強盗「強盗だ! 警察を呼べ!」 (37)


店員「ひいいいいい!!」

強盗「早くしろ! このナイフが見えないのか!」

店員「ひいいぃ…………え」

強盗「早く警察を呼べ!」

店員「…………えーと」

強盗「早くしろ!」

店員「……え、じゃ、じゃあ」ポチ


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強盗「……すまんな、こんなことやらせちまって……」

店員「そ、それよりナイフを早く下ろしてくれ!」

強盗「ダメだ。防犯カメラに映ってるからな。お前も手を下げるなよ」

店員「……目的は何だよ」

強盗「お前には関係ない。そのまま立ってろ」

店員「……ちっ」


強盗「……警察はまだか」

店員「生憎ここは警察署から結構離れてるコンビニだよ。来るとしても十分はかかる」

強盗「…………おい」

店員「何だよ」

強盗「カメラの死角はどこだ」

店員「……何で」

強盗「腕が疲れた」


店員「……店の商品には手を出すなよ」

強盗「分かってる」

店員「……そこのスペースだ。一人にさせてやる」

強盗「…………ついでだ、お前も疲れただろう。来い」

店員「…………ちっ」


強盗「ふー……」

店員「おい、そろそろ教えろ」

強盗「……だからさっきも言っただろ。お前には関係ない」

店員「ああ、関係ないなら話してもいいだろ。俺は話を聞いたからってお前の邪魔をする気は全く無い」

店員「警察もいつか来る。それまでなら聞いてもいいぜ」

強盗「…………」


店員「で、結局のところ目的は何だよ」

強盗「……お前はまだ若いな。二十過ぎってところか」

店員「大学生だよ。それがどうした」

強盗「……俺はこれでも大学出てんだよ。お前みたいにコンビニでバイトもしたこともある」

強盗「だが、就活で失敗した」

店員「…………」

強盗「バイトしながら就活するも、枠は新卒に取られ、履歴書には空白の年数が増えるばかり」


強盗「おまけに唯一の友人にも騙され、五百万の借金だ。返せるアテもねぇ」

強盗「借金取りに追われて家も捨てた。遂にはその借金取りと繋がりがあった暴力団に追われ、命さえも狙われている」

強盗「……何がダメだったんかな、俺の人生は。……どこで失敗したのか……」

店員「……だけど、だけど、何でコンビニ強盗なんか……そうだよ!」

店員「金が欲しいなら銀行強盗にすればいいじゃんか! コンビニとか、ATM合わせても金とか全然無いし」

強盗「ああ、知ってるよ」

店員「じゃ何でコンビニを……」


強盗「……このナイフ、よく出来てるだろ。最近の技術力はすごいな」

店員「…………ああ」

強盗「見てみろ、刃先が動く」カシャカシャ

店員「偽物かよ!」

強盗「はっははははは! よく騙されるもんだ。百均でもこのクオリティを保つとはな」

店員「最初に驚いた俺が馬鹿みたいじゃねぇか……!」

強盗「……俺はこんなのしか買えねぇんだよ。コンビニ店員なら騙せる程度のな」

強盗「これじゃ、銀行強盗なんか出来やしねぇ。コンビニ強盗でさえもな」


店員「……だけど、俺は馬鹿だから騙されたよ。それなら出来たかもしれねぇだろ」

強盗「……ああ、そうかもしれない。だが、お前が言ったように、金が全然足りないからな。最初から頭になかったよ」

店員「……結局、お前は何しに来たんだよ。わざわざ捕まるようなフリを……え」

強盗「そうだ。お前の言う通りだ」

強盗「俺は捕まりに来た」

強盗「それを偽装するためにコンビニ強盗をしにきた」


店員「…………嘘だろ」

強盗「嘘じゃねぇよ。これでも命を追われてる身だからな」


強盗「死にたくないから日本で最も安全な場所、刑務所に行くだけだ」


強盗「その目的のコンビニに勤めていたなんて、兄ちゃん、運悪ぃな」

店員「…………犯罪犯したら、会社でも働けなくなるぞ」

強盗「出所したら顔も名前も変える。その覚悟もとうに出来てる」

店員「…………俺は正義感が強い訳じゃないし、漫画にいるようなヒーローの存在にはなれねぇけど」


店員「あんたを何とかして救いたい」


強盗「……ありがとよ。だがそれまでにお前が覚えているかどうかだがな」

店員「覚えてる。忘れるわけが無いこんな体験」

店員「……何故か、何故だか分からないが、あんたは信用できる」

強盗「…………」

店員「俺は、あんたを信用する。出所するまで忘れないでくれ」

強盗「……ありがとよ。期待はしないがな」

強盗「俺は友人に裏切られてから、人をあまり信用できねぇんだ」


ウーーーウーーー

強盗「お、来たか。すまんが兄ちゃん、最後の演技だ」ガシッ

店員「うぐっ……何だよ、人質役か?」

強盗「ああ、怪我はなるべくさせないつもりだがな。怪我したらごめんな」

店員「……構わねぇよ。名誉の負傷みたいなもんだ」

強盗「ふん、言うな」


「犯人に告ぐ! 人質を解放しなさい!」


店員「……俺はあんたを助けるよ。絶対に」

強盗「…………ああ」


強盗「……就活、頑張れよ」


――――数年後、刑務所前

強盗「…………お前は」

男(店員)「新聞で出所を知ったよ。迎えにきた」

強盗「…………」

男「あれから、日本各地の暴力団が検挙された。あんたを追ってた暴力団も検挙されて解散を追われたんじゃないか?」

強盗「……ああ、テレビで、新聞で知った。解散したってな」

強盗「だが、俺はこれからホームレスで過ごしていくことになるな」

男「そうはさせない」

強盗「……ハッハッハ! カッコよくなったじゃねぇか」

男「あれから、あんたに会ってから変わったよ。あんたを助けるって決めてから」


男「……起業したんだ。大成功した」

強盗「……良かったじゃねぇか」


男「…………あんたには、俺の会社で働いて欲しい」


強盗「……こんな俺でいいのかよ」

男「ああ。あんたは俺の人生を変えてくれた」

男「今度は、俺があんたの人生を変えてやるよ」

強盗「……ありがとう……ありがとうよ」

男「……俺は正義感もないし、漫画のヒーローにもなれないけど」


男「あんたを救えるような人になれて良かった」






突如思い浮かんで書いた

後悔はしていない

昔あったな
わざと捕まるために強盗起こした人の話
親類縁者だかに死亡届出されて戸籍を無くしたとかで
警察に捕まってニュースで名前出してもらって、自分を知ってる人に見つけてもらおうとやったとか

>>21
そうなん?知らんかったわ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年02月24日 (水) 03:20:33   ID: bjEZdHTO

イイハナシダナー

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