女「初めての握手会!!」 (48)

女「以前コンパクトディスクを買いまして」

男「CDで良いじゃん」

女「私にしては珍しくね」

男「誰の?」

女「唐翌優希」






男「カラユキ?」

女「うん」

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男「誰だよ」

女「声優さん」

男「ふぅん」

女「私もあんまり詳しくないんだけどね」






男「そうかい」

女「そうなの」

男「どうだった?」

女「高かった」

男「値段じゃ無くて」

女「聴いてない」






男「えっ」

女「まだ聴いてない」

男「普通買ったらさ」

女「浅はかな奴め」

男「言いやがる」

女「誰もがCDを買ったら直ぐに聴くとでも?」

男「おう」






女「んふっ」

男「当たり前だ」

女「まぁ例外ってことで」

男「認めよう」

女「ありがとうございます」

男「礼には及ばぬ」






女「はい」

男「うむ」

女「しかもね」

男「うん」

女「そのCD」

男「コンパクトディスクが?」

女「なんと握手券付き」

男「そうかい」






女「えっ」

男「えっ」

女「もっと驚いてよ」

男「今のご時世なら特に」

女「初握手券ですのに」

男「俺も行ったことないな」

女「応募した」






男「応募した?」

女「うん」

男「握手会って応募するもんなのか」

女「握手券というより握手会応募ハガキと表するべきだったかも」

男「表する、って」

女「もちろん応募」

男「ポストに走って」

女「いえ、郵便局に」






男「気合いを感じる」

女「ありがとうございます」

男「それで」

女「当たった」

男「やるじゃん」

女「あがめたてまつれ」






男「素敵!!」

女「よろしい」

男「ん?」

女「肉じゃが」

男「いや」

女「筑前煮」






男「昼飯のメニューじゃない」

女「和食な気分なので」

男「しかも貴様の希望とは」

女「失礼、話を続けて」

男「……応募したってことはさ」

女「うん」

男「CD買ったの一ヶ月前位だろ」

女「三ヶ月だったかな」






男「結局今まで曲聴いてないのか?」

女「そうね」

男「そうね、じゃない」

女「そうわよ」

男「うるせぇ」

女「うるさくない」






男「なんで」

女「はい?」

男「アンタなんでCD買ったの?」

女「えっ」

男「買う意味ないじゃん」

女「いや」

男「……握手券目当てか?」

女「名前」

男「うん?」






女「唐優希って名前が好きだから」

男「」

女「言いたくならない?」

男「いやいや」

女「唐優希」

男「からゆき」






女「良い」

男「」

女「ホント良い名前だよね」

男「ふざけてる」

女「真剣だもん」

男「顔だろ?」

女「そんなに」

男「じゃあ声」

女「別に」

男「身体とか」

女「レズじゃないし」






男「カラユキ」

女「ぐへへ」

男「面妖な」

女「彼女のチャームポイントは名前よ」

男「でもさ」

女「はい」

男「唐優希のどこが良いんだ?」






女「それはね坊や」

男「んふっ」

女「唐優希」

女「原始の鼓動を感じさせる語感」

女「由緒正しき名だけが持つバランス」

女「実は攻めも守りも熟せるユーティリティーな」






男「お前はなにを言っているんだ」

女「途中なのに」

男「まったくもって意味が」

女「言いたくなるじゃん」

男「ならんよ」

女「なるの」ユラユラ






男「認めよう」

女「ありがとうございます」

男「開催日は?」

女「明日」

男「明日かよ」

女「報告してあげるから」






男「したいんだろ」

女「んふっ」

女「家、家に帰った私」

女「私は、そうね」

女「手紙を書こうと思う」

女「なぜかって?」

女「そりゃあ、手紙を渡しても良いと書いてあったから」






女「からゆきチャンスね」

女「妹者よかわゆい手紙を分けてくれ」パタパタ

唐優希様へ



初めてファンレターを書かせていただきました!!

常々応援させて頂いておりますゆえ!!
今回のアルバムも良曲揃い、からきーの歌声にハツラツと包まれる日々です!!

