すこやん「インハイ終わったしそろそろ狩ろうかな」 (42)


すこやん「今年は豊作だし楽しみだよ……誰から狩ろう」

↓1

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すこやん「別に男狩りがしたい訳じゃないよ!」

すこやん「今年のインハイといえばやっぱり清澄高校だよね」

すこやん「あー、靖子ちゃん?これから長野行こうと思うんだけど、暇?清澄高校まで案内してよ」TelTel

~~長野~~

すこやん「はー……田舎だなぁ」

藤田「それにしても急にどうしたんっすか。こんな田舎に……」

すこやん「や。インハイで目覚ましい活躍をした彼女達を激励しようと思って」

藤田「は、はぁ……(暇なんだな、この人)」

すこやん「ん?あれは……!?」

京太郎「相変わらず人使いが荒いぜ……全部で50kgはあるんじゃねーか……」

咲「それにしても京ちゃんすごいね。まるで驢馬だよ」

京太郎「20kgの米とか何に使う気なんだよ、ホント」

咲「少し持つ?」

京太郎「サンキュー。ならこのタコスを頼むよ」


藤田「あれは宮永咲と……えーっと、確かマネージャーの……須田?」

すこやん「ねえ靖子ちゃん、あの2人って付き合ってるのかな!?」

藤田「え?」

すこやん「ほら、何か雰囲気良さそうじゃん。特に宮永さんの目なんて、恋する乙女のそれだよ!」

藤田「だからって付き合ってるとは……」

すこやん「インハイで名声も手に入れて私生活も充実している……私なんてインハイ優勝した後すぐプロで遊ぶ暇なんてなかったのに……」ズズズ……

藤田「ちょ、ちょっと、小鍛治さん、何か変なオーラ漏れてますって!街中で!」


咲「」ビクッ

京太郎「どうした、咲?」

咲(何か寒気が……)

京太郎「あれ?あそこにいるのって藤田プロじゃ」

咲「藤田さん?」

藤田「おう、宮永、久しぶりだな」

咲「あっ、お久しぶりです」ペコリ

京太郎「あれ?隣の方は」

すこやん(中々のイケメンだなぁ!宮永さん!)

すこやん「えっと小鍛治健夜といいます」

咲・京太郎「小鍛治……?えええぇェェェ!!」


咲(京ちゃん、京ちゃん、小鍛治さんってあの?)ヒソヒソ

京太郎(ああ、あの小鍛治さんだ!)ヒソヒソ

咲(解説の人だよね、挨拶しなくちゃ)ヒソヒソ

京太郎(今日はこーこちゃん一緒じゃないのか……)ションボリ

咲「えっと、先日はインターハイの解説で大変お世話になりました、私、宮永咲です」ペッコリン

京太郎「咲の同級生の須賀京太郎です!こんな風体でも一応麻雀部員です。インハイ中はテレビで小鍛治さんの解説聞いてました!」

すこやん「変なこと言ってなかったかな?」

京太郎「いえ、分かりやすくて素敵な解説でしたよ!福与アナとの掛け合いが面白くって」

すこやん「それはどうも」

咲「さ、さすが解説のプロって感じでした!」

すこやん「解説の……プロ?」

藤田「おい、宮永!この人はなぁ」


すこやん「いや、黙ってて靖子ちゃん」

京太郎「今日はひょっとして清澄高校にいらしたんですか?緊張するなーカメラとか回ってないんすかね?」

咲「か、カメラ?はわわ、寝癖立ってないかな……」ペタペタ

藤田(こ、こいつら完全に小鍛冶さんを芸能人か何かだと勘違いしてやがるッ!!)

藤田(確かに宮永は初めて会った時私のことも知らなかったよな……これでもせんべいカードは二桁のプロなのに)

すこやん「いや、カメラは回ってないから安心してよ。今日はインハイで大躍進を遂げた清澄高校に取材させてもらいに来たんだ」

藤田(それにしても男の方は何なんだ!?今時のガキはグランドマスターの事も知らないのか!?)

