【総合タワーリシチ】キス、とかそれ以上がしたい? (26)

百合
神奈×悠




『キス、とかそれ以上がしたい?』

『したい』


――「キス以上」って、いつしていいの?




今思うと、私はなんちゅーとんでもないことを言ってしまったのか。
それ以上って、それ以上って、それ以上ってなによ。
そして、こいつはなんで躊躇もなく即答したのか。

「神奈、また変な顔してる」

「へ?」

「そこの問題、そんなに難しい?」

悠は抱きしめていたクッションを脇に置いて、
机の反対側から身を乗り出した。

「あ、ううん……ちょっと、別のこと考えてたの……」

「なに?」

「あんたには関係な……いこともないし、むしろあり得るようなそんな感じよ」

「どういうこと」

「や、ごめん、今のは自分でも意味不明だったわ……」

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悠は首を小さく傾げた。

「神奈はいいな。たくさん、面白い顔をするから」

「だから、それ褒めてないことに気付いてる?」

「そうなの? 私は、見ていて楽しい気分になるよ」

悠は微笑んだ。
良い顔で笑いおって。

「で、何を考えていたの?」

「引っ張らなくてもいいわよ!」

「気になる」

彼女は四つん這いでこちらに移動して、
私の脇に手を差し入れた。

「え、ちょ」

そして思い切りくすぐられた。

「ッ……ゆッ……ひひひッ!?」

人に聞かせられない雄たけびが部屋に轟いた。

「権力には……屈しないわ……決して」

数分後、互いに力尽き、肩で息をしながらベッドに横たわっていた。

「もおー……テスト勉強……はあッ……なんないじゃない、ばかーッ……はあ」

「途中から、抵抗する神奈が可愛くて……止められなかった」

「はあッ!?」

飛び起きて、毛を逆立てた猫みたいに悠を威嚇する。

「どうどう」

両手で牽制された。

「シャラップ! あんたは万年発情期のどっかの生徒会長か!」

「?」

「不思議そうな顔をするな! あんたのことだよ!」

「落ち着いて、神奈」

笑いながら、私の袖を掴む。
落ち着いてるわ! 
と言い返そうと思ったが、
ここでまた喧嘩みたいになるのも嫌だったので、
私は一度深呼吸した。

「……ふー」

「……ねえ、キスしたい」

ぎょっとした。

「また、随分と突然ね!?」

「ムラってした」

「どこで?!」

「唇見てたら」

私は急いで、両手で口元を覆った。

先ほど思い出していたことが、また頭を過った。
そんな不埒な私をよそに、彼女は私の腕を引っ張った。
かろうじて、肘をベッドにつけて、悠に体重を全て預けることは避けれた。
ぷるぷるしながら、軽くキスをした。

「……ッ」

互いに見つめ合う。
あー! 慣れない!
いつまで経っても慣れやしないわ!

「もう、お互いの家に行ったよ?」

「そうね?」

何か言い始めた。
彼女は、いつも唐突だ。

「手も握ったし、旅行にも行ったし、お風呂も一緒に入ったし」

この流れは、まさか。

「胸も見ちゃった」

「そ、そりゃお風呂に行けば誰だって見るわよッ」

「神奈、こっち見て」

頬が熱くなるのが分かった。
ベッドシーツを濡らしてしまうくらいに、
手は汗ばんでいた。

不埒はこいつの方だ。
必死に肘で悠の体から離れようとしたが、
彼女の腕が背中に回されていた。
黒いシャツから覗く、悠のうなじが眩しい。
こんなことを考えてしまっている自分に、自己嫌悪。
私は欲望には屈しない。

とか、そんな決意表明を心の中でしていたら、
いつの間にか、悠の指が私の耳に触れていた。

「ッぁ……」

びくりとして、力が抜ける。
すとんと悠の胸の上に体を預ける形になってしまった。

「ご、ごめ……」

恥ずかしい。
悠の顔が近すぎるし、
変な声出たし、
てか、耳が弱いって、
こいつ分かっててやったわね。
許すまじ。

「ゆ、悠、あんたッ……んむぅ……ッぁ」

今日二度目の不意打ち。
このたらしが!

