穂乃果「汚れなき世界」 (19)

鬱描写、死亡描写、レイプ描写あります



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静寂 虐殺 信仰 闇 永遠 血 萌動 不信 天使 嘘 曇 消える 理由 憤怒 泡 孕み 食人 憂い 喪失 強姦 眠り 女神 不変 真実 煙 狂い 号泣 蟻 赤 透明 盗み 目 悪運 戦争 性癖 酔い 病み 鬱 機械 宗教 噂 監禁 言葉 刃 処女 生贄 夢 弱者 列 解散 祈り 愛 卵 尽きる 夜 蘇生 面影 魂 逃避 黒 捧げる 崩壊 器 精神 枯渇
反射 束縛 目的 扉 十字 薬 希望 恋 記憶 屈折


「汚れなき世界」














『日常』

穂乃果「それじゃ、みんなまたねー!」

大きく手を振って、皆も大きく手を振り替えしてくれる。
皆が見えなくなるまで見送って、今日の練習はキツかったとか今日は好きな映画が放送されるとか日常をとにかく楽しんで生に感謝して生きている。

もちろん普段はこんな事思わない。

女子高生は女子高生らしく、女子高生特有の悩みを持ちながら女子高生していくものだ。

それが日常で当たり前。
生に感謝?今までそんな事は数えるぐらいしかしていない。

じゃあ何で今私がこんな哲学的な事を考えているのか。

それは、今日のご飯が焼肉だからでそれも結構高めのお肉をお母さんが用意しているからだ。

お母さんが言うには、このお肉すごくとろけるらしい。

私は普段あまりしない生に感謝しつつ玄関の扉を開けた。



穂乃果母「あ、やっと帰ってきた」

雪穂「お姉ちゃんおそーい!」

そう、私はわざと遅れて帰ってきた。

今日のご飯は焼肉と電話が来たのは昼過ぎだ。
もちろん、私はその前の昼食にパン三つにおにぎり二つとソーセージを何本か、卵焼きにリンゴ一切れ食べている。

パン三つは購買で買った物だが、おにぎりやなんやかんやは皆から貰った物で。
皆の家庭はどういう味付けをしているんだろうという疑問と、単純にパン三つでは足りなかった。

食べ過ぎたのは否めないけど私のチョイスが悪かった。

今日のお昼は量より質だとあの頃の私はそう思い。

ちょっと高めで小さいがとても美味しいパンを三つ買った。

普段は高めのパン一つと質より量な二つだ。

とにかく、お腹がいっぱいいっぱいの私は昼食後の授業を寝て過ごし合間の休憩でお母さんから電話がかかって来たのだ。


今晩のご飯は焼肉と聞いた時に私は喜んだ。
お肉は高級なお肉と聞いた時は更に喜んだ。

そこで、私は気が付いた。

今、この膨れたお腹。
授業が終わっても、まだ満腹感を感じるこのお腹じゃ美味しい焼肉をあまり食べられないんじゃないかと。

だから、いつもより練習をしわざとゆっくり帰宅して胃の中を完全に何もない状態にしたんだ。

そして帰宅した今、お母さんと雪穂に憎まれ口を叩きながら私のお腹の虫はぐぅぐぅと唸っており。
私は今日は雑食動物では無く、肉食動物であろうと心に決めた。

穂乃果「えへへ。ごめんごめん。練習がちょっと長引いちゃって」

雪穂「ほら、お父さん見てよ。もう待ちきれないって感じだよ」

穂乃果「本当だ。ねぇ、早く食べようよ!」

穂乃果母「うがいは?手洗いは?」

穂乃果「えーっ!後でいいじゃん!」

穂乃果母「ダメ!」

穂乃果「もぉ~。すぐやってくる!」



私はすぐに手洗いうがいを済まし、また元の場所に戻った。

穂乃果「ねぇねぇ。早く食べよ?食べよ?」

穂乃果母「もう、待ちなさい。ほら、今晩の主役。霜降り肉よ!」

お母さんは皆に見せびらかすようにして本日の主役を紹介してみせた。

私は思わずおーっと歓喜の声を上げ。
雪穂の生唾を飲み込む音が聞こえてきた。

まさに、主役という役が相応しいと思った。
まるでメロンのように網の目のような脂肪はいかにもな高級感を出しており。
赤身も艶あり、とにかく美味しそうだ。
焼いて口の中で広がる味が安易に想像出来たが、それは私の想像であり、この肉は私の想像を安易に超えていくに違いない。

