アルスラーン「……プリズン?」キヨシ「……パルス??」(110)



アルスラーン側は
シンドゥラ遠征後、ペシャワールで軍備を整えてたくらいの頃

プリズン側は
関羽フィギュア○○後くらいです。


>>1はプリズン、アニメしか知らんとです……



アルスラーン「…………」

アルスラーン(朝……起きてみると)

アルスラーン(そこは薄汚い部屋だった)

アルスラーン(……どうやら牢の様だが)

アルスラーン(私は……昨日、ペシャワールの一室でいつも通りに寝ていたはず)

アルスラーン(いったい何が起こったのだ?)

アルスラーン(……ともかく、部屋の前にはジャスワントが居てくれてた)

アルスラーン「ジャスワント!」

アルスラーン「ジャスワント、居るか!?」


???「う、う~ん……朝っぱらから うるさいでござるなぁ……」

アルスラーン「!」

アルスラーン「誰だ!? 誰か居るのか!?」

????「どうしたのぉ……」

???「……なに騒いでんだよ……ったく」

???「ゴホッ……」

アルスラーン「他にも誰か居るのか……」

???「むっ?」

???「その声は? いったい誰でござる?」

アルスラーン「私は、アルスラーンだが……知らぬのか?」

アルスラーン「ここはペシャワールではないのか?」

???「はあ? 何を言っているのでござる?」

???「って! そうではなくて!」

???「お主、どうやってここに来たのでござるのか!?」



―――――――――――


キヨシ「……う~ん」

キヨシ(はぁ~気持ちいい……)

キヨシ(朝のベッドは……至福だなぁ……)

     コン コン

ジャスワント「殿下」

ジャスワント「そろそろ公務のお時間です」

ジャスワント「お起きください」

キヨシ「…………」

キヨシ「公務??」


     ムクッ…

キヨシ「…………」

キヨシ「……?」

キヨシ(あれ? ここはどこだ?)

キヨシ(寝起きで記憶が飛んだ的な事じゃなく、真面目に見た事のない部屋だ……)

キヨシ(やけに気持ちいいと思ったら、清潔でふかふかのベッド……)

キヨシ(石造りで、豪華そうな家具や絨毯……)

キヨシ(暖炉!? 暖炉まである!?)

キヨシ(いったい……何が起こったんだ!?)


ジャスワント「…………」

ジャスワント「殿下? どうなさいました?」

ジャスワント「何かございましたか?」


キヨシ(なんか外の人が電化?とか言ってる……)

キヨシ(確かに、電化製品の少ない部屋だが……?)


ジャスワント「…………」

ジャスワント「殿下、失礼、入ります!」

     バタン!

キヨシ「…………」

キヨシ「ど、どうも……」

ジャスワント「」

ジャスワント「き、貴様!? 何者だ!?」

キヨシ「え? あ、俺の名前はキヨシと言って……」

キヨシ「というか、ここはどこなんですか?」



―――――――――――


アルスラーン「……そうか。 お主はガクト、というのだな?」

ガクト「そうでござる、が……」

ガクト「パルス……世界史でも聞いた事のない国でござるな」

アンドレ「困ったねぇ……」

シンゴ「つか、キヨシはどこに行ったんだよ?」

ジョー「……察するに……ゴホッ……この王子様と入れ替わりになったんじゃ?」

ガクト「SF小説などで、よくあるパターンのやつでござるな」

アルスラーン「えすえふ? ……何の事かよく分からぬが」

アルスラーン「どうすれば私は、帰れるのだ?」

ガクト「よくあるパターンなのであれば……」

ガクト「今夜もここで寝れば、再び入れ替わるのではないかと」


アルスラーン「そうか……不確定でも試せる事があるのなら」

アルスラーン「まだ良い方だな」

ガクト「アルスラーン殿は前向きでござるな」

ガクト「王族なのに少しも偉ぶらぬし、小生、気に入ったでござる」

アンドレ「うん。 よろしくね」

シンゴ「おい、お前ら! こんなこと信じろって言うのかよ!?」

ジョー「けど……ここの牢獄は鍵を締められてるし……ゴホッ……」

ジョー「囚人であるキヨシをさらって、何の意味があるんだ?」

シンゴ「そ、それは……」

アルスラーン「シンゴ殿……お主がキヨシという人物を心配する気持ちはわかる」

アルスラーン「しかし、私も自分に何が起こったのか、さっぱり分からないのだ」

アルスラーン「証明しようにもできないのだが……」


ガクト(……それにしても)

アンドレ(何ていうか……)

ジョー「……ゴホッ」

シンゴ(はあ……)


     困った事になった……


ガクト(一番の懸念は裏生徒会。 どう判断するでござろう……?)

アンドレ(キヨシ君には前科があるし……やっぱり脱獄とみなされるのかな?)

シンゴ(確かにありえそうだ……)

ジョー「……ゴホッ」

アルスラーン「?」



―――――――――――


ダリューン「貴様ァッ!」

ダリューン「殿下をどこにやったのだァッ!?」

キヨシ「痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたッ!?」

キヨシ「ほ、本当に知らないし、分からないんですぅッ!!」

ダリューン「そんな戯言、信じられるかァッ!!」

キヨシ「あがががががががががががががががががががががッ!!」

ナルサス「落ち着け、ダリューン」

ナルサス「お前がそれ以上本気で腕をねじり上げると もげるぞ」

ナルサス「効果的な拷問方法なら、いくつか知っている。 安心しろ」

キヨシ(この人、涼しい顔で恐ろしい事さらりと言ったァ!?)


ナルサス「ジャスワント」

ジャスワント「はっ」

ナルサス「朝まで扉の前にいたのだな?」

ジャスワント「はい。 間違いありません」

ジャスワント「また、殿下のご寝所からも怪しい物音や気配もなく……」

ナルサス「ふむ……」

ナルサス「ともかく、この者から事情を聞かねばならぬ」

ナルサス「ジャスワント程の手練に少しの気配も感じさせずに人間を入れ替えるなど」

ナルサス「人の身技を超えている」


一同「!」


キヨシ「……?」


ファランギース「……なるほど」

ファランギース「軍師殿は魔導の類いをお疑いなのじゃな?」

ダリューン「……となると」

ダリューン「こやつは殿下の身代わりにあつらえた、そこらの変人かもしれぬのか」

キヨシ「変人って……」

ダリューン「この様なしましまの道化服を寝巻きにしておいて」

ダリューン「常識があると思っているのか、貴様……」 ギロリ

キヨシ「はい! 変人で結構です!」

ナルサス「…………」

ナルサス(……いや、この者の衣服)

ナルサス(薄汚れているが、見たこともない布地で出来ている)

ナルサス(『そこら』の変人では無いのかもしれぬ)


