【R-18】本気の一色いろはは小悪魔どころじゃない (136)

※注意点

・R18です
・八幡が割とアグレッシブです
・一部変態的な行為が混ざります
・短編なのでそんなに長くなりません

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たまに早く学校に来てみたらこれだ。

登校中に偶然出会い、わけもわからず私物化された無人の生徒会室に連行されてしまった。そして目の前には、肩を落とし俯く生徒会長、一色いろはの姿がある。

一応自己弁護しておくと、決して俺が何かやったわけではない。まだあまり人のいない学校前で後ろから追突され、その時から一色は微かに涙を滲ませていた。

「せんぱいぃ……ぐすっ……」

うわ、これ割とマジなやつなんじゃねぇの。

「ど、どうしたんだよ。言ってくれなきゃわかんねぇよ」

「……頭、撫でてください」

「はぁ?なんで?」

「理由なんていいですから、早く……」

一色は瞳を潤ませながらねめつけるような視線を送る。

その目にはすこぶる弱い。泣く女子にもすこぶる弱い。失意に暮れる女子には優しく接し、できるだけ我儘を聞くよう調教済みの兄、どうも比企谷八幡です。

「……これで、いいのか」

一色の傍に歩み寄り、ビクビクしながら髪を微弱な力で撫でつける。

うわ、なにこれ超ふわふわ。リンスだかトリートメントだかのいい匂いがここまで漂ってくるんですけど。

「はふ……」

途端、一色の顔が綻ぶ。なんだそれ小動物かお前は。

「……もういいか?」

「もっと……」

なんなの、いったい……。

そのままナデナデすること暫し。

一色の目に浮かんでいた涙は消え、今ではうちにいるだらけた猫の如く、満足そうに机でゴロゴロしている。

「もういいだろ」

無音の空間で後輩の頭を撫で続けるってなんだよ恥ずかしい。

撫でていた手を離しポケットに突っ込む。心なしか手がスベスベになってる気がする。

「あー、まだいいですって言ってないのにー」

「もうだいぶ元気になってるからいいだろ。何があったのか言え。なんかあったんだろ」

「……はい。凄く、すっごく怖かったんですよぅ」

言うと、一色は自分の身を抱くように体を強張らせる。こいつの喋り方だとそこまで怖そうに聞こえないが、嘘をついてはいなそうだ。

「何が」

「えと、ち……痴漢に、あって……」

「……マジか」

「はい……怖かったです……」

「……そうか。辛かったな」

言い様のない怒りが沸くと同時に、一色の恐怖が伝わってきた。今は優しくしてやろうと、素直にそう思った。

「……といっても、もしかしてってのは割としょっちゅうなんで慣れて」

「怖かったろ。俺にできること、なんかないか?」

同時に喋ったせいで、一色の言葉がよく聞き取れなかった。聞き間違いじゃなければしょっちゅうとか言ってたか?だとしたら尚更よくねぇよ、可哀想に。

「……へ?」

「いや、なんかないのか?できる限りのことはやる」

「え、ど、どうしたんですか先輩」

「どうしたって、痴漢みたいな屑のせいでお前が落ち込むなんて許せねぇんだよ。だから何かしてほしいことあったら言え、なるべく聞いてやるから」

言ってみたものの、一色の反応はない。何故そこで呆けるんだ。

「ないのか?」