私はすでに食べている。
目でもう食べている。

それぐらい鮮やかな見た目。
テレビで見るよりもよっぽど美味しそうで、芸術性すら感じる。

穂乃果母「さぁ!焼くわよ!」

お母さんは菜箸で霜降り肉を一切れ持ちあげると、鮮やかな見た目からは想像も付かないようなしっかりとした肉感。

それでいて、お皿という地に足付いた居場所から持ち上げられフラフラと揺れているお肉はガラス細工のように霜をキラキラさせてとても綺麗だった。

雪穂「お母さんちょっと待って!」

と、ここで雪穂がホットプレートに迫るお肉とお母さんを制止させる。

穂乃果母「えっ、何?」

雪穂「油、引いてないよ」

穂乃果母「あっ、いっけない。忘れてた」

お母さんもこのお肉を焼く事に緊張しているんだろう。
危うく凡ミスを犯す所だった。
雪穂を心の中で褒め、お母さんは台所からサラダ油を持ってきた。

いよいよようやくこのお肉に焼き目を付けられる。
自分でも分かるぐらいに顔がにやけてしまう。

雪穂「違うよお母さん!」

穂乃果母「えっ?雪穂どうしたの?」

雪穂「牛脂は?牛脂は?」

穂乃果母「あっ!ごめんなさい。美味しいお肉にはやっぱり牛脂よね」

雪穂「もぉー。しっかりしてよお母さん!」

雪穂は普段見せない拘りを全面に出し、その迫力に負けたお母さんはごめんなさいと素直に謝った。

普段の私なら早く食べよう早く食べようと言っていたと思うが、ここはこのお肉を最高の美味しい状態へと導いてくれそうな雪穂に全てを任せる事にした。

牛脂はとろけるようにホットプレートに広がり、雪穂の合図待ちのお母さんは菜箸にお肉をブラブラさせながらひたすら待っている。

高級なお肉を食べるのにここまで集中力がいる事に私は額の汗を拭いながら、流石高級なお肉と心の中で賞賛する。

雪穂「お母さん早く焼いていいよ!」

穂乃果母「わかったわ・・・」

お母さんは真剣な面持ちで、とうとうホットプレートの上に肉を一枚乗せた。

ジュウウウと肉は声を上げ。
私達家族もおぉーっと声を上げた。

穂乃果「まずは片面何秒なの?」

雪穂「それは後で各々美味しい焼き具合を見つけないと。今はお母さんに任せよう」

ドラマの最終回を見るよりも真剣な表情のお母さんはまるで戦地に赴く兵士のようで、わかったと言った。

穂乃果「あぁ・・・良い匂い!」

昔、焼肉の匂いだけでご飯食べれると言っていた花陽ちゃん。
その時に私はそれはないよーと否定したが今ならその気持ちすごく分かる。

私はご飯を一口食べようとしたが、やめた。
今、口の中はまっさらな状態で最初に口の中に入れるのはこのお肉だ。

いつの間にか、肉は焼き終わり。
香ばしい匂いが極限までお腹を空かせた私を刺激し、口内に唾液がジュワッと広がる。

しっかりと焼き目が付いたお肉は、先程とは違い気取ってなんかいない、それはもう数秒後に誰かに食べられる焼いた肉だ。

穂乃果母「最初はお父さんから・・・」



お父さんは、タレも塩も胡椒も何もかけずおを口の中へと入れた。

穂乃果母「・・・どう?」

雪穂「感想は?」

穂乃果「ほっぺた落ちる?」

お父さんは私達皆の顔を見渡すと、何も言わず返事と言っていいが分からないが満面の笑みをみんなに浮かべた。

穂乃果母「よし!みんないただきます!」

穂乃果「いただきます!」

雪穂「いただきます!」

お父さんは、まるで合掌するかのように手を合わせていた。

お母さんは肉をホットプレートに何枚か置き。
先程は一枚で焼き音も小さめだったが、今はまるで大合唱だ。

各々が好きなタイミングで肉をひっくり返す。
雪穂は自分のテリトリーと言わんばかりに、肉をすぐ取れる距離に集めていた。

穂乃果「よし!」

私は私の好きなタイミングで焼いたお肉を小皿に乗せる。

いよいよ、口の中へとお肉を入れる。
このお肉を喉に通せる。
胃の中に入れられる。

箸でお肉を持ち上げて、私はお父さんと同じように何も付けずに舌へと運んだ。

穂乃果「ふわぁ。とろける~!」

テレビなんかでよく芸能人がこのお肉とろけると言っているが私はお肉はとろけない!と食べてもいないのに確信していた。

本当にとろけていくのだ口の中で。

とろける食べ物はいくつもある。
アイスにウニそれにプリンなんかもそうだ。
でも、私が食べている物はお肉。
噛まずに飲めるが、それは持った無い。

私はお肉を噛んだ。
すると、今まで隠れていたのか姿を現さなかった肉汁が溢れ出して止まらない。

私は満面の笑みを浮かべ、お母さんも雪穂も同じ笑みを浮かべていた。

これ、絶対明日希ちゃんに自慢しよ。
これ、絶対明日希ちゃんに自慢しよ。

そう心に決めながら私は次のお肉に箸を伸ばす。

まだ何も付けてない状態。
ここには塩や胡椒、焼肉のタレがある。
私の心は踊って、再び生きている事に感謝していた。

それから数十分経ち。
お肉も残り数枚となった。
私・・・いや、私達は誰も箸が進まず次のお肉を焼く気にもならなかった。

雪穂「私もうごちそうさまする」

穂乃果「私もー」

あれ程、盛り上がっていた食卓も今はまるでお通夜状態だ。

穂乃果母「そ、そうね。残ったお肉は明日食べましょ」

お父さんもコクリと頷く。

まさか、飽きるだなんて思っていなかった。
なんて言うか脂身が多くて、五枚目にはもう赤身のみのお肉が恋しくなっていた。

最初の一口が懐かしい。
衝撃的だった。

でも、今はもう食べたくない。

穂乃果「ごちそうさまー」

雪穂「ごちそうさまー」

お皿を下げ、食卓から離れ。
お風呂に入ろうと、制服を脱いだ。
シャツに焼肉のタレが付いてる事に気付いて少し気分が沈んだ。


『日常』
END

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