ナルサス「……いずれにしても」

ナルサス「この者から事情を聞いておこう」

ナルサス「殿下は軽い風邪をお召しになられた事にして」

ナルサス「皆はいつも通りに仕事をして平静にしておく様に」

ナルサス「この事が外部に漏れては一大事だ」

ナルサス「特にダリューン、ジャスワント。 動揺を悟られぬようにな」

ダリューン「……心得ている」

ジャスワント「……はっ」

ナルサス「では……キヨシ、とか言ったな?」

キヨシ「は、はい」

ナルサス「事情を聞こう」



―――――――――――


アルスラーン「脱獄が発覚すると楽園から追放……その様な事情があったのか」

ガクト「左用でござる」

ガクト「アルスラーン殿には居心地が良くないでござろうが」

ガクト「ここはひとつ、キヨシ殿のフリをして、裏生徒会を誤魔化していただきたい」

アルスラーン「うむ。 私としてもここから離れる訳にはいかぬからな」

アルスラーン「できるだけ努力しよう」

ガクト「かたじけない。 助かるでござる」

シンゴ「……おい、ガクト」

シンゴ「いくらなんでも、この王子様?とキヨシじゃ声からして違いすぎるぜ?」

アンドレ「似ても似つかないね……」

ジョー「……ゴホッ」


ガクト「さしあたり、今日一日だけ誤魔化せば良いのでござる」

ガクト「幸いにもキヨシ殿は大痔主」

ガクト「調子が極端に悪くなったと言えば、弁解できるでござるよ」

アンドレ「けど……その手はキヨシ君が脱獄する時に使ったよね?」

アンドレ「怪しまれないかな?」

ガクト「刑務作業にアルスラーン殿を参加させるので、遠目に見せてバレなければ」

ガクト「成功の可能性は高いでござる」

シンゴ「メシの時はどうすんだ?」

シンゴ「あれは近くまで行って受け取らないといけないぞ?」

ガクト「それも痔で動けない、という理由で小生でも誰でもいいので」

ガクト「代わりに受け取れば良いでござる」


ジョー「……髪の毛はどうすんだ?」

ガクト「え? 髪の毛?」

ジョー「ガクト達の牢獄からは見えないだろうが、この王子さん」

ジョー「頭、真っ白だぞ」

ガクト「な、なんと……!?」

ガクト「アルスラーン殿は総若白髪でござったのか!?」

ガクト「キヨシ殿は真っ黒くろ髪……! マズイでござる!」

アンドレ「ど、ど、ど、どうするの!?」

シンゴ「もうすぐ副会長が来ちまうぞ!」

ジョー「……俺のパーカー貸そうか?」

ガクト「うむむ……いや! 小生、一計を思いついたでござる!」

ガクト「とりあえずアルスラーン殿! ベッドに入って頭から毛布を!」

アルスラーン「わ、分かった!」



―――――――――――


キヨシ「――という訳で」

キヨシ「いや、訳というか、俺にも何が何だか訳がわかなくて、その……」

ナルサス「…………」

ナルサス「……ふむ」

ナルサス「キヨシ。 君の居た……何とか言う修学施設や国の名前」

ナルサス「はるか遠方のものかと思ったが、そうでは無いようだな」

キヨシ「は、はあ……」

ナルサス「正直、君の意見をそのまま受け入れるのは到底無理だ」

キヨシ「」

キヨシ(えと……それじゃやっぱり、というか、拷問的な何かとか)

キヨシ(体に聞いちゃいますよ的な展開に!?)


ナルサス「だが」

ナルサス「興味深い部分もある」

キヨシ「!」

ナルサス「例えば、君の着ているその服」

キヨシ「え? ただの囚人服ですけど?」

ナルサス「そういう意味ではない」

ナルサス「おそらく……我々の技術で『それ』は作れない」

キヨシ「はあ……」

キヨシ(お金持ちそうだけど、そりゃ普通の人が作れるわけはないよな)

ナルサス「察するに君が『居た』場所は、我々から見れば」

ナルサス「高度な技術水準を持っているという事だ」


キヨシ「!」

キヨシ(という事は、タイムワープで過去に来ちゃいましたっていう)

キヨシ(王○の紋○みたいな、ベタな展開の事柄に遭遇しちゃったの!?)

ナルサス「…………」

ナルサス「事の重大さに気がついた様だな」

キヨシ「ええ……まさか、少女漫画界のシーラカンスに遭遇するとは思いませんでした」

ナルサス「……君の世界の言い回しは難解だな」

ナルサス「ともかくだ、キヨシ」

ナルサス「君はこれから君の居た世界の事を何も話さないでくれ」

キヨシ「……え?」

ナルサス「君の頭の中にある知識は、我々の世界では恐るべき技術水準のものばかり」


ナルサス「普段なにげに使っているものでも」

ナルサス「我々は軍事に転用してしまう、いや、必ずするだろう」

キヨシ「ナルサスさん……」

ナルサス「中には拷問してでも手に入れようとする者も現れるだろうな」

キヨシ「絶対に話しません」

ナルサス「それでいい」

ナルサス「だが……困った問題が一つある」

キヨシ「……どうやったら元に戻るのか、ですね?」

ナルサス「その通りだ」

ナルサス「キヨシ。 君の言う事を信じるとしても」

ナルサス「君と入れ替わった人物は我々にとって とても大事なお方なのだ」

ナルサス「どんな些細な事でもいい。 何か方法があれば言ってみてくれ」


キヨシ「……今の段階では、入れ替わった時と同じように行動する」

キヨシ「という事くらいしか思いつきませんね……」

ナルサス「……そうか」

ナルサス「では、今夜もあの部屋で寝てもらうとしよう」

キヨシ「分かりました」

ナルサス「…………」

―――――――――――

ダリューン「ナルサス」

ナルサス「ダリューンか」

ダリューン「あの小僧の尋問は終わったのか?」

ナルサス「一応な」

ダリューン「一応だと!?」


ダリューン「おいナルサス、事の重大さを分かっているのか!?」

ナルサス「もちろんだ」

ナルサス「だが、あまりにも情報が少なすぎる」

ナルサス「ファランギース殿にもあの部屋やキヨシを調べてもらったが」

ナルサス「ジンも特に騒いでいない、と言っていた」

ナルサス「……ただ」

ダリューン「ただ……何だ?」

ナルサス「ファランギース殿が言うには、敵意や魔道の気配はないが」

ナルサス「ギーヴに似た、邪な気配をキヨシからたっぷり感じたそうだ」

ダリューン「…………」

ナルサス「ははは。 あの年頃の男子としては、正常なのだそうだぞ?」

ダリューン「……そんな情報などいらぬ」



―――――――――――


芽衣子「豚ども、起きろ」

芽衣子「朝食の時間だ」

アンドレ「は、はい。 副会長、おはようございます」

シンゴ「っす。 おはようございます」

アルスラーン「」

アルスラーン(豚!? 今、豚ども、と言ったのか!?)

ジョー「ゴホッ……おはようございます」

ガクト「おはようございますでござる」

芽衣子「……ん?」


アルスラーン「…………」

芽衣子「おい、キヨシ」

芽衣子「貴様……聞こえなかったのか?」

アルスラーン「…………」

アルスラーン(……気だるそうに、ゆっくりと起きる)

     ムクッ…

アルスラーン(こんな感じだろうか?)

