まどか「コンビニでアルバイトを始めてみたら……」 (36)

教室

さやか「ねえ、まどか。頼みたいことがあるんだけど」

まどか「どうしたの? なんでも言ってよ」

さやか「そ、そう? それじゃあ……」

さやか「私とコンビニでアルバイトしない!?」

まどか「ア、アルバイト? 急にどうして?」

さやか「いやぁ、それがさぁ、贔屓にしてるコンビニがあるんだけど、なんでも急にバイトの人が辞めちゃったらしくて、新しい人が見つかるまでの間でいいから手伝ってほしいって頼まれちゃて」

まどか「引き受けちゃったの……?」

さやか「店長、すっごい困ってたしさぁ……」

まどか「そうなんだ。アルバイトってしてもいいのかな……」

さやか「そこは大丈夫! もう先生にも許可はもらってるから!! 特例中の特例だけど」

まどか「あ、そうなんだ。だったら……やろうかな……。興味、あるし」

さやか「ほんと!? ありがとー!! やっぱ、持つべきものは親友だよねぇー!!」

まどか「あはは……」

ほむら「……」

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店内

まどか「き、緊張してきちゃった」

さやか「大丈夫だって。やることはレジのところに立って「いらっしゃいませー」と「ありがとうございましたー」と「あたためますかー」を言えばいいだけなんだし」

まどか「そ、そんなに簡単かな……」

さやか「言われた通りにやってればいけるって。さ、5時から7時までがんばろー!」

まどか「お、おー……」

まどか(不安になってきちゃった……。ちゃんとできるかな……)

ピンポーン♪

さやか「お。早速きたよ。いらっしゃいませー」

まどか「い、いらっしゃい……ま……」

ほむら「……」ファッサァ

まどか(ほ、ほむらちゃん……。どうしてここに……)

ほむら「……」スタスタ

まどか(雑誌コーナーに行っちゃった……)

ほむら「……」ペラッ

1時間後

さやか「ありがとうございましたー」

まどか「あ、ありがとうございましたー」

さやか「あと一時間かぁ。結構、なんとかなるもんだね」

まどか「そうだね」

さやか「それはそうと……」

ほむら「……」ペラッ

さやか「あの転校生。もう一時間は立ち読みしてるよね」

まどか「う、うん」

さやか「店長も気にしてるみたいだし、ちょっと行ってくる」

まどか「あ、あ、さやかちゃん」

さやか「お客様ぁ」

ほむら「……」

さやか「長時間の立ち読みはご遠慮ください」

ほむら「そう。ごめんなさい。少し没頭してしまったようね。気を付けるわ」

ほむら「お邪魔しました」ペコッ

まどか「帰っちゃった……」

さやか「全く。何も買っていかないなんて」

まどか「ほむらちゃんは何を読んでたの?」

さやか「ミリタリー関係の雑誌を漁ってたみたい。ああいう趣味があるのね」

まどか「へぇ……」

さやか「さて、仕事、仕事」

ピンポーン♪

まどか「いらっしゃいませ」

杏子「あれ? まどかじゃん。なにしてんだ?」

まどか「杏子ちゃん」

さやか「みたらわかるでしょ。アルバイトよ、アルバイト」

杏子「いつもこの時間帯にいた奴はどうしたんだ」

さやか「その人が急に辞めちゃったから、私たちはその代理ってわけ」

杏子「なに……。おいおい、マジかよ……」

さやか「その人に何かあったの」

杏子「すげー優しい奴だったんだよ」

まどか「優しい……?」

杏子「ここで少し話しただけでさ、タダで弁当とかフライドチキンとかくれてたんだ」

さやか「はぁ? あんた店員にそんなことさせたの」

杏子「惜しい奴を亡くしちまったな……」

まどか「辞めちゃっただけなんだけど」

杏子「まっ。いいや。お前らが代わりなら一緒だろ」

さやか「なにがよ」

杏子「ほれ」

さやか「……」

杏子「ん」

さやか「あげない」

杏子「……え?」

さやか「あげないって言ったの。欲しかったら、買ってくださいね、お客様」

杏子「なんか勘違いしてるみたいだな。んなの、ここで堂々と貰えるかよ」

さやか「……」

杏子「残りそうなやつはどれなんだ? 複数あるならその中から選べるんだぜ」

さやか「……」

まどか「あ、あの……杏子ちゃん……」

杏子「で、あたしが選んだのを裏でこっそり貰う。そういうシステムだ。覚えておいたほうがいいぜ」

さやか「……」

杏子「なぁ、どれなんだよ、さやかぁ。どれをもらってもいいんだ? なぁ」

さやか「買ってください」

杏子「そんなケチくせえこというなよ。どうせ余るんだろ」

さやか「……」バンッ!!!

