なの「ハカセはお母さんの事覚えてないんですか?」(34)

ハカセ「!@@」
ハカセ(なんでだろう。よく分からないんだけど)
ハカセ「・・・」
なの(あ、まずいこと聞いちゃったかな)
なの(もう、ご両親のこと尋ねるのはやめよう)
・・・

--9年前--
オギャオギャ
父「女の子か〜。学者には男の方が向いているんだがな〜」
母「もう。きちんとかわいがって下さいね」
娘「ばぶー」
父「おお。俺の研究を継ぐものとしてきっちり育てるぞ」

・・・
母「やめて下さい。嫌がっているじゃないですか!」
娘「あぶぶ..」
父「でも、ネギは頭にいいんだ。いっぱい食べさせないと..」
母「だからって...」
父「ほら、もっと食べろ」
娘「ぶぶー」

母「甘いもの食べすぎよ〜」
娘「しゃめとこ(サメチョコ)」
父「頭の栄養は糖質だから制限せずに与えてくれ。さぁ次の問題だよ」
母「そんな勉強、言葉もまだの子供に叩き込むのは早いわ」
父「うるさい!凡人は黙っていろ。さ、こっちの絵と形が同じものと大きさが同じものを選んでみて?」
娘「ん」

母「娘はあなたの玩具じゃないわ。そんな高度な問題!」
父「お前は口出しするな。さぁ、この場合の曲線を式にすると」
娘「・・・」
母(また、幼稚園にも入れない歳なのに...このままでは娘は...)
父「分かるまで続けるぞ」
娘「・・・あい..」

母「娘ちゃん、お勉強辛い?」

娘「おべんきょう きらいじゃないけど、おとさんこわい。きらい。」

母「・・・」

娘「ママはすき〜」

母「二人で家出しちゃおうか?なんてね」

娘 (ニコニコ)

母「あなた、すこし緩めてやっても..」

父「うるさい、うるさい。あの娘には才能があるんだ。口出しするな」

母「あの娘も怖がってます」

父「今だけだ。後できっと俺に感謝する・・」

母(・・・ダメだ、この人。何を言っても)

<置き手紙>
「あなたには、ついて行けません。
あの子が描く絵の真っ黒い花やお友達とお話が出来ない様子を見ておかしいと思わないの?
あなたの英才教育は娘の心を殺しているの。
娘と二人で普通の幸せを探したいと思います。探さないで下さい」

父「くそ!逃げられると思うなよ。娘は取り返す」

とあるアパートの前

母「!」

父「ずいぶん探したよ。こんな所に居たとはね」

母「帰ってください。」

父「すぐに帰るよ。娘を連れてね」

母「あの子は渡さないわ!」

父「ふん、居場所さえ分かれば法に沿って取り戻すまでさ。誘拐魔め」

母「あの娘だって私の方についてくるわ」

父「子供の意思なんて関係ないな。弁護士の腕と家裁への圧力が全てさ」

母「何をするつもり?」

父「貴様には関係ないな。また来るよ」

某研究所

父「ええ、少し早いかもしれませんがあの娘なら大丈夫。私の研究を継がせます」

職員「まぁ、焦らないでも...。奥さんとよく話し合って。」

父「奥さん..?あぁ、あの誘拐魔の事ですか。」

職員「誘拐魔って...。おい」

父「研究の邪魔ばかりしやがる。」ブツブツ

職員(記憶の輪廻なんて研究、どうせ実現しないのに)

母 (きっと、研究所のコネやら総動員して娘を取り戻しに来るわ。
よく分からないけど、国とかそれに近い力がある組織からの研究依頼らしいし...どうしたら)

娘「どしたの〜?」

母「娘ちゃん、楽しい?」

娘「ママと二人楽しい〜。絵本読んで〜」

母「はいはい(私がこの娘を守らなくちゃ...)」

娘 (ニコニコ)

母「・・・娘ちゃん、これ絵本じゃなくて...辞典よ」

父(私の今まで研究の成果...)

父(このキューブに私の意識を電気信号化して詰め込んだ...)

父(これをなるべく余白の多い脳にダウンロード出来れば..)

父(しかし容量が足りなければパンク..。少なくとも私以上の器が...。)

父(・・・娘)

父(裁判所の命令が出るのが明日。明日中に娘は取り戻せる。)

父(しかし、娘があの女の下を素直に離れるとは思えない)

父(場合によっては一か八か...準備だけはしておくか)

母(裁判はきっとあちらの勝ち。明日には娘は連れて行かれてしまう)

母(一度引き剥がされたら二度と会えない。そんな気がする)

母「ならば、いっそ・・・」

娘「ママ〜?どしたの?怖い顔」

母「娘ちゃん、二人ならどこでも生きていけるよね〜」

娘「あい^^」

母 ギュー



父「このホームから出る電車は裁判所には行かないな。どこに逃げるつもりだ」

母「!!」

父「動きが読まれないとでも思ったのか?貴様の考えることなど簡単に分かる」

母(もうダメ。ここで何とか逃げてもきっとまた捕まる。それに裁判に負けたら、今度は警察も動く)