芽衣子「……おい、キヨシ」

芽衣子「朝の挨拶はどうした?」

ガクト「あ~……副会長殿」

芽衣子「なんだクソメガネ」

ガクト「キヨシ殿は昨晩……痔が悪化したようで」

ガクト「ろくに寝れなかった様なのでござる」


芽衣子「…………」

ガクト「小生もキヨシ殿のうめき声で一度目が覚めまして……」

ガクト「他の皆も、少々寝不足なのでござるよ」

アンドレ「そ、そうなんです……」

シンゴ「ふあ~……」

ジョー「……ゴホッ」

芽衣子「…………」

芽衣子「まあいい。 痔持ちなのは知っている」

芽衣子「だが、刑務作業はサボらせんぞ、キヨシ」

アルスラーン「…………」 コクッ

芽衣子「よし。 さっさと顔を洗って談話室に来い、豚ども」

     コッ コッ コッ…


ガクト「…………」

シンゴ「…………」

アンドレ「…………」

ジョー「…………」

ガクト「……どうやら、誤魔化せた様でござるな」

アンドレ「はぁ~見つかったらどうなるのか想像して、ちょっと気持ちよかったよ~」///

シンゴ「まずは第一段階クリアってとこだな」

ジョー「ゴホッ」

アルスラーン「…………」

アルスラーン「今の女性(にょしょう)……私も含め、皆を豚ども、と言っていた」

ガクト「あ~……ま、まあ、ショックなのは最初だけでござる」

ガクト「慣れれば意外と……」


アルスラーン「いや、待ってくれ」

アルスラーン「豚というのは家畜だ。 パルスでは奴隷より下の扱いだ」


一同「…………」


アルスラーン「皆は……あの様な事を言われて悔しくないのか?」


一同「…………」


アンドレ「ぼ、僕は、むしろ嬉しいかな……」///

ガクト「副会長からの罵詈雑言や罵倒・仕置は格別でござるよ」

シンゴ「そう言われても慣れちまったし……」

ジョー「ゴホッ」


アルスラーン「」

アルスラーン(……なんという事だ)

アルスラーン(あの時の奴隷達と同じで)

アルスラーン(自分たちの置かれている状況に満足しているのか……)

ガクト「……それにしてもアルスラーン殿」

アルスラーン「え?」

ガクト「貴殿は、その、何というのか……」


     本当に男……?


ガクト(正直、この学校の女生徒にも引けを取らぬ美丈夫でござる)///

シンゴ(声聞いてなかったらヤバかったな……)///

アンドレ(女装とか、させてみたい……)///

ジョー「ゴホッ……」///


アルスラーン「?」

ガクト「い、いや、やっぱり何でもござらん!」

アルスラーン「はあ……?」

ガクト「さ、そろそろ行かねば……っとその前に」

ガクト「その寝巻きを我々の着ている囚人服に着替えるでござる」

アルスラーン「うむ、分かった」

シンゴ「予備の囚人服、そこのロッカーに入ってるぜ」

アルスラーン「ろっかー……?」

アルスラーン「この……金物の箱の事だろうか?」

アンドレ「うん、それだよ」

ジョー(ロッカーすら分からないのか……)


アンドレ「でも……ガクト君」

アンドレ「髪の毛はどうするの?」

ガクト「う、うむ……今、それを思案しているでござるが」

ガクト「困った事にいい考えが思いつかないでござる……」

シンゴ「墨汁でもあればなぁ……」

ジョー「俺のパーカーを貸そうか?」

ガクト「うむむ……とりあえずはそれしかござらぬな」

ガクト「目の調子が悪いとかで、何とか誤魔化すでござる!」

アンドレ「なら、調子の悪いフリをしないといけないね」



―――――――――――


キヨシ「…………」

     コン コン

キヨシ「あ……はい、どうぞ」

     ガチャ

??????「ナルサスの指示で、ご飯、持ってきたよ」

キヨシ(女の子だ!)

キヨシ「あ、ありがとう」

キヨシ「お腹ペコペコだったんだ」

キヨシ(……顔に変な模様を書いてるけど)

キヨシ(この世界のファッションなのかな?)


??????「とりあえず自己紹介しとくよ」

??????「あたしはアルフリード。 ナルサスの愛人だよ、道化師さん」

キヨシ「愛人!? 君が!?」

???「おかしな事を吹き込むな! 女狐!」

アルフリード「エラム……あんたも来たの」

エラム「ナルサス様からコイツに会う時は」

エラム「二人で行動しろと言われたのを忘れたのか?」

アルフリード「扉にはジャスワントも居るし、大丈夫だよ」

エラム「全く……」

キヨシ「…………」

エラム「ああ、済まない。 俺たちの事は気にしないで食べてくれ」

キヨシ「う、うん。 いただきまーす」


     ムシャ ムシャ…

キヨシ「…………」

キヨシ(ちょっと薄味だな……)

アルフリード「……口に合わなかった?」

キヨシ「え!? そ、そんな事、ないよ!?」

アルフリード「あんた、嘘が下手だね……」

エラム「本音が顔に出まくりだ」

キヨシ「……ごめん」

アルフリード「別にいいよ」

アルフリード「どんな風にまずい?」

キヨシ「い、いや、まずくはないんだけど……ちょっと薄味だなって」


エラム「戦で調味料の類いが不足気味なんだ。 我慢してくれ」

キヨシ「う、うん。 もちろん贅沢は言わないよ」

キヨシ「食べられるだけ幸せだ」

アルフリード「…………」

アルフリード「なんか……あたし達と変わんないね」

キヨシ「そうかな?」

アルフリード「すっごく弱そうだけど」

キヨシ「ははは……それは否定できないな」

キヨシ「君は……ええと、アルフリード……だっけ?」

キヨシ「女の子だけど、俺なんかより強そうだ」

エラム「……言ってて恥ずかしくないのか?」

キヨシ「そう言われても……元いた場所でも、いつも女の子にボコられてたし」

エラム「どんな世界だ!?」


アルフリード「あたし達みたいな部族が多いの?」

キヨシ「部族? あー……そういう事じゃないんだけど」

キヨシ「いろいろと決まり事があってね……」

キヨシ「彼女たちの言う事を聞かないとヤバいんだ」

エラム「奴隷……なのか?」

キヨシ「いや、何ていうか……」

キヨシ(女風呂除いて捕まった囚人なんて言えない……)

