モバP「梨沙、帰省の電車の時間だけど」 (36)

P「17時に東京駅な。切符は俺が持つか?」

梨沙「自分の分は自分で持つわよ。アンタに何かあったらアタシ一人で帰るから」

P「的場さんにお前の事任されてるんだ。そんな無責任なことさせられるか」

梨沙「仕事が押すかもしれないでしょうが。駅までは他に電車にのる子と一緒にいくから大丈夫よ」

P「お前俺の立場考えろよ。年の瀬に小学生を一人で放り出すわけにもいかんだろう」

梨沙「新幹線まで放り出してたら変わんないわ」

P「うっ、まあそういうな。余裕があれば迎えに来るから」

梨沙「いいから早く行きなさい。約束までそんなに余裕ないでしょ」


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P「ああ本当だ。とりあえず行って来るけど戻ってこれたら戻ってくるから」

梨沙「はいはい、それじゃ行ってらっしゃい」

P「それじゃみんな、また合うかも知れないが良いお年を」

「「「良いお年をー」」」

桃華「…ふむ」

桃華「梨沙、ちょっと。ちょっと」

梨沙「何よ」

桃華「ちょっとお伺いしたいことがありますの。Pちゃまと、本日どこかへ?」

梨沙「一緒に帰省するだけよ」

桃華「なるほどなるほど。……なるほど?」

桃華「ちょっとお待ちを」

梨沙「何よ」

桃華「一緒に、帰省?」

梨沙「そうだけど」

桃華「少しお待ちを」

桃華「お待たせいたしました」

梨沙「そうね、紅茶淹れて、一杯飲んで、一息ついてたわね。アタシ立ったまま待たされたんだけど」

桃華「申し訳ありません、少し頭の整理に時間が」

梨沙「だいたいわかるけど、一緒に帰省ってどういうこと、でしょ?」

桃華「ええ、その通りです」

梨沙「言葉通りっていうか、一緒に実家に帰るんだけど」

桃華「知りませんでしたわ。Pちゃまのおうち、梨沙の近所でしたの? 確かにやけに仲がいいと思っておりましたが昔からの知り合いということでしたら」

梨沙「いや、うちだけど」

桃華「梨沙のですわね。Pちゃまはどちらに?」

梨沙「うちだけど」

桃華「お待ちを」

桃華「お待たせいたしました」

梨沙「クッキーごちそうさまでした」

桃華「いえいえ、お粗末さまでした」

桃華「ええと、なんでしたかしら。Pちゃまが梨沙の実家に帰省と」

梨沙「うん」

桃華「お正月に担当アイドルの家に押しかけることは流石に一般的ではないと思うのですが」

梨沙「まあそうよね」

桃華「招待するに当たって帰省という表現はおかしいと思うのですが」

梨沙「おかしいわね」

桃華「まさか、Pちゃまと将来を誓い合い婿養子として迎え入れたということは」

梨沙「あるわけないでしょ! アタシはパパ一筋よ!」

桃華「ですわよ、ねえ…」

桃華「Pちゃまはご実家には帰られないのかしら…」

梨沙「いや、ね…」

桃華「どうしましたの?」

梨沙「なんか、最近、気付いちゃったっていうか、悟っちゃったっていうか…」

桃華「何をでしょう」

梨沙「もしかしたら、アイツ私の親戚なのかもしれないわ」

桃華「なるほど」

桃華「お待ちを」

桃華「お待たせいたしました」

梨沙「マフィンごちそうさまでした」

桃華「いえいえ、お粗末さまでした」

桃華「ええと、なんでしたかしら。Pちゃまが梨沙のご親族と」

梨沙「いや、少なくとも今までは親族付き合いとかなかったんだけど」

桃華「Pちゃまがご親族と仰った、というわけではありませんわよね、先ほどの口ぶりですと」

梨沙「いや、うーん、ほら。クリスマスね、パパと二人で過ごしてたわけよ」

桃華「存じておりますわ」

梨沙「そしたらパパが、「そういえばP君は年末どうするのか」って」

桃華「お父様が?」

梨沙「そ。興味なかったし知らないって言ったら」

桃華「言ったら?」

梨沙「「もし一人で過ごすようならうちに連れて来い」って」

桃華「お父様が?」

梨沙「パパが」

桃華「Pちゃまを?」

梨沙「アイツを」

桃華「まあ」

梨沙「ねえ」

桃華「ええと、梨沙のお父様がPちゃまを梨沙の家に」

梨沙「連れてこいって」

桃華「おかしいと思うのですが」

梨沙「おかしいわよね」

桃華「それでPちゃまはなんと?」

梨沙「なんかすごい喜んでた」

桃華「どのように?」

梨沙「「えっ、本当にいいのか!? まさか帰省させてもらえるなんて!」って感じで」

