咲「私は魔王じゃない」 (34)



京太郎「……そうか、多分いくら言っても無駄だが、頑張れよ」

咲「なにそのやる気ない感じ!? 幼馴染が魔王扱いされてるんだよ!?」

京太郎「勇者と魔王が幼馴染みたいな設定すら溢れかえってるわけだし、今更魔王ぐらい気にしなくていいんじゃないか?」

咲「私は魔王扱いされるのが嫌なの!」

京太郎「つってもなあ……正直、本人が否定しても無駄だし」

咲「そんなことないよ! 地道に努力していけばきっと報われる日が来るんだよ!」

京太郎「はいはい」

咲「というわけで、私が魔王という風潮を否定するために作戦会議を始めます」

京太郎「二人でか?」

咲「あとで強力な援軍が来るよ」

京太郎「嫌な予感しかしねえ」


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咲「さて、京ちゃん。冤罪を晴らすにはどうすればいいと思う?」

京太郎「ん~? 無実の証拠を出す、とかか?」

咲「『ない』ことの証明、いわゆる悪魔の証明だね。出来るならそれでもいいけど、それは基本的に無理だよ」

京太郎「いや、魔王じゃないって言うなら魔王っぽくない証拠を挙げてけばいいんじゃねえの?」

咲「そもそも魔王って言うのが完全な言いがかりだからね。私に魔王っぽいところなんか欠片もないし」

京太郎「いや、それは流石に……」

咲「 私 に 魔 王 の 要 素 な ん か 一 欠 片 も な い 」ゴゴゴゴゴ

京太郎「アッハイ」ガタガタ

咲「全く、話の腰を折らないでよね」

京太郎(今ので充分魔王だと思うんだが……)


咲「さて、話を戻すよ。冤罪を晴らすにはどうすればいい?」

京太郎「うーん……有罪の証拠を否定していく、とかか? 推定無罪の原則があるし、証拠を全部潰せば無罪だろ」

咲「それも一つの手だね。ただ、もともと冤罪だからいくらでも証拠がねつ造できるんだよね」

京太郎(お前のはねつ造じゃないだろ……)

咲「一番確実な方法、それは、真犯人を指摘することだよ」

京太郎「ああ、推理物だとよくあるな。誰かに罪を着せるトリックを探偵が暴くパターン」

咲「つまり、他の誰かを魔王に仕立てあげれば、私は魔王ではなくなる」

京太郎「それ、魔王が二人になるだけじゃ……」

咲「シャラップ!!」ゴッ

京太郎「ひいっ!?」ガタガタ

咲「というわけで、私以外の魔王候補を挙げて、その魔王っぷりを指摘していくよ」

京太郎(やばい、ここまで不毛な会議は初めてだ……帰りてえ……)


咲「まず、最初の候補はこの人だよ!」


ジャン!(頭からウサミミが伸びる特徴的な影)