「や、あ、いやありますあります!待ってください!ええと……」

一色は慌てて両手を振り全力で否定すると、なにやらか思案をしながらブツブツと言い始めた。

「…………なになに思ったより反応凄いんですけど。なんでもしてくれるとかどういうことなんですか……」

小声過ぎて全然聞き取れない。気になる……。

「いや、ないならそんな無理に捻り出さんでも」

「いえ!その、手、……握ってもらって、いい、ですか?」

おずおずと差し出された一色の手を、安心させるように両手で包む。

こんなことで一色の恐怖が薄らぐなら軽いものだ。恥じらいは、というか不慣れゆえのぎこちなさはどうしたってなくならないが。

「こ、これでいいか」

「はわわわ……。先輩、マジでどうしたんです?こんなの、普段なら絶対やってくれませんよね」

「……そりゃ普段ならな。今は違う」

か弱い女子だけを狙い、無抵抗なのをいいことに自らの欲望を満たすためだけに行うその卑劣な行為は忌み嫌われて然るべきものだ。

俺の数少ない大事な知り合いが、そんな行為に晒されて悲しみに暮れるなんて我慢ならない。

すると、やり場のない怒りが込み上げ、握る手におもわず力がこもった。

「俺にやれることって多くねぇから、こんなことしかできなくて悪いな」

「い、いえ!もうおかげで怖くない、です。先輩、もしかして怒って……くれてます?」

「あー、まぁな。痴漢ってのはどう考えても必然性がねぇ。ある意味殺人や窃盗なんかより重罪だろ」

「それもまた極論ですね……」

「だって人殺さないといけない状況はあっても、痴漢しないといけない状況なんてこの世にねぇだろ。やるやつの理性が足りんだけだ。なのに恐怖を味わうのはお前みたいなか弱い女の子なんだぞ、許せるかこんなの」

……はっ、しまった。手を握ったまま何を力説してんだ俺は。

どうせドン引きしてんだろ……と思いきや、一色はきょとんとした顔で口を半開きにしている。

「……なんだよ」

「いや、先輩ってスゴい優しいなって、思って……」

「そうでもないと思うが」

よくわからないが一色は頬を染めてどぎまぎし始めた。やめろ俺まで落ち着かなくなるだろ。

「いえ。わたし、先輩になら……。あの!もっとお願いしてもいい、ですか?」

「……ある程度ならな。特別だぞ」

「えー、さっきなんでもしてくれるって言いましたよね?」

「言ってねぇよオイ」

人の話を聞けと言いたいが、口を挟む間もなく一色は興奮気味に話し始めた。

「わたし、さっきキモい人に触られて…………たぶん……」

ん、今すげぇちっちゃい声でたぶんとか言わなかった?

「気持ち悪いので、先輩に……上書き、してもらえませんか?」

「……は?」


* * *


ここは生徒会室だ。早く来すぎたから始業まではまだ時間がある。学校にいるのは朝練をしている連中と教師陣ぐらいで、ここ生徒会室のある校舎内に他の人間がいる気配はない。

目の前には理解できないことをのたまい、頬を染める一色いろは。

「……意味がわからないのでもう一度」

「なんでわからないんですか。だからー、先輩に、触ってほしいなって」

触る?どこを?痴漢が触ったとこを?

アホか何言ってんだこいつは。

「こ、断る」

「えー。このままじゃわたし男性不信になっちゃいます……」

渋にもあげてるね?

