グール「ゾンビって人襲って喰ったりしないのか？」

ゾンビ「あー、してもいいんだけど、メンドイ」

グール「なんだそれ」

ゾンビ「ゾンビの場合は、食欲とかないから人一人全部喰うとか無理なのよ」

グール「おう」

ゾンビ「そうなるとさ、どうしても死体が同族になっちゃうわけね」

グール「あー、お前らそれがあったか」

ゾンビ「お前らはそういうの無かったっけ」

グール「わからん、基本骨も残さねー」

ゾンビ「だよな」

グール「でもさ、この間コンビニ行ったんだよ」

ゾンビ「いいよなお前はみてくれがマトモで」

グール「いいから聞けよ。んでさ、拾った金でレジ横の肉買ったんだよ」

ゾンビ「チキンな」

グール「そう鶏肉、あれな、すげー旨かった」

ゾンビ「あー、そういう飯テロ的なのヤメロ」

グール「噛んだ瞬間肉汁がジュワって、あとスパイスも、ピリっていうより、舌が腫れてるみたいに熱くなる感じでよ」

ゾンビ「ヤーメーロー」

グール「こんなんになっても、まだちゃんと旨いものは旨いと感じるんだなって、思いました、まる」

ゾンビ「アーソウカイ」

グール「……お前にも買ってきてやろうか？」

ゾンビ「……」

グール「……」

ゾンビ「炭酸も頼む」

ゾンビ「……」

グール「……」

ゾンビ「……旨いな」

グール「何十年ぶりって言ってたっけ？」

ゾンビ「……やばいわ」

グール「ポテチとか」

ゾンビ「……くれ」

ゾンビ「……食うって、いいな」

グール「だろ、旨くなくてもさ、生きてる実感は得られるわけよ」

ゾンビ「それは知らん」

グール「……」

ゾンビ「けど、存在してる実感は、感じた」

グール「そうか」

ゾンビ「あぁ」

グール「……」

ゾンビ「……」

グール「……生きてる実感でいいんじゃないのか？」

ゾンビ「オレは死んでんだよ」

ミイラ「オイラは冷えた水飲みたい」

キョンシー「久々に柔軟体操とかしたいアル」

グール「アンデット系のモンスターって、なんか不潔なイメージるよな」

ゾンビ「まぁ、大抵腐ってやがるからな」

グール「お前は割ときれいだよな」

ゾンビ「まぁ、腐る前にゾンビになったおかげでな」

グール「腐る前ならいいのか」

ゾンビ「どうだろうな。古今東西、宗教的な視点でも、生き物の死体は基本不浄のものとされてるって部分もあるんじゃね？」

グール「あー、ナルホド」

ゾンビ「人が死んだあとの抜け殻をさ、そういう風に見ちゃう先入観があるんだよ、人間には」

ゾンビ「まぁ、そういうのに括られない文明や文化もあるけどな」

グール「あるっちゃあるけどよ。でも大差なくね？」

ゾンビ「ないな」

グール「おい」

ゾンビ「けどさ、まじめに死者の復活を信じて死体を保存しようとする宗教の国で、死体の不浄がどうこう言ってるのは矛盾があるだろ」

グール「確かに肉体を捨てたあとは魂の救済って方向が多いよな」

ゾンビ「オレたちみたいな存在も認めながらな」

グール「だから化け物扱いなんだろ」

ゾンビ「だからそれこそさ、死体が元になってる系の中でもミイラとか結構特別な部類なわけよ」

グール「エジプトの宗教は、お前の言う死者の復活があるな」

ゾンビ「あれさ、そもそもミイラって言葉はモンスターじゃなく、包帯巻きになってる死体をいうだろ？」

グール「現地での呼び方とかあんまり知らないけど、そうだと思う」

ゾンビ「最初にモンスター化させたのって、たぶん墓荒らしに来た連中だと思うのよ」

グール「あー、なるほど」

ゾンビ「そうなると、アフリカ北部の人たちの文化というより、ヨーロッパの白人文化や、中東の文化の方なんだよ、たぶんだけど」

グール「だな、ミイラが動くってことは、エジプトの人にとっては死者の復活ヤッターなわけだし」

ゾンビ「もちろん現地の人全員がそういう思想とは限らないし、オレの考えは違ってるかもしれないけど」

グール「どうだろうな、でも結構理にかなってて面白いと思った」