卯月「笑顔の!」美城常務「魔法だと?」武内P「はい」 (19)

常務(…今日は島村卯月、小日向美穂と同じ現場か)

常務(あのライブから少しずつ現場に顔も出すようになったが、いまだに慣れんものだ)


 「はーい笑って!おっ、卯月ちゃんいい笑顔だねー」

 「えへへ、ありがとうございますっ!」


常務(彼の言葉を思い出すな。だが笑顔の魔法などという、おとぎ話のような…)


美穂「卯月ちゃんすごいねー。どんな時もずっと笑顔で」


卯月「私の取り柄ですから!プロデューサーさんにも褒めてもらいました」


美穂「へー。私なんてまだ緊張して、笑えない時もあるのに」


卯月「いえいえ、美穂ちゃんだってすごいですよ。私も、この調子で頑張ります!」


常務(…笑顔の魔法、か)

 
 「常務、いらしていたのですね」

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武内P「お疲れ様です」


常務「誰かと思えば君か。島村卯月とそのユニット、なかなか良い評判のようだな」


武内P「はい。お二人とも、いい笑顔だと思います」


常務「またそれか。…まあ見ている限り、笑顔の魔法は存在するようだ」


武内P「…?理解していただけたのですか?」


常務「だが、君の言うおとぎ話に出てくるようなそれではない」

常務「…魔法は、使い方を誤ると事態を一層悪くする」


武内P「どういう、意味でしょうか」


常務「君はあのアイドルを、島村卯月をどういったコンセプトでプロデュースしている?」


武内P「笑顔です。その一点において、彼女は私が理想とするアイドル像に最も近い」


常務「それは彼女にも伝えているのか?」


武内P「はい。彼女の取り柄は、やはり笑顔であると…」


常務「そうか。それが君がかけた魔法というわけだな」


武内P「…?」


常務「まあいい。前も言った通り、私は君の方針に口出ししたりするつもりはない」


凛「あれ、プロデューサー。と、常務さん」

武内P「渋谷さん。お疲れ様です。どうしてここに?」


凛「最近卯月とちゃんと話してなくてさ。撮影終ったら、会えないかなと思って」

凛「…クローネのこともあるし」


常務「何だ。私のプロジェクトに何か問題でもあるのか」


凛「別に。それより何の話してたの?」


武内P「島村さんについてです」


凛「…まさか、卯月まで」


武内P「いえ、それは」


常務「それはないな。彼女は私のプロジェクトでは使いどころがない」


凛「…そんな言い方はないと思います」


常務「君の撮影は明後日だ。アイドル同士で仲良くするのはいいが、仕事には影響の無いように」

常務「こちらの撮影は終わったようだし、私は次の仕事に移る」


武内P「お疲れ様でした。島村さんも、そろそろ――」


卯月「あっ、凛ちゃんとプロデューサーさん!来てたんですね」

武内P「はい。私はこれからのスケジュールの確認だけですが、渋谷さんは」


凛「この後、時間あったらちょっと話せないかなって。未央も誘って」


卯月「もちろん、大丈夫ですよ。すぐに着替えてきます」


凛「…大丈夫そうだね。この頃、元気なさそうだったけど」


武内P「小日向さんとの仕事が好影響なのかもしれません。いい笑顔でした」


凛「ふふっ、本当にそればっかり」

未央「それでは!久しぶりのニュージェネレーションズのお茶会を開催したいと思います!」


凛「未央、大袈裟だよ」


未央「いやいやー、このところ仕事でもあんまり一緒になってないしね!嬉しいんだ!」


卯月「そうですね。346カフェに来るのも、美嘉ちゃんの時以来で…」


凛「あの時は未央が変なこと言うから、動揺しちゃったよ」


未央「しぶりん、急にでっかい声出すもんねー。それで美嘉ねぇに気付かれたんじゃないの?」


凛「美嘉連れてきたのは卯月でしょ」


卯月「すみませんでした。なんだか、急に美嘉ちゃんのお話を聞きたくなっちゃって」


未央「そういえば、しまむーが元気なかったのもあの時くらいからだよね」


卯月「え?」

凛「ちょっと未央!」


未央「えっ、ああゴメン!でも、様子はちょっと変だったでしょ?」


凛「それは、そうだけどさ…。ねえ卯月、何かあったの?あの時くらいに」


卯月「いえ、何もなかったと思いますよ?でも、そんな心配かけちゃうくらい、元気なかったかなぁ」


未央「まぁ、私たちの気のせいかもしれないし」


凛「…そんな時にクローネの話があったからさ。不安だったんだ。2人が傷ついたりしないかって」