「いや、俺に触られたら余計不信になんじゃねぇの?」

「何言ってるんですかバカなんですか先輩。なるわけないじゃないですか」

なんでだよと考えるとどつぼに嵌まりそうなので考えないことしにした。

「何言ってんのかわかんねぇよ……。ていうか痴漢の真似事なんかさせんなよ」

言うと、一色ははぁと熱のこもった吐息を漏らし、じっと眼差しを俺に送ってくる。

「合意があるのに痴漢なんかと一緒にしないでくださいよ……。それとも先輩は、その……、恋人同士の、触りっこも嫌い……ですか?」

赤く染まった頬、儚げに揺れる潤んだ瞳。整った可愛らしい顔の下では、余ったセーターの袖から覗く細い手が胸元のリボンを握りしめている。

>>13
あ、すみません書くの忘れてましたがそうです

幼さの残る佇まいのその奥に、確かに見える色気を感じ鼓動が早くなった。

息を呑み、心を静めるよう務め、なんとかかんとか正常な答えを返す。

「……いや、俺、お前と恋人同士じゃねぇし」

「まあそれはまだそうなんですけど……。あ、じゃあー、先輩ちょっと練習に付き合ってもらえますか?」

まだ?まだっつったかお前?あとじゃあってなんだよ、じゃあって。突っ込みたいとこまみれなんだが。

「練習?なんの?」

「痴漢に抵抗する練習です」

「それ、俺のやること変わってないよね?」

「まあそうですね。ではとにかくお願いします」

一色はそう言うと立ち上がり、俺に背を向け黙ってじっとしている。

「……俺にどうしろってんだ」

「だからー、キモくて怖くて抵抗できなかったんです。そこで先輩ですよ。先輩で練習したらきっと抵抗できるようになるんじゃないかなーと」

なんでもないような口調でなんてことを言うんだこいつは。俺じゃなきゃ泣くぞ。

「それは俺も同じくらいキモいって遠回しに言ってるんですかね」

「さぁー、それは先輩の行動次第ですかねー。ではさっさとお願いします」

「いや、さっさとって言われても……。つかさっきは何されたんだよ。それしねぇと意味ないんじゃねぇのか」

「あ、いいですね。それでお願いします」

俺さっきからお願いされすぎだろ。そんでお前は無茶なことお願いしすぎだろ。あれ、ていうかなんでやる流れになってんだ。俺やるって言ったっけ。

「さっきは、えーと。すっとわたしの後ろに立ってー」

渋々立ち上がり、一色の後ろに立つ。いや近いよこれ。背の低い彼女の頭が俺の顔のすぐ傍にある。

「こ、こんなもんか?」

「満員だったのでもっとです。わたしの背中に先輩の胸が当たるぐらい、ですかね」

「お、おう……」

言われた通りにすると背中より先に下半身同士が触れ合い、顔に熱がこもる。

ピクッと一色の肩が震えた。

「あ、ぅ……」

「へ、変な声出すな。それで、これから?」

「えと、なんとなくですけど、頭の匂い嗅がれてたような。それで、こう、太ももの後ろ辺りをさわさわと……」

痴漢の野郎、なんてことをしやがんだ。

「それを、俺にしろと?」

「は、はぃ……」

意識するな、これはあくまで一色が痴漢に抵抗できるよう練習するだけなんだ。演技だ。芝居だ。

ごくりと息を呑み、ふわふわした亜麻色の髪の毛に鼻を近づける。

「ん……」

おもわずもっと鼻を密着させたくなるほど、たぶん可愛い女の子特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。

痴漢の肩を持つわけじゃないが、こんな匂いを近くで嗅がされたらそんな衝動が沸き起こることは理解できてしまう。

まぁそこで実際に手を出すか否かが人と理性のない猿との境界線なのだが。ちなみに俺は今どっちなんだろうか。

「んっ……」

さらに顔を髪に埋めるようにすると、一色が吐息を漏らして身を僅かに捩る。

「……抵抗する気あんの?」

「あ、ありますけど、これだけじゃまだわかんないから無理ですよぅ。ただ近くにいるだけかもしれないですし……」

確かに一色の言うことももっともか。さすがにこれだけで痴漢扱いはできまい。…………ほんとに?

明らかに異常な脈の早さを感じつつ、手を一色の下半身、太ももの付け根から尻のあたりに近づける。

「やっ…………あっ」

震える手を近づけてはいるがまだ触れてはいない。しかしそこに手が迫っていることを肌で感じ取った一色が喘ぎ、足を擦り合わせるように身じろぎした。

「お前さ、そんな反応してたらだな、喜んでるのかと勘違いされるぞ……」

「いや、これは勘違いでもなくて……あの、先輩。もっとキモくやってくれませんか」

「なんだよその要求は」

「いやだって、抵抗する気にならなくて……。んんっ」

一色は俺に背を向けたまま振り向き、火照った顔を俺に見せると切なそうに呟いた。

ヤバい。これは何かがヤバい。俺の脳が危険信号を送っているのはわかっているが、どうにも判断力が鈍りつつある。

「き、キモくってどうやればいいんだ」

「そうですねー、もっと大胆に、とか……ですか?」

「……大胆か」

基本的に俺は女子に何をしても何もしなくてもキモいと言われていたタチなので得意なはずなのだが、いざキモいことをしろと言われても非常に困る。手を握るとかはなんか違うし……。

