陽乃「比企谷君が好きなものを教えてよ」 (13)

地の文注意




相手の好きなものを知るというのは、コミュニケーションの初歩である。

すなわち、相手が自分の友人となりえるのかを判断するための手段なのだ。

例えば、新学年になったときにやらされる自己紹介にもそれは含まれている。

読書が好きだと言えば、暗いやつ

野球が好きだと言えば、体育会系のやつ

アニメが好きだと言えば、きもいけど正直なやつ

そんな空気が3年前のあの教室にも流れていた。


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頭を捻ったものの、妙案を思い浮かばなかった当時の俺は第四の選択肢を選んだ。

『○年△組 比企谷 八幡です。…好きなものはありません』

授業でもないのに、一瞬でシーンっと静まり返ったあのクラスには

真面目な生徒が集まっていたのだろうか

それあるな。

クラス全員が雪ノ下雪乃だった説まである

まぁ、自己逃避はここまでにしておいて

あれからぼっちライフが始まったと思うと

この質問は業が深い

それだから、たまたま街中で出会った雪ノ下陽乃がこれを尋ねてきたときは

思わず問い返した。

「どういう意味ですか」

「いやだなー、そのまま意味だよ♪」

彼女は純粋無垢な笑顔を浮かべる。

こうやって、何人もの『好きなもの』を仕入れてきたのだろうか。

なにこの人怖い。

再びあのときの自己紹介のことが蘇る。

俺が好きなもの

違うな

皆が俺を嫌わないでいてくれる、俺が好きなもの

それはなんだ?

頭の中でぐるぐると考えが浮かんでは消えていく。

雪ノ下陽乃が見つめる中、悩むこと数分

答えがでた。

それは、皆が好きなものだ。

そこに俺の好き嫌いは介在しない。

『俺の好きなもの』が、俺が好きなものである必要はないのだ。

だが

ぼっちの俺が答えるのは

本当に好きなもののはずだ。

「千葉ですね」

完璧な答えだ。

考えるまでもなかったな。

彼女は俺をまじまじと見ていう。

「へー、そうなんだ」

「ええ」

「ふーん」

「…」

「…」

それから、会話が弾むことなく

居心地悪い空気のまま、黒のベンツが彼女を迎えにやってきた。

さよなら、比企谷君

そう言って、彼女は車に乗り込んで去っていった。

独り取り残された俺は、ふらふらと帰途に着く。

…なんかもう、やめたいんだが。

人間とかいろいろやめたい。

今になって考えると



名前   比企谷八幡



好きなもの   千葉




ってなに?馬鹿なの?ギャグなの?

今日は、黒歴史の新たな一ページが刻まれたんだな…。

久しぶりの更新だ、泣ける。

あまりの恥ずかしさに

電柱に頭をぶつけて記憶を消そうとして

その結果、鼻血を出し、さらなる黒歴史を作ったのは後の祭りである。

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「雪乃ちゃん、こんばんは」

「用件はなに、姉さん」

「さみしーな、用件がないと電話したらだめ?」

「用件がないなら、切るわ」

「実はね今日、比企谷君に会ったんだよ」

「…そう」

「それでね、彼の誕生日プレゼントをナニにしようかなーって思って

好きなものを聞いたの」

「…」

「そしたら、千葉が好きだって言われちゃった」

「……ふっ…」

「さすがに千葉をあげるのは無理だから、代わりに何がいいかなーって思って

電話したの」

「…ごほん……姉さんは結局自分のしたいようにしかしないじゃない。相談なんて無意味だわ」

ガチャン

「…話は聞いてくれた。ちょっとは前進したかな」

雪ノ下陽乃はスマートフォンを置いて、窓からネオンが彩る街並みを眺めた。

このうちのどれかが比企谷君の家だろうか。

「私はわざと『欲しい物』って聞かなかったし

比企谷君が動揺するような言い方をした。」

雪ノ下陽乃は悪びれずに告白をした

「やっぱり、比企谷君って面白いね。悪意に怯えてるみたいで」

おわり 

初めて俺ガイルSS書いたから、楽しかった
呼んでくれた人ありがとう

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