妹「ねえねえお兄ちゃん、今日はどこ行くの?」(61)


兄「今日もそのへんをぶらぶらしようと思う」

妹「えぇ?またぁ?」

兄「嫌か?」

妹「嫌じゃないけど、何かもっと目標を持とうよ」

兄「そんな事言ったって、俺達はもう目標は持てないだろ?」

妹「うぅ、そうだけどぉ…」

兄「な。わがまま言わないの」

妹「はぁい」


兄「きょうも道に沿って歩こうな」

妹「わーいやったぁ」

兄「こらこら、走り回るんじゃない妹。家の人に迷惑になるだろ?」

妹「大丈夫大丈夫。聞こえないよお兄ちゃんっ」

兄「聞こえる。やめなさい」

妹「むぅ…。お兄ちゃんは、私が何かすると止めなさいってそればっかり」

兄「やんちゃな妹を持つと、口うるさくなっていけないな」

妹「えへへ。やんちゃなのは、お兄ちゃん譲りなのだぁ」

兄「親譲りな」

妹「そうとも言うね」

兄「そうとしか言わない」


妹「わあ、見てお兄ちゃん。あそこの家から人がたくさん流れこんでくるよ」

兄「本当だ。あそこに何かあるのかな」

妹「きっと居心地がいいんだよ。私達も行ってみよう?」

兄「でも、家の人に迷惑にならないかな」

妹「ならないならない。私達は絶対に迷惑になりませんっ」

兄「あっ、こら待て妹」


妹「わぁ」

兄「へえ。なかなか大きなお屋敷じゃないか」

妹「いいねいいね。私も一度はこういうおうちに住んでみたい」

妹「もちろんお兄ちゃんも一緒にね」

兄「いやぁ。俺達だけにこの広さは困っちゃうなぁ」

妹「どして?」

兄「掃除に洗濯、維持管理。これらを全部俺たちがやるんだぞ」

妹「それもまたお兄ちゃんと親睦が深められそうでいいよ~」

兄「あはは」


妹「うわっ。お風呂は沢山の人でぎゅうぎゅう詰めだね」

兄「参ったな。これじゃあ通れない」

妹「仕方ない。ここは一旦外に出て別の道を探そう?」

兄「そうだな。そうしよう」


妹「結局お外の大通りを使うことになったね」

兄「そうだな」

妹「私的には、さっきのお屋敷とか狭い道とかのほうが面白いんだけどなぁ」

兄「お前冒険好きだもんな」

妹「うんっ。お兄ちゃんと一緒に行く冒険は、すっごく楽しいよ」

兄「お前はほんとに素直だな」

妹「えへへ~」


兄「妹はどうして素直なままで居られるんだ?」

妹「うーん。どうしてかな」

妹「…やっぱりお兄ちゃんと一緒に楽しくお散歩できるからかな」

兄「俺と?」

妹「うん。お兄ちゃんと一緒に居られるのなら、私は何も怖くないし、要らないよ」

兄「そうか」


妹「そういうお兄ちゃんも、いつまでも元気で明るいよね」

兄「そうだろうか」

妹「そうだよ。やっぱりお兄ちゃんも私がいるからいつまでも元気なのかな?」

兄「ま、まさか。俺は」

妹「あ~、お兄ちゃん顔あかーい」

兄「お、お、俺は別にっ…」

妹「ムフフ。ブラコンシスコン!二人揃ってドウシヨウモナインジャー!」

兄「戦隊風に言うの止めろ」


妹「はい出ました。お兄ちゃんの止めろ発言」

兄「くっ」

妹「えへへ、今日からお兄ちゃんの止めろの回数を数えるね」

兄「や、やめろよ」

妹「2」

兄「ぐぅ」

妹「(・∀・)ニヤニヤ」


妹と二人で道を通る。

人はいるが気にしない。


兄「なあ妹」

妹「なあに?お兄ちゃん」

兄「前はさ、痛くなかったの?」

妹「え?何が?」

兄「だからさ。来るとき痛くなかったのかって」

妹「あぁ。来るときね」


兄「どうだったんだ?」

妹「そりゃあものすごく痛かったよ」

兄「おい、大丈夫だったのか」

妹「何言ってるのお兄ちゃん。大丈夫じゃなかったからこうなってるんだよ?」

兄「お、おう。そうだったな…」

妹「ふふっ。お兄ちゃんは、どうだった?」

兄「俺?俺はあっという間だったんでしばらくは分からなかった」

妹「私がお兄ちゃんを見つけた時に、やっと理解してたもんね」

兄「ああ」


妹「あのまま私が見つけてなかったら、お兄ちゃんはどうなっていたのかな…」

兄「今と同じように道を歩いていたさ」

妹「一人でも?」

兄「ああ。多分な」

妹「そっか。お兄ちゃんらしいね」

