少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を倒すことになりました」 (624)

これはハーフエルフの少年と彼に育てられた人間の娘の最後の話

前スレッド
少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451087487/)

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※スレッドのまとめ
http://ss.vip2ch.com/jmp/1418379532

#1 私のパパがこんなに可愛いわけがない ~超魔力学園の秘密クラス~

○超魔力学園・Aクラス

\ざわざわ/ \しずーかーにー/

担任A「では転校生を紹介します」

ガラッ テクテクテク

廊下からボブカットの少女が歩いてくる。

\年下?/ \飛び級?/

担任A「今日からAに入るエルフ子さんです」

エルフ子「ょ……よろしくおねがいします」カアア

\きゃー/ \かわいー/

エルフ子「……」カアア

担任A「ほらあそこ座って、授業はじめるよー」

\ざわざわざわ/

エルフ子は示された席にすわる。

エルフ子(少年エルフ)「うぅ……(どうしてこうなったの……)」

少年エルフは女装している。

○数日前 魔法都市・ホテル、少年エルフ達の部屋

娘友「だーかーらー、オトコは短髪指定だから耳隠せないでしょ」

少年エルフ「だからって女装だなんて」

白竜(人型)「大丈夫きっと似合うわよー」

バサッ

少年エルフはボブカットのウェッグを被せられる。

娘友「かわいいー♪」

少年エルフ「うう(僕オトコなのに)」

娘「パパ、嫌ならやめておいたほうが……」

娘友「何言ってんの! エルフさん憧れの学園生活ですよー」

少年エルフ「学園……学校生活」パアア

白竜(人型)「じゃあ次はこの『男の娘矯正パンツ』を」

少年エルフ「う゛っ、なにそれ」ズーン

白竜(人型)「これはね気になる膨らみを矯正して女性ものでもすっきりはけるパンツアンダーパンツよ~」

\そこまで……ダメ―!?/ \オンナは下着からよー/

スパーン

娘「パンツアンダーパンツって意味わかんないんだけど。 ……第一パパが潜入しなくても」

第七王女「駄目じゃ! 高魔力のAクラスにはエルフ以外潜入できんのじゃ」

娘「そうだけど……、学校に魔王?……いるのかしら?」

男子「魔王城の跡地ってだけだしな」

第七王女「絶対に魔王はおるのじゃ! それにエルフ自身も学校に行きたがったじゃろうが」

娘「それは……」

男子「エルフさん学校いったことないからなぁ」

女兵士「そうなんだ……。 それじゃあ行きたいよねぇ」

少年エルフ「確かに学校には行きたいけど……けど」

○現在・超魔力学園Aクラス

エルフ子(少年エルフ)「……(普通の格好で学校に来たかった)」

\ねえ/

エルフ子「はぁ……(エルフ族だってのをを隠すため……でもなぁ)」

\エルフ子さん エルフ子さん/

エルフ子「……(それにしても誰も僕がオトコって気づいてないの? ホントに?)」

委員長「エルフ子さんッ」

エルフ子「うわっ!?」

エルフ子は隣のお団子ヘアーの女子生徒が呼びかけているのに気づいた。

委員長「授業はじまってますよ、大丈夫ですか?」

エルフ子「ごめんなさい……。えっと?」

委員長「委員長です、教科書まだお持ちでないですよね? 一緒にどうぞ」

エルフ子「はい、ありがとう……ございます」ドキドキ

委員長「ふふ……かわいいですね」

エルフ子「……(なんでバレないの!?)」カアア

※更新終了 週に一回少しづつ更新していきます。
次回の更新は4月1日土曜日に。 土曜更新を習慣化したい。

#2 WANTEDじゃんくしょん

○休憩時間・Bクラス2

休憩時間、第七王女が女子生徒と話している。

「へー王女ちゃんていうんだ、お姫さまみたいな名前ね」

「あるよねーお姫様の命名にあやかって名づける事」

第七王女「うむ、よくある事じゃな」カッカッカ

娘「大丈夫そうね……(お姫様本人とはさすがに思わないか)」

娘「それにしても……」フゥ

「それで趣味は何かな?」「よかったら今度一緒に乗馬でも」「お姉さまって呼んでもいいですか」

娘「んー……(メンドクサイわね)」

娘は生徒たちに質問攻めされている。

「で、付き合ってる人居るの?」


\ざわっ/

娘「それは……(きたわ一番面倒くさいのが……、いつもの手で)」

「もしかして居るの? それとも居ないの? 居ないなら……」

娘「もちろん居るわよ」ニッコリ

\ええーっ!?/ \ギャアア/

「だだだ誰ですかそれは!?」

娘「……それはね」

○校庭・Cクラス

体育教師「よしやめー、昼飯くったら一般科目だぞ寝るなよ」

教師が体育授業の後かたずけを指示して校舎へ歩いていく。

娘友「なんで魔法学校に体育があるのよーっ!」バタッ

「Cクラスは魔法が使えない組だから…… ほら片づけよ」

グラウンドに倒れた娘友を女子生徒が気遣う。

男子「どうした友、大丈夫か?」

娘友「大丈夫よーちょっと休んだらやるから」ひらひら

男子「わかった」のしのし

片手で応じる娘友を見て男子は用具を片付けに歩いて行った。

「一緒に入って来た男子君カッコイイね、背が高くて、筋肉すごいし……」ドキドキ

娘友「そーね元々騎士科だったしね」

「そうなんだ……、Bクラスに入ったヒトが彼女ってホント?」

娘友「うおっと何それ? 娘の事?」

「だって噂で……」



男子「やれやれ、腹が減ったな」

「君が男子君かっ!」

背後から男子生徒が呼びかけた。

男子「む、なにかようか?」

「君が娘君の彼氏だと聞いた、彼女をかけて決闘を申し込むっ!」シュッ


バシン

男子の顔面に手袋が投げつけられた。

男子「……またか(いつもの事とはいえ)」

「ようしでは方法は君に任せよう、好きな方法をいいたまえ」

\ざわざわ/ \決闘だ/

見物人が集まって来た。

男子「……(逃げれる雰囲気じゃないな)わかったわかった。 そうだなお前Bクラスだから魔法使えるんだよな」

「もちろんだ」

男子「じゃあ、好きな攻撃魔法うってこいよ。俺を倒したらあんたの勝ち、耐えたら俺の勝ちで」

「なっ!? なめられたものだなCのくせに……くらえ『爆裂』」

男子「むんっ」

ドドォン

爆発が収まり砂埃が収まると……。

男子「ゲホゲホ……、久々に爆裂くらったな……。よし俺の勝ちだな」

男子が平然として現れたが。

「なにぃ!? ってお前」

男子「ん?」

\キャー――/

女子生徒の悲鳴があがる。

男子「うわっ服が」

男子はジャージが爆発で吹っ飛んで裸になってしまった。

男子「おおお! おいお前ジャージ貸してくれっ」

「でかっ!? うわっ来るなっ うわああああ」

男子「逃げるなお前の責任だろっ」

「ひいいいいい」

\キャーー/

○Aクラス専用食堂

エルフ子(少年エルフ)「ん?」もぐもぐ

委員長「校庭が騒がしいですね…… 喧嘩でしょうか」

エルフ子「かな? それにしてもどうしてAクラスだけ校舎が別なの?」

委員長「Aは生徒の中でも特に魔力の高い者が集まっており、カリキュラムも独自の物が用意されています。 なので校舎も寮も別々になっている方が都合がよいのです」

エルフ子「えっと授業が別々なの?」

委員長「基本は別々ですね、選択科目でいくつか合同の物もありますが」

エルフ子「なんの科目?」

委員長「薬草学と変性魔法学、あとは占い・予言学ですね」

エルフ子「そうなんだ……、薬草とろうかな」

委員長「あら薬草がお好きですか? 私もとってますから御一緒できますね」

エルフ子「そうなんだよかった」

委員長「ええ……」ふふ

○夜、共同女子寮 娘の部屋

娘友「と、いうわけで。 男子君の筋肉サービスによって無駄な争いは終結したわ」

娘「やっぱりあの爆発はそういうことだったのね」

第七王女「男子が格の違いを見せつけたというわけじゃな」

娘友「格の違いというかナニの違いというか……。 眼福ですた」

第七王女「ふむ? 何か眼福になるような物があったかの?」

娘友「ゲフンゲフン。 そういえば娘、男子君愚痴ってたわよ、また『都合のいい彼氏』にしたなって」

娘「オホホホ……。 おかげで午後からはオトコ共が減っては快適にすごせたわ」

第七王女「なるほど男子を彼氏と思わせることで無駄なアプローチを減らすわけか」

娘「そういうこと、フリーだとオトコ共がうるさいのよホントに」

娘友「はーつらいわー親友がモテすぎでつらいわー」

娘「モテたくてモテてるんじゃないの、もう」

娘友「マジつらいわー」しくしく

第七王女「しかし今後の連絡をどうするかのう、男子には友につないでもらうとしてエルフと連絡がとれんのう」

娘友「そうね、寮もAクラスだけ別だし全室個室で夜間は原則外出禁止」

娘「パパと連絡がとれないわね、困ったわ」

第七王女「安心するのじゃ、わらわが今夜にでも忍び込んで話してくるのじゃ」

娘「そうね、王女お願いするわ」

第七王女「もとより、この学校は調べ尽くすつもりじゃからな」

娘友「そうね……、だったらアタシは新聞部に入ろうかと思うわ」

第七王女「なるほど諜報活動にはもってこいじゃな」

娘「わたしは部活はおいといて……学内の魔力異常がないかしらべるわ、パパ程精密にできないけど」

第七王女「そうじゃなしばらくはわらわと娘は自由に調査したほうがよいの」

娘「そうね……それにしてもパパ大丈夫かしら、バレてないわよね」

娘友「まさか一日目でバレることはないでしょ」

第七王女「そうじゃよ、昨日今日でバレるような変装ではなかろ」

娘「……そうだけど」

○深夜・Aクラス専用女子寮の大浴場

湯気が揺らめく中、倒れた少年エルフの前に委員長が立ちはだかっている。

委員長「貴方、その耳は……。 まさか『エルフ族』?」

少年エルフ「……(ど、どどどうしようバレタ)」

※更新終了、今回はここまで。 次回更新は土曜に。

#3 PとHW

○数十分前・Aクラス専用女子寮、少年エルフの個室

ゴソ

エルフ子(少年エルフ)「ん……、そろそろ」

少年エルフはベットから起きると着替えをもって大浴場へ向かった。

エルフ子(少年エルフ)「……(この時間ならだれもいないよね)」

○大浴場前

エルフ子「……(お風呂も食堂もいつでも利用できるっていってたけど。 すごい設備だなぁ)」

エルフ子は入り口で耳を澄ます。

シーン

エルフ子「……(大丈夫、誰も入ってないね)」

○大浴場・脱衣所

カパッ

少年エルフは飾り耳付きウィッグを外した。

少年エルフ「ふぅ、これ耳が蒸れる……。 仕方ないけど」ポリポリ

ペタペタ……ガラガラガラ

少年エルフ「すごい湯気、先が見えないや」

少年エルフは大浴場に足を踏み入れると。

石鹸「!」

少年エルフ「うわあ!?」

つるーん

ドタ ガラガラカラーン

少年エルフは石鹸を踏んで盛大に転んでしまった。

少年エルフ「いたた……」

ペタペタペタ

少年エルフ「え?」

湯気の向こうから委員長があらわれた。

委員長「大丈夫? すごい音が……、エルフ子さん?」

少年エルフ「うそ……(なんで居るの!?)」

少年エルフは咄嗟に下半身を隠した。

委員長「あなたその耳……『エルフ族』なの?

○Aクラス専用女子寮・洗濯室

スチャ

第七王女「ふむ……(都合よく窓があいてて助かったわい)」

第七王女が洗濯室の開いていた高窓から忍びこんだ。

第七王女「おぉ……(最新の洗濯魔導器がこんなに)」

王女は並んだ洗濯槽と乾燥器に感嘆の声をあげる。

第七王女「ふむぅ……(なんという資金力、やはり裏がありそうじゃな)」

スッ

第七王女「……(しかし、まずはエルフと連絡を取らねば)」

第七王女は音も立てずに移動を始めた。

○大浴場

少年エルフ「あの…… その……」わたわた

ガラガラガラッ

更に誰かが脱衣所に入ってきたようだ。

少年エルフ「え? そんな!?」

委員長「……こっちよ」グイ

少年エルフ「え? え?」

ザプン

委員長は少年エルフを引っ張って湯船にはいった。



少年エルフ「あ、あの……」カアア

委員長「ダメ、喋らないで……”無音霧”」

委員長は魔法の霧を辺りに造り出した。

ゴソゴソ

脱衣所に入ってきた何者かは何かを探しているようだった。

少年エルフ「何してるんだろう、入ってこない……」

委員長「静かに、離れないでください、」ぎゅう

委員長は少年エルフを抱き寄せる。

少年エルフ「あのちょっと近い、離して……」カアア

委員長「駄目です、私の魔法はそんなに範囲がありませんから」

むにゅう

少年エルフ「ッ……(うわぁ背中に胸が、やらわかい!)」ドキドキ

ガラガラッ

脱衣所の何者かは出て行ったようだ。

委員長「よかった、中には入ってこなかったようですね」

少年エルフ「あの、今のは……」

委員長「最近、校内に不審者が出るという噂です」

少年エルフ「不審者? どういう?」

委員長「まってくださいまた誰か来ます」

ドタドタドタ……ガララッ

風紀委員「誰か入ってる!?」

風紀委員が制服のまま大浴場に入ってきた。


委員長「(潜って……)はい私です」

少年エルフ「ブクブク……」

少年エルフは頭を押さえられて湯船に潜らされた。

風紀委員「委員長またこんな時間に入ってる。 例の変質者がでたのよ早く部屋に戻って」

委員長「わかりましたわ」

\キャー 出たー/

風紀委員「あっちか、被害があったら後で報告して」

ドタドタドタ

風紀委員はあわただしく駆け出していった。

委員長「……行きましたわ」

少年エルフ「ぶはっ」

委員長「大丈夫ですか? ……耳先まで真っ赤ですよ」

少年エルフ「う……、のぼせました」ドキドキドキ

○廊下

廊下の曲がり角で第七王女は様子を伺っていた。

\バタバタ/ \キャー/
 
曲がり角の先から足音と悲鳴が聞こえてくる。

第七王女「……(妙じゃな、こんな夜更けに騒がしいのう)」

王女が廊下の先を伺うと。

狼男「へっへっへ……」

パンツをはいた狼男が息を切らせて走って来た。

第七王女「くっ!? 曲者ーッ!!」

○脱衣所

少年エルフ「え? 無くなってる!?」

委員長「やっぱり、先ほどのは噂の下着泥棒さんでしたね」

少年エルフ「うそ……、委員長も?」

委員長「私のは隠してたので無事です。ほらこれで耳を」

クルクル

委員長はタオルで少年エルフの頭を包み耳も隠す。

委員長「服を着たら私の部屋へ、そちらの方が近いですから」

少年エルフ「はい……」カアア

少年エルフは委員長に背中を向けて服を着だす。

少年エルフ「う……(すごいスース―する)」

○廊下

\くせものー/

風紀委員「こっちね!」

風紀委員が駆け付けると、第七王女が狼男と戦っている。

第七王女「おのれ珍妙な奴め! わらわが成敗してくれる」

ヒュンヒュン

第七王女はナイフを持って狼男と高速戦闘を行っている。

狼男「ぬぅ、なんというデンジャラスガール」

風紀委員「見つけた! 覚悟なさい下着泥棒っ”麻痺”」

シュババッ

駆け付けた風紀委員の杖から麻痺光線が飛び出す。

バシン

狼男「うおっと、こりゃまずい逃げるか」

麻痺光線を避けると狼男は窓へとりつく。

第七王女「おのれ逃すか」

シュッ

狼男「いってぇ!?」バタバタ

狼男は尻にナイフが刺さるもそのまま逃げていった。

第七王女「ぬぅ、逃がしたか。しかしこんなところに狼男とは……」

○委員長の部屋

バタン

委員長「これで一安心ですね、大丈夫ですかエルフ子さん」

少年エルフ「あ、あの……その、なんで」

委員長「『なぜエルフ族に驚かないか』ですか?」

少年エルフ「……はい」

委員長「そうですね……、うん。知ってもらったほうが早いですね」

バサッ

そういうと委員長は団子ヘアーを下す。

委員長「手を」


少年エルフ「何?」ドキドキ

委員長は少年エルフの手を取り、自身の頭へ促す。

委員長「わかりますか?」

少年エルフ「これは……角?」

少年エルフが触る先に髪の下に突起が当たる。小さい角のようだ。

委員長「はい、私は『魔族返り』なのです」

○廊下

風紀委員「あ、あなた!」

第七王女は風紀委員に呼びかけられた。

第七王女「うーむ(しまったどう誤魔化すかのう)わらわは……その」

風紀委員「貴方素晴らしい身体能力だわ、風紀委員会に入らない」

第七王女「おお? ……うむ任せるのじゃ、あのような狼藉物を一緒に捕まえようぞ!」

第七王女はその場のノリで風紀委員会に所属した。

○委員長の部屋

委員長「似た境遇の方と会うのは初めてなのでとても嬉しいのです」

少年エルフ「あの……『エルフ族』は嫌いじゃないの?」

委員長「嫌い? なぜ? こんなにカワイイ子なのに」ぎゅうう

委員長は少年エルフを抱きしめるとクルクルと回転する。

少年エルフ「え?あの(あれ? カワイイ子?)」

ゴン、カチャ

委員長「あらいけない……、メガネメガネ」オロオロ

委員長は落としたメガネを探しているが拾えない。

少年エルフ「……あの、ここに」

スッ

委員長「ありがとうございます。 駄目ね、メガネがないと小さいものは見えなくって」

少年エルフ「小さい……」ズーン

委員長「どうしたのエルフ子さん?」

委員長にエルフがオトコだということはバレていなかった。

※つづく

#4 マッガーレ、スプーン!

○翌日、休憩時間・中庭

第七王女「と、いうわけで風紀委員になったのじゃ」

娘「フリーでいようって話じゃなかったっけ?」

第七王女「それはのう、まぁその場のノリでじゃな」

娘「まあいいけど……、確かに風紀委員とかなら一般の生徒が知らない所も調べられるでしょうね。 でも」

娘友「エルフさんと連絡がつかなかった、でしょ?」

娘「それよそれー、あー~もう。心配だわ、ヘンな生徒に絡まれてないかしら」

娘友「そんな娘に朗報よ、エルフさん合同授業の薬草学に出るみたいよ」

娘「ホント!? 薬草学って何処?いつ?」

娘友「えっと別棟の次の時限みたい……」

フォン

娘は別棟へ消えた。

娘友「はっや」

第七王女「娘はエルフの事になると容赦がないのう」

娘友「前回の事もあるし、不安なんでしょ」

○調合室

広くない薬草・魔法薬の実習室だが生徒は疎らである。

エルフ子(少年エルフ)「薬草学って人少ないね」

委員長「そうですね、魔法に比べるとやはり地味ですから」

ガタガタ

委員長とエルフ子は並んで座った。

エルフ子「委員長さんはどうして薬草学を?」

委員長「ただ単に植物が好きだったので……エルフ子さんは?」

エルフ子「僕も山育ちだし草花は好きだしそれに……」

娘「実際に薬師の助手をしてたからよね? エルフ」

娘があらわれた。

エルフ子「あ、娘」

娘「ここ座るわね(……よかった会えたわ)」

ガタ

娘はエルフ子の隣に座った。

委員長「あらコンニチワ、エルフ子さんのお知り合い?」

エルフ子「あ、そうだね娘は僕の……えっと」アセアセ

委員長「……?」

娘「私とエルフ子は……親戚なのよ。 そうでしょエルフ」

エルフ子「うん、そう……いとこみたいなもの」アセアセ

委員長「そうでしたか……(いとこみたいな?)」

娘「貴方は? エルフ子と同じクラス?」

委員長「ええ私は委員長です」

娘「そう委員長ね……、エルフが世話になってるわね」

委員長「いえエルフ子さんはその……まだ若いのにとても優秀ですね」

娘「知ってるわ長い付き合いだしね……(この感じ、まさか)」ニコニコ

委員長「私は日は浅いですけどすっかりいいお友達になりましたわ(親戚? 全然似てないじゃない)」ニコニコ

娘「そのようね(……怪しい)」ニコニコ

委員長「はい(……怪しい)」ニコニコ

エルフ子「どうしたの二人とも?」

娘「エルフ? 昨日は初日だったけど大丈夫だった?」

エルフ子「えっ! 大丈夫なにもないよ」ドキドキ

娘「……(ッ!? エルフがウソを……一体なにが)」

委員長「エルフ子さんどうかしましたか? 大丈夫ですか?」

エルフ子「委員長さんまで、大丈夫だよ何もないって」ドキドキ

委員長「そうですよね……(この反応……普通じゃない)」

娘「とにかく、よろしくお願いしますね委員長さん(……さてはオトコと判って狙ってるわね! エルフは渡さないわよ)」

委員長「いえこちらこそよろしくお願いしますね娘さん(……さてはエルフハンターですね、エルフ子さんは私が守ります!)」

キーンコーンカーン……

授業が始まった。

○Cクラスの教室

男子「次は何の授業だっけ?」

男子は同級生に話しかける。

「超魔力実習だ『裏切者』」

「教室移動だぞ『裏切者』」

男子「わかったから、それとその呼び方そろそろ勘弁してくれよ……」

男子のあだ名は『裏切者』になっていた。

「許してたまるか! なんで娘さんがお前みたいなゴリラと!!」

「絶望した死んでやるー」

ダダダ―。

同級生は現実から逃げ出した。

男子「はー、とりあえず移動するか」

○魔法実技室

巨乳教師「始めての者もいるから言っておく、貴様らは魔力のないクズだ!」ぺシンッ

教師は教鞭を手にして高圧的に話している。

男子「……(美人だけど性格きつそうだな)」

娘友「……(おのれ巨乳め)」

巨乳教師「しかし、そんなお前らでも魔力に頼らない魔法を発見した。見ろ」

フワッ

\おお/

教師が手を放すと教鞭が空中に浮かび上がった。

娘友「なによ手品じゃない」ボソッ


巨乳教師「そこ私語は禁止だ!」

シュッ ベシン!

娘友「ぎゃう!?」

浮遊していた教鞭がひとりでに振るわれ娘友の脳天を打った。

\おおお~/

巨乳教師「これは隣の研究所にて発見され特別にこの学校での訓練が許されたものの一つだ。我々はこれを魔力を超えた魔力、すなわち超魔力とよぶ」

男子「すげぇ……」

巨乳教師「魔力は関係ない、貴様らにも出来る。潜在能力を開花させるのだ」

\うおおおーッ/

巨乳教師「では貴様らにはまずこれを曲げてもらおう」



班ごとに分かれた生徒たちがスプーンを手にしきりに擦っている。

巨乳教師「そろそろ一人ぐらい曲げる奴は出ないのか?」

男子「ぬおお……」ゴシゴシ

「まっがーれ!……」ゴシゴシ

「チンチラホイ!」ゴシゴシ

巨乳教師「気合を入れろ!」

娘友「……こんなの曲がるわけないじゃない」

「友ちゃん……、でも現実に先生曲げてるし」

娘友の前にスプーンが漂ってくるとひとりでにお辞儀をした。

娘友「……(バカな)」

超魔力教師「貴様、もっと集中しろ!」

娘友「でもセンセ、これ出来た生徒はいるんですか~?」

超魔力教師「確かに出来る者は少ないかもな、だから少しでも曲げれた班は特別講習でより超魔力を伸ばしてもらうぞ」

「特別講習……」

「先生の……」

\うおおおお/

半数の生徒が曲げようと必死になる。

娘友「オトコてやつぁ……」



「かってぇー」

同級生は力づくてスプーンを曲げようとしている。

「おい男子今こそゴリラパワーを見せてくれ」

男子「おいおい、それだと超魔力関係ないだろ」

「そんなの後でどうとでもなる。先輩情報によれば特別講習さえ受ければ出来るようになるらしいぜ」

男子「ホントか?……(超魔力が使えるようになれば娘にもバカにされないかもな)」

男子「よし、……フンッ」メキッ

ペキン

男子のもつスプーンの頭が吹っ飛んだ。

\おお/

パシッ

超魔力教師「ほう貴様ら……、後で残れ」

教師は飛んできたスプーンの頭を受け止めると男子たちの班に言った。

「やったああ」

「ゴリラ万歳」

男子「やれやれ……」

※つづく

#5 強敵と書いて……

○調合室

生徒たちが課題の試薬を調合している。

ガヤガヤ

エルフ子(少年エルフ)「結構簡単だったね」

委員長「すごいですねエルフ子さん、こんなに早く出来るなんて」

エルフ子と委員長は課題を終えていた。

エルフ子「委員長さんだってできてるじゃない」

委員長「私は独学でやってましたから」

エルフ子「あと何したらいいんだろ?」

委員長「あとは自習ですよ、私はいつも新しい調合を試しています」

エルフ子「へぇどんなの? 見せて」

委員長「ふふ……、お見せするほどではないかもしれませんが」



娘「うぐぐ……、早く終わらせないと」

ゴリゴリ

娘は乳鉢と乳棒で試薬を混ぜ合わせる。

\わぁすごい/

\これは魔法薬に近い調合ですよ/

娘「むぐぐ……、あの子があんなに調合ができるなんて……」

ゴリゴリ……バチバチ

焦りから漏れた魔力が電撃となって試薬を焦がした。

娘「あっ……(そうよ体質的に無理なんだった、忘れてたわ)」

娘「ねぇエルフ、手伝ってくれない?」

エルフ子「娘? 仕方ないなぁ」

委員長「あら、手伝わなくていいんですよエルフ子さん。 課題なのですから」

エルフ子「え? でも……、ほら人によっては難しい所もあるから」

エルフ子は娘の課題を手伝い始める。

娘「ありがとパ……エルフ」ニコニコ

委員長「むー、(このままではエルフ子さんが)」

カチャカチャ

委員長は忘却薬を調合した。



エルフ子「娘、それ計ったら頂戴」

娘「はーい、やってるわ」

委員長「もうできますか?」

娘が振り向くと委員長が微笑んでいる。

娘「何……(邪気が)」

委員長「エルフ子さんと本当に仲がよろしいのですね」

娘「そりゃあ、長い付き合いだもの」

委員長「だとしても随分と……甘えすぎではありませんか?」

娘「それは仕方ないじゃない家族、……のようなものなんだし」

委員長「家族……、いとこでは家族ではないと思いますが?」

娘「……一緒にいたら家族よ」

委員長「はっきり申し上げて、エルフ子さんを便利に使ってないですか?」

娘「便利にってそんな……」

委員長「とりあえず、こちらに来たことを忘れて考えなおしてみては?」

娘「はぁ? それはどうい――」

委員長「あら、テガスベッタワー」

委員長は手にしていた忘却薬を振りまいた。

娘「だろうと思った」

ヒュッ

娘は薬をかわした。

エルフ子「娘まだー?」

ぼわっ

委員長・娘「「あ!?」」

撒かれた薬をエルフ子が頭からかぶってしまった。

エルフ子「うわぁ!? なにこれ」ゲホゲホ

委員長「きゃああ大変」

娘「こっち早く!!」

娘はエルフ子を引っ張って調合室のシャワーを浴びせる。

ザァー

\どうしましたか/

委員長「すません誤って薬品が掛かってしまい……」

娘「エルフ大丈夫?」

エルフ子「ん? んん」ボー

娘「とりあえず着替えさせないと……こっちへ」

ダダッ

娘はエルフ子を引っ張って教室を飛び出した。

委員長「ああもう、どうして」

○女子更衣室

娘「はやく着替えて」

エルフ子「ふえ?」ボー

娘「脱がすわよ」

テキパキ

エルフ子は娘に服を脱がされ、最後にウィッグを外され少年エルフに戻った。

少年エルフ「ほえ?」ボー

娘「様子がおかしいわね……解毒がいるのかしら」

ガラッ

委員長「あの……、中和剤をって。エルフ子さん!?」

委員長は一糸まとわぬ少年エルフを見て驚く。

娘「早く解毒を……って、どうしたの?」

委員長「ウソ……、生えてる!?」

娘「え、知ってたんじゃないの!?」

委員長「知って? 知ってたの!?」



少年エルフは娘のジャージを着せられ端に座っている。

少年エルフ「……(バレタ……見られた……)」カアア

委員長「……そうでしたか、それでこの学園に」

娘「貴方を誤解してたわ、それに『エルフ族』のことを黙っていてくれてありがとう」

娘は委員長に経緯を説明した。

委員長「それは私も似たような所がありますので」

娘「それでもよ……。 それと秘密を知ったついでにAクラスでエルフの事頼めるかしら?」

委員長「それはもちろん、大切なお友達ですから」ニコニコ

娘「いいえ、普通に友達でいいわよ」ニコニコ

委員長「……」ニコニコ

娘「……」ニコニコ

ゴゴゴゴゴゴ

少年エルフ「娘? 委員長さん?」

娘「大丈夫よ話はついたわ」ニコニコ

委員長「ええ聞きましたわ」ニコニコ

少年エルフ「……(なんか笑顔がコワイ)」

娘「それにしても魔王調査のことよく信じる気になったわね」

委員長「それは私も完全に他人事ではありませんし、ここに来てから『魔族返り』が進行してるような気がするのです」

少年エルフ「そうなんだ」

委員長「ええ、ですから私も魔王調査の件。手伝わせてください」

委員長が仲間に加わった。

※つづく

#6 魔法学校の怪談

○夜・Aクラス専用女子寮

第七王女「おのれ曲者!」

ダダダダ

狼男「今日もいるのか!?」

またも現れた下着泥棒を第七王女が追いかけている。

風紀委員「それはこっちのセリフです、毎回毎回いい加減にしてください!」

風紀委員があらわれ行く手を遮る。

狼男「くっそ、今日は収穫ゼロか」

ダッ

狼男は窓を開け外へ逃げ出す。

風紀委員「3階なのに!?」

第七王女「逃がすか」

風紀委員「まってください!?」がしっ

風紀委員が飛びおりようとした第七王女を捕まえる。

第七王女「こりゃ、逃げられるじゃろう」

風紀委員「ダメです、危険すぎです。 それに夜間は外出禁止ですよ」

○翌日、中庭・昼食休憩

第七王女「なにが外出禁止じゃ、それだから捕まえられんのじゃ」

王女が不満をいいながらサンドイッチをかじる。

娘「なんだかんだと学校生活楽しんでない? 目的覚えてる?」

第七王女「もちろんじゃ、友。 調べはついておるよな」

娘友「もちろんよ……と、いいたけど噂レベルの情報しかないわね」

エルフ子(少年エルフ)「どんな噂」

娘友「そりゃもう……、七不思議ってやつよ」

エルフ子「え゛っ」

娘友「ひとつ……、音楽室の目が光る肖像画!」

第七王女「音楽室があるのか?」

委員長「音楽魔法や詠唱の発声練習用に一応、あまり使われてませんが」

エルフ子「……(コワイ)」フルフル

娘友「ふたつ……ひとりでになる人食いピアノ」

娘「それミミックじゃないの?」

エルフ子「……(音楽室コワイ)」フルフル

娘友「みっつ……走る初代校長像」

第七王女「ゴーレムじゃないの?」

エルフ子「……(コワイ)」フルフル

娘友「よっつ……うごめくホルマリン標本」

委員長「魔力標本が遊離魔力で動くのは実際ありますよ」

エルフ子「……(標本コワイ)」フルフル

娘友「いつつ……夜になると増える13階段」

娘「だいたい数え間違いよねそれ」

娘友「むっつ……異次元への入り口、開かずの扉」

委員長「そういえばAクラス校舎にありますね」

エルフ子「え゛え゛ッ!?」

娘友「ななつ……女子トイレの幽霊」

娘「ちょっと……」

娘友「やっつ……神出鬼没の狼男」

第七王女「あれはただの曲者じゃろう」

委員長「というよりヘンタイさんですね」

娘「それよりなんで七不思議が8個もあるのよ」

娘友「とりあえず調べたらこうなったわ」

エルフ子「全部本当なの?」ブルブル

委員長「いくつかは聞いたことありますが本当かどうかは」

娘「エルフ心配しないでほとんどデマよ」

エルフ子「ほんと?」

第七王女「しかしこれでは魔王城や魔物との関係はなさそうじゃのう」

娘友「そーね、記録でも魔王城の後にはお墓になってたし、それが怪談の出どころにもなってるんでしょうね」

委員長「昔お墓でしたはよくあるわね」

エルフ子「ひいぃ」

娘「大丈夫よエルフ、それに実家の裏手は墓地だったでしょう」

エルフ子「それはそうだけど……」

第七王女「それにしても噂が多い学校じゃのう」

委員長「やはり魔法の学校ですからそれの影響もありますかね」

娘「エルフは何か魔性の物とか感じないの?」

エルフ子「うーん、感じないというより学校全体に魔力が充満してるからよっぽど強いなにかじゃないとわからないよ」

第七王女「そうか、やっかいじゃのう」

娘友「他に手掛かりないけどどうする? 調べてみる?」

娘「そうね、何かわかるかもしれないし」

委員長「調べるといってもこれは夜じゃないとだめですよね? そこはどうしましょう」

第七王女「それはわららに任せるのじゃ、今夜はわらわが提案した大掛かりな狼男捕獲作戦を行うので教員、風紀委員の動きは把握済みじゃ」

娘友「じゃあ、時間になったら調べにいきましょう、調べる場所はそれぞれ割り当てないと……」

第七王女「ところで男子はなぜおらんのじゃ?」

娘友「男子くんは補習よ」

第七王女「何じゃ? 男子は魔法ができんからか?」

娘友「魔法はできないけど……超魔法、いえ超魔力がね……」

○夜・Aクラス用女子寮

第七王女「ようし、では作戦開始じゃ!」

\\おおー//

風紀委員たちの狼男捕獲作戦が始まった。

第七王女「各自配置につくのじゃ……(怪談の調査は娘らに任すしかないの)」



委員長「はじまったようですね、指示されたルートで校舎まで行きましょう」

エルフ子「う、うん」ビクビク

委員長「大丈夫ですか?」

エルフ子「え?! うん大丈夫行くよ」

○共同校舎・1階廊下

娘「流石王女ね、誰とも会わなかったわ」

娘友「ほんと、さてアタシ達は音楽室、階段、校長像か急がないと」

娘「そうね……(大丈夫かなパパ)」

娘友「どうしたの、エルフさんが心配?」

娘「そりゃそうよ……、人一倍怖がりなんだから」


※つづく

#7 ノッキンオンヘルゲート

○夜・Aクラス専用校舎の2階廊下

エルフ子(少年エルフ)「う……ぐす」

増える13階段と標本室を見回ったエルフ子は半ベソである。

委員長「大丈夫ですかエルフ子さん?」

エルフ子「大丈夫だって、ちょっと驚いただけだから」ぐすぐす

エルフ子と委員長は真っ暗な廊下を歩いている。

委員長「そうですか……無理しなくて私に任せてもらってもいいんですよ」

エルフ子「ダメだよ委員長さんに任せっきりになっちゃうよ」

委員長「いいんです、友達ですから頼ってもいいんですよ」

エルフ子「ともだち……、うん」ニコ

○2階女子トイレ前

委員長「さて、ここが開かずの扉と」

エルフ子「こっちが例のトイレ? こんなに近いの?」

トイレの入り口の対面に古い大扉がある。

エルフ子「これが開かずの扉」ブルブル

委員長「というか、搬入口なんですけどね」

エルフ子「搬入口?」

委員長「ほら見てください、扉の向こうは外ですよ」

エルフ子「ほんとだ、扉だけだ」

廊下の窓から扉の向こうをみると部屋はなく空中、外へつながっている。

エルフ子「どういうこと?」

委員長「古い建物でありがちですが、出入り口を通らない大きな荷物を入れるための扉で普段は使わないものなんですよ」

エルフ子「じゃあ開かずの扉って」

委員長「事情を知らない生徒が謎の扉ということで噂を造ったのでしょうね」

エルフ子「なあんだ」

委員長「その筈なんですが、実際に生徒が行方不明になることが……」

エルフ子「ひいぃ」

委員長「違いますごめんなさい、多分早期就職か退学ですよ、ほら次はトイレを……」

エルフ子「待って……、誰かこっちに来るよ」

委員長「こんな時間に?」



コツコツ

巨乳教師「さあ、こっちよ」

男子「こんな時間に授業なんて……」

「だから特別授業なんだよ」

「うひひ」

男子と同級生は巨乳教師の後をついて夜の校舎を歩いていく。

巨乳教師「ここよ」

「あれここって」

男子「ここが教室か?」

「知らないのか、ここは開かずの扉だぞ」

巨乳教師「ふふ、いいえここは開くわよ。 ほら」

ガチャ、キュオオオオオオッ!