未央「そりゃあ、最初はびっくりして、わけわかんなかったよ」

未央「でも、今はしぶりんの気持ちもちゃんと分かってるから大丈夫!ね、しまむー?」


卯月「あ、はい!凛ちゃんの新しいユニットも素敵でしたし、良かったと思います!」


未央「私は演劇で、しまむーは笑顔で!不安を乗り切ったのだ!」


凛「うん。本当にありがとう」

未央「まあまあ、しんみりはこれくらいにして、今日は飲んで食べようじゃないか!」


凛「未央、たまに年寄りくさいよ」


未央「なんだとぉー!」


卯月「あはは…」


 「ピピーッ!未成年の飲酒はいけませんよぉー!ウサミン星でも、お酒は成人してからなんですからね!」


凛「あ、菜々さん。今日もカフェでお仕事ですか?」


菜々「ええ!ここのメイド服、カワイくてお気に入りなんです!ところで飲み物なら今日はお茶が半額ですよ!」


未央「じゃあ私ストティーで!」


凛「私もそれで。卯月は?」


卯月「同じでいいですけど、私のはホットでお願いできますか?」


菜々「了解しました!すぐに持ってきますから!」


 「ウッサミーン!注文入りましたぁ!」


卯月「すごいですね…」


未央「あれも、自分のやりたいことを見つけた、ってことなのかな…」


凛「まあ、そう言えなくもないけど…」







昨日は、久しぶりに皆とお話しできてよかったな。

お仕事の話も聞けました。2人とも、自分のやりたいことを見つけて、頑張ってます。

凛ちゃんは、トライアドプリムスの反響がすごくて、仕事に追われているそう。

でも、加蓮ちゃんや奈緒ちゃんと、新しい景色を見るのは楽しいって言ってました。

未央ちゃんは、レッスンじゃなく本当に演劇のお仕事をやるみたいです。

藍子ちゃんと茜ちゃんも誘って。完成したら是非見に行きたいです!

私も負けずに笑顔で頑張らないと!

そういえば、私に元気がなく見えた時期があったそうです。毎日笑顔は心がけていたのに、なんでだろう。

笑顔は私の取り柄ですから。もう心配かけないように、お仕事頑張ります!


「卯月ちゃん、ちょっと表情固いかなー。もっと笑って!」


あれ?


卯月「は、はいっ、すみません!」


 「ポーズ変えてみようか。はい笑ってー」

 「…卯月ちゃんどうしちゃったの、元気ないねー」


あれれ?いつも通りの、笑顔のはずなのに。

美穂(…卯月ちゃん?)


 「ちょっと休憩入れようか?今プロデューサーの方いらっしゃる?」

 
卯月「いえ、今は」


 「じゃあ、しょうがないか。呼びがてら休憩入れるよ」


卯月「すみません!ありがとう、ございます…」







美穂「どうしたの?卯月ちゃんが笑顔でNG出すなんて、珍しいね」


卯月「うーん、私は笑顔のつもりなんですけど…」


美穂「やっぱり元気ないように見えるよ。なにかあったの?」


卯月「いえ、別に何も…」


美穂「あ、プロデューサーさん来たよ!」


武内P「…島村さん」

卯月「あ…すみません、プロデューサーさん。わざわざお呼びしちゃって」


武内P「構いません。それより、元気がなさそうに見えると聞きましたが…」


卯月「私は大丈夫ですよ!笑顔だって、すぐに…」


武内P「…少し、笑ってみて頂けますか?」


卯月「はい!…これで、いいですか?」


武内P「…!」


美穂(…やっぱり、いつもの卯月ちゃんじゃ…)


卯月「えへへ、どうでしたか?」


武内P「…すみませんが、確かに調子が悪く見えます」


卯月「…へ?」


武内P「今日は、休まれた方がよろしいかもしれません」


卯月「で、でも私、別に調子悪いとかじゃ…」


武内P「自覚なく疲労をため込む方も多いですから。新田さんも、そうでした」

武内P「無理はせずに、ゆっくり休んでください」


卯月「…はい」


武内P「スタッフへの説明や代理はこちらに任せてください。小日向さん、申し訳ありません」


美穂「大丈夫ですよ。卯月ちゃん、元気出してね?」


卯月「…本当にすみませんでした。失礼します…」

美穂「何かあったんですか?卯月ちゃんがあんなに落ち込むなんて」


武内P「いえ、私の知る限りでは…」


美穂「…あんなに無理して笑う卯月ちゃんは初めて見たな。いつもは自然に、ぱあって笑顔なるんですけどね」


武内P(…無理をして、笑顔に?)


美穂「プロデューサーさんが笑顔を褒めてくれるんだって、頑張っていましたよ」


武内P(私の、言葉を?)


 『それが、君がかけた魔法というわけだな』


武内P(…!!!)