桃華「声はともかく挙動がPちゃまそのものでリアクションに困りますわ」

梨沙「うっさい」

梨沙「まあ普通じゃないわよね」

桃華「普通ではありませんわね。私が櫻井の家に招待した折は家族に悪いということで固辞されましたわ」

梨沙「アンタの家もそれはそれで普通じゃないしね」

桃華「それでも、です。保護者の方が招待することも、それを受けて喜ぶことも普通ではありません」

梨沙「よね。だから考えたんだけど」

桃華「なるほど、親族なのではないか、と」

桃華「確かにPちゃまの実家のお話は聞いたことがありません。梨沙の家にお邪魔するなら当然帰省もなさらないでしょう」

梨沙「そーゆーこと。やけにパパと仲がいいのもそう考えれば納得できる気がする」

桃華「確かに梨沙のお父様とPちゃまは少し過剰なくらい仲がよいと」

梨沙「アタシより頻繁にパパと連絡してるとか普通に考えたらありえないわ」

桃華「なるほど」

桃華「少しお待ちを」

桃華「お待たせいたしました」

梨沙「おかわりありがと」

桃華「いえいえ、粗茶ですが」

桃華「ええと、それで。梨沙はPちゃまがご親戚なのではないかと推理したと」

梨沙「流石に無関係ってことはないでしょ、でもアタシが知らないってことは何があったのか知らないけど何かあったんだと思うし」

桃華「なるほど、それで?」

梨沙「だったら、まあ。黙って帰省くらいさせてやろうって」

桃華「いいことですわ。ご家族が一緒にいていけないことなどないですもの」

梨沙「まあ別に今までと何か変わるってわけじゃないけど」

桃華「なるほど… ふむ」

梨沙「なによ」

桃華「ふふ、なんでもありませんわ」

梨沙「その顔ムカつく」

桃華「あらあら。いえ、ふふ」

桃華「こほん、ところで」

梨沙「うん?」

桃華「有り得るとして、Pちゃまは梨沙のお兄様なのかしら?」

梨沙「パパにあんなデカい子供がいてたまるもんですか。年だってアタシよりパパに近いはずだわ」

桃華「でしたら、お父様かお母様のご兄弟か、少し遠縁の親族かしら」

梨沙「そんなとこでしょうね。詳しくは聞く気もないけど」

桃華「ええ、梨沙。ええ」

桃華「少しお待ちを」

桃華「ええ、よろしくてよ」

梨沙「そう。たっぷり3分黙ってたけどどうしたのよ」

桃華「ええ、わたくし、今、決めたのです」

梨沙「何をよ」

桃華「梨沙、わたくしを、桃華を姉とお呼びなさい!」

梨沙「イヤ」

桃華「まあ!」

梨沙「「まあ!」じゃないわよ! 何いきなりトチ狂ったこと言い出してんの?」

桃華「いきなりではありません、桃華は考えたのです」

梨沙「いいから、いいから、いいから。それを今言わなくていいから」

桃華「そう、長い間疎遠になっていた二人、事実は未だにわからない。それでも、ああそれでも」

梨沙「いいっつってんでしょ!」

桃華「叔父と姪、従兄妹やはとこの可能性もあるでしょう、ですが今更それが受け入れられるでしょうか。いえ、難しいですわ!」

桃華「であればこそ! 事実はどうあれ親愛の意を込めPちゃまを兄とするのが今の二人の関係からして一番自然に移行出来るはず」

桃華「そう、わたくしが嫉妬しそうなほど仲睦まじい二人であれば、実の兄妹と言われても皆納得することでしょう」

梨沙「アタシが納得しないわよ! あんな変態な兄がいてたまるもんですか!」

桃華「ですから、梨沙。桃華を姉とお呼びなさい!」

梨沙「ですから、じゃないわよ! 仮に親戚だったとしても同い年の姉や叔母さんが出来てたまるもんですか! 第一アイツがアンタに手を出したらアタシが通報してやるわ!」

桃華「問題などありませんわ、あるとしても時間の問題ですの」

梨沙「上手いこといったみたいな顔してんじゃないわよ!」

桃華「ええ、自分の知らなかったことで心細くなることもあるでしょう、ですが心配なさらないで? 胸のうちを聞いてくれる身内がいれば、少しは楽になれるはずですわ!」

梨沙「目下のアタシの悩みは目の前でトチ狂った同僚をどう扱えばいいかよ!」

桃華「ふふ、強がって… よろしいですわ、この義姉に全て吐き出しなさい!」

梨沙「義を、取れえっ!」

「えー、なになにー、なんか盛り上がってる?」
「梨沙ちゃんを妹にする企画だって」
「商品が出るらしいですよ」
「えっ、梨沙ちゃんを妹にすればPさんと結婚?」
「桃華ちゃんの妹になれば3色昼寝つきで養ってもらえるってホント?」
「性別年齢問わずらしいです!」

