絵里「合宿するわよ」 (128)

・ラブライブSSです。

・初SSです

・ある程度書き溜めているので出来るだけ早く完結できるようにします。

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穂乃果「青い海っ!」

凛「白い砂浜っ!」

穂乃果「そして!」

りんほの「「真姫ちゃん家の別荘!!」」

穂乃果「これぞ合宿って感じだねえ!」

真姫「イミワカンナイ………」

花陽「凛ちゃん達、なんであんなに元気なのかなあ…」

真姫「ちょっと花陽?顔色悪いわよ?」

花陽「船酔いが………」

海未「花陽、酔い止め使いますか?」

花陽「ありがとう、海未ちゃん…」

希「それにしてもなんでこんな無人島に別荘なんか…しかもこんな大きな…」

真姫「あら、これでも小さいほうよ?」

にこ「もう慣れたけど、本当いくつ別荘あんのよ……」

ことり「あはは…」

絵里「本当、毎回毎回真姫に迷惑かけっぱなしで悪いわね……」

真姫「そんなことないわ。それに厳密に言うとここは西木野家の別荘ってわけじゃないの」

海未「確か、親戚の叔父の別荘という話でしたね。こんなところに別荘なんてかなり変わった方のようですね」

真姫「そ。それにその叔父さんが海外にしばらく滞在するらしいから好きにしていいそうよ」

穂乃果「ほんとに真姫ちゃんちは凄いねえ!よし、凛ちゃん!探検しよう!」

凛「はいにゃ!」

海未「待ちなさい穂乃果!凛!一旦荷物を置きに中に入りますよ!」

穂乃果「ちぇー、海未ちゃんのケチー」

凛「ケチにゃー」

希「ほら、穂乃果ちゃん、凛ちゃん。そんなとこでむくれてるとおいてかれてまうよ?」

ほのりん「「はーい」」

にこ「……一番小さいとか言ってたっけ?」

海未「……絶句です」

真姫「ここはこのリビングとキッチンに大浴場。あ、花陽、靴は脱いで上がってね。カーペット敷いてあるから」

花陽「あ、ごめんね。あんまり天井が高いから外国の家と同じで土足であがるのかと思っちゃって……」

穂乃果「あ!これ見たことある!えーっと、なんだっけ?」

希「黒電話、やね」

真姫「この島は携帯の電波が繋がらないから、それで島の外に連絡を取るのよ」

ことり「へえ。凄い雰囲気あるねえ……」

絵里「荷物はどこに置けばいいかしら?」

真姫「一階と二階に二部屋ずつあるからそこのどこかを使って。あ、でもおじさんの書斎みたいな部屋があってそこはごちゃごちゃしてるからその部屋以外ね」

絵里「そうね…じゃあ学年ごとに部屋を分けましょうか」

穂乃果「寝るときもそこの部屋で寝るの?」

海未「そうなりますね」

穂乃果「えーっ!せっかくの合宿なんだからみんなで一緒に寝ようよ!」

ことり「でも穂乃果ちゃん、場所はどうするの?」

穂乃果「うーん、そうだなあ…」

希「リビングとかいいんちゃう?布団が人数分あればやけど」

真姫「来客用の布団があるはずよ。リビングなら広さ的にも申し分ないけど……」

凛「凛もみんなで一緒に寝たいな!」

花陽「私も折角だしみんなで一緒に寝たいなあ」

希「ええやん。これも合宿の醍醐味やね!」

絵里「仕方ないわねえ…」

希「そんなこと言ってほんまはえりちも嬉しいんやろ?」

絵里「そっ、そんなわけないじゃない!」

海未「絵里、また希にからかわれてますよ」

絵里「えー、こほん。じゃあ下の二部屋は一、二年生。上は三年生ね。各自部屋に荷物を置いたら着替えてここに集合。すぐ練習始めるわよ」

穂乃果「えー!折角海があるんだから遊ぼうよー!」

海未「穂乃果!」

穂乃果「ぶー」

絵里「ま、まあ練習は短めにして少しくらい遊んでもいいじゃないかしら?ねえ、海未」

海未「まあ、絵里がそういうなら…」

乃果「やったー!絵里ちゃん大好き!ことりちゃん、いっぱい遊ぼうね!」

ことり「うん!」

海未「はあ、全く…絵里は穂乃果に甘いです」

希「まあまあ海未ちゃん。ウチは海未ちゃんがみんなのためを思って厳しくしてくれとるの、分かってるんよ?」

海未「希、ありがとうございます…もしよろしければ一緒にあの森でサバイバルしませんか!」

希「ウチは遠慮しとくわ…凛ちゃんなんか連れていったらいいんちゃうん?」

凛「凛も嫌だよ!」

海未「これも立派なアイドルになるための鍛錬ですよ!」

凛「アイドル関係ないにゃあ…」

絵里「はいはい、じゃあすぐに集合して練習始めるわよ」

穂乃果「いやー、存分に遊んだ後はパンがうまいっ!」

海未「穂乃果!この後は夕飯ですよ?」

穂乃果「はっ!そうだ!」

凛「真姫ちゃん、夕飯はどうするの?」

真姫「そうね。今この家には私たち以外誰もいないし私達の誰かが作るしかないと思うんだけど……」

にこ「……しょうがないわね!どうしてもっていうなら私が作るわ!」

海未「いえ、ここは私にやらせて下さい」

にこ「ちょっ!にこの見せ場を取るつもり!?」

海未「いえ、合宿のたびににこが料理を担当しているので少しでも負担を減らせればと思ったんですけど……迷惑でしたか……?」

にこ「い、いや別に迷惑ってわけじゃなけど………」

凛「にこちゃん照れてるにゃ!」

にこ「うっさい、凛!じゃあお言葉に甘えて今回は休ませてもらおうかしら」

海未「ええ、そうしてください。作るとは言ってもただのカレーですけどね」

穂乃果「カレー!穂乃果カレー大好きだよ!」

花陽「私のはご飯大盛りでお願いしますっ!」

海未「ふふ、分かりましたよ。あ、作り終わったら呼ぶので盛り付けや運ぶのを手伝ってもらえませんか?」

絵里「分かったわ」

真姫「キッチンはそこの廊下を右に曲がって、つきあたりの部屋よ」