京太郎「ん~と、これは天江さんか?」

咲「よくこれで分かるね」

京太郎「いや、このウサミミカチューシャは他に居ないだろ?」

咲「作品を跨げば、頭部のシルエットでは判別つかないキャラが両手で足りないぐらいには……」

京太郎「おい馬鹿やめろ」

咲「まあ、それはさておき、お察しの通り衣ちゃんだよ」

京太郎「お前、天江さんに勝ってるじゃん。天江さんを魔王にしてもお前は大魔王になるだけだろ」

咲「衣ちゃんの魔王っぷりを解説していくね」

京太郎「無視!?」


咲「まず、なんといってもこれだよね」

【咲二巻12~13ページ】

京太郎「井上さん、沢村さん、国広さん、龍門渕さん……? これがどうした?」

咲「この四人自体はまあいいんだけど、問題はその肩書きだよ」

京太郎「肩書き?」

咲「四天王」

京太郎「ああ……なるほど」

咲「四天王を従えた魔王とか、もはや定番だよね! これは完全に魔王だよ!」

京太郎「まあ、そもそも初期の構想だとボスだっただろうし、これぐらいはあるよな」

咲「四天王を従えた魔王に挑む勇者ポジション! ほら、私魔王じゃない! 衣ちゃんが魔王なら、むしろ勇者ポジションだよ! 大魔王なんてありえないよ!」

京太郎「あ、一応さっきの聞こえてはいたのか」


咲「さあ、反論出来るかな京ちゃん?」

京太郎「そもそも、お前が魔王とか呼ばれた原因が天江さんへの勝ち方だからな。余裕だ」

咲「……え?」

京太郎「これを見ろ」

【三巻 70ページ】

咲「…ん?」

京太郎「あ、間違った。まあ、この時点でころたんが魔王でなく天使なのは確定だが、これは今関係ない」

咲「ちょっと待って、ころたんって何!?」

京太郎「あったあった、こっちだ」

【七巻 51ページ・58ページ】

京太郎「まあ、ここまでの経過も大分酷いんだが、決定打はこれだな」

咲「……これは……」

京太郎「邪悪な笑顔(捏造)で見下す勝者に対し、敗北して涙ぐむころたん。この天使の涙が、ころたんが魔王でないなによりの証拠だ」

咲「ちょっと待って! 邪悪な笑顔って完全に捏造だよね!? 58ページとか普通の笑顔じゃん!」

京太郎「フキダシに『愚民が気安く話かけんじゃねーよ』って入れても違和感のない笑顔だな」

咲「完全に捏造じゃん!! コラじゃん!!」

京太郎「このページを使ったコラは複数確認した」

咲「だからコラじゃん!!(激怒)」

京太郎「大天使ころたんを泣かせた悪魔を許すな!!」

咲「 黙 れ 凡 俗 ! 」ゴッ

京太郎「ひっ!?」ガクブル


咲「まったく、まさか京ちゃんが衣ちゃん信者だったとは」

京太郎「いや、そうやって実力で黙らせるから魔王の地位が確固たるものになるんだぞ?」

咲「(無視)さあ、これで分かったよね。龍門渕四天王を従える衣ちゃんが魔王だってことは」

京太郎「……それなんだが」

咲「……何?」

京太郎「お前も四天王従えてないか?」

咲「……は?」

京太郎「ぶっちゃけ、和は従えてるだろ?」

咲「従えてるかどうかは知らないけど、仲はいいよ」

京太郎「13巻で部長にもフラグ立てたし」

咲「いやまあ、ほら、不調を見抜くぐらいは誰にでも……」

京太郎「付き合いが長い染谷先輩でも見抜けない不調を軽く見抜いてたわけで、やはり魔王は部下の管理も一流」

咲「魔王じゃないから!!」

京太郎「実力的にもお前が頭一つ抜けてて、それ以外も四人とも実力者だから外部の評価は龍門渕と同じ構図になるのは間違いない」

咲「い、いや、部長は来年居ないし……」

京太郎「来年と言ったな? では、ここでお前が出して来た証拠をこちらの証拠として挙げよう」

咲「え?」

【二巻 13ページ】

京太郎「『昨年の四天王は二年になっても健在』……この意味が、分かるか?」

咲「あ、ああっ!?」ガタガタ

京太郎「たとえ来年部長が卒業したところで、お前以外の四人が『昨年の四天王』と言われることは確実なんだよ!!」

咲「こ、こんなことが……」ガクッ


京太郎「というわけで、ころたんが魔王ならお前も魔王なんだ。諦めろ」

咲「ま、まだだよ……まだ私が魔王だと決まったわけじゃない!!」ゴゴゴ

久「……推理物で追い詰められた真犯人みたいなリアクションになってるわよ、もっと余裕を持ちなさい」

京太郎「部長!?」

咲「ぶ、部長……来てくれたんですね」

久「ええ、可愛い後輩が魔王扱いされてるのを放っておけないもの」

京太郎「>>1で言ってた強力な援軍って部長だったのか」

咲「ふふん! その通り! これで形勢逆転だよ!」

京太郎「さいですか……」


久「なるほど、見事にブーメランが頭に刺さってるわね」

咲「う、うう……」グスン

京太郎「てゆうか、部長からも言ってやって下さいよ。諦めて受け入れた方が楽だって」

久「あら、そんなことはないわよ? 咲は魔王じゃない。それを証明してあげるわ」

咲「ぶ、部長……」ウルウル

京太郎「で、どうするつもりですか? ころたん魔王説は完全なブーメランでしたけど」

久「そうねえ……照なら咲より魔王らしいってことに出来るでしょうけど、姉妹だから『魔王の妹』『次期魔王』になるだけよね」

咲「うっ……次に魔王候補に挙げようとしてたよ……」

京太郎「つまり、照さん魔王説も初手から詰んでるわけですね」


久「いえ、照魔王説をベースに主張を展開するわ」


咲「えっ!? 何言ってるんですか部長、いま自分で言ったじゃないですか? それじゃ、たとえ証明したって……」

久「照は咲以上の魔王要素を持つわ。でも、その照ですら魔王でないというなら、咲は魔王ではありえないということになるわよね?」

京太郎「確かに……ま、まさか……」

久「そのまさかよ。照魔王説をベースに、照が魔王でないことを証明する」

咲「そ、そうか、その手があったよ!!」

京太郎「となると、俺は照さんが魔王であるという証拠を出していくことになる……?」

久「そう、攻守逆転ね」


京太郎「とはいえ、照さんが魔王なんていくらでも材料出せますからね」

久「へえ? 大した自信ね」

京太郎「だって、照さんってアレですよ? 昨年の全国15位をボッコボコにした化け物とそれを更にボッコボコにした化け物を含む三対一の状況で10万点差つけて圧勝する大魔王ですよ?」