武内P「…小日向さん、いくつか質問してもよろしいでしょうか」


美穂「はい?」







卯月(私、疲れてたのかな。でも、本当に調子悪い気はしないし…)

卯月(あのプロデューサーさんの顔…。私の笑顔って、そんなにまずかったんでしょうか)

卯月(笑顔は一番得意だと思ってたのにな。プロジェクトに選ばれた理由もそうだったし)

卯月(皆みたいに特技はないけど、笑顔だけは負けないように、って)

卯月(あれ?じゃあ、笑顔になれない時はどうすればいいんだろう)

卯月(笑顔すらない、私は――――)


常務「何をしている」



卯月「へっ!?あ、常務さん」


常務「今は君は小日向美穂と撮影の途中のはずだが。その身支度は…」


卯月「…私、NGばっかり出しちゃいました。だから、調子が悪いかもって」


常務「それで静養を勧められたのか。とことん甘い男だな、君たちのプロデューサーは」


卯月「お仕事休んでしまって、すみません。明日はちゃんと来ますから」


常務「無理だな」


卯月「え?」

常務「今の君には魔法がかかってしまっている。君のプロデューサーのものだ」


卯月「…プロデューサーさんが、私に?」


常務「それが解けない限りは、君の復帰は難しいだろうな」


卯月「どういうことですか、それ」


常務「私から助言する意味はない、そうだな?」



武内P「…島村さん」


卯月「あ…プロデューサーさん」


武内P「少し、話をしましょう。常務、仕事を空けた責任は、必ず後ほど」


常務「結果で示しなさい。君に構っている暇など無いのでな」


武内P「…失礼します」
 


常務「素材としては、優秀なんだがな…」




卯月「あの、お話って…」


武内P「小日向さんから、いろいろとお伺いしました」

武内P「島村さんは、どんなときでも、笑顔を忘れずに仕事をしていらっしゃる、と」


卯月「えへへ、照れちゃいますね」


武内P「…どんな時でも、笑顔になることができる。いや、笑顔を『作る』ことができる、と」


卯月「…?」


武内P「島村さん……あなたは今、楽しいですか?」


卯月「それは、もちろん…だって、憧れのアイドルになって、お仕事もたくさんできて」

卯月「凛ちゃんや、未央ちゃんとも一緒に、これからも頑張っていけたら…」


武内P「…島村さん。あなたの笑顔は、とても素敵です」


卯月「へ?」


武内P「人を、幸せにすることができる。笑顔で、周りの人々も笑顔にすることができる」

武内P「『power of smile』は、まさに島村さんの笑顔が持つ、確かな力なのです」


武内P「だからこそ、あなたは…あなたの笑顔は」

武内P「自分すらも、騙すことができてしまう」


卯月「だま、す…?」

武内P「あなたは、その類い稀な笑顔で、自らの本心を奥底に隠してしまった」

武内P「思い返せば、その兆しはあったのです。気づくことができずに、本当に申し訳ありません」


卯月(プロデューサーさんは、何を言っているんでしょうか。騙すって、なんのことでしょうか)


武内P「プロジェクト・クローネの誕生によって、シンデレラプロジェクトは大きく変わりました」

武内P「アナスタシアさん、新田さんがソロデビューを果たし、続いて渋谷さん、それから本田さん」

武内P「島村さんは、これをどう感じたのでしょうか」


卯月「…いいと思います。凛ちゃんも、未央ちゃんも、新しい何かを見つけて、キラキラしてて…」

卯月(でも、私は…)


武内P「私は、あなたの笑顔がもう一度見たい。形だけではない、心からの笑顔を」

武内P「それがすべて本心だというのなら、あなたの笑顔は、あれほどにに曇ることはないはずです…!」 

卯月(私の笑顔は、曇っていた?形だけの、笑顔だった)

卯月(そう、私は騙していたんだ。自分を)

卯月(凛ちゃんも未央ちゃんも、自分の道を見つけて、先に進んで行って…)

卯月(不安でいっぱいだったはずです。でも私は、何も言わないで、笑顔で見送ってしまったんです)

卯月(そうかぁ。あの時から、笑顔の使い方、間違えていたんですね)


武内P「…渋谷さん、本田さん、そしてシンデレラプロジェクトの皆さんとも、一度話をしないといけません」

武内P「ですがやはり今日は、休まれた方がよろしいですね」


卯月「…!」


武内P「涙を拭いて、また心から笑顔になれると思ったら、また来てください」

武内P「私たちは、ずっと待っていますから」


卯月「…はいっ!島村卯月、頑張ります!」 

以上!22話見て思いついたネタだけどモタモタしてたら23話もう放送してた

常務ってほんとはおとぎ話好きだよね

名前欄ミスってた気がするのは、スルーで

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