父「さぁ、娘をこちらに寄越しなさい。そうすれば犯罪者にするのだけは許してやろうじゃないか」

母「娘ちゃん、良く聞いて。ママはしばらく遠くに行くかもしれないけど、
きっと戻ってくるから。
留守の間はママのお友達さんがきっと面倒見てくれる。
言うことを良く聞くのよ。お菓子を食べ過ぎないでね」

娘「?? ママ、どっかいっちゃうの?ヤダよ〜」

母「大丈夫よ。いつでも娘ちゃんのことを思っているわ。離れていてもね」

父「お別れは済んだかい?」

母「これが答えよ!」

父「!」

母がカバンの中から包丁取り出し父を狙う!
しかし、その手はがっちりつかまれる。

父「だから、お前の考えていることなどお見通しだと何度も言ったがな?」

母「っく」

父「殺人罪になっても、客観的に情状酌量の余地は十分だ。
場合によってはキチガイ無罪に持ち込める。

父「私さえ殺してしまえば、時間はかかっても娘と二人暮らしていけるものな。
結局、生き残ったモン勝ちだ。悪くない選択だな」

父「だが、凶器が包丁程度という事まで予想出来ていたよ。お嬢様?」

母「離して..」

父「まぁ、いい。娘、こちらにきなさい」

娘「おとさん怖い」

父「大丈夫。怖くないさ。さぁ..」

そのとき、丁度ホームに入って来る電車。

母「!」
母「娘ちゃん、一人にしてごめんね」

捕まれた手をそのままつかみ返し、父を巻き込みホームから身を投げる母

娘「ママ!」

母はそのとき何を思ったのだろう。

自分の死と引き換えにするほど娘の心を守りたかったのだろうか。

でも、両親が目の前で死ぬ光景を見せてまで守りたかった心とはなんだろう。

答えは分からない。

しかし、説明も付かないような刹那的な行動だからこそ、
この父にも読めなかったのかもしれない。

そして、娘には母が娘のことを大切に思っている愛情は伝わっていた。

「いつか戻る」の言葉が嘘になってしまったことも...。

だから、涙が止まらない

娘「うぐっ。うぇぇん。ママの...ママのうしょつき〜」

「ご両親が事故で一緒に...」

「まぁ、電車に?お体は綺麗なままだけど...」

「身よりは居ないの?こんな小さい子一人でどうするんだ?」

葬式は皮肉なことに夫婦合同で行われた。
今は、昔三人で暮らした部屋の中で棺も仲良く並んでいる。

親戚や友人など、たくさんの人がやってきて、
娘を慰めていったが、後見人などの話し合いはこれからなのか。

娘は一人で泣いている

「ママ、ママ...」

ふと、娘の目に木目調の立方体が目に止まる。

娘「これ、なんだろ」

それは父の形見として渡されたモノ。

直に手にしてみると、頭の中に声が響く気がする。

「--起動しろ」

父の英才教育を受け、血を分けた娘だからか、
娘はそれをどう使うか最初から答えを知っているように使える気がした。

少し泣き疲れた娘は深く考えずにラボに向かう。

ラボに行くと実験の準備は何故か万端で幼い娘でもそれを動かすことが出来た。

木目調のキューブをセットして、いすに座ってスイッチを起動するだけだ。
丁寧にいすの高さまで娘にぴったりである。

電極のいくつも付いたヘルメットをかぶり、
キューブから電気信号をダウンロードする。

娘の頭の中に次々と父の持っていた知識が満たされる。

娘「!これは意識をのっとられる?」

しかし、全てが終わったときでも、娘は娘のままであった。

娘「今、私の中に流れ込んできた知識と私が今まで身につけて来たもの」

娘「それにそれらを統合して得られた考える力...」

娘「父を超えた私だから分かること。」

娘「父は記憶をコピーして張り付ける事でキューブに意識を封じ込めたのね。」

娘「でも、人の気持ちを考えられない人間は大切な心の部分の信号に気づけなかった...」

娘「データの大部分を知識のバグ、不要物として貼り付けなかったのね」

娘「容量が少ないほど安全なのだから仕方ないけれど..」

娘「私が私のままで居られたのは心がそのまま残っていたから。父の浅はかさには感謝しなくちゃ」

娘「そして、今の私なら...」

娘「アレを作ることが出来る!」

娘「まずは明日の出棺前にママの記憶を電子化しなくちゃ」

娘「キューブは..とりあえずこの父のキューブをフォーマットしちゃえ」

ほどなく母の大切な記憶と意識をコピーする事が出来た。

しかし、父の研究は娘の頭の中を残して全て失われたと言える。
そのまま、遺体は出棺された

大人「このあと、娘ちゃんはどうするの?」

娘「ママのお友達さんが一緒に住んでくれるので、大丈夫です」

大人「そお?困ったことがあったら言ってね」

娘「ありがとうございます」

大人(年のわりにずいぶんしっかりしているのね。これなら平気そうだわ)

