ「ずええっったいイヤッッ!!バカシンジはどこよ!!」

カヲル「…しかたない…こっちだよ…」


シンジ「おいしいね、綾波」モグモグ

レイ「ええ、碇くんと食べるものは何でもおいしい。」

シンジ「え、そんな、料理が美味しいんだよ…誰と食べても同じだよ」

レイ「そんなことない。」

レイ(ここで目をみて…)ジィー

シンジ「ええと」アセアセ

レイ「碇くんと食べるのがおいしいの」ウルッ

シンジ「///」

レイ(遠くを見ながら、切なげに…)

レイ「…ああ、碇くんと一緒にいられる時間……この幸せな時間がずっと続けばいいのに…」

シンジ「そ、そう…///」

シンジ(いつもの綾波と全然違うよ…照れる…)

シンジ「あ、綾波…僕達もそろそろ踊ってみない?」

レイ「え…」

シンジ「そのために来たんだからさ、ね」スッ

レイ「わかっ———」
アスカ「バカシンジ!」タッタッタッ

シンジ「え、ア、アスカなんで…」

カヲル「済まないシンジくん…失敗してしまったよ。」

シンジ「そ、そんな…」

アスカ「ちょっと!奴隷!!アンタなんで来てんのよ!!」グイッ

レイ「…」

シンジ「やめてよアスカ!」バッ

シンジ「僕が誘ったんだ!アスカに止められる筋合いないよ!!」

アスカ「あるわ!私はその奴隷の主人、そしてこの舞踏会の主催者よ!」

シンジ「…だからなんだよ!」

アスカ「バカね、今すぐ黒服に追い出してもらうから」

シンジ「なっ!!」


アスカ「こんな汚い女…舞踏会にいてもらっちゃ困るのよ」

レイ「…」

アスカ「…そして…バカシンジは私と踊るの…」

シンジ「そんな…」

レイ「待ってください!!」

シンジ「!」

アスカ「…なによ?」

レイ「1回だけでいいから…碇くんと踊らせてください!!」

アスカ「ふん、アンタたちが踊ってもアヒルが歩いてるようにしか見えないわよ!」

レイ「そんなことない!!」

シンジ「…」

アスカ「…わかったわ、やってみなさい…もし、美しく踊れたら舞踏会にずっと参加してもいい…」

シンジ「!」

レイ「…」

アスカ「…だけど、汚い踊りを見せたら即刻追い出して、死ぬほど辛い罰を与えるからから」

レイ「わかりました。」スタ

シンジ「…わかったよ…」スタ


レイ「頑張りましょう。」

シンジ「うん…」

レイ「…碇くん、私、踊りには心得があるの…」

シンジ「そうなんだ」

レイ「だから、碇くんは私に合わせてくれればそれでいい。」

シンジ「できるかな…いや、やらなくちゃいけないんだ!」

レイ「そんなに気負はなくていい…私は碇くんと踊れるだけで幸せ」

シンジ「綾波…」

レイ「心配ないわ、私と碇くんの心と心が繋がっていれば必ずできる」

シンジ「心と心…そうだね…行くよ、綾波!」スッ

レイ「ええ」ニギッ


〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪


ネルフ職員A「おい、あれ…零号機パイロットと初号機パイロットじゃないか!」

ネルフ職員B「ん?んん!!なんて鮮やかな踊りなんだ…」

ネルフ職員C「これが…本当の踊り…」

ミサト「ふたりとも…うますぎる…」

加持「ここは一旦踊るのを控えたほうがいいようだな…みんなそうしてる」

マヤ「きれい…白鳥が舞っているかのよう…」

冬月「ああ…演奏家たちまでふたりに合わせだした…このホールにある全ての視線が彼らに注がれている…」

リツコ「チッッ!」

ゲンドウ「…」


〜〜〜〜♪ ダッタタタンッ♪


シンジ・レイ「」バッ


パチパチ パチパチ フーフー ブラボー! ヒューヒュー パチパチ パチパチ
パチパチ パチパチ ウマイ! コッチミテー サイコー! パチパチ パチパチ


シンジ「アスカ!どう!」

アスカ「なんて美しい踊りなの…完敗だわ…」ガクッ

シンジ「おし!」

レイ「嬉しい…。」ポカポカ

アスカ「こんな美しい踊りを踊る人を奴隷にはできない…開放するわ」

シンジ「ええ!!本当に!?」

アスカ「ええ…本当よ…」

シンジ「やった!!やったね!綾波!!」

レイ「ありがとう。碇くんのおかげ…」ポカポカ

カヲル「おめでとう。美しかったよ。」パチパチ