咲「そんな……恐縮です」

京太郎「今日は福与さんは一緒じゃないんですね?」

すこやん「こーこちゃんはグラビアの仕事とか言ってたなぁ」

京太郎「むひょー!!!」


京太郎「ここが清澄高校の部室になります」

すこやん「へー……立派な扉だねぇ」

京太郎「へへっ……おーいみんな!今日はスペシャルなゲストが来たぞ!」バタン

タコス「犬!タコス遅いじょ!」

まこ「ん?」

京太郎「じゃじゃーん!『ふくすこ』の小鍛治健夜さんですよ!」

すこやん「はじめまして」ペコリ

藤田「一応私もいるぞ」

和「はじめまして」ペコリ

タコス「おねーさん、どこかで見たことある気がするじぇ」

咲「えへへ、ゆーきちゃん、なんとあの解説の人だよ!」

まこ「えっと……小鍛治プロですか?」

すこやん「あ、はい」

高校野球の練習中に突然王貞治がやって来たら?ボクシング部に具志堅用高が、将棋部に羽生善治が

その時染谷まこが受けた表現を例えるならソレと同じだ。

咲「麻雀プロの方、だったんですか?」

宮永咲は仕方がない。彼女が麻雀を避けていた時期ーそれが小鍛治健夜の全盛期に一致する。

京太郎「咲、そんなことも知らなかったのかよ!そりゃ解説はプロの仕事だろうが……」

須賀京太郎は無知だった。彼が麻雀に興味を持ち始めた高校1年生の春、彼女は既に第一線を退いた後だった。

まこ「お会いできて光栄です。突然で何のもてなしも出来ませんが……」

すこやん「いや、ホント突然でごめんね……今日はインハイ優勝をねぎらいに来たというかなんというか……」

まこ「おい、京太郎、茶ァ汲んでこんかい!」

京太郎「あ、はい!」

タコス「ああ、思い出したじぇ!確かせんべいカードの人だじょ!」

藤田「コイツら、小鍛冶さんを何だと思っているんだ……」

すこやん「あはは」

タコス「で、麻雀プロが清澄高校麻雀部に何のようだじぇ?まさかお茶してお話しに来ただけか?」

和「ゆーき?」

タコス「ここには麻雀部。幸い卓もあれば牌もある。となればやることは1つだじぇ!」

無知とは恐ろしい。この時、小鍛治健夜の業績を知る藤田靖子と染谷まこは同時に同じことを考えた。

和「そうですね。では誰が抜けますか?」

原村和も平常心そのものだった。彼女にとって過去の業績に恐縮する感覚、そのものが理解できなかった。

彼女の生きる世界では今のレートが全てだった。過去にレートが2000だろうが、今が1500ならその程度の価値しかない。

すこやん「面白い」ボソ


タコス「ギャーッ!!勝てないじぇ!さすがプロを名乗るだけあるな!」

和「ゆーきは牌効率を無視しすぎです……」

すこやん(と言っても麻雀の腕は高校生レベルだなぁ)

まこ「藤田さん、こりゃどういうことじゃ?」

藤田「いや、私も知らんし」

まこ(何でグランドマスターが稽古つけてくれるんじゃろ……)

タコス「さすがにタコスぢからが切れてきたじょ……咲ちゃん、そんな隅っこでどうした?」

咲(この人何なんだろう……確かに強いんだけど……どこか違和感)

タコス「次、入ったらどうだ?まだ入ってないのは咲ちゃんと犬の2人だじぇ」


京太郎「よろしくお願いします!」

咲「……」

和「よろしくお願いします」

すこやん「よろしくね。じゃあサイコロ廻すよ」


すこやん「ロン。12000。これで対面のトビだね」

京太郎「うぐっ……」

咲「京ちゃん……」

和「そんな見え見えの2-5ピンに振り込みますか……」

京太郎「突然すみまんせん!小鍛治プロ、俺、麻雀強くなりたいんです」

すこやん「はぁ」

京太郎「すごく厚かましいお願いになるんですが……強くなるコツ、教えて下さい!」

すこやん「うーん……」

京太郎「……」

すこやん「強くなりたいって言われても……強さにも色々あるし」

京太郎「色々、とは?」

すこやん「仲間内でアイツ麻雀強いよなーって一目置かれたいのか、それとも大会に出てそこそこの成績を残したいのか。または本気でプロの道を選ぶのか」

すこやん「えっと、君はどれなの?」

京太郎「俺は……」

↓1 1「咲たちの練習相手になれるくらいは強くなりたい!」
   2「インターハイに出て活躍したい!」
   3「小鍛治さん、アナタに勝ちたい!」


京太郎「小鍛治さん、アナタに勝ちたい!」

し~~~ん

すこやん「いや、それ、無理だから」

京太郎「うぐっ……そんな……」

すこやん「いい加減気づきなよ……凡人がいくら努力しても超えられない壁ってのはあってね」

すこやん「無駄だよ、無駄無駄。君が一日18時間麻雀を打っても、多分周りの子達の練習相手にすらなれないと思う」

すこやん「適当にルール覚えて、本屋で一番売れてそうなデジタル入門書でも買って、同じくらいのレベルの相手を見つけて練習すれば、雀荘でちょっとはでかい顔出来るんじゃないかな……」