キヨシ「厳密には違うんだけど……まあそんなもの……かな」

エラム「そうか……」

アルフリード「そんなとこ、逃げ出そうって思わないの?」

キヨシ「ははは。 一度やって、バレちゃったよ……」


エラム「そうだったのか……」

エラム「さぞかし辛い仕置を受けたのだろうな……」

キヨシ「まあ……ね」

アルフリード「…………」

エラム「…………」

キヨシ「君たちは仲良しなの?」

アルフリード「はあ!?」

エラム「はあ!?」

キヨシ「息ぴったりだね」 クスッ

アルフリード「冗談言わないでよ!」

アルフリード「あたしにはナルサスっていう、心に決めた人が居るんだから!」

エラム「こっちだって冗談じゃない!」

エラム「それにナルサス様に付きまとうのを止めろ!」


キヨシ「…………」 ニコニコ

アルフリード「何笑ってるのよ!?」

エラム「そうだ! まったく……くだらない事を言うんじゃない!」

キヨシ「……羨ましい」

アルフリード「え……?」

エラム「?」

キヨシ「俺……好きな女の子が居るんだ」

アルフリード「!」

エラム「…………」

キヨシ「君たちみたいに、さ」

キヨシ「いろんな事を話したり、一緒に食事したり、時々ケンカしたりして……」

キヨシ「同じ時間を過ごせたらな……って、いつも考えてる」


アルフリード「…………」

エラム「…………」

キヨシ「ほんのちょっとのすれ違いで、俺はこんな事になってしまって」

キヨシ「自由に彼女の元に行けない……」

キヨシ「だから……君たちが羨ましいよ」

アルフリード「…………」

エラム「…………」

     ムシャ ムシャ…

キヨシ「ごちそうさま」

キヨシ「食事、ありがとう」

アルフリード「う、うん」

エラム「…………」



―――――――――――


芽衣子「遅いぞ、豚ども!」

芽衣子「顔を洗うのにどれだけ時間をかけるのだ!」

芽衣子「……む?」

ガクト「ふ、副会長殿」

ガクト「遅れてすまぬでござる」

アルスラーン「…………」

芽衣子「キヨシ……貴様、肩を借りなければ歩けんのか?」

芽衣子「それにそのフード……ジョーの物か? なぜ被っている」

ガクト「肩に関しては小生のおせっかいでござる」

ガクト「大丈夫と申していたのでござるが、歩くとふらついていたので……」

芽衣子「…………」


ガクト「フードは、寝不足からか……やけに光がまぶしく感じるらしく」

ガクト「ジョー殿のパーカーをお借りしたのでござる」

芽衣子「…………」

シンゴ「あのう……副会長」

シンゴ「朝食、もらってもいいですか?」

ジョー「ゴホッ」

アンドレ「ふ、副会長が許してくれるのなら」

アンドレ「お膳を僕たちで運んでおきますけど……」

ガクト(皆の者、ナイス援護でござる!)

芽衣子「……待て」

芽衣子「キヨシ……本当に体調が悪いのか?」



     ギクッ!


芽衣子「ならば、一度保健室へ連れて行ってやるが?」

ガクト「キ、キヨシ殿、副会長は、ああ、おっしゃっておるでござるが?」

ガクト「これからの刑務作業をサボ……休めるいい口実に」

     バシッ!

ガクト「ヘブァ!?」

芽衣子「……私が甘かった様だ、クソメガネ」

ガクト「ま、待って欲しいでござる!」

ガクト「い、今のは小生の言であって、キヨシ殿の体調は本当に悪いのでござる!」

芽衣子「ふん。 一度脱獄したキヨシの事だ」

芽衣子「また良からぬ事をしでかすかもしれん」

芽衣子「保健室の話は無しだ」


ガクト「ふ、副会長殿!」

     バシッ!

ガクト「アバァッ!?」

芽衣子「くどい!」

芽衣子「さあ、さっさと朝食を取れ」

芽衣子「30分後に刑務作業を始めるぞ!」

シンゴ「は、はい……」

シンゴ「キヨシとガクトの分は、俺が持っていきますね」

芽衣子「ふん……好きにしろ」

アンドレ(ガクトくん、副会長からのお仕置き……いいなぁ)

ジョー(……どうやら上手くいったみたいだな)


     コッ コッ コッ…


一同「……ふう」


ガクト「痛たたた……」

アルスラーン「……ガクト殿、大丈夫か?」

ガクト「なに、このくらい……いつも受けていて慣れっこでござる」

アルスラーン「血とか、たくさん出ているが……」

ガクト「大したこと無いでござるよ」

アルスラーン「そ、そうか……なら、いいのだが」

シンゴ「それより飯。 早いとこ食っとこうぜ?」

ガクト「そうでござるな」


     いただきまーす

アルスラーン「!」

アルスラーン「こ、これは!?」

ガクト「口に合わなかったでござるか?」

アルスラーン「いや、逆だ」

アルスラーン「今まで口にした事もない味で……しかも美味しい」

ガクト「それは良かったでござる」

シンゴ「へぇー。 王子様なんだから、まずい!こんなもの食えるか!」

シンゴ「とか言うかと思ったぜ」

アルスラーン「いや……ふだん私が食べているものより、美味しいかも知れぬ」

ガクト「ふむ……面白いでござるな」

ガクト「そういえば、昔は、今ほど調味料の流通が行われず」

ガクト「ほとんどの一般庶民の味付けは、塩のみだったとか……」


シンゴ「うへぇ……マジかよ」

アンドレ「僕たちからすると信じられないね」

ジョー「……ゴホッ」

ガクト「エゲレスは黒胡椒・紅茶を求め」

ガクト「はるばるインドまで攻め入ったというのは有名な話でござる」

アルスラーン「!」

アルスラーン「わざわざ……それだけの為に?」

ガクト「アルスラーン殿?」

アルスラーン「あ……す、すまない」

ガクト「…………」

ガクト「いや、これはほんの一例にすぎぬでござる」

ガクト「実際はもっとくだらない理由で始まった戦争も多いでござるよ」


アルスラーン「くだらない理由?」

ガクト「話すと長くなるので、あまり詳しくは言えないでござるが」

ガクト「子供のケンカがきっかけで始まった戦もあるでござる」

アルスラーン「な……」

ガクト「もともと仲が悪かった、という理由もあったのでござるが」

ガクト「戦争は、何かしらのきっかけで起こるもの……また」

ガクト「『戦争を望む者』も少なくないのでござる」

アルスラーン「…………」

ガクト「おお、つい語ってしまったでござる」

ガクト「ささ、アルスラーン殿。 冷めない内に食べるでござる!」

アルスラーン「あ、ああ……」

アルスラーン「…………」



―――――――――――


     コン コン

キヨシ「はい? どなたですか?」

ファランギース「先ほど色々調べたファランギースじゃ。 少し話がしたい」

キヨシ(! 副会長並みの刺激的な格好をなさってた美人のおねーさん!)

キヨシ「あ、はい。 どうぞ」

     ガチャ…

ファランギース「邪魔をする」

キヨシ「はあ……」

キヨシ(しかし、副会長といい、この人といい)

キヨシ(目のやり場に困る格好してるよなぁ……)///


キヨシ「それで……どんなご用ですか?」

キヨシ「また笛を吹くんですか?」

ファランギース「いや」

ファランギース「アルフリードとエラムの事じゃ」

キヨシ「え?」

ファランギース「あの二人……これまで仲の悪いふりをしてきておった」

キヨシ「ふり……?」

ファランギース「あの世代でもメンツとか、格好とか、気にするものもある」

ファランギース「いつまでもその様な事で、この乱世の世……」

ファランギース「貴重な若い時間を無駄にして欲しくなかったのじゃ」

キヨシ「…………」


ファランギース「お主……キヨシの食事を持って行ってから」

ファランギース「彼らを包む空気が少し変わった」

ファランギース「良い方向にな」

キヨシ「そんな事がわかるんですか?」

ファランギース「人はジンに嘘を付けぬからな」

キヨシ(……お酒でも使ったのか?)