久「ふーん? ところで、インターハイの象徴とか言われてる子を魔王扱いってどうなの? 全国の一万の選手と100万を超える麻雀関係者を敵に回すことになるわよ?」

京太郎「えっ!?」

久「麻雀雑誌の人気投票でも上位なのよねえ……魔王扱いなんてしたらファンからどんな嫌がらせを受ける事やら?」

京太郎「ぐっ……なんだこれ、ものすげえ悪者にされてる!?」

久「さあ、反論して見なさい。全国の麻雀ファンを敵に回して反論出来るものならね」

京太郎「ぐぬぬ……納得いかねえけど反論出来ねえ……なんだこれ」

?「全く、見ていられんな。この程度の詭弁に屈するとは」


咲「むっ! 誰!?」

?「そうだな、打倒宮永照に命を懸けるしがない麻雀打ちだ。名はつじが……いや、Tと呼んでもらおう」

久「T……公式戦に出てくる時に結んでいる髪をほどいてメガネも外しているからまったくわからないわ、いったい何垣内智葉なの……?」

京太郎「Tさん、詭弁ってどういうことですか!?」

智葉「『反論する奴は馬鹿だ』というのと同じ。正しいかどうかではなく、反論を封じることで論戦に勝とうとする。これは立派な詭弁だ」

久「T、少しは出来るようね。まあ、ここで終わっちゃ盛り上がりに欠けるところだったし、ちょうどいいわ」


智葉「さて、Tという匿名を名乗ってる私にはさっきのような脅しは通じない、そして、宮永のやつが魔王なのは間違いない。その証拠を今から挙げていこう」

咲「むむむ……T、どんな情報を握っているの?」

久「では、お願い出来るかしら?」

智葉「まず、これを見てほしい」

【阿知賀編2巻 202ページ】

咲「これは……」

智葉「多くの部員に頭を下げさせ、その中を悠々と闊歩する。まさに魔王の風格だ」

京太郎「あ、いや……それはいいんですけど、その……」

智葉「……なんだ、はっきり言え」


久「じゃあはっきり言うけど……これ、どこから撮ったの?」

智葉「あいつの行動を観察していた時に床下から撮った一枚だが、それがどうした?」

京太郎「いや、どうしたもこうしたも……」

咲「流石にドン引きだよ……」

久「あ、もしもし、警察ですか?」

智葉「いや待ておかしい! お前らだって原作から証拠出してただろ!? なんで私だけ!?」

咲「いや、分かりやすく伝えるためにああいう表記になってますけど、私は雑誌記事を提示してますからね?」

京太郎「俺が出したのも、藤田さんのコレクションと公式戦の記録なんで」

久「……なんで靖子のコレクションを持ってるのかは聞かないわ」

京太郎「同志なんで」

久「聞かないって言ってるのに勝手に答えないで!」


警察「ちわー、西東京の方から被害届が出てるストーカーが特定できたって聞きましたけどー」


智葉「おいこら、マジで呼んだのかお前!?」

咲「実の姉のストーカーを見逃すわけないでしょう!? T、覚悟してください!」

智葉「クソっ! こんなところで捕まってたまるか!」

警察「逃げたぞ、追えー!」


咲「……で、何の話だっけ?」

久「あなたの姉のストーカー被害についての対策会議よ。解決しそうで良かったわ」

咲「あ、あれ、そうだっけ?」

京太郎「良かったな、咲」

咲「う、うん!」

ガラッ

和「こんなところで何をしているんですか。部活を始めますよ」

優希「おい京太郎! タコスを買ってこい!」

まこ「なにやら騒がしかったが、何しとったんじゃ?」


久「……大したことじゃないわよ。忘れてしまった方が良いかもしれないぐらいの、つまらない話」

京太郎「ですね、忘れちまった方が楽です」

咲「お姉ちゃんのストーカーを捕まえたんですよ!」

まこ「ほう、それはお手柄じゃのう」ナデナデ

咲「えへへ」テレテレ


久「さ、部活が始まるわ。私たちも行きましょう」

京太郎「はい」



今日も、清澄高校は平和です。




蛇足 【咲さん魔王説】


咲「いつもどおり優希ちゃんが起家だね」

優希「今日こそ咲ちゃんに勝つじぇ! ダブルリーチ!」

咲「それ槓、ツモ、嶺上開花、大三元。32000。大明槓の責任払いで優希ちゃんのトビだね」