扉が開くと光が渦巻いている。

「うおおすげえ」

「ヤバくないか」

男子「先生これは一体」

巨乳教師「さぁ、授業を始めるわよ」

巨乳教師が手を振ると男子達が光の中へ放り込まれる。

\\うわああ//



委員長「……(消えた……)」

エルフ子「……(今の魔法? 男子君……他のコもどこいったの?)」

エルフ子たちは女子トイレから隠れて様子を伺っていた。

巨乳教師「さぁて、貴方たちは飛び入りかしら?」

委員長・エルフ子「「……(気づかれてる!?)」」

巨乳教師「さぁ、こっちへ」

ブゥン

委員長「きゃああ」

エルフ子「うわああ」

委員長とエルフ子は空中に放り投げられ、そこで浮いている。

エルフ子「なにこれ? 動けない!?」

巨乳教師「あら貴方はAの新顔ね、それと……」

委員長「これは正当な授業なんですか? それとも……」

巨乳教師「あらあら委員長さんじゃない、ちょうどよかった前から狙ってたのよ」

委員長「その口ぶり……生徒の行方不明は貴方が」

巨乳教師「うーん、その素質に頭脳。 あなたなら王にもなれるかもしれないわね」

委員長「王? 一体何を……」

巨乳教師「魔族返りの貴方なら魔王にもなれるわよ」

委員長「なぜそれを!? まさか貴方も」

巨乳教師「私? 私は違うわ

エルフ子「委員長さんこの先生、魔族だよ!」

委員長「え!?」

巨乳教師「あら正解よ。 ご褒美をあげなくちゃね」

ブゥン

\\きゃああ//

エルフ子と委員長は光の渦の中へ放り込まれた。

※つづく

#8 トイレのコックリサン

○翌日・昼休み、中庭

娘「エルフが居なーい!」

娘友「委員長さんも欠席みたいよ」

第七王女「あと男子もいなくなったようじゃ」

娘「男子はどうせ退学したんじゃないの?」

第七王女「それが学園外の白竜たちと電話したんじゃが居ないようじゃ」

娘友「王国まで一人で行けるわけないし……、同じく行方不明と考えた方がいいわね」

娘「別にどうでもいいわ」

娘友「もう少し興味もってあげて」

第七王女「あと風紀委員会で分かったのじゃが、生徒の行方不明者がかなりいるようじゃ」

娘「そうだったの」


娘友「表沙汰にならないように、退学や、早期卒業、就職とか内々に処理してるみたい」

娘「……パパ達が担当したのは標本室と階段と開かずの扉だっけ?」

娘友「あと女子トイレの幽霊もよ」

娘「はぁ……午後からはサボりましょ」

○Aクラス専用校舎・女子トイレ前

娘友「ここが女子トイレの幽霊が出るっていうトイレよ」

第七王女「本当におるのか?」

娘「……何か感じるけど、見えないわね」

娘友「そりゃ真っ昼間じゃね、でも大丈夫。 呼び出しかたがあるから」

第七王女「呼び出し方」

娘友「そう、個室のドアを『コックリサンコックリサン遊びましょう』といいながらノックすると返事が返ってくるという……」

第七王女「ほうほう」

娘友「でも返事を聞いてドアを開けると異次元に連れ去らわれてしまうという恐ろしいのろ……」

こんこんこん

娘「『コックリサンコックリサン遊びましょう』」

娘友「わーっ!? ちょっとはタメラッテ!?」

\ハーイ カムイ―ン/

何処からか女性の声が答えた。

娘友「キャーー!?」

第七王女「割と気さくな声じゃな」

娘「そうね」ガチャ

娘は個室のドアを開ける。

娘友「だから心の準備が!? いやー!!」

○異空間・薄暗い中庭

バタン

第七王女「ほう……、ここが異次元かの」

娘「そのようね」

個室のドアをくぐると薄暗い中庭でテーブルと椅子がおいてある。くぐった扉は閉まると同時に消えた。

娘友「閉じ込められてないアタシ達」

娘「そうかもね……、それはあちらも同じようよ」

第七王女「む?」

スゥ

誰もいなかったテーブルに少女の姿が浮かび上がってくる。

狐女「久しぶりのお客さまね、どうぞゆっくりしていって」

狐の獣人が優雅に紅茶を飲んでいる。

娘「あなたが『トイレの幽霊さん』?」

狐女「そうね……、そう呼ばれているわ」

娘「昨日の夜に男の子……じゃなかった、女生徒が二人やってきたでしょ、ひとりは背が低くてカワイイ……」

狐女「あらいきなり質問攻め? それならゲームをしましょう」

そういって狐女がテーブルを指さすとそこには文字盤とコインがある。

第七王女「数字、文字、はいといいえ……なんのゲームじゃ?」

狐女「なんでも教えてくれる『コックリゲーム』よ、知ってることから知らないことまでなんでもね」

娘「……(質問ゲームをしようっていうのね)いいわ、やるわ」

娘友「まってそれは闇のゲームよ! きっと呪いが」

娘「どっちみちゲームに付き合わないとここを出られないんじゃないの?」

狐女「さぁ、どうかしらね?」

娘友「それもゲームでしか答えないということなのね……うう」

第七王女「おもしろそうじゃ、やるのじゃ」

娘「問題ないわね……、じゃあ始めましょう」

狐女「うふふ、嬉しいわ」

娘たちは文字盤を囲みコインに指を置いた。

狐女「『コックリサンコックリサン』と言ってから質問してね、そしたらコインが真実を示すから問われた者は正直に答えるのよ」

娘「ウソをつけないわけね」

狐女「そうよ、うふふ」

\コックリサンコックリサン/

娘「昨夜ここに女生徒が来たのを知ってるわね?」

娘友「うわコインが勝手に動く!?」

娘の問いかけにコインが『いいえ』を示した。

狐女「知らないわ」

娘「なんですって!!」

娘が憤慨するが、狐女は動じない。

狐女「じゃあ私の番ね」

娘友「幽霊さんも聞くの!?」

狐女「そうよ、ゲームだもの」

\コックリサンコックリサン/

狐女「貴方は探してる人とどんな関係?」

コインが動き『カ』『ゾ』『ク』と示した。

狐女「……あら恋人でも探してるのかと思ったのに」

娘「探してるのは友人と私の家族よ」

娘友「ホントにィ? ただのカゾクなのぉ?」ニヨニヨ

娘「友!」

狐女「では次は貴方の番よ」

狐女は娘友に質問を促す。

娘友「アタシ?」

狐女「そうよ、どんなことでも答えてくれるわよ」

娘友「どんなことでも……、男子君が好きな人は誰っ!?」

娘「ちょっと友、そんなどうでもいいこと……」

娘友「どうでもよくない!」

狐女「だいじょうぶよ、聞いてみて」

\コックリサンコックリサン/

コインは『娘』を示した。

娘友「ぎゃあー、ナムサーン!!」

狐女「あらあら三角関係になったかしら」

娘「なにもないわよ……(まったくあのバカは)」

狐女「ないの? つまらないわね」

\コックリサンコックリサン/

第七王女「この学園から消えた生徒はどこにおる?」

コインが動いて『マ』『カ』『イ』と示した。

娘「マカイって魔界?」

娘友「ホントこれ!?」

狐女「そうねあいつらは魔界の魔王城跡にいるわ」

第七王女「魔王城跡じゃと!? どうすれば行けるのじゃ?」

狐女「ダメよ質問は一度に一つ、今度はこちらの番よ」

第七王女「むぅ」

\コックリサンコックリサン/

狐女「そうね貴方には消えてほしい人はいる?」

第七王女「何?」

コインが動いて『バ』『カ』『6』と示した。

第七王女「まったくじゃな、あのバカは消えた方が世の中のためじゃ」

狐女「えっとどんな方?」

娘「どーしよーもない王女の兄ね」

第七王女「アレと兄妹かと思うと悲しくなるわ」

狐女「……仲が悪いのね」

娘「また私の番ね」

\コックリサンコックリサン/

娘「さっき言った『あいつら』って誰? 答えてもらうわよ」

狐女「ん……(このコ、耳ざといわね)」

コインが動き『マ』『ゾ』『ク』と示した。

第七王女「やはり魔族が絡んでおるのか」

狐女「そうね、超魔力学担当の女教師だけど実は彼女は……」

※つづく

#9 魔王育成計画

○???・古びた教室

\ひゃあああ/

\うほおおお/

男子「お前らしっかりしろ」

古びた教室で同級生たちがのたうちまわる。

男子「何をしたんだ先生!」

巨乳教師「ちょっとしたおまじないよ……素直になれるわ」

男子「人間じゃ……ないよな」

巨乳教師「正解、実は先生はね……」

メキメキメキ

巨乳教師の背後から節足が伸びて来た。

男子「……魔族が先生だったのか」

巨乳教師は下半身が蜘蛛の女郎蜘蛛だった。

女郎蜘蛛(巨乳教師)「あら、魔族は教師しちゃいけないっていうの?」

男子「え?、いや……」

女郎蜘蛛「私だって教師やって皆に教えたかったのよ」

女郎蜘蛛がしなを造りながら男子に詰め寄る。

男子「い、いやしかし……こんな所で何を教えようっていうんだ?」デレデレ

男子は胸元を強調しながら詰めよる女郎蜘蛛から目をそらしながら問う。

女郎蜘蛛「それは……こうよっ」シュシュー

男子「うわああ」

男子は女郎蜘蛛の糸に絡めとられた。

○狐女の異空間

娘「蜘蛛の魔族ね……」

狐女「ええ、あいつらが来てから私の元には一人も来ない……いい迷惑だわ」

娘「貴方は魔族とは関係ないの?」

狐女「私はもともとここにいたのよ、いっしょに居ないで」

娘「もともと、ね……」

狐女「……言い過ぎたかしら、次の質問は?」

娘友「アタシね」

娘「真面目に質問してよ」

娘友「わかってるって魔王に関することでいい?」

第七王女「OKじゃ」

\コックリサンコックリサン/

娘友「魔王ってイケメン?」

娘「友ッ!」

娘友「何よ大事なことでしょう、最近は魔王とキャッキャッウフフもなきにもあらず」

第七王女「最近ってなんじゃ?」

狐女「魔王ねぇ……」

コインが大きく揺れ動くと『いいえ』を示した。

娘友「え~」

狐女「そもそも、あの魔界に魔王はまだいないわ」

第七王女「まだじゃと?」

狐女「まって私の番よ」

\コックリサンコックリサン/

狐女「貴方(娘友)が一番欲しいものは何?」

娘友「それやおか……いいえ、『愛』よ」

娘「そんなキャラだっけ」

娘友「そうよ、愛さえあれば何でもできる。 しゃーんなろー」

狐女「さて本当かしら……ふふふ」

コインは動いて『お』『っ』『ぱ』『い』を示した。

狐女「……」

娘「……」

第七王女「……友、そんなに気にしておったのか?」

娘友「ちょっ、違うって……。 やあああああ」

ダダダ

娘友は逃げ出した。

狐友「といってもここからは出れないけどね」

第七王女「そのうち戻ってくるじゃろう」

娘「そうね……」



第七王女「その魔族らは何が目的なんじゃ?」

\コックリサンコックリサン/

コインが動いて『い』『く』『せ』『い』と示した。

狐女「あいつらは」

第七王女「魔王になったじゃと?」

狐女「あいつらは魔王を育成するつもりよ」

娘「どうやって……」

狐女「あいつらは魔界に引きずり込んだ旧校舎の一部でさらった生徒に……」

○魔界・旧校舎の一室。

女郎蜘蛛「というわけでコレを貴方に埋め込むわよ」

委員長「なんですかそれは……(なんて禍々しい)」

女郎蜘蛛「とっても素直で強くなれるモノよ」

エルフ子「むぐむぐ」ジタバタ

エルフ子は糸に縛られている。

委員長「約束ですよ、エルフ子さんを解放して危害を加えないと」

女郎蜘蛛「ええ、大丈夫よ」

エルフ子「んんーんんーッ」

委員長「エルフ子さん安心してください、私が守りますから」

女郎蜘蛛「フフフ……」

ビシュッ

真っ黒な結晶が委員長の胸に打ち込まれた。

委員長「ぐうっ!」

エルフ子「んんー」

委員長「うぎぎぎぎ」

メキメキ

委員長の頭から角が巨大化して背中たから黒い翼が生えてきた。

エルフ子「んんんーぶはっ 委員長さん!」

女郎蜘蛛が糸を解くとエルフ子は委員長の元へ駆け寄った。

女郎蜘蛛「ふふ、私は危害を加えないわよ。 私はね」

委員長「ふーふー」

ギロリ

エルフ子「い……委員長さん」

委員長(魔族)「に……げて……わたし……から」

\キュオオオオオオオオ/

委員長は魔族化してしまった。

○狐女の異空間

第七王女「魔王の心臓じゃと!?」

狐女「まぁ心臓と言っても実際はコアとか魔力結晶とかそんな感じ? それを小さく砕いて……」

娘「そんなので魔族や魔王を造れるっていうの?」

狐女「実際みたでしょ、例の狼男はここの生徒だったのよ」

第七王女「なんと、あれは魔族化した生徒じゃたか!?」

狐女「そ、魔族化すると隠された欲望を抑えきれなくなるのよ」

娘「じゃあエルフも委員長も……ぐずぐずしていられないわね」

狐女「そう? でも私の番よ」

※つづく

#10 魔界へGO

狐娘「そうね、あなたたち知りたいことを知るみたいだけど、知りたくないことはなあい?」

第七王女「なぬ? それはどういう意味じゃ?」

狐娘「さぁ、聞いてみましょうか」

\コックリサンコックリサン/

狐娘「この子が本当は知りたくない事」

第七王女「ふむ、妙なことを」

娘「……(まさか)」

コインが動き『ゆ』『う』『し』『ゃ』と示した。

狐娘「ふぅん、ゆうしゃについてね……」

第七王女「これは奇妙な、わらわは二代目勇者ゆえに先代の事を調べておるというのに」

狐娘「ふぅん、本当に?」

第七王女「あ、あたりまえじゃ……、勇者の末裔として知る義務がある」

狐娘「ふふふ」

第七王女「なんじゃ……」

娘「次は私の番よ、準備して」

狐娘「とりあえずそういうことで」

第七王女「うむ……」

\コックリサンコックリサン/

娘「魔界への行き方は?」

コインが動いて『あ』『か』『ず』と示した。

狐女「魔界へ行くには開かずの扉で――」

娘「開かずの扉で?」

そこで狐女は答えるのをためらう。

第七王女「どうしたのじゃ?」

狐女「ね、ねぇ。これはやめて、別の事にしない? これは後でもいいでしょ」

第七王女「どうしたんじゃ?」

娘「そう……、じゃあ次は二つ答えてもらうけどいい?」

狐女「ええいいわよ」

娘「あなた友達いなかったでしょ」

狐女「ッ!? な、なにを……」ワナワナ

娘「それと、寂しがり屋なんでしょ」

狐女「そんなことは……」

娘「はい、コックリサンコックリサン。このコは友達のいなかった寂しがり屋の……」

コインが動き出し――

狐女「ダメ―ッ!! 今日はおしまいッ!」

○女子トイレ

ドサッ

娘たちはもとの女子トイレへ投げ出された。

娘友「うおう、何があったの」

娘「図星だったみたいね……」

第七王女「幽霊のコケンにかかわるといったことかの……」

ヒラリ

娘が落ちて来た折り紙を拾いあげる。

娘「そして素直じゃないっていうね……」

折り紙には『またきてね』と書かれていた。

娘「でも困ったわね、開かずの扉について聞けなかったわね」

娘友「噂を調べなおそうか」

娘「うーん早く魔界に行かないと、でも他に方法は……」

第七王女「ふむ、わらわに心当たりがあるのじゃが」

娘「ホント!?」

○夕方・開かずの扉前

娘「どうやってあけるの」

第七王女「案ずるな」

ガラガラガラガラ

風紀委員「王女もってきたわよ」

娘友「なにこれ」

風紀委員は洗濯機を台車に乗せて運んできた、なにやらスクロールが貼るられている。

ガタガタ

\うおお出せ―/

娘友「マジ」

第七王女「うむ、昨夜の作戦で狼男捕まえたのじゃ」

\パンツ―/

娘「で、こいつが開けかたを知ってると」

第七王女「左様、おそらく魔界からやってきてるだろうて」

かち……グオングオングオン

洗濯機が動き出す。

\ぎょわああああああ/

第七王女「お主、この扉の開け方を教えるがよい」

\うおおお ウオォオオオン/

ゴォン

狼男が遠吠えすると扉が開き光の渦があらわれた。

娘「これが門ね」

第七王女「いざ魔界じゃ」

※つづく

#11 ハレンチアカデミー

○魔界校舎・開かずの扉前

第七王女「ここが魔界か?」

娘「たしか旧校舎を引き込んでるっていってわよね」

娘友「そのわりには作りはもとの校舎とよく似てるわね」

赤黒い開かずの扉が閉まり光の渦が消えた。

\あおおおーん/

ダダダダ

洗濯器の封印を狼男が破って逃げていく。

第七王女「おのれ逃げおった!」

娘「もう用はないわ、それよりエルフを……」

娘は少年エルフ探知機を取り出すとスイッチを入れる。

ピコ―ンピコ―ン

娘「あっちよ」

娘友「それまだ持ってたんだ」

○魔界校舎・廊下

エルフ子「はぁはぁ……、委員長さん……どうしよう」

蛙男「ゲロゲロ 女子だ!」

蜥蜴男「カワイイヤッター」

制服を着た蛙男と蜥蜴男が襲い掛かって来た。

エルフ子「うわああ!? 離して”風弾”」

ビュオオオ

「「ぐげげー」」

ビリビリビリ

掴まれていた制服が破れる。

エルフ子「うわああ服が!?」

蛇男「うおお つるぺたー!」

エルフ子「ひい!? ”旋風”」

「ぐわー」

風でウィッグが外れて少年エルフの耳があらわになる。

兎女子「長耳! 萌え―ッ!」

あちこちから魔族化した生徒があらわれ半裸の少年エルフに襲い掛かる。

少年エルフ「”竜巻”」

ギュゴオオオオオオ

\アレー/ \ぐわー/ \ひいいい/

少年エルフ「ハァハァ、どこかに隠れないと」

少年エルフは人気の無い教室へ入っていく。

○魔界学校・家庭科教室

ガラガラ

少年エルフ「ここなら……、何か着る物は」

パンツ姿の少年エルフは着るものを探す。

ガタン

少年エルフ「ひ!? 誰?」

男子「うぅ」

暗い教室の隅に男子がうずくまっていた。

少年エルフ「男子君? よかった無事だった? 怪我は?」

男子「エルフさん? ……パンツ? 女子?」カアア

少年エルフ「え? いやこれはその、ちょっとそこで狼男が」

男子「おお……」

少年エルフ「お? おなか痛い?」

――男子、お腹痛いの?

男子の中で微かに残る母親の記憶がフラッシュバックして――

男子「おかあさーん!」

ガバァ

少年エルフ「うわぁ!? 男子君」

男子は錯乱して少年エルフに襲い掛かった。

ガラッ

娘「誰がアンタのおかあさんだ ゴルァ!」

ゲシッ

少年エルフ「娘!」

突如現れた娘はそのまま男子にケリを見舞う。

娘「エルフは」

ゲシッ

娘「あたしの」

ゲシッ

娘「パパよ」

ゲシッ

少年エルフ「娘、そろそろやめてあげて」

娘友「うーわーひどいことになってるわね」

第七王女「ぬぅ、娘そろそろ堪忍してやらんか?」

娘「まったく」

男子「ぐぐぐ……、ぐがぁあ!?」

ボボン!?