梨沙「あああ、もう、意図的に脚色して広めてる奴がいるわね!? 杏!? 早苗?! みくかしら!? そこを動かず待ってなさい!」

桃華「ええ、よろしくて、よろしくてよ! 皆さんまとめて桃華の姉妹愛で包んで差し上げますわ!」

梨沙「だ・ま・れえええええっ!」

一旦了
うちの桃華ちゃまは梨沙のことを呼び捨てたりしてます

P「ただいまー」

加奈「あれ、Pさんお帰りなさい。今日は直帰だったんじゃ?」

P「その予定だったんだが先方も年の瀬で忙しいらしくてな。早々に切り上がったし拾ってきたいやつもいるから寄ったんだ」

加奈「えっと、今は盛り上がってるから難しいかもしれません」

P「盛り上がってる?」

桃華「いいですか、梨沙は?」

仁奈「梨沙おねーさん!」

桃華「ありすさん」

仁奈「ありすおねーさん!」

桃華「わたくし」

仁奈「桃華!」

桃華「もうっ!」

こずえ「ももかぁー」

薫「桃華ちゃーん」

桃華「もうっ! もうっ!」

杏「桃華お姉ちゃーん、杏、飴欲しいなー」

P「何やってんだあいつら」

加奈「桃華ちゃん、お姉さんになりたいみたいです!」

P「見境なしに妹を作っていくのは一人で十分なんだけどなあ」

加奈「えへへ」

P「褒めてないぞ。逆にあっちはなんなの」

若葉「ほーら、お姉ちゃんですよー」

梨沙「」プイッ

みく「ほらほら梨沙チャン、カワイイカワイイおねえちゃんにゃ? 今ならネコミミもプレゼントにゃ?」

梨沙「」プイッ

心「梨沙ちゃん梨沙ちゃん、スウィーティーなお姉さんだぞ☆ ホラはぁとお姉さんって呼べよ☆」

梨沙「はぁとママ」

心「やめろコラ♪ まだそんな梨沙ちゃんみたいな大きな子がいる年じゃないから☆」

みく「えーっと、梨沙チャン今12で、16歳で産んだとしたら佐藤さんは…」

心「おい前川♪ その曲げ伸ばしした指へし折られたくなかったら黙れ☆」

P「早苗さんが後ろで回れ右したけどなんなのあの一角は」

加奈「梨沙ちゃんのお姉さんになりたいみたいです」

P「俺がいない間に何があったの?」

加奈「いつもどおりだと思います」

P「妹作る機会なのに加奈は行かないのか?」

加奈「違うんです。梨沙ちゃんを妹にしたいんじゃなくて梨沙ちゃんのお姉ちゃんになりたいだけな人もいます」

P「違いがわからないけどそっか」

加奈「はい」

P「じゃあ俺直帰するから良いお年を」

加奈「ダメです」(ガッ)

P「待ってベルト掴むのやめて。これアレじゃん本気で逃がさないやつじゃん」

加奈「早苗さんに教わりました、えへへ」

P「可愛く言ってもダメだからな。スーツ掴まれても困るけどベルト、離してほしいな?」

