【総合タワーリシチ】へなちょこを治す薬 (30)

1作目 悠と神奈
【総合タワーリシチ】キス、とかそれ以上がしたい?
【総合タワーリシチ】キス、とかそれ以上がしたい? - SSまとめ速報
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2作目 都とちはや
【総合タワーリシチ】君が朝に弱いのは
【総合タワーリシチ】 君が朝に弱いのは - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450446587/)

今回
暁とリカ
エロ
原作崩壊注意



ガタン、ゴトン。
景色が流れていく。
私は、それを眺めるくらいしかできない。
朝の満員電車は嫌い。
ううん。
怖い。
だから、朝は嫌いだ。
後ろから聞こえる息遣いは、
私にはきっと関係ない。

「……ッ」

背中に当たる指の感触は、
私の幻想か妄想か、
とにかく勘違いだ。
そう思いたい。
指が下に降りてきた。

「ふ……」

ふざけんな。ピーをピーして、ピーにしてやるからな。
そうやって、言えたら、どんなにいいか。




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「リカちゃん、そこ狭くない? こっちおいでよ」

「え」

その声に思わず振り向いた。
あくびをしながら、暁が人一人は入れるスペースを確保して、
こちらへ手招きしていた。
後ろの気配が消えた。

「どったの?」

暁は何も気が付いていないみたい。
なんだか、始業式のことを思い出した。

「ううん」

いつもの憂鬱な朝。
そこに、いつものアホ面な暁。

「リカちゃん、おいでおいで。ほれほれ、暁さんだよ」

つり革を揺らして、
私に手を伸ばしている。
そんなので釣られるか。
けっ。
釣られてあげるけどな。
目の前まで移動したら、
抱きしめられた。

「ひッ、な、なに」

「一日、一リカちゃん」

まあるく笑って、そんなことを言った。

昼休み、朝のチカンの話をしたら暁にすっごく怒られた。

「どーして、すぐに私に言わなかったのさ!」

「だって、暁がいるなんて知らなかった」

「あんなにアピールしてたのに?!」

「アピール?」

「携帯!」

携帯?
何のこと。
ポケットに入っていた携帯を、取り出す。

「……あ、充電切れてる」

「リカちゃんったら、もう!」

暁が抱き着いてくる。

「ご、ごめんて」

「全く、私のカワイイリカちゃんに触れたくなる気持ちは分からなくないけどさッ」

「分かるの? 暁も触りたい時とかあるの?」

「ちょッ、リカちゃまったら、お天道様が登ってらっしゃるのになんてこと聞いてくるのかしら!」

「あ、暁が変なこと言うからだろッ」

「あんたら、そういうのは人目のつかない所でやんなさいよ」

「そーよ、そーよ!」

外野の皆さんが、何か勘違いされ始めた。

「ち、ちが」

焦って言葉に詰まる。

「神奈ちゃんだめよ、人目のつかない所になんて連れてったら、私何されるか……」

「暁、それ私の台詞」

「きゃッ、リカちゃんのエッチ」

「なんで!?」

暁は自分の体を守るように、
身を翻した。

「お前ら、もう家行け、な?」

神奈ちゃんが半眼で、
呆れた声を出していた。

「じゃあ、今日の放課後は家まで送るよ」

暁の提案に、周囲が囃し立てる。

「さすが、母ちゃん!」

「うちの娘をどこぞの馬の骨にくれてやるわけにはいかんわい!」

ママは、一人で十分間に合ってますが。

「いいって、別に……」

「いやー、一回りかちゃん家に行ってみたかったし?」

「それが狙いか!」

「えー、いいな、あたしもこまみーの家行きたーい」

え。

「そうだね。ちーちゃんが行くなら、私も。それに、みんなで行った方が安心だろうし」

みやこちゃんまで。

「ちょ、ちょっと、みんな」

「あんたらね」

と、神奈ちゃんが遮る。

「いきなり家に押し寄せて来られたら、家の人が困るでしょ。ほんとに、色々準備がいるのよッ、こっちは!」

なぜか、半切れ。
何か、あったのか。

「えー、でも神奈ちゃんも、ゆーちゃんが急に会いに来たら嬉しいッショ?」

「うるさいこのバベルが!」

「あー、照れてる! 見なすって、暁さん! この真っ赤な熟れ具合!」

「ちーさんや、こりゃ、ようけ熟しておるわい! 悠お嬢ちゃん! 食べごろですぞ!」

「ほんと?」

「やめんかああ!」

神奈ちゃんがまたサボテンみたいになって、
幼稚園の猿みたいな暁達に制裁を加えていた。
横目で当の羽座岡さんを確認すると、
なんだか嬉しそう。
こっちまで、微笑ましくなる。
仲良いなあ、二人は。
羨ましい。

「というわけで」

何?