海未「結構遠いのですね」

真姫「材料は一通りあると思うわ。足りなかったら買いに行きましょう」

海未「カレールーなどは持参していますので多分足りると思います」

ことり「どうりで海未ちゃん、他の人に比べて荷物が多いと思ったよ」

海未「では、皆さんはゆっくりしていてください!」

希「走っていったなあ…」

ことり「海未ちゃん前々から料理してみたいって言ってたからねえ」

絵里「みんなどうする?一旦部屋に戻る?」

穂乃果「そんなに時間はかからないだろうしここで暇をつぶして待ってようよ!」

にこ「穂乃果、なんか暇をつぶせる遊び道具でも持ってるの?」

穂乃果「ふっふっふ……これです!」

真姫「これって…ただのスマホよね?」

穂乃果「そう、今回はこのスマホのアプリ「人狼ゲーム」で遊ぼう!」

凛「人狼ゲーム?ってなに?」

絵里「私も知らないわ…希知ってる?」

希「うちは知ってるで。最近、朝のニュース番組で特集もやっとったなあ」

穂乃果「穂乃果もやったことはないんだけど、ずっとやってみたいと思ってたんだ!で、折角ここに8人もいるからやってみようと思ったの!」

真姫「でも、ルールを知ってるのって穂乃果と希だけ?他のみんなは?」

ことにこぱな「知らなーい」

希「まあそんなに難しいゲームでもないしルール説明しながらやればいいんじゃないかな」

穂乃果「そだね!じゃあ早速この8人を登録してっと……」


~一時間後~


絵里「花陽、あなただったのね……人狼は!」

花陽「えっ!ち、違うよ絵里ちゃん!」

真姫「でも、この場では絵里が占い師だし絵里の言うとおり花陽を投票で吊るべきなのかしら…」

希「そうやね…今のこの場で一番信じられるのはえりち…ウチは花陽ちゃんに投票しようと思う」

花陽「ええっ!そんな!」

絵里「言い逃れは認められないわあ。おとなしく吊られなさい!」

小泉花陽 JUDGEMENT

人狼チームの勝利です

のぞえり「いえい!」

穂乃果「まさか、絵里ちゃんが人狼だったなんて…」

ことり「占い師だった凛ちゃんがいきなり食べられちゃった時点で勝ち目は薄かったね……」

凛「面目ないにゃあ……」

真姫「エリー、信じてたのに……」

絵里「ま、まあそう睨まないでよ真姫たかがゲームじゃない?」

真姫「……もう一回よ」

絵里「え?」

真姫「もう一回やりましょう!この私がまんまと騙されたなんて……!」

にこ「あちゃー、真姫ちゃんの負けず嫌いスイッチが入っちゃったニコ……」

「みなさーん!カレーが出来たので取りに来てくださいー!

絵里「あ、海未が呼んでるわ。じゃあここまでね」

真姫「ちょっ!」

希「はいはい真姫ちゃん続きはまた今度な」

真姫「くう……」

穂乃果「それにしてもみんな楽しんでくれてよかったよ!」

花陽「私は少し怖かったなあ」

ことり「私も誰が敵で誰が味方だかわからなかったから不安だったよ…」

穂乃果「それが醍醐味だよ!」

絵里「穂乃果達も自分の分のカレーを持ってきなさい。海未がよそってくれてるから」

ことり「うわあ、美味しそう!」

穂乃果「穂乃果も早く食べたいよう!」

希「穂乃果ちゃん、あせってお皿落とさんようにな」

穂乃果「はーい!」

~その夜~


海未「なんですかこのゲームは……全然勝てません……」

ことり「あはは…なんでだろね?」

ことり(海未ちゃん、人狼になるとすぐ顔に出ちゃうからなあ)

穂乃果「ふぁ……穂乃果そろそろ眠い……」

希「今日の練習もハードやったからなあ」

海未「そうですね。明日も早いことですしそろそろ寝ましょうか」

凛「えーっ!明日も朝から練習なの!?」

海未「あたりまえです!なんのための合宿だと思っているんですか!」

凛「海未ちゃん厳しいにゃあ……」

穂乃果「穂乃果も遊びたいよう…」

海未「私も勝つまでやりたいところなんですがね・・・」

絵里「電気消すわよー。みんな自分の布団に寝てるー?」

一同「はーい」

にこ「といっても寝相が悪い何人かのせいで誰がどの布団とか関係なくなっちゃうんでしょうけどね」

凛「にこちゃんだって寝相悪いにゃあ」

にこ「なんですって!あんたには言われたくないわよ!」

凛「頬を引っ張るのは反則だにゃあ~」

絵里「はいはい、明日も早いんだから静かにしなさい。電気消すわよ」

穂乃果「みんなおやすみー」

「おやすみー」



~次の朝~



海未「ふぁあ……」

絵里「おはよう、海未」

海未「絵里、早いですね。てっきり私が一番だと思っていたんですが」

絵里「たまたま目が覚めちゃってね。さっさとみんな起こしちゃいましょうか」

海未「ええ、今日も練習は厳しくいく予定ですから」

絵里「ふふ…お手柔らかに頼むわ」

海未「ほら、穂乃果、ことり、起きて下さい」

穂乃果「ふぇ?…もう朝なの…?」

ことり「海未ちゃん、穂乃果ちゃんおはよう……」

絵里「ほら、他のみんなも起きなさい!」

凛「眠い……にゃあ…」

希「えりちおはよう……」

にこ「うう…眠い…」

花陽「おはようございます…」

絵里「あら?真姫は?」

海未「あ、そういえば真姫がいませんね」

絵里「にこ、真姫どこいったか知らない?」

にこ「なんでにこに聞くのよ。知らないわよ」

花陽「トイレにでも行ったのかな?」

穂乃果「穂乃果もトイレ行くー」

絵里「まあそのうち戻ってくるでしょう。朝ご飯は私が適当に作っておいたけどいいかしら?」

希「お味噌汁にご飯にお魚…普通やね」

絵里「なによ、何か文句でもあるの?」

希「いや、えりちなら朝からボルシチとか出してきそうやなーなんて」

絵里「そんなわけないじゃ……」


うわああああああ!!



