作家「究極のライトノベルが完成したぞ!」(17)

作家「究極のライトノベルが完成したぞ!」

友人「マジで!?」

友人「究極のライトノベルとは、これまた大きく出たな」

友人「俺、けっこうラノベにはうるさいんだ! ぜひ読ませてくれよ!」

作家「ふっふっふ……いいだろう」

作家「これだ!」サッ

友人「これが……究極のライトノベル……?」

友人「一見、なんの変哲もない、普通のラノベだけど……」

作家「実際に手に取ってみれば分かるさ」

友人「ふうん……」スッ…

友人「!?」

友人「こ、これは!?」

友人「かっ、軽いィィィィィ!」

友人「な、なんて軽さだ! 全然重さを感じない!」

友人「たしかに手に持ってるのに、持ってるという感覚すら感じない!」

友人「ま、まるで――そう! 羽毛だ! 羽毛みてえじゃねえか!」

友人「なんというLight!」

作家「期待以上のリアクションをありがとう。さすが、我が友だ」

友人「どれ……」フッ

フワァ……

友人「うおおおおおおおおおおっ!」

友人「すっ、すごい! ちょっと息を吹きかけただけで、あんなに浮いた!」

友人「しかも、ふわりとふわりと空中を漂って、なかなか地面に落ちない!」

友人「ひょっとすると、本物の羽毛よりも軽いんじゃないか!?」

友人「こんなのアリかァァァァァ! アリなのかァァァァァ!?」

友人「こんなラノベは初めてだ! これ、どうやって作ったんだよ!?」

作家「あれはちょうど一年ほど前……あの頃、私はスランプに陥っていてね」

作家「いくら机に向かっても、まったく作品が書けない時期が続いた」

作家「そこで、今までにやったことがないジャンルに取り組んでみることにしたんだ」

友人「それがラノベだったってわけか」

作家「うむ、そのとおり」

作家「そしてどうせやるなら、“究極のライトノベル”にチャレンジしたくなったんだ」

作家「究極のライトノベル――すなわち、究極に軽量化された小説」

作家「本を構成するのはいうまでもなく、紙とインクだ」

作家「そこで私は、知り合いの製紙会社の社長とインク会社の社長に頼み込み」

作家「紙とインクの徹底的な軽量化を依頼したんだ」

友人「す、すげえ……!」

作家「開発は困難を極めた」

作家「なにしろ、ただ軽くするだけではダメなのだ」

作家「外見や丈夫さは従来の書籍の水準を維持しつつ」

作家「重量だけを落とさなければならないのだからな……」

友人「だろうなぁ」

友人「いくら軽くなっても、ページをめくろうと指でさわっただけで」

友人「紙が破れたり、インクがこすれるようじゃ、意味ないもんな」

このスレ予想の斜め上や

作家「両メーカーの開発チームは原材料から見直しにかかった」

作家「もちろん私も作家という立場からアドバイザーとして協力させてもらった」

作家「何度も何度も失敗と落胆を味わい……」

作家「本業の合間をぬって、試行錯誤を繰り返すことおよそ一年!」

作家「ついに……ついに完成したのが、この一冊なんだ!」

友人「おおお……すげえ!」

友人「ったく……大したもんだぜ! お前も! メーカーの人たちもな!」

友人「まさに珠玉の一冊ってやつだな!」

作家「そういってもらえると嬉しいよ」

友人「ところでこのラノベ、いったいどんな内容なんだ?」

作家「おっと、そういえば説明してなかったな」

作家「簡単にいうと――」

作家「現代日本のいわゆる上流、中流、下流――三つの階層」

作家「それぞれに属する人々が抱える問題を、私自身が行った取材をもとに描写する」

作家「そこから浮き彫りになっていく現代社会の歪み、というものに」

作家「歴史学、社会学、心理学、経済学、といった観点を交えながら」

作家「主人公であるジャーナリストが迫っていく、という内容だ」

友人「……内容はけっこう重いんだな」







おわり


良い発想で、良いオチだww
川上稔はもっと軽くしてくらはい


是非とも川上作品に使って欲しい

そして川上はそれに反抗して従来の重さになるまで書くんだろうなぁ

乙乙



しかし、この場合、ライトノベルと言うよりは、ライトブックなのではないのか?

と言う野暮な事は言わない方が良いのか

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