ライナー「これが‥‥戦士の生き様だ」 (22)

※ご都合主義な設定無視の描写有
※原作十巻のネタバレ有

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エレン「っだぁ!」ダンッ

ライナー「っぐ‥‥!!」ドシャアッ

エレン「ふぅ‥‥、あ!わ、悪ぃライナー、大丈夫か?」

ライナー「ああ‥‥ったく、本当にお前は手加減が下手だな‥‥、っつつ!」ズキッ

エレン「ホントに平気か?今、頭から落としちまったし‥‥」

ライナー「‥‥すまん、やはり一度医務室に行ってくる。‥‥切ったようだ」ドロッ

エレン「うわっ!血がすげぇじゃねーか、急いで行って来い!教官には俺が言っとくから‥‥マジでごめん」

ライナー「訓練中の事だ、気にするな。じゃあ頼んだ‥‥っとと」フラッ ドンッ

アニ「っ、」ヨロ

ライナー「アニ!悪い、大丈夫か?」

アニ「‥‥アンタこそ、何やってんだよ。ほら、使いな」スッ

ライナー「‥‥あ、ああ。助かる、洗って返す」

アニ「いい、それよりさっさと行きな。‥‥エレンの訓練の相手なら、私がやっといてやる」

ライナー「それも助かるな、ハハハ。ま、程ほどに頼む」タッタッタッ



ライナー(念の為、今日はもう安静にするよう言われてしまったか‥‥教官には報告したし、大人しく部屋に戻ろう。‥‥いや、一度顔を洗うか)ガチャ

ライナー「っふぉお!?」ビクゥッ

ライナー(なんだ!?ここは天国か!?‥‥いや、違う!!ここは‥‥女子用の洗面所だ!!



大量の下着の干してある、女子の洗面所‥‥!!)




ライナー「‥‥‥‥頭を打ったせいか‥‥間違えたみたいだな、は、ははは‥‥」

ライナー(‥‥とにかく、早く出よう。全員出払ってるとはいえ、万が一にも見られたら‥‥)トンッ パサッ

ライナー「ん?何か落ちて‥‥」ヒョイッ

ライナー(これは‥‥)

ライナー「!!!!!!!」カッ


ライナー(‥‥パンツ!!!!!!!)パッ ファサッ

ライナー(何てことだ、籠にぶつかった拍子に落としてしまうなんて‥‥)

ライナー「‥‥戻しておくべきだろうか‥‥」ゴクリ

ライナー(いや、何を考えているんだ俺は!!婦女の下着に手を触れるなど、一度は気付かなかったからといって、気付いた状態で行えばそれはただの変態行為!!

俺は戦士だ、そんな行為は‥‥!!)

ライナー「‥‥‥‥」スッ

ライナー(‥‥なぜ再び拾った、俺!!)

ライナー「‥‥俺のせいで落としてしまったのなら、戻さねば‥‥」ブツブツ

ライナー(何に言い訳をしているんだ!!クソッ、とにかく早く戻さねば‥‥)

ライナー「‥‥」サワサワ

彼は驚愕していた。
女子の下着とは、これほどまでに滑らかに肌を撫でるものだったのか、と。
触れた指先の一つ一つに優しく馴染む感触はまるで雲を掴んでいるかのようで、彼が無意識に布地を何度も持ち直してしまうのはただ単に己の性欲に負けたというわけではない。
その今まで触れたことのない夢のような感触を前にして、心地よさと未知の物への飽くなき探求心が、優秀な兵士である彼の思考をどうしようもなく鈍い物へと誘っているのだった。
ふと戯れに、すっと横へと指を動かす。下着には柔らかな曲線で皺が作られ、指の動きに合わせて生地も緩く伸びる。伸縮性が布自体にも僅かながらあるらしい。


(‥‥ほぉ)


それがいけなかった。彼の探求心をまた一つ、悪戯に刺激してしまったのだ。
下着の左右に人差し指を差し込み、ゆっくりと開いていく。下着は彼の予想通りに伸縮し、横へと伸びた。少年の目には好奇心の光が輝く。これは素晴らしいものだ。
しかし、自在に伸びるというわけでもない。伸びるのはほんの少しであって、ある一定のラインを超えると広げた指に食い込んで伸びるのを拒む。当然だ、そうならないのなら、女子という生き物はスカートという素晴らしい衣服を日常的に纏う事などできないのだから。
目を輝かせた少年は一人、吊るされた下着の林の中で小さなショーツと戯れる。時には笑みを浮かべ、頭上に掲げつつ手触りを楽しむ。時には横へと伸ばし、その伸縮性に感動する。
そうしているうちに、一つの疑問へと辿り着いた。辿り着いてしまった。