シンジ「あ、ありがとう、カヲルくん///」

カヲル「もう一回、踊ってきたらどうだい?」

シンジ「え…」


アンコール、パンッ、アンコール、パンッ、アンコール、パンッ…


シンジ「そうだね…」

レイ「今度は碇くんにリードしてほしい…。」ピトッ

シンジ「///…ま、まかせてよ!」


〜〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜♪


カヲル「本当に…綺麗だ…。」

アスカ「ちょっと、ナゾポエム!」

カヲル「…なんだい?」

アスカ「アンタ、私と一緒に踊りなさいよ…バカな観衆に私の踊りをみせつけてやんのよ!エリートの踊りってやつをね!」

カヲル「フフ、わかったよ。」


〜〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜♪


———22時。


司会「———それでは、冬月コウゾウ副司令官の閉会の挨拶です。」


キリッ、ビシッ、スタ


冬月「楽にしたまえ。この会は君たちをねぎらうためにも開かれたのだ。」

冬月「早く床につきたい者、まだまだ遊び足りない者、色々いるだろうからな、挨拶は短めにさせてもらうよ。」

冬月「俺からは一言だけだ………また、やりたいな。」


イエーイ!!


冬月「…では、これにて閉会とする。」


パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ


帰路。
ミサト一行。


ミサト「盛り上がったわね〜」

マヤ「そうですね」

加持「葛城が盆踊りを踊り出した時は冷や汗をかいたがな」

マヤ「本当ですか!?」

ミサト「うっ、ま、まあね…なにを踊ればいいのかわかんなかったのよ」

加持「周りを見ろよ…」

マヤ「フフ」

青葉「オレの歌を聴けええええええ!!!」ジャラーン!!

ミサト「はい、はーい、聴いてるわよ〜」

ミサト「…みんな…本当に楽しそう…」

加持「そうじゃない人もいるようだけどな…」

リツコ「チクショオオオオオオッッ!!!!」ガンッ

マヤ「…」

リツコ「あの流れで断るなんてッッ!!論理的におかしいわよッッ!!」ダンッダンッ

ミサト「…あの、リツコ…少し落ち着いたら…なんてね…へへ」

リツコ「」ギロリ

ミサト「」ドキッ

リツコ「ミサト…今日は朝まで飲むわよ!!次はあの店行くわよ!!」

ミサト「ええっと…それはちょっとー…」

リツコ「え…」

ミサト「私さ、ほら…加持くんと〜、ね…だから〜ごみん」ペコリ

リツコ「チクショオオオオオオッッ!!!!」ガンッ

ミサト「」ビクッ

リツコ「アンタはそういう女よッ!!友情よりッッ!!男ッッ!!」バンッバンッ

リツコ「こんな世界セカンドインパクトで滅びればよかったのよおおおお!!!」

ミサト「…」

リツコ「…私には…誰もいない…誰もいないのよ…」ガクッ

リツコ「」シクシク

マヤ「先輩!!」

リツコ「…」ムク

マヤ「私が付き合いますよ!わ、私は…先輩とずっと一緒にいたいですよ!」

リツコ「マヤッ!!」ダキッ

マヤ「先輩!!」ダキッ


帰路。
シンジ一行。


シンジ「今日は楽しかったね」

レイ「ええ。」
アスカ「まあね」
カヲル「そうだね。」

カヲル「君たちの踊りは本当に綺麗だったよ。」

シンジ「アスカとカヲルくんも上手だったよ」

アスカ「当たり前でしょ」

シンジ「ネルフの人たちも楽しそうだったし」

シンジ「本当にいい思い出ができたね…」

レイ(月が出てて、良い雰囲気……パーソナルエリアに侵入して…)

レイ「…碇くん、私もうひとつ思い出がほしいの…」スリスリ

シンジ「な、なに?///」

レイ「手、つないでもいい、ですか…?」ウワメズカイ

シンジ「え、あ、う、うん///」ギュッ

アスカ「」ムッ

アスカ(…そろそろバラそうかな…このままだと私、本当に悪いヤツになちゃうし…)

アスカ「バカシンジ!」

シンジ「なに?」

アスカ「このシナリオはね、私が考えたのよ!!」

レイ「!!」
カヲル「!!」
シンジ「?」


カヲル(この雰囲気を壊そうというのか、彼女は!!レイくんの最終目標はまだ未達成だというのに!!)