杏子「うぉ」ビクッ

さやか「廃棄商品を渡すことは禁止されていますので、諦めてください」

杏子「な、なんだと!! まどか! マジなのか!?」

まどか「う、うん」

杏子「そんなの初めてきいたぞ!! ざっけんな!!」

さやか「あんたがふざけんな」

まどか「さ、さやかちゃん、落ち着いて」

杏子「……」

さやか「なに?」

杏子「さやかも知ってんだろ。あたしの性格ぐらい」

さやか「どういう意味?」

杏子「欲しいものは、奪ってでも手に入れる」ゴォォォ

さやか「強盗でもするつもり?」

杏子「察しがいいじゃねえか」

まどか「杏子ちゃん!! そんなことしないで!! きっと、まだ何か方法が……!!」

杏子「生ぬるいこといってんじゃねえぞ! こっちは生きるか、死ぬかだ!! 手段なんて選んでられるかよ!!」グゥ~

さやか「お金を払ってよ」

杏子「たった200円で何ができるんだ? 言ってみろよ、さやかぁ!!」

さやか「おにぎり、100円均一だけど?」

杏子「おにぎり二個じゃ、腹いっぱいになんねーだろ!!」

さやか「知らないし、もう300円ぐらいどうにかならないわけ。それならお弁当ぐらい買えるけど」

杏子「これが……全財産なんだよ……今月の……」

まどか(お小遣い、あまりないのかなぁ……)

杏子「あと、あのデラックス唐揚げ弁当がいいんだ!!」

さやか「あれは750円になります」

杏子「200円にまけろ!」

さやか「コンビニで値切りなんてできると思ってるの?」

杏子「あたしは唐揚げ弁当が食べたいんだ!!」バンバンッ

さやか「ダメ」

杏子「まどかぁ……」

まどか「ご、ごめんなさい」

杏子「ちくしょー!! 覚えてろよ!!! 今日はこのエビマヨネーズと焼き飯で勘弁してやるよ!!!」ダンッ!!