兄「それよりも、俺はお前がここに来たのが許せない」

妹「そ、それはもうたくさん謝ったじゃん」

兄「謝ったって元には戻らないんだぞ」

妹「私はこれでいいの!お兄ちゃんと一緒に居られれば、それで」


兄「はぁ…。全く困ったやつだ」

妹「まんざらでもないくせにっ」

兄「まんざらです」

妹「私は全然嬉しいよ。お兄ちゃんは違うの…?」

兄「嬉しいよ。ただ、こうしてしまった俺に腹が立つ」

妹「それは仕方がないよ。自分では決められない」

妹「でも、こうして二人でいれば、何が起こっても怖くはないよ」

兄「……」

妹「わたしは、これでいいと思う。二人でいるから今のままなんだと思う」

妹「だから、このまま散歩を続けよう?」

兄「ああ、そうだな」


塩の香りが鼻を突く

これは海だな

もうそんなに歩いたのか


妹「うわあ、海だぁ」

兄「真っ暗だな。昼の間に着ければよかったんだけれど」

妹「だけど、人はいっぱいいるよ」

兄「だな」

妹「うーん。私も泳ごうかな」

兄「朝になって明るくなるまで待ってろよ」

妹「えー!やだぁ、待てないよぅ!」

兄「明るいほうが面白いよ。それまでは砂で城でも作って待っていよう。な?」

妹「うぅ、はぁい」


妹「お兄ちゃんお兄ちゃん」

兄「ん?なんだ」

妹「穴を、そっちから掘ってくれない?」

兄「穴?トンネル作る気か」

妹「そう!トンネルが出来れば一段とかっこよくなるよ!」

兄「はあ。いいけど、崩れても何も言うなよ」

妹「うんっ」


妹「………」

兄「………」

妹「崩れた…」

兄「すまん…」

妹「ま、まぁいいよ。崩れても何も言わないっていう約束だったからね」

兄「はい」

妹「ただし!崩れたらもう一度手伝ってって言ってはいけないとは言ってなかったから、もう一度作るの手伝ってもらう!」

兄「なんと」

妹「さあお兄ちゃん、朝まで砂のお城を作るよ!」

兄「はぁ。はいはい」


兄「妹。そろそろ次の場所にいこう」

妹「え?もう行っちゃうの?」

兄「ああ」

妹「うーん。でももう少し海にいたかったな…」

兄「海以外にもいいところはいっぱいある。それらを見に歩こうじゃないか」

妹「じゃあ、お兄ちゃんはどこに行きたい?」

兄「おれ?俺はな」


妹「わぁ、大きな街!」

兄「人がたくさんいるだろ」

妹「うん、そうだね。こんなにいるとどちら側だか見分けがつかないよ」

兄「いや。わかるんだなこれが」

妹「え?どして?」

兄「ほら、あの人達は地下鉄の真っ黒いトンネルに向かって歩いている」

兄「あそこに道があるんだ」

妹「わあ、ほんとだ。さすがお兄ちゃんっ」

兄「ふふん」


妹「じゃあ、あそこの道にそって歩いていこうか」

兄「大丈夫か。怖くないか」

妹「お兄ちゃんと一緒に手を繋げば大丈夫だよ」

兄「手って。この年頃で兄弟で手をつなぐのは」

妹「仲良きことは美しきかなだよお兄ちゃんっ」

兄「そうか」

妹「そうだよ。さあ、私の手を握って?」

兄「…」

ギュ

ここらでおいとまする
展開はある程度読んでくれたほうがいい


妹「お兄ちゃんの手、温かくも冷たくもないけど、とっても温かい」

兄「お前のもそんな感じだ」

妹「ふふっ。手を握るって、何かとても特別なことなんだね」

兄「そうだな」

妹「ところで今日は、散歩を始めてから何日目?」

兄「多分、11日目くらい…かね」


妹「ひゃあ、もうそんなに経ったの」

兄「ああ。俺的には3日4日くらいなんだが」

妹「時間が立つのは早いね…」

兄「だな」

妹「地下鉄の地面、ひんやりして冷たいね」

兄「妹は冷え性だな。大丈夫か」

妹「手は温かいんだけど」

兄「分かった分かった。分かったから手を繋いでることを強調しないでくれ。恥ずかしい」

妹「ふふっ」


兄「トンネルを出たな」

妹「うん」

妹「でも、やっぱり出た先は駅だね」

兄「地下鉄だからな」

妹「だね」


兄「まずは俺が先に上に上がるよ。その後俺が妹を引っ張ってやるから」

妹「分かった」

兄「よいしょっ…っと」

兄「おし、妹、手を出せ。引き上げる」

妹「うん」

兄「ふんっ…!」