レイ(…もう少し…こうしていたかった…)シュン

シンジ「アスカ、どういうこと?」

アスカ「実はね、ぶとう———」
カヲル「やめるんだ!!」ガシッ

アスカ「ん〜〜〜〜〜」

カヲル「行くんだ!!レイくん!!」

レイ「!!」

シンジ「?」

カヲル「シンジくんに気持ちを伝えるんだ!!」

レイ「」コクッ

レイ「碇くん、来て!」ガシッ

シンジ「え、綾波?」


タッタッタッ…


アスカ「」バッ

アスカ「離せ!!殴るわよ!!」

カヲル(ここで僕がアスカくんを止めることが出来れば、レイくんは目標を達成できる…)

カヲル(そして、僕に感謝するだろう…そうすれば僕のレイくんと仲良くなるという目標も達成できる!)

カヲル(なんとしても止めなければ…今こそレイくんと学んだことを活かすとき!)

アスカ「こおんのおお!!」ブンッ

カヲル「」パシッ

アスカ(! 止めた!!)

カヲル(物陰へ引っ張って…)グイッ

アスカ「わっ!」

カヲル(くちづけ!!)

アスカ「!!!!」


チュ〜〜〜


アスカ「」

カヲル「…君の瞳に乾杯。」キラッ

アスカ「」フルフル


ドンッ


カヲル「ッ!」

カヲル(突き飛ばした!…僕を拒絶するというのか!)

アスカ「………うっ、うう…うっく…」シクシク

カヲル「…」

アスカ「…殺してやる………殺してやる……殺してやる…」スゥー

カヲル(ファイティングポーズ…?第1使徒のこの僕に素手で挑もうというのか!?)

カヲル「フフ、舐められたものだね…リリンがエヴァを使わずに僕と戦おうと———」


ボコッッッ!!!!


カヲル「ぐッッ!!!!ふはッ!!」

アスカ「なんか言った…?」

カヲル(…し、信じられない…見えなかった、速すぎる…)

カヲル「!!」


ドゴッッッ!!!!


カヲル「うッッ!!!!」

アスカ「アンタが二度とふざけたこと出来ない体にしてやる…」

カヲル(…そうか、そういうことか…!彼女こそが、リリンの王だというのか!?)

アスカ「そして…アンタがこのことを忘れるまで私の拳は止まることはない…!!」

カヲル(…目標は達成できた…応援してるよ、レイくん…)

アスカ「こおんのおお〜〜」グググ

アスカ「エロガッパ!!!!」


ドッゴンッッ!!!!


タッタッタッ…


シンジ「あ、綾波、どうしたんだよ?」

レイ(もう…見えなくなった…)

レイ「そこのベンチに座りましょ。」

シンジ「う、うん…」

レイ「…」

シンジ「…」

レイ「…」

シンジ「…」

レイ「…」

シンジ「…あ、綾波…?」

レイ「碇くん!!」ジッ

シンジ「は、はい!」

レイ「あの…」

レイ(碇くんの両手を胸の前に持ってきて…)スゥー

シンジ「!」ドキドキ

レイ(顔を近づけて…)

レイ「伝えたいことがあるの…」ウワメズカイ

シンジ「/// な、なに?」

レイ「…あ、え…」


レイ(言葉が出ない…!!大丈夫、こういう時の練習もした…思い出して…)



カヲル『君は碇司令とは流暢にしゃべれているよね。』

レイ『ええ。』

カヲル『だったら、言葉に詰まったときはシンジくんを碇司令だと思い込めばいいんじゃないかな。』

レイ『わかったわ。』



レイ(目の前にいるのは碇くんじゃない、碇司令…碇司令…碇司令)

シンジ「綾波?」

レイ「あ、あの…碇司令。」

シンジ「父さん?」

レイ「え…あ!!///」カアアアア

レイ「ち、違うの!今のは忘れて!」アタフタ

シンジ「わ、わかったよ」

レイ(…どうしよう…間違えた………私には…無理なのかもしれない…)


———「行くんだ!!レイくん!!」———


レイ「…」


———「シンジくんに気持ちを伝えるんだ!!」———


レイ(そう、私は碇くんに気持ちを伝えたい…碇司令じゃなく…)

レイ(小細工はしない…この時のために1週間努力した…)