「これは‥‥縦には、伸びるのか?」

下着の林にぽつりと落とされた疑問は波紋となり、一人の好奇心旺盛な少年の内部へと進撃をしてくる。
一手目に躊躇いはなかった。下着の上部を掴み、続いて下部へと指先が伸びる。しかし、その二手目は次の瞬間ぴたりと止まった。
そう、この好奇心を満たすには、触れなくてはならない。女の女たる所以、女体の最も秘められた部分を柔らかく包み込み隠匿する為に作られた‥‥クロッチを。
無論、真面目で品行方正である彼はその部分が”クロッチ”という名称である事すら知らない。だが、本能が告げている。これは、最も秘められた部分に触れている布地なのだと。
外側を掴むのなら、直接触れている部分に触るわけではないのだが、その神秘性が些かたりとも損ねられるわけはないのである。


「‥‥っ、く‥‥!」


ギリ、と奥歯が軋んで音を立てる。知りたいという欲求、それは彼の座学の成績を伸ばした大きな要因の一つだ。その欲望を抑えることなく解放していたからこそ、彼は逸材と呼ばれた同期には及ばないまでも、次席は確実とまで言われる程の実力を備えるに至った。
彼にとってその好奇心を抑えることは、苦痛ですらあるのだ。知りたい、この手で確かめたい。この予想は合っているのか?それとも、ただの妄想なのか?疑問が押し寄せて止まない。
しかし、彼の中の何かが実験を許さない。冒され難き神秘性の何たるかを理解するだけの人格も、彼には備わっているからだ。それゆえの葛藤に、彼は頭を痛めて蹲った。
顔を上げ、睨み付けるように下着に目をやる。その姿は傲慢に自分を嘲笑っているかのようにも見えた。触れるものなら触れてみろ、と。そう、挑発されているよにも思えてしまった。


(”いいよ、ライナー”)


「!?」

突如、脳内に声が響く。それは甘い響きを持つ少女の声だった。
見上げた先でぼやけた輪郭が形作るのは、金髪の女神。美しい碧眼を細め、子供の悪戯を許す母のような慈愛の滲んだ笑みを浮かべている。
その動作だけで世界に平和をもたらすほどの魅力で小首をかしげると、潤んだ唇がすっと開いた。


(”触って、ライナー”)


「‥‥あ、あぁああああああ‥‥!!」


思わず彼は膝を折った。下着を手にした両手を組み高らかに掲げ、落涙を隠さずに嗚咽を上げる。
その姿はまるで、女神に感謝の祈りを捧げる信徒のようだった。
女神の許しに感謝を讃えて、どれ程経っただろうか。袖で涙を拭った後の表情に、もう畏怖も葛藤もない。
瞳を閉じて、再び片手は下着の上部へ。空いた掌を一度強く握り締め、決意の双眸を開く。


「‥‥行くぞ」

乱暴にしてはいけない。淑女の指先を掴むようにそっと、気遣いを持って優しく。実に紳士的な彼らしい仕草だ。
その部分は、他の布地よりもやや厚みを感じた。クロッチは布が二重になっているからである。その手触りはふかふかと柔らかく、外側と内側では違う布が使われている事が窺えた。
しかし、今はその感触を楽しむ時間ではないのだ。ゆっくりと、慎重に指先に力を込め、引き伸ばす。
だが。


「‥‥伸び、ない‥‥!?」


そう。下着は履き易いように横には十分な伸縮性を持つが、縦には一センチ程度しか伸びないのだ。
つまり彼の神秘への畏怖も、それに付随する葛藤も、力強い決意も。
全てが、無駄だったのだ。


「‥‥ちっ、くしょおおおおおおおおおお!!」


耳を劈く慟哭が、下着の林を揺らす。行き場のない感情を拳に乗せて床を殴ったとしても、発散はされない。
蹲る背中が小さく揺れ動き、やがて嗚咽が静かに辺りに漏れ始めた。彼は‥‥その屈強な巨体を震わせ、涙を流していた。
しかしふと、掌に握り締めた下着に意識が行く。随分強く握っていたようで、皺が出来てしまっていた。気を取り直して、ピンとそれを伸ばす。
涙に濡れた頬のまま、輝くような白さの下着を眺めると、心が洗われて行った。まるで慰められているようで、頬が緩む。


「‥‥はは。何やってんだ、俺は‥‥」

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