というわけございまして、ここらで一つ提案をば致しませう。

からきーは気づいていますか?
唐優希(敬称略)という名前の魅力に。
気付いているでしょう。
本人ですもの、気付かないわけがありません。

口にしたくなる日本語ランキングというものがあったのならば、確実に3本の指に入る事は間違いなく。
『清瀬のジャンヌ・ダルク』こと、わたくしが保障致します。

そして、ご存じですか?
今清瀬では、「唐優希」が挨拶になっているという事を。

A「からゆきぃ」

B「おう、からゆきー」

と、このような会話は日常茶飯事、朝飯前。
三度の飯よりレーザーディスク。

わたくし達はこのような言語を『優希語』と呼び、なんとかこの優希語を世に知らしめし、ゆくゆくは流行語大賞を狙えるまでの言語にしたいと考えております。

ここまで来たら、お分かりですね?
是非ともからきー本人に、少しでも使って頂きたい。

ルールは非常に簡単です。

嬉しい→嬉優希
悲しい→悲優希
楽しい→楽優希
怖い→怖優希

このように「唐」部分を他の言葉に変えて発する、または書くだけで成立するのです。

なんと簡優希。

いかがでしょうか?
この『優希語』を使用していただけるのであれば、ファン冥利に尽きるの一言です。

ご検討をお願いします。



優希語推進委員会 最高名誉顧問兼シニアアドバイザー 女

女「というわけで決戦日」

女「特に眠れぬこともなく」

女「というより熟睡だったわね」

女「うん」






女「緊張もしてないし」

女「そんなものなのかしら」

女「とにかく向かいましょ」

女「バスでそこそこね」

女「乗り込むわよ」






女「着いた」

女「いざ唐優希」

~アニマテレコード 入り口~

女「めっちゃ人いる」

女「どことなく格好が似ている人が多い様な」

女「あと30分くらいかね」

女「待ちましょう」

女「それにしても」






彼1「めっちゃ楽しみですねwww」

彼2「昨日のイベからきーもめっちゃ可愛かったからねぇ」

女「なんなのこの疎外感」

彼女1「私からきー握手会20回目でぇ」

彼女2「えぇ!?」

彼女3「すっごーい!!」

彼女1「そうでもないよーwww」






女「からきーってやっぱり人気あるのね」

女「コミュニティが沢山あるし」

女「そしてすんごい居心地が悪い」

女「話しかけようにも、その」

女「からきーのことよく知らないし」

女「……私、コミュ障って奴?」

女「やめやめ」

女「くだらん」

女「なにゆえからきーの握手会に来て凹まねばならぬのだ」

女「たわけが」

女「人間には力がある」

女「それがケータイ」

女「ガラパゴスだけどね」






女「Macoゲームスでもしよう」

女「ふひひ」ピコピコ

~アニマテレコード 店内~

女「セルビアとの熱戦もたけなわに」

女「店内への案内開始」

女「その途中、からきー店内到着サプライズイベントがあった」

女「『うわぁ、本物の唐優希だ』って感じだった」

女「こんなもんかね、ホント」






女「えっと10番は……」

彼3「20番以前の方はもっと列の前ですよ!!」サッサッ

女「係員並の誘導だ」

女「着いた」

女「そしてここでも感じる」

女「疎外感」

女「ん?」

彼4『the・からきぃ命』

彼女4『たこやき娘』






女「みんな胸に名札付けてる」

女「事前にからきーのブログで『名札を用意してきてね』的な記事のせい」

女「そういう私も作ってきましたがね」ガサゴソ

女『女』

女「本名書いてきちゃった」

女「しにたい」






女「名札はいいや」

女「からきーとは心で通じ合うんだから」

彼5「あっ」

彼6「貴方は!!」

彼7「……どもw」『りもこん』

彼5「りもこんさんじゃないっすか!!」

彼6「ラジオで何度も取り上げられてるりもこんさんだ!!」

彼7「……からきーの前です、やめてくださいよw」






女「ラジオか、全く聴いてない」

女「りもこんさんまんざらでもないのな」

女「それはそうとなんで説明口調だよ」

女「イラ優希」

「みなさぁん」キーン

彼女5「きゃー!!」