「暁、あんた一人でいくこと」

と、神奈ちゃんからのお達しが下ったのだった。

眠いので
今日はここまで

かくして、今、私の隣で暁が鼻歌交じりに歩いているという状況が出来上がったわけだけど。

「別に、いいのに……」

「そういう訳にはいかないよ。みんなの期待を一身に背負ってるんだから」

期待って、何に対する期待だよ。
突っ込まないけど。
しばらくすると、私の家の門扉が見えてきた。

「あそこだよ。もう、見えたから大丈――」

こちらが言い切る前に、
暁が驚きの声を発していた。

「うっわ、想像してたのより豪邸だった……」

「そうでもないよ。けっこう年数経っててボロがきてるし……」

暁は門の前で立ち止まった。
そう言えば、送ってくれたけど、
家に入ると決めたわけではなかったんだ。
来るのかな。
ママもパパも、家にはいないようだ。

「おじさんちはもっと古いよー」

「どんなの?」

「ふふふ、それは今度までのお楽しみ」

家に来いってこと?
いいけどさ。
私も、行ってみたいし。

「さって、うん、じゃあ何事もなかったし帰るよ」

あっさりと暁は言った。

「わざわざありがとう」

「今度はちゃんと携帯充電しといてね、リカちゃん」

「わ、わかってる」

笑いながら、暁は後ずさる。
帰るんだ。
そっか。

後ずさる暁は、亀の様に、遅い。
てか、のろすぎる。
じれったい。

「帰るなら、帰る!」

「ひえッ」

どうしたっていうの。

「リ、リカちゃんの家、今、誰かいるの?」

「いないけど?」

「一人でお留守番ということですなあ。おじさん、心配」

「ご心配ありがと。いつものことだから」

ああ、そっか。
教室では、あんなにノリノリだったのに。
可笑しな人。
本番になったら、臆病風に吹かれたってことかな。
なんだ、それ。

「暁さ、家、上がっていく?」

ほんとは言って欲しかったけど、
きっと、神奈ちゃんが言ってたこととか気にしてさ、
余計な心配して、言えないんだろ?
残念な思いやり。
そういう気遣いが嫌だって言ってるのに。
私のこと、特別なら、もっと踏み込んできてよ。
こんなの、レベル1くらいでしょ。

「え、いいの」

「……いや?」

「そんなわけないじゃん! むしろ、喜んでお供しますぞ!」

「ついてきて」

「おう!」

なんだろ。
今さら、暁と家に二人で入ることが、
いけないことのような気がしてきた。
謎の背徳感で、気持ち悪い。
普通だったら、もっとドキドキするのかな。
淡く浮き立つのかな。
普通じゃないのかな。
プレッシャーみたい。
私、かなり、緊張してる。

「リカちゃん? 大丈夫?」

玄関先で、靴を脱がずに突っ立ってしまって、
暁が顔を覗き込んでくる。

「うん……」

思わず、顔をそらしてしまう。

「どうしたの? 何か、怒らせた…‥かな」

語尾が小さくなっていくところ、
へたれな言動を自覚しているみたい。
こんな残念暁に、どうして緊張しなくちゃいけないんだ。
ドキドキしない。
してない。
これは、そう、武者震い。

「別に、怒ってなんかは」

靴を脱ごうとしゃがみ込もうとした矢先、
がしりと抱きすくめられた。
暁の顎先が、私のうなじにうずもれる。

「さっきから、目、合わせてくんないし」

そんなこと、分かってる。

「震えてるし」

「う……」

暁が腕を離す。

「や、やっぱバレてたかな。だ、だよね、いや、おじさんってホントにリカちゃんに嫌悪感しか持たれてないんじゃないかと心配に――」

「な、なんのこと?」

「だから、おじさんの下心に気付いて――」

「下心? えっちなこと?」

あ、口が滑った。

「あ、うん……」

暁が、それは、もう、
可愛い顔をして頷いた。

可愛すぎて、腰が抜けたのか。
大胆な発言で、抜けたのか。
それはもうよく分からないけれど、
私は3秒後に玄関先で尻もちをついて、
暁を見上げていた。

「な、な、な……」

右手で顔を隠しながら、
暁は、どうやら自己嫌悪しているみたいだ。

「うん、ごめん……」

「い、いつから」

「……家に行くって、決めてから。リカちゃんのこと、頭から全然離れなくて……」

暁は溜息を吐いた。
眼鏡を外して、胸ポケットにしまう。

「二人きりになんてなったら、やばいなって思ってた……」

そして、真っ直ぐに、私を見ていた。
ビジュアルだけは、いいんだから。
私は呼吸が止まりそうになった。
死んじゃう。
暁が、私の周りの酸素を奪っていく。
恥ずかしい。
そんな風に、見られていたことが。