唇を離すと、吐息が鼻をくすぐった。
熱くてしょうがない。
どこもかしこも。
特に、顔。
特に、耳。

「もう、キス以上してもいい?」

「!?」

予想してはいたけれど、
衝撃が大きすぎて固まってしまった。
この台詞を聞くのは二度目だって言うのに。
いや、よく考えよう。
ううん、よく考えなくても、二度って言うのは大した回数じゃない。
うん。
そうだわ。
早すぎだわ。
早計だわ。

「ちょい、待ち。ま、まだよ」

「あと、何をすればいいの?」

「何? 何って……」

んなもん考えてないわよ。

「それとも、やっぱり私とはできない?」

「へ?」

あ、ガチな顔し始めた。

「……私、神奈が無理なら」

諦める、とでも言いたげだ。
しかし、悠にそんなことが言えるわけがないことは知っている。

「あき……ら……」

唇が震え出した。
え、泣く?
泣いちゃうの?
待て待て。

「あ、あんた、これくらいで」

「やっぱり、ダメ。神奈は誰にも渡せない。だから、諦めない」

とか何とか開き直って、今度は頬っぺたにキスされた。

「神奈、神奈の胸も、お尻も、太ももも……全部私のにしていい?」

あろうことか、その台詞を、
指で体に触れながら告げてきた。
その度、変に敏感に反応してしまった。
恥ずかしい。

「やッ……このスケベ」

「神奈が、してもいいって言った」

言ったっけ?
言ったか?
いや、直接的表現は避けたよ、私は。

「ね、胸、触っていい?」

「ひいい!?」

言葉にされ、私は悲鳴を上げた。
どうしてこうも心臓が体から脱出する勢いで暴れるのか。
誰か教えて。

「神奈、人気者だから……早く、私のものだって証拠が欲しい」

「証拠なんて……」

いらないじゃない。

「いる」

真面目な顔で、
彼女は言った。
なによ。
まだ、不安なわけ。
こんなに一緒にいるのに。
なんだか、それって、悲しいことね。

縋るような悠は、
あの交流会の前日から、
誓いのキスをしたあの日から、
何か変わったというわけではなく、
ただ、一歩前に踏み出したと言うだけで、
誰かと比較して、自分を保ち、
誰かの一番でありたいという、
そんなしがらみから放たれてはいないんだろう。

どうすりゃいいのかって。
わかってる。
私が素直になればいいだけの話。
単純な話。



いや、しかし、なんで胸を触るのが証拠になるのか。
その条件を小一時間問いかけて、証明してやりたいわ、バカやろう。

あー、時間よ止まれ。
この部屋だけでええから。

「神奈?」

「……それだけ?」

「え?」

「とりあえず、それしたら、あんたは安心する?」

「うん」

満面の笑み。
変態め!

「悠、あの……脱いだ方がいいの?」

「脱ぐの? なんで?」

「え、だって」

「寒いでしょ?」

「そりゃ、まあ」

「だから、いいよ」

え、でも、私、めっちゃ着込んでるけど。
シャツの下に、二枚着てるし、
カーディガン着て、ブレザー着てるし、
え、いいの。
ほんとに。

悠が、私をベッドに押し倒した。
先ほどと逆の立ち位置。
人を見下ろすと、加虐心が増すって本当かな。
悠はどうなのかしら。

「神奈、神奈」

「なによ……」

「呼んでみただけ」

「?!」

なにいちゃつかせるのよ。
私らは、どこぞのバカップルか。
この光景、ちゃらんぽらんズには見せられないわね。

でも、嬉しいのよ。
分かってる。
言わないけど。
こうやって、私にだけ甘えてくれる彼女がいいなって、思ってる。

「悠」

「ん?」

「……」

呼んでみただけって、案外恥ずかしい台詞ね。
私はもにょもにょしながら、言った。

「ふふ」

鼻で笑われた。
悔しい。
二人の時は、たまに余裕を醸し出してくるから腹立つ。
テストで私が二位になった時くらい腹立つ。

私よりちょっと背の高い所とか、
口下手なくせに、たまに強引な所とか、
私が、こいつのこと好きなんだってこととか、腹立つ。
なのに、何でもしてあげたくなる。
あ、何でもはやっぱりナシ。
調子に乗ったら何されるか分かったもんじゃないし。

て、これじゃあ本当に誘い受けじゃない。
あー、これ、なに。
悠のせい。
うん、こいつが悪い。
悠がまた笑っていた。
どうせ、私の顔が可笑しいとか言うんだろう。
あ、やっぱり。
ほーらね。