迷った末、顔をさっきよりもう少し下、首もとや耳の裏あたりに近づけることにした。

柔らかく艶やかな髪を手で掻き分け、妙な色気の漂ううなじに鼻を接近させる。

「あ……」

だから変な声出すな。ていうか抵抗しろ。

そうか。こいつこんな反応しちゃうから痴漢なんぞに付け入られるんだな。

ということはだ。俺は心を鬼にして一色の本気の抵抗を引き出す必要があるってことだ。

こいつが本気で嫌がるところまでやるべく、俺のキモさを総動員するんだ。しかしキモさが必要になる場面がくるなんて思いもしなかった。

そう決意を固めると、おもいきって一色に体を寄せる。

「んんっ」

ほらほら、抵抗しないとどんどん調子に乗っちゃうぞ。あくまで俺じゃなくて痴漢が。

髪の間から覗く白いうなじに顔を押し当てると、脳が痺れるような甘さを感じ取った。ただの錯覚なのかもしれないが、これはきっと麻薬だ。男を惑わす女のフェロモン的なやつだ。

その芳しい匂いを嗅ぎながら手を動かし、スカートの上から太ももを撫でる。

「はーっ……はーっ……」

一色は両手で口を抑え、声が漏れないよう必死に耐えている。手をずらすように動かす度に反応し体を揺らす。俺も息が荒くなっているような気がする。

「……なんで耐えてんだ」

「んっ……。て、抵抗、しますから、もっと……」

また振り返り、そんなもんですか?みたいな挑発的な目線を送ってきた。上等だ。俺のキモさを見せてやる。

首元に押し付けた顔をずらし一色の耳元に寄せる。

「ひんっ……、せんぱ、息が……」

「……可愛いな、お前」

鼓膜に一番近い場所で気持ちの悪いことを囁き、そのまま耳たぶを舐める。

味は特にしなかったと思うが、いろいろ麻痺していてよくわからない。強いていえばほんのりしょっぱいだろうか。

まぁとにかくこれなら十分キメェだろ。さあ一色、抵抗しろ。

「ひゃあっ!せせ、先輩、何を……」

「想像してみろ」

慌ててはいるもののまだ逃げようとしない一色に伝え、今度は耳たぶを甘く噛む。

「はぅっ……」

一色は耳まで真っ赤にしてぷるぷると足を震えさせている。続けて彼女を抱きすくめるように後ろから両手を回し、お腹のあたりと太ももを擦ってやる。

「……っ!ちょっ、待ってくだ……」

一色はそこでようやく抵抗の意思を見せ身体を強張らせると、やんわり俺の手を掴み振り返った。

「はぁー、はぁー……。先輩、気持ちよくて練習にならないんですけど……」

「い、今のは抵抗じゃねぇのか」

「いえ、いきなりでビックリしただけで……。耳元で可愛いって囁きながら足撫でるとか、完璧に口説きにきてますよね」

「いや相当キモいと思うんだが……」

自分で引くぐらい相当アレな行動でしたけど。

「それがもう、後ろに立たれて密着された時点で気持ちよくて……。先輩、何考えてるんですか」

えっ。それ一番最初ですよね。

一色はそんな文句を言いながらも、顔は全然嫌そうではない。

「俺はなんで責められてるんだ……」

「え?攻めるのは先輩の役目ですよ?」

「もはや会話も成り立ってねぇな」

「どうでもいいですから……続き。もっとしてくれたら本気で抵抗するので……お願い、していいですか?」

そして彼女は紅潮した頬で、期待に満ちた目で俺を見上げ、先ほどと同じ姿勢となって俺に体を預ける。

あざといってなんなのかよくわからなくなってきたけど今の感想は、そう。可愛いだ。こいつすげぇ可愛い。

もっと触りたいという思いも当然なくはないが、それ以上にお願いされているということを免罪符にして、一色の別の反応を見たくなってきた。

「あ、あくまであれだ、練習……だからな」

「はい……。わかってます、から」

会話がなくなるとまたお互いに緊張の色が浮かび、もし誰かに見られたら言い訳のできない行為が再開された。




初めてからどのぐらいの時間が経っただろうか。窓の外からは朝練に励むサッカー部の連中の声が聞こえてくる。しかしこの部屋の中にある音といえば、艶の混ざり始めた生徒会長の息遣いだけだ。