「でもさ……、今朝のこともあってさ、そんなの言えないじゃんか……」

だから、こいつはこんな後ろめたい顔をしてたのか。
自分が、チカンの犯人と同じだと思って。
違うよ。
全然、違う。

「私、いやじゃないから……暁に、その、触られてもいい」

「そういうこと、軽々しく言わないの」

「違う……暁、分かってない」

「?」

悩む前に、触れあってしまってもいいんだ。
とは、口が裂けても言えないけど。

「私は、暁のことが好きなんだよ。暁はそれじゃ、不満?」

「……」

尻もちをついた私から言っても、
なんとも説得力はないかもしれないけど。

「いいや……」

彼女は優しく笑って、
私の腕を引っ張ってくれた。

私の部屋のクローゼットの前に、お互いの荷物と上着を丁寧に置いて、
無言で、二人ベッドに腰掛けた。

互いに好き合ってる。
だから、行為に問題はない。
問題があるとしたら、
この後どうすればいいかってこと。
二人の間に所在無げにあった手を、
まずはなんとかしなくては。
と、思っていたら、
暁が私の右手を少し強く握ってくれた。
私の右手は、石のように固くなった。

「ぷッ……リカちゃん、実は相当緊張してる?」

「あ、辺り前だろ。そういう暁は、慣れてるの?」

「ううん、こんなのリカちゃんが初めてだよ。というか、リカちゃん以外となんて無理だから」

指を絡めるように握り合う。
やらしい。汗ばんできた。
暁の方が私より落ち着いてる。
というわけではなさそうだ。


眠いのでここまでです

じゃなかったら、こんなに強く握りしめてこないよね。
ちょっと痛いんだ。
でも、それ言ったらまた謝るから。
何も言わないでおいた。

「あのさ……リカちゃんや」

「うん」

「この後、どうしよう!?」

はいい?

「ど、どうしようって言われても。暁はどうしたかったの?」

「リカちゃん良い匂い、うわーい、手も柔らかい握っちゃえ! って所までは良かったんだけどさ、ぶっちゃけた話、それで何か使命果たしちゃったというか」

あたふたと身ぶり手ぶりでそう言い訳じみたことを暁は言った。
そんな。
あれだけ、誘っておいてそれはひどいんじゃないか。
と、口が裂けても言えるわけなく。

「キ……スとか、すればいいじゃん」

ぶっきらぼうに助け船を出した。
隣で唾を飲み込む音が聞こえた。

すればいいじゃんて。
自分がして欲しいんだ。
分かってる。
暁の頬に、左手を添えた。
びくんと震えていた。

「もう、私が襲ってるみたいだ」

「で、ですね。おじさん、ドキドキするよ」

どれどれ。
暁の無い胸に、耳を寄せた。

「り、リカちゃ……」

「ホント、爆発しそう」

「君は時々、凄く大胆だよね」

「良い薬になるでしょ?」

「刺激が強いかな……たはは」

視線を上げると、眉根を下げて苦笑いする暁と目が合った。
切れ長の目。
見ていて、とても落ち着く。

「ん?」

目を見ると、必ず笑ってくれる。

「して……暁」

私は、顎を上げて、瞼を閉じた。
暁の表情を見てみたいけど、そんな勇気はない。
恥ずかしいから、早く。

そして、頬に温かく湿り気のある唇が触れた。
私は目を開く。

「ほ、頬?」

「え、えええ~……だ、だめ?」

「だめじゃないけど、なんか、思ってたのと違う……」

ドキドキして損した。

「しょせん、暁にはこれが限界か……」

「そ、その飽きられ方、デジャブだね!?」

「つまり、暁が成長してないってことだよ。頬のキスなんて、挨拶もいいとこだから」

「だが、しかしね? リカ君や、ここはジャポンだよ?」

「……はあ」

私は、しょうがないのでもう一度目を瞑った。
暁が困惑しているのが、空気で分かった。
ほんと、面白いんだから。
なんで、こんなに可愛いんだ。

「ちなみに……」

「え?」

暁の声がすぐ目の前で聞こえた。

「私、これがファーストキスだから……優しくね」

「それ、どうしたらいいのッ」

「自分で考えてね」

意地悪だなあ、私。
でも、こうやって暁を困らせるの楽しいんだもん。
両肩に、手を置かれた。
意を決したみたい。
震えてる。
あ、違うね。
これ、私が震えてるんだ。
苦しい。
私、息止めちゃってる。
どうやって、呼吸してたっけ。
あれ。