さやか「200円になります」

杏子「ほらよ!!」

杏子「ふぁふゃふぉふぉふぇふぃー!!!」ダダダッ

さやか「ありがとうございましたー」

まどか「杏子ちゃん……食べながら行っちゃった……。飲み物、よかったのかな……」

さやか「あー、なんか疲れた。接客はこういうことがあるから辛いんだよね、きっと」

まどか「うん。そうかも」

ピンポーン♪

さやか「いらっしゃ――」

マミ「あら。鹿目さん、美樹さん。こんばんは」

まどか「マミさん!」

マミ「アルバイトを始めたの?」

さやか「はい。臨時で」

マミ「そう。大変ね……。よーし、可愛い後輩ががんばってるなら、少しだけでも貢献しちゃおうかしら」

まどか「貢献って……」

マミ「棚にある100円のおにぎり、全部もらうわ」キリッ

さやか「え……」

まどか「えっと、2500円です」

マミ「これを」

さやか「ポイントカード……。えーと、えーと……」

マミ「貯めておくわ」

さやか「は、はい」

まどか「ど、どうぞ」

マミ「ありがとう」

まどか「そんなに買って、大丈夫ですか……」

マミ「心配しないで。ちゃんと食べるわ」

まどか「た、たべるんですか」

さやか「マミさん、かっこいい……」

マミ「それじゃあね」

まどか「よかったのかな……飲み物……」

さやか「お。もうすぐ7時だよ、まどか。交代の人も来たみたいだし、店長に一声かけて、あがる準備しよっか」

まどか「あ、うん」



さやか「初日しゅーりょー。おつかれ、まどかー」

まどか「うん。お疲れさま」

さやか「なんていうか、初日からやりにくかったね」

まどか「あれだけ知ってる人が来るとは思わなかった。恥ずかしいような……」

さやか「制服、似合ってたし、いけるって」

まどか「そういうことじゃなくて……」

さやか「ともかく、私たちはやるっきゃない!! 恥ずかしかろうが、なんだろうが、やるしかない!!」

まどか「それはそうなんだけど」

さやか「今日みたいに一日一日を乗り切ればオッケーだから」

まどか「そうだよね」

さやか「また、一緒にがんばろ、まどか」

まどか「うんっ。さやかちゃんと一緒なら、なんとかなりそうな気がする」

さやか「嬉しいこと言ってくれるじゃない。そうだ。バイト代もらったら、買い物とかいこうよ」

まどか「いいね。絶対、行く」

翌日 店内

ピンポーン♪

まどか「いらっしゃいませ」

ほむら「……」ファッサァ

さやか「また来た」

ほむら「……」ペラッ

さやか「立ち読み、始めちゃったか」

まどか「い、一時間ぐらいなら、いいよね」

さやか「まぁ、ね。けど、毎回、一時間立ち読みされるとなぁ」

まどか「き、きっと、あの雑誌を買えるだけのお金がないから、だと思う……だから……」

さやか「はいはい。一時間だけね」

まどか「ありがとう、さやかちゃん」

さやか「何かを買っては欲しいところだけどね」

ほむら「……」チラッ

まどか(こっちを見た……。今の話、聞かれちゃったかな……)

数十分後

ワイワイ……ガヤガヤ……

さやか「あー、えーと、12点で……お会計が……」

まどか「あ、あのー、お待ちのお客様、どうぞー」

ほむら「……」ペラッ

さやか「230円のお返しです! ありがとうございましたー!!」

仁美「あの、お箸を2膳、いただけますか」

さやか「あ、すみません!!」

仁美「ありがとうございます」

さやか「ありがとうございましたー!! 次の人どうぞー!!」

仁美「頑張ってください」

まどか「あ……」

まどか(忙しくて全然、気が付かなかった……)

マミ「スイーツコーナーのを全てもらえるかしら」キリッ

さやか「は、はい!! 少々おまちください!!」テテテッ



まどか「お、おわったぁ……」

さやか「二日目でこれって……」

まどか「この時間帯って、お客さんが多いんだね……」

さやか「だからこそ、人手が欲しかったみたい……」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん……」