娘「これは!?」

第七王女「男子が狼男に!?」

男子は狼男になってしまった。

\うおおおおーん/

男子(狼)「娘ーっ!」

男子は娘に向かって突進する。

娘「大人しくしなさい! ”雷撃”」

ガラガラガッシャーン

男子(狼)「ぐおおお」

少年エルフ「ああ!? 男子君」

男子は雷に吹き飛ばされるがすぐに起き上がった。

第七王女「うおう!? あれに耐えれるとは」

娘「もう! 手加減なしよ”重雷撃”」

ガガッガッシャーン

男子(狼)「ぐおおおお」

男子は雷に吹き飛ばされるがすぐに起き上がった。

娘「ウソぉ!? きゃああ」

娘は男子に押し倒された。

娘「いいかげんにしなさい男子ッ!」

男子(狼)「うお? うおおおおおぉおん」

娘「男子っ!?」

娘は男子を叱りつけるが効かない。

娘「この、言っても聞かないなんて…… ”帯電”」

バリバリバリバリ

男子(狼)「ぐぐぐぐ」

男子は電撃に耐えながら娘を押さえつけようとする。

娘「く……、無駄にタフなんだから」

男子(狼)「娘ぇー!」

ビリビリ

男子が娘の制服を掴み引きちぎる。

娘「な!? このバカ」

バチバチバチ

娘は電圧を上げる。

少年エルフ「娘! 男子君!」

娘「はやく気絶しなさいよ……」

男子(狼)「ガキ扱い……、するな!」

ビリビリ

再び娘の制服が破られた。

娘「男子っ!」カアア

第七王女「男子やめんか! 静まらんか!」

少年エルフ「駄目だ、正気を失ってる」

娘友「娘もチャノマもヤバいわよ! どうする」

第七王女「しかしあれでは近寄れん」

バチバチバチ

娘の電撃をものともせずに男子は娘に襲い掛かっている。

少年エルフ「男子君やめて、ケンカしないで」

男子(狼)「ぐ」

男子の動きが一瞬とまったがすぐに娘と格闘しはじめる。

第七王女「む、一瞬とまったのう」

娘友「ふーむ、もしかするとうまくいくかな?」

少年エルフ「なにか方法ある?」

娘友「そおねー、ギリギリOKかな?」

ボソボソ

少年エルフ「ええ!?」



バチバチバチ

男子(狼)「ぐおおおお」

娘「魔力が……くぅ」

少年エルフ「こらー男子君やめなさい」

男子(狼)「ぐ……」

男子の手が止まった。

娘「?……、エルフ?」

少年エルフ「えっと……、ケンカやめないとご飯抜きだぞ」カアア

少年エルフが下着の上にエプロンを付けて母親っぽく(?)叱りつけた。

男子(狼)「お……」

娘友「エルフさんの裸エプロンママよ、さぁどうよ!」

少年エルフ「無理だよハズカシイ」カアア

第七王女「オトコじゃろう、何を恥ずかしがる?」

少年エルフ「だって……、なんでこんな格好ばかり」カアア

娘「エルフのパンツエプロン……(イイ)」

男子(狼)「お、おかあさーん」

ドドド

男子は少年エルフへ向かって突進した。

第七王女「成功じゃ!」

少年エルフ「うわあ!? でもこの後どうするの!?」

娘友「あ」

\うわあああ/ \きゃああ/ \ひょおおお/

バタバタバタ

男子は少年エルフを担いで走りさった。

男子は少年エルフを担いで走りさった。

娘友「とくに考えてなかったわ、テヘペロ」

第七王女「じゃったな」

娘「追わないと……、今の男子が何するかわからないわ」


○魔界学校・体育館

男子(狼)「」

娘「男子!? エルフはどこ?」

娘達は気絶した男子を発見した。

男子(狼)「」

第七王女「ううむ、この状態の男子を倒すとは、一体何者が……」

\ふふふ/

娘友「もしかしてあの飛んでるの……、委員長さん?」

魔族化委員長「ふふふ……、さぁエルフ子さん私のことはお姉様と呼んでください」

少年エルフ「委員長さん……、目を覚ましてぇ」

少年エルフは委員長に捕まっている。

第七王女「委員長までも……」

娘「……すごい魔力」

魔族化委員長「うふふふ……」

※つづく

#12 ミスミストミッシングメモリー

○魔界学校・体育館

ヒュオオオオオオオオオ

ミストドラゴンが冷たい霧を吐き出した。

娘友「さっぶー」ブルブル

第七王女「寒くて動けんのじゃ」ブルブル

娘「”閃熱”」ヒュゴオオオ

娘が魔法を唱えるがミストドラゴンは霧になり効果が無い。

娘「やっかいね……」

娘友「やっぱり操作してる本体をやっつけないと」

第七王女「そうはいってものう……」

娘「委員長を倒すの……」

娘は体育館の球技施設の上に腰掛けた魔族化した委員長を見る、彼女は少年エルフを抱き込んで逃げられないようにしている。

少年エルフ「さ、寒い……」

魔族化委員長「寒いですかエルフ子さん、だったらまた一緒にお風呂にはいりましょね」

少年エルフ「いやそれは……、それよりあの竜を止めて娘たちを攻撃してるんだよ。 目を覚まして」

魔族化委員長「娘……さん」

少年エルフ「そうだよ、王女も友もいるんだよ。 迎えに来てくれたんだよ」

魔族化委員長「王女さん……、友さん……」

少年エルフ「思い出して……(もう少しで)」

小蜘蛛「……ボソボソ」

少年エルフ「……?(耳に蜘蛛が、しゃべってる!?)」

シュルルル

女郎蜘蛛「ご機嫌いかが委員長」

天井から女郎蜘蛛が下がってきた。

魔族化委員長「あら先生」

女郎蜘蛛「あそこで勝手に体育館を利用してる生徒を止めてくれない? この子は私が見てるから」

シュルシュル

少年エルフ「んんー」

女郎蜘蛛は糸で少年エルフを絡めとった。

魔族化委員長「……そうですね、そういえばさっきもそれを頼まれたような」

女郎蜘蛛「そうよ、貴方の魔法でさっさとかたずけてこの子も仲魔にするんでしょう」

魔族化委員長「そうでした……、では行ってきますね」

フワッ

少年エルフ「んんんー」

女郎蜘蛛「フフ…… いい目の付け所だったわ、でもそれ以上は駄目よ」



第七王女「委員長目を覚ますのじゃ」

娘友「そうよ、操られてるわよ」

魔族化委員長「はて? 何のことでしょう? とにかく止まってください”霧氷”」

ヒュルルルル

氷混じりの霧が吹きつけ娘たちが霜に覆われ凍っていく。

第七王女「ひゃむいいい」

娘友「ひいいい」

娘「貴方、エルフまで巻き込んでるのよいい加減に……」

魔族化委員長「エルフ……エルフ子さん。 寒がってましたし早くお風呂に入れてあげないと一緒に。 フフフ」

娘「なんですって!? 私だって最近一緒にはいってないのに!」

娘友「怒りのポイントそこですか?」

娘「うらや……ケシカランわ、たとえ委員長でも”放電”」

バチバチバチ

娘は電熱で霜を溶かして委員長に飛び掛かる。

娘「”雷撃掌”」

魔族化委員長「あら? すごい嫉妬ね」

娘「エルフは私のパパよ! ハァッ!」

娘は電撃を帯びた掌底を委員長に繰り出し、そのまま顔面を掴む。

バチバチバチ

魔族化委員長「きゃあ」

小蜘蛛「!?」ジュ

娘友「決まったわ、娘の電撃クローよ」

第七王女「やったのかの?」

キュオオオオ

娘「何コレ!?」

娘の嫉妬が委員長に吸収され魔力に変換される、委員長は回復した。

娘「これってもしかして」

魔族化委員長「あなたいい加減に止まってくださる?”霧竜波”」

ヒュオオオオ

委員長が生み出した霧竜が娘を飲み込みまとわりつく。

娘「ああっ!」

娘友「娘!」

第七王女「むぅ、わらわももう動けぬ」

娘達は凍えて動けなくなった。



魔族化委員長「片付きましたわ」

女郎蜘蛛「お見事よ、後はまかせなさい」

女郎蜘蛛は少年エルフを委員長に渡すと娘たちのところへ降りていった。

魔族化委員長「ではエルフ子さんお風呂に……」

少年エルフ「んんー」ボロボロ

少年エルフは大粒の涙をこぼしている。

キュオオオ

魔族化委員長「これは悲しみ? ……エルフ子さん?」

少年エルフ「ンンンー」

キュオオオオ

少年エルフの悲しみが委員長に流れ込み魔力へ変換される。

魔族化委員長「……そんなにも」



女郎蜘蛛「流石の勇者様一行も私の魔王には勝てなかったということかしら」

第七王女「……」

娘友「……」

娘「く……」

娘はかろうじて意識を保っているが動けない。第七王女と娘友は気絶しているようだ。

女郎蜘蛛「でも安心して、貴方も魔王になれるかもねコレで」

女郎蜘蛛は邪悪な黒い結晶を取り出すと娘に近づく。

娘「……(コイツが黒幕ね、せめてコイツだけでも)」

女郎蜘蛛「貴方も変わった魔力をもってるようね、どうなるかしら」

ブス……ズズズ

娘「ぐぅ!?」

パアァ……バキン

娘が光り結晶が破壊された。

娘「ハァハァ……」

女郎蜘蛛「そう本物なの ……どうやら貴方はここで退学してもらったほうがよさそうね」

シャキン

女郎蜘蛛が爪を振り上げた。

娘「……(エルフ)」

ヒュオオオオオ ドォン

女郎蜘蛛「なに!?」

ミストドラゴンが女郎蜘蛛を横なぎで吹き飛ばした。

魔族化委員長「……先生、エルフ子さんが悲しむのです」

女郎蜘蛛「ぐっ(操り蜘蛛が) ……再教育が必要なようね」

※つづく

#13 ミスミストミッシングメモリー2

○魔界学校・体育館

娘「うう」

少年エルフは凍えた娘に駆け寄る。

少年エルフ「大丈夫? ”大治癒”」パアア

娘は回復した。

娘「エルフ……、どうやって」

少年エルフ「委員長さんが先生と戦ってるんだよ」

ドシュン バシュン

体育用具とミストドラゴンが攻防の応酬をしている。

少年エルフ「王女と友ちゃんも回復しないと」

少年エルフは第七王女と娘友にも治癒魔法をかけにいった。

娘「委員長……ありがとう」

パアア

娘の右手が光を放つ。

娘「これは!? ……来たわね、剣に!」

娘は光を操り剣を形づくる。



魔族化委員長「く、たかが糸なのに」

ビュン ドドン

あちこちから糸に操られた体育用具が飛んでくる。

バシン

魔族化委員長「ぐぅ!」

女郎蜘蛛「もっと広い視点をもたないと駄目よ、もっとも霧じゃふせぎきれないでしょうけど」

魔族化委員長「うう……」

女郎蜘蛛「さて、もう一度イイコになりなさい」

ツー

女郎蜘蛛の手から小蜘蛛が垂れる。

魔族化委員長「……ぐぅ」

パアア……

委員長をあしあう女郎蜘蛛は娘の光に気づく。

女郎蜘蛛「あれは、まさか!? まだ残っていたのね、これだから人間は」

女郎蜘蛛は糸を天井の鉄骨に伸ばす。

ギギギギ……、メキメキ



娘友「こっちに気づいたわ!」

第七王女「天井を落とす気じゃぞ!?」

娘「……

がしっ

魔族化委員長「娘さん 今です」

女郎蜘蛛「な!?」

委員長が女郎蜘蛛に組み付いた。

少年エルフ「委員長さん!?」

娘「委員長!」

女郎蜘蛛「なに!? 放しなさい」

魔族化委員長「早く、長くはもちません」

娘「……」

少年エルフ「娘、まさか委員長ごと撃つつもり」

娘「……これが最後の一撃なのよ」

娘友「でもそれ魔族特攻よね、委員長さんまで……」

第七王女「しかし委員長の覚悟を無駄にするわけにもいかんのじゃ」

娘「……」

魔族化委員長「エルフ子さん、貴方と友達になれて楽しかったです」

少年エルフ「委員長さん、僕だって」

魔族化委員長「私は魔族返りだし、Aクラスは競争ばっかりだったから…… だからとても楽しかったです」

第七王女「委員長」

魔族化委員長「先生は学校の生徒を魔族化して兵隊にするつもりなんです」

女郎蜘蛛「いつのまちそれを…… ぐぅ」

魔族化委員長「娘さん、私の学校と友達を救ってください」

娘友「娘……」

娘「ありがとう委員長」

ヒィイイイン

娘の光剣がさらに輝く。

娘「えーい!」

キィイイイイイイイイイイイイン

娘の斬撃が光線となり女郎蜘蛛と委員長を撃つ。

女郎蜘蛛「いやあああ」

委員長「……(エルフ子さん)」

パアアアアアアアアアアアア……

辺りが光に包まれる。



娘友「うお眩し」

第七王女「どうなったのじゃ?」

ヒィィン……

光が収まると、元に戻った委員長が倒れている。

娘「委員長!」

少年エルフ「大丈夫、気を失ってるだけみたい」

娘「魔族化も解けたわね、予想通りだわよかった……」

少年エルフ「よかった……」

娘友「予想通りって、あの魔法を誰かに試したことあったの?」

娘「ええ、男子に」

第七王女「なんと」

娘「まぁ、男子がタフだから何ともなかったのかどうかが怪しかったから不安は残ったんだけどね」

娘友「よくもまぁ……、そういえば男子君は?」

男子「ン……、なんだここは?」

男子は狼男から元にもどっている。

少年エルフ「男子君も元に戻ったみたいだね」

男子「エルフさん!? それに娘もなんだその恰好は」カアア

第七王女「む」

少年エルフは半裸エプロンで娘は制服が破れて胸元があらわである。

娘「アンタのせいでしょーが!!」

ゲシ

男子「ゴフ!」



ゴゴゴゴゴゴ

第七王女「なんじゃ!?」

少年エルフ「……この空間は不安定になってる」

娘「あの蜘蛛を倒したから崩壊しかかってるのよ」

娘友「じゃあ脱出しなきゃ」

娘「そうね、男子は委員長さんを運んで。 くれぐれも変な事しないでよ」

男子「しないって……、なんでみんなそんな目でみるんだ」

娘「王女、一応見張ってて」

第七王女「うむ心得た」

ゴゴゴゴ

娘「行くわよ」

少年エルフ「でもどこから?」

娘友「入って来たところよ」

○魔界学校・廊下

ダダダダ

\わー/ \きゃー/ \うほッ/

様々な魔族化した生徒が逃げ出していく。

第七王女「結構のこっていたのじゃな」

娘友「あの子たちはどうするの」

娘「とりあえず脱出してからね」

ダダダダ


○魔界学校・開かずの間

ひゅいんひゅいん

次々と魔族化した生徒が光の渦に飛び込んでいく。

第七王女「はやくするのじゃ」

男子「さすがにこれ以上はきついって」

ガラガラガラ

シュイン

最後の生徒が飛び込むと光の渦は消えてしまった。

少年エルフ「消えちゃったけど」

娘友「あ」

男子「どうした?」

第七王女「そういえば来たときは……」

娘「開けてもらったのだったわね」

ガラガラガラ

少年エルフ「え? じゃあ開けれないの」

娘友「もしくは他に生徒が残っていれば……」

第七王女「いなさそうじゃの」

ガラガラガラ

廊下が端から崩れてくる。

男子「どどど、どうするんだ!?」

娘「どうするたって……」

少年エルフ「こっちは?」

娘「そこは女子トイレよ……トイレ?」

娘友「そうよ! こっち早く!」

男子「まてそこは女子用だろ……、ここで待ってるから」

娘「馬鹿な事いってないで早く!」

ドタドタ

娘は個室のドアをノックする。

娘「コックリサンコックリサン遊びましょーう!!」

\ハーイ カムイ―ン/

※つづく

#14 フレンズ

○一週間後・超魔力学園前

スタスタ

委員長「久々ね……(ようやく学園に戻れた)」

委員長は学園前の道を歩いている、超魔力学園が見えて来る。

委員長「事故があったというけど、元通りね」

スタスタ

委員長「……(私も巻き込まれたっていうけど、覚えてないのよね)」

\あ/ \まって慌てないで/

委員長「……?(姉弟かな? こっちを見てる)」

スタスタ

委員長「どうかされました、学校に御用ですか?」

少年エルフ「あ! あの……」

委員長「はい?」

娘「……貴方はこちらの生徒さん? ちょっと見学に来てて」

委員長「そうでしたか私は委員長といいます。 はじめまして」

娘「……はじめまして、私は娘ですこっちは」

少年エルフ「あの、僕はエルフです……その」

委員長「よろしかったら中を案内しましょうか?」

娘「……いえ、見学は十分したし大丈夫よ、ありがとう」

委員長「そうですか、見学は楽しかったですか?」

少年エルフ「……っ、はい楽しかったです本当に、本当に」ぐすぐす

委員長「あの、どうしたの? どこか体調を悪くしました?」

娘「そうね、ちょっとね……。 だからそろそろ行くわ」

委員長「そうですかお気をつけて」

少年エルフ「あの……委員長さんありがとう。本当にありがとう」

委員長「はい……?」

○学園・廊下

ドタドタ

委員長「……(なんだかやたら浮かれた生徒が多いような)」

掲示板に人だかりができている。

委員長「……(あら校内新聞、『恋愛・進路・どんな相談も解決!トイレの幽霊さん』)」

\これスゴイって/ \ホントにわかるの/

委員長「……(すこし見ない間にずいぶん紙面が変わったわね? なにこれ怪談?)」

よくみると行交う女子生徒が女子トイレに向かっているようだ。

委員長「……みんなこんなのスキね」

○学園・教室

委員長「……(なんだろう何か足りないようなあったような)」

\ぐすぐす……/ \そんなに落ちこまないで/

委員長「……(事故の前となんら変わらないのに)」

女子生徒は手に新聞を持っている。

委員長「……(事故で何が、私……何を?)」

\でも本当の事がわかるって/ \そうだけど/

委員長「なんでも……」

○学園の外・塀沿い

塀を乗り越えて娘友と第七王女があらわれた。

娘友「やれやれちゃんと発行されてたわね」

第七王女「これで幽霊との約束も守れたのじゃ」

娘「おつかれさま、こっちも用事はすんだわ」

娘友と第七王女が制服から着替える。

少年エルフ「うぅ」ぐすぐす

第七王女「大丈夫かエルフ? 別れはつらいのう」

少年エルフ「大丈夫……、ちゃんと元気になってたし」

第七王女「そうかそうか」なでなで

第七王女が少年エルフをあやしている。

娘「それでそっちは? もうひとつ用事があったでしょ」

娘友「ええばっちりよ、巨乳教師の記録。 それでわかった事だけど」

娘「何?」

娘友「あの教師、魔族化した生徒をあちこちに派遣してたらしいの」

娘「どこに?」

娘友「隣の研究所もあるけど、ほとんどは帝都よ」

娘「帝都……、まさか軍がらみじゃ?」

娘友「それはわからないわ、ほら宛名みて」

娘「……『帝都歌劇』? 劇場じゃない」

娘友「そ、わからないでしょ。 単純に役者にしてたのかしら」

娘「うーん、これだけじゃわからないわね」

第七王女「そうなのじゃ、だから実際に行ってみるのじゃ」

娘友「行くって……、そうねここまで来たら行きますか」

娘「そうね」

第七王女「そうじゃ次は帝都じゃ、よし帰ったら準備じゃ」

娘「ほらエルフ大丈夫? 行くわよ」

少年エルフ「うん、もう大丈夫」

○女子トイレ

委員長「……(まさかトイレに入るのに整理券が必要だとは)」

風紀委員が整理券を確認している。

風紀委員「それじゃあ次どうぞ、中に時計がありますから目安にしてください」

委員長「ありがとう……」

コンコンコン

委員長「『コックリサンコックリサン遊びましょう』」

\カムイ―ン/

※超魔力学園編、おわり。

 次回更新は7月15日です。

#15 百合の花咲く頃 ~スタア・イズ・ボンボーン~

○帝都・帝都演劇場

\わーわー/ \ドドーン/

*「監獄に白旗があがったぞ」

兵士達が勝鬨を上げる。

娘「そうか勝ったのかこれで革命がなされる……」

ホビット子「ああ! 目を開けてください娘様!」

貴族の位を捨て民衆と共に戦った娘は力尽き先に戦死した従者が迎えにきていた。

\キャー/ \娘様ー/

観客から感極まった叫びがあがる。

舞台は暗転し緞帳が下りてきた。

○舞台裏

娘「あー~、死に役って慣れないわ」

ホビット子「そんなことは……素晴らしかったです娘ねぇさま」モジモジ

娘「その『ねぇさま』はなくならないの? 私の方が新人でしょ」

猫娘「そうだけどここでは人気が物をいうの、娘は圧倒的ですよう」

娘「それなら先輩たちのほうが実力があるじゃ」

サソリ女「ちゃうちゃう実力やなくて人気や、人気とスター性があればあんたが一番や」

娘「そう、ありがとう」

\はいはいはーい通りますよ/

ドタドタドタ

娘友「一躍トップスターになった娘さん今のお気持ちは?」パシャパシャ

猫娘「勝手に写真は困りますう困りますう」

少年エルフ「娘ーかっこよかったよー」

第七王女「いいのう、わらわも出たいのじゃ」

娘「時代劇があれば王女もチャンスがあるかもね」

犬娘「まったく君たちときたら一カ月もかからずにこんなにも……」

ジリリリリリン! ジリリリリリン!

犬娘「む!? 警報だ、総員出撃準備!」

○帝都・東区教会

ドドーン ガシャーン

双頭熊男「グオオオオ」

双頭のウェアベアが教会を破壊している。

帝国兵「むちゃくちゃだ距離をとれ」

帝国兵は魔法や石弓で応戦するも効果がない。

ガラガラガラ

帝国兵「くそ一体どうすれば」

ギュルルルルル

魔導鎧(犬娘)「居たぞ一気に片づける」

双頭熊男「ぐま!?」

犬娘は魔導鎧の車輪をさらに加速させて大剣を構えて突撃する。

ジャキン

双頭熊男「グギャオオオ」

魔導鎧(猫娘)「もっらいー」

とどめを刺そうと猫娘が突撃する。

双頭熊男「グオオ」スボオオ

ブンッ!

魔導鎧(猫娘)「きゃあああ」

急速に再生した腕に猫娘は捕まってしまった。

魔導鎧(犬娘)「猫!」

ザシュッ

魔導鎧(娘)「気を付けて! 見た目以上に魔力もおかしいわよコイツ」

娘が猫娘をとらえている腕を切断するも見る見るうちに再生していく。

魔導鎧(猫娘)「うえー気持ちわるーい」

魔導鎧(犬娘)「首を両方、一気に落とすんだ!」

魔導鎧(娘)「わかったわ」

娘と犬娘が同時に切りかかった。

○帝都歌劇・宿舎

娘友「というわけで、魔王の手掛かりを追ってやってきた帝都歌劇団は昼は演劇、夜は帝都を荒らす怪人を倒す謎の魔導鎧兵団だったのです」

少年エルフ「どうしたの友ちゃん?」

娘「エルフ、気にしないでたまにそうなるのよ」

女兵士「怪人かーあたしもみてみたかった」

男子「俺もだ」

娘「やめた方がいいわ、今までの魔族や獣人とはずいぶん違うわ」

第七王女「魔王のなにかしらが関与しておるのかのう」

白竜(人型)「さてどうかしら」

コンコン

少年エルフ「あれ? はーいどちらさま?」

ガチャ

ホビット子「あ、エルフさんこんにちわ」

少年エルフ「ホビットさん、娘に用?」

ホビット子「ええ、今後の予定をお知らせに」

ホビット子は今後の稽古スケジュールを伝えた。

娘「じゃあ明後日までは休みね」

ホビット子「はい」

女兵士「やったー、観光いこー」

第七王女「そうじゃ! こっちにきてから働きどおしじゃ遊ぶのじゃ」

娘「仕方ないわね皆でいく?」

男子「俺はやめ……」娘「あんたは荷物持ちよ」

\グワー/

それぞれが観光に浮足立つ。

ホビット子「あ、あの……ボクも行っていいですか?」

#16 群衆

ホビット子「では、いってきます」

団長「気をつけろよ」

ホビット子は娘達と買い物へ出かけた。

○数時間後 大通り

男子「ぐおお」

男子は大量の荷物をもっている。

女兵士「これおいしー」パクパク

第七王女「よし次はあの店じゃ」

第七王女は男子と女兵士を引き連れて次の店へ行った。

娘「暑いわね、大丈夫? ここで休もうか」

少年エルフ「うん」

ホビット子「はい」

娘達は喫茶店のテラス席で休憩することにした。

○噴水広間・喫茶店のテラス席

娘「王女たちはしばらく出てこなそうね」

少年エルフ「暑くなってきたし衣替えしなきゃいけないしね」

ホビット子「皆さんにぎやかですね、いつもこうなのですか?」

娘「だいたいこうなるわね」

ホビット子「フフフ 今日は大勢で楽しいです」

少年エルフ「他の団員の人と買い物に来ないの?」

ホビット子「そうですね、犬ねえさまやサソリねえさまは出不精ですし……」

娘「猫娘は結構買い物好きそうだけど」

ホビット子「猫ねえさまは夜型の方なので休みの昼は寝てることが多いです」

少年エルフ「そうなんだ、白竜みたいだね」

娘「あれは紫外線を気にしてるのよ」

○帝都劇場・宿舎

白竜(人型)「ふあぁ……お土産まだー」

○噴水広間・喫茶店のテラス席

少年エルフ「ホビットは劇団入ってどれくらいなの?」

ホビット子「そうですね、3年くらいですね」

娘「けっこう長いのね」

少年エルフ「あの怪人と戦うのもそんなに前から?」

ホビット子「いえ、僕はまだ作戦には出てないんです」

少年エルフ「あ、ごめんそんなつもりじゃ」

娘「でもあの怪人は何なの? 普通の魔物や魔族返りじゃないわよね」

ホビット子「そうなのですか?」

少年エルフ「魔族じゃないの?」

娘「そういうわかりやすいものじゃなくて…… なんていうか複雑に歪んでいるような、エルフも直に見たら何か気づくでしょうけど」

少年エルフ「僕も作戦には出れそうにないよ」

娘友「そうねーあの魔導鎧はサイズ的に無理かな、主に身長が」

少年エルフ「はうっ」

娘「ちょっと友」

娘友があらわれた。

娘友「ごめんごめん、アタシもここで休ませて。 王女が長考に入ったから」

娘「王女ってそんなに悩む方だったっけ?」

娘友「むしろ男子君が、かな」

娘「ああ」

少年エルフ「うう、身長…… 着れない」

ホビット子「大丈夫ですかエルフ? 僕も鎧は着れませんから」

少年エルフ「そっか、そうだよね着れなくても普通だよね」

ホビット子「そうですよ」

少年エルフはホビット子と固い握手を交わす。

娘友「麗しい友情ね」

娘「……(カワイイ)」

少年エルフ「でもあの鎧ってそんなにすごいの?」

娘「そうね魔力を力に変えてくれるし、怪人の力に対抗するには必要ね」

娘友「でも正直魔法でどうにかなるんでしょ?」

娘「なるわよ、でも市街地では私の魔法は不向きよ」

娘友「なるほどねぇ、でもあの鎧を帝国兵が着ればいいだけじゃないの?」

ホビット子「実はあの鎧はまだ試験段階なんです」

少年エルフ「そうなんだ」

娘友「ねぇねぇ正直あの劇団って帝国軍と関係あるの? こう裏の秘密部隊とかなんやらかんやら」

ホビット子「ないことはないというか、劇団のスポンサーに大手魔導具メーカーが協賛してますから」

娘「なるほどね」

少年エルフ「どういうこと?」

娘「魔導鎧を実用化されたら帝国軍に売り込むつもりなのね」

ホビット子「そうです、サソリねえさまも団長ももともとそちらの会社の方なのです」

娘「ふうん、いろいろシガラミがありそうね」



男子「こんなとこに居た」

男子が荷物満載であらわれた。

娘「あら男子」

男子「俺はもう戻るぞ、もう持てない」

娘「王女と女兵士は?」

男子「また何か食べにいった…… 先に戻ったって伝えてくれるか?」

娘「わかったわ」

男子「頼んだ」

男子は宿舎へ戻っていった。



娘「そろそろ王女達と合流する?」

娘友「そうね」

ホビット子「まってくださいエルフはこっちへ」ぐいぐい

少年エルフ「なになに?」

娘「どうしたの?」

ホビット子は少年エルフを植え込みの陰へ引っ張る。

ガヤガヤ

大勢の人が通りを歩いてきた、手にはプラカードと百合の花を持っている。

\亜人はでていけー/ \皇帝陛下ばんざーい/ \議会はひっこめー/

娘友「なにあれ?」

ホビット子「あれは排他主義のデモです」

少年エルフ「排他主義?」

娘「人間以外の種族は帝都から追い出すっていう考え方ね」

少年エルフ「ヒドイ、じゃあ僕たち見つかったらどうなるの?」

娘友「よくは思われないでしょうね」

少年エルフ「ええ…… 帝都ってそういう国なの?」

ホビット子「もともと帝国は他種族混在が成り立ちです、なのに皇帝が亜人排他法を唱えだしてからこんな事に……」

少年エルフ「そんな法があるの?」

ホビット子「まだありません、議会が反対をしているので」

娘友「でも中には皇帝側の人もいると……」

少年エルフ「百合の花はなぜ持っているの?」

ホビット子「百合は皇帝の紋章になってます、皇帝支持のシンボルですね」

少年エルフ「そうなんだ、じゃああっちからのは?」

ガヤガヤ

\排他法撤回/ \自由の侵害だ/

ホビット子「あっちは議会派のデモですね」

娘友「よくみるとドワーフ族や獣人さんがいっぱいいるね」

ホビット子「最近ではそれ以外にも魔族返りの人もいるので」

娘友「て、まずくない?」



広場では皇帝派と議会派の集団がにらみ合うことになった。

\わーわー/ \ぎゃーぎゃ―/

少年エルフ「うう、うるさい」

娘「これじゃあそのうち乱闘になるわ」

娘友「ていうか始まってる、ほらあそこ」

\ひいい/

もみ合いが始まっている。

ホビット子「このままじゃけが人が……」

娘「ホビット……」

少年エルフ「うーんだったら……”二の口”」シュイン

少年エルフは魔法石を取り出して魔法をかけた。

娘「いつの間にそんな物を?」

少年エルフ「魔法学校でちょっとね。 娘、これを噴水まで投げれる?」

娘「わかったわ」

ヒュン…… ボチャン

娘が投げた魔法石は噴水の中へ沈んだ。

娘「OKよ」

少年エルフ「わかった、えっと……」ゴニョゴニョ



沈んだ魔法石「”水流”」

ビシ バキャ ブシァーッ

噴水から水が垂直に吹き出し、広場に土砂降りとなって振って来た。

バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ

\ひゃー/ \雨だ―/ \中止中止ー/

デモ隊は散り散りに分かれていった。



少年エルフ「うまくいったかな」

娘「すごいわエルフ」

ホビット子「エルフすごい」

娘友「あれなら噴水の故障って事でバレないかな」

神官「そうでしょうお見事でしたエルフさん」

パチパチパチ

少年エルフ「え」

娘「アンタ」

娘友「あらまいつぞやのオカッパ」

ホビット子「誰です?」

神官「お久しぶりですエルフさん、そちらは初めてですねどうも神官と申します」

神官は背後の席でワインを飲んでいた。

※つづく

#17 ラストダンス・オン・ステージ

少年エルフ「わぁ神官さん久しぶり、港で分かれて以来だっけ」

神官「そうですね勇者祭り以来ですね」

娘友「なんで魔王温泉で始めてあった酒好き女好き行き過ぎて破門されたうさんくさい聖職者がなぜここに居るの?」

神官「うさんくさいって……」

娘「なんでそんな説明口調なの」

娘友「なぜかしらね」

神官「エルフさんその様子だと私の勧誘で来たわけじゃなさそうですね」

少年エルフ「え? それって」

娘「なによ勧誘って」ズイ

神官「おおう、そんな睨まないでください怒ってもお奇麗ですが」

娘「御託はいいから、エルフに何を言ったの」


神官「それはないしょ……」

シャキン…… パラパラ

神官の前髪が娘に切られて落ちる。

娘「……」ゴゴゴゴゴ

神官「では…… せっかくなのでご案内しますよ」

少年エルフ「え?」

○教団本部

*「教祖様お告げを」

薄暗い祭壇の周囲で何人もの獣人がローブを目深にかぶった人物と儀式らしきものを行っている。

教祖「うむ、わたしはビジョンをみることができる……あまりはっきりとはみえないが」

にょろりにょろにょろ

教祖様とよばれたローブの人物が妙な動きで踊る。

教祖「むむ、みえたぞ! 今そこよりわれらの星がきたる」

\どよどよ/

教祖は仰々しく扉を指し示すとそれはゆっくりと開いた。

ガチャ



神官「ここがここが以前お話した団体で、教団と呼ばれています」

扉を開けて神官に案内されてきた少年エルフ達が入って来た。

娘「異種族、魔族返りの互助組織ねぇ……」

少年エルフ「おおきな建物だね、エルフ族もいるの?」

神官「残念ながらそれはまだ……」

娘友「なんだか薄暗くて怪しさ満点ね」

神官「なにしろ古い倉庫を改築してますのでそこは御容赦ください」

教祖「おお神官よ戻ったか、この者たちは新しい同志か?」

神官「いえそれはまだ……とりあえず見学につれてきました」

教祖「そうかそうか、そちらの二人はホビット族とお見受けしたが?」

少年エルフ「ええと(本当はエルフ族だけど)……そうです」

教祖「私がここの代表で教祖と申します、お名前を伺ってもよろしいか」

少年エルフ「はい僕はエルフで、この子はホビット子です」

ホビット子「こんにちわ」

教祖「ほう……エルフ殿にホビット子殿と、ほうほう」シュルシュル

教祖は少年エルフ達をよく見ようと首をのばしてきた、教祖の頭は蛇だった。

ホビット子「ひゃ!?」

娘友「ヘビ!?」

教祖「おっと失礼、お嬢さんは蛇顔は苦手ですかな」シュルシュル

教祖は首を戻していく。

ホビット子「いえそんな…… ごめんなさい」

教祖「いえいえ若い女性では致し方ないこと、そちらの女性もお気を悪くしたら申し訳ない」

娘「私は大丈夫よ」

娘友「蛇人とは珍しいわ、ここでは何を?」

教祖「今のわれわれの活動はこの帝都から種族差別を根絶するために働いております」

娘友「何かの新興宗教じゃないの?」

教祖「確かに私が僭越ながらも教祖となっておりますが、たいした事はしておりません」

神官「教祖は以前、小さな神殿のカンヌシをやってたのですよ」

娘友「カンヌシ…… 異国の聖職者だったのね」

教祖「はい、しかし今では皇帝陛下の排他的政策に抗議するためにこの場所と人手を提供しているしだいです」

娘「ふぅん(ウソは言ってないようだけど)」

少年エルフ「立派な活動をしてるんですね」

教祖「いやなに、エルフ君、ホビット子君、困った事があれば何でも相談してくれたまえ」

少年エルフ「はい、ありがとうございます」

ホビット子「はい……」

○帝都劇場・宿舎

第七王女「まるでロックロック首じゃな」

少年エルフ「ろっくろ……何?」

娘友「東方の首の長ーいフェアリーのことよ」

第七王女「左様、夜中に首がのびてランプの油をなめたりするのじゃ」

少年エルフ「やだコワイ」

娘「妙なフェアリーが居るのね、まぁあの人は蛇人だったわけだけど」

第七王女「わらわも見てみたかったのう」

男子「あれ以上どこにも寄れませんよ」

少年エルフ「そうだ、ホタテ男さんも元気そうだったよ」

男子「ああ、港の時の」

\わいわい/

ホビット子「あの団長から次の公演の予定が決まったって、コレ」

ホビット子が台本を持ってきた。

娘「へぇ……ファミリー向けなんだ」

ホビット子「夏季休暇中ですから」

少年エルフ「娘、次はどんな役するの?」

娘「これは…… フフ、私じゃないわ。 エルフが主役よ」

少年エルフ「え?」

○帝都劇場・『お菓子の家』

サソリ女「かまどの具合を見とくれ」

少年エルフ「かまど具合? どうやって見るのか見本をみせて」

サソリ女「知らないのかい!? こうやって中をのぞき込んで……」

サソリ女はかまどの中をのぞき込む。

ドン! バタン!

少年エルフはサソリ女をかまどの中へ押し込むと扉を閉めてしまった。

\こらー開けろ あちー!?/

サソリ女はとうとうボイルロブスターになってしまいました。

少年エルフはホビット子を助けだすと宝物をもって家へとかえったのでした。

めでたしめでたし。

\パチパチパチ/

○舞台裏

サソリ女「って、あたしゃエビじゃない! ロブスターになるかいな」

団長「はっはっはっ……、まあエビの魔女だったということでここはひとつ」

サソリ女「森にエビの魔女が居てたまるかい」

バシィン

サソリ女が団長にツッコミを入れている。

猫娘「バターになるよりかマシだと思うけどねー」

猫娘はひとつ前の劇でバターになったところだった。

娘「子供向けの話ってたまにワケわからないわね」

娘友「だが、そこがいい」キリッ

ホビット子「エルフ、今回は主役お疲れ様です」

少年エルフ「ありがと、初めてだったけどちゃんと出来たかな」

ホビット子「ええとっても」

少年エルフ「よかった」

ジリリリリリン! ジリリリリリン!

犬娘「と、話の途中で済まないが警報だ総員出撃準備!」

ドタドタ

ホビット子「やっと初出撃です、がんばりましょう」

少年エルフ「うん」

○倉庫街

水路沿いの倉庫街で巨大な影が飛び交っている。

蛾男「モスモスモス……」

無数のモスマンが周囲を飛び交い、倉庫の物資を強奪しようとしている。

魔導鎧(猫娘)「このドロボウネコめ」

ザシュッ

魔導鎧(娘)「貴方がそれ言う」

蛾男達「モスモス……」バタバタ

魔導鎧(犬娘)「エルフ、ホビット子そっちにいった頼むぞ」

複座式魔導鎧(エルフ・ホビット子)「「はい」」

シャコン シャコン

少年エルフとホビット子は複座式魔導鎧で出撃していた、背部の射出口が開く。

ボボボボシュシュン ドンドンドン!

蛾男A「ボボッ」

蛾男B「ボーボッ」

蛾男C「ボーボボッ」

無数の誘導魔導弾が蛾男たちを撃墜する。

魔導鎧(猫娘)「新型の鎧すごいねー」

魔導鎧(娘)「アレも鎧でいいの? もはや歩行戦車じゃない」

○複座式魔導鎧の中

ホビット子「全弾命中、すごいです」

少年エルフ「まぁこれぐらいなら、ゴメンね操縦ほとんどまかせて」

ホビット子「こういうための複座式です気にしないでください」

少年エルフ「ありがと……まって後ろに何かいない?」

ホビット子「え? 探知機に反応はありませんが……」

○倉庫街

シュルルル

複座式魔導鎧の足に何かが巻き付いて引っ張ってきた。

ガシャン! ズルルルルル

複座式魔導鎧(エルフ・ホビット子)「「うわあああああ」」

ザッバーン

複座式魔導鎧は何かの力で水路に引きずり込まれてしまった。

魔導鎧(猫娘)「新手!?」

魔導鎧(娘)「エルフ! ホビット!」

魔導鎧(犬娘)「まて娘君、魔導鎧は水中では動かせん」

魔導鎧(娘)「だったら」

バシュッ

娘は魔導鎧を脱ぎ捨てた。

娘「エルフーッ!」

ザバーン

娘は少年エルフ達を追って水路へ飛び込んだ。

※つづく

#18 スネークスネーク

○帝都劇場

団長「団員がさらわれた!? そんなバカな!」

猫娘「犬が今探してるけど、早く応援を」

団長「ダメだ、全員待機。 犬娘も呼び戻すんだ」

\\ええ!?//

第七王女「なぜじゃ!? 早く助けにいかねば」

団長「こんなことは本来ありえないんだ……、いいか全員待機だぞ」

バタン

団長は自室に戻ってしまった。

男子「何がどうなってるんだ?」

娘友「何かウラがありそうね」

第七王女「とはいってもこのまま待つのは出来んのじゃ」

男子「しかし全員待機って」

第七王女「うむ、現場で待機するのじゃ」

娘友「じゃあアタシは団長さんを探るから」

第七王女「うむ、頼んだのじゃ」

男子「じゃあ俺も……」

第七王女「男子は残るのじゃ、友と一緒に団長に対応しておくれ」

男子「むぅ、わかった」

第七王女「猫娘よ、案内を」

猫娘「いいけど、魔導鎧なしでついてこれる?」

第七王女「むろんじゃ、のう白竜」

白竜(人型)「んー仕方ないわね」

○???

*「……アザは見つかりません」

???「……よい、直に問いただす」

少年エルフ「……うん?」

教祖「お目覚めですか皇子」

少年エルフ「教祖さん? ……うわぁ!? なにこれ?」

ジャラジャラ

少年エルフはパンツ一丁で鎖で壁に両手をつながれている。

教祖「少々我慢していただけますか? 確認したいことがございますので」

ホビット子「エルフ!」

少年エルフ「ホビット子さん!?」

ホビット子は信者に掴まれている。

教祖「ご安心を、こうみえてもフェミニストなので彼女にはまだ何もしておりませんよ」

ホビット子「やめなさい教祖、こんなことしてるなんて団長が知ったら」

教祖「お静かにお願いします」

ホビット子「もがっ」

ホビット子は信者に口をふさがれた。

少年エルフ「教祖さん……貴方が僕たちを水路に」

教祖「まぁ細かいことはいいじゃありませんか皇子」

少年エルフ「……何で僕をオウジって呼ぶの?」

教祖「ほう…… もっと聡明な方と思ってましたが。 念のために確認しましょう」

ホビット子「……」

少年エルフ「?」

教祖「貴方が皇帝の弟君、第二皇子ですね」

少年エルフ「へ?」

○帝都劇場・団長の部屋の前

\協定違反だぞ……何ィ!/

団長の部屋からは怒声が聞こえる。

\団員には手を出さないはずだろう!/

娘友「どうやら電話で話してるみたいね」

\何を勝手な……、上に報告させてもらうからな/

男子「一体誰と?」

\何!? 本気か/

娘友「どうかしら……」

\寄せ集めの分際で何が出来る…… くそ!/

ガチャン

娘友「決裂したみたいね」

〇教団本部・地下

教祖「ビジョンで判っています、第二皇子はホビット族の先祖返りであると……ゆえに皇帝からその存在を抹消された」

少年エルフ「え? え!?」

教祖「なるほど歌劇団に所属しただけに演技はお手の物と見える」

少年エルフ「いやあの多分人違いじゃ……」

教祖「我々には大儀が必要なのです、皇帝を倒し貴方を新たな皇帝として獣人、魔族返りの世を創るのです」

少年エルフ「あの、ちょっと話がよくわからないんだけど……」

教祖「コレを見ればお判りいただけるでしょう」

少年エルフ「……(うわーこっちの話きいてない)」

パチン

照明がつくと首のない巨人の体のような物が照らされた。

少年エルフ「うわぁ!?」

教祖「これぞ魔王アーマー、伝説の魔王の体と魔導鎧、そして合体進化の秘法で作り上げた最高傑作……、そしてあなたの玉座です」

少年エルフ「な、なにこれ気持ち悪い!?」

教祖「協力していただけませんか? これなら宮殿を破壊しつくのも容易い」

少年エルフ「やだっ! 絶対呪われてるよコレ」

教祖「解ってしまわれたか、確かに並みの魔力では次ぐに吸い殺されます……なので貴方です。 皇族の巨大な魔力が必要です。 なに少しコレに乗って宮殿と皇帝を壊していただけたらそれで十分ですよ」

少年エルフ「……皇帝ってよく知らないけど、そんなのダメ」

教祖「ふぅむ、皇子は皇帝を恨んでおいてと思ってましたが違うようですね」

少年エルフ「恨むって……、第一僕は王子じゃないって」

教祖「仕方ありませんね、ほんの少し手荒になりますが」

教祖はローブから手を出し少年エルフの顔に向ける、しかしよく見るとそれは蛇だった。

少年エルフ「ヘビ!?」

教祖「生憎、頭ばかりなので」

教祖は多頭蛇人だった。

右腕蛇「シャーッ」

左腕蛇「チロチロ」

両腕の蛇は舌を出し入れしながら少年エルフに違づく。

少年エルフ「ひぃ……何を」

教祖「ご安心を傷つける事はいたしませんよ」

○帝都劇場・団長の部屋

団長「……バカな」

ガチャッ

娘友「失礼しゃーっす」

団長「なんだお前たち勝手に……」

娘友「夏休み人生相談室ですよー」

男子「おいおい」

娘友「で? どうういことか説明してもらえる」

団長「お前たちには、関係ない」

娘友「大ありだって娘もエルフさんも巻き込まれたのよ」

男子「そうだ、団長何かしっているのか?」

団長「……おそらくホビット君に巻き込まれたのだ」

○教団本部・地下

少年エルフ「ひゃははははは! やめてぇえええ」

ペロペロペロペロペロペロペロペロ……

教祖の両手の蛇が少年エルフの脇の下を舐めあげている。

教祖「ではご賛同いただけますか?」

少年エルフ「それはだめ、だめぇええええ……あははははは」

ペロペロペロペロペロペロペロペロ……

少年エルフ「お願いぃいホントにやめてぇ……」

教祖「だったらご協力していただかないと皇子」

ペロペロペロペロペロペロペロペロ……

少年エルフ「だから王子じゃないってぇえええ、ホント無理ぃいいい」

ペロペロペロペロペロペロペロペロ……

少年エルフ「ひぃいい、ひゃははは、ぁあああああっ!」

教祖「なかなか強情ですね(……このまま洗脳プログラムを)」

ガタン!