レイ(愛の力…!!)メラメラ


レイ「…い、碇くん。」

シンジ「なに?」

レイ「わ、私はもっと碇くんと仲良くなりたい!」

シンジ「? もう充分仲いいじゃないか」

レイ「そうじゃなくて…」

シンジ「…」

レイ「もっと碇くんの側にいたいの…」

シンジ「え…」ドキッ

レイ「この舞踏会も碇くんと仲良くなるために開いたの…2号機の人と協力して。」

シンジ「!!」

レイ「2号機の人は他にもたくさん手伝ってくれた…私をいじめてたのも私を碇くんと仲良くするための演技。」

シンジ「…そうだったんだ…カヲルくんは?」

レイ「あの人も親身になって助けてくれた…料理を作ったり、踊りの練習に付き合ってくれたり…」

シンジ「…すごく頑張ってたんだね」

レイ「碇くんに近づきたかったから…」

シンジ「…」

レイ「…碇くんの側で…」

レイ「私が碇くんを幸せにしたい!」

シンジ「///」

レイ「だから…私を碇くんの側にいさせてください!!」


シンジ「もちろん!!一緒に暮らそう!!」

レイ「え!!」

シンジ「え……い、嫌かな…?」

レイ「ううん」ブンブン

レイ「すごく嬉しい。」ポカポカ

シンジ「そう」ニコッ

レイ「告白してよかった…。」

シンジ「そろそろ、アスカ達のところに戻ろうか」

レイ「ええ。」


テクテク…


シンジ「アスカー、カヲルくーん」

レイ「…」ポカポカ

シンジ(あれ…誰かうずくまってる…?)

シンジ「!!」

シンジ「カヲルくん!」

カヲル「う…ひあ、シンヒふん…」

シンジ「どうして…」

カヲル「それあ…なにもおほえていないんらよ…。」

アスカ「アンタ達どこ行ってたのよ!!大変だったんだから!!」

シンジ「アスカ!何があったの?」

アスカ「暴漢がこのエロガッパを襲ったのよ!」

シンジ「え!カヲルくんを!?アスカじゃなくて!?」

アスカ「そうよ」

レイ(…エロガッパ…?)

カヲル「ほうらったのは…。」

シンジ「…暴漢は?」

アスカ「私がボコボコにして警察に突き出したわ」

シンジ「そう…」

アスカ「で…エコヒイキとなにしてたのよ…」

シンジ「ああ、綾波から聞いたよ、アスカはやっぱり優しいんだね」ニコッ

アスカ「な、なによ」

シンジ「僕と綾波が仲良くなるために色々してくれたれんだろ」

アスカ「ま、まあね…エコヒイキちゃんと言ったんだ」

レイ「ええ。」


シンジ「あとね、重大発表があるんだ」

アスカ「なに?」

シンジ「これから綾波と暮らすことになったんだ!」

アスカ「ええ〜!!」
カヲル「!!」
レイ「…」ポカポカ

アスカ「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私がアンタと一緒に暮らしてるのは命令なのよ!エ、エコヒイキになに吹きこまれたか知らないけどね、そんな———」

シンジ「もちろんアスカも一緒に暮らすんだよ!」

アスカ「え、ええ〜!!」
レイ「えっ」
カヲル「…」

シンジ「ミサトさんにカヲルくんも、それに…ペンペンもね」

アスカ「あの狭い家にそんなに入んないわよ!」

シンジ「引っ越そうと思うんだ、アスカも部屋が狭いってよく言ってただろ?」

アスカ「う…まあね…」

レイ「…」ショボン

カヲル「シンヒふんといっひょに…ほれは、とてもたのひいだろうね。」

シンジ「うん!元々、パイロットどうしの協調性を高めるのが目的だったんだからミサトさんもきっと賛成してくれるよ」

アスカ「…待って…じゃあ私はこのエロガッパとも暮らさなきゃいけないってえの!?」

シンジ「えぇ…結構仲良くなってたじゃないか」

アスカ「ますます嫌いになってたのよ!!」

レイ「…」

カヲル「ぼくは、アスカくんのこと…すきらな」キラッ

アスカ「黙れッッ!!」


ドゴッッ!!