妹「よ…っこいしょーっ!」

兄「だぁーっ!」

ドシャアッ


妹「あいたたた…」

兄「………」

妹「あっごめんお兄ちゃん!バランス崩して倒れちゃった」

兄「い、いからど、け」

妹「う、うん」ヒョイ

兄「っぷは!はぁっはぁっ…」

妹「ごめんね、お兄ちゃん…」

兄「い、いいってことよ」


妹「ホームへの段差、結構高くて困ったの。ごめんなさい」

兄「俺がいなかったら、妹は上がるのにもっと手間取ったろうなあ」

妹「……身長低い?」

兄「低い」

妹「///」

兄「ははははっ」

妹「もうっ!笑うなー!」


ごちゃごちゃのホームを歩いていると、妹が肉の塊を踏んだ。


グシャッ


妹「うわあ、な、な、なに?」

兄「まぐろ」

妹「えっ…まぐろ?」

兄「前は人だったものだよ」

妹「人…。なんでこんな所に置きっぱなしなの?」

兄「きっと誰かが片付けたさ。でも、まだ残ってるんだ」

妹「こんなに街の人が歩いているのに?どうして?」

兄「…」

兄「妹、ちゃんとこの人に謝っておけ。この人は俺たちと違って歩くこともできないんだ」

妹「ご、ごめんなさい……」


兄「済んだか、妹」

妹「うん…」

兄「よし。それじゃあそろそろお手洗いの鏡へ行こう」

妹「えっ。お兄ちゃん、鏡の道を使うの?」

兄「ああそうだ」

妹「えー…。鏡使うのぉー…?」

兄「何が不満なんだ」

妹「だってぇ…。鏡使うとたまに映るんだもん、前の姿格好が」

兄「自分の姿が見られたくないのか」

妹「うん」

兄「なんで」

妹「……人にはすごい姿で映ると思うから」


兄「それを言うなら俺のほうが凄いと思うがな」

妹「ええー…?」

兄「全身真っ赤っ赤だ。多分このあたりからね」

妹「…」

妹「……私だって、首に跡が残ってるだろうし。それに顔面蒼白だよ、きっと…」

兄「はぁ…。今更直後の姿を悔やむとか。もっといい姿で終わる方法は思いつかなかったのかよ」

妹「そ、その時はお兄ちゃんに会いたいの一心で何も考えられなかったの!」

兄「ははははははははははは」

兄「そうかそうか、会いたかったのか。妹は優しいな」

妹「…」

兄「妹、なにも思い悩むことなんか無いよ。妹は綺麗な顔のままなんだから」

妹「うぅ…///」


兄「さあ、入るぞ妹」

妹「うう…お兄ちゃん。やっぱりあそこの人腰抜かしてるよぉ…」

兄「おやおやほんとだな。見える人だったか」

妹「どうして、向こうの人達にはすごい姿のままで映るの?」

兄「分からん。俺には妹は普段通りの姿に見えるんだけれど」

妹「…はぁ。あの人に写ってる私の顔ってどんなんだろうね…」

兄「気を落とすなよ妹。もう俺達には関係ないさ」

妹「…うん」




自分の姿があちこちから見えるその空間を抜けると、合わせ鏡になっている所に出た。


妹「わっ、廃屋だ」

兄「ここにはひとがたくさんいるな」

妹「ここもぎゅうぎゅう詰めだよ…」


兄「あちこちが荒らされている」

妹「あっ。お兄ちゃんお兄ちゃん、これを見て」

兄「ん?」

妹「ほら、これ」

兄「なに?割れた仏具…?」

妹「ほら、こっちは写真立てが割られてる」

兄「…いたずらか」


妹「ひとの家なのに…ひどいよ」

兄「この家の主は一体どこにいるんだろう」

妹「もうここには居ないんじゃないかな…」

兄「そうだろうか。こんなにひとがぎゅうぎゅう詰めなのに」

妹「うーん…」

兄「何もなければ人はこんなに集まらないだろう。閉じ込められているひとがいるんだ」

妹「閉じ込められているひと…」


兄「あった」

妹「これ…お札?」

兄「ああ」

妹「ひどいよ…。こんなにいっぱい貼り付けて。これじゃあ出られない」

兄「誰かが出られないようにしたんだ」

妹「どうして…?」

兄「分からない。聞こうにも本人は閉じ込められている」

妹「ここのぎゅうぎゅう詰めのひと達は、この人を助けようとしているの?」

兄「きっとそうだ。俺たちも手伝おう」

妹「うんっ…!」


少女「止めて下さい。余計なことをするのは」

兄「!」

妹「えっ、女の子…?」

少女「…止めなさい」

兄「……」

兄(こいつ…)