信者「ぎゃあ!?」

ホビット子が掴まえていた信者を投げ飛ばした。

ホビット子「もうやめろ! 教祖さん」

教祖「おや? お嬢さんヤンチャは困りますよ」

ホビット子「違う、見よ」

バサッ

ホビット子は上着を脱ぎ捨て、カツラも投げ捨てた。

教祖「む!?」

少年エルフ「ひょびっと……?」

ホビット子「私がお探しの第二皇子だ」

ホビット子は第二皇子だった。

教祖「その百合の形のアザ、まさしく…… まさか女装までしていたとは」

第二皇子(ホビット子)「あなたの言う通りにしよう…… だから彼は放してくれ」

教祖「なるほど、やはり聡明な方だ」

第二皇子「エルフ、すまなかった」

少年エルフ「ホビット……」

※つづく

#19 出撃! 魔王アーマー

〇倉庫街

第七王女「どうじゃ、何かあったかの」

ざばっ

水路から白竜の首から上があらわれた。

白竜「何も沈んでないわよ」

犬娘「でも確かに水路に」

闇夜を飛んできた白竜は第七王女達を降ろすとそのまま水路の調査を行っていた。

白竜「水路からの地下水路に何か引きずった跡があったわ」

第七王女「それじゃな、何者かがエルフとホビットを鎧ごと引きずっていったのじゃな」

犬娘「そんなあんな重量を」

第七王女「娘も後を追って水路にはいったのじゃろうか」

白竜「そうかも、魔力痕が何種類かあるみたい」

第七王女「そのまま水路に入っていけぬか?」

白竜「無理ー、狭すぎるわ」

第七王女「水路はどこから来ておるんじゃ」

犬娘「うーん…… おそらく旧市街からの地下水路じゃないかな」

第七王女「ふむそこに怪人の秘密基地があるということじゃな」

猫娘「かなー?」

パシャ

女兵士「うわー、ここだけ写真とったらと帝国水路のUMA発見て見出しになるね」

女兵士が娘友から借りたカメラで写真をとっている。

白竜「えーやめて、いまスッピンなんだし」

犬娘「そういう問題か?」

〇教団地下・地下水路沿い

信者A「いよいよ出撃だと」

信者B「あーあー俺も行きたかったな、こんな雑用なんて……ん?」

地下水路にゴミを捨てに来た信者たちが愚痴る。

信者A「どうした」

信者B「なんだ? オンナが倒れているぞ」

信者A「流されてきたのか?」

信者B「まさか、それにこの服装……歌劇団の奴だ」

娘「う……」

娘は気を失っている。

〇教団地下・少年エルフの牢屋

正体を明かした第二皇子(ホビット子)は少年エルフに説明をしている。

第二皇子「僕は現皇帝の弟、第二皇子なんだ」

少年エルフ「本当に? でも……」

第二皇子「そうは見えないでしょう、それで宮廷から逃げたんだ」

少年エルフ「逃げた……」

第二皇子「皇族は純潔、のはずだったんだけど僕が生まれたことでホビット族の血も混じってることがわかってね…… 大騒ぎ。 結局、第二皇子は死んだことにしてるんだ」

少年エルフ「魔族返りだからってそんな」

第二皇子「こうしないと暗殺されちゃうからね」

少年エルフ「暗殺って誰が」

第二皇子「皇族の中の誰かかな? それで女装までして劇場にもぐりこんで……女装はやっぱ変だったかな? 軽蔑する?」

少年エルフ「それはないです」

第二皇子「本当? エルフに嫌われなくてよかった」ニコ

少年エルフ「あ、はい……(先月同じことしてたとは言えない)」

第二皇子「実は怪人退治も魔導鎧も僕の発案なんだ」

少年エルフ「え?」

第二皇子「劇場スポンサーは僕の支援者でもあってね。 ちょっとわがままを聞いてもらったんだ」

少年エルフ「どうして怪人退治を?」

第二皇子「にぃさまに……、皇帝に認めてもらいたかったからかな、異種族でも帝国の役に立つってことを」

少年エルフ「お兄さんに……、じゃあなぜ教祖さんたちに協力するの?」

第二皇子「……」

少年エルフ「お兄さん嫌いになったの」

第二皇子「ううん、でもほら仕方なかったし」

少年エルフ「う……(僕のせいだ)」

第二皇子「大丈夫うまくやるよ…… 宮廷を破壊なんてさせないから」ボソボソ

信者「そろそろ時間です」

第二皇子「わかった、いこう」

少年エルフ「ホビット……」

第二皇子「大丈夫、また一緒に舞台をやろう」

〇教団地下・魔王アーマー格納庫

\準備いそげ/

カンカンカン

教祖「さぁ皇子、こちらです」

教祖は第二皇子を魔導アーマーの首のあたりに案内した。

第二皇子「……ここ座ればいいのか?」

教祖「はい」

魔王アーマーに頭は無く、首のところに魔導鎧の内装が埋め込まれている。

第二皇子「これは魔導鎧と同じ……」

教祖「ええ……、使い慣れた物の方がよいかと思い、急遽組み込みました」

第二皇子「そうか」

ガチャ

第二皇子は操縦席に座った。

第二皇子「……(これなら操縦できる)」

教祖「では閉めますよ」

ゴゴゴゴ…… ガチャン

上から巨大で禍々しい兜が下りてきて操縦席を覆った。

〇魔王アーマー・頭部操縦席

\魔力量クリア/ \安全装置解除/

第二皇子「……今だ、起動!」

ガチン

第二皇子「なんだ? 動かない!?」

シュルル

第二皇子「何だコレは!?」

操縦席から何本もの蛇が生えてきて第二皇子に絡まる。

通信(教祖)「ただ安全帯ですよ、かなり揺れますので」

第二皇子「これでは操縦ができない…… ハッ まさか複座まで」

〇魔王アーマー・腹部操縦席

教祖「そうです、操縦はわたくしがやりますよ。 皇子は魔力だけ供給していただけたら」

通信(第二皇子)「おのれ騙したのか ぐむ……」

教祖「騙すなんて、皇子は旗印として動力源としてとってもとっても大事ですから操縦は我々にお任せください」

ゴゴォン

魔王アーマーが立ち上がる。

教祖「行きますよ革命です、第二皇子の新しい御代を創るのです」

\ワアアアアア/

無数の怪人と共に魔導アーマーが地上へ動き出す。

〇教団・修行部屋

バシャン

娘「う…… ゲホゲホ」

信者A「起きたかベッピンさんよ」

娘は目を開けた。

ガシャン

両手は鎖で壁につながれている。

娘「その服装……なるほど、教団が黒幕だったのね」

信者B「お前歌劇団の奴だな、どうやって入ってきた? 仲間は?」

娘「仲間? 一人できたのよ」

信者A「面倒だ体にきいちまおう」

\うへへへ/

信者たちが娘ににじり寄る。

娘「警告するけど、近寄らない方がいいわよ」

信者A「いいねぇこんな状況でも強気とか」

信者B「うへへへ」

娘「警告はしたわよ…… ハァッ」

バリバリバリバリバリッ

娘から電撃が迸り信者たちが感電する。

\\がっぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっああっ!!//

〇数分後

ドサッ

信者A「」ジュ―

信者B「」ジュ―

娘「かば焼きくさいわね、貴方たち」

パチパチパチ

神官「いやぁお見事、詠唱無しでその威力とは」

神官が奥から現れ……。

バリバリバリバリバリッ

神官「ギャアアアアアアアアア」

床の水たまりを伝って神官も感電した。

娘「神官アンタ、やっぱりグルだったのね」ゴゴゴゴゴゴ

神官「まってください、違いますよ今回のは教祖が勝手にやったことで私は関係ないですよ」

バリバリバリバリバリッ

神官「アババババババ」

娘「ウソくさいわよ、本当の事いいなさい」

神官「すいません、実はちょっとは何かしてるかなー? くらいはわかってました」

娘「あっそう、とにかくコレを外しなさい、あとエルフの居場所もわかるでしょ」

神官「わかりますよ、顔合わした途端に電撃は勘弁してくださいよ」

カチャカチャ

娘「ふーん、あいつらが私に何かするまで見てる気だったの?」

神官「……やだなぁ娘さん寝たふりしてたなんて趣味悪いですよ」

娘「アンタが隠れてたとこも射程内だったのよ」

神官「ハハハ、あれはスキをみて助けようと……ハハハ」ダラダラダラ

怒涛の冷や汗が神官の額を流れおちる。

娘「まあいいわ、早くエルフの所へ」

神官「はーい」

ぐに

神官は黒焦げの信者を踏みつけてしまった。

神官「あーあ、この方たち黒焦げですよ」

娘「ヘビ教の人でしょ、そのうち脱皮とかするんじゃないの」

神官「脱皮したからって全部チャラになりませんよ」

娘「いいのよ、縛られてる女子をどうこうしようって性根が気に入らないわ。 文句ある?」

神官「アリマセン」

娘「この分じゃもしかしてエルフも……」ゴゴゴゴゴゴゴ

バチバチバチ

神官「うわぁ、漏電してますよ。 どんな守護精霊ですか電気うなぎですか」

娘「知らないわよ」

〇少年エルフの牢屋

タッタッタッ

神官「ここです」

娘と神官があらわれた。

娘「エルフ」

少年エルフ「娘、神官さんも」

娘「あぁよかった無事ね、怪我ない?変な事されなかった」

少年エルフ「だいじょ…う……ぶだよ」

娘「さ・れ・た・の・ね」ズゴゴゴゴ

神官「うわぁ」

娘「とりあえずこの施設を灰燼にしてやった奴を見つけ出して生まれた事を後k」ブツブツ

神官「……(恐ろしい程の魔力の高まりが)」

少年エルフ「まって娘、僕は大丈夫だから、それよりホビットが」

娘「そういえばホビットは? 一緒じゃないの」

少年エルフ「実は……」


〇帝都歌劇・団長の部屋

団長「なにぃ!? 巨大怪人だと」

電話「そうです宮殿にむかって うわああ……ツーツー」

ガチャン

団長「くそっ 本当にやりやがった」

男子「どうなっているんだ」

団長「いままでのパフォーマンスとは違う、本当に革命を起こすきだ」

男子「革命!?」

娘友「パフォーマンス?」

団長「とにかく全員出撃準備を」

娘友「実は既に出撃してたり」

団長「なにぃ!?」

〇帝都・旧市街

ズシーン ズシーン

無数の怪人と魔王アーマーが帝国軍を蹴散らしながら宮殿へ進撃していく。


〇魔王アーマー内部

第二皇子「ぐぅ……ううう(魔力が無理やり)」

\ピピッ 出力低下 出力低下/

教祖「ふむ……外部入力を試しますか」

教祖は周囲の建物を破壊するように怪人たちに指示をだした。



ドカーン ガシャアン

\キャー/ \わー/



\ピピッ 怨嗟入力……変換…… 出力安定/

教祖「ギリギリですね、もっと過密部にいかねば」

第二皇子「や……め……」

教祖「皇子、もう少々お待ちくださいね直に宮殿に向かいますので(皇子は宮殿まで保てばよい)」

第二皇子「く……う……(にぃさま……エルフ……)」

※つづく

#20 宮殿前広場の決戦

〇宮殿前広場

レポーター「ご覧ください、熊、鹿、トカゲ、昆虫など怪人を引き連れて巨人が宮殿に向かって侵攻していきます」

\撃てーッ/

レポーター「ついに帝国軍の攻撃がはじまりました」

シュババ…… バシンバシン

帝国兵の魔法、魔導兵器は魔王アーマーの装甲にはじかれた。

ドドドド

\うわー ぎゃー/ \引け― 撤退/

魔王アーマーから魔導弾が発射され帝国軍が壊滅する。

レポーター「なんということでしょう、あの巨大な怪人を止めることはできないのでしょうか」

怪人「ぐはは」

レポーター「怪人がこちらに、ひぃ、皆さん私はここまでのようですさようなら」


ひゅぅうううん ドズン

怪人「グギャアッ!?」

何かが上から降って来た。

女兵士「あ、ごめんなさーい……大丈夫?」

ジャキン

魔導鎧(猫娘)「生身で着地できるって何者!?」

ジャキン

魔導鎧(犬娘)「大丈夫か? ここは我々が食い止める安全な場所へ早く」

レポーター「はい、なんと噂の魔導鎧部隊が来てくれました。しかしどこから?」

〇宮殿前広場・上空

白竜が第七王女を乗せて旋回している。

第七王女「降下は成功じゃ、次はわらら達であの巨人を倒すのじゃ」

白竜「人前でとっくみあいなんてはしたないけど…… 仕方ないわね」

ドドオゥン

魔王アーマーの前に白竜が立ちふさがった。

レポーター「ドラゴンです、伝説の怪物が巨人の前に立ちふさがりました。」

〇宮殿広場近くの路上

ブオォン

団長「こんどは何だ怪獣か!?」

娘「あらー王女やっちゃったわね」

男子「今は後先考えていられないだろう」

車で団長と娘友たちが広場へ向かっている。

サソリ女「無線が通じるようになったで」

団長「現場はどうなってる」

サソリ女「犬と猫は避難誘導、王女はんがドラゴンで大物を抑えとる」

団長「ドラゴンを操るとは一体…… 帝国軍の動きは」

サソリ女「あそこで聞いたらいいんちゃう」

前方で帝国軍が道路を封鎖している。

〇検問

\危険です引き返してください/

キキィッ

団長「我々は帝都歌劇の者だ現場はどうなっている。」

団長は帝国軍たちの元へ歩いて行った。

娘友「なんだか大事になってきてるわね」

男子「娘たちは無事だろうか」

ブルォオン

\うわぁ止まれ止まれー/

ギギィー バコーン

\ワ―/

暴走した車が帝国軍の封鎖を突破していった。

娘友「て、今の!?」

男子「娘!?」

〇娘が運転する車

ブオーッ

少年エルフ「どこで車の操縦覚えたの!?」

娘「説明書を読んだのよ」

少年エルフ「今、止まれっていってなかった!?」

娘「止めなきゃいけないのは白竜でしょ、ホビットがあそこにいるんでしょ」

少年エルフ「うん……て、うわぁ!?」

娘「掴まっててよ」

ギギィッ

〇宮殿前広場

ガキィン

ドゴォン

白竜「硬いわねー」

第七王女「また撃ってきたぞい」

シュドドド

魔王アーマーから魔導弾が射出される。

白竜「もう、面倒ね」

ヒュボボ

白竜は火炎放射で迎撃する。

ズボボボン

爆炎があたりに広がる。

第七王女「今じゃ思い切って飛び込むのじゃ」

白竜「そうね、埒があかないし……えーい」

ドドドッ

白竜は突進して魔王アーマーを押し倒す。

ズドドォンン

第七王女「よし兜を取って投降を呼びかけるのじゃ」

白竜「美形は期待できないわね」

ガシィン

白竜が魔王アーマーの頭部を外すと頭部操縦席があらわになった。

白竜「なにこれ人が乗ってる」

第二皇子「う……ぅ」

第七王女「もしやホビットか!?」

ブオォオオオン ガシャーン

白竜「いったぁ!?」

突如白竜の脛に車がぶつかってきた。

娘「バカ! それにはホビットが乗ってるのよ」

第七王女「娘、エルフ」

白竜「一体何がどうなってるの」

ゴゴゴ

魔王アーマーは右手を白竜に向ける。

少年エルフ「白竜危ない! 離れて」

シュドン

魔王アーマーの左手が手首から射出された!

白竜「キャアア」

ドドォン

第七王女「うおおお!?」

白竜はロケットパンチを食らい倒れた。第七王女も放り出されてしまった。

魔王アーマー(教祖)「とんだ邪魔が入りましたが革命は止まりませんよ」

娘「教祖!」

キュオオオ

魔王アーマーの両肩の砲塔に魔力が集約される。

白竜「王女ふせて」

第七王女「う……なんじゃ」

白竜は王女を両手で覆った。

魔王アーマー(教祖)「魔王砲発射」

ビカーン

両肩の砲塔から禍々しい閃光が発射された。

娘「きゃあああああああ」

少年エルフ「うわああああああ」

白竜「い……たぁい」

白竜は閃光を翼で受けたが大ダメージ、飛べなくなってしまった。

娘友「何今の?」

男子「今のはビーム!?」

娘友たちが合流した。

娘「なんで喜んでのよアンタは」ゲシッ

男子「グゲッ」

魔王アーマー(教祖)「次は宮殿です」

教祖は砲塔を宮殿に向ける。

娘「させないわ、光よ!」

ヒュイイイン

娘の持つ剣が光を纏う。

魔王アーマー(教祖)「む!?」

娘「これで終わりよ」

ブォン

娘の斬撃と共に光の奔流が魔王アーマーを覆う。

シュワアアア……

娘「ふぅ…… これならホビットも無事の筈」

ビカーンッ

娘「な!?」

ズドドドォン

娘「きゃああああああ」

娘は魔王砲の余波を食らって吹っ飛んだ。

魔王アーマー(教祖)「ふぅむ? 目くらましなんて効きませんよ」

爆炎に照らされて魔王アーマーが悠然と歩きだす。

※つづく

#21 君死にたもふことなかれ

〇宮殿前広場・入り口

魔王砲を受けた白竜と娘の元へ少年エルフが駆け付ける。

少年エルフ「娘、大丈夫 ”大治癒”」パアア

娘「うぅ……やられたわね」

第七王女「エルフ、白竜にも頼むのじゃ」

少年エルフ「わかった」

少年エルフは白竜にも治癒魔法をかけた。

白竜「最悪…… 背中ボロボロ」

娘「それよりアイツはどこに?」

少年エルフ「宮殿に向かってるよ、団長や男子君も帝国軍と一緒にとめようとしてる」

第七王女「わらわも行こう、白竜と娘はちゃんと回復するまでここにおるのじゃぞ」

娘「でも……」

第七王女「エルフよ頼んだのじゃ」

第七王女は走り去った。

〇宮殿前広場・魔王アーマー内

教祖「魔王砲発射」

ビカーン…… バシュシュン

魔王アーマーから放たれた邪悪な光線は帝国軍の魔法障壁で防がれた。

\収束率低下……収束率低下……/

教祖「先ほどの光、無傷とはいかなかったようですね」

\撃てー/

ヒュドドドドン

帝国軍の魔法攻撃!