キヨシ「そ、そうですか」

キヨシ「俺としても、あの二人が仲良くなってくれたのなら」

キヨシ「嬉しいです」

ファランギース「ふふ……今回はその礼が言いたくてな」

ファランギース「ありがとう、キヨシ」

キヨシ「い、いえ……」///


ファランギース「私に出来る事は少ないが」

ファランギース「なるべくキヨシの不利にならぬよう努力しよう」

キヨシ「あ、ありがとうございます!」

ファランギース「お主も、我らの殿下も」

ファランギース「共に元の世界へ帰れる事をミスラ神に祈っておる」

ファランギース「では……」

     スタ スタ スタ…

キヨシ「…………」

キヨシ「……乱世の世?」

キヨシ「ガクトみたいなこと言ってるな……」



―――――――――――


芽衣子「今日はいつもの荒地の開墾に、例の小屋の廃材処理だ」

芽衣子「しっかりと作業に励め。 わかったな?」


一同「はい」


芽衣子(……キヨシの奴、返事が小さいな)

芽衣子(まあそのくらい気に留める程でもないか)

     スタ スタ スタ…

ガクト「……ふう」

ガクト「では、始めるとするでござるか」

シンゴ「編成はどうする? いつも通りか?」


アンドレ「廃材処理はいつもキヨシ君とガクト君がやってたね」

ガクト「!」

ガクト「そうでござる!」

ジョー「……ゴホッ?」

アンドレ「ど、どうしたの? ガクト君」

ガクト「いや、ひとつ妙案が閃いたでござる」

ガクト「編成はいつも通り。 つまりアルスラーン殿は小生と共に来て欲しいでござる」

アルスラーン「分かった」

シンゴ「つーことは、髪の毛、何とかできるのか?」

ガクト「うむ。 この練馬一の知将と言われた小生に任せておくでござる」

ジョー「ゴホッ」

     ザッ ザッ ザッ…


アルスラーン「…………」

アルスラーン「ガクト殿」

ガクト「何でござるか?」

アルスラーン「その……この建物は……何で出来ているのだ?」

ガクト「何で? コンクリートだと思うでござるが?」

アルスラーン「こんくりいと……初めて耳にするな」

アルスラーン「パルスでは日干しレンガ等で建物を作るのだが」

アルスラーン「城壁にしたって巨大な石を削り出して作っている」

ガクト「ほう……」

アルスラーン「だが、このこんくりいと?とやらの建物は、継ぎ目が全くない」

アルスラーン「どうやって作るのか、想像もつかぬ」

ガクト「…………」


ガクト(どうやらアルスラーン殿は、我々よりも文明の劣る世界から来た様でござるな)

ガクト(……ここで見たモノや知識は)

ガクト(アルスラーン殿の世界で悪用されるかもしれぬでござる)

ガクト(後でアルスラーン殿に言っておかねば……)

アルスラーン「ガクト殿?」

ガクト「あ、いや。 何でもござらん」

ガクト「そろそろ仕事場に着くでござるよ」

アルスラーン「分かった」

花「……二人して何こそこそしてるの?」

ガクト「!」

ガクト「こ、これは花殿」

ガクト「見張り、ご苦労様でござる」


花「……キヨシ?」

花「あんた、何でパーカーなんて被ってるの?」

ガクト「ああ、それは……」

     バキィッ!(上段蹴り)

ガクト「ほべばっ!?」

アルスラーン「!?」

花「黙ってなよ、クソメガネ」

花「あたしはキヨシに聞いてんの」

ガクト「あがが……」

ガクト(こ、これは……まずいでござるッ!)

ガクト(アルスラーン殿が声を出してしまったら、別人なのがバレてしまうでござるッ!!)

アルスラーン「…………」


花「……何黙ってんの?」

花「あんたは いつもいつもそうやってあたしを馬鹿にして……」

アルスラーン(くっ……!)

アルスラーン(どうすればっ!)

花「早く答えなさいよ」

花「何でパーカーを被ってんのよ!?」

     グイッ!(胸ぐら掴み)

アルスラーン「……ぁ……ぅ……!」

花「!?」

ガクト「!?」

花「あんた……その声」

ガクト(お……終わったでござるッ……!)


花「ひどい声ね……風邪でも引いたの?」

ガクト「!」

アルスラーン「!」

ガクト「は、花殿!」

花「何よ?」

ガクト「じ、実はキヨシ殿は昨晩痔が悪化して、ろくに寝てないのでござる」

花「それとこの声に何の関係が?」

ガクト「一晩中うめき声をあげていて、それで喉を痛めたのでござるよ」

花「…………」

ガクト「パーカーは、寝不足からか、光がやたらと眩しく感じるそうなので」

ガクト「ジョー殿にお借りしたものを使っているのでござる」

花「…………」


     パッ…(胸ぐら放す)

花「……そういう事」

ガクト「ホッ……」

花「じゃ、さっさと作業を始めなさい」

ガクト「りょ、了解でござる」

アルスラーン「…………」 コクッ


アルスラーン(あの胸の大きな女性(にょしょう)といい、この者といい)

アルスラーン(こちらの世界の女性(にょしょう)は、みな、ああなのであろうか……?)

アルスラーン(考えたくないな)

ガクト(ふう……肝を冷やしたでござる)

ガクト(さて、こちらはこちらで例の物をとって来なければ……)



―――――――――――


キヨシ「…………」

キヨシ「ん……」

     スタ スタ スタ

キヨシ「…………」

キヨシ「……?」

     ウロ ウロ…

キヨシ「あれ?」

キヨシ「…………」


キヨシ「あのー……ジャスワントさん」

ジャスワント「!」

     キィ…

ジャスワント「……何だ?」

キヨシ「トイレはどこですか?」

ジャスワント「といれ? といれとは何だ?」

キヨシ「え? レストルーム……って英語じゃダメか」

キヨシ「用を足す場所のことです」

ジャスワント「ああ、厠(かわや)の事か」

キヨシ(どうしてここは江戸時代の言い回しになるんだろう……?)

キヨシ(いや、それ以前になぜ言葉が通じるんだ?)

ジャスワント「付いてこい。 こっちだ」

キヨシ「はい」


ジャスワント「ここだ。 さっさと済ませろ」

キヨシ「は、はい」

     キィ…

キヨシ「…………」

キヨシ(……まあ、水洗なんて期待してなかったけど)

キヨシ(俗に言うボットン便所、というやつか……)

キヨシ(さすがに臭うな)

     ゴソ ゴソ…

キヨシ(…………)

キヨシ(……でも、考えようによっては)

キヨシ(あのアルフリードって娘も、ファランギースっていう美人さんも)

キヨシ(ここで同じポーズで用を足してるんだな……ふふふ)

     ※パルスでも普通、男女別になってます


キヨシ「……ふう」

キヨシ「…………」

キヨシ「あれ?」

キヨシ「すみません、ジャスワントさん」

ジャスワント「何だ?」

キヨシ「紙はどこですか?」

ジャスワント「紙? そんなもの、ここで何に使う?」

キヨシ「え? 何って……そりゃ尻を拭くのに」

ジャスワント「尻を、だと?」

ジャスワント「紙は高級なんだ。 そんな事に使うなんて聞いた事もない」

キヨシ「は!? じゃ、じゃあ、皆さんはどうやって……?」


ジャスワント「そこに柄の付いたブラシがあるだろう」

キヨシ「柄の付いた……は、はい、これが?」

ジャスワント「それで拭くんた」

キヨシ「」

キヨシ「これで!?」

ジャスワント「大きな声を出すな」

キヨシ「いやいやいや! 出しますよ!? 一大事ですよ!? これ!!」

キヨシ「どう見ても使用済みですよね!? 明らかに誰か使ってますよね!?」

ジャスワント「当たり前だろ。 そんな事……」

ジャスワント「使ったら水で洗って元の場所に戻すんだ」

キヨシ「」

ジャスワント「…………」


キヨシ「……ジャスワントさん」

ジャスワント「……今度は何だ?」

キヨシ「その……いらなくなった布……みたいなの もらえませんか?」

ジャスワント「…………」

     ビリビリ…… ビリッ

ジャスワント「……これを使え」つ(ボロ布)

キヨシ「え? 今の……もしかして自分の服を?」

ジャスワント「お前から目を離す訳には いかんからな」

キヨシ「……何か……すみません」

ジャスワント「いいから早く済ませろ」

ジャスワント「もちろん返さなくていいからな」

キヨシ「わかってます」


     キィ… パタン

キヨシ「あ、ありがとうございました……」

ジャスワント「礼なんていい」

ジャスワント「さっさと戻るぞ」

     スタ スタ スタ

キヨシ(うわ……服が……)

キヨシ(……やっぱり怒ってるだろうな)

ジャスワント「…………」

ジャスワント「……見れば分かるだろうが」

キヨシ「え?」

ジャスワント「俺はシンドゥラ人だ」


キヨシ「は、はあ……」

キヨシ(シンドゥラ? ……確かに松崎し○る並みの色黒だし)

キヨシ(アルフリードやナルサスさん達とは違う国出身の人なのかな?)