さやか「結局、二時間も立ち読みしてたね」

ほむら「何も言われなかったわ」

さやか「だからって……!! もういい……。疲れちゃったし」

まどか「帰ろうっか。ほむらちゃんも一緒に帰る?」

ほむら「そうね。やるべきことはないし、そうしようかしら」

さやか「あの忙しいときに大量のデザート買って行ったお客さん、何考えてたのかな。レジが混んでることぐらいわかるはずなのに」

ほむら「それ巴マミよ」

さやか「え? あ、そうだったんだ……。顔を見る余裕もなかったんだ……私……」

ほむら「美樹さやか。貴方は甘い考えでコンビニの店員になることを決めてしまったようね。それも、まどかまで巻き込んで」

さやか「は……?」

ほむら「たかがアルバイトだと思っていたのかしら」

さやか「べ、別にそういうわけじゃ……」

ほむら「あの程度のことで人の顔さえ見る余裕がなくなるのなら、悪いことは言わないわ、すぐに辞めなさい」

さやか「な、なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ」

ほむら「私はただ、貴方たちの心配をしているだけよ。短期とはいえ、学業との両立ができるかしら」

さやか「……」

まどか「ほむらちゃん、そこまで言わなくても……」

ほむら「事実を言っているだけよ。働くって、こういうことよ」

さやか「やれる。やってみせる」

ほむら「そう。まどかは、続けるの?」

まどか「う、うん。最後まで、やるよ」

ほむら「覚悟があるのなら、弱音は吐かないことね。無様なだけよ」

さやか「言われなくても分かってる! 最後まで、最後までやり遂げる……! 絶対……!」

ほむら「精々、授業中に居眠りはしないことね」

さやか「7時で絶対に帰れるんだから、大丈夫ですよーだ」

まどか「さやかちゃん、ほむらちゃん、仲良く……」

まどか「あ……」

杏子「……」

さやか「あれ、杏子? 店の裏でなにしてるの?」

杏子「あたしは知ってるんだ」

まどか「な、なにを?」

杏子「ここで待っていれば、捨てられる弁当が――」

さやか「はいはい。いくら待ってもあげれないから」グイッ

ほむら「帰るわよ、杏子」グイッ

杏子「待てって!! 今日はあまってるだろ!! さっきみたんだ!! デラックス海苔弁当を!!」

さやか「渡せないんだってば」

杏子「ざけんな!!! くわせろ!! くわせろよー!!!」

まどか「杏子ちゃん……」

まどかの部屋

まどか「もう寝ようかなぁ……でも、課題があったような……」ガチャ

キュゥべえ「おかえり、まどか」

まどか「あ、キュゥべえ。来てたんだ」

キュゥべえ「こんな時間まで何をしてたんだい?」

まどか「昨日からアルバイトを始めたの」

キュゥべえ「お金が必要なら僕に言ってよ。魔法少女になれば、金銭で困ることはなくなるよ」

まどか「お金が欲しいわけじゃないから」

キュゥべえ「なら、どんな見返りを期待して労働をしているのかな」

まどか「別に見返りなんて……。ただ、さやかちゃんに頼まれたからで……」

キュゥべえ「よくわからないね。まどかは頼まれたら無償でもアルバイトをしたってこと?」

まどか「え……。えっと……そう、なるのかな……」

キュゥべえ「僕には理解できないよ。何の見返りもなく、まどかは貴重な命を削るんだね」

まどか「命って、大げさな……」

キュゥべえ「人間に与えられた時間は無限じゃないんだよ。たとえ10分であろうとも時間の浪費は、命を無駄に削っているのと同じさ」

まどか「そう言われると……」

キュゥべえ「何も得るものがないのなら、何かを得るつもりもないのなら、すぐに身を引くべきだと僕は思う」

まどか「けど、さやかちゃんだって困ってるから」

キュゥべえ「美樹さやかが困ってるからまどかは自分を傷つけるってこと?」

まどか「だ、だから……」

キュゥべえ「あえて辛い道を選ぶぐらいなら、魔法少女になろうよ。アルバイトなんて回り道をする必要もなくなるよ」

まどか「い、いいよ。私がしたくてしてるだけだから」

キュゥべえ「そうかい。ま、気が向いたらでいいよ」

まどか「う、うん」

キュゥべえ「さて、今日はもう眠るかい。顔が疲れているようにも見えるけど」

まどか「ううん。これから提出しなきゃいけない課題があるから」

キュゥべえ「働いていなければ、今頃はその課題も終わっていただろうね」

まどか「……」

キュゥべえ「今のは独り言。気にしないで、まどか」

まどか(短い間だけのアルバイトだし、そんなに深く考えることはないよね……)

翌日 店

ほむら「……」ペラッ

さやか「今日はお客さん、少ないなー」

まどか「ホントだね。なんだか、昨日のが嘘みたい」

仁美「よろしいですか?」

さやか「仁美ぃ。いらっしゃいませー」

仁美「この荷物を届けたいので、お願いできますか」

さやか「お……」

仁美「なにか?」

さやか「あー、まどか、やり方、知ってる?」

まどか「う、ううん……これ、聞いてないんだけど……」

仁美「あの……」

さやか「ご、ごめん! ちょっと待ってて!!」

仁美「分かりました」

ほむら「……」



さやか「いやー、仁美のは予想外だった」

まどか「店長さんがいて、よかったね」

さやか「ホントだよー」

まどか「あれ、そういえば、今日はほむらちゃん、いないね」

さやか「いつの間にか帰ったみたいだけど」

まどか「そうなんだ……」

さやか「私たちもかえろーっと」

まどか「待って、さやかちゃん」

さやか「んー、どうしたの?」

まどか「あそこ……」

杏子「……」

さやか「また……。おーい、きょーこー」

杏子「なんだよ。今日は絶対にもらうまでここを動かないからなっ」

さやか「あんたねぇ……」

まどか「どうして、そこまで……?」

杏子「もう三か月はここに通ってたんだ。毎日な」

さやか「そのたびに廃棄品をもらってたの?」

杏子「悪いかよ!! あたしは独り身なんだ。こういうことをしていかないと、その……無理なんだよ……」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「お前らは良いよな。帰れば飯があるんだからさ」