バシンバシン

魔王アーマーには効果がなかった。

教祖「目ざわりな接近して撃てば消し飛ぶでしょう」

ズシンズシン……

魔王アーマーは宮殿に向かって前進しはじめた。

教祖「フフフ…… 見えますよ燃える上がる宮殿がっ!」

〇宮殿・バルコニー

\撃てー/

ドドドドン

家来「陛下ここは危険です早く退避を」

皇帝「それには及ばん…… 見よ、最高のショーだと思わんかね」

ドドォン ドドォン

家来「ひぃ」

皇帝「逃げたければ逃げればよい、我は逃げも隠れもせん」

家来「そ…… それでは失礼して」

家来は逃げ出した。

皇帝「しょせんその程度の奴」

神官「……まだこちらに居ましたか」

カーテンの影から神官があらわれた。

皇帝「貴様こそ、とうに逃げ出したと思っておったぞ」

神官「御冗談を」

皇帝「先ほどの光が貴様が買いかぶっていた奴か? 余興にもならなかったな」

神官「おっしゃる通りだと…… 良いのですがね」

〇宮殿前広場・中央

魔導鎧(犬娘)「うおおおお!」

ギュイイイイ

魔導鎧(猫娘)「止まれーっ!」

ジャラジャラジャラ

犬娘と猫娘が鎖で魔王アーマーの左足を絡めとった。

魔王アーマー(教祖)「おおう」

グラッ ドドン

足を引っ張られた魔王アーマーは転倒した。

第七王女「あっぱれじゃ!」

団長「ようし今だアイツを操縦席から奴を引きずりだせ」

\ワアアア/

帝国軍兵が仰向けの魔王アーマーに群がる。

ゴゴン……ゴゴン

サソリ女「なんの音や?」

空を指す魔王砲の砲身が開いていく。

サソリ女「アカン!? 皆はなれるんやっ!!」

ビカーン

魔王アーマーは拡散魔王砲を発射した。周囲に爆風が広がる。

\うわあああ/

魔導鎧(犬娘)「おのれ、これでは近寄れん」

魔導鎧(猫娘)「あつー」

ガシャン ガシャン

魔導鎧(犬娘)「なんだ、変形?」

サソリ女「あれは四足歩行モード!?」

魔王アーマーは変形して四足歩行モードになった。

サソリ「ウチの複座式のマネしよって!」

団長「いや……流用されてるな」

ガシャンガシャンガシャン

団長「くそっ……来る」

\うわああああ/

帝国軍兵は総崩れになった。

第七王女「こらー、逃げるでないわ!」

団長「しかしもはや止めようが……」

第七王女「むぅ」

ゴゴン……ゴゴン……

魔王砲の砲身が拡散モードから戻る。

サソリ女「アカン……防げへんわ」

魔王アーマー(教祖)「今新たなる世が始まるのです」

魔王砲が宮殿を狙う。

ガガァン

魔王アーマー(教祖)「な!?」

白竜「アンタねぇ、シミになったらどうしてくれるの!」

白竜が魔王アーマーに飛び掛かった。

魔王アーマー(教祖)「しぶといトカゲが!」

白竜「今よ、そこ」

白竜は首を伸ばして娘とエルフを頭部操縦席に降ろした。

魔王アーマー(教祖)「何!? そうはさせるか」

ゴゴン

教祖は魔王砲を再び拡散モードで発射しようとする。

白竜「それはこっちのセリフよ」

ガシン

白竜が魔王砲の砲身を掴み発射を阻止する。

\砲身展開不良/ \過重量……過重量……/

白竜「これじゃあ手も足も出ないわよね」

魔王アーマー(教祖)「おのれ、これでもくらえ」

ボボボボン

魔王アーマーから魔法弾が連射される。

白竜「あいたた 足つぼ効くわー」

魔王アーマー(教祖)「おのれおのれ!」

〇魔王アーマー・頭部操縦席

少年エルフ「くぅ……外れない」

少年エルフは皇子の拘束と解こうとするが外れない。

第二皇子「うぅ…エルフ、ソレを」

第二皇子は必死に何かを訴えている。

娘「何、このレバー?」

少年エルフ「なんでそれがあるの!?」

娘「エルフ、これは何?」

少年エルフ「緊急脱出装置…… 複座式魔導鎧にも同じ物がついてたよ」

娘「脱出装置、じゃあコレを引けば」

ガコン

少年エルフ「うわ!?」

ガツン

操縦席が激しく揺れた。

娘「何?」

ボシュッ…… ズルズルズル

娘「これで終わり?」

少年エルフ「……止められてる パラシュートだけ出ちゃったんだ」

魔王アーマーの後ろにしぼんだパラシュートが引きずられている。

娘「ダメだったの?」

少年エルフ「……うん」

第二皇子「娘ねぇ……さま、エルフ」

少年エルフ「心配しないで何とかするから」

少年エルフと娘は必死に拘束を外そうとするが外れない。

娘「硬い……」



魔王アーマーは白竜を振り落とそうと暴れている。

ビカーン

白竜「あっつ!!」

空に向かって魔王砲が撃たれる

ボボボボン

間髪いれずに魔王アーマーの魔法弾連射が白竜に命中する。

白竜「いたっいたいってば…… 娘、まだなの!?」



キュゥウン

第二皇子「ッ……ああ!!」

魔王アーマーは第二皇子から魔力を絞りとる。

少年エルフ「ホビット!?」

娘「しっかりして」

第二皇子「このままじゃ宮殿が…… エルフ、僕を…… 僕を殺して」

※つづく

#22 ロマンシング・デウス・エクス・マキナ

〇頭部操縦席

少年エルフ「な!? 何言ってるの!」

第二皇子「兄さまに迷惑かけたくない…… エルフも……娘ねぇさまにも」

娘「ホビットが迷惑なワケないでしょ、黙って助られなさい!」

第二皇子「……このままじゃ宮殿を撃つことに」

少年エルフ「あきらめないで」

キュウウン

魔王アーマーが再び第二皇子の魔力を吸い取る。

第二皇子「うぅ……ダメ、また撃つ気だ」

娘「くっ…… 止めてくるわ」

娘は腹部操縦席へ向かった。

〇魔王アーマー・腹部

娘「ここね」

ガツンガツン

娘は剣で操縦席を開けようとするが開かない。

娘「白竜! ここ開けられない?」

白竜は魔王砲と格闘している。

白竜「無理よこっちも手一杯よ」

娘「くぅ……」

シャッ

腹部操縦席に一部が透明になって教祖の顔が見える。

教祖「おやおやこんなところでお嬢さんがいると……」

娘「”雷撃”」

バリバリバリ

教祖「うおっ!? ……話を聞かないようですね」

娘「うっさいわね、ホビットを解放しなさい」

ガンガンガン

教祖「それは応じかねます、せっかくですので特等席でどうぞご覧ください」

ビカーン

娘「まさか!?」

ズッ……ズン

\白竜/

白竜「ミスったわ」

白竜が魔王砲を撃たれて倒れた。

教祖「ふむ(片方を犠牲になりましたか) ……しかしこれで終わりです」

残った魔王砲が宮殿に狙いを定める。

教祖「新たなる世の始まりです」

少年エルフ「”風弾”」ビュオオ

ビカーン ……チュドーン

少年エルフの魔法で照準がズレ、宮殿の尖塔だけ破壊される。

教祖「ぐむむ、次から次へと」

バサッ……バサッ……

頭部操縦席から伸びたパラシュートが風にあおられる。

少年エルフ「パラシュート…… そうだ”旋風”」

ゴオオオオオッ

教祖「これしきの風、魔王アーマーにはききませんよ」

バタバタバタ…… ガキン

パラシュートに引っ張られ頭部操縦席が浮き上がる。

娘「その手が、エルフ手伝うわ ”雷撃”」

ドドン! バリバリバリ

娘は頭部操縦席と魔王アーマーの境目に魔法を撃つ。

メキメキメキ

娘「今よ」

少年エルフ「”竜巻”」

ゴオオオオオオッ

魔王アーマーを中心に竜巻が空へ伸びる。

バキバキバキ…… バキンッ

少年エルフ「うわぁ!?」

第二皇子「ぅ……はぁ、外れた!?」

竜巻に巻き上げられ頭部操縦席が魔王アーマーから外れ宙を舞う。

教祖「馬鹿な!?」

\魔力低下魔力低下/

キュウン……

魔王アーマーが停止する。

ガッシャン

腹部操縦席のハッチが開く。

教祖「おのれ、こうなれば私が直々に皇帝をっ」

教祖は操縦席から身を乗り出し、その体が変化する。

娘「うわぁ気持ち悪っ!?」

教祖は急速に脱皮を繰りかえし、九頭大蛇へ変化した。

九頭大蛇「キシャアアアアッ」

娘「残念だけどここで終わりよ ”重雷撃”」

ドンガラガッシャーン バリバリバリバリ

九頭大蛇「ギャアアアアアアア」

雷が連続して九頭大蛇に落雷する。

少年エルフ「やった」

第二皇子「すごい」

ガシャン

頭部操縦席が落下して第二皇子が解放された。

娘「やっとこれで……なに!?」

シュッ…… ガブッ

娘「つぅ!」

少年エルフ「娘!?」

九頭大蛇「ははは…… 見えますよビジョンが、貴方が虫けらのように地に伏して死ぬところが」

娘「なん……ですって」

九頭大蛇に噛まれ娘は呪われた。

少年エルフ「娘!?」

少年エルフが娘に駆け付ける。

九頭大蛇「貴方は死ぬ! 革命は止まらない! 魔王アーマーよ私の魔力を受け取るのです!」

九頭大蛇が魔王アーマーに巻き付き魔力を供給する。

ゴゴン

魔王アーマーが再起動した。

第二皇子「なんて執着……」

少年エルフ「ホビット! 手を貸して娘を向こうへ」

娘は気を失っている。

第二皇子「わかった」

娘「う……」

少年エルフは第二皇子と協力して娘を運ぶ。

〇宮殿前広場・バルコニー前

ズズン……ズズン

\……王砲発……ザザッ……完了/

九頭大蛇「ゴフッ…… 革命成就せり」

皇帝「……」ククク

バルコニーでは皇帝が不敵に笑っている。

九頭大蛇「この状況で? ……なにこれは!?」

キュウウ

\強制……自爆……す、3、……1/

九頭大蛇「な……」

キュドーン

魔王アーマーは吹き飛び九頭大蛇も巻き込まれた。

〇宮殿前広場・帝国軍陣営

団長「爆発!?」

サソリ女「回路の短絡や 無茶な起動をしたせいやな」

第二皇子「……本当に?」

男子「エルフさん、娘はどうしたんだ!?」

娘「う……ぐ……」

娘は傷口がふさがらずうめき声をあげている。

少年エルフ「治癒魔法が効かない、なんで!?」

第七王女「とりあえず劇場に運ぶのじゃ」

男子「よし行こう」

少年エルフ「娘……」

少年エルフたちは帝都劇場へ引き上げた。

〇宮殿・バルコニー

皇帝「つまらん、大した者ではなかったな」

神官「そうですか? 彼女たちのおかげで皇子は助かりましたよ」

皇帝「だからつまらんというのだ」

神官「おっと…… 左様でございましたか」

皇帝「まあよい、これで議会も思い知っただろう異種族こそ災いの元だと」

神官「それでは概ね予定通りでございますか」

皇帝「そうだ、異種族を捕え、排し、種族統一による平和を実現する」

神官「まさに世界征服ですね」

皇帝「言いがかりだな、しかしそれが契約だったろう?」

神官「おっしゃる通りです陛下」

???「ブクブク……」

神官「王も異論はないようです」

部屋の奥には水槽に浸った異形の生首が浮いている。

皇帝「……その生首にまだ意思があるのか?」

神官「……おそらく」

皇帝「フン…… 昔はどうか知らんが、今はただの魔力炉だろうが」

神官「そうです、帝都の魔力を支える魔力炉ですよ」

皇帝「フン……(主すら売り飛ばす異種族め)」

神官「陛下はもっと論理的な方だと信じておりますよ

皇帝「黙れ、おかしな事をしたら貴様も魔力炉に放り込むぞ」

神官「我々はお目こぼししていただける契約ですよね」

皇帝「ああ……(使い道がある内はな)」

神官「ゆめゆめお忘れなきよう」スッ

神官は影に吸い込まれて消えてしまった。

皇帝「……(不気味な奴め、直に魔力炉で次世代エナジーにしてくれる)」

ガタン……カツカツカツ……

皇帝は部屋を出た。

〇翌日・帝都劇場

男子に担がれた娘が戻ってきた、少年エルフは沈んだ表情だ。

第二皇子「娘ねぇさまの様子は?」

娘「……ぐ……うぅ……」

娘は戦いの後からずっと目を覚まさず、ふさがらない傷にうなされていた。

少年エルフ「教会の司祭様にも無理だった、こんな強力な呪い僕じゃとても……ううう」ポロポロ

第七王女「泣くでないエルフ、何か方法があるはずじゃ」

少年エルフ「でも……このままじゃ娘が……」

\うわあああん/

男子「……」

第七王女「……」

娘友「……」

女兵士「……」

第二皇子「噂ですが…… 氷島の奥地には数百年生きた呪術師がいるらしいです」

第七王女「呪術師とな……」

第二皇子「はいもしかしたらその人なら解呪の方法をしってるかも」

少年エルフ「ぐす……わかった、ホビット僕をそこへ連れて行って」

第二皇子「エルフ……でもただの噂で」

少年エルフ「お願い……、少しでも可能性があれば僕は行くよ」

娘友「エルフさん……」

少年エルフ「僕は娘のパパだから」



バタン

団長「エルフ、ホビットすぐに出る用意をしろ!」

団長が部屋に飛び込んできた。

第二皇子「どうしたの!?」

団長「話は後だ直ぐに出ないと捕まるぞ」

少年エルフ「ええ!?」

〇テレビ・帝国放送

テレビでは皇帝の演説が流れている。

皇帝「先の暴動こそが異種族の本質、我々に仇をなすものに他ならぬ

――帝都、この宮廷においても被害は少なからずあった。

――この事態を重く受け止め、帝国の内外問わず、すべての異種族は我々もとに管理されねばならない。

――ここに皇帝の名のもとに異種族排他法を施行する」

帝国は異種族排他法を公布した。

〇数日後の夜・氷島沿岸

ザバッ

白竜「あーん」

ぴょい

少年エルフ「よいしょ」

ぴょい

第二皇子「うわっと」

少年エルフ「気をつけて、足場が悪いよ」

白竜が岸に向けて口を開くと少年エルフと第二皇子が出て来た。

白竜「ひゃぁ、やっと着いたわね」

少年エルフ「白竜ありがとう、顎疲れなかった?」

白竜「ありがと、それより背中が塩水で痛むわ」

少年エルフ「あとでまた治癒魔法かけるよ」

白竜「はーい、向こうから上がるからまってて」

白竜は上陸する場所を探して泳ぎ去った。

第二皇子「すごい、船で二週間はかかるのに」

少年エルフ「飛べたらもっと早くてみんな一緒だったけど」

ヒュウウウ

冷たい風が吹き付ける。

少年エルフ「寒い…… ここが氷島」

第二皇子「まずは港町で準備をしましょう、着替えも必要ですし」

少年エルフと第二皇子の服は白竜の唾液でベタベタである。

少年エルフ「うん……(娘大丈夫かな)」

第二皇子「……大丈夫です、船で追いついてきますよ」

少年エルフ「そうだね、それまでに呪術師を探さないと」

第二皇子「ええ、僕はここで育ちました。 案内は任せてください」

少年エルフ「うん、行こう」

※帝都劇場編 終了

次回は9月23日に

#23 ドラーメンガール ~失われた村の失われたスープ~

○氷島へ向かう船の中

船室に娘が寝かされ第七王女と娘友が看病している。

娘「ぐ……ぅ…」

第七王女「うなされておるのう……」

娘友「アタシ達は今、娘の呪いを解くために呪術師がいるという氷島へ行く船にいます、エルフさんとホビットは白竜に乗って先行して呪術師を探す手筈です」

第七王女「友どうしたのじゃ?」

娘友「あー、勇者新聞の構成とあらすじよ」

第七王女「うむ、此度はよい見出しにならなさそうじゃの」

娘友「……(王女は素直だわぁ)」

第七王女「それに怪我が治らんし、このままでは娘がもたんぞ」

娘友「エルフさんからコレを飲ますように渡されてるわ」

第七王女「飲ませてみるのじゃ」

第七王女は薬瓶を娘の口にあてがう。

コクコク

娘は流しこまれた薬を飲み込む。

娘「うう…… ゴホッ、ここは」

第七王女「おう!? 気が付いたか」

娘友「ここは氷島へ向かう船のなかよ」

娘「氷島? ……パパは?」

娘の意識は朦朧としている。

第七王女「エルフは白竜に乗ってホビットと一緒に先にいっておる」

娘「先に……なんで? ……ぐぅ、からだが重い……」

娘は立とうとするが動けない。

娘友「覚えてない? 呪いにかかってるのよ」

娘「呪い、そういえば…… パパはそれで…… ぐっ」

娘は再び気を失った。

娘友「娘、娘!?」

第七王女「眠っただけじゃ…… エルフが早く解呪方法を見つけれくれるといいが」

ザザーン

○氷島・ホビット族族長の館

ホビット族族長「皇子よそんなに急ぐのかね」

第二皇子「はい族長、友人の命に関わりますので…… 助力感謝します」

ホビット族族長「礼などよい、生まれがどうでありお前はわしらの仲間じゃ」

第二皇子「ありがとうございます」

少年エルフ「族長さん、ありがとうございます」

ホビット族族長「よいよい、エルフ族の子よお主も気を付けるのじゃぞ」

少年エルフ「はい」

第二皇子「いってきます」

第二皇子と少年エルフを乗せたソリは出発した

○氷原・ソリの上

しゃっしゃっしゃっしゃっ……

少年エルフ「すごい…ずーっと氷ばっかり」

第二皇子「この島じゃ氷が溶けることはないよ」

少年エルフ「それにこんな時間なのに太陽が出てる」

第二皇子「今は白夜だからね、太陽は沈まない季節だよ」

地平線スレスレで太陽が沈まず横へ移動していく。

少年エルフ「白竜も行ってたけど本当にしずまないんだ」

第二皇子「白竜さんかあ…… なんというか年の割に落ち着きがないというかなんていうのか」

少年エルフ「まぁ……最初からああいう人だから」

○少年エルフの回想・昨日

白竜「むーりー、なによ白夜ってずっと昼? ここ紫外線ハンパないのよ、なのにずっと昼って、それに雪の照り返し! あーもうここは地獄よ日焼け地獄よぉ!」

○氷原・ソリの上

少年エルフ「まあ王女たちとの連絡係も必要だったし」

第二皇子「伝言で済むこととおもうけど……」

少年エルフ「それにしても僕たち以外で呪術師探してるってどんな人だろうね」

第二皇子「どうだろう、とりあえず村についたら何かわかるかも」

少年エルフ「そうだね」

しゃっしゃっしゃっしゃっ……

少年エルフを乗せたソリは氷原の村へ向かっていく。

○氷原の村・宿屋

少年エルフ「あのここらに呪術師がいるってきいたのですけど」

女主人「おや、あんたらもかい? やめときなさいあの兄ちゃん達の二の舞になるよ」

第二皇子「兄ちゃんって、先に探しにきた人がいるの?」

女主人「ああ、一昨日出てって今朝戻ったんだけどね…… ありゃあ哀れなもんさ」

少年エルフ「え? 一体になにが……」

???「おお!? そこに居るのはエルフ殿か!」

少年エルフ達は大声で呼ばれ振り返った。

少年エルフ「うわ!? 爺僧侶さん!?」

爺僧侶があらわれた。

爺僧侶「うむ、こんなところで会うとは奇遇じゃの」

第二皇子「誰、このお爺さん?」

少年エルフ「ええと、王国の港で一緒だったことのある魔法勇者さんのお爺さんで」

爺僧侶「いや坊とは血縁はないのじゃが」

少年エルフ「あ、そうなんだ…… そういえば魔法勇者さんは?」

爺僧侶「そうじゃ、それで困っておるのじゃ頼む来てくれい」

少年エルフ「う、うん」

○氷原の村・宿屋の一室

少年エルフ「それで魔法勇者はすごい攻撃魔法の使い手で……」

第二皇子「それは頼もしいですね」

爺僧侶「……この部屋ですじゃ」

ガチャ

爺僧侶「坊、天の助けですぞなんとエルフ殿が……」

魔法勇者「らりるれろっ!?」

孫僧侶「らりるれろ!」

第二皇子「ら?」

少年エルフ「らりるれろ?」

爺僧侶「ま~ったく情けない事じゃが、坊と孫は呪われたようでな」

少年エルフ「呪われた!?」

第二皇子「じゃあ呪術師を探してたのは貴方たち?」

魔法勇者「らりるれろ」

魔法勇者は重々しくうなずいた。

少年エルフ「もしかして呪いって」

爺僧侶「うむ、坊と孫は『らりるれろ』としか喋れんようになったのじゃ」

魔法勇者達は口封じの呪いにかかっている。

※つづく

#24 北の島から

○氷島・氷原の村・宿屋の一室

少年エルフ「口封じの呪い!?」

爺僧侶「おそらく、坊たちが氷の森から戻ってからこのありさまで」

孫僧侶「らりるれろ~」

孫僧侶があらわれた。

少年エルフ「孫僧侶さんまで」

爺僧侶「このままでは坊はいいとして、孫が不憫で……」

魔法勇者「らりるれろッ!」

第二皇子「何か抗議してるよ」

爺僧侶「わしも解呪を試みたのですがさっぱりでしてなエルフ殿ならできますかな?」

少年エルフ「うーん」

少年エルフは魔法勇者たちの呪いを調べる。

少年エルフ「ムリだと思う…… 知らない呪詛で組まれてるし、すごい複雑…… ただの口封じだけじゃなさそう」

第二皇子「妙な言語制限とか、手の込んだ呪詛とか…… 呪った人性格悪そう」

爺僧侶「まぁ人を呪う人物が良い性格とは考えにくいですな」

魔法勇者「らりるれろ~」

魔法勇者は不満そうにいう。

少年エルフ「何で怒ってるの?」

第二皇子「文字は? 筆談はできるのでは」

爺僧侶「それも試したのですが、坊これに名前を」

魔法勇者「ら」コクン

すらすら

紙『らりるれろ』

少年エルフ「……」

爺僧侶「……」

第二皇子「ふざけてるわけじゃないんですよね……」

魔法勇者「らりるれろ」

少年エルフ「あの…… うなずくのは出来るんだよね」

第二皇子「あ」

爺僧侶「お」

魔法勇者「らりるれろっ」ブンブン

魔法勇者は首を縦に振る。

少年エルフ「じゃあ質問するから『はい』だったらうなずいて……」

魔法勇者「らりるれろっ」ブンブン

孫僧侶「らりるれろっ」ブンブン

爺僧侶「流石エルフ殿じゃ」

第二皇子「……(時間かかりそう)」

○氷島の港

ガヤガヤガヤ

第七王女達は定期船から下りた。

第七王女「やっとついたのじゃ」

女兵士「ひさびさに揺れないベットでねましょーよ」

男子「ずいぶんとホビット族が多いな…… いやドワーフ族か?」

娘友「氷島ではドワーフ族とホビット族が多く暮らしているらしいわ」

第七王女「ドワーフ族が商品を作りホビット族がそれを売ってくる、そうやって発展してきた国じゃ」

娘友「あとサウナの国でも有名よホラ」

娘友が指さす先には小屋から水蒸気が噴き出している。

女兵士「あれサウナなんだ」

\うわーー/ \化け物だーっ!/

男子「おいおい、何かおかしいぞ」

ドカーン

サウナ小屋の屋根が吹き飛び水蒸気の中から……

白竜「いやーん困っちゃう」

白竜があらわれた。

一同「「白竜!?」」

○ドワーフ城・謁見の間

ドワーフ王「ハッハッハよくぞ参った竜乗りの姫よ、おぬしの武勇はこんな辺境にも届いておるぞ」

第七王女「いやはや此度はわらわの竜が申し訳ないことを……」

ドワーフ王「いやいや伝説のドラゴンをこの目で見られるとは」

第七王女「うむこの竜は我が国の地下深くに……」

ドワーフ王「ほうほう……」

第七王女とドワーフ王は歓談している。

白竜「はぁ~、よりによってエルフちゃんがいない時に魔力切れなんて」

娘友「エルフさんが魔力供給してたのね、変身リング」

男子「にしても、エルフさんと一緒のはずじゃ?」

白竜「あー、うん。 ほら、エルフちゃん達の行先を……あの子たちは氷原の村へ向かったわ」キリッ

男子「……サウナに入りたかっただけじゃないよな?」

白竜「やーん男子ちゃんの、いけず~。 甘噛み―」ガブッ

男子「こらやめっ むわー」

男子は白竜に咥えられた。

女兵士「白竜、御前だからほどほどにね」

白竜「ふぁーい」もごもご

\どわー/

ドワーフ王「……第七王女よ従者が食われてますぞ」

第七王女「いやなに戯れておるだけじゃ、よくあることじゃ」

ドワーフ王「むう……(なんと豪胆な)」

○氷の森・入り口

爺僧侶「結局、呪術師本人を探す以外方法はないですな…… あいたた」

少年エルフ「だいじょうぶ?」

爺僧侶「腰が痛いからと坊たちだけで行かせたのが間違いだったのですじゃ、これでも魔法の使えない坊よりは役に立ちますぞ」

少年エルフ「無理しないでね」

孫僧侶「らりるれろ」

第二皇子「魔法使いが魔法使えないなんて…… 道案内だけでもお願いしますね」

魔法勇者「らりるれろ」

魔法勇者の案内で少年エルフたちは氷の森へ入っていった。

○???

ガサっ

???「また来ましたか、今度はホビット族を連れて…… お手並み拝見といきましょうか」

ガサガサ……

※つづく

#25 エルフ、思いがけない遭遇

○氷の森

少年エルフ「うう……疲れた」

魔法勇者「らりるれろ~」

孫僧侶「らりるれろ~」

爺僧侶「すっかり迷ってしまってるじゃないですか、まったく情けない」

魔法勇者「らりるれろー!」

魔法勇者が身振りで抗議する。

少年エルフ「前と道が変わってるっていってるみたい……」

第二皇子「うーん…… 迷いの魔法が森にかかってるかも」

少年エルフ「迷いの魔法? そんなのどうしたらいいの?」

爺僧侶「土地にかかった魔法はやすやすとは解けんが…… 上書きすることで無効に出来るはずですな」

第二皇子「上書き…… 試してみようか」

ゴソゴソ

少年エルフ「何それ? 楽器?」

第二皇子「これは魔楽器のバイオリンだよ」

爺僧侶「ほう! ホビット殿は吟遊詩人でしたか」

少年エルフ「ぎんゆうしじん?」

第二皇子「楽器で魔法の曲を弾くんだよ、こんなふうに」

♪~

第二皇子は”行進曲”を弾いた。

少年エルフ「うわぁ、なんだか体が動いちゃうね」

第二皇子「この曲は疲れを回復させて歩けるようになる曲だよ」

ザッザッザッ

爺僧侶「これならいくらでも歩けそうですな」

少年エルフ「見て、あの道って前からあった?」

爺僧侶「いいえ、見てませんぞ。 この曲で幻が無効化されたのでしょう」

少年エルフ「よーし、行ってみようよ」

魔法勇者「らりるれろ」

ザッザッザッ

少年エルフ達が新しく見つけた道を行進していく。

孫僧侶「……」

第二皇子「こんな簡単に…… (あの三人、心配になるくらい魔法に弱い)」

♪~

第二皇子達も演奏しながら後を追った。

○氷の森・氷像の広場

氷熊「グワー」

少年エルフ「うわー熊だー!」

魔法勇者「らりるれろーっ!?」

氷の熊が襲ってきた。

爺僧侶「どりゃあ!」

バキン パラパラ

爺僧侶はメイスで氷熊を倒した。

第二皇子「これは…… 氷像?」

少年エルフ「ふぅ…… ゴーレム魔法かな」

魔法勇者「……」コクコク

爺僧侶「こんなものが出てくるとは…… 番人代わりですかの?」

第二皇子「だろうね…… 目的地が近いんじゃない」

魔法勇者「らっ!」グッ

魔法勇者がガッツポーズをとる。

少年エルフ「そうだと思うけど…… どうしよう囲まれてるよ」

第二皇子「え!?」

ガサガサ…… パキパキ……

\グルァアア/ \キシャー/

氷像の動物が少年エルフたちを取り囲んだ。



少年エルフ「”風弾”」ビュオオオ

少年エルフの魔法、しかし氷熊は吹き飛ばなかった。

氷熊「グワー」

少年エルフ「うわー! 重すぎ!?」

爺僧侶「むぅん」ブォン

バキン ガシャン

爺僧侶「ほっほっほ、カキ氷シロップが欲しいですな」

魔法勇者「らりるれろーっ!」

少年エルフ「そんなの爺僧侶さんだけだってー、うわぁ!」

孫僧侶「らー!!」

少年エルフ達は逃げ回っている。

爺僧侶「坊、魔法ばっかりたよるからそうなるんです、これしきの氷で…… まったく情けない」

魔法勇者「らりるれろー」

第二皇子「戦力になるのが爺僧侶さんだけじゃ…… 仕方ない」

第二皇子は魔法曲を弾き始めた。

♪~

第二皇子「魔法勇者さん、ご協力お願いします”マリオネット”」

魔法勇者「ら?」ピシン

ビキビキビキ

魔法勇者「ラリルレローッ!!」

魔法勇者は力がみなぎった!

爺僧侶「おお!?」

魔法勇者「ラーッ!!」

魔法勇者は操られている、魔法勇者の攻撃。

バキンバギン! ガシャーンドカーン!!

魔法勇者は次々と動物の氷像を破壊していく。

少年エルフ「すごい」

爺僧侶「ほう…… 坊もやれば出来るではないですか」

第二皇子「この曲は操る人の身体能力を最大限に引き出します」♪~

魔法勇者「らりるれろ!?」バキバキバキッ

少年エルフ「何!? 今の音」

第二皇子「早っ もう!?」

魔法勇者は突如苦しみだした。

爺僧侶「限界が早すぎですぞ、まったく情けない……」

魔法勇者「……ッ!」ピクピク

少年エルフ「怪我はないみたいだけど」

第二皇子「えっと、身体能力を最大限引き出した代償に地獄の筋肉痛に襲われます」

少年エルフ「筋肉痛…… それじゃあ治癒魔法も効かないや」

魔法勇者「ッ!? ……ッ!」

魔法勇者は筋肉痛で動けない。

爺僧侶「とりあえず奴らの数は減りました、突破しますぞ」

爺僧侶は魔法勇者を引きずって走り出した。

第二皇子「エルフ行こう」

少年エルフ「う、うん……」

○氷の森・泉

爺僧侶「何とかまいたようですな」

少年エルフ達は泉のほとりにたどり着いた。

少年エルフ「この泉なんだろう…… 凍ってない」

第二皇子「周りは氷だらけなのに不思議ですね」

爺僧侶「まぁ喉も乾いたしちょうどいいですな」

魔法勇者「ら……りるれろ」ボソボソ

今だ筋肉痛に苦しむ魔法勇者が何かを訴える。

少年エルフ「え、なに?」

爺僧侶「まったくボロ雑巾のようになって……まったく情けない」ごくごく

爺僧侶は泉から水を飲んだ。

孫僧侶「らりるれろ! らりるれろ!?」

孫僧侶が突然騒ぎだした。

第二皇子「どうしたのですか?」

少年エルフ「えっと飲んじゃだめなの?」

爺僧侶「まっらく、らりるれろ」

少年エルフ「……」

第二皇子「……」

爺僧侶は呪われた。

○氷の森・奥地

少年エルフ「うぅ…… 爺僧侶さんまで呪われてどうしよう」

第二皇子「……問題はないんじゃないかな?」

\らりるれろ/ \らりるれろ!/

魔法勇者と爺僧侶は罵り合っているようだ。

第二皇子「とりあえず奥に来てるけど…… 今度は何!?」

グモモモ

雪男「ンゴーッ」

雪の下からスノーマンがあらわれた。

少年エルフ「うわぁー! 出たー」

第二皇子「エルフ落ち着いてただの雪だるまじゃない……」

グモモグモモグモモモモモ

更にスノーマンがあらわれた。

雪男達「「「ンゴゴゴーッ!」」」

少年エルフ「いっぱいー!」

第二皇子「うわぁ! 冷たい離せー!」

少年エルフ達はスノーマン達に捕まった。

爺僧侶「らりるれろっ!」

爺僧侶達もスノーマンと揉み合っている。

雪男A「ンゴ?」

少年エルフを捕まえていたスノーマンが何かに気づいた。

雪男A「ンゴゴ」

雪男B「ンゴンゴ」ぐい

少年エルフ「なに? うわっ寒いよ」

スノーマンは少年エルフのフードを取ると少年エルフの顔を眺めた。

少年エルフを離して、スノーマン達は動きを止めた。

第二皇子「なに? エルフ何かしたの?」

少年エルフ「ううん…… 何もしてないけど」

スノーマン達は一列になって森の奥へ帰っていく、最後尾のスノーマンが少年エルフに向かって手招きをした。

少年エルフ「案内してくれるの?」

第二皇子「そうみたいだね」

○氷原・氷の森へ向かう大ソリ

娘「エルフ行っちゃ……」ボソ

第七王女「娘? 起きたのか?」

娘友「……いえ、寝言ね」

第七王女達を乗せたそりは氷の森へ近づいていた。

第七王女「大丈夫じゃ娘、直にエルフ達に追いつく」

娘「……うぅ、最強の敵が…… パパ……」

第七王女「ううむ、エルフに危機が迫っておるのかのう」

娘「さー、どーかしら」

○氷の森・謎の家

雪男「ンゴンゴ」

扉の前でスノーマンが身振りで待つように伝える。

少年エルフ「ここで待つの?」

雪男「ンゴ」

雪男はうなずくと扉を開けて入っていった。

少年エルフ「あの人達の家なのかな?」

第二皇子「まさか、でも料理のいい匂いがするね」

少年エルフ「うんなんだろ、シチューかな?」

???「なんだい、仕込みの途中に」

家の奥から女性が出て来た。

第二皇子「む?」

少年エルフ「えッ!! ……ホント!?」

魔法勇者「らりるれろ!」

???「はぁ~とうとう来たのかバカ弟子…… と、ホビット族か?」

エルフ族の女があらわれた、片方の耳が半分切れている。

少年エルフ「ホントに居たんだ…… (僕以外のエルフ族)」ドキドキドキ

片耳エルフ「いや…… そっちは違うな、お前まさか……ハーフエルフ」

※つづく

#26 トラ?トラ!トラァ!?

○氷の森・片耳エルフの家

片耳エルフ「帰れ帰れ! 貴様に食わせるラーメンはない!」

バタン

少年エルフ達は追い出された。

少年エルフ「ええ!?」

魔法勇者「らりるれろー」

片耳エルフ「バカ弟子が! 同胞を連れてきたつもりか!? 邪悪なハーフエルフなんぞ」

少年エルフ「」ガーン

怒号は続く。

片耳エルフ「貴様らも何が客だ! 耳が長いだけがエルフ族じゃないわ」

ガシャーン

スノーゴーレム「「ンゴ―っ」」

魔法勇者「らりるれろー」

ドンドンドン

魔法勇者が執拗に扉を叩く。

片耳エルフ「うっさいわバカ弟子、これ飲んで帰れ!!」

シュッ ズゴンッ!

魔法勇者「らッ!」

魔法勇者は覗き窓から高速で飛んできた瓶がめりこみそのまま気絶した。

\らりるれろ/ \らりるれろー/

爺僧侶と孫僧侶が一応介抱する。

第二皇子「……えっと」

第二皇子は呆気に取られている。

少年エルフ「邪悪なハーフエルフ…… うぅ」ウルウル

第二皇子「あの…… エルフ大丈夫?」

少年エルフ「うぅ…… だいじょ……ぶ」ウルウル

第二皇子「それにしてもあのエルフ族の姉様が呪術師なの?」

魔法勇者「間違いない、アレが俺の師匠だ呪術にも詳しい」

解呪薬を飲んだ魔法勇者たちがしゃべりだす。

爺僧侶「やっとまともに喋れるわい」

孫僧侶「あー長かった、バカ坊ちゃんのせいでヒドイ目にあった~」

魔法勇者「やかましい」

少年エルフ「そうだよ……呪いを 娘を助けてもらわなくちゃ」



トントントントン……

少年エルフ「お願いします話を聞いてください」

\うっさいきょうは店じまいだ/

魔法勇者「師匠おれだー開けてくれー」

\帰れバカ弟子、ここはお前ごときが来るような場所ではないわ/

孫僧侶「そうだ帰れ帰れ、オマエゴトキー」

魔法勇者「やめいっ」

少年エルフ「お願いします娘を助けてください」

魔法勇者「師匠ーツンも程ほどにしろ、そろそろデレろー」



白虎「ガルァアアアアア」

少年エルフ「!!」

第二皇子「虎!?」

屋根の上にホワイトタイガーがあらわれた。

\そいつは魔法の効かない聖なる虎だ、痛い目に合う前に帰れ/

白虎「グルルルル」

ホワイトタイガーは牙をむき出しにして威嚇している。

少年エルフ「うう…… 帰れません」

白虎「ガァア!!」

少年エルフ「ひぃ!!」

魔法勇者「師匠……コイツを倒したらエルフの話を聞いてくれるか」

\倒せたらな…… お前では無理だろうがな/

魔法勇者「よし行くぞ ”多重大爆裂”」

キュオオオオ

孫僧侶「バカ―いきなりソレ!?」

爺僧侶「伏せるんじゃ!」

少年エルフ「うわわ」

バっ

魔法勇者以外は地面に伏せた。

シーン

少年エルフ「……?」

第二皇子「あれ?」

魔法勇者「まてまてまて反則だろソレ」ダラダラ

白虎「グルアア……」キュボボボボ

白虎は魔法勇者の爆裂魔法を食っている。

片耳エルフ「お前は本当に話を聞かないな」

窓から顔を出した片耳エルフが呆れている。

魔法勇者「師匠、もっかい最初から…… ダメ?」

片耳エルフ「ダメだ ”範囲守護”」

パアア

片耳エルフは防御魔法を家にかける。

孫僧侶「えっと”守護”」パアア

孫僧侶は防御魔法を唱えた、孫僧侶は防御魔法に守られた。

魔法勇者「お前だけかいっ!」

孫僧侶「だってこれしかできないしー」

魔法勇者「俺にもかけろ早く!」

孫僧侶「ごめ、まにあわなーい」

魔法勇者「うおおお死ぬ―」

爺僧侶「どれワシが 範囲守護」

爺僧侶は魔法を唱えた、しかし効果がない。

魔法勇者「できてねーよ! ちくしょー死ぬ―」

白虎「グアアっ」

ホワイトタイガーは食べた魔法を吐き出した。

第二皇子「うわああ!?」

キュュドドドドドン

\\うわあああああ//

辺りが爆炎に包まれる。



片耳エルフ「フン…… 威力だけは一人前になりおって」

ヒュルル

片耳エルフ「何?」

少年エルフ「間に合った」

ヒュルルルル

魔法勇者達は少年エルフの風の障壁に包まれている。

魔法勇者「たすかった……」

孫僧侶「はーつら、坊ちゃんのせいで魔力無駄にしたー」

爺僧侶「みっともなくうろたえて、まったく情けない」

魔法勇者「やかましい」

第二皇子「ありがとうエルフ…… でも魔法が効かないんじゃどうすれば」

少年エルフ「えっと…… どうしよう」

魔法勇者「どうしようっていったって」

魔法勇者はメンバーを見渡す。

魔法勇者 ← 魔法系

少年エルフ ← 魔法系

第二皇子 ← 吟遊詩人

孫僧侶 ← 僧侶系

爺僧侶 ← 脳筋

魔法勇者「爺まかした!」

爺僧侶「高齢者を労わらんかい!」

白虎「グルァア!!」

爺僧侶「うおう、こんな時に腰が! 腰痛がー!」

シュタタタタッ!

爺僧侶はダッシュで逃げ出した!

魔法勇者「その健脚のどこが腰痛だー!!」

少年エルフ「うわあ! 来るよ」

ホワイトタイガーは飛び掛かって来た。

\\うわああああああああああああ//

○片耳エルフの家・窓辺の席

片耳エルフ「さてと茶でもいれるか」

片耳エルフはキッチンへお茶をいれにいった。

\うおおおおお来るなー/

片耳エルフ「フム…… まだいけるか?」カチャカチャ

\ぎゃああ、いってー!!/

片耳エルフ「ジャムはどこだ」ゴソゴソ

\エルフ―/

片耳エルフ「どれそろそろか」コポポポ

\やぁあああ/

片耳エルフはのんびりとお茶を飲む。

片耳エルフ「うーむ、葉が古いな」

\グルルルル/

コッコッ

ホワイトタイガーが戸を叩く音がする。

片耳エルフ「ふむ片付いたか」



ガチャ

片耳エルフは扉を開けた。

片耳エルフ「何!?」

白虎「ガルァ」

ドサ

ホワイトタイガーは咥えていた少年エルフを片耳エルフの前においた。

少年エルフ「はう……ひぅ……猫舌……」ピクピク

片耳エルフ「……(なぜ食い殺していない!?)」

少年エルフ「お……」ヨロヨロ

少年エルフ「お願い娘を…… ひゃああ!?」

ホワイトタイガーが少年エルフを前足で転がす。

コロコロ

少年エルフ「うわあ…… 話をー」

ホワイトタイガーは少年エルフを舐めまわす。

ペロペロ

少年エルフ「きひてー 耳だめー……ひゃあん」

ホワイトタイガーは少年エルフを頭から甘噛みする。

はむはむ

少年エルフ「ふむむむー」バタバタ

片耳エルフ「……(このハーフエルフ……本当に邪気がないのか!?)」



魔法勇者「いってー…… マジで噛みやがったし」

片耳エルフ「お前が噛まれているんかい、バカ弟子」

魔法勇者「孫、治癒かけてくれ」

孫僧侶「イヤですよ、坊ちゃんの尻なんて…… 杖が穢れます」

魔法勇者「遠慮ねーなちくしょー」

第二皇子「あの……入れてくれたって事は話を聞いてくれるのですよね、ありがとうございます」

片耳エルフ「……聞くだけだ、期待するなよ」

少年エルフ「……う、うん」

少年エルフは娘が呪われた経緯を説明した。

片耳エルフ「それは呪毒だな…… フン、やっかいな」

魔法勇者「なんだ師匠でも解呪は無理なのか?」

ゴン

ティーポットが魔法勇者の頭にめりこむ。

\うおおおあっちぃー!/

片耳エルフ「バカをいえ、その程度朝飯前だ」

少年エルフ「ホント!? だったら……」

片耳エルフ「だが断る」

少年エルフ「え……」

第二皇子「そんなヒドイ」

片耳エルフ「うるさい、話は聞いた。 その上でお前に協力はしない……わっかたら帰れ」

ぐいぐい

片耳エルフは少年エルフ達を追い出しにかかる。

少年エルフ「そんな……お願いしますお礼に出来る事ならなんでも……」

片耳エルフ「黙れ、ハーフエルフなんぞ信用できない」

少年エルフ「お願いします…… 僕はどうなってもいいから娘を……」

片耳エルフ「くどい」

バタン

片耳エルフは少年エルフ達を追い出した。

\うぅ……お願い……します/

片耳エルフ「……ハーフエルフが人間の子を……だと…… 愚かな」

ドサッ

片耳エルフは耳をふさいで座り込んだ。

※つづく

#27 失われた村の失われたスープ

○氷の森・片耳エルフの家前

片耳エルフに追い返された少年エルフ達は空き地でキャンプをしていた。

少年エルフ「はぁ……、どうしよう」

魔法勇者「心配するな師匠はツンデレだからな、じきにデレる」

少年エルフ「じきにって、どれくらいで?」

魔法勇者「うむ、半年から数年に一回くらいか……」

第二皇子「それツンデレとかいうか気まぐれというか……」

少年エルフ「うーん、他に方法もないし……頼み込むしか方法ないし……」

孫僧侶「お師匠さんかー、あのヒト気難しいんだよねー」

魔法勇者「気難しいとはなんだ! 思慮深いだけだ!」

孫僧侶「ハイハイ…… これだから坊ちゃんは」

少年エルフ「あれ、爺僧侶さんは?」

魔法勇者「用でも足してるんじゃないか…… トシだしな」

少年エルフ「そうなの?」

○氷の森・片耳エルフの家

片耳エルフ「……まだいるのか」

片耳エルフは窓の隙間から少年エルフたちを垣間見る。

爺僧侶「いやー、ここらは冷えますのう」

暗がりから爺僧侶が現れた。

片耳エルフ「爺…… また勝手に」

爺僧侶「エルフ殿の娘の事をどう思います」

少年エルフ「フン、別にどうでもいい……」

爺僧侶「ああ見えてエルフ殿も苦労されておる、あの細腕で働き人間の子を育て上げ…… ふむ、どこかで似たような話を聞いたような」

片耳エルフ「……」

爺僧侶「あれは誰でしかなぁ? 人間の子のため自らの耳を切ってまで霊薬を作ってくれたエルフ族は」

片耳エルフ「さぁな、とんだ愚か者だろう」

爺僧侶「どうでしたかな…… しかし今回の呪いはエルフ殿も堪えておるようで、何せ自分が育てた人間の子が呪われたのじゃからの」

片耳エルフ「エルフ族が人間に関わるとは、まったく愚かしいな…… 腹が立つ」

爺僧侶「ほっほっほ…… まぁコレは独りごとですが、エルフ殿も霊薬の作り方を知っておれば作るでしょうな、耳を切ってまで」

片耳エルフ「……」

爺僧侶「意地っ張りも変わりませんな…… エルフ殿は素直ですぞ、どなたかと違いましてな」

片耳エルフ「やかましいっ! とっとと寝ろボケ老人が!」

爺僧侶「ほっほっほ」

爺僧侶は裏口から家を出た。

片耳エルフ「……なんで人間は100も越さぬうちにあんなに小賢しいのか、まったく」

○翌朝

片耳エルフ「そんなところでキャンプするな、バカ弟子が…… こっちへ来い」

魔法勇者たちは片耳エルフに招かれた。

爺僧侶「ほれ、エルフ殿とホビット殿も」

少年エルフ「え、いいの?」

爺僧侶「ほっほっほ 構いませんよ」

少年エルフ達は爺僧侶に促されて家に入った。

片耳エルフ「貴様か…… いいか、まず言っておく貴様には手はかさない」ビシッ

少年エルフ「う…」ウルウル

第二皇子「ヒドイ…… そんなハッキリ言わなくても」ボソボソ

片耳エルフ「ぐ……」

魔法勇者「師匠、大人げねーぜ。 エルフをいじめるなよ」

片耳エルフ「やかましい! 黙って聞け…… さてお前たちバカ弟子がせっかくここまで来たんだもてなしてやろうと思う」

魔法勇者「ホントか!?」

孫僧侶「帰れっていってたじゃーん」

片耳エルフ「やかましいっ 気が変わったんだ」

孫僧侶「へー、ふーん」

片耳エルフ「それで特製の『解呪ラーメン』をふるまってやろうと思う」

魔法勇者「は?」

少年エルフ「え?」

第二皇子「解呪……ラーメン?」

片耳エルフ「あーあー、これは独り言だが、作ってる間は私は集中してるからな…… 周りが気にならんほどにな、横で作り方を見られていてもな…… ゲフンゲフン」

爺僧侶「ほっほっほ、昔からそうでしたな片耳殿は」

魔法勇者「昔から? いやキャラ違くね?」

片耳エルフ「やかましいわッ!」シュッ

魔法勇者「ヘブッ!」パカ―ン

魔法勇者の頭でシュガーポットが砕ける散る。

少年エルフ「師匠さん…… それじゃ」

片耳エルフ「……さぁてと、まず材料集めだな~ 外に出る準備しないと」チラッチラッ

少年エルフ「えっと防寒着はどこ」

第二皇子「ほらコレ、手伝うよ」

少年エルフ「うん、ありがとう」

爺僧侶「ほっほっほ……」

孫僧侶「私たち何すれば……」

魔法勇者「やったぜ師匠の料理ひさびさだぜ、のんびり待とうぜ」

片耳エルフ「バカ弟子共、待ってる間にスノーゴーレムとアイスゴーレムを直して来い、全部だ」

魔法勇者「マジか!?」

○氷の森

片耳エルフはホワイトタイガーに乗っている。

テクテク

白虎「ぐるる……」

片耳エルフ「……(ちゃんと来てるな)」

片耳エルフは少年エルフの足音を後ろに歩み去った。

テクテク……

しばらくしてから少年エルフと第二皇子歩いている。

テクテク

第二皇子「あっち?」

少年エルフ「うんあっちに歩いてる」

少年エルフは片耳エルフの足音について行く。

第二皇子「やっぱり長い耳はよく聞こえるんだね」

少年エルフ「うん、まぁ……(今のさん師匠さんに聞こえたかな?)」

テクテク

少年エルフ達は片耳エルフ達の音について行く。

○氷の森・温泉地帯

もくもく

当たりに霧のようなものが立ちこめてきた。

少年エルフ「この霧あたたかい、蒸気?」

第二皇子「あっちみて温泉が噴き出してる」

シュー もくもくもく

少年エルフ「それでこの辺りだけ雪が溶けてるんだ」

第二皇子「この辺りなら食材が採れるかも…… それにしてもラーメンで解呪するなんてね」

少年エルフ「あの、ラーメンってどんな料理?」

第二皇子「知らないの?」

少年エルフ「うん……」

第二皇子「えっと温かいスープに麺っていう……」

少年エルフ「へぇ」

ひゅうう

風に乗って少年エルフの耳に片耳エルフのつぶやきが届く。

(……これは独り言だが、かつて故郷を追放された私はある店主からラーメンを戴き……)

少年エルフ「……(もしかしてこっちの会話聞こえてる?)」

第二皇子「どうかした?」

○温泉地帯・ネギの群生地

ひゅうう

風に乗って少年エルフの耳に片耳エルフのつぶやきが届く。

(……この当たりの野菜は私が植えたものでラーメンの……)

少年エルフ「なるほど、この葉っぱを採るみたい」

ザクザク

第二皇子「独特の匂いがするね」

少年エルフ達はネギを刈る

○温泉地帯・走る人参畑

ひゅうう

風に乗って少年エルフの耳に片耳エルフのつぶやきが届く。

(……この走り人参は早い者程身がしっかりしており……)

少年エルフ「このニンジンを捕まえるんだって!」

ダダダダダダッ!

第二皇子「はやい―ッ!」

少年エルフ達は駆け回る人参を追いかける。

○温泉地帯・巨大猪の穴

ひゅうう

風に乗って少年エルフの耳に片耳エルフのつぶやきが届く。

(……ここの猪がチャーシューに適しており……)

ドドドドドドドドッ!!

少年エルフ「この猪を狩るんだってーっ!」

第二皇子「でもどうやってーッ!?」

少年エルフ達は巨大猪に追いかけられている。

巨大猪「ブフォー!」

少年エルフ「うわぁ!!」

巨大猪が少年エルフに襲い掛かろうとしたその時。

ビュルルルルルッ

巨大猪「プギーッ!?」ザシュッン

ドサッ

何処からともなく風の刃が飛んで来て巨大猪を真っ二つにした。

少年エルフ「……」ゾォ

第二皇子「大丈夫?」

少年エルフ「う、うん……(今の魔法)」ドキドキ

第二皇子「顔真っ青だよ、少し休む?」

少年エルフ「ううん大丈夫だから、ほら猪の身を切り取って…… 行かなきゃ」

第二皇子「わかった僕がやるから、エルフは休んでて」

少年エルフ「……うん、ありがとう……」ドキドキ

少年エルフは青ざめている。

少年エルフ「ン……?」

少年エルフは離れた所に兎が居るのを見つけた。

兎「……」ジー

少年エルフ「……(こっち見てる)」

作業を終えた第二皇子が駈寄る。

第二皇子「全部は無理だからいい所だけとったよ…… どうしたの?」

少年エルフ「え、いや兎がこっち見てて……」

少年エルフが兎を探すが見えなくなっていた。

少年エルフ「……どこかいったみたい」

第二皇子「兎も材料にいる?」

少年エルフ「え…… ううん、それより行こう」

第二皇子「うん」

テクテクテク

少年エルフ達は森の奥へ向かう。

ガサッ

兎「フゥ……」

ガサガサ

少年エルフ達の後を兎が追っていく。

○廃村

少年エルフ「ここ……村だったのかな?」

第二皇子「そうみたいだけど……随分古いね」

ひゅうう

風に乗って少年エルフの耳に片耳エルフのつぶやきが届く。

(……この村は母と一族が暮らし聖地を守っていた……)

少年エルフ「……師匠さんの一族の村だったみたい」

第二皇子「そうなんだ…… なんだろ、美味しそうな匂いがするね」

少年エルフ「あれ、この先の温泉を見て」

滅びた村の先には温泉が広がっており、そこには巨大な竜の骨が沈んていた。

○聖地・竜骨の湯

グツグツグツ…… ボコンボコン

少年エルフ「……暑い」

温泉はかなり高音で煮えたぎっている。

第二皇子「すごい、温泉と竜骨で天然のスープが出来てる」

白虎「グルル……ゴクゴク」

片耳エルフ「美味いか? そうだろう、温泉が数千年かけて煮だした竜骨スープだ魔力も濃厚だ」

少し離れた場所で片耳エルフのホワイトタイガーが竜骨スープを飲んでいる。

少年エルフ「……(けっこう近いけどいいのかな)」

第二皇子「エルフ、早く汲もう」

片耳エルフ「これは独り言だが、このスープはあの巨大な竜骨に近い方が濃い、ほら行くぞタイガー」

白虎「がるっ」

第二皇子「あっちみたいだね…… 師匠さんって最初はコワイ人と思ったけど結構いい人かも」

少年エルフ「うん、そうだね」



片耳エルフ「よしここだ……」

少年エルフ「うわぁ…… 大きな骨」

片耳エルフ「滑るから気をつけろよ…… タイガー」

ホワイトタイガーは水面から突き出た骨の上を軽々と跳んでいく。

少年エルフ「うわっと…… ありがと、ここ気をつけてホビット」

第二皇子「……はい(いい人なんだろうけど、素直じゃなさそうだなぁ)」

少年エルフ達は骨の上を歩いていく。

グラッ……グラグラッ

少年エルフ「うわあ!? なに!?」

片耳エルフ「この邪悪な気配、どこだ!?」

白虎「グルルルル」

第二皇子「あそこ…… 何アレ?」

少年エルフ「兎?」

巨大な竜骨の天辺に兎が邪悪に微笑んでいる。

兎「フハハハハ、これは素晴らしい最高の素材だ」

ゴゴゴゴゴ

片耳エルフ「危ない、逃げろ」

少年エルフ「うわぁ落ちる!?」

第二皇子「熱い!」

白虎「ガルッ」

骨の上から落ちそうになった少年エルフ達を白虎が背中に乗せて助けた。

片耳エルフ「まさか…… 死霊使い!」

死霊使い(兎)「ハハハ、礼を言うぞ小僧、お前達のおかげでここまでこれた」

兎は死霊使いだった。

第二皇子「え!?」

少年エルフ「まさかずっとついてきてた……」

死霊使い「お礼にコイツの犠牲者第一号だ!」

ガラガラガラ……

温泉の竜骨が組み上がり動き出す。

骨竜「ゴアアアアアアアアアアアアア」

スカルドラゴンがあらわれた!!