少女「あなた達は、いつまでもここでぶらぶらしててもいいと思っているの?」

兄「だ…誰だお前は!俺たちになんの用だ…!」

少女「これ以上歩きまわって、好き勝手するのを止めて下さいといっているんです」


妹「あ、あなたはだれ?どこからきたの?」

少女「死後の世界から」

妹「死後の世界…?」

少女「そう。人々が安定と清浄へと還るところから」

兄「…そんな意味のわからない奴が、俺達に何のようがあるんだと聞いている!」

少女「わたしは、あなた方お二人を向こうへ送り出すためにここにつかわされた使いです」

兄「使いだと…」

少女「そうです」

妹「ど、どうして…?」

少女「ふふふふふふ。よく状況が飲み込めないのであれば率直に申し上げます」

少女「早く完全に死ね。あなた方はもうここの世界の住人ではないのだから」


妹「お、お兄ちゃん…」

兄「………」ギュ

少女「あなた方には、死んだという自覚がある」

少女「にも関わらず、あなた方はこの世界でのうのうと半分になって好き勝手に生きていますね」


少女「自覚があるのにこの世界にとどまることがいかに罪が重いものか知っている」

少女「なのに散歩などといい、生きているか死んでいるか分からずに悩み苦しむ死者の通り道を」

少女「好き勝手に踏みならし、自由に使い、理などそっちのけで兄妹二人仲良く遊んでいる」

兄「………」

妹「………」

少女「馬鹿なことは止めなさい。くだらない自己満悦を今すぐやめて死者の世界へ還れ」


兄「…フン。お前にどうこう言われる筋合いはない」

少女「…なに?」

兄「くだらないことなんかじゃないといっているんだ」

少女「何を言っているの。理に反して自由勝手に遊び回るこれのどこが馬鹿な行為でないと?」

兄「俺達にとって、遊び回ることはとても特別な時間だ」

兄「生き別れた俺達兄妹にとって、これは大切な時間なんだ」


兄「顔も名前もバラバラな兄姉弟妹の中で唯一、こいつが俺の実妹で、心から信頼出来る血の繋がった肉親なんだ」

妹「…お兄ちゃん……」

兄「俺が事故で死んだ時、連絡先を教えてはならない約束を破ってまで、おばさんは妹にこっそり教えてくれた」

兄「そしたら、妹は俺を追いかけるように首を吊って死んだ」

妹「……」

少女「……」

兄「そうでもしなければ一緒になれなかった。そうでもしなければずっと一緒にいられなかった」


少女「兄ともあろうものが、妹の自殺に対して何も咎めないの」

兄「…」

兄「…咎めたさ。でも妹は会いたかったからって」

少女「それはお前のただの独り善がり」

少女「お前の妹は、自殺という大罪を犯して兄に会うという、生からの逃避を図った」

妹「…」

少女「好き勝手な行動、理への抵抗。生への軽視、自殺」

少女「これらは、お前たちに生を与えたもうた天への不義理な行為に他ならない」

妹「…で、でも、私とお兄ちゃんには…」

少女「四十九日も六道輪廻の世界も与えられない。与えられるのは無だけ」

妹「そ…んな」

兄「……………」

兄「結局は全部間違いだったのか」

少女「さあね、汚れた魂」


俺と妹は、ただただ一緒になりたかっただけなのにな




俺たちは真っ暗な空間に閉じ込められた

真っ黒いトンネルの中で妹が何かを言う


お兄ちゃんごめんなさい

私たちは全部間違っていたんだね

だから神様が怒っているの

親も居ないの。神様までもがそばに居ないの


次第に声が消えて行く


お兄ちゃんはいつまでもそばに居てくれたね

離れる前も、離れたあとも

だけどそれももうお終い

もっとお兄ちゃんとお話ししたかった

もっとお兄ちゃんといろんな景色を見て回りたかった

もっとお兄ちゃんと手を繋ぎたかった、もっと


真っ暗な中、妹の声は聞こえなくなっていき、やがて消えた

死んだのか

だけど俺の意識はいつになっても消えない

全く何もない真っ暗な景色。自分の姿も声すらもないのに意識ははっきりとある

これが無か


気づいた時から今までに、俺は中劫の時を過ごしていた

それは具体的な数字に表せない