彼女は私に胸に耳を乗せた。

「早いね」

「そりゃ」

そうだろう。
赤ん坊みたいに、
悠はすり寄った。
しだいに態勢を変えて、
とうとう、頬から首筋、
んで、胸に手を這わせて、
ブレザーの下に右手を突っ込んだ。

その間も、ずっと私の顔を見ていて、
あ、こいつ私の恥ずかしがる所を楽しんでいやがるのだと、
気が付くのに時間はかからなかった。

とは言っても、すでに動き出した右手を止めることなど、
私には到底無理だった。
こんなに何重にもプロテクターをしているのに、
悠の手が触れた部分がカーディガン越しでも分かってしまう。
たまったもんじゃない。
好き勝手に、彼女は、揉んでいた。

部屋には二人だけ。
ここは、悠の部屋。
家族はみんな外出中。
まさに、ここは蜘蛛の巣。
私は、さしずめミノムシか何かか。

「ッ……ぁ、ゆう」

声が出て、自然名前を呼んでしまう。

「……ん?」

全て受け止めてくれるような眼差し。
むかつくわね。

「柔らかいよ、神奈」

わー!
人の胸の感想を、
どうしてこうも平然と言ってのけるか、こやつは。

「あんたのとッ……そう変わらないと思うけど」

「違うよ。神奈の方が、えろいよ」

「ば、ば、ば」

ばかやろうと、罵倒してやろうと思ったのに、
悠がシャツのボタンを外し始めたので、
私はサボテンみたいになった。

「さ、さっき脱がなくていいいいいって」

噛んだ。

「うん。全部脱ぐ必要ないから。それに、私が脱がせたかった」

もう、どうにでも。
でも、ちょっと怖いのよ。
分かってる?
乙女心ってやつ。
好きな人に、自信を持って全部をさらけ出せるわけじゃ、ないんだから。

「……や」

「や?」

「優しくして………よね?」

「……うん」

耳たぶを軽く噛まれた。

で、そんなことをされたら、
自分の体がどうなるか、
なんとなく予想はできていた。

シャツのボタンを外し、下に来ていた薄手のキャミソールとブラを、
いともたやすくかいくぐり、悠の指が胸の真ん中に直に触れた。

声はに出さずに、中国人みたいな台詞を胸中で吐いた。
アイヤー。

「固くなってる」

と、言われて、
もう死にたくなった。
歯を食いしばって、
羞恥に耐える。

「ね、神奈」

分かってる。
あんた、絶対楽しんでるでしょ!

「今、必死?」

私は声もなく、ただ頷いた。
悠の手のひらが、私の小振りな胸を揉みしだく。
なに、この拷問。
女の子に揉まれるって、
こんなに恥ずかしいものだったのね。
なんだか、しっとりしてきたし。
興奮してるの、悠?

「神奈」

突起を転がしてくる。

「ッひ」

もう、おうちに帰りたい。
唇をぺろりと舐められた。
今度は、自分の親指を舐めて、
それを私の唇に押し当て、
その指でまた胸をいじり始めた。
ぬるっとして、感じないように意識していたのに、

「ッ……ゆう、やめ」

なにそれ。
なんてエロゲ。

そんな非人道的な仕打ちが、10分くらい続いた。

「もう、満足したッ……はあッ……ッ?」

最後の方は、やたら上手く触ってきよってからに。
びっくりだよ。
神奈さんは、もう、限界だよ。

「うん」

「そ」

はあ、疲れた。
私は自分の姿態を見下ろした。
なんて、ハレンチな格好かしら。
胸がやたらじんじんするし。

「神奈、次はね……」

あ、その続きは言わせないわよ!
私は、彼女の唇に自分のを重ねたのだった。




悠と会ってから、暫く経って、
彼女の譲れないものはなんだろうと、
ふと、疑問に思ったことがある。
今、あんたは見つけたのかしら。
ねえ、悠。



おわり

本番までいけんかった
百合だしいいよね
お粗末様です

すごく良かった、ありがとう
着衣エロいいよね
次はぜひとも本番までお願いします

珍しい
というかそたりのSSとか見たことないわ
そして何故今更?

>>24
ほんと、神奈さんエロいです

>>25
今さら読んで、はまって、
続編を期待しても出なさそうだったので

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