※つづく

#28 タイガー・アンド・スカルドラゴン

○氷の森・竜骨の湯

片耳エルフ「”豪火球”」

ゴオオオン

死霊使い「なんの”四弾氷爪”」

ビュカキン

炎と氷の魔法が相殺される。

死霊使い「まだまだ」

髑髏杖「”大火球”」

死霊使いの杖から魔法が放たれる。

片耳エルフ「タイガーよ!」

白虎「がおおお」

ホワイトタイガーは大火球を食べて吐き出した。

ゴオオ

火球は死霊使いをかすめる。

死霊使い「ほう、魔法を食うか気に入ったぞ」

片耳エルフ「フン、貴様のような邪悪なものには懐かんよ」

ドドン! ガガン!

片耳エルフと死霊使いの魔法がぶつかり、ホワイトタイガーとスカルドラゴンが格闘する。

少年エルフたちは片耳エルフの後方で戦いを見守っている。

少年エルフ「師匠さんすごい」

第二皇子「あれじゃあ下手に手助けできないね」

片耳エルフ「今だ噛み砕け!」

白虎「ガオオッ」

ホワイトタイガーが死霊使いに飛び掛かる。

死霊使い「おおっと」

ガキン

片耳エルフ「何!?」

死霊使い「かかったな馬鹿め、所詮獣よ」

スカルドラゴンの肋骨が伸びてホワイトタイガーを捕まえた。

白虎「グオオオ」ガリガリ

片耳エルフ「直ぐに助けて……」

死霊使い「遅いわ、骨となれ虎よ」

死霊使いは鋭い結晶をホワイトタイガーへ投げた。

ザシュ

白虎「グオオオオ!?」

結晶が白虎に突き刺さる。

死霊使い「王手だ」

ドスッ

死霊使いはもう一つの結晶をスカルドラゴンに突き立てる。

ヒュオン

スカルドラゴンとホワイトタイガーが光に包まれる。

片耳エルフ「なんだあれは!?」

少年エルフ「あれって海の時の……」

スカルドラゴンとホワイトタイガーが融合する。

死霊使い「ふはははは、虎に翼とは正にこの事よ」

スカルタイガードラゴンがあらわれた。

骨虎竜「ゴギャアアア」

スカルタイガードラゴンが大量の骨を吐き出した。

ドガガガガガ

片耳エルフ「く、”高守護”」ゴォン

片耳エルフは防御力を上げて耐えるが無傷では済まない。

少年エルフ「師匠さん!」

少年エルフは片耳エルフの元へ駆け出した。

第二皇子「ちょっとエルフ…… そうだあの曲、楽譜は」

第二皇子は荷物から何かを探し始めた。

少年エルフは片耳エルフの元に駆け寄る。

少年エルフ「師匠さん大丈夫? ”大治癒”」パアア

片耳エルフ「……フン、この程度なんともない」

片耳エルフは治癒を受け立ち上がる。

死霊使い「素晴らしいこれが秘宝の力、学者風情もバカにできんな」

片耳エルフ「タイガー取り込まれたのか、……やむをえん”十字大風刃”」

ビュゴゴゴゴゴゴッ!

巨大な風の刃がスカルタイガードラゴンに放たれる。

死霊使い「バカめ」

ビュルル

骨虎竜「ギュガガガ」

スカルタイガードラゴンは魔法を食べた。

片耳エルフ「まさか能力まで!?」

死霊使い「そういうことだ、自らの魔法で消し飛ぶがよい」

魔法が吐きだされる

ビュゴゴゴゴゴゴッ!

片耳エルフ「”範囲守……”(間に合わない)」

少年エルフ「お願い」

少年エルフは魔法石を掲げた。

魔法石「”ニジュフ……”」ビュル

ズドドォン

風の障壁が風の刃を防いだ。

少年エルフ「出来た……、間に合った」

片耳エルフ「音声魔法による高速詠唱? ……そんな方法が」

死霊使い「そうか、あの時の婆の…… しかしコレならばどうだ」

ズドドン

スカルタイガードラゴンの巨大な足の踏みつけ攻撃!

片耳エルフ「避けろ」

少年エルフ「うわあああっ」

片耳エルフが少年エルフを抱えて踏みつけを回避する。

死霊使い「ふははは 早く走らないと粉々だぞ」

ズドドン ズズン

片耳エルフ「おのれ…… 一旦逃げるしか」

少年エルフを抱えた片耳エルフは逃げ出そうとした。

少年エルフ「まってホビットが」

片耳エルフ「そういえば…… どこだ?」

第二皇子「えっと……フムフム」

第二皇子は取り出した楽譜を読んでいる。

少年エルフ「ホビット、逃げて」

第二皇子「よしわかった」サッ

第二皇子はバイオリンを取り出して構える。

第二皇子はバイオリンを取り出して構える。

片耳エルフ「何をしている、逃げるぞ」

少年エルフ「ホビット!」

第二皇子「もう大丈夫だよ」

♪♪♪~

第二皇子が魔曲”鎮魂歌”を弾き出した。

骨虎竜「ガガガガガッ」

死霊使い「なんだこの音はああッ!?」

ガラガラガラ……

死霊使い達の体が崩れていく。

少年エルフ「何? どうしたの?」

片耳エルフ「鎮魂歌か、まだ弾ける者がいたとは」

死霊使い「私のドラゴンが虎が!」

骨虎竜「ゴゴゴ……」ガラガラガラ

スカルタイガードラゴンは崩れさった。

少年エルフ「ホビットすごーい」

第二皇子「へへ」

♪♪♪~

死霊使い「おおおお、逃げ…… 逃げられんッ!」ガラガラ

死霊使いの体から骨の兎やネズミ、鳥が這い出して来るがそれもまた崩れていく。

片耳エルフ「タイガーの仇だ ……”焔”」

キィイン

片耳エルフの手に爆裂魔法が凝縮する。

死霊使い「一曲弾かれたただけでこんな、こんな馬鹿な―っ!」

ヒュドドドドドドン

死霊使いは超高温の爆発に呑まれた。

片耳エルフ「フン…… 久しぶりに少し本気を出してしまったか」

死霊使いとスカルタイガードラゴンを倒した。



少年エルフは温泉からスープを汲み取った。

ドロドロドローン

少年エルフ「すごく濃いね」

第二皇子「ホント魔力もすごい」

少年エルフ「これなら解除薬でもなんでも作れそう」

第二皇子「作るのはラーメンだけどね…… それにしても濁ってるね」

温泉は先ほどの戦闘で濁っている。

少年エルフ「なるべき奇麗なところを探して汲もうか」

第二皇子「そうだね、手分けして探そう」



片耳エルフ「タイガー…… 済まない」

片耳エルフはホワイトタイガーの骨の近くに佇んでいる。

片耳エルフ「こんな形で別れがくるとは……」

キラン

片耳エルフ「む?」

ガラガラ

片耳エルフは骨の間から結晶を拾い上げる。

片耳エルフ「ムゥ……(これは奴の……)調べるべきか」

片耳エルフは結晶を鞄に詰めた。

少年エルフ「師匠さん材料これでおわり―?」

遠くから少年エルフが問い掛けてきた。

片耳エルフ「ああ、コレで最後だ帰るぞ」

片耳エルフは少年エルフのもとにかけよる。

少年エルフ「ラーメンってどうやって作るの」

片耳エルフ「それはまず……」

少年エルフと片耳エルフが一緒にあるいていく。

第二皇子「あんなに嫌ってたのに……(すっかり仲良くなったなぁ)」

第二皇子も二人の後を歩いていく。

※つづく

#29 合流

○氷の森・雪の道

サクサク

第七王女「やれやれ氷の塊が襲ってくるとはな」

第七王女達が歩いてきた。

女兵士「道はこっちでいいの?」

娘友「合ってるわ反応が強くなってるし」

ピコーンピコーン

娘友は探知機を手に案内する。

男子「らりるれろ~」

男子は口封じの呪いにかかっている。

女兵士「男子くん大丈夫? 少しはかわろうか?」

男子「……」

男子は首を振ってこたえる。

娘はソリに横たえられ、男子がソリを引いていた。

第七王女「娘、もうすぐじゃぞ、がんばるのじゃぞ」

娘「……」

娘は朦朧としている。

女兵士「あ、誰かいるよ」

娘友「エルフさん? それとも……」

○氷の森・雪だるまの広場

魔法勇者は雪だるまを転がす手を止める。

魔法勇者「はー、さぶー」

孫僧侶「誰か来たみたいよ、あー」

第七王女「あ」

魔法勇者「あ、いつぞやのチンチクリン」

第七王女「誰がチンチクリンじゃ」

ズン

\ぉおおぉお/

魔法勇者は股間を押さえて悶絶する。

第七王女「まったく出会い頭に失礼な奴じゃ」

孫僧侶「王女ちゃん久しぶり~、ごめんねウチのバカ坊ちゃんが」、

第七王女「久しいのう、しかしバカは治らないもんじゃのう」

孫僧侶「ホントホント」

魔法勇者「お、お前がいるということは娘さんも」ガバッ

男子「ら」

魔法勇者は目ざとく娘を見つけ駆け寄った。

娘「……」

魔法勇者「おお、呪われたと聞きましたがもう安心です俺が解呪しましょう、古来から美女の呪いを解くのは王子のキスときまっ」

第七王女「お断りじゃッ!!」

ゲシ

魔法勇者「ふべら」

第七王女のドロップキック! 魔法勇者は作りかけの雪だるまに突っ込んだ。

孫僧侶「坊ちゃんじゃ役不足よー」

娘友「そーねー」

魔法勇者「遠慮ねーな相変わらず…… ちょっとフザケタだけだろうが」

第七王女「ふざけるのは顔だけにしておくのじゃ」

魔法勇者「やかましい! そういえばお前ら、どうやってここに」

第七王女「無論、歩いてじゃ他に方法があるのか?」

魔法勇者「いやまて…… しかしそれだどアイスゴーレムは……」

第七王女「ああ、不細工な氷の化物はわらわ達が退治しておいたぞ」

魔法勇者「てめー!! 最初から作り直しじゃねーかちくしょー!」

○氷の森・片耳エルフの家

少年エルフ「熱い……、けっこう力がいるね」

片耳エルフ「疲れたか? しかし、お前は飲み込みが早いな筋がいい」

少年エルフ「ホント? えへへ」

片耳エルフは少年エルフに解呪料理の手ほどきをしている。

第二皇子「ふわぁ…… まだかな、ん?」

ガヤガヤ

家の外が騒がしくなる。

ガチャ

第七王女「ここか? なんだかいい匂いがするのう」

第七王女達が入ってきた。

第二皇子「あ、王女姉さま。追いついたんだ」

第七王女「ハフッ」ズキューン

第二皇子「王女姉さま? どうしたの?」

第七王女「フフ…… ホビットよやっと追いついたのじゃ、お主は息災か?エルフは無事か?」

第二皇子「え、うんエルフはあっちに…… あの、王女姉さま鼻血がでてるけど……」

第七王女「なに気にするでない…… これは感動があふれておるだけじゃ」

第二皇子「かんどう……?」

娘友「ホビット気にしないで、それよりエルフさんは?」

第二皇子「ほらあそこで解呪ラーメンを作ってるよ」

娘友「解呪ラーメン…… また妙なことにってあの人エルフ族じゃない!?」

第七王女「なんと!」

女兵士「うわー、エルフちゃん以外はじめて見た」

男子「らりるれろ!!」

第二皇子「あ、口封じされてる」

片耳エルフ「なんだうるさいな、追加の客……か…… 剣士! お前生きてたのか」

ダダッ ガバッ

片耳エルフは突如男子に抱き付いた。

魔法勇者「!!」

女兵士「!!」

少年エルフ「!!」

男子「らりるれろ!?」

片耳エルフ「なんだお前あんな罠にかかったのか、仕方のない奴だな」

片耳エルフは解呪薬を取りに奥へいった。

魔法勇者「おおお、お前なにやってんだ師匠とどういう関係だテメェ!」アタフタ

女兵士「そそそ、そうよ初めてあったのじゃないの!?」アタフタ

少年エルフ「そうだよね男子くんモテるもんね……だよねー」ドヨーン

男子「ッ!!(エルフさんがあんな目を!? 俺が何をしたんだ)」

片耳エルフ「どうした? ほらコレをのめ」

片耳エルフが戻ってきて瓶を男子に渡す。

グビグビ

男子「あの」

片耳エルフ「まったくずいぶん久しぶりじゃないか、どうしてたんだ」

魔法勇者「近いぞテメェ―!」

女兵士「男子くーん」

少年エルフ「ぁぁぁぁぁ」

男子「まったまった! 俺はアナタを知らないですよ誰かと勘違いをしてるんじゃ」

片耳エルフ「何をいって、お前右手が……(右手がある、それに前より若いような)」

第七王女「そうじゃ人違いじゃろう、わらわ達はここは初めてじゃ」

片耳エルフ「コホン…… お前、剣士という名に心当たりは」

男子「……御爺様と同じ名前ですが、まさか知り合いですか?」

片耳エルフ「御爺…… お前は剣士の孫か……」

男子「そうですかね……」

片耳エルフ「フム……」

片耳エルフはしばし考え込む。

女兵士「男子君のお爺さんって?」ボソ

第七王女「知らんのか? 剣聖の称号を授与されておるぞ」ボソ

女兵士「へー、有名?」ボソ

娘友「一応ウチの国の英雄なんですけど……」ボソ

男子「あの……」

片耳エルフ「そうか…… それで剣士は」

男子「10年程前に亡くなりました」

片耳エルフ「そうか…… そうだよな人間だもんな」

少年エルフ「あの師匠さん……」

片耳エルフ「ちょっと休憩だ、お前達も好きに休め」

片耳エルフは外へ歩いて行った。



少年エルフ「娘の容態は?」

娘友「言われた通りに薬を飲ませて来たけど弱ってるわ」

少年エルフ「これを飲ませてみよう」

少年エルフは仕込み途中のスープを娘にのませた。

娘「……ぅ」

少年エルフ「……少し良くなったけど、解呪まで出来てない…… 早く完成させなきゃ」


※つづく

#30 復活、竜骨解呪ラーメン

○片耳エルフの家・庭先

庭先のベンチで片耳エルフが佇んでいる。

片耳エルフ「……剣士」

少年エルフ「あの……師匠さん」

少年エルフがやってきた。

片耳エルフ「なんだ」

少年エルフ「ここ座っていい?」

片耳エルフ「ああ」

少年エルフは片耳エルフの近くへ腰かける。

少年エルフ「あの……男子くんのお爺さんと友達だったの?」

片耳エルフ「フ…… バカを言うなあいつは敵だったのだ」

少年エルフ「敵だった?」

片耳エルフ「前の戦争の時に私は……」

片耳エルフは語りだした。

○しばらく後

少年エルフ「それでそのその後は?」

片耳エルフ「いやそれっきりだ」

少年エルフ「そうなの!?」

片耳エルフ「あーそうだな、あんな奴死んで清々するな、うんそうだ清々する」

少年エルフ「……(お爺さんって一体)」

片耳エルフ「エルフ、あの人間がお前が言っていた娘だな」

少年エルフ「うん、僕は娘のパパだからどうしても呪いを解きたくて……」

片耳エルフ「そうか…… しかし覚えているか? あいつ等は人間だということを」

少年エルフ「それは、わかってるよ」

片耳エルフ「本当にか? いずれ同じ時を過ごせないのだぞ」

少年エルフ「それは……」

片耳エルフ「あまり人間に関わるな、お互いによくない…… そうだよくないのだ」

少年エルフ「……そうかな、僕は娘と一緒にいて楽しいよ」

片耳エルフ「……」

少年エルフ「娘を育てて、ワガママきいて、一緒に歩いてきて、いつの間にか娘は僕をいろんな所に連れてきてくれたよ、いろんな事も見たし、感じたよ……辛い事もあったけど娘と一緒だから大丈夫だったよ」

片耳エルフ「……そうか」

少年エルフ「娘のおかげで師匠さんにも会えたしね」ニコニコ

片耳エルフ「フフッ……なにをいう、ハーフエルフのくせに」

片耳エルフは少年エルフの頭を荒っぽく撫でる。

少年エルフ「ねぇ……師匠さんは」

ガサッ

娘「パパ……」ヨロヨロ

少年エルフ「娘!? 解呪できたの! 大丈夫?」

娘が娘友に持たれながら歩いて来た。

娘友「大丈夫そうじゃないけど、エルフさんの所行くってきかなかったの」

少年エルフ「娘、ダメじゃない……もう」

娘「ふふ、だって久しぶりだもの」

片耳エルフ「ふぅむ……その状態でよく動けたな」

娘「エルフ族の……オンナ……(イヤな予感は当たるものね)……う……グ」ガク

少年エルフ「娘! 娘!?」

片耳エルフ「大丈夫だ、すぐに戻って仕上げるぞ」

少年エルフ「はい」

娘「……(エルフ族……パパ以外の……)」

○片耳エルフの家

片耳エルフ「さぁ喰え」

ドン

片耳エルフと少年エルフは竜骨解呪ラーメンを完成させた。

魔法勇者「ゥンマァーイ」

娘友「うおおお細胞が活性化するわー」

爺僧侶「うますぎる」

第二皇子「みんなテンションがおかしいよ」

片耳エルフ「当たり前だ、特製の背油も使ってるんだマズイ訳がない」

男子「美味い……(けど胃もたれしそうだ)」

少年エルフ「王女、娘を起こせる」

第七王女「こうか?」

娘「うぅ……」

第七王女がベッドに横たわる娘の上半身を起こす。

少年エルフ「これを……」

少年エルフはスプーンで竜骨解呪ラーメンのスープを娘にのませた。

こくこく

娘「ッ!!」ブッ

娘「ナニコレマズッ 脂っこい」ケホケホ

魔法勇者「ッ!!」

爺僧侶「」

孫僧侶「プッ」

ゴン

孫僧侶は無言で片耳エルフに殴られた。

\はぅ~/

片耳エルフ「ほーぅ」ピキピキ

娘友「まー味覚はひとそれぞれよね」ボソ

少年エルフ「……(やっぱり) 娘、ほらこっちはさっぱりしてるよ」ボソ

娘「パパが作ったの」

少年エルフ「そうだよ」

少年エルフは別に作っていた竜骨解呪ラーメン(さっぱり味)を娘にのませた。

娘「んく…… 美味しい」

パアア

娘の呪いは解けた。

片耳エルフ「フン…… 解けたか」

少年エルフ「うん、師匠さんのおかげだよ」ニコ

片耳エルフ「……勘違いするな 私は何もしていない」ポッ

少年エルフ「そう? でもありがとう」ニコニコ

片耳エルフ「ふふふ」

娘「……そーよ勘違いしない事ね パパは私の為にコレを作ってくれたのよ」

少年エルフ「娘?」

片耳エルフ「ほーぅ、……そうだな人間の小娘よ、しかしお前はまだ回復しきってないだろう少し休んでいけ」

娘「いいえ、パパのおかげですっかり……」フラッ

少年エルフ「娘!」

ガシッ

男子「大丈夫か?」

娘「く……」

片耳エルフ「強がるな…… しばらく泊まっていくがいい、エルフ…… と人間の娘よ」

少年エルフ「いいの?」

片耳エルフ「無論だ」

少年エルフ「何から何まで、本当にありがとう」ニコッ

片耳エルフ「フ……」

娘「ぬぅぬぬ……」

※つづく

#31 エルフの耳はなぜ長い

○片耳エルフの家

少年エルフ「師匠さん鹿角ってある?」

片耳エルフ「鹿の角か? いやないな」

少年エルフ「そっか……うーん」

片耳エルフ「なんだ薬に使うのか」

少年エルフ「うん……娘の滋養薬にと思ったんだけど……鹿角だけもってないんだよね」

片耳エルフ「ふむ、鹿ではないがトナカイならこの辺りでもいるぞ」

少年エルフ「トナカイ…… 使えるかな」

片耳エルフ「試すなら狩場に案内するぞ」

少年エルフ「うん、わかったお願い」



少年エルフ「ちょっと行ってくるから男子くん、友ちゃん娘をお願いね」

男子「わかった」

娘友「はーい」

バタン

娘「うぅん……パパ? どこかへ出かけたの」うとうと

男子「なんだかトナカイ狩りにいったみたいだ」

娘「狩り…… 誰と?」

男子「それはし……」

娘友「すぐ戻るって」

娘「……そう」スー

娘は眠ってしまった。

男子「なんだどうした」

娘友「師匠さんとエルフさんが一緒に出掛けたってしったら娘がどうするかわかるでしょ」ボソボソ

男子「スマン…… そうだな」

娘友「でしょ、しばらく安静にさせた方が」

魔法勇者「おー麗しい娘よ ご機嫌はいかが」

魔法勇者があらわれた。

娘「うん……なにようるさいわね」

娘が目を覚ます。

男子「娘はまた本調子じゃないだそっとしておいてくれ」

魔法勇者「なんだテメェはデケェツラして娘さんのなんなんだ」

娘友「そういえばこの二人初対面だったわね」

男子「俺は娘の幼馴染だ」

魔法勇者「なにぃオサナナジミ…… そんなものが本当にいるとは」

娘友「なんでショック受けてるのよ」

魔法勇者「いや大丈夫だ幼馴染は負けフラグそう軽めの書物には書いてある」

男子「どんな書物だ」

魔法勇者「やかましいわイケメンゴリラ、師匠とエルフが居ない今が俺のチャンスなんだ」

娘「なに? あのエルフ女とパパが!」ガバッ

娘友・男子「「あーあ」」

魔法勇者「なんだなんだ? 俺は悪くねぇ」

○氷の森・狩場

少年エルフと片耳エルフが話ながら歩いている。

片耳エルフ「なに、61歳だと!? 100歳くらいかと思ったぞ…… ふむ(人間の血のせいか? 成長が早い)」

少年エルフ「そう? えへへ」

片耳エルフ「ふむ(こいつを弟子にしたら100年位は暇つぶしに……)」

少年エルフ「あ、すごい大きな鹿」

片耳エルフ「あれがトナカイだ、よし狩るか”風……”」

少年エルフ「うわぁ! まってまって」

片耳エルフ「なんだ?」

少年エルフ「その……角だけでいいんだから狩らなくても」

片耳エルフ「狩ったほうが早いだろうが」

少年エルフ「だけど……その…… 他にも方法が……」

トナカイは少年エルフ達に気付いて逃げ出した。

少年エルフ「あ……」

片耳エルフ「逃げられたか」

バリバリバリ

片耳エルフ「なに!?」

少年エルフ「え? 娘」

娘「あら、奇遇ねこんな所で」

少年エルフ「娘!? どうやってここに、ちゃんと寝てなきゃ!」

娘「大丈夫よ、ちょっと散歩してただけだから」



感電して気絶したトナカイの横に男子が黒焦げで倒れている。

男子「いきなり人の背中で電撃うつなよ……」プシュー

離れた所では走り過ぎた魔法勇者が吐瀉物を吐きながら倒れている。

魔法勇者「もう……走れねぇ……ゴフォ」

息を切らした娘友が追いついてきた。

娘友「はぁ……はぁ…… あ~追いついたみたいねヒドイ有様ね」



娘「パパ…… 私は大丈夫だから無理しないでいいのよ」ボー

娘は熱でボーッとしている。

少年エルフ「なに言ってるのすごい熱じゃない…… もう無理するから」

娘「へいきへいき…… これくらい」ボー

片耳エルフ「フン…… もう大丈夫なようじゃないか、薬はいらないんじゃないか? エルフ」

娘「……あ、やっぱダメだわ」フラッ

少年エルフ「娘! まっててすぐに薬を調合するから」

少年エルフはトナカイを探しに行った。

片耳エルフ「……」

娘「……」

\うわぁ男子君大丈夫!?/



娘「言わせてもらうけど、パパは誰にでも優しいだけよ勘違いしないでくれる?」

片耳エルフ「ハ、なんだそれは別に私は勘違いなど……あいつが勝手に懐いてきただけだろうが」

娘「ハァ!? それが勘違いっていってるの! パパは私の為にここまで来たのよ」

片耳エルフ「そうだな、どこぞの人間が呪われたせいでこんな所までな、まったく迷惑な話だな」

娘「なによパパが迷惑になるわけないじゃない!」

片耳エルフ「何を言っている? 熱で耳が聞こえないのか!」

娘「耳がなによ、アンタだって何よその耳半分切れてるじゃない、そんな半端な」

片耳エルフ「人間ッ! 貴様にエルフ族の耳の何が分かる!」

娘「そんなのパパの耳ならなんでも知ってるわよ、パパ以上に、先っぽから一番奥まで」

片耳エルフ「待て待て待て、お前本当に何の話をしている!?」

娘「パパはねぇ~、こう先っぽを引っ張って奥をコリコリとすると」

片耳エルフ「バカ!? そんな話を人前でする奴があるか」カアア

娘「うふふ、綿棒で一番奥をね……」

片耳エルフ「やめろ人間、それ以上しゃべるな」

娘友「……なんの話よ」

少年エルフ「……耳掃除の話だよね……?」

娘友と合流した少年エルフがやってきた。

片耳エルフ「バカ! エルフそんな言葉を口にするな」カアア

少年エルフ「え、耳掃除?」

娘友「耳掃除が?」

片耳エルフ「うわああああそんな平然と! これだから人間は!!」



片耳エルフ「いいか、エルフ族は母親と伴侶以外にその…… 耳を許してはいけないのだ」

少年エルフ「……そうなの?」

片耳エルフ「く……、人間に育てられたせいでこんな無節操に、不憫な」

少年エルフ「でもそれじゃあ師匠さんはどうやって」

片耳エルフ「それは自分で…… バカ、なんて事を言わせるんだ」カアアアア

片耳エルフは顔を覆ってふさぎ込む、耳まで真っ赤である。

少年エルフ「ご、ごめんなさい」

娘「んふふ~ パパ~久々にしてあげるわよ耳掃除~」

片耳エルフ「私の家でそんな事をするつもりか!? 破廉恥な」カアアア

少年エルフ「娘…… やっぱり少しおかしいよ、早く戻ろう」

娘「そうよ、パパの耳は私のもーのーよー」

片耳エルフ「そんな事を堂々と…… これだから人間は」カアア

少年エルフ「あの……僕の耳は誰の物でもないから、ね?」



男子「結局こうなるのか」

男子は朦朧とした娘を背負っている。

少年エルフ「ゴメンね男子君、友ちゃん、娘の無茶に付き合わせて」

娘友「大丈夫大丈夫慣れてるから」

少年エルフ「ホントにゴメン」

片耳エルフ「ハァ…… エルフ、あまり人間を甘やかすなよ」

少年エルフ「はい、師匠さん」

片耳エルフ「それで薬は出来そうか?」

少年エルフ「うん、簡単な調合でも効果あったみたいだし、戻ったらちゃんとした調合をするよ」

片耳エルフ「そうか…… お前達はその娘が回復した後はどうするんだ?」

少年エルフ「それはうーん……」

娘友「どーかしら王女と相談もしなきゃだけど」

片耳エルフ「そうか…… なあエルフおまえが……ッ!」

娘「……」ジー

言いかけた片耳エルフは凝視してくる娘に気付いた。

少年エルフ「なに?」

片耳エルフ「いや、今はいい……またな」

少年エルフ「うん」

\エルフー/

少年エルフ「王女?」

第七王女が手に何かもって走ってきた。

男子「どうした?」

第七王女「白竜からSOSじゃ」



娘友「どういう事?」

第七王女「白竜からのSOSじゃ」

第七王女は角笛を取り出した。

男子「なんだコレ」

第七王女「白竜から連絡用に貰ったものじゃ」

娘友「見たことない形だけど無線機? スゴイわね」

第七王女「白竜から伝言が届いておるのおじゃ」

\メッセージヲサイセイシマス/

角笛「ちょっと大変よ魔王アーマーが…… キャーッ! プツツーツーツー」

\サイセイヲシュウリョウシマス/

少年エルフ「魔王アーマーってこないだの?」

第七王女「そうじゃ、帝国軍が攻めてきたのじゃ」

※ドラーメンガール編終わり
次回更新は12月9日に

#32 最終絶望計画 ~僕の世界を救って~

○氷の森・片耳エルフの家

家の前で第七王女達はソリの準備をしている。

片耳エルフ「よし忘れ物はないな」

少年エルフ「うん大丈夫…… えっとお世話になりました」

少年エルフは片耳エルフに別れの挨拶を返す。

片耳エルフ「別に良い、本来なら私も一緒に行きたいのだが信じられないことにバカ弟子が風邪をひいてしまってな」

魔法勇者「風邪どころか遭難しかかったぞ、どいつも俺の事忘れやがって」

孫僧侶「しょーがないですよー坊ちゃんだし…… 大人しく寝ててください」

魔法勇者「ちくしょう」

家の中から魔法勇者のボヤキが聞こえる。

片耳エルフ「まあそんな訳で直ぐには行けない、帝国の動きは私も気になる所なのだがな」

娘「エルフ早く、もういいでしょ」

娘が片耳エルフの会話に割って入る。

片耳エルフ「大分よくなったようだな」

娘「ええおかげ様で」

片耳エルフ「そうかそうか」ニコニコニコ

娘「ええ……」ニコニコニコ

ゴゴゴゴゴゴ……

少年エルフ「……(なんか怖い)」

片耳エルフ「そうだエルフ、コレを持っていけ」

少年エルフ「これは?」

少年エルフは握りこぶし程もあるドングリを渡された。

片耳エルフ「……昔、森のエルフ族からお守りとして貰ったものだ持っていけ」

少年エルフ「大事なものじゃないの?」

片耳エルフ「いいんだ、きっと私よりお前が持っている方が意味がある。餞別は素直に貰っておくものだぞ」

少年エルフ「うん、ありがとう」

片耳エルフ「気をつけていけよ」

少年エルフ「はい」

第七王女「もういいかの? よーし出発じゃ」

少年エルフと娘もソリに乗り込んだ。

○氷原・走る2台のソリ

シャシャシャー

娘友「はい、そんな訳でアタシ達は鹿ソリに乗って白竜さんがSOSをしたと思われるドワーフ城へ向かっている所です、死ぬほど寒い~ッ」ぎゅうぎゅう

娘「そんな事いってパパにくっつき過ぎよ少しは遠慮しなさい」むぎゅうむぎゅう

少年エルフ「狭いから動かないでって……(娘の方がくっつき過ぎのような)」

ドドォン

突然、氷原に轟音が鳴り響く。

第二皇子「うわぁ!?」

第七王女「なんじゃ」

男子「進行方向に爆発音と雪煙! 誰かいるぞ」

女兵士「なになに?」

先行している第七王女達のソリから男子が大声で報告する。

\止まるな走れー!/ \うわー!/

第二皇子「あれはドワーフ族の兵隊さんと……」

ドドォン

再び轟音がして雪煙の合間から巨大なシルエットが見えた。

第二皇子「魔王アーマー!」

ドドォン

ドワーフ兵達が魔王アーマーに襲われていた。


娘友「バカな、巨大で高火力、魔法も効かない大型魔導式鎧の魔王アーマーは前に壊したハズ!」

少年エルフ「……(なんで説明口調?)あれは教団のとは似てるけどちょっと違うよ」

娘「複製品…… まさか量産型?」

キュドーン

\グワー!!/ \相棒ー/

第七王女「白竜が言っていたのは本当じゃったのじゃ、助けるぞ」

第二皇子「うん」

女兵士「えーホントにぃ!?」

男子「どうやって倒すんだあんなもん!?」

娘「アーマーは私達が引きつけるわ、王女達はあの人達をお願い」

第七王女「わかったのじゃ」



ズシンズシン

魔王アーマーのスピーカーから帝国将校が呼びかける。

魔王アーマー(帝国将校)「投降しろ、次は当てるぞ!」

ドタドタ

ドワーフ兵A「走れ捕まるぞ」

ドワーフ兵B「ひぃひぃ……もう無理だ」

シャシャシャー

第七王女「まてまてまてーいっ」

第二皇子「叔父さん達掴ってーッ!」

第七王女達のソリが滑り込む。

ドワーフ兵A「まさか第二皇子殿か!?」

ドワーフ兵B「おお助かった!」

ドワーフ兵たちがソリにしがみつく

魔王アーマー(帝国将校)「援軍!? 逃がす……」

ドォン

火球が魔王アーマーに炸裂する。



娘友「ここにも居るわよー!」

少年エルフ「友ちゃん座って、危ないよ」

娘「やっぱり効果は無さそうね」

ヒュドドドッ

魔王アーマーから魔法弾が放たれた。

少年エルフ「”二重風防波”」ギュルルッ

バヒュン バヒュン ドドォン

風の障壁が魔法弾を逸らす。

娘友「あーコワ、さてアッチに行くかコッチに来るか……」

魔王アーマーは一瞬ためらった後に第七王女達のソリを追いかけ始めた。

少年エルフ「あー、アッチいっちゃう」

娘「”大火球”」ドォン

火球が魔王アーマーに放たれた。

\どわー/

娘「”大爆裂”」ズドドォン

\うおお/

娘「まだまだ”落雷”」

ピカッ ガッシャーン!