さやか「……」

杏子「……」グゥ~

まどか「さやかちゃん……」

さやか「でも……」

杏子「おなか、すいたなぁ」

まどか「杏子ちゃん、少し待ってて」

杏子「え?」

さやか「まどか!」

まどか「ごめん、さやかちゃん。でも、杏子ちゃんが辛そうにしているのはもう見たくないから」

店内 バックヤード

まどか「確か……今日の廃棄品は……」ゴソゴソ

まどか「あれ……確かに、ここに……」

ほむら「――探しているものは、これかしら?」

まどか「え……!?」

ほむら「……」

まどか「ほ、むらちゃん……」

ほむら「この廃棄品、どうするつもりなの?」

まどか「それは、あの……杏子ちゃんに……」

ほむら「食品を扱う以上、衛生面では細心の注意を払わなくてはいけない。たとえ、問題がなくても決められた時間までに売れ残った商品は廃棄しなければいけない」

ほむら「そしてなにより、この商品の所有権は店にある。それを勝手に持ち出すのは、立派な窃盗なのよ」

まどか「うっ……」

ほむら「アルバイトだからと軽く考えるのはやめなさい。貴方はもう、このコンビニで働いている。そして働く者には等しく責任を背負わなくてはならない」

ほむら「それが、働くということよ」

まどか「けど、どうせ、捨てるなら……困っている人にあげたって……」

ほむら「佐倉杏子は困ってなんていないわ。ただ甘えているだけ」

まどか「……」

ほむら「杏子こそ、ここで働けばいいとは思わない? そうすれば800円のデラックスハンバーグ弁当も買えるようになる」

まどか「そう、かもしれないけど……」

ほむら「私は止めたわ。あとは自由にしなさい」ドサッ

まどか「……」

ほむら「さよなら」

まどか(このお弁当……捨てるだけ……)

まどか(捨てるだけなのに……どうして……)

まどか「私……私は……」

さやか「まどか」

まどか「さやかちゃん……?」

さやか「これね。杏子に渡してくる」

まどか「ま、待って!! それは私が……!!」

さやか「大丈夫。まどかは何も知らないし、見てない。そうだよね」

まどか「でも……さやかちゃんが……」

さやか「こっちがアルバイトを頼んだのに、こんなことまでまどかにはさせられない」

まどか「やめて……さやかちゃん……。私、気づいちゃったんだ……ほむらちゃんに言われて……」

さやか「……」

まどか「きっと前に辞めた人は杏子ちゃんにこっそりお弁当を……」

さやか「そんなことを、知ってる」

まどか「え……」

さやか「店長から聞かされてたから」

まどか「……」

さやか「だから、杏子には厳しく行こうって思った」

まどか「やめて……さやかちゃん……」

さやか「けどさ、やっぱりダメだった。あんな悲しそうな顔見ちゃったら、もう自分の気持ちに嘘はつけない」

まどか「さやかちゃん!!」

さやか「あたしって、ほんとバカ」テテテッ

まどか「さやかちゃぁぁぁん!!!」



さやか「はい」

杏子「いいのか!?」

さやか「うん。内緒だからね」

杏子「サンキュー!! さやかぁ!!」

さやか「もう……」

杏子「マジで助かる!! いっただきまーす!!」

さやか「……ねえ、杏子?」

杏子「ん?」

さやか「これからも、こうしてお弁当をもらいにくるつもりなの?」

杏子「ダメなのか?」

さやか「……」

杏子「なんだよ。これ捨てるんだろ。だったら、別にいいじゃねえか」

さやか「けど、私がいなくなったら、まどかがいなくなったら、このお店がなくなったら、どうするの」

杏子「それは考えたこと、なかったな……」

さやか「あたしだって、一週間後にはいないかもしれないし、ずっと貰えるってことはないと思う」

杏子「……」

さやか「そのとき、あんたはどうするわけ」

杏子「あたしは……」

さやか「独り身だからって、みんなが杏子に優しくするとは限らない」

杏子「な……」

さやか「きっといつか、杏子自身が苦しくなる」

杏子「し、知ったふうな口きくなよ」

さやか「そうだよね……。ごめん……」

杏子「なにかあったのか?」

まどか「さ、さやかちゃん」

さやか「……」

まどか「店長さんが……よ、呼んでる……」

さやか「わかった。すぐ行く」

杏子「バイトは終わったんじゃないのか?」

さやか「ねえ、知ってる? そのお弁当、廃棄しても所有権は店側にあるんだ」

杏子「え?」

さやか「それを許可なく持ち出すってことは、どういうことだと思う?」

杏子「そ、そりゃあ、ドロボーだろ」

さやか「そう……。ドロボーなんだよね」

杏子「……」モグモグ

杏子「ま、まさか……!!」

まどか「杏子ちゃん……」

さやか「まどか、あとのことをお願い。最後までいれなくて、ゴメン」

杏子「おい!! 待てよ!! あたしはここまでしてくれなんて頼んでないぞ!!」

さやか「……」

杏子「ただ、捨てるものだって、きいたから、もらってただけで……」

さやか「もう、こんなことしないで。さよなら」

杏子「なんだよ!! そういうことは先に言えよ!!! あたし、知らなかったんだ!!!」

杏子「さやかぁぁぁ!!!」

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