花陽「えっ?なっ何!?」

海未「穂乃果の声……!?穂乃果!何かあったんですか!」

タタタタタタタタ

海未「穂乃果!どうし………!」

穂乃果「海未ちゃん……これ、真姫ちゃん…だよね…?」

海未「ひっ………」

絵里「海未!穂乃果!何があったの!?」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「何これ…血……!」

絵里「きゃああああああああ!!!」

希「えりち!どないし………」

絵里「来ちゃ駄目よ!」

絵里「あの子達にもそのまま部屋にいるよう言って!」

穂乃果「こんなのって嘘だよね……?ほら、真姫ちゃんがトマト食べ過ぎちゃっただけだよね…?ねえ……?」

海未「穂乃果、落ち着いてください……!」

穂乃果「落ち着いてなんかいられないよ!」

海未「穂乃果……」

穂乃果「あっ…ごめん…海未ちゃん……うう……」

海未「絵里、真姫は……?」

絵里「認めたくは無いけれど、脈が無い……。体には何回も刃物で刺されたような後があったわ……」

海未「そんな………!」

絵里「それに、電話が繋がらない……」

海未「何者かが電話線を切った…ということですか?」

絵里「そういうことでしょうね……」

絵里「穂乃果もそんな様子だし、一旦みんなのところに戻りましょう…」

海未「ええ……ん?」

海未「絵里、こんな紙が落ちて…ひっ…」

絵里「………悪趣味ね」

絵里「……みんないるわね」

絵里「希、みんなを見ていてくれてありがとう」

希「それで、何があったんや……?」


絵里「真姫が……トイレの前で死んでいたわ……刃物のようなもので何回も刺されていた……」


凛「絵里ちゃんがそんな冗談言うなんて珍し………」

海未「冗談ではありません!」

凛「海未ちゃん……?」

海未「これは冗談ではありません……私と絵里と穂乃果は真姫が血だらけで横たわっているのを見ました……」

凛「そんな……だって昨日まで真姫ちゃん、あんな楽しそうで……」

希「えりち、海未ちゃん、本当……なんやな?」

絵里「ええ………」

ことり「穂乃果ちゃんも…見たんだね…」

花陽「ぐすっ……こんな…こんなのって……」

穂乃果「………」

絵里「みんな…悲しいわよね……でももうひとつ話すことがあるの」

にこ「嘘よ……」

希「にこっち…?」

にこ「真姫ちゃんが死んだなんて…本当に確かめたの?あなた達がグルになってるんじゃないの?ねえ?ねえ!」

絵里「にこ…落ち着きなさい…」

にこ「落ち着いていられるわけ無いでしょ!?私はね、真姫ちゃんのことがずっと大好きだったのよ!真姫ちゃんを殺されて、しかも真姫ちゃんを殺した犯人がこの中にいるのかもしれないっていうのに!」