ジャスワント「アルスラーン殿下にお仕えする事を決め、ここへ来たのだが」

ジャスワント「俺も最初、あのブラシに面食らった」

キヨシ「……え?」

ジャスワント「だから……お前の気持ちは分かるつもりだ」

キヨシ「ジャスワントさん……」

ジャスワント「……ふん」

ジャスワント「だが、アルスラーン殿下を誘拐した容疑者なのは変わらない」

ジャスワント「ムダ話は終わりだ」

キヨシ「はい」

キヨシ(……シンドゥラって国では、どう後始末をつけるのかな?)



―――――――――――


ガクト「…………」

ガクト(くっ……! 例の物は手に入ったでござるが)

ガクト(花殿、なかなか目を離さないでござる)

ガクト(…………)

ガクト(しかし、小生から何かを言えば返ってこじれそうであるし……)

ガクト(どうすれば……!)


花「…………」

花「…………」 プルルッ

花「…………」

花「おい、キヨシ」


アルスラーン「…………」

花「…………」 イラッ

花「キヨシって言ってるでしょ!? 無視すんな!」

アルスラーン「!!」 ハッ!?

アルスラーン(い、いけない!)

アルスラーン「…………」 コクッ コクッ

花「……ちょっとお手洗いに行くから」

花「監視がないからって、サボるんじゃないわよ?」

アルスラーン「…………」 コクッ

花「ふん……」

     スタ スタ スタ…


ガクト「…………」

ガクト「……行った様でござるな」

アルスラーン「……みたいだね」

ガクト「では、アルスラーン殿。 これを使うでござるよ」つ(黒い粉)

アルスラーン「これは……炭か?」

ガクト「そうでござる」

ガクト「焼却炉に残っていた木炭を小生が粉にしたのでござる」

ガクト「後はこれをアルスラーン殿の頭に塗れば当座は凌げるでござろう」

ガクト「少々汚れるでござるが……」

アルスラーン「助かる、ガクト殿」

アルスラーン「さっそく塗っておこう」


     ヌリ ヌリ

アルスラーン「ガクト殿、どうだろうか?」

ガクト「やはり塗りムラがあるでござるな……」

ガクト「アルスラーン殿が良ければ、小生が塗るでござるが?」

アルスラーン「……頼む」

ガクト「お任せされるでござるよ」

     ヌリ ヌリ

アルスラーン「…………」

ガクト「うむ! これで遠目には誤魔化せるでござる」

ガクト「お疲れでござるな、アルスラーン殿」

アルスラーン「いや……」

ガクト「……?」

ガクト「どうしたのでござる? 元気が無いでござるが?」


アルスラーン「……私が元居た世界と同じだと思ってな」

ガクト「同じ?」

アルスラーン「私は……色々な者たちの世話になっているが」

アルスラーン「自分一人では何もできなくて……時々歯がゆく思ってしまうのだ」

ガクト「…………」

アルスラーン「すまない、つまらない事を聞かせてしまった」

ガクト「……いや、そんな事はござらぬよ」

ガクト「それにアルスラーン殿」

アルスラーン「え?」

ガクト「今、出来ないのを悔やむのであれば」

ガクト「修練を積み、出来るようになれば良いだけの事でござる」

アルスラーン「ガクト殿……」


ガクト「それに最初から何もかも出来た人間などおらぬでござる」

アルスラーン「!」

ガクト「小生の尊敬する関羽様とて、様々な経験や苦労を重ね」

ガクト「素晴らしい武将となったであろう事は、説明を受けなくても想像できるでござる」

アルスラーン「…………」

アルスラーン(そうだ……ガクト殿の言う通りだ)

アルスラーン(ダリューンも ナルサスも ギーヴやエラム、ファランギースにアルフリード)

アルスラーン(みんな……私の知らぬところで努力と苦労を重ね)

アルスラーン(あの強さや技量を身につけたのだ)

アルスラーン(…………)

アルスラーン(こんな事に今さら気が付くなんて……)

アルスラーン(私は……本当にまだまだだな)


アルスラーン「ガクト殿」

ガクト「む?」

アルスラーン「ありがとう。 私はガクト殿のおかげで大切な事に気がつけた」

ガクト「そうでござるか」

ガクト「小生もお役に立てた様で、嬉しいでござるよ」

     ハハハ…

ガクト「さて、そろそろ花殿も戻ってくる頃でござる」

ガクト「前髪を垂らして、なるべく花殿たちから遠巻きに過ごして欲しいでござる」

アルスラーン「分かった」


     スタ スタ スタ

花「ふう……」

花「二人共、サボってないでしょうね?」

花「……ん?」

花「キヨシ、パーカー下ろしたの?」

アルスラーン「…………」 コクッ

ガクト「だいぶ目が慣れてきたそうでござる」

花「ふうん……」

ガクト「な、何か気になるのでござるか?」

花「…………」

花「気になる、というか……二人共」

花「手が真っ黒ね?」


ガクト「ああ……これは先ほど、焼却炉で作業をしたので」

花「そうなんだ?」

ガクト「灰がたくさんあったので、キヨシ殿にも少々手伝ってもらったのでござる」

花「…………」

ガクト「花殿……?」

花「…………」

     ズズイッ!

アルスラーン「……っ!?」

ガクト(はわわっ!?)

花「…………」


     パッパッ…

花「服、すすで随分汚れてるわよ、キヨシ」

花「しっかりしなさいよね」

     スタ スタ スタ…

アルスラーン「…………」

ガクト「…………」

アルスラーン「はあ~……」

ガクト「し、心臓に悪いでござる……」



―――――――――――


     コン コン

キヨシ「はい、どうぞ」

     キィ…

ナルサス「やあ、キヨシ」

ダリューン「…………」

キヨシ(げっ! あの黒い人だ!)