優希「じょおおおおおお!?」

まこ「なあ和、麻雀ってどんなゲームじゃったかのう?」

和「場決めをして配牌を取って、一度もツモらずにまた場決めをする不毛なゲームではなかったと思います」

まこ「そのはずなんじゃが、じゃあわしらが今やってるのは一体……?」

咲「えへへ、麻雀って楽しいよね!」


久「……須賀君」

京太郎「はい」

久「優希に頼まれてたタコス、私が買って来るわ」ニコッ

京太郎「いえ、俺に出来るのは雑用ぐらいなんで、部長は打っててくださいよ」スマイル

久「もう引退する身だしね、須賀君に経験を積んでもらった方がいいわ」ニコニコ

京太郎「いえいえ、部長はこれからプロになる身ですし、俺のことなんか気にせず、どうぞ」イケメソスマイル

久「後輩が先輩に気を使うことなんかないわよ? 遠慮せずに打って来なさい」ニコニコ

京太郎「いえいえ、タコスを買うだけですし、慣れてる俺が行った方が……」ニコニコ


優希「全然タコスぢからが足りないじょ! かくなるうえは私が自らの手でタコスを買って来る! きょーたろー、代われ!!」

京太郎「げっ!?」

まこ「同点じゃが、席順で二着じゃ。二着抜けで代わらせてもらうぞ」

久「なっ!?」


久「……」

まこ「どうした、はよう覚悟決めて代わるんじゃ」

久「……拒否するわ。交代ではなく、二着抜けのルールをね」

和「二着抜け……はっ!」

まこ「おい、わけわからんこと言って逃げようとしてもそうはいかんぞ。はよう交代するんじゃ」

和「染谷先輩、今、自分が言ったこと、分かってますか? 二着抜けというのが、どういうことか……」

まこ「ん? ……あっ!?」

久「二着抜け、つまり、咲を二着にしなければ咲が抜け番にならない。あなたはそう決めようとしたのよ。目先の安全のためにね」

まこ「あ、ああっ!? ち、違う……わしは、そんなつもりじゃ……」

久「順番に抜けましょう。表を作るから、もう1半荘打っててもらえるかしら?」

まこ「ぐっ……わかった」

久「優希も、組み合わせを決めるまでそのまま打っててくれないかしら?」

優希「わかったじょ」

京太郎(ドサクサに紛れて交代を拒否したぞ。さすが部長)


京太郎「部長……さっきの話、一つだけ、反論があります」

久「さっきの……ああ、あれね。咲が魔王かどうかってやつ」カチャカチャ

京太郎「照さんは咲以上の魔王だから、照さんが魔王であることを否定すれば、咲も魔王ではないことになる……でしたよね?」

久「ええ……よし、組み合わせ表完成っと。10通り作ってローテでいいわよね」ッターン

京太郎「最初の、照さんが咲以上の魔王っていうのが間違いです……10通りって、咲と自分が同卓する組合せを微妙に減らしてますね?」

久「そうね。さっきはああ言ったけど、私もそう思うわ……そしてなかなか鋭いわね須賀君」

京太郎「……ところで、今、部内のルールはダブルありですよね?」

久「ええ、インハイも終わったし、次の大会の標準ルールに合わせてあるわ」

京太郎「なら、表も作り終ったみたいですし、交代の用意してください」

久「へ? だって今始まったばかり……」


咲「槓! 嶺上開花! 四暗刻と字一色で32000オールです!!」

まこ・優希・和「ごふっ……」


京太郎「……第一ツモを槓すると天和が成立しないんですね。そんなルール知っても普通は役に立ちませんけど」

久「麻雀って、奥深くて楽しいわね……(遠い目)」


最近全く短編書いてないので、本編読み直しがてら目についたネタで。

依頼出してきます。

依頼出すの久しぶりすぎて現行の依頼スレ探すのに手間取ったり、スレ立て久しぶりすぎていつもスレタイに入れてる【咲-Saki-】を入れ忘れたり色々やらかしてます。
やっぱり短編はサクッと書けて良いですね。

咲「私が怖い?獅子原さん?」
爽「最低の点を守るしかない君をなぜ恐れなきゃならない?」
咲「なぜ?なぜなら(読者の言うとおり)私は覇王だからだ。なんど上がられようが私が勝つ!」

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