おずおずと体を触れさせているだけだった当初とは違い、今では朝の東京メトロ東西線ばりの密着具合で、完全に抱きすくめるような姿勢である。

思いきってもっと触って、いやむしろ揉んでやろうかと何度も考えはしたものの、生粋の臆病さが災いしてそこまでの行為には及んでいなかった。

では何をしているかというと、背、腹、首、腕、脚といろいろな部位をほとんどくすぐっているかのような手つきで淡くさすっているだけである。

いやごめんねヘタレで。だが一色の反応は悪くない。悪くないというのがもうなんなのかよくわからないが、そもそも何をやっているのかだいぶよくわからない。

ぼんやりしてきた頭でスカートの中に手を入れ、しかし決して下着には触れないよう太ももの付け根からつーっと膝裏に向けて指でなぞると、目を閉じた一色が色めいた吐息を漏らした。

「はうっ……」

触れるか触れないかぐらいにしか触っていないはずなのに、何故かその柔らかさが伝わってくる。よく考えなくても今の俺は凄いことをしている気がする。

そう意識すると、聴覚からは一色の蕩けるような声が、視覚からは震えながら身悶えるその姿が、嗅覚からは女の子の甘い香りが。

あらゆる感覚が刺激となって俺の下半身に血液を集中し始めた。

彼女の尻の部分と膨張しつつある俺の下半身は密着したままだ。まずい。ヤバい。

「っ……!」

一色も下半身に触れている固い何かに気づいたのか、ピンと背筋を伸ばすような反応を見せた。

「せんぱ……な、なん、なんか……」

これ完全にバレてるな。どうする八幡。

どう言い訳をしようか考えていると、何を思ったのか一色が予想外の行動を起こした。

「…………ぁ……」

少しだけ尻を突き出すような格好になり、俺の元気になりつつあるあれに押し付けてきたのだ。

「ちょっ、まっ、おま、痴女じゃねぇかそれじゃ……」

「……も、ムリです……」

「あ?」

一色は俯き、蚊の鳴くような声でそう告げると突然振り返り、

「っ……!」

かちっと、一瞬だけ何かがぶつかる音が聞こえた。一色の顔が言葉通り目の前に、近すぎて全体像が見えないような距離にあった。

音の正体がなんなのかわからなかったが、あれは歯だ。歯のぶつかった音だ。

何故そんなものがぶつかるのか。それは、唇が触れ合っているからだ。

そしていつの間にか俺の頭は彼女の両手で挟まれており身動きが取れない。

「ふーっ……ふーっ……」

人は驚きすぎると何もできなくなると聞くが、今の俺はまさにその通りだった。頭はフリーズし、息をするのも忘れて目も開いたままだ。だから強く目を閉じ、鼻で荒い呼吸をする一色のことがよく見えた。

キスの味はぶっちゃけよくわからなかった。

…………ていうか、なげぇよ。このままだと息ができない。そう思い手を伸ばそうと思った瞬間、拘束が解かれゆっくりと顔が離れる。

「ぷあっ、お、ま、何を、……っ」

耳まで朱に染めた彼女は、悪戯っぽく人差し指を唇に当て、囁くような声で話す。

「えへへ……。キス、しちゃいました」

どくん。

「そ、それはわかるけど、なんでだよ、いきなり」

「もう我慢できなくなっちゃいまして……。ダメ、でしたか?」

「いやそういう問題じゃねぇだろ」

「じゃあ、わたしとするの。……イヤ、でしたか?」

ほんの少しだけ一色の眉が下がる。それだけで、俺の胸に掻き乱されるような何かが渦巻いた。

「え、と、嫌かと言われると、だな。お前は可愛いし別に嫌ではないというか、あれ何言ってんのかわかんなくなってきた」

煩い。心臓がうるさい。

あれ俺もしかして初キス?一色とが俺の初めてになるのか?

「じゃあ、先輩……。わたし、もう我慢したくないので、よかったら…………もっと、して……もらえますか?」

一色は蕩けた瞳で上目遣いを俺に向け、誘惑的に、蠱惑的に囁く。そのまま流れるような動作で生徒会長の机に腰掛け、のろのろと、ゆっくりと、つつっと。

ただでさえ短いスカートを、ギリギリ見えないところまでたくし上げた。

そんな彼女は、もう可愛い小悪魔には見えなかった。


* * *

ここで寸止め

またいつか

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