キヨシ「ナルサスさん。 それに……えっと」

ダリューン「……ダリューンだ」

キヨシ「ダリューンさん」

キヨシ「それで、何かご用でしょうか?」


ナルサス「何、この男……こう見えて心配症なのでな」

キヨシ「心配性?」

ダリューン「ナルサスから あらかたの事情は聞いた。 が……」

ダリューン「俺には得心がいかぬ」

キヨシ「そ、そんな事を言われても!」

ナルサス「そのくらいにしておけ、ダリューン」

ナルサス「まあ信じがたい話なのは確かだが……」

ナルサス「キヨシに武芸や何らかの鍛錬の跡すら全くないのは、分かるはずだ」

ダリューン「…………」

ナルサス「この者がしらばっくれても、ワケの分からぬ事を話しても何の得にもならぬ」

ナルサス「また、魔導の類いを用いて ここへ忍び込んだとしても同様だ」

ナルサス「あえて言うなら、よほど手の込んだ自殺を考えた、としか言えないな」


キヨシ「そ、そんなつもり、ありませんよ!」

キヨシ「お、俺は……! もっと、こう……女の子と」

キヨシ「もっと色々! とにかく色々したいんです!」

ナルサス「くくく……だ、そうだぞ? ダリューン」

ダリューン「…………」

ダリューン「はあ……」

キヨシ「…………」

キヨシ「……あの……それで、何の用でしょうか?」

ダリューン「殿下の事についてだ」

キヨシ「電化?」


ダリューン「キヨシ。 貴様の意志でないとは言え」

ダリューン「入れ替わってしまったアルスラーン殿下は……」

ダリューン「お前の世界で、どうなっていると思う?」

キヨシ「!」

キヨシ「そういう事ですか……」

ナルサス「言われて私もハッとした」

ナルサス「キヨシの世界にいるであろう殿下は、どの様な扱いを受けると思う?」

キヨシ「…………」

キヨシ「……そうですね」

キヨシ「そこには、俺の友人が居るので、そいつらから事情を聞かれるでしょう」

キヨシ「少し変わっている所もありますけど、みんな気のいい連中です」

キヨシ「暴力とか、そういうのは受けないと思います」

ダリューン「そ、そうか……」

ナルサス「まずは一安心だな」


キヨシ「ただ……」

ダリューン「ん?」

キヨシ「とにかく俺と入れ替わった事を知られない様にすると思います」

ナルサス「……ほう」

ダリューン「なぜだ?」

キヨシ「その……『ある組織』に収監されている身なので」

キヨシ「俺じゃない事がバレると、おそらく『ある組織』に」

キヨシ「その場所から追い出される可能性があるからです」

ナルサス「!」

ダリューン「いや、俺が聞きたいのは……」

ナルサス「待て、ダリューン」

ナルサス「今、キヨシは重要な事を言った」


ダリューン「?」

ナルサス「キヨシ。 君は今晩もここで寝れば、また入れ替わるのではないか?」

ナルサス「と、言っていた」

キヨシ「はい」

ナルサス「となると……」

ナルサス「キヨシの世界にいるであろうアルスラーン殿下も」

ナルサス「同じ事をしようとするはず」

ダリューン「!」

ダリューン「で、では……『その場所』から追い出されたら、不味いのではないか!?」

ナルサス「そうなるな……」

ダリューン「くっ……! 殿下……!」


キヨシ「でも……たぶん大丈夫です」

ダリューン「む?」

ナルサス「と言うと?」

キヨシ「さっき言った気のいい連中の中に」

キヨシ「ひとり、知恵者が居るからです」

ダリューン「!」

ナルサス「……なるほど」

ナルサス「つまり、今回の事態に対処し」

ナルサス「上手く事を運べる人物に心当たりがあるのだな?」

キヨシ「はい。 彼なら、きっとやってくれるでしょう」

ダリューン「……そうか」



―――――――――――


アンドレ「せんだ!」つ(ジョー)

ジョー「みつお!……ゴホッ」つ(ガクト)

シンゴ「ナハッ! ナハッ!」

シンゴ「……おいおい、王子さんもやるんだよ」

アルスラーン「……あ! ガクト殿の隣だから私もか!」

アルスラーン「なはっなはっ!」

ガクト「ふふふ。 奥の深いゲームでござろう?」

アルスラーン「うむ。 パルスには無い遊びだ」

アルスラーン「それにけっこう難しい」

ガクト「慣れない内はしょうがないでござるよ」


アンドレ「それにしても何とかここまで誤魔化せて良かったけど」

アンドレ「今晩でアルスラーン君とは、お別れなんだね……」

アンドレ「せっかく友達になれたのに」

シンゴ「ああ……複雑な気分だけど、キヨシにも早いとこ戻ってもらわねーとな」

ジョー「……上手く行くといいな」

ガクト「キヨシ殿は、無事なのでござろうか……」

アルスラーン「大丈夫だ」

アルスラーン「私に力を貸してくれている皆は」

アルスラーン「話のわからぬ人物ではない」

アルスラーン「きっと……キヨシ、という人物に危害を加える事はないだろう」


ガクト「うむ。 まるで劉備玄徳殿の様な」

ガクト「聡明なアルスラーン殿がこう言ってくれるのなら、安心でござる」

アルスラーン「りゅうびげんとく?」

ガクト「小生の尊敬する武将、関羽殿の君主でござるよ」

ガクト「黄巾の乱により世間は乱れ、乱世の世を嘆(なげ)き」

ガクト「力なき多くの農民の為にと立ち上がった、三国志の英雄でござる」

アルスラーン「力なき多くの……素晴らしい人物だな」

ガクト「実を言うと玄徳殿は、最初は乗り気ではござらなかった」

ガクト「しかし関羽殿は粘り強く玄徳殿を説得し」

ガクト「永遠の忠誠の証として、義兄弟の契りを交わしたのでござる」

アルスラーン「義兄弟の契り……」

ガクト「我ら生まれし日は違えども! 死すべき日は同じ事を願う!」

ガクト「劉備玄徳殿、関羽雲長殿、張飛翼徳殿の3人は、こう宣言し」

ガクト「笑いながら盃を交わしたのでござる」


アルスラーン「生まれし日は違えど……死ぬ日は同じ事を願う」

アルスラーン「なんという高潔な宣言であろうか……」

ガクト「アルスラーン殿?」

アルスラーン「…………」

アルスラーン「私は……そこまで皆に付き合ってもらっていいのか」

アルスラーン「いや、自分にその価値があるのか、自信がない」

ガクト「アルスラーン殿……」

シンゴ「何言ってんだよ、王子さん」

アルスラーン「え?」

シンゴ「それを決めるのは、あんたじゃないと思うぜ?」

アルスラーン「!」


アンドレ「そうだね……」

アンドレ「アルスラーン君にどこまでも付き合いたいって思う人が居るのなら」

アンドレ「それをさせてあげればいいんだよ」

ジョー「そういう事だな」

ジョー「あんたは、それだけの価値、なんて言うが」

ジョー「自分で自分の価値なんてものを決めるのは良くない」

ガクト「そうでござる」

ガクト「関羽殿も……劉備玄徳殿にその価値を見出したから」

ガクト「説得し、劉備殿もそれに応じた。 それだけでござる」

アルスラーン「…………」

     『殿下は、私の大事なご主君でございます』

     『それではいけませんか?』

アルスラーン(……ダリューン)


アルスラーン「……皆の言う通りだ」

アルスラーン「私は、またくだらない事で迷ってしまった」

ガクト「なに。 人生に迷いはつきものでござる」

ガクト「アルスラーン殿は、民のことを想える、良き君主に成れるでござるよ」

シンゴ「だな」

アンドレ「うん!」

ジョー「ゴホッ」

アルスラーン「ああ。 きっとなって見せよう」

アルスラーン「せんだ!」つ(アンドレ)

アンドレ「うわわっ!? みつお!」つ(シンゴ)

ガクト・ジョー「ナハッ! ナハッ!」

     ハハハ…



―――――――――――


キヨシ「…………」

キヨシ(……さて、いよいよ寝る時が来た)

キヨシ(頼むから朝起きたら、何もかも戻っていてくれ!)