「んッ……」

暁の唇と重なった。
押し付けられて、身体ごと後ろに倒れた。
唇は離れない。
苦しい。
唇を舐められた。
吸われた。
苦しい。
口は開くけれど、酸素が吸えない。
どうして。
頭が、くらくらする。
涙が出てきた。
暁の舌が口内に入ってきて、
彼女の唾液が混ざっている気がした。
喉を鳴らそうとしたけれど、
混ざった唾液を飲むのが恥ずかしくて、
口の端から何かが漏れていった。

「リカちゃんッ?」

呼ばれて、目を開いた。
自分の口の端から、よだれが垂れているのが分かった。
下唇を噛みしめて、それを防ごうとした。
そして、漸く、鼻で空気を吸い込むことを思い出した。

「ふッー……ッふー」

頬が熱い。

口の中は甘ったるい。

「よ、よだれ…、リカちゃん、あの、嫌だったら、ぺってしなさいなッ」

暁はベッドの隅にあったティッシュを掴む。

「ほら」

別に汚いとかじゃなくて、
これ、飲んじゃったら、暁の呑んじゃうのと一緒ってことで。
でも、もう、顎が疲れた。

「……あの」

恐る恐る、暁が口を開く。

「嫌じゃなかったら、呑んで……リカ」

その言葉の衝撃が強くて、
私はうっかり呑み込んでしまった。
両手ですぐに口を押えた。

「あッ……」

「んッ……はッ…ぁッ…の、のんじゃった……。暁が、呼び捨てになんかするからッ」

睨む。

「え、え、えええ? ご、ごめんッ」

「ばッ……か……はあッ」

息が続かない。
キスの時って、どうやってみんな呼吸してるの。
天井を背景に、暁が申し訳なさそうに私の髪を撫でた。
口の端を、指の腹で拭きとってくれる。

「……ッ……ふッ……」

「どう?」

「……え?」

「ファーストキス」

「甘かった……かも」

「嫌いじゃない?」

「……好きな方」

暁がじっとこちらを見ている。
髪が変なことになってしまっているのかも。
手櫛で、前髪を整えようとしたら、
もう一度キスされた。

「んッ……ぁッふ」

「リカちゃん…………可愛い過ぎ」

それから、人が違ったみたいに、
暁は何度も私の唇を吸った。
ふやけてしまうくらい。
互いの荒い呼吸が、
耳をくすぐっていた。

「も、もうッ、暁……キスは」

「はッ…わおッ……」

最後の方は、為すがままだったと思う。

「キスは、無理」

と言うと、

「え」

「当分、無理」

すごく、悲しそうな顔をされた。
そんな顔されたって、こっちだって、
頭パンクしそうなんだから。
人を、おしゃぶりかなんかと勘違いしてるんじゃないのか。

キス禁止を言い渡すと、
彼女は、こくりと頷いた。
キス魔だったのかも。

「私さ、女で良かったと思う」

暁は言った。

「どうして……?」

ベッドへ気だるげに沈みながら、私は聞いた。

「男だったら、たぶん力づくで、色んなことしちゃう」

「ヘンタイ……」

「うん……」

抱きしめられた。
手が、スカートに伸びて、
直接太ももに当たる。
朝のことが思い出された。
でも、暁は違う。
男とは違う。

「私は、男じゃなくて良かったよ」

「リカちゃん、男性恐怖症だしね……」

「そうだけど、暁にも会えなかったから」

「……確かに。良いこと仰る」

「でしょ」

私は、にっと笑った。
それにつられるように暁も笑った。

「私も、リカちゃんに引っ張ってもらわなかったら、もっと残念女子になってたよ」

分かってるじゃん。
ま、私もだけど。
二人で進んだらいいんだよ。

「リカちゃん」

「なに?」

「もっと、リカちゃんのこと……知りたい」

耳元に口を寄せて、

「続き、いい?」

囁いた。

「聞くな、バカ」

「へへ」

「聞かなくてもいいから……」

「うん」

「頑張るね……」

暁を抱きしめる。

「あーッ……やばいって、リカちゃん」

とまあ、そんなこともあって、
暁はちょっとカッコイイ変態に昇格したのだった。




おわり

ショートストーリーでしたがこれでおしまい。
リシチの神奈好きはぜひ語り合いたいものです。

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