娘「よし、葬儀も落ち着いたしもうひと頑張りだぞ」

娘「なんせ私の記憶に料理とか家事とか何もないんだから、急がないと」

娘「まずは入れ物のママの体を作らなくちゃ」

娘「せっかく生まれ変るんだから、若い頃の体が良いと思うの。」

娘「ママの高校生頃の写真..。これを元に作ろう」

おかっぱ頭のかわいいらしい女子高生が程なく出来上がる。

娘「ロボっぽくネジを付けたらかわいいかな。あと足にはusbコネクタをつけてと。
これでいざと言うときにはキューブを介さないでもバックアップできるね」

娘「それにしてもロボット工学の知識もこれだけあって、材料も準備しているなんて、
おとさんやっぱりマッドだわね。危なかったわ。」

娘「心の仕組みさえ理解出来ていたら、永遠を生きられる自分ロボットだって作れたのに...」

娘「何度も失敗したのかな。まぁ、今となってはそれで良かったのかもね」

娘「あとは、ママの記憶を電子頭脳にダウンロードして起動すれば良いのだけど...」

娘「やっぱり容量少なすぎ..削らないとダメね」

娘「うーん。おとさんとの記憶は無い方がいいわよね」

娘「私が娘っていうのもね〜。折角高校生の体なんだもんね。」

娘「でも、私が好きという母性愛のあたりはそのままにして」

娘「これで良しっと」

娘「それから、私自身ね。」

娘「ママと一からやり直したい。それにママが死んだところも思い出したくない」

娘「幸い、予備のキューブが見つかったから記憶を出し入れすれば嫌な記憶は消せる...。」

娘「記憶を半端に削ると同じものは作れなくなると思うけど...」

娘「私も普通の子供でちょっぴりマッドな「ハカセ」としてやり直すんだ」

娘「ママもママじゃなくてナノマシーンを組み込んだロボットの「ナノ」って呼ぼう」

娘「英才教育の辛いこととか全部消しちゃえ。おとさんの記憶もいらないや。」

娘「ナノと二人でず〜っと仲良く過ごすんだ」

娘「でも、これをやっちゃうと、作業の途中で自分が何をやっているのか分からなくなるわね」

娘「あ、そだ。紙に書いておこう」

「やること
わたしの名前はハカセ。
一人じゃ何も出来ないので、
まずロボットのスイッチを入れること。

ロボットの名前は「ナノ」
ナノはハカセが作りました。
ナノがハカセの面倒を見てくれます。

ナノが動いたら、機械にセットしてある四角いサイコロのようなものを二つとも窓から投げ捨てること。

娘「これでよしっと」

娘「機械を起動して私の余計な記憶を上書きで消してしまえばきっと上手く行く」


・・・

なの「うーん、ここは...」

ハカセ「研究室です。なのはハカセが作りました」

なの「すごいですねぇ」

ハカセ「えへへ...褒めてほめて〜」

ハカセ(えと、あとはこれを窓から投げ捨てるっと)

ハカセ「なのー、これそこから遠くに投げちゃって〜」

なの「え〜?どうしてですか〜?」

ハカセ「よく分からないんだけど...」

なの「ふふふ...分かりました。エイっ!」

ハカセ「ありがと〜。あと、お腹すいたんだけど」

なの「すぐご飯作りますね〜。ネギたっぷりのお鍋ですよ」

ハカセ「なんかネギは嫌いなんだけど」

なの「好き嫌いはダメですよ」

・・・
コツン

よしの(みお姉)「?空か何か降ってきたー。誰かが投げたのかな。なんか一方的で面白いいたずらね」

よしの「私もこんど生シャケでも投げてみようw」

よしの「それにしても、これはなかなか可愛い木目調...髪飾りになりそうね。」

よしの「でも、出所が不明だから自分でつけるのイヤだな。」

よしの「みおちゃんにあげよ〜っと。喜ぶかな」

学校の教室

ゆっこ「っ!(なんかすごい夢見たー)」

先生「どうした〜?」

ゆっこ「(でも、よく思い出せない)・・・廊下に立ってます」

みお「ゆっこは本当にバカだなぁ...」

ゆっこ(大切な、記憶も飛んで、最上川〜)



おしまい

ハカセのご両親について妄想してみました。

でも、ハカセが実は大人で若返りの薬を飲んじゃったとか、
ご両親は人体実験の犠牲になったとか、
色々な空想もそれぞれに楽しそうで、アナザーストーリーの可能性がたくさんあるお話なので
最後は夢落ちでまとめました。

まとまりの悪さはご容赦を。

段落のとり方とか、1レスの長さとか、そういうところまでアドバイス頂けると嬉しい。

ではでは~

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