―――――――――――


アルスラーン(…………)

アルスラーン(……ダリューン、ナルサス、エラム、ギーヴにファランギース、アルフリード)

アルスラーン(ジャスワントに キシュワード、ルーシャン……)

アルスラーン(皆、心配をかけてすまない……)

アルスラーン(戻ったら、いくらでも叱られよう……)



―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――

―――






     チュン チュン チュン…






キヨシ「…………」

キヨシ「……はっ!?」

     ガバッ!

キヨシ「…………」

キヨシ「この薄暗さ、匂い、硬いベッド……!」

キヨシ「間違いない! 帰ってきたー!!」

キヨシ「バンザーイ!!」



―――――――――――


アルスラーン「…………」

アルスラーン「……ん」

アルスラーン「…………」

アルスラーン「はっ!?」

     ガバッ!

アルスラーン「…………」

アルスラーン「……間違いない」

アルスラーン「ペシャワールの私の部屋だ!」



―――――――――――


芽衣子「おい、豚ども。 朝食だ」

     ガヤ ガヤ… カチャ カチャ

芽衣子「刑務作業はいつも通り30分後。 遅れるなよ」

     スタ スタ スタ…


一同「…………」


ガクト「……行った様でござるな」

アンドレ「いつもながら、この緊張感がたまらない~」///

キヨシ「相変わらずだな、アンドレ」

ジョー「……向こうはどうだった?」

キヨシ「一言では言えないけど……日本で言う戦国時代みたいな雰囲気だった」

ガクト「やはりそうでござったか……」


キヨシ「ああ……でも」

キヨシ「俺が知る限り、向こうで出会った人達はみんな」

キヨシ「俺と入れ替わった殿下?っていう人の事を心配していた」

アンドレ「うん。 きっとそうだと思ったよ」

ガクト「アルスラーン殿は どこか、守ってあげなければ、と思ってしまう」

ガクト「まさに劉備玄徳殿に通じる雰囲気を漂わせていたでござる」

ジョー「ゴホッ」

キヨシ「そうなのか……会ってみたかったな」

シンゴ「お前と違って可愛かったしな」

キヨシ「……え? シンゴ、お前まさか」

シンゴ「ちげーよ! 女装とかに合いそうだって意味だよ!」


キヨシ「はあ?」

ガクト「正直、女の子の格好で声を聞かなければ」

ガクト「ここの女生徒にも引けを取らぬレベルでござった……」

キヨシ「へえ……ますます会いたかったな」

アンドレ「……でも」

キヨシ「ん?」

ジョー「シャワールームで……見ちまったんだが」

キヨシ「…………」

ガクト「やはり、乱世の世の空気がそうさせるのか……」

ガクト「かなり……立派なものをお持ちだったのでござる……」

キヨシ「…………」

キヨシ「そうか……」



―――――――――――


     ドサドサッ

アルスラーン「ふう……」

ジャスワント「その様な事、私がやります、殿下」

アルスラーン「良いのだ、ジャスワント」

アルスラーン「自分の身の回りの事くらい私にさせてくれ」

ジャスワント「は、はあ……」

ダリューン「殿下」

アルスラーン「ダリューン? どうした? 何かあったのか?」

ダリューン「い、いえ。 その、新しいお部屋の具合はどうかと思いまして」


アルスラーン「うむ。 問題ない」

アルスラーン「後で部屋の用意をしてくれた、キシュワードや」

アルスラーン「ルーシャンにもお礼を言いに行こうと思う」

アルスラーン「良かったら付いてきてくれるか? ダリューン」

ダリューン「はっ! もちろんです、殿下」

ナルサス「殿下」

アルスラーン「ナルサス。 心配をかけたな」

ナルサス「いえ。 今回の事はどうしようもございませぬ」

ナルサス「今までお使いになっていたお部屋は、開かずの部屋にしておきますので」

アルスラーン「ああ。 あの部屋は封印した方が良いだろう」

ナルサス「御意」

ナルサス「それで、よろしければ」

ナルサス「殿下とお話がしたいのですが」


アルスラーン「わかっている」

アルスラーン「向こうでガクト殿にも色々言われた」

ナルサス「ほう……」

ナルサス(キヨシの言っていた知恵者とやらか……)

ナルサス「どうやら、有意義なお話が聞けそうですな」

アルスラーン「うむ。 私もそう思う」

アルスラーン「できればダリューンやジャスワント達にも聞かせたい」

ダリューン「望むところです」

ジャスワント「わ、私が居て、よろしいのですか?」

アルスラーン「もちろんだ、ジャスワント」 クスッ

アルスラーン「ひと段落着いたら」

アルスラーン「皆で せんだ・みつおゲームでもやろう!」



―――――――――――


ガクト「キヨシ殿」

ガクト「あの牢獄は、使わない方が良いと思うのでござるが……」

キヨシ「そうは言っても、副会長が聞いてくれるか分からないし……」

キヨシ「向こうは向こうで、殿下?さんの部屋は変えるだろうから」

キヨシ「大丈夫なんじゃないかな?」

ガクト「それは……そうかもしれぬでござるが」

キヨシ「とりあえず、今夜一晩様子を見よう」

ガクト「…………」



―――――――――――


キヨシ「ふあああ……」

キヨシ「…………」

     フニッ

キヨシ「……ん?」

     フニッ フニッ

キヨシ「…………」

キヨシ(何か……とてつもなくいい感触の柔らかいものが……手に)

?????「んっ……」


キヨシ「」

キヨシ「え?」

     ムクッ

キヨシ「!!」

キヨシ(また、どこかに飛ばされたー!?)

キヨシ(何だよここ!? 昨日の部屋じゃないし、大きなテントの中か!?)

?????「……どうした? ティグル……」

?????「」

キヨシ「あ……(察し)」

?????「き、貴様!? いったい誰だ!?」

キヨシ「ちょちょちょ!!」

キヨシ「待ってください!! とにかく話を聞いて!!」

キヨシ「その明らかにごつい、殴ったら即死的な杖はしまってください!!」


     バサッ

???「おーい、ティグルー!」

???「急いで駆けつけて来……」

キヨシ「」

?????「」

???「リュドミラ……? お前ティグルの天幕で男を連れ込んで何をしているんだ?」

リュドミラ「ち、違っ……!」

リュドミラ「!」

リュドミラ「エレン……お前、私が寝ている間にティグルとこの男を入れ替えたな……?」

エレン「……はあ?」

     ゴゴゴゴゴゴゴ……

キヨシ「……あのう……とにかく、落ち着いてもらえませんか……?」



―――――――――――


ガクト「やっぱり、こうなったでござるか……」

ティグル「…………」

シンゴ「…………」

アンドレ「…………」

ジョー「…………」

ガクト「とりあえず……お名前を聞かせて欲しいでござる」

ティグル「ティグルヴルムド・ヴォルン伯爵だ」



     終わり!

本当はもっと色々、何か色々アルスラーン殿下にやってもらいたかったんだけど
俺の脳みそでは、あれくらいしか裏生徒会を誤魔化す方法が思いつかなかったんだよ!(涙目)
ガクトってすごいって思う!
お粗末でした~

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