———1週間後。


カヲル「おはよう、シンジくん。」

シンジ「あ、おはよう、カヲルくん」

カヲル「…今日も早いね。」

シンジ「うん、5人分の朝食となると結構手間だしね」

カヲル「やっぱり明日からは僕も手伝うよ。」

シンジ「別にいいのに…」

ミサト「いい匂い…健康的な朝食の匂いだわ…」クンクン

シンジ「おはようがざいます、もう出来ますよ、ミサトさん」

カヲル「おはようがざいます。」

ミサト「おはよう〜…あれ?アスカとレイは?」

シンジ「まだ寝てるんですかね?」

ミサト「アスカー、レイー」


\うるさいー/


シンジ「起きてるんじゃないか…」

ミサト「朝ごはんもう出来るから起きて来なさーい」


\顔がムクんでるから、いきたくなーい/


ミサト「大丈夫よ〜ムクんでもアスカはかわいいわよ〜」

シンジ「アスカ!」


…ガラッ、テクテク


アスカ「も〜」ムスッ

レイ「…」


シンジ「大丈夫だよ、いつもと変わんないよ」

アスカ「失礼ね!私はもっと小顔でかわいいわよ!!」

シンジ「そ、そういうつもりじゃ…」アセアセ

ミサト「昨日なんかしたの?夜更かし?」

アスカ「別に…」

レイ「…昨日は2ご…アスカとおしゃべりしてた…ずっと…。」

ミサト「あら〜随分と仲良しになったのね〜呼び方まで変わちゃってえ」

アスカ「うっさい!コイツの呼び方がムカつくから変えさせたの!特別にね!」

シンジ「僕と同じだね、綾波」

レイ「ええ。」

カヲル「じゃあ僕もアスカと呼ぼうかな」

アスカ「アンタには許可してない…次、呼び捨てにしたら殴るから」

カヲル「…」

シンジ「もう…」

レイ「ふ、ふたりとも仲良くした方がいいと思う」アワワ

ミサト「ほら〜席について、待ちに待った朝食よ」


ガラッ、ガタッ


ミサト「いただきまーす」パシン

シンジ「いただきます」
レイ「いただきます。」
カヲル「いただきます。」
アスカ「いただきます…」

ミサト「おいし〜!!」

レイ「おいしい。」ホッコリ

カヲル「素晴らしいね。」

アスカ「うーん、まあまあね、量作った分、味が落ちてるけど」


モグモグ…、カチャ


ミサト「ふー、ごちそうさまでした」

シンジ「ごちそうさま」
レイ「ごちそうさま。」
カヲル「ごちそうさま。」
アスカ「ごちそうさま」

ミサト「では学校の用意をして、5人仲良く登校すること」

シンジ「はい」


ガサガサ、ゴソゴソ


シンジ「じゃあミサトさん、行ってきます」

レイ「行ってきます。」

カヲル「行ってきます。」

アスカ「いちいち全員で言う必要ないっての…行ってくるから」

ミサト「いってらっさい」


スタスタ…


シンジ「フフ」ニコニコ

レイ「どうしたの?」

シンジ「あ、いや…みんなで暮らすのって楽しいなって思ってさ」

レイ「碇くん、幸せ?」

シンジ「うん、綾波は?」

レイ「私も…幸せ。」ポカポカ

アスカ「どっちもニヤニヤして気持ち悪いわねえ…」

シンジ「アスカも楽しいよね?」

アスカ「まあ…少しね」

シンジ「よかった」ニコニコ

カヲル(シンジくん…本当に幸せそうだ…)


レイ「あの…」

カヲル「ん?なんだい?」

レイ「あなたに言われて告白して本当によかった。」

レイ「ありがとう。」

カヲル「…君の努力だよ。」

レイ「あなたは使徒じゃなくて人間だと思う…」

カヲル「…」

レイ「自信を持って、人間として生きて。」

カヲル「…」

カヲル(…人間…リリンとしてか…)


カヲル(リリンとしての幸せ…複雑だね…リリンは自分の中にではなく他人の中に幸せを見い出すようだね…)

カヲル(僕はシンジくんだけを幸せに出来ればいいと思っていたが…それではダメなんだ)

カヲル(みんなを幸せにしなきゃいけない…誰かがシンジくんの側にいなきゃいけない…)

シンジ「カヲルくん?」

アスカ「なに、ぼーっとしてんのよ、おいてくわよ」

レイ「…」

カヲル「みんな…」

シンジ「?」

アスカ「神妙な顔してるわねー」

レイ「大丈夫?」

カヲル「…これから、なにがあっても…」

カヲル「3人とも必ず幸せにしてみせるよ」


終劇


この他に

アスカ「…そうだ!バカシンジに本気でイタズラしてやるわ!」

というSSも書いているので
そちらも読んで頂けたら幸いです。

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