前川みく「痛さを知る」 (9)


「んにゃあ……」

体がだるい
もやもやしたものが絡みついているような気持ち
無理な動きをしたとか、そういうわけじゃない
…原因は、わかっている

「みく、大丈夫?かなり辛そうだけど」

「李衣菜ちゃん…」

原因は李衣菜ちゃんにゃ!…なんて言えない
心配してくれているのは、本当だろうし

「疲れを取るいい方法、あるんだけどなー?」

「んー…?」

「最近プロデューサーにマッサージしてもらってて、すごい調子がいいんだ♪みくにも絶対オススメ!」

「…に゛ゃっ?!」

李衣菜ちゃんと、Pチャン、マッサージ
頭の中にはっきり蘇ってくる
それは、このもやもやの理由
…みくが見ちゃった李衣菜ちゃんの秘密…



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「ま、ままマッサージって、色んなとこ触られるんでしょっ?ダメっ、絶対ダメにゃあっ!」

「…色んなとこって、そりゃ背中とかふくらはぎくらいなら別に…はっは~、みくはそういうことされたいんだ~?」

「違うってば!とにかくダメなの!」

…そもそも背中を直接触られるのだって、そんな気軽なことじゃないよね!?
…今の李衣菜ちゃんは、ちょっと前からは考えられないような雰囲気だった
こう…オトナがからかってくるような感じ?

「まあ嫌ならしょうがないか。何かあったら、いつでも相談のるからねー?」

「…ごめんね…」

「あまり抱えちゃダメだよ?」

李衣菜ちゃんの声が、頭の中で何度も響いてくる
だんだん…甘くて切なそうな声に、変わっていく

【注意?】みくと李衣菜がマッサージ(意味深)されるだけです
浅め

イタいロックとイタい猫…その発想はなかった


あれは、みくが打ち合わせ予定より大分早く来ちゃた時だった

「はあっ…はあっ…」

「…?」

ドアが少し開いている
李衣菜ちゃんが先に来て…?

「プロデューサーさっ…き、きもちひっ…ビリビリします…はううっ!」

「…!!」

李衣菜ちゃんがテーブルに体を押し付けて、ガクガクと揺れている
よく見ると、服も着ていないような…
しかも他の人の手が背中の辺りをもみくちゃにしてて
コレって、コレって…

「ゆっ、指いっ!広げちゃダメぇっ!ひいいっ!?」

「ほら、声は抑えて」

「ひゃいっ…すみませっ…」

…間違いなく、Pチャンの声だった
…みくだって何も知らないわけじゃないにゃ
だけど、だけどこんな形で…見るなんて思わなかった
あんなに嬉しそうな李衣菜ちゃんの顔、大きなライブでも見たことがない


「はひっ…きっ…キくっ…うっ…そこっ、この痛さも…ろ、ロックですね…あひっ!」

…見てはいけないものを見ちゃった気がする
…だけど目が離せない
息を殺して、手を握りしめて
ネコチャンがじっと、じっと観察するように

「刺激的だろう?そんで、痛いのが気持ちよくなってきて…一人前だ」

「はっ、はっ…そ、そうです…ねっ、ふわふわして、体が馴染んだというか…これっ!これえっ?!」

みくには全く気づいてない
二人だけで、幸せそうにしている
…ズルい
ズルすぎるよ
でも、ここに割って入るような度胸は…みくにはないにゃ
足が言うことを聞いてくれない
進むことも、戻ることもできないにゃ…

今日はここまで

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