自分が今、考えているのかいないのかの境が分からなくなってきた

自分という形がなくなってきた頃

真っ暗な中に、ひとつの光の筋が縦に切れた


少女「出てきなさい、兄」

兄「………」

少女「お前に、一時の自由を与えられることになった」

兄「…じ、ゆ。……だ、と……」

少女「ふう。声であって声でないね」

兄「…」

少女「まあ仕方ないか。なんせ数字で表せないくらいの時間をそこで味わったのだから」


兄「が、…っが、がッ」

少女「まずはこれを飲みなさい。その後に話をしてあげる」

兄「…ッッ!!!」

ガッ!!

少女「ぐぅっ!?」


ガチャンッ


兄「馬鹿にするのもいい加減にしろ…!いもうとは、いもうとはどこだ!!答えろ!!」

ギチギチギチ

少女「かっ…、かはっ!!」

兄「答えろ、答えろ答えろ答えろ答えろ答えろ!!」

少女「が…ぁ、い、も…とは、……げか、い…いる…ぅ…っ!」

兄「外界…!?」

少女「…!…!」コクコク


パッ

少女「っはあ!!はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

兄「……」

少女「うっ…、が、がはっ」

兄「…妹は下界にいるって、一体どういうことだ。このクソガキ」

少女「ぐっ…、六道輪廻の世界を再び回るということ………ゲホッゲホッ!」

兄「六道輪廻だと?」

少女「六つあるうちの一つの世界、人間界で…もう一度人となって生きることになったの…」

兄「それはいつの話だ」

少女「あなたが無に閉ざされてより三年………ぐぅっ!?」

兄「馬鹿を言うな。そんなに短いはずがない」

少女「無、と…天界、は、ちが…う、……時間が…あッ!」


兄(ここは天界か)

少女「うぅっ…」

兄「おいクソガキ」

少女「な…なに……?」

兄「俺は何故釈放された。妹は何故生まれ変わった」

少女「それは…」

兄「答えろ」

少女「……」


少女「あの娘は、六つの世界を廻ることを放棄した」

少女「だから、以前よりももっと苦しい負を持って、人間界を過ごすことを再び強制されたの」

兄「俺の釈放は」

少女「…あなたは、大罪を犯した妹を受け入れ、理に反して現世を歩きまわった」

少女「だから無の世界が与えられた」

兄「……」

少女「けれど、長い審議の結果、主はそれだけでは無を与えるに至らないと判断を仰がれ」

少女「お前に、妹を見つけるまで実体の無いまま人間界を彷徨わせる荷を与える。という結論を導き出された」


兄「俺が妹を見つけたら、そのあとはどうなる」

少女「お前は贖罪を全うしたとして、妹の兄として下界に生まれ変わる」

兄「負は?」

少女「一切無く、また事故などのような急な死を与えないことを約束する。このわたしが」

兄「……随分と気前が良いなクソガキ」

少女「…本当のことを言うと、わたしも主からお前と共に贖罪することを定められたの」

兄「何故だ」

少女「お前たち二人の魂。尊く扱われるべき魂というものに対し、汚れた魂とものを言ったため」

兄「ああ、お前の贖罪内容は俺のお世話係を全うすることか。ご苦労なことだな」

少女「…ふんっ」


少女「で?お前は妹を探すの、探さないの?」

兄「探す。探すに決まってる」

少女「ならさっさと風呂に入って準備しなさい。そのボロ衣姿は我慢ならない」

兄「なら風呂場に案内しろよクソガキ」

少女「クソガキじゃない!わたしは主に仕える天上の使者、しょう」

兄「死んだ俺達の前に現れたのも、主とやらから連れてくるよう言われたってわけか」

少女「そうだよ!お前みたいなふらふらしてるひとを見つけ連れて行くのが仕事なの」

兄「したっぱが」

少女「中階層だこのシスコン!」


兄「いいからさっさと案内しろクソガキ。俺は妹を早く探し出したいんだ」

少女「クソガキっていうのをやめたらね!」

兄「……少女」

少女「……………」

兄「…」

少女「///」

兄「早くしろこのガキ」

少女「お前!ちょっといい人って思ったら!」

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