彼8「優希ちゃんの声だっ!!」

「今日はわざわざお越し頂いて云々」

彼9「はあっ、はあっ!!」

彼女6「ぐすっ」






女「まさに阿鼻叫喚」

女「でも流石声優さんだけある」

女「私たちとは声が違うわ」

女「質感というか耳当りというか」

「これから握手会開始いたしまぁす」

彼5「ヒュー ヒュー」ガクガク

彼6「うおおおお!!」

彼7「ドキドキしてきた……」

女「ね、熱気が」






女「なに話すんだろうなー」

女「正直からきーについては止めて欲しいなぁ」

女「今日のお天気とかが良いな」

彼10「僕、握手会5回目で!!」

唐優希「うれしぃですぅ」

女「やるねぇ」



彼女7「わたくしは貴女様のだいふぁんで」

唐優希「ありがとうございますぅ」

女「彼女嬉しそうでなにより」



彼11「からきー大好き、パスタはイカスミYEAH♪」

唐優希「」

女「なんでラップなんだよワロタ」

唐優希「次の方ー」

女「よし、私の番ね」

女「流石に緊張してきたかも」






女「は、初めまして」

唐優希「初めましてぇ」ギュッ

女「っ!?」

女(めっちゃ柔優希!!)

唐優希「……」ニギニギ

女(しかもめっちゃ視線あってる!!)

唐優希「うん?」

女「」






女(首をかしげるからきー美優希!!)

唐優希「あの……」

女「は、はいっ」

唐優希「CD聴いてくれましたか?」

女「もちろんです!!」

唐優希「どうでしたか?」

女「本当に名曲揃いで、早くカラオケ配信を望むばかりです!!」

唐優希「ふふっ、ありがとうございます」

女「こちらこそ!!」

唐優希「どの曲が一番でした?」ギュッ






女「えっ」

女(や べ ぇ)

唐優希「これ特に良いなぁみたいな曲は……」

女「それは、その!!」

唐優希「はい」

女「最後のが!!」

唐優希「最後?」

女「最後の『MATSURI solo.ver』が一番好みでした!!」

唐優希「わぁ、本当ですかぁ?」






女(ありがとう、壁に貼ってあったポスター)

女(正直目に入った曲がこれしかなかったから)

女(謝優希)

唐優希「そのバージョンは是非ライブでも云々」

係員「時間でーす」トントン

女「はい」

唐優希「ですからね、これからも云々」ギュッ

係員「時間です」トントン

女(からきーが手を離してくれないんだもん)






唐優希「あっ、ごめんなさい」パッ

女「いえいえ」

唐優希「また来て下さいね!!」

女「ではまた」

唐優希「帽子似合ってますよ」

女「んふっ」スタスタ






女「最後が帽子って」

女「タイミングはいずこへ」

「お次の方ぁ」

女「と、まぁこんな感じでした」

男「馬鹿乙」

女「曲は焦った」

男「前日ぐらい聴けよ」

女「だって歌は評価の対象ではないのだよ」






男「りもこんさんを見習え」

女「それはそれで」

男「でも良かったんでしょ?」

女「……それがさぁ」

男「うん?」

女「正直よく分からない」






男「君って奴は」

女「ちょっと後悔してる部分もある」

女「握手会の素晴らしさも知った」

女「あれはいわゆる神対応とやらなのでしょう」

女「でもあれは勘違いする人出てきてもおかしくない」

女「だって憧れの人がガッツリ目を見ながら握手してくれるんだからさ」

女「正直、惚れかけたよ」






男「驚きだ」

女「自分でもね」

女「でもさ」

女「数十秒後には他の人と握手をしている訳ですよ」

女「私の唐優希が」






女「そいつらの軟骨毟ってやろうかと思った」

男「」

女「すんごいもやもやしながら、いや」

女「モヤ優希しながら帰路についたよ」

女「セルビア強いし」

女「結局CDの封も切らないまま」

女「だから私はもう握手会には行かない」

女「これからも名前を愛でるだけでいいや」






男「それはそれでいかがなものか」

女「んふっ」

                         完

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