\うひょおおお!?/

帝国将校の悲鳴が響き渡るが魔王アーマーには効果はない。

少年エルフ「娘、病み上がりなんだから無茶しちゃだめだよ」

娘「大丈夫、これくらい肩慣らしよ」

娘友「あ、こっち来た」

\おまえらー/

ズンズン

魔王アーマーは少年エルフ達のソリに向かってきた。



娘友「どーするのこの状況」

少年エルフ「どうするったって」

シャシャシャー

娘「雪面滑走できるなんて…… 振り切れないわね」

魔王アーマー(帝国将校)「絶対に許さんぞお前らーッ!」

シュババー

ソリの後を魔王アーマーがついて来ている。

娘友「とにかくもっとスピードだして」

少年エルフ「まってこの先は危ないってホビットが……」

娘友「危ないって何もないじゃない?」

少年エルフ「だからここは……」

魔王アーマー(帝国将校)「投降を今ならギリ受け付けるぞー!」

帝国将校ががなり立てる。

娘「丁度いいわ、あの木の近くに止めるわよ」

少年エルフ「ええ!?」

娘友「ちょっと!?」

○魔王アーマー内

帝国将校「む、止まった……白旗か? やれやれやっと投降する気になったか」

魔王アーマーは木の近くにソリを止めた娘達に向かって近づく。

ズシンズシン……メキメキ

帝国将校「なに!? うおおおお」

バキンメキメキ ゴボボボボ

氷が魔王アーマーの重みで割れた。

帝国将校「氷!? 湖かここは!」

魔王アーマーは湖底へ沈んて行く。



娘友「ざまぁーっ!」

娘「作戦通りね」

少年エルフ「ここは割れないの?」

娘「木があるじゃない、ここは小島よ」

少年エルフ「そっか」

娘友「じゃ、急いで合流地点にいかなきゃ」

娘「ずいぶん離れたからね」

少年エルフ「……乗ってた人大丈夫かな?」

娘「……ん」

娘友「……帝国兵でしょ? 敵でしょ」

少年エルフ「そうだけど……」

娘「ふぅ……(やっぱりエルフはそういうの気にするよね)」

娘友「だいじょーぶでしょ、魔法全然効かないし、そのうち上がって……」

バシャ

帝国将校「うおおおおおさびぃいいい! 助けてくれーっ!!」

バシャバシャバシャ

娘「な!?」

娘友「……上がってきちゃったわね」

少年エルフ「大変、凍え死んじゃう!」

タタッ

少年エルフは帝国将校に駆け寄る。

帝国将校「ひいいい」ガチガチガチ

少年エルフ「娘、早く火をつけて、それに乾いた服も!」

娘友「あーあ、仕方ないわよね」

娘友はソリの荷物から服を探し始めた。

娘「だってパパだもの…… ”大火球”」ドォン

娘は枯れ木に向かって火球を放った。

※つづく

#33 赤魔王

○ドワーフ城

娘友「はい、というわけで助けたドワーフ兵に連れられて秘密通路からお城までやってきました」

娘「ほらしゃべってないで早く、寒いんだから」

娘友「はーい」

第七王女「王よ無事じゃったか」

ドワーフ王「おお、王女よそちらも息災でなにより」

第七王女達をドワーフ王が出迎える。

第七王女「王よ、帝国軍の捕虜をとったのじゃが……」

ドワーフ王「なんと!? 流石王国の姫それはどちらに」

ドワーフ兵A「王よこちらが……」

帝国将兵「……」ピチピチ

帝国将兵はドレスを着て現れた。

ドワーフ王「……」

第七王女「……」

ドワーフ兵B「……ブフッ」

帝国将兵「うっせ、どんなプレイだコレは!?」

少年エルフ「娘の服しか着替えなかったから……」

娘「あーあー、お気に入りだったのに」

娘友「もう着れないわねアレ」

ドスドスドス……

白竜「みんなやっと来た~」

ホワイトドラゴンが現れた。

第七王女「おお白竜、怪我はないかよかった」

白竜「大丈夫よ、帝国軍が襲って来た時はびっくりしたけど……あ、それよりエルフちゃん変身リングの充填お願いできない?」

少年エルフ「あ、うんいいよ」

少年エルフは白竜の変身リングに魔力を充填する。

娘「貴方ねぇこの状況より自分の事なの」

ボボン

白竜(人型)「だってここ狭いじゃない、娘ちゃんも呪いが解けたみたいでよかったわ」

第二皇子「あのドワーフ王様、ホビット族の族長は?」

ドワーフ王「む、皇子か…… うむ族長はこの城にはおらん」

第二皇子「もしかして帝国に捕まったの?」

ドワーフ王「それは分からん、何人かホビット族が避難してきておるからその者たちに聞くのがよかろう」

第二皇子「わかりました、ありがとうございます」

第七王女「ホビット、わらわも行くのじゃ」

女兵士「じゃああたしもー」

第二皇子と第七王女が部屋から出て行った。

ドワーフ兵「伝令! 王よ、帝国の攻撃が再開しました」

ドワーフ王「よし、すぐ行く…… 王女のドラゴンと従者達よこの城は難攻不落、安心して休まれよ」

男子「お心遣い感謝いたします」

ドワーフ王「行くぞ者ども、蹴散らしてくれるわ」

\\オオ―//

ドワーフ王は部下を連れて城門へ向かった。

戦闘が始まり騒然としはじめた。

\ガヤガヤガヤ/

男子「ふーむ休めと言われても本当に休んでいてよいのかどうか」

娘「男子は真面目なんだから、休める時に休むのも大事よ」

男子「うむ」


\衛生兵衛生兵/ \だれか治癒魔法出来る方はいませんかー/

少年エルフ「あ、ハーイ! 僕行ってくるよ」

娘「エルフ…… 男子、一緒についてって」

男子「わかった、娘と友は?」

娘友「アタシする事ないしどうしよ」

娘「友、帝国兵に着せた服、どうなったか見てきてくれない?」

娘友「あーあれ? 将校さんかぁ……ちょっといってこよっか」

娘「頼むわ」

ドドーンドドーン

戦闘音が城内に響く。

娘「さてと白竜、実際の現状は?」ボソ

白竜(人型)「んーよくないわね、上で話ましょうか」ボソボソ

娘「そうね」ボソ

○物見の塔

塔の窓から白竜(人型)と娘が戦場の様子を見下ろす。

白竜(人型)「見てのとおり、城下と港は帝国に占領されたわ」

娘「ヒドイわね、それに魔王アーマーがまだあんなに、ドワーフ王はどうやって対抗してるの?」

白竜(人型)「主に籠城ね、4つの城門を破壊してアーマーを何体か巻き込んで倒したわ」

娘「帝国はどうやって……あの船で?」

港には帝国の輸送船が3隻停泊しているのが見えた。

白竜(人型)「そうね、最初は帝国兵が降伏勧告をもってきたんだけど、ドワーフ王が断ってね、そしたら船から魔王アーマーが…… 正当な手順を追っての急襲、王も驚いてたわ」

娘「でしょうね、軍艦でもなく輸送船だけならね…… 帝国の狙いは何かしら」

白竜(人型)「……戦っててわかったけど、帝国の狙いはドワーフ族自身ね」

娘「それって」

白竜(人型)「そう、魔力炉で魔力資源にするつもりよ、この島の亜種族みんな」

○ドワーフ城・客間

第二皇子「捕まった!?」

ホビット族A「ええ、私達を逃がすために……」

ホビット族B「長老……」

第二皇子「そんな……」

第七王女「ホビット大丈夫か? 気を強くもつのじゃ」ぎゅう

第二皇子「兄様は本気でみんなを……ホビット族もドワーフ族も……」

第七王女「……ええい、捕まったのであれは助け出すまでじゃ」

第二皇子「でも帝国軍相手にどうやって……」

第七王女「それは……」

○城門跡地

ドワーフ兵A「王よーッ!」

ドワーフ王「うおおお放せ!」

ドワーフ王が魔王アーマーに捕まった。

魔王アーマー「抵抗をやめよ、お前達の王がどうなってもよいのか」

\おのれ卑怯者ー/ \出てきて戦え/

ドワーフ王「怯むな、我に構わずに敵を打ち倒すのだ」

\\うおおおお//

魔王アーマー「これだからドワーフ族は」

メキメキ

ドワーフ王「ぐわああ」

魔王アーマーがドワーフ王を握りしめる。

\王よー/

ひゅぅううん ズドン

魔王アーマー「うお!?」

ドワーフ王「わあああ!?」

何かが上から降って来て魔王アーマーを踏みつけた。衝撃でドワーフ王が解放される。

白竜「いったーい」

娘「ぐだぐた言わない、……助太刀するわ」

ドワーフ王「おお、ドラゴンと娘殿、かたじけない」


○帝国軍陣営

ドドーンドドーン

ドワーフ族の砲撃とホワイトドラゴンとで魔王アーマーが苦戦している。

帝国将軍「まさかドラゴンまで居るとは……」

帝国兵「本国から伝令、転送許可が下りました」

帝国将軍「本当にやるのか皇帝は? ……転送門最終確認は?」

帝国兵「完了しました。指示を」

帝国将軍「……魔力路つなげ、転送門起動」

○城門跡地

娘「なにあの光は!?」

白竜「あれは転送魔法!? もうそんな魔法まで」

ドワーフ王「何だ援軍か?」

転送門の光から何者かが出てくる。

娘「誰?」

白竜「危ない下がって」

ヒュイン

ズドオオオンッ!!

白竜「きゃああああああ」

突如飛来した濃縮魔力弾から白竜が娘達をかばう。

ドワーフ王「ドラゴン殿!」

娘「今の、まさかアイツが撃ったの……?」

○帝国軍陣営・転送門

赤魔王アーマー「うむ、良い仕上がりだ」

転送門から現れた赤い魔王アーマーから声が響く。

帝国将軍「なにも自らお越しにならなくても、皇帝陛下」

赤魔王アーマー(皇帝)「私は欲しい物は自らで掴み取る主義でな」

皇帝が転送門から現れた。

※つづく

#34 親衛隊

○ドワーフ城・城門跡

娘「白竜、白竜」

白竜「……いったぁい、お肌ボロボロじゃない」

娘「よかった、一応生きてるわね」

少年エルフ「娘、白竜さん」

男子「どうなってるんだ、娘まで出張って」

男子と少年エルフが駆け付けた。

ドワーフ王「大丈夫かドラゴン殿は?」

娘「なんとか」

ドワーフ王「彼奴ら転送門まで使うとは罰当たりめ」

男子「転送門とは?」

ドワーフ王「一瞬で遠方と行き来できる古代ドワーフ族の遺産じゃ」

娘「ドワーフ族の遺産をなんで帝国が?」

ドワーフ王「それは……」

男子「それは?」

ドワーフ王「こないだワシが売り飛ばしました」

男子「うわあ」

娘「なんでよりによって帝国に」

ドワーフ王「まー、燃費が悪すぎて使い物にならないと思ったんじゃが、一体どうやってあれだけの魔力を」

娘「……あまり考えたくないわね」

男子「しかしどうするんだこの後、あの赤い奴が出てから帝国軍も止まってるが」

ドワーフ王「ううむ……」

○帝国陣営

赤魔王アーマーの操縦席が開く。

プシュー

皇帝「なんという絶望、なんという魔力、素晴らしいこれが戦場か」

皇帝が操縦席から立ち上がる。

将軍「恐れながら申し上げます陛下」

皇帝「いってみよ」

将軍「命令通り出来る限りの捕虜をとらえましたがドワーフ王は籠城しておりこれ以上は捕縛命令ではなく殲滅命令を出していただかなければ……」

皇帝「黙れ」

将軍「……ッ!!」

皇帝「奴ら亜種族、亜人間はこれからの帝国の礎となるのだ、それにドワーフ王には直に聞かねばならぬことがあるのだ」

将軍「しかし今の戦力では……」

皇帝「ならば呼べばよいだけの事」

皇帝は赤魔王アーマーに戻り起動する。

ギュオオン

将軍「なにを!?」

赤魔王アーマーは転送門に魔力を流し込み再起動を行う。

バリバリバリバリ

将軍「そんな!? どこからそんな魔力が!」

赤魔王アーマー(皇帝)「出でよ親衛隊よ」

バリバリバリバリ

兎男「ウフフ…… あまり気持ちのよいものではありませんね」

転送門から兎頭の小男が現れた。

バリバリバリバリ

ゴリラ男「確かに」

転送門から筋骨隆々のゴリラ……いやかろうじて人間の男が現れた。

バリバリバリバリ

鯨男「……陛下の御前だぞ言葉を慎め」

転送門から鯨頭の巨体が現れた。

バリバリバリバリ

イカ女「キャハハハ、顔のうるさいアンタが言うなていうのウケル」

長身でイカ状の腕を持つオンナが現れた。

将軍「……(なんだこいつら!? 妙な扮装をして)」

皇帝「よしお前達、ドワーフ王を捕えて来い」

\\御意//

○ドワーフ城・城門跡

ドワーフ兵「伝令! 妙な奴らが来ます」

城門跡の上から見張りが叫ぶ。

ドワーフ王「妙な!? 一体どういう奴らだ」

ドワーフ兵「それが…… うわああああ」

ドカッガシャーン

ドワーフ兵が転落してガレキの山に突っ込む。

兎男「ウフフ…… 妙な連中とは心外なこれでも親衛隊なんですよ」

兎男が城門跡の上に現れた。

ドワーフ王「親衛隊!? 皇帝が来ているのか」

兎男「ご明察、我らが皇帝がはるばるこの北の島まで……」

ズズン ガラガラガラ

鯨男「口を慎め兎、ただ命令をこなすのだ」

ガレキの向こうから巨大な鯨男が現れた。

\なんだこいつは/ \こいつもアーマーか!?/

白竜「寝てる場合じゃなさそうね」ぐぐぐ

少年エルフ「白竜さん」

白竜が立ち上がり鯨男と対峙する。

鯨男「ほう、竜とまみえるとは……僥倖か」

白竜「鯨と合わすなんて…… 信じられない」

ドワーフ兵「王よ下がり下さい砲撃で支援を」

ドワーフ王「うむ……」

兎男「そのヒゲが王か……」バシュッ

兎男が高速でドワーフ王へ跳びかかった。

ドワーフ王「な!?」

ガキン

兎男「ウフフ…… よく反応しましたね」

男子「……不意を突くとは帝国の騎士はそんなものか」

男子が兎男の攻撃を弾いた。

兎男「フフ、私がそんなモノに見えますか?」

男子「……こんなところに居るんだ、ただの兎では無いだろうな」



少年エルフ「うわわ……白竜さんも男子くんもどうしよう」

イカ女「君カワイイねー、どうしよっか?」

少年エルフ「え!? うわ! いつの間に!!」

イカ女が擬態を解き姿を現した。

イカ女「いけない、つい出ちゃった」

娘「あんたパパに何やってんのよ”雷撃”」

娘がイカ娘に向かって魔法を放つ。

バリバリバリ

ゴリラ男「おっと、お嬢さんアンタの相手は俺だ」

ゴリラ男が現れ電撃を受けると平然と言ってのけた。

娘「どきなさい、割と普通のヤツ!」

ゴリラ男「普通とか言うな!!」

※つづく

#35 シン・ゴリラ

○ドワーフ城

カキン

兎男「なかなかやりますね」

男子「く、早い(防ぐのがやっとか)」

ドワーフ兵「王は城へ、ギャッ」

兎男はドワーフ兵を倒して回り込んだ。

兎男「そうはさせませんよ」

ドワーフ王「おのれ化け物め」



少年エルフ「風弾」ヒゥゴオオ

イカ女「あーん、乾燥しちゃう」ピョイ

イカ女は擬態して姿をくらます。

少年エルフ「また消えて…… そこ”風弾”」

ビュゴオオ

イカ女「勘がいいのね、でもハズレ」



娘「”雷撃”」バリバリ

ゴリラ男「効かんというのにお返しだ」バリバリ

ゴリラ男の放電! あたりに電撃がほとばしる。

ババババババッ

娘「きゃ! なんでゴリラが雷に強いのよ」

ゴリラ男「はっはっは 進化の賜物だな まだまだ」

バババババッ



鯨男「手を焼かせてくれるな」

白竜「なんならベーコンにしようか?」

ゴオオオ……

ホワイトドラゴンは燃え盛る火炎を吐いた。

鯨男「ぬかせ」ブシャー

鯨男が海水を吐いて炎をかき消す。

ぶしゃああああ

水蒸気があたりに立ち込める。

白竜「やーもー、生臭いー」

○地下・秘密の通路

ドドン…… パラパラ

第二皇子「なに? 今の」

第七王女「なんじゃろな」

女兵士「王女サマー、勝手に出てきて良かったのかな?」

第七王女「敵を欺くにはまず味方からというじゃろ誰もわらわ達が捕虜の救出に行っておるとは思うまい」

第二皇子「まあ僕たちだけで、行くって言ったら止められるよね」

女兵士「だよねー」

第七王女「しかし長いのう、少し道を間違えたのう?」

第二皇子「あそこ光が見えるよ」

○雪の高台

ヒュオオオオ

第七王女達は秘密の通路を抜けて高台に出てきた。

第七王女「少し違うところにでたようじゃな」

女兵士「寒ーい、はやく降りましょーよ王女サマ」

第七王女「うむ、ホビットは寒くないかえ? ん?」ぎゅうぎゅう

第七王女が第二皇子にぎゅうぎゅう抱きつく。

第二皇子「大丈夫です、寒くないです王女姉様(というか動きにくい)」

第七王女「うむうむそうじゃろうそうじゃろう、さてみなはどこにつかまっておるかのう」ぎゅうぎゅう

女兵士「んー、ここからだとよく見えますね」

高台からは港町、ドワーフ城が見渡せた。

第二皇子「あそこ、みんな戦ってる」

〇ドワーフ城

ドドドドン

無数の砲撃で周囲が吹き飛ぶ。

兎男「ひょわーーー、味方ごと砲撃するなんて馬鹿ですか!?」

男子「俺はこれくらい平気だ」

ドワーフ王「ドワーフ族はこの程度日常茶飯事だ、のう皆の衆」

\おう/ \ライフで受ける/

兎男「馬鹿ですわあなたたちは、ひゃあああ」

ドドドドドン

兎男が砲撃と男子達の攻撃からボロボロになりながら逃げている。



娘「”電撃””雷撃””重雷撃”」

バリバリバリバリッ

ゴリラ男「うおおおおっ まてまてまてぇもう容量が…… グワーッ!」バボン

ゴリラ男の体から煙が上がる。

娘「まだまだいけるわよ”落雷”」

ガシャーンバリバリバリ

ゴリラ男「うがーっ」

鯨男「ぬううううう」

ドドン

鯨男も全身に火傷を負って倒れてきた。

鯨男「やはり陸では限界があるか」

白竜「やっとね、倒したらカマボコにするといいのかしら」

娘「それはサメでしょ」

娘とホワイトドラゴンが軽口をたたく。

ゴリラ男「ぬううピーンチ、しかしピンチがチャンス! イカァ我らに秘宝を!」

イカ女「えー? いいところだったのに」

少年エルフ「ひ!?」

イカ女は少年エルフの背後から現れた。

にゅるーん

触腕で壁を伝ってゴリラ男たちへ近づく。

イカ女「じゃ、いっくわよー」

ギラン

イカ女の左右の触腕から鋭い結晶が出現する。

鯨男「こうなれば仕方あるまい」

ドスッ

ゴリラ男「ぐっ」

ドスッ

鯨男「うおおお」

イカ女が結晶をゴジラ男と鯨男に刺した。

少年エルフ「あれは骨ドラゴンの時の奴!?」

ボボン

ゴリラ男と鯨男が融合した。

ゴリラ鯨男「グオオオオオ」

イカ女「ゴリラと鯨だからゴリジラ男ってとこかしらね」

白竜「あんた、それはギリギリよ」

娘「なによ更にデカくなったってどうだっていうの”重雷撃斬”」

バリバリバリ……ザシュン

ゴリラ鯨男「グフフフ…… 効かんな大きくなって容量アップだ」

娘「ぬうう白竜、火!」

白竜「……実は打ち止めなのん」

娘「ええ!?」

ドドン

ゴリラ鯨男が巨大な足で踏みつけてくる。

ドドンドドン

娘「きゃー」

白竜「いやー」

男子「おいおいおいマジか」

ドワーフ王「撃て撃て撃て」

ドワーフ王が逃げながら砲撃の指示を出す。

ドドドドドン

ゴリラ鯨男「はっはっはかゆいかゆい」

少年エルフ「大きすぎる、どうしよう」

白竜「そうだ娘、例の光は?」

男子「それがあったか、よしいつもの一発たのんだ」

娘「あんた達、気楽にいってくれるわね……」

娘「……」

娘は意識を集中する。

少年エルフ「……娘?」

娘「く……」

白竜「まさか…… 出ないの」

男子「ええ!?」

娘「光よっ!」

娘は剣を構えるが光は出ない。

ゴリラ鯨男「グワハハハハハ」

ゴリラ鯨男が大きな足で踏みつけてきた。

ドッスゥウン ゴゴゴゴゴ

〇帝国陣営

帝国兵「報告します、ドワーフ王と兵士、並びにドラゴンとその剣客達を捕らえました」

皇帝「遅かったな…… まあいい、王を連れてこい」

帝国兵「はっ」

帝国兵が走りさった。

皇帝「合成兵にかかれば伝説のドラゴンも形無しだな」

神官「ええ苦労した研究の成果ですから…… 私共のね」

カーテンの影から神官が現れた。

皇帝「貴様また勝手に…… それはそうと本当にあるんだろうなその塔は」

神官「ええもちろんですとも、転送門もお教えした通りの成果だったでしょう」

皇帝「それ以上の魔力消費だったな、これで計画通りに事が運ばなければ…… 貴様わかっているのか」

神官「フフフ…… ご安心を陛下には魔王様がついておりますので」

皇帝「フン、どうだかな…… 王が来る、お前は消えろ」

神官「仰せのままに」

神官が音もなく影に消える。

皇帝「フン……(最終絶望計画、これで俺は世界を執る)」

帝国兵「ドワーフ王を連れてきました」

帝国兵によってドワーフ王が連れてこられた。

ドサッ

ドワーフ王「うぬ…… 皇帝、貴様よくも」

皇帝「黙れ、単刀直入に聞く『破天の塔』はどこだ?」

※つづく

#36 タワー・イン・ザ・ダーク

○古の坑道、帝国軍の行進・後方

皇帝達はドワーフ王の道案内により古の坑道を進む、皇帝の左右を魔王アーマーが守り、その後を自走式牢屋が列となって続き帝国兵が並進しながら警備をしている。

ガシャンガシャン

娘とホワイトドラゴンは自走式魔力炉牢に捕らえられている。

娘「あああエルフ大丈夫かしらあのゲソ女に変なことされてなきゃいいけど」

白竜「まだ大丈夫みたいね」

白竜は首をもたげて行列の先頭を伺う。

娘「それにしてもこの扱いは随分じゃない?」

帝国将校「これでも頑張ったほうだぞ、近くにまとまってるだろうが」

牢番には捕虜になっていた帝国将校がついていた。

娘友「ホントにー、アタシ達って将ちゃんの恩人じゃなかったっけー?」

後方の自走式牢屋から娘友がいう。

帝国将校「友ちゃんそうはいっても俺の口添えじゃこれが精一杯でさ」

娘友「いやいやまだまだ個人的努力がさ……」

娘友が帝国将校にくどくどと文句を言い始めた。

娘「……まったく立場逆転ね」

白竜「そう?」

娘「それにしてもこんな坑道をどこまで行くつもりかしら」

白竜「……破天の塔ね」

娘「ハテンの塔?」

○帝国軍の行進・前方

少年エルフ「地下に塔があるの?」

ドワーフ大臣「さよう、古のドワーフ族が魔王との戦いに建造したという伝説の塔しゃ」
自走式牢屋の列の前方ではドワーフ兵と少年エルフが捕まっていた。

少年エルフ「魔王との戦いに…… でも塔で何をするの?」

ドワーフ大臣「それは…… ううむ」

神官「破天の塔は古代ドワーフ族の対魔王決戦兵器…… 実際に使われなかったそうですが計り知れない破壊力を持っているそうです」

少年エルフ「神官さん」

いつの間にか牢の外に神官が立っていた。

ドワーフ大臣「おのれ、帝国の犬めよくも我らの前に顔を出せたものじゃの!」

少年エルフ「知り合い?」

神官「そうですね~、以前ドワーフ王と歓談した時にちょっと」

ドワーフ大臣「貴様がその時に王から転送門や塔の事を聞き出したのであろう、僧侶だと思って信用したのが間違いじゃた!」

少年エルフ「神官さん帝国の味方なの?」

神官「今はそうなりますね~」

少年エルフ「ねぇねぇこっそり助けてくれない?」ぼそぼそ

神官「そんな率直に言われるとこまりますねぇ」ぼそぼそ

少年エルフ「駄目?」ぼそぼそ

神官「フフ……」

イカ女「何コソコソ話してのよ」

神官「おっと、おいででしたかイカのお嬢さん」

イカ女が現れた。

少年エルフ「う……」

イカ女「まさかアンタ…… ソッチもいける口なの?」

神官「いえいえいえまさかそんな……」

イカ女「そう、エルフちゃんは色々終わったらアタシとイロイロするのよねー」

イカ女が格子の隙間から少年エルフに触腕をのばす。

少年エルフ「ヒィ」

神官「やめてくださいチャノマ的にも」

イカ女「なんかいった」

神官「いえ、しかし全てはこの作戦が終わってからですよ…… そろそろ持ち場に戻りましょう」

イカ女「フン、偉そうに」

イカ女が前方の皇帝の方へ戻っていく。

少年エルフ「ふぅ」

神官「大丈夫ですよ、いずれチャンスはあるでしょう」

少年エルフ「本当」

神官「フフフ、ナイショです」

○港町跡

第七王女「どうやら、娘たちとは地下の坑道に連れていかれたようじゃ」

偵察から戻った第七王女が告げる。

第二皇子「どうしよう」

女兵士「助けにいく?」

第七王女「むろんじゃ、しかしまず最初は予定通りにホビット族を助けようぞ」

第二皇子「でもあんな大きな兵がまもってるよ」

帝国の輸送船の前には坑道に入れなかったゴリラ鯨男が見張りに立っていた。

第七王女「ふむ、大きいのう」

第二皇子「帝国兵も数人いるみたいだし……」

女兵士「あんなにおっきいとトイレ入れないね…… どうするんだろう」

第二皇子「……」

第七皇子「……」

〇古の坑道、帝国軍の行進・後方

娘「じゃあ、ドワーフ族の捕虜を連れていくのも」もぐもぐ

白竜「多分、塔の魔力源にするためね あ、それとって」

娘「はい」ポイ

パク

白竜「うん、おいしい」もぐもぐ

娘たちは娘友が交渉によって得た将校用の食事を堪能していた。

娘友「なーによー、あんた普段こんないいもの食べてるのー? んー?」

帝国将校「いやたまーにですよたまーに」

娘友「ほんとにー?」

娘友と帝国将校が格子越しにじゃれている。

白竜「……もしかして飲んでる?」

娘「……さーね」

白竜「さてと、娘さん」

娘「何よ改まって」

白竜「呪いはちゃんと解けた?」

娘「……解けてるわよ」

白竜「だよね…… じゃあ何があったの?」

娘「何って何が?」

白竜「こう…… なにか悲しい事」

娘「別に…… 呪術師に解呪してもらってバカ勇者が居て、そして貴方の呼び出しがあっただけじゃない」

白竜「ふーん…… 呪術師ね、たしかエルフ族だったって話よね」

娘「それが何よ」ゴゴゴ……

白竜「こわーい、娘ちゃん顔こわいわー」

娘「貴方がヤな事言いだすから……」

白竜「ヤな事ね…… それだけ?」

娘「もう…… それだけよ」

白竜「……それだけじゃないでしょ、呪術師はエルフ族の女性でエルフちゃんと仲良くなっちゃったんでしょ」

娘「なによ! わかってるなら言わないでよ!」

\なに!?/ \どうした娘?/

後方から娘友や男子が声をかける。

娘「……ごめん、なんでもない」

白竜「……」

娘「……で、それが何よ」

白竜「……エルフちゃんがほかのヒトと仲良くなるのがそんなにイヤ?」

娘「別に…… 他のエルフ族を見つけるのは目的の一つだったんだから願ったりかなったりだわ」

白竜「うーそ、本心は違うでしょ」

娘「う! もーなによ、結局何がいいたいのよ」

白竜「娘がそんなんじゃ光剣も使えないし皇帝には勝てないわよ」

娘「そんな、……光はなくても皇帝ぐらいどうってことは」

白竜「仮に皇帝をどうにかできたとしても魔王はどうするの」

娘「そんなの…… 知らないわよ魔王アーマーごと海に沈めればいいんじゃない」

白竜「無理よ無理…… 本来ならもっと世界中を回らなきゃいけないしそれ以前に王女のお付じゃ効率が悪いし……だいたい昔の勇者だって封印するのが精一杯で」ブツブツ

娘「いっても仕方ないわ、今あるもの、出来たもので勝負しなくちゃ」

白竜「そうだけど…… ねえ本当に大丈夫? 娘」

娘「……光だけはなんとかするから」

白竜「……お願いね」

娘「ええ……」

〇港町跡・埠頭

♪~

ゴリラ鯨男「グオオオオオ……」

ズッドオオオオン バシャアアアアア

ゴリラ鯨男は第二皇子の魔曲によって眠り海へ倒れこんだ。

女兵士「うわー、すごい事になったね」

第二皇子「こんなにあっさり効くとは」

ゴリラ鯨男「グオオオオオ……」

ゴリラ鯨男は海面に浮いていびきをかいている。

第七王女「古来より巨人が状態異常に弱いのは基本じゃな」

第二皇子「他の帝国兵も寝てるし、急いで助けよう」

第七王女「うむ」

○古の坑道、帝国軍の行進・先頭

ドワーフ王「ここじゃ」

ヒュオオオ

皇帝「ここか? 何も見えないが」

ドワーフ王「あそこの操作レバーで照明がつく」

皇帝「兎よ」

兎男「はっ」バシュ

兎男が高速移動して操作レバーにたどり着く。

ガコン…… バッバッバッ

皇帝「ほう…… あれが」

巨大な地下空間の向こうに破天の塔が浮かびあがった。

※つづく

#37 最新絶望計画

〇破天の塔・1階

将軍「よし亜種族どもを動力室へ連れていけ、グズグズするなよ」


ガラガラガラ

ドワーフ大臣「王は彼奴等と制御室かなんとかせねば」

少年エルフ「みんな大丈夫かな…… 娘」

ガチャガチャ

帝国兵達が自走式魔力炉牢の少年エルフ達を連れていく。

〇制御室

ゴゴゴゴゴ

皇帝「よし起動したな、発射準備を進めろ」

制御盤に帝国兵達がついて作業を始める。

ドワーフ王「いきなりこの塔を使うつもりか? 何をするつもりだ!」

皇帝「天を貫き太陽をも墜とす、それがこの破天の伝説であろう」

ドワーフ王「なに? ……そんなものは御伽噺じゃ」

皇帝「どうかな? 貴様たち目標を太陽に設定、正午には撃てるようにしておけ」

\\御意//

ドワーフ王「馬鹿な、本当に太陽を…」

皇帝「こいつはもう用済みだ、動力室へ連れていけ」

帝国兵「御意」

ドワーフ王「正気か!? 貴様なぜそんなことを……」

〇破天の塔前・自走式牢屋

娘友「太陽を撃ち落とす!?」

娘「正気の沙汰じゃないわね」

神官「そうですね今の陛下はご乱心しておられます」シュー

娘達を開放した神官は娘の電撃で黒焦げになっている。

男子「本当にそんな事が可能なのか?」

神官「……ええ充分に可能です(誰か対面した途端に電撃を放たれた私を気遣ってください)」シュー

白竜「アンタたしか……」

神官「おっと貴方は…… 娘さんたちを助けたということで…… ここは一つナイショに」ボソボソ

白竜「娘は判ってそうだけど…… 仕方ないわね」

神官「感謝します」

娘友「さて、どうする?」

娘「もちろんパパを助けに行くわ」

男子「しかし友もいるし王女達も探しにいかないと」

第七王女「それには及ばんのじゃ」

第七王女達が現れた。

娘「王女! やっぱり無事だったのね」

男子「ホビットも女兵士さんも…… よかった」

女兵士「はろー」

第二皇子「よかった無事で」



第七王女「本当だとすると事態は深刻じゃの」

第二皇子「でも太陽を墜とすなんて、なんでそんなことを……」

娘「……」

神官「……」

白竜「はぁ…… 詳しいことは省くけど皇帝には負の感情を魔力に変換する装置があるの

女兵士「フの感情?」

娘「不安や恐怖とかね」

神官「そんな時に太陽が無くなったら世界はどうなります?」

男子「文字通りのお先真っ暗だな」

白竜「世界中が恐怖と不安、絶望に包まれるわね」

第七王女「そのすべてが帝国の、皇帝の魔力になると」

神官「暗黒の世界で凛然と輝く都、それが皇帝の考える新帝国なのです」

第二皇子「兄様……」

第七王女「うぬぬ、けしからん! ホビットよわらわがそちの兄の目を覚まさせてやろうぞ」

第二皇子「本当? 王女姉ぇさま」

第七王女「あたぼうじゃ! よしわらわ達は制御室へ乗り込むぞい!!」ブフッ

男子「まて王女、テンションがおかしいし、まず鼻血を拭け」

第七王女「ふむ、ちと正義感が溢れすぎたようじゃ」フキフキ

女兵士「正義感って鼻からでるんだ」

娘「じゃあ私はパパを助けに行くわ」

娘友「あたしも」

神官「では私はそろそろ……」

娘「アンタも一緒にきなさい! 友を守るくらいできるでしょ」

神官「えぇ~ 一応帝国側なんですが」

娘「ウソ。 それと白竜、一応コイツ見張っておいてね」

白竜「ハーイ、じゃあ変身してついていくわ」

神官「信頼されてないのに利用されるのですね、私」

第七王女「よし決まりじゃな」

娘達は二手に分かれて行動を開始した。

〇制御室

帝国兵「動力室に魔力充填始まりました」

皇帝「……遅いな、もっと抽出速度を上げろ」

帝国兵「御意」

〇動力室

キュオオオオ

ドワーフ大臣「ぐわわあああ」

\ぎゃああ/ \ひゃああああ/

少年エルフ「うぐぐ…… 大臣さん他のドワーフさんたちも」

自走式魔力炉牢がフル稼働し少年エルフやドワーフ族から魔力を吸い上げる。

少年エルフ「このままじゃ、みんな魔力を吸い尽くされてちゃう…… そうだ」

少年エルフは天井の魔力抽出器に手を掲げて魔力を放出しだした。

少年エルフ「んぎぎぎ……(キツイけどまだ大丈夫)」

ドワーフ大臣「む、急に楽に…… エルフ殿なんて事を!?」

少年エルフ「大丈夫、ぼくはまりょくはたくさんあるか……ら……」

キュオオオ

\パパー/



娘「パパーッ!」

娘達が動力室に飛び込んできた。

帝国兵「なんだ!?」

娘「”電撃”」

バリバリバリ

帝国兵達「「うわーー」」

帝国兵達を倒した。

娘友「はっや」

神官「おーこわいこわい」

少年エルフ「うぅ…… 娘、よかった逃げ出せたんだね」

ドワーフ大臣「オナゴ達よ早くこの装置を止めるのじゃ、エルフ殿が」

娘友「わかったわまかせて」

娘友が制御盤を操作する。

娘友「えーとこれかな? どうかな」

娘「早く早く」

娘友「えい」ポチ

ビーッビーッ

警報が作動した。

娘友「あら間違ったようね」

ガチャガチャ

魔王アーマー兵「お前たちいつの間に!」

魔王アーマーの帝国兵が現れ襲ってきた。

白竜(人型)「あちゃー」

娘「倒すわ、友は装置をお願い」

娘友「が、がんばる」ガチャガチャ

〇制御室への道

シュタタタタ

第七王女「まかりとおーるっ」

第七王女が俊足で帝国兵の間を駆け抜けていく。

\え!?/ \なんだ?/

ドタタタタタ

男子「フンっフンっ」

\\ ウワーっ!//

その後に駆け上って来た男子がみねうちで昏倒させる。

第七王女「何をしておる早くせんか」

男子「ふぅふぅ…… 相変わらずむちゃを言う」

第二皇子「王女姉ぇさま、あっち」

第七王女「なんじゃホビット…… ムッ!」

兎男「いやはやここまで来るとは」

イカ女「あーあ、めんどくさーい」

兎男とイカ女が立ちふさがった。

男子「フ、再戦ってトコだな」

兎男「今度は支援砲撃はないですな、どうしますか?」

イカ女「うわーよく見たら君、カッコいい! ねーねーアタシと付き合わない?」

男子「……」

女兵士「ダメですー! 貴方敵じゃないですかイカじゃないですか何考えてるんですかー」

イカ女「なによアナタ、ケチー、ポニテー可愛いとかホントに思ってるのー」

女兵士「なにおー!? 貴方だってツインテールとか、ぶりっ子すぎじゃないですかーブリブリー」

イカ女「こーれーはー触腕ですー、いわば地毛ですー」

女兵士「えー地毛ー、キモーい」

イカ女「いい年してキモーい言わないでよムカつく!」

\ギャーギャー/

女兵士とイカ女が口論を始める。

兎男「えーと、なんか申し訳ない」

男子「……いやこちらこそスマン」

※つづく

#38 最狂絶望計画

○動力室

ドドン ガキィン

白竜「押さえたわ、娘!」

娘「”重雷撃斬”」

ズガッバリバリバリッ

魔王アーマー兵「ギャアアア」

白竜「ひゃあああああ」

魔王アーマー兵は気絶した。

娘「よし」

白竜「よし、じゃないわよ!巻き込まないでよォ!!」

娘「いいじゃない、どうせビリっとする程度なんだし…… それよりパパは?」

少年エルフ「んにゅうう」ガクガク

ドワーフ大臣「まだか!? 早くここを開けるのじゃ」

娘友「やってるってあーもうこれでどう」

ポチ

〇制御室への階段

ダダダダダダっ

第七王女「奴らは男子達に任せるのじゃ」

第七王女はホビットの手を引きながら駆け上がっていく。

第二皇子「まって誰か上からくる」

第七王女「む!?」

帝国兵と連行されているドワーフ王が降りてきた。

帝国兵「なんだお前は」

ドワーフ王「第七王女! 皇子まで!」」

第七王女は素早く眠り袋を投げつけた。

シュッ ボン

帝国兵「ブホっ なん……フニャ」ドサッ

第二皇子「すごい効き目」

第七王女「エルフ特製じゃからな」

ドワーフ王「助かったぞい」

第二皇子「ドワーフ王、兄ぃ……皇帝は一体何を」

ドワーフ王「彼奴は破天の塔をすぐさま使うつもりじゃ」

第七王女「なんじゃと!?」

ドドォン ゴオオオオオッ!!