加奈「お兄ちゃんの妹としてのアイデンティティが危険で危ないんです。ダメです」

P「お兄ちゃんこんなアグレッシブな妹見たくなかったな」

加奈「私もお兄ちゃんが私に無断で他に妹をこさえてるなんて思いたくありませんでした」

P「言葉の選択に悪意しか感じられない!」

P「でもなんだよ妹って。俺に妹なんて生まれてこの方いたことなんてないぞ」

P「ああ、こっち見ながら無言で自分を指差すのはやめなさい加奈。そうだな。俺には可愛い妹が一人いたな嬉しいなー」

加奈「えへへ!」

P「で、その可愛い妹さんや、何があったのか教えてくれないかな」

加奈「えっと、メモを見た限りでは梨沙ちゃんがPさんの妹みたいな親戚なんじゃないかってことみたいです!」

P「えっ?」

加奈「えっ?」

P「なんだよそれ、知らないぞ。俺いつから梨沙の兄貴になったの?」

加奈「あれ、メモ間違えたのかな…?」

加奈「梨沙ちゃんの家に一緒に帰省する」

加奈「他に帰る予定はない」

加奈「梨沙ちゃんのパパに呼ばれてすごい嬉しそうだった」

加奈「って聞いたんですけど」

P「梨沙ん家ってなんかすごい落ち着くし」

P「実家に帰れば結婚せっつかれるから出来れば帰りたくなかったし」

P「一人寂しく正月を過ごすかと思ってた時に的場さんに家族の一員って認められた気がして、なんか嬉しくてな…」

加奈「最後、おかしくありませんか?」

加奈「でもどうしよう、お兄ちゃんが頭おかしいホモ野郎だったって説明したとしてもこの状況どうしようもないです」

P「ホモじゃないし頭おかしくもないよ。なんなの、泣くよ?」

加奈「でも、これ、どうするんですか」

P「ほっとけば落ち着くんじゃないかな… 年の瀬だし、新年になれば勘違いでしたー、でみんな笑って許してくれるだろ」

加奈「梨沙ちゃんと年明けまで過ごすんじゃないですか?」

P「俺、悪くないよな…?」

加奈「Pさん!」

P「なんだい加奈さんや」

加奈「がんばってください!」

P「なんの慰めにもならないけどありがとう。取り急ぎは、もう、何も見なかったことにしたい。そうだ、そうしよう」

加奈「がんばってください!」

P「おう、ありがとうな。ああ、そうだ、良いお年を」

加奈「はい、良いお年を!」

P「うん、そうだ、そうだ。とりあえずは」

P「梨沙、帰省の電車の時間だけど」

と、間に合いそうだったので残った部分もまとめて投下
改めまして良いお年を

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