京太郎「ふ、ふざけるなよ……」

すこやん「え?」

京太郎「俺だってっ!努力してんだ!人間舐めんじゃねぇ!」

すこやん「いやいや、努力するの当たり前だから。努力していることを言い訳にしだしたら、終わりだよ」

まこ「京太郎……もうええじゃろ」ポンッ

和「ちょっと理解できませんね」

すこやん「え?」


和「あなたの言い方だと、麻雀は才能……そう言う結論になるわけですね。才能がない人が努力するだけ無駄だと」

すこやん「そんなこと一言も言ってないんだけどなぁ。そりゃ努力しないとダメだよ」

すこやん「ただ私に勝つのは無理だからアドバイス出来ないってだけで」

和「そんなのやってみないとわからないじゃないですか!確かに今は無理でも、何かのきっかけさえあれば人は成長しますよ」

すこやん「うんうん」

和「だから須賀くんを……清澄高校麻雀部をバカにしないで下さい!」

京太郎「和……」

タコス「和ちゃん……いつからそんなに熱くなったんだじぇ……」

すこやん「も、もしかして原村さんは須賀くんの事好きなのかな?靖子ちゃん」

藤田「そういう訳じゃないと思いますけど……」

すこやん「ふーん……きっかけかぁ。じゃあ挑戦してみる?」ぼっ

咲「うっ……何、このオーラっ……」

藤田「……」

すこやん「もう一度卓に付きなよ、須賀君。原村さんに免じて私に勝てるチャンス、あげる」

咲「や、やめようよ、京ちゃん……これ、やばい奴……(今まで見たどんなオーラより……おねーちゃんより、お母さんより)」

すこやん「須賀君10万点。私1000点。これで勝てたら私の雀力全部あげるよ」


赤阪「10万点持ち、向こう1000点のハンデで小鍛治健夜に勝てるか、やと?」

赤阪「ウチも腕に自信はあるけどなぁ~~」

赤阪「100万点持ち、親連チャン禁止なら受けてもええで~~」

赤阪「ってプロはみんなそう言うで。それでやっと五分やな」


京太郎「そんな条件でいいんすか」

藤田「おい小僧」

京太郎「……」ギロッ

藤田「……まあそれもお前の人生か」

すこやん「3人で協力していいよ。須賀君、勝てばきっとあなたは私の高みを知ることになる」

すこやん「でも負けたら大切なものを1つ、もらうよ」

タコス「おい、犬……やめといた方がいいじょ」

京太郎「俺は麻雀に強くなりたいからこの勝負、受けるわけじゃねぇ」

京太郎「許せないんだ。この人が。俺たちの努力を平然と踏みにじる、その生き方そのものが」

京太郎「和、咲一緒に戦ってくれ!」

和「雀力とか意味がわかりませんが、負けたら非を認めて謝罪して下さい。」

咲「……」

京太郎「咲?」

咲「うん……」

藤田「お前は止めないのか、染谷まこ」

まこ「やめぃと言うて止める程度の男ならこんな事にはなっとらんけぇ」

まこ「それに和も咲も着いとる。決して勝算のない戦いとは思えんのぉ」

藤田(甘い……甘い……もし久がこの場にいれば、どんな手を使ってでも勝負を止めただろーよ)

藤田(ただ人は失うことでのみ成長するんだ。そこに私が口を挟むのは野暮ってもんだ)



咲「ちなみに京ちゃんの大切なものって」

すこやん「賭けのテーブルに置かれるものは対等であるべきだと私は考える」

すこやん「この平凡な男の子が持つものは私の雀力と何も釣り合わないんだよ」

すこやん「そう、命でさえも」

すこやん「だから私が欲しいものにするよ」

すこやん「じゃあ初めようか」


勝負は東二局に回ることなく終了となった。

すこやん「ロンッ!これで決着ッ!」

京太郎「かはっ……ありえっ……」

すこやん「3連続役満……はー、やっぱりあっけなかった」

和「うそ……ですよね……」

京太郎「イカサマ!イカサマ!少しはチャンスがあってもっ!この卑怯者っ!」

咲(京ちゃんと小鍛治さんの雀力差を考えれば当然だよね……今の京ちゃんは蟻が戦艦に挑むようなもの……)