ドワーフ王「なんともう!?」

第二皇子「なにあれ…… どういうこと!?」

第二皇子が指さす外では破天の塔が爆炎を噴き上げて上昇していく。

第七王女「なんと…… 浮いておる」

〇上昇する破天の塔内

娘「止まったと思ったら」

娘友「飛んでるーっ!?」

男子「塔が飛ぶなんてどんな仕組みだ!?」

娘「まってこれどこに向かって」

白竜「そりゃあ、太陽目指して……」

少年エルフ「へ……」

一同「「はあぁーー!?」」

〇制御室

帝国兵A「まもなく地表に出ます」

皇帝「順調だな」

ビーッビーッ

皇帝「なんだ!」

帝国兵A「射出口が閉まって……いえ、障害物が! いきなり!?」

帝国兵B「先端が接触…… 上昇が停止、損傷軽微」

皇帝「どうした原因をさっさと調べろ!」

〇上昇する破天の塔内

白竜「何にぶつかったの…… 氷?」

娘「氷程度でこの質量が止まるなんて……」

少年エルフ「上ですごい魔力が…… この声……師匠さん!?」

〇地上・射出口付近

片耳エルフ「フフ…… 待たせたなエルフ」

魔法勇者「師匠、俺病み上がりっすよー」

片耳エルフ「ぐだぐだいうな、止め続けるろ!」

魔法勇者「うへー」

片耳エルフと魔法勇者が氷結魔法で氷塊を撃ち続けている。

〇制御室

帝国兵A「信じられません、雹、いえ氷塊で蓋されています」

帝国兵B「嘘だろおい」

皇帝「亜種族めでたらめな…… 出力最大だ吹き飛ばせ」

〇上昇する破天の塔内

ゴオオオオオオっ

娘友「どうするの止まってても脱出できないんじゃ」

娘「白竜なんとかならないの」

白竜「無理よー、あの炎じゃ私でも黒焦げよ」

少年エルフ「師匠さん…… ドングリを? わかった!」

娘「エルフ! 何を」

少年エルフは巨大なドングリを取り出すとそれが光出した。

少年エルフ「光ってる……」

娘「駄目、やめて……」

少年エルフは祈った。

少年エルフ「……(僕の世界を……)」

パキィン

巨大なドングリがさらに輝きを増す。

※つづく

#39 最終絶望皇帝

〇破天の塔

ずどどどぉーん

ガラガラガラ

ヒュオオオオ

娘友「なになに一体なにが起こったの?」

当たりには縦横無尽に木の枝が蔓延っている。

白竜「これは木?」

破天の塔は内部から生えた巨木によって動きが止まっている。

白竜「すごいわね、一瞬でこんなに」

娘「パパ! パパはどこ!?」

娘は慌て少年エルフの居たあたりをさがす。

少年エルフ(木)「うん……」

娘「エルフ!」

バサバサバサ

枝葉に埋もれた少年エルフを娘は助け出す。

娘「パパ!大丈夫!? 起きて、目を覚まして」

少年エルフ「うん……どうなったの」

少年エルフは目を覚ました。

娘「……よかった」

シュタッ

片耳エルフ「初めてにしては上出来だ」

片耳エルフが降りて来た。

娘「あんた……」

少年エルフ「師匠さん、今のって」

片耳エルフ「森のエルフ族は秘術で木を操る…… 予想通りその種は術の媒体の役割があったようだな」

娘「あんたねぇエルフにこんな術をつかわせて何かあったらどうするの!!」

片耳エルフ「問題ない、エルフ族の術だ…… 人間にはわからないか?」

娘「キーッ!」

少年エルフ「娘、僕は大丈夫だから……」

ふらっ

娘「エルフ」

片耳エルフ「これほどの巨木を作り出したのだ、少し休め」

少年エルフ「はい」

娘友「結局この塔はどうなったの?」

片耳エルフ「これだけ根をはれば動くことはあるまい、あの皇帝の企みは阻止されたのだ」

少年エルフ「皇帝…… ホビット、お兄さんを止めれるのかな?」

片耳エルフ「さあな」

娘友「ねえねえそれよりどうやってここから降りるの?」

娘「……枝を伝っていくしかないわね」

〇制御室

帝国兵「破天の塔、完全に停止」

皇帝「馬鹿な……」

バァン

第二皇子「兄ぃ様!」

第七王女達が制御室に飛び込んできた。

帝国兵A「侵入者!?」

帝国兵B「捕らえろ」

第七王女「せやっ」

シャシャッ

第七王女が投げナイフを投げつける。

帝国兵A「ぐぅ……」

帝国兵B「しびび……」

第七王女「安心せい、しびれ薬じゃ」

第二皇子「兄ぃ様、どうしてこんなことを」

ドワーフ王「貴様の悪行もこれまでじゃ」

皇帝「……何をしている全員でかかれ!」

帝国兵達「「わーー」」

帝国兵達が第七王女達に襲い掛かる。

第七王女「むぅ!」

ドワーフ王「おのれ卑怯な」

\おりゃあああ/

帝国兵達「「うわーーー!」」

男子「王女、ホビット無事か?」

第七王女「男子」

ドワーフ王「これは頼もしい、軟弱な帝国兵などわしらで一捻りじゃ」

第七王女「皇帝よ神妙にお縄につくがよい」

皇帝「……」

第二皇子「兄ぃ様…… 兄ぃ様に何があったのですか話してください」

皇帝「フ、フフフ……」

第七王女「なんじゃ!?」

皇帝「フハハハ…… お前たちがここまでやるとはな」

ドワーフ王「まだ何か企んでおるのか?」

皇帝「いやいや、世界征服も楽は出来んな」

皇帝は大げさに嘆きながら窓辺へ移動する。

第二皇子「兄ぃ様?」

皇帝「やはり、一つずつ丁寧にすり潰さねばならないのだな」

第七王女「なに?」

ガシャーン

男子「危ない」

第二皇子「兄ぃ様!」

突如窓を破って突き出た巨大な腕が皇帝を掴んで消えた。

ドワーフ王「今のは……」

\フハハハハ/

第二皇子「みんな逃げて!」

ギュオオオオオッドドドドドドド

〇連絡路

女兵士「へぇーお父さんがいるの、いいなー」

イカ女「あのねー、父親を美化しすぎよ、うるさいし面倒だし」

女兵士とイカ女は戦いから友情が芽生えて談笑している。

ゴゴゴゴゴゴッ

イカ女「何の音!?」

女兵士「揺れてる!?」

ダダダダッ

第七王女達が上層から駆け下りてきた。

第七王女「何をしておるおぬしら」

女兵士「え、いやちゃんと戦ってたんだけどなんか話があって……」

そんな事より逃げるぞ、ここは崩れる」

イカ女「何なに!?」

ギュドドドドドッ

魔力弾が部屋の一部を吹き飛ばす。

イカ女「ヤッバ」

〇破天の塔発射場跡

娘友「やっと降りれたって、何!?」

ドドドドドッ

瓦礫が落ちてきた。

少年エルフ「”風防波”」シュルルル

風の障壁で瓦礫を防いだ。

娘友「一体なにが」

ガシャアアン

娘友「きゃああああ!?」

赤魔王アーマーが降ってきた。

赤魔王アーマー(皇帝)「ほう、お前たちが破天の塔を…… やってくれたな」

娘「皇帝っ!」

赤魔王アーマー「まずは掃除だな」

ギュオオオ

赤魔王アーマーの砲塔に魔力が集約する。

ドドドドドドド

四方八方に魔力弾が放たれる。

片耳エルフ「”大防護”」ヒィイン

バヅンッバヅンッ…… バギィン

片耳エルフ「なんと禍々しい」

少年エルフ「あれって」

白竜「……魔王の一部いえ、そのものを使っているわね」

〇赤魔王アーマー内

皇帝「フハハハッ そうだ最初からこうすればよかったのだな」

異形の首「……」ゴポッ

操縦席の後部にあるガラス管の中から異形の首が蠢く。

※つづく

#40 世界樹の英雄

〇破天の塔跡地

娘「光よ!」

ヒュゴオオオオッ!

光の奔流が赤魔王アーマーを直撃する。

赤魔王アーマー(皇帝)「なんだ目くらましか?」

白竜「そんな全然効かないなんて」

赤魔王アーマー(皇帝)「お返しだ」

バシュッ!

濃縮魔法弾が放たれた。

少年エルフ「”二重風破波”」シュルルル

ヒュバババッ ドドンッ

「「うわあああ」」

風の障壁で魔法弾を防ごうとするも防ぎきれない。

シュタタタッ

片耳エルフが赤魔王アーマーの後ろに回り込む。

片耳エルフ「ここならどうだ! ”焔”」

ギュオオオ ゴオオオン!!

白熱する熱塊が赤魔王の背部に直撃する。

赤魔王アーマー「ちょこざいな」

ボシュウウウウウウウウウッ

片耳エルフ「あつっ ぬうううううう!」

赤魔王アーマーの背部から高熱が噴き出す。

赤魔王アーマー「フハハハハッ 這いつくばれ亜人種」

ボシュウウウウウッ

片耳エルフ「何!? 飛んだ!」

ボボボボボンッ

片耳エルフ「ぐぅうううウッ!」

少年エルフ「師匠さん!」

娘「このっ”重雷撃”」

バリバリバリッ

赤魔王アーマー「無駄だ無駄ッ」

雷撃が直撃するも効果がない。

少年エルフ「師匠さん大丈夫”大治癒”」パアアア

片耳エルフ「つぅ…… 大丈夫だ、助かったぞエルフ」

少年エルフ「えへへ」

娘「……」イライラ

白竜「娘、お願い敵に集中して」

娘「してるわよ、でも魔法が効かないんじゃどうやって……」

ひゅううううう

魔法勇者「くらえー、氷河落とし!!」

赤魔王アーマー「な!?」

ゴゴン ズドドドドドドドドン

上空から巨大な氷塊とともに魔法勇者が落ちてきた。

白竜「ちょ!? まって」

娘「エルフ、逃げてー!!」

少年エルフ「うわあああああ」

片耳エルフ「あのバカ!」

ダダダッ

片耳エルフが少年エルフを抱えて駆け抜ける。

ドドドドドドドドドドドドドッ

巨大な氷塊とかけらが赤魔王アーマーに落下した。



片耳エルフ「馬鹿かお前は!」

娘「エルフが巻き込まれでもしたら危ないでしょうが!」

第七王女「おぬしはまことにバカよのう」

合流した第七王女達も交じって魔法勇者を罵る。

魔法勇者「だーっ! いっぺんに言うな、でもいいじゃないかあのゴーレムを倒したんだし」

ボコッ ドゴーンッ

赤魔王アーマーが氷を割って現れた。

片耳エルフ「倒せておらんわ馬鹿め」

魔法勇者「えええええ」

赤魔王アーマー(皇帝)「やってくれたな、これでも食らえ」

ギギギギッ ボシュッ

濃縮魔法弾が娘たちの頭上を通りすぎる。

ドドドドォン!

爆風が一同を襲う。

男子「うおおお!? みんな大丈夫か」

女兵士「なんとかだいじょうぶ」

第二皇子「今のって砲塔の動きが……」

片耳エルフ「ああ、明らかに動きが悪い、魔法は効かなくても直接攻撃なら効くんだ」

娘「直接攻撃ね、だとすると」ジー

娘友「……」ジー

男子「俺か!? あんなデカいの無理だろ」

第七王女「だとすれば」ジー

女兵士「……」ジー

白竜「ちょっとお!? わたしだって無理よ」

少年エルフ「じゃあさっきみたいに氷をぶつけたら」

魔法勇者「無理無理無理、さっきのは塔を止めた氷を落としたんだそう簡単に作れないって」

第七王女「なんじゃ肝心な時に使えん奴じゃのう」

魔法勇者「うっせ!」

娘友「とかいってる間にまた撃ってくるわよ!?」

娘「走ってよけるのよー」

\\ワーキャー//



タタタタタ

片耳エルフ「エルフ、もういちどトレント術を使え」

少年エルフ「え?」

娘「何言ってんのよ!」

片耳エルフ「森のエルフ族のトレント術はゴーレム魔法の元になった魔法だ、もう一度やってウッドゴーレムで戦うのだ」

少年エルフ「ウッドゴーレム……」

娘「勝手に決めないでよ! アンタがやればいいじゃない」

片耳エルフ「私は森のエルフ族ではない、エルフお前だけが出来るのだ。いやお前なら出来る!」

娘「パパ、駄目よ危ないわ」

少年エルフ「娘……、でも僕がやらなきゃ」

娘「エルフ……」

片耳エルフ「よし、さっきの術で出した巨木を使え、より簡単に出来るはずだ」

少年エルフ「ハイッ」

片耳エルフ「よし行くぞ」ガシッ

片耳エルフが少年エルフを抱えて巨木へ向かって跳んだ。



赤魔王アーマー(皇帝)「こうなれば一人づつ踏みつぶしてくれるわ」

ドシンドシン

男子「うおおおおお走れえええ」

魔法勇者「ひいいいいい」

ダダダダダダダッ

男子達が赤魔王アーマーに追われている。

魔法勇者「どわーっ」

魔法勇者が盛大にコケる。

男子「あ、バカ」

魔法勇者「バカばっかいうんじゃねぇ!」

男子「いや、すまん、つい……」

男子が助け起こそうとするが赤魔王アーマーの足がせまる。

男子・魔法勇者「「うわあああああ」」

シュルルル ガシン

赤魔王アーマー(皇帝)「何!?」

巨大な木の枝が赤魔王アーマーに絡みつく。

片耳エルフ「馬鹿者どもとっとと逃げんか」

ウッドゴーレムの肩に乗った片耳エルフが叫ぶ。

赤魔王アーマー(皇帝)「ゴーレムだと? 一体どうやって」

〇ウッドゴーレム内

少年エルフ「……うぅん」

\エルフ聞こえるか仕掛けるぞ/

外から片耳エルフの声が響く。

少年エルフ「ぅ……あ(そうだタタカウんだ)」

シュルルル

木の枝が少年エルフさらに絡みつく。

少年エルフ「……(なんでだろコワクない、気モチが静かにナッテ……)」

※つづく

#41 絶対絶望青年

〇破天の塔跡地

ドドォンッ ドドドドド

魔王アーマー(皇帝)「うおおおおっ」

巨大な枝に突き飛ばされた魔王アーマーは壁ににたたきつけられる。

片耳エルフ「”吹雪斬牙”」

キュオオオ ガコンガコンッ!

巨大な氷の槍が魔王アーマーに襲い掛かる。

魔王アーマー(皇帝)「くそ!」

ヒュバババッ

魔法弾で氷を破壊する。



女兵士「すごい戦いだねー」

男子「下がって! 巻き込まれる」

第七王女「ここまで来て見守るしか出来んのは歯がゆいのう」

娘友「もうスケールが違うわね」

娘「……エルフ」

第二皇子「兄ぃ様……」



魔王アーマー(皇帝)「おおおっ」

バキバキバキ

魔王アーマーは絡みつく枝を腕力で破壊する。

片耳エルフ「止めれないか、ならば…… エルフ、突け!」

ウッドゴーレム「……」ブオン

片耳エルフ「”氷結嵐”」

ピキピキピキッ ガキィン!

魔王アーマー(皇帝)「何ぃ!?」

氷の槍と化したウッドゴーレムの腕が魔王アーマーの腕を破壊した。

片耳エルフ「いいぞ、叩き込め!」

ウッドゴーレム「……」ブオンブオンッ

ガキィン! ガキィン!

魔王アーマー(皇帝)「馬鹿な! 馬鹿なああああッ」

〇破天の塔跡地・ガレキの陰

第七王女「うむ、勝てるぞ」

娘「でも……」

第二皇子「兄ぃ様!」ダッ

第七王女「ホビット!」

第二皇子と第七王女がガレキの陰から飛び出す。

男子「まて、戻れ」

娘「私が行くわ」ダダッ

娘も後を追って飛び出した。

〇魔王アーマー操縦席

ガキィン ガキィン

\アームエラー、アームエラー/ \レッグ破損、レッグエラー/

警告音と破壊音が操縦席に鳴り響く。

皇帝「ぐぐぐ…… 亜種族め……」

魔王アーマーはその機能を停止しかけていた。

異形の首「……」ゴポッ

操縦席の後部にあるガラス管の中から異形の首が蠢き、眼を開く。

〇破天の塔跡地

第二皇子「やめてーっ! 兄ぃ様を殺さないでーっ!」

第二皇子がウッドゴーレムの前に飛び出す。

片耳エルフ「何を言っている?」

ウッドゴーレム(少年エルフ)「……(あ……に、……助……け)」

ウッドゴーレムは魔王アーマーの操縦席に腕を伸ばす。

〇魔王アーマー操縦席

皇帝「あれは……弟……(なぜここに)」

操縦席から第二皇子が飛び出すのが見えた。ウッドゴーレムに何かを言っている。

――弟がきたぞ、お前に復讐しに――

皇帝「何? 俺に……俺を……殺すのか……」

異形の首「……」

異形の首が皇帝を見つめる。

――当然、お前が殺そうとしたのを知ったのだ――

ウッドゴーレムが腕を伸ばしてくるのが見える。

――ほうら、お前を握りつぶす気だぞ――

皇帝「何!? 待て、そんな…… 俺は……俺の帝国が!」

――お前は何もかも望みすぎたのだ死死死死死死死死死死――

哄笑のような死の予感が皇帝を襲う。

皇帝「死、死ぬ! いやだ! いやだあああああああああああッ!!」

皇帝は絶望した。

異形の首「よきかな」ゴボッ



グオン バシュウウウ

片耳エルフ「なんだ!? 止めろエルフ!」

魔王アーマーが内側からにじみ出る黒い何かに覆われていく。

グニグニ ブシュブシュ

片耳エルフ「なんだこの巨大で邪悪な魔力は!?」

〇ガレキの陰

娘友「何よアレ、キッモ」

ドワーフ王「油か?」

女兵士「なんか怖い……」

白竜「ッ! ……みんな伏せて」

白竜は男子達に覆いかぶさる。

男子「何だ!?」


〇ウッドゴーレムの足元

第七王女「なんじゃ!?」

第二皇子「兄ぃ様?」

娘「2人とも私の後ろへ……光よ!」パアアッ


〇ウッドゴーレムの肩

片耳エルフ「まずい”大守護”」

ギュドドドドドドドドッ

魔王アーマーからの黒い奔流があたりを覆いつくした。

ドドドドドドドドドドッ



???「グワッハッハッハッハッ! よきかなよきかな」

魔王が現れた。

魔王「一人の人間がここまで絶望するとは、野望とは大したものだな」

娘「ぐぅ……」

娘は至近距離で魔王の攻撃を受け瀕死になった。

第二皇子「しっかりして娘姉ぇ様!」

第七王女「わしらをかばって…… ここは危険じゃ、ホビット足を持つのじゃ」

第二皇子「はい!」

第七王女と第二皇子は娘を担いで移動しだした。

娘「……(エルフ……」

朦朧とする意識の中ウッドゴーレムを見つめる娘。

ウッドゴーレム「……」

ウッドゴーレムはボロボロになりながらも立っていた。

魔王「ほう……エルフ族の木偶人形か」

ウッドゴーレム(少年エルフ)「ま……おう」



白竜「……」

男子「白竜、大丈夫か! いま回復薬を」

男子が白竜に回復薬をかける。

娘友「ひえええ、空が見える。ここ地下だったわよね?」

魔王のはなった魔力で天蓋は吹き飛び辺りはクレーター状になっていた。

第七王女「皆の者無事か!」

女兵士「王女サマ!」

第二皇子「娘姉ぇ様に薬を」

娘友「あたしのを使って」

第七王女「うむ」

第七王女は娘に回復薬を使った。

娘「……」

第七王女「ぬぅうう…… 傷が深すぎるもっと薬じゃ」

女兵士「使っちゃったわ」

男子「娘!」

第二皇子「そんな……」



ウッドゴーレム「……」シュルル シュルルル

ウッドゴーレムが枝を伸ばし魔王を捕らえようとする。

片耳エルフ「皇帝を取り込んだか…… なんて魔力だ」ぜぇぜぇ

魔王「心無き巨人兵器か、厄介だが…… まだ心が残っているな」

ウッドゴーレム(少年エルフ)「む……すめ」

魔王「ならばこれでどうだ」ギュロン

魔王が魔力をまとった拳をくり出す。

ドンッ!

ウッドゴーレムの巨体が宙を舞う。

\キャアアア/

ウッドゴーレム(少年エルフ「……し、しょうさん」

同じく吹き飛ばされた片耳エルフが少年エルフの目にとまる。

ドドンッ

ウッドゴーレム「……ッ!」

ウッドゴーレムが地面にたたきつけられる。

ドシャ

片耳エルフ「」

そして片耳エルフが地面にたたきつけられた。

ウッドゴーレム(少年エルフ)「え……」

魔王「今の高さでは助かるまい」

――師匠さんが――

\娘、眼を覚ませ/

男子が娘に必死に呼びかけている。

――娘が――

魔王「……」ニヤリ

――みんないなくなる――

ウッドゴーレム「ウウウ……」

――ヒトリ――

ウッドゴーレム「ウアアアア」

魔王「グハハハッ」

突進するウッドゴーレムを魔王は構えもせずに受ける。

ウッドゴーレム「アアアアアッ」

魔王「怒り憎しみ悲しみ絶望…… 小さき者にこれほどとは」

ウッドゴーレム「アア……」

ゴプゴプ

攻撃を繰り出すウッドゴーレムが徐々に魔王の体に飲み込まれていく。

魔王「これもよき絶望…… 我が糧となれ」



第二皇子「エルフッ! 兄ぃ様!」

男子「くそぉ! 何か方法はないのか」

ザッ

魔法勇者「あるらしいぞ」

第七王女「馬鹿勇者!」

男子「と片耳エルフさん」

魔法勇者が重症の片耳エルフを担いで現れた。

片耳エルフ「……」ぜぇぜぇ

娘友「あんた今までどこに」

魔法勇者「師匠を助けに行ったんだ」

第七王女「おぬし治癒魔法は使えぬか!」

魔法勇者「俺は魔法使いだ、治癒は出来ない」

第七王女「ぬああ! おぬしはホントに使えんのう!」

娘友「ホントバカ! ここは気合で治癒魔法を使えるようになって『あんたまるで賢者ね』って言われてそれを否定して『大魔導士と呼んでくれ』ってなシーンにするところでしょーが!!」

魔法勇者「気合で魔法が出来てたまるか馬鹿野郎!!」

\ギャーギャー/

第二皇子「でも方法があるって……」

片耳エルフ「あぁ…… 出来ればやりたくなかったがな……」ぜぇぜぇ

第二皇子「う……(ひどい、両足が……)」

片耳エルフ「その人間の横に私を……」

第二皇子「はい」



第二皇子が娘の隣に片耳エルフを連れて行った。

片耳エルフ「最後の魔力だ”治癒”」パアア

娘「……ぅ」

片耳エルフ「聞こえるか人間」

娘「ぅ……る、さいエルフ女」

片耳エルフ「よし意識をしっかりもってよく聞け…… 私は死ぬ」

娘「……」

片耳エルフ「そしてお前もな」

※つづく

#42 歓喜の剣

〇ウッドゴーレム内

魔王「

ズズズ……

少年エルフ「ヒトリ……怖い……寒い……」

魔王からの浸食を受けて少年エルフが黒く邪悪な何かに覆われていく。

――最後のエルフ族よ、お前は孤独の宿命なのだ――

少年エルフ「……コドク」

???「違うぞエルフ」

シュパアアアアアアッ!

突如、輝きが溢れ黒く邪悪な何かが消滅する。

魔王「むぅ!?」



少年エルフ「う……うん?」

少年エルフはだれかに抱きかかえられている。

少年エルフ「師匠さん?」

???「いいや違う」

少年エルフは地面にそっと寝かされる。

少年エルフ「え? あれ娘??」

娘?「そうでもないわ」

娘の顔をした誰かは静かに言う。

娘?「貴方の娘はもういないわ」

少年エルフ「え? なにをいってるの?」ドキドキ

娘?「わかるでしょう、エルフ」

シュキン

その者は魔王に向き直ると光の剣を構えた。

〇数刻前

第二皇子「ホントにやるの? 成功するの?」

片耳エルフ「ゴフッ さあな、この状態の2人だどうなるかは保障できん」

娘「そうね、でも…… このままじゃどっちにしろ死ぬわ」

第二皇子「でも成功したっていったいどっちがどっちになるの?」

片耳エルフ「わからんな私がお前かお前が私になるのか…… そのどちらでもないかもな」
娘「そうね、でももし成功したら…… きっとエルフを、みんなを助けられる」

片耳エルフ「大した自身だな…… ならば見せてもらうぞお前の覚悟を」

ドスッ

片耳エルフは合体進化の秘法の結晶を自身の胸に刺した。

第二皇子「ううう……」

娘「お願い…… 早くしないとそいつの覚悟が無駄になるわ」

第二皇子「うわーー!」

ドスッ

第二皇子は合体進化の秘法の結晶を娘の胸に刺した。

ヒュウウン

第二皇子「わあああああ!?」

周囲が光に覆われる。

〇今

シュパアアアアン

魔王「この力…… 貴様勇者か!?」

光の剣によって魔王の腕が消滅する。

娘?「勇者? いいえそんなものはいないわ」

少年エルフ「その力は娘…… でもその耳はエルフ族の……」

娘?「そうね私は娘でも片耳エルフでもないのだ」

エルフ族の耳をした娘の顔をした者は言う。

少年エルフ「え? でも……でも……」

エルフ娘「そうだ私はどちらでもない。ハーフエルフのエルフ娘だ!」

少年エルフ「ええ!」

バッ

エルフ娘は飛び上がり魔王に向かって光の剣を掲げる。

魔王「むうん」

魔王が黒い奔流を放つ。

エルフ娘「ハッ」

シュパアアアアアアン

エルフ娘の一振りで黒い奔流が消滅する。

魔王「”高重力陣”」ギュオン

魔王が異次元の魔法を放つ。

エルフ娘「光よ、消し去れ!」

エルフ娘が放つ光が魔力ごと魔法を消滅させる。

シュワアアアア

魔王「なぜだ!?」

ゴウン ゴウン

魔王は次々と攻撃を繰り出すがことごとく消滅させられる。

シュパアアン シュパアアン

エルフ娘「さあ、なぜかしらね」

魔王「なぜこれほどの力が!?」

シュワアアアアア

魔王の半身が消し飛ぶ。

エルフ娘「さあてね、ただ湧き上がるのよ喜びが!」

シュパパパアン

魔王「おのれ、”黒孔生成”」

ギュオオオオ

魔王の最大魔法が辺りを飲み込み始める。

エルフ娘「せいっ」

シュキン

エルフ娘は光の剣を放って魔法を消滅させる。

魔王「今だ、絶望せよ」ドゥ

魔王が剣を離したエルフ娘に襲い掛かる。

エルフ娘「”喜びを伝えよ”」

シュパアアアアアアア

エルフ娘が再び光の剣を生成する。それも以前より巨大になって振り下ろされる。

魔王「馬鹿ななぜおまえ一人がここまでの喜びを持てる!? グアアア!」

エルフ娘「一人ではないわ…… それに200と17年の絶望が希望になったのよ」

魔王「ぬぬぬ……しかし我は貴様らには倒せぬ。貴様らに感情がある限りな」

エルフ娘「そうかしら、”希望よ輝け”」

魔王「我を憎まぬヒトは居らぬわ! フハハハハッ」

エルフ娘「”歓喜の剣”」

ヒュパアアアアアアアアアアアアッ

光の奔流が魔王を覆う。

魔王「ウオオオオオ! なぜだ!? なぜ憎しみを感じぬ!? なぜ貴様は我を!?」

エルフ娘「そうね、これまでの全てに感謝してるからかな…… 『そう』でなければ『こう』はならなかったからでしょうね」

魔王「まさか貴様は…… 我を、この魔王に『感謝』しているのか!?」

エルフ娘「言ったでしょ、全てにと…… だから最後よ魔王」

エルフ娘が完成した歓喜の剣を振りかざす。

ヒュドドドドドドドドッ

エルフ娘「ありがとう魔王」

ドドドドドドドドドドドドドドッ

魔王「馬鹿な! 我に…… 感謝だと…… そんな勇者が…… フハハ…… ハハハハハハハハ!!」

魔王を倒した。



少年エルフ「……あ、あ」

光と共に魔王が消え、エルフ娘が少年エルフに近づく。

ザッザッ

エルフ娘「エルフ」

少年エルフ「あ、あの…… 娘?」

エルフ娘「まったく、そうじゃないて言ったわよね?」

少年エルフ「えっと、その……はい」

エルフ娘「バタバタしてたから改めて自己紹介するわ」

少年エルフ「ん……」

エルフ娘「私はハーフエルフのエルフ娘よ、貴方と同じのね」

少年エルフ「僕と……」ドキドキ

エルフ娘「そうよ……あなたはもう独りじゃないわ」ぎゅう

エルフ娘は少年エルフを抱きしめる。

少年エルフ「うう…… うわあああああああん」

少年エルフは泣き出し、エルフ娘は彼を強く抱きしめる。

エルフ娘「ずっと一緒よ、エルフ」

〇???

神官「という感じで魔王は倒されました」

フゴゴゴ

暗闇の中、何かの咆哮が答える。

神官「そろそろご自身で何かしてみたらどうです?」

フググゥ

神官「えー?、また寝るんですか」

ググゥ

神官「あーもう、寝てばっかりだと存在を忘れ去られますよ。竜王さま」

〇数年後?

――森の外れに小さな古屋から産声が聞こえる。

――初めまして小さなエルフ

――ほらこっちに来て抱いてみて

――見えるかしらこのエルフがあなたのパパよ

〇少年エルフの喫茶店(再建)

娘友「なーんて感じで締めるといい感じだと思わない? だからそろそろ結婚とかその後の予定はどうかなーって?」

エルフ娘「友、あなたねぇエルフはまだ60そこそこよ。あと40年はまたなきゃ」

エルフ娘は渡された書きかけの本を突き返しながら答える。

娘友「うっわー、ギャップを感じるわー、娘やっぱり変わったわねー」

エルフ娘と娘友が談笑している。店長の少年エルフは他の客と応対している。

エルフ娘「そりゃそーよ、一回生まれ変わったようなものだし、人間じゃないんだし」フフフ

娘友「そう……(まーだハーフエルフになれたのを喜んでるんだ)」

エルフ娘「それにしても勝手に本なんて書いてていいの? 私たちの事はなんとなくボカす約束でしょ」

娘友「王女とは約束はとれてるわ、そうそう、最近手紙も届いたのよ」

エルフ娘「本当!? 確か東方に行ったはずよね」

娘友「そうよ、なんだか記憶喪失になった皇帝の跡継ぎ問題をホビットと共に颯爽と解決して、怒涛の縁談に嫌気をさして男子君と女兵士さんとで東方へ旅立った第七王女よ」

エルフ娘「ずいぶん詳しく言うわね」

娘友「ノルマなの」

エルフ娘「まぁいいわ、それで何が書いてあったの」

娘友「もうじき帰ってくるみたいだけど……ここ見て~」

エルフ娘「なになに……なんとこの地にもエルフ族の生き残りがおりエルフの話をしたら是非会いたいと申して、帰国の際には伴って帰……うがーー!」ビリビリ

エルフ娘は手紙を破り捨てる。

少年エルフ「うわ!? どうしたの娘?」

娘友「あーあ」

エルフ娘「な、なんでもないわ」

娘友「落ち着いてよ娘、すぐに帰ってくるわけじゃないし」

エルフ娘「そ、そうよね帰国の予定は……」

娘友「んーと明日ね」

エルフ娘「えええええええ、こうしちゃいられないわすぐに迎撃の準備を」

娘友「迎撃って」

バァン

第七王女「友ー、娘ー、エルフー居るかのう。驚かせようと一日早く帰ってきたぞよ」

第七王女が現れた。

エルフ娘「ああああああああああああ!!??」

第七王女「ほっほっほ、驚きすぎたか。 さらに驚くべきことにエルフ族の生き……」

エルフ娘「タンマタンマーッ!」

ドドドドドッ

エルフ娘が第七王女を外へ押し戻す。

少年エルフ「娘? いま誰かお客さん?」

エルフ娘「違うわ! ちょっと出かけるか留守番よろしくね、絶対外に出ちゃだめよ」

少年エルフ「え?うん」

娘友「エルフさんもまだまだ大変そうね」

娘友は書きかけの本を開く。

娘友「ずいぶん書き足りてないけど…… ま、いっか」

サラサラッ

娘友「おわり、っと」

※おわり


しばらくは読みやすくして、書けなかった分を追記したリメイク版を更新します、あとは異世界サラリーマンものの構想を考えています。

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