花陽「に、にこちゃん…」

にこ「だってそうでしょ!?この島の中には私達9人しかいなかったんだから!誰かが刃物で真姫ちゃんを殺したに決まって「にこっち!」

希「にこっち…にこっちの気持ちも分かる。でも、今までずっと一緒にやってきた仲間を疑うなんて、にこっちらしくない。少し、冷静になるべきや」

絵里「そうよにこ。今私達に出来るのはただ泣き叫ぶんじゃなくて、今後を話し合うことでしょ?」

にこ「………そうね。ごめんなさい。話を続けて………」

絵里「……ええ。海未がこんな紙が真姫のそばに落ちていたのを見つけたの」

ことり「一人目……?」

希「一人目……いうことはこれからも誰かを襲おうとしてるってこと……?」

一同「!」

絵里「ええ…おそらく」

海未「それで……どうするつもりなのですか?」

絵里「そうね……私はまず絶対に一人にならないこと、つまり全員で一緒にいることが大事だと思う」

希「確かに、これで内部で争いが起きて分裂なんてことになったら犯人の思うツボや」

海未「私もそれが最善策だと思います。ですが………」

海未「こんな言い方はしたくいはないですが…この中に真姫を殺した犯人がいると考える人がいるのも無理は無いと思います」

希「海未ちゃん!」

海未「希……分かっています。ですが、この島にこの8人しかいない以上こう考えるのが自然といえば自然なんです…」

海未「ですから、全員でいるのに反対だという人は名乗り出てください。私と絵里と希で勝手に決めてしまうのも良くないですから……」

にこ「……海未」

にこ「私は、みんなには悪いけどこの中に犯人がいると思ってる。もし犯人を見つけたら自分がどんなことをしてしまうか想像もつかない…」

ことり「にこちゃん…」

にこ「でも、今後のことを考えるとみんなで固まっているのが安全だと思うわ」

絵里「にこ…ありがとう」

にこ「………」

希「他のみんなはどうするん?」

花陽「私も、みんなの意見に従おうと思います」

凛「凛も、かよちんと同じだよ」

ことり「ことりもそれが一番安全だと思うな」

穂乃果「………」

海未「穂乃果……大丈夫ですか?」


穂乃果「穂乃果は、海未ちゃんといっしょならどこでもいいよ……」

海未「穂乃果……ありがとうございます……」

絵里「決まったわね……」

絵里「行動するときは必ず二人以上で行動すること。あと、一階のトイレは使わないように……ね」

凛「じゃあ、先にみんなでお風呂入っちゃおうか」

海未「すみません…穂乃果の元気があまり無いので、私達は後で入ります」

ことり「ことりもここにいるよ」

花陽「じゃあ私と一緒に入ろう?にこちゃんも一緒に入らない?」

にこ「………分かったわ」

絵里「希、トイレに行きたいんだけど付き合ってくれない?」

希「んー。ええよ。行こか」





希「………」

絵里「………」

希「……えりち」

絵里「何よ」

希「相当無理してるやろ」

絵里「………」

絵里「さすがに希には隠し通せない、か」

希「昔とは違う。今は仲間がおるんやからこんな非常事態のときくらい頼ってくれてええんやで?」

絵里「………じゃあ少し、胸を貸してもらってもいいかしら」

希「うん………」

トサッ

絵里「私ね…にこの気持ちが凄く良く分かるの」

絵里「もしも殺されたのが真姫じゃなくて希だったら、私もにこみたいに落ち着いていられない状態になってたかもしれない」

絵里「本当、卑怯よね。これは裏を返せば殺されたのが真姫で良かったって思ってるって事なんだから……」

希「………」

絵里「希……私、ね。初めて友達になってくれたあなたがいなくなるなんて嫌……なの……」

希「……ウチはいなくなんてならへんよ」

絵里「私、希以外の誰を信じたらいいか分からないの……」

絵里「でも、怖いのはみんな同じだから私がしっかりしなきゃって……」

希「えりち、苦しいんやったら泣いてもええんやで……」

絵里「ありがとう、希……」




絵里「あれ?三人とももうあがってたの?」

にこ「なんだかゆっくりしようって気にもなれなくてね……」

凛「凛も…」

花陽「私も……」

希「海未ちゃん、穂乃果ちゃんは…?」

海未「今は寝ています。かなりショックを受けているようですね」

絵里「そう……」

にこ「ねえ、みんな」

ことり「?」

海未「なんですか?」

にこ「なんで真姫ちゃんが一番初めに殺されちゃったんだと思う?」

絵里「なによにこ、藪から棒に」

にこ「いや、少し落ち着いて考えてみたのよ」

にこ「真姫ちゃんのすぐそばにはあの気味の悪い「一人目」って書かれた紙があったのよね」

海未「ええ、間違いありません」

にこ「ってことは犯人からすれば少なくとも二人目以降は殺す予定があったってことよね」

にこ「真姫ちゃんが一番最初に殺されたことに意味はあったのかしら……なんて」

希「真姫ちゃんはここの屋敷や島の構造に一番詳しいから、じゃないかな?」

にこ「そうなのよ。多分生き残っていると面倒な人から殺そうとしたんでしょう」

ことり「そう考えるとなんだか計画的に思えるね……」

にこ「それに特定の人を殺したいだけならわざわざこの無人島で計画に及ぶ必要は無いと思う」

にこ「ここから先は私の推測だけど、この「閉ざされた島に9人がいる」「計画性の高い犯行」「二人目以降の殺人を暗示している」という状況から考えて、」


にこ「犯人はきっと、周りの8人全員を殺すつもりなんじゃないかしら……」


海未「っ!」

絵里「そんなことをする動機が、犯人にはあるってことなの……!?」

にこ「動機は分からないわ。しかもこれはにこの予測。でも用心して考えておくことに越したことはないわね」

希「にこっちの言うとおりやね……」

花陽「凛ちゃん…怖いよう……」

凛「大丈夫……かよちんは凛が守るから…!」


~その夜~



ゴソゴソ

にこ(今何時………?午前3時ね……みんなねてから5時間くらいか)

にこ「……少し気持ち悪い。一回洗面所に行こうかしら…」

にこ(絶対に一人になるなって絵里は言ってたけど、こいつらの中の誰が殺人者かわかったもんじゃないんだから一人で行動したほうがマシだわ……)

にこ(可哀想な真姫ちゃん……)

にこ(……)

にこ(洗面所……少し遠いわね……)

にこ(あれ……?なんか頭が痛いし、ふらふらする…)

にこ(にこ、こんなに体調悪かったっけ……?)

にこ(立ってられな…いし……きが……)

バタン



~次の朝、洗面所~


絵里「ひっ……のっ、希っ!」

希「えりち?どうし………」

絵里「に……にこが……にこが……」

希「えりち!しっかりしいや!」

絵里「いやあ………いやあああああああああ!!!」

絵里「私達は……私達はもう………」

希「えりち!」

タタタタタタタ

凛「絵里ちゃん達!?どうかしたの!?」

花陽「どうしたんですか!」

希「二人は部屋に戻ってるんや!」

凛「で、でも………」

凛「……そこに、いるんでしょ……?にこちゃんが……」

希「…………」

凛「……凜はね、真姫ちゃんもにこちゃんも大好きだし二人がいなくなっちゃったのは悲しい」

凛「でもね、思ったんだ。きっと凛達がするべき事は悲しむんじゃなくていなくなっちゃう人を一人でも少なくすることなんだって」

花陽「凛ちゃん………」

凛「凛たちは先に戻ってるね………」

絵里「………凛も、強くなったわね……」

希「えりち……もう大丈夫なんか?」

絵里「本当は、……凄く怖いわ」

絵里「でも、下級生の凛があんなに頼もしいんですもの。私だって頑張らなきゃ」

希「そうやな………」

絵里「にこは……どうなの?」

希「せやな…………」

希「脈は…無い。かといって目立った外傷も無い……」

絵里「泡をふいてる………?」

希「ウチは詳しくないからよう分からんけど………毒ってことなんやろか………」

絵里「………」

希「…えりち?」

絵里「……いえ、ごめんなさい。少し…気分が悪くて……」

希「無理もあらへん………一旦みんなのとこ戻ろか?」

絵里「ええ……」



~リビング~

凛「希ちゃん!にこちゃんは………」

希「それが………」

海未「姿が見えないと思ったら……やはりそういうことでしたか……」

絵里「………」

凛「………」

花陽「私は……私は……ひぐっ……うっ……」

ことり「花陽ちゃん……」

穂乃果「………」

希(穂乃果ちゃんとえりち、ショックが大きすぎて声も出えへんみたいやな……)

絵里「みんなに提案があるの………」

絵里「……ここからは、本当に信じられる人同士で行動することにしない?」

希「え、えりち…?何言って……?」

絵里「私が人として最低なことを言ってるっていうのは分かる。でもね、犯人は私達が全員で固まっていたってにこを殺して見せたのよ……?」

絵里「なら、部屋に閉じこもっていたほうがいくらか安全なはずだわ……そして、けっして広くない部屋に自分が信じられない人といるなんて……出来る?」

海未(絵里も……かなり精神的にやられてしまっているようですね………)

凛「絵里ちゃん……!」

穂乃果「穂乃果もずっとそうしたいと思ってた………」

海未「穂乃果まで……!」

穂乃果「だって、そうでしょ?もうみんな私達の誰かが犯人だって確信してるんでしょ?じゃあ自分の信じられる人と行動するしかないよ……」

絵里「私もね…みんなで一緒に行動することを提案することで、私達の中には犯人はいないんだって自分に思い込ませようとしてたんだと思う…でももう自分の信じるとおりに行動するわ…」

ことり「じゃあ何グループかに別れるの……?」

海未「そうですね……部屋は3つありますから3グループに分かれるのが妥当でしょうか」

希「そうやね」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんと同じグループがいい」

ことり「じゃあ、私もそこに……」

穂乃果「駄目だよ」

ことり「えっ……」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんしか信じられないの。ことりちゃんのことは信じてないの。分かる?」

海未「穂乃果っ……!あなたは…!」

穂乃果「穂乃果ね。すっごく怖いの。穂乃果は馬鹿だから誰が犯人なのか全く見当もつかない。穂乃果の気持ち、海未ちゃんなら分かってくれるよね……?」

希「海未ちゃん」

希(穂乃果ちゃんが精神上まいってるのは見てて痛いほど分かるから、ここは二人で部屋に戻っておいてもらえんかな?)