咲(私が気になるのはむしろここから)

すこやん「じゃあ取り立てだね」

京太郎「ヒッ……」ガタッ

京太郎「和ッ!咲ッ!助けてっ……怪物がっ……」

和「須賀君!ど、どうしたんですか?」

咲「……」

京太郎「うぎゃあ」


ーー

すこやん「お世話になったね、靖子ちゃん」

藤田「あんなもの奪って、何の意味があるんですか?」

すこやん「うーん、まあ色々使いみちがありそうだけどね。靖子ちゃんで試していい?」

藤田「ちょ、勘弁して下さい」

すこやん「まあ、これで彼は……あ、もう彼女は念願のインターハイ出場資格も手に入れられるし」

藤田「それにしてもどうなんですかね……その、男性のシンボルがないだけでインハイ出れるとは思えないんですけど」

すこやん「色々手続きとか大変そうだよね」

藤田「まあそれにしてもアイツ、一生地獄ですね」

すこやん「……靖子ちゃん、私は種を植えたんだよ」

藤田「種?」

すこやん「まあいいや。じゃあね、靖子ちゃん」


すこやん「さて、次は誰を狩ろうかな」

↓1 


Menu.2 天江衣

天江衣には忘れられない思い出がある。

黒い服と黒い車。棺。雨。

「ハギヨシッ!天江だっ、あの娘を呼べッ!」

ハギヨシ「……」

ハギヨシの足取りはいつになく重かった。

龍門渕家の当主は、この一晩で己の身を焼くほどのものをテーブルに乗せていた。

「殺してやる……殺して……殺してやるぅ~~」

普段の品のある大財閥の当主に似つかわしくないほど頭髪は乱れ、憔悴しきっていた。

すこやん(天江、かぁ……)


種目はポーカー。

龍門渕家が賭けるのは財産。小鍛治健夜が賭けるのは己の血。

血のレートは1ml1000万円。

最低ベットが10ml。

5時間かけて小鍛治健夜は血を1200ml失い、そこで龍門渕は全財産を吐き出した。

すこやん(結構吸われたなぁ)

すこやん「じゃあ今日の勝負は私の勝ちってことで」

「待ってくれっ!私も血を賭けようっ!」

すこやん「あなたの血じゃ10Lあっても私の1mlと釣り合いませんよ……あなたの血なら」

「……」

すこやん「天江の……血なら……6年前のレートでやってもいいけど」

ハギヨシ「小鍛治様ッ!」

すこやん「長野予選で宮永に敗れたと聞いた時は失望したんだ。だから確かめに来たよ」

すこやん「天江の子とやるなら……うん、ポーカーより、麻雀がいい」


衣「丑三つ刻を過ぎておるぞ、ハギヨシ」

ハギヨシ「当主様がお呼びでございます」

衣「浮かぬ顔をしておるな」

ハギヨシ「……」

衣「衣とハギヨシの間に隠し事はなしだ。申せ」

ハギヨシ「……天江の血に関わる話でございます」

~~~~~

衣「……」

ハギヨシ(驚かれるのも無理はない……あの事故が……偶然のものではないと)

ハギヨシ「……如何なされますか」

衣「ハギヨシ。率直に申せ。衣は……その怪と……戦い、何を得る」

衣「父母の恨みに報いるのか」

衣「この豪華絢爛たる暮らしの糧を守る事ができるのか」

ハギヨシ「……」

衣は……

↓1 戦うor戦わない

衣「相わかった」

衣「幸運にして月は満ちている」

衣「ハギヨシも知っておろう?海の底に月があるのを」

衣「さあ案内せよ、怪の在り処へ」


衣「今宵の贄は……少々異形であるな」

すこやん「待ってたよ。逃げるんじゃないかと心配だった」

衣「笑止千万。片原大激痛。衣の辞書に逃げるという言葉はないのだ!」

すこやん「でも良かった。もし逃げたら……皆殺しだった」

衣「……」ゾクッ

すこやん「そうすれば、ほら。次は逃げないでしょ?」

すこやん「さあ、卓を囲もう。覚悟は出来てるよね……」

衣「卓は2人では囲めまい」

すこやん「そうだね……あと2人。衣ちゃんが選んでいいよ」

衣「……」

龍門渕のメンバーから
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