海未(……分かりました)

海未「では、私と穂乃果は先に部屋に戻っていますね……」

希「うん」

希「さて、ことりちゃん……堪忍な。きっと穂乃果ちゃんも今は精神的にまいってるんやと思う。許したってな」

ことり「うん……」

花陽「じゃ、じゃあ私と凛ちゃんとことりちゃんで部屋に戻ろうか?」

凛「うん。それがいいと思うにゃ」

ことり「二人ともありがとう……」

ことり「じゃあ私達も戻るね」

希「うん。気をつけて戻るんやで」

希「じゃあウチ達も行こか?」

絵里「ええ、そうね…」

希「…………」

絵里「……ごめんなさい」

絵里「私は…本当に最低なことを言ったわ……」

絵里「部屋に閉じこもってるのがいいと思ったのは事実。でも……あんなみんなを忌避するようなことを言ってしまって………」

絵里「でも、あの子達に嫌われてもよかった……私は希しか信じられない………!もし私も希以外とグループになったりしたら穂乃果みたいに酷いこといってたかもしれない………」

希「えりちは悪くない……全ての元凶はこの事件を起こした犯人なんや………」

絵里「希……ありがとう……」

希「……じゃあ、ウチ達も部屋に戻ろか」

絵里「いえ、私達は洗面所に行きましょう」

希「……にこっちを調べるん?」

絵里「ええ。もしかしたら犯人の手がかりがあるかもしれないし」

希「せやね。行ってみようか」


~洗面所~


希「あれ?凛ちゃんに花陽ちゃん?」

凛「にゃ?希ちゃんに絵里ちゃん」

希「何…しとるん?」

花陽「あの…真姫ちゃんのは私達見れないだろうけど、にこちゃんのなら大丈夫かなって…少し綺麗にしてあげたくて……」

希「ああ、泡もふき取って目も閉じてあげて…二人ともありがとう」

凛「………」

希「あれ?ことりちゃんは?」

花陽「少し眠いって言ってたからそっとしておいてあげてます。あ、中から鍵はしっかりかけてます!」

希「そっか。まあ昼やし安全やろ…それに鍵をかけてるなら大丈夫なはずや」

凛「こうしてみるとにこちゃん、眠ってるようにしか見えないにゃ……」

花陽「凛ちゃん大丈夫……?」

凛「凜は大丈夫。強くなるって決めたんだ……」

絵里「あの……二人とも」

りんぱな「?」

絵里「さっきは…酷いこと言ってごめんなさい…私本当にどうしたらいいか分からなくて……」

凛「凜は………」

凛「凛は馬鹿だからどうしたらいいとか良く分からないけど、絵里ちゃんにも考えがあってさっきのことを提案してくれたんでしょ?なら凛は絵里ちゃんのことを信じるにゃ」

花陽「私もです……」

絵里「ありがとう二人とも……特に凛には勇気付けられてばかりだわ…」

凛「そんなこと…絵里ちゃんこそいつもみんなをまとめてくれてて凄く助かってるにゃ…」

希「三人とも!」

希「やっぱりこのメモ落ちとったで……」

絵里「二人目……」

花陽「……」

凛「……三人とも提案したいことがあるにゃ」

凛「少し、凛達で今回の事件を調べてみない?もしかしたら犯人に目を付けられたりしちゃうかもしれないけど、凛はそれでも何もせずにいるなんて出来ない…」

希「奇遇やな凛ちゃん。ウチとえりちも元々それが目的でここにきたんよ」

絵里「ええ、出来るだけのことはするつもりよ」

凛「かよちんは……」

花陽「凛ちゃんが言うならもちろん賛成だよ」

凛「かよちんもありがとね……危険だったらすぐに中止するから……」

希「さて……とりあえず、どこを探す?」

絵里「確かにこの死因は毒…だったわね」

花陽「そ、そうなんですか?」

希「いや、そない詳しいわけもあらへんけど外傷は無いし泡を吹いてたから毒なんやないかなあと…」

凛「なるほど……じゃあ毒の発見を目指そう!」

希「でもそない簡単に見つかるかな?」

絵里「そうね…それに私達の中の誰かが毒を使ったと考えてもそんな強力な毒を女子高生が手に入れることは出来るのかしら…?」

凛「うーん……分からないけどとりあえず色々な部屋を回ってみようよ」

絵里「そうね」

希「じゃあ……にこっち…………」

絵里「にこ……」

花陽「にこちゃんにかけてあげようと思ってタオル持ってきたんです……」

希「花陽ちゃん、ありがとうな………」

凛「にこちゃん…絶対凛が犯人を捕まえて見せるからね……!」


~一部屋目~

絵里「ここは……穂乃果と海未のいる部屋ね……」

凛「海未ちゃん!凛達だよ!開けて!」

ガチャ

海未「あら、4人とも…どうかしましたか……?まさか、また被害者なんてことは……!」

希「違うって!今私達で少しこの辺りの部屋を見てまわってるんよ。何か手がかりでも落ちてないかと思って」

海未「そういうことでしたか……それならよいのですが、あまり動き回ると危ないかもしれませんよ?」

凛「うん。気をつけるよ。それで、この部屋の中も一応見せて欲しいんだけど」

海未「もちろん構いません……と言いたいところですが…」

花陽「?」

海未「今、穂乃果が中で寝ています。先ほどまでずっと泣いていて疲れてしまったようです。ここで凛達を中に入れて、穂乃果が起きてしまったらまたなんて言い出すか…」

凛「そうだね……じゃあまた都合が良い時に見せてもらうよ」

海未「すいません……」

絵里「いえ、いいのよ。穂乃果のことしっかり見てあげててね。……それと、さっきは酷いことを言ってごめんなさい……」

海未「いえ、こんな状況ですから不安になってしまうのは仕方が無いことです。気にする必要はありませんよ、絵里」

絵里「ありがとう、海未…」

海未「捜索、気をつけてくださいね?」

絵里「ええ。また後で」

バタン

凛「後で来るしかなさそうだね」

希「そうやな。次は二階行ってみる?」

~二階~

花陽「ここの部屋、なんか他の部屋とドアが違います……何でしょう?」

絵里「ここは、真姫が言っていた真姫のおじさまの部屋じゃないかしら?」

凛「開けてみてもいいかな?」

希「こんな状況やし、開けないわけにはいかんやろうね」

ギイイイイイ

凛「おお………」

希「映画に出てくる外国の書斎って感じやな……絵とか本とか一杯飾ってあるし」

花陽「騎士の飾り物なんて初めて見ました……」

凛「かっこいいにゃ」

絵里「特に怪しいビンとか薬品とかそういった類のものは見当たらないわね……」

希「そうやな……うわ、あのお面怖!」

凛「凛の分かるものが全然ないにゃあ……あ!」

花陽「り、凛ちゃんどうしたの?」

凛「このタバコはお父さんが吸ってるやつと同じだなあと思って」

絵里「うわ、机の棚の中タバコだらけね……相当のヘビースモーカーだったみたいね」

凛「なんかこういう洋風な椅子に腰掛けてる人って葉巻を吸ってるイメージない?」

絵里「まあ分かるけど」

希「………外国産のを輸入するのが面倒だったとか?」

絵里「っていうかそんなのどうでもいいじゃない……」

花陽「あはは……」

希「ここにも特に目立ったものはないみたいやな」

絵里「そうね……」


~リビング~


凛「疲れたにゃあ…」

絵里「そうね……おじさまの書斎の後、ことりと花陽と凛の部屋、私達の部屋、キッチンルームと回ってみたけど特に目立ったものもなかったしね…」

希「一応、電話も探しては見たけど玄関横にあるすでに線が切られた黒電話のみ……」

花陽「合宿が終わって、船が迎えに来るのが明後日の夕方……」

絵里「……後二日よ。二日」

絵里「二日耐えれば私達は帰れるの…帰って、警察に連絡して、いつも通りの日常に……」

凛「でも、真姫ちゃんとにこちゃんは、いないにゃ……」

絵里「………」

凛「……凛はそろそろ戻るよ。ことりちゃんも一人で寂しいだろうし。かよちん行こ?」

花陽「あ、凛ちゃん待って……」

凛「絵里ちゃん、希ちゃん、おやすみ」

希「おやすみ…」

絵里「ええ……」

バタン

希「……」

希「色々探し回ったのに何も見つけられないっていうのも精神的にくるものがあるなあ……」

絵里「そうね……」


~二階の三人部屋~

凛「ことりちゃん、凛達だよー」

ガチャ

ことり「二人ともおかえり」

ことり「捜索はどうだったの?」

凛「うーん……特に何も見つけられなかったよ……」

凛「色々探せば何か見つかる!って思ってたからちょっとショック……」

ことり「そっか……みんなが頑張ってくれてる間に寝ててごめんね?」

凛「ううん、凛達が勝手に始めたことだから。こっちこそ捜索の途中に起こしちゃってごめんね?」

ことり「ううん、結構体調も良くなってきたし大丈夫だよー」

花陽「………」

凛「かよちん?」

花陽「え!?な、何!?」

凛「いや、ずっとバッグの中見てるからどうしたのかなーって思って」

花陽「な、何でもないよー」

凛「そう?あ、服忘れたとかだったら凛が貸してあげるよ?」

ことり「花陽ちゃんがそんなうっかりするかなあ?」

凛「かよちんは意外とうっかり屋さんだにゃ!この前も……」

花陽(凛ちゃん……ごめんね……)



~次の朝~

希「……りち……えりち!」

絵里「な、何っ!」

絵里「折角寝てたのに……今は…まだ朝の4時半……?」

希「二階から怒鳴り声が聞こえる」

絵里「えっ……」

希「この声……少なくとも男の人の声ではないね……」

絵里「…確かに聞こえるわ」

希「……もしかしたらまた……」

絵里「希……!行きましょう!」

希「うん!」



~二階廊下~

ことり「――――だよ!」

凛「――――で…」

希「ことりちゃんと凛ちゃん……」

絵里「なんで言い争っているの…?凛なんてもうことりにつかみかかりそうじゃないっ……!」

希「凛ちゃん!ことりちゃん!」

凛「希ちゃん!」

絵里「凛、ことり、何があったか説明しなさい!」

凛「かよちんが……かよちんが殺されたんだよ!ことりちゃんに!」

絵里「!」

ことり「だから私は……!」

希「ことりちゃん……どういうことや?」

ことり「ひっ……ち、違うの!私は何も………」

希「おどかすつもりはないんや……落ち着いて、状況を説明して……?」

ことり「う、うん。あのね、私、昨日はずっと寝てたから今日は早く目が覚めちゃったの。それで外の風に当たろうと思ったら、ベランダで手首から血を流してる花陽ちゃんがいて…私、本当に怖くて叫んだの…そしたら凛ちゃんも起きて、花陽ちゃんを見つけて、私がやったんだ!って…私は…私はやってないのに……!」

凛「違う!」

凛「ことりちゃんが……そいつがやったに決まってる!凛達は鍵を閉めてたし朝起きたときも閉まってた!内部の人の犯行ならもう犯人は一人しかいないでしょ!」

ことり「そんなこと言ったら凛ちゃんだって………」

凛「凜がかよちんを殺したって言うの!?昨日だって体調悪い振りして部屋でコソコソ細工でもしてたんでしょ!」

ことり「そんなことやって……」

絵里「二人とも落ち着きなさい!」

ことり「………」

凛「絵里ちゃんには凛の気持ちは分からないよ!すぐそばに殺人鬼がいるのにそれにも気付かずにかよちんを殺されて!凛は……凛はかよちんを守るって約束したのに………!」

絵里「凛………あの時の凛はどこにいったの………?」

凛「あの時……?」

絵里「にこが殺されちゃったとき、あなた言ったわよね?いなくなっちゃう人を一人でも少なくすることが自分のするべきことだ、って私、あの時は本当に追い詰められていてまともな思考が出来なかったわ。でも、それを凛が救ってくれた。あの時の凛なら、ここで感情に任せて怒鳴り散らすんじゃなくてもっと冷静に話をしていたはずよ………?」

絵里「凛……強い凛に戻って………!」

凛「絵里ちゃん………」










凛「でも、ごめんね?」

グサッ

ことり「えっ……?」

希「!」

凛「やっぱり許せないの」

グサッ

ことり「うあっ!」

絵里「ああ…………ああああああ………」

凛「かよちんの事だけじゃなくてね」

グサッ

ことり「うっ!」

希「り……凛ちゃんやめて……!」

凛「来ないでよ!」

希「ひっ……」

凛「そう……そうやって絵里ちゃんと凛ちゃんはみんなを殺した殺人鬼が死んでいくのを見てればいいの……」

凛「近づいたら、殺すから」

希「………凛ちゃん!」

絵里「やめて希!」

希「えりち!離して!」

絵里「嫌よ!希が殺されるなんて嫌!一人にしないで!私を一人にしないで!」

希「でもことりちゃんが……!」

絵里「一人は嫌なの……分かってよ希分かって私の気持ちあなたなら私のこと分かるでしょだってあなたは私の一番の親友でそれでいつも私のそばにいるって約束したんだからずっといなくならないでここにいてねえ……ねえ……」

希「………」

凛「絵里ちゃんもう少し希ちゃんのこと押さえててね」

グサッ

ことり「うぐっ……!」

凛「…………逃げないで」

グサッ

ことり「ああ………あ……」

凛「あと何回で動かなくなるのかな」

グサッ

ことり「あ…………」

凛「………」

グサッ

ことり「………」

凛「……もう、動かないよね?」

希「り……凛ちゃ…」

凛「来ないでって言ってるでしょ」

凛「何回も言わせないで」

希「………」

凛「もう、みんなを殺した犯人は殺した。でも、今生きている人達から見れば状況はあんまり変わってないんだろうね」

凛「だって、今日からは凛が殺人鬼なんだから」

凛「でも、心配しないで。凛とかよちんを二人きりにしてくれるならみんなに何かする気はないから」

凛「これでみんな安心でしょ?ねえ?」

凛「じゃあ……ね?」

バタン





絵里「希……部屋に戻りましょう!」

希「………」

絵里「希……!もう全部終わったんだからいいでしょ?どこに行くの!?」

希「………」

絵里「ねえ!」

希「…えりちも本当はわかっとるんやろ」

絵里「な……何が?」

希「ことりちゃんが一連の事件の犯人じゃないって事」

絵里「え……いや……」

絵里「え……いや……」

希「部屋にことりちゃん、花陽ちゃん、凛ちゃんしかいない状態で誰かが死ねば残りの二人が疑われるのは当然。今までの犯行から見ても犯人はそんな無用心なことをするとは考えにくい」

絵里「…………」

希「それに、さっきの態度を見る限り凛ちゃんも犯人ではない」

希「じゃあ、海未ちゃんか穂乃果ちゃんがこの事件の真犯人だと考えるのがうちらにとっては自然なはずや」

絵里「………そんなの私だって分かったわよ」

絵里「………でも、わざわざ犯人に会いに行くようなことはしたくない……」

希「うちだってそうや。でもここで止めないとまた犠牲者が出るのは間違いない……それになにより、ここまでウチ達をバラバラにした犯人が許せない……!」

絵里「………私は反対だけれど、そこまで言うのなら少しでも武装していきましょう?何も無いよりはマシなはずよ」

希「………そうやな」


~1階~

希「海未ちゃん、穂乃果ちゃん、いる?」

ギイ……

海未「希と絵里、ですか……」

希「穂乃果ちゃんは……?」

海未「誰にも会いたくない、と……」

希「ちょっと今はそういう事をいってるような状況でもないんやけどなあ………」

希「もう生き残ってるのはウチら二人に海未ちゃん、穂乃果ちゃん、凛ちゃんだけ」

海未「そんな……いつの間に……」

希「……意外と、驚かへんのやな?」

海未「いえ……覚悟はしていた、というだけです。もっともここに閉じこもっていた私が言えるようなことでもないですが……」

希「凛ちゃんはもうほとんど狂ってる。二階には近づかんほうがええ。殺されるよ?」

海未「一体……どうなってるんですか……?」

~説明中~

海未「ですが、それだとことりが犯人だとは言いにくいのでは……?」

希「もちろん、ウチもそう考えた。だから……」

希「ウチ達は海未ちゃんか穂乃果ちゃんが犯人だと考えてる」

海未「……なら、私も言います」

海未「あなた達のどちらかが犯人です」

希「そうなる……よねえ」

海未「私達はずっとこの部屋に閉じこもっていました。犯行を行いやすいのはそちらのはずです」

希「そんなこと言ったら二人がずっと部屋に閉じこもってたっていう証拠は無いや?ある意味で誰にも悟られず動くことは出来たはずやで?」

海未「………」

希「………」

海未「………埒が明きません」

希「………そうやな」

海未「………」

希「………」

海未「……あまりあなたと話しているのも良い気分ではないので、もういいですか?」

希「……こっちもや。ここからお互いに部屋から出ずにおればそのうち船が来る。またその時に、な」

バタン

穂乃果「海未ちゃん………大丈夫?」

海未「……穂乃果は何も心配する必要はありません」

海未「私が……守ります」


~希、絵里の部屋~



絵里「……これでもう、終わりよね…?」

希「そうやな……凛ちゃんが心配やけど…」

絵里「どっちにせよ…私達はもう元には戻れないわ…」

絵里「これから……どうすればいいんだろう」

希「生きているみんなとも、もう元の関係には戻れへんね……」

絵里「……ええ。合宿に来るまではあんなに楽しかったのに……」

希「そうやね……なんか凄く昔のように思える……」

絵里「私ね……まだどこかでこの事件の犯人が私達のうちの誰かじゃなかったらいいのにって思ってるの」

希「………」

絵里「本当は、この屋敷のどこかにもう一人知らない人が住んでいて誰もその人を見ていないの」

希「………」

絵里「だから、今までのことは全部その人のせい……なんて、そんなことあるはずないのにね……」

希「……でも、この出来事自体が夢かもしれないよ?」

絵里「希は優しいわね……でも、これが現実で、犯人は私達の中にいるっていう現実を私は受け止めなくちゃいけないの」

絵里「………少し、泣きたいの」

絵里「胸を貸してくれる?」

希「……もちろん。泣きたい時は泣いたらいいと思うよ……」

絵里「ありがとう………希」

絵里「希と私は…ずっと友達よね?」

希「当たり前やん。元の生活に戻ってもウチらの関係は絶対に変わらないよ?」

絵里「嬉しい……」

希「……急にそんなこと聞いてきて、どうかしたの?」

絵里「……この合宿で、私が不安な時も希はいつも励ましてくれたでしょ……?」

希「ウチはそんな大層なことしたつもりは無かったけど……」

絵里「私にとっては大きいことだったのよ」

希「そうなん?」

絵里「そうなの」

絵里「でね……凄く希に助けられたし、ちょっと…ちょっとだけカッコいいと思ったし」

希「今日のえりちは素直やねえ」

絵里「頭を撫でないで……」

絵里「だから……ね?もし希が良かったら……私と一緒に暮らさない?」

希「一緒に暮らす……って同棲ってこと?」

絵里「そ…そうよ?いいの?駄目なの?」

やはり事前にキャラ崩壊だということを伝えておいた方がよかったですね・・・
初SSなもので、不快な思いされた方がいましたらすいません。

ラブライブは好きです笑

希「そうやなあ……ウチらまだ高校生やしなあ……」

絵里「高校生で同棲している人達だっているわ」

希「そうはいってもやなあ……」

絵里「………希は私と暮らすの嫌なの?」

希「嫌っていうわけではないんやけどな」

絵里「じゃあ何か理由があるの?」

希「うーん、まあ理由っていうか……」

絵里「何?何でも言ってよ」



希「ウチがここでえりちを殺すから、なんやけどな」



絵里「いや、なに言ってるの………?」

希「何って、えりちのお腹に刺さってるやん。包丁が」

絵里「あ……ああ………そんな……嘘よね?希……?」

希「えりちは声はあげへんのね」

絵里「いやっ!」

ダッ

希「廊下に………」

絵里「うっ………ハアハア……」

絵里「希が私の事を刺したなんて嘘よ……だって希は私を助けてくれて…」

希「ウチはえりちのこと好きどころか、嫌いやったけどなあ…」

絵里「う……嘘…!そんなの嘘よ!」

希「嘘ならこんなことするわけないやん……いつものかしこいえりちなら分かるはずなんやけど……」

絵里「う、海未っ!穂乃果!いるんでしょ!?助けて!?」



~海未、穂乃果の部屋~



穂乃果「………ふぁあ」

穂乃果「また寝てた………海未ちゃあん………」

穂乃果「………あれ?海未ちゃんは……?」

穂乃果「う、海未ちゃん!海未ちゃん!」

穂乃果「ト、トイレに行っちゃったのかなあ……」

穂乃果「怖い………」

穂乃果「……?」

穂乃果「廊下から声が聞こえる…?」

「……!…乃果!………でしょ」

穂乃果「穂乃果のこと呼んでる…?海未ちゃんかな………?」

ガチャ


---
--


絵里「ほ、穂乃果……助け……!」

希「えりち」

ガンッ

絵里「ぐっ…………」

穂乃果「ひっ………」

希「穂乃果ちゃん………腰が抜けてしもたん……?」

希「ならそこでゆっくり見ててね……」

穂乃果「海未ちゃん……海未ちゃあああん!」

海未「穂乃果!?」

希「海未ちゃん…来たんやね」

絵里「ぐっ……海未!希を…希を止めて!」

海未「………」

絵里「う、海未………?」

海未「………すいません」





海未「絵里……私には、出来ません」

絵里「どういうこと……!?っぐ……!」

希「どういうことってそういうことやん」

希「人狼ゲームは、人狼と市民が同じ数になったら負けなんやで?えりち」

絵里「っ………」

絵里「…………」

希「えりちが死んで……」

希「………穂乃果ちゃんで、終わりやね」

穂乃果「う、海未ちゃんっ!」

ギュッ

海未「穂乃果………」

希「海未ちゃん……どいて?」

海未「………」

海未「……穂乃果だけ、見逃すわけにはいかないでしょうか」

希「……今更何言っとるん?」

希「この合宿でうち達二人以外の七人を殺す。……これは決定事項やったはずやで?」

52の部分は完全に誤字ですすいません笑

海未「………やっぱり、穂乃果が殺されるのを黙って見ているなんて出来ません……」


希「えりちが助けを求めても見捨てた海未ちゃんがよく言うね?」


海未「そ、それは………」


希「つまり、海未ちゃんにとって穂乃果ちゃんは特別な存在、いうことやろ?」


希「なら、なおさら殺んとあかんなあ…」


海未「ま、待ってください!穂乃果は私と希の仲を邪魔するような存在ではありません!」


希「信じられへんなあ……」

海未「そ、そんな………」


希「涙目の海未ちゃんも可愛いけど……穂乃果ちゃんは特に嫌なんよ」


海未「だったら………」



海未「穂乃果を殺すなら、私も死にます」



希「何を言っとるん?」


海未「……それくらいの覚悟があるということです」


希「……本気?」


海未「もちろん」

希「………」


海未「………」


希「……分かった。でもな、ウチらがしたことはすぐにバレる。その時に一緒に逃げるんは海未ちゃんだけやで?」


海未「………」


海未「分かりました………」


穂乃果「………」




――――――――――――――


―――――――


――――


海未「はい!では、今日の練習はここまでにしましょう!」


私は叩く手を止めてそう言いました。


穂乃果「今日も疲れたよー!」


凛「穂乃果ちゃんは元気そうだにゃあ!」

穂乃果「そういう、凛ちゃんだってー!」


希「二人とも元気そうやね」


海未「希」


希は私の横に来て、そう言いました。


希「海未ちゃん、一緒にストレッチせえへん?」


海未「ええ、もちろんいいですよ。最近は希とばかりですね」


希「嫌なん?」


海未「まさか」


私がそう言うと、希はにっこりと笑いました。


面と向かっては恥ずかしくて言えませんが余裕を持ってみんなと接することの出来る希に私は少し憧れています。


希「海未ちゃんはやっぱり体、柔らかいなあ」

海未「毎晩ストレッチしてますからね」


話しながらも希はしっかりと私の体を押してくれています。が……


海未「………少し、くっつきすぎではないですか?」


希「そお?」


希はそう言うと、更に体をくっつけてきました。
絶対分かっていてやっています。


海未「わ、私はもう十分です」


希「うーん?ストレッチはしっかりやっておいたほうがええで?」


また、希はにっこりと笑いました。
希のこんなところが、私が憧れている部分でもあり、絶対に真似出来ないとも思う部分です。


海未「も、もう十分ですっ!」


希「そう?じゃあ次はウチの番ね」


意外とあっさりと希は引いてくれました。


絵里「なんか最近いつも希と海未は一緒にストレッチしてるわね」


海未「そ、そうですか?」

少し、言葉を詰まらせてしまいました。
すぐに表情や言葉に自分の気持ちが出てしまうのは私の悪い癖だと思います。


希「えりち、もしかしてウチとストレッチ出来なくて寂しいん?」


絵里「違うわよ……少し気になっただけ。まあ、なんにせよ仲が良いのは良いことね」


希「寂しくなったらいつでも言ってくれてええよ?」


希が悪戯っぽく笑います。


絵里「全く希は……」


やれやれ、といった様子で絵里は他の人とストレッチしにいきました。


希「さ、じゃあ続きしよか?」


海未「あ、あの。ありがとうございました」


希「ええよ。海未ちゃんは隠し事が苦手やし。まあ、それが可愛いところでもあるんやけどね」


海未「可愛いなんて、そんな………」


本当は嬉しいのに、こうやって少し謙遜してしまうのも私の悪い癖です。

希「ふふっ。じゃあ、ウチの背中押してね?」


海未「は、はい」


慌てて希の背中を押します。


海未「希の背中は柔らかいですね……」


希「もしかして、ウチ太った……?」


海未「あ、いえそういうことではなくて…なんだか、希の背中は……安心します」


周りには私達のメンバーがいるのは分かっているのに、思わず希の背中に体をすべて預けてしまいました。


希「少し、くっつきすぎではないですか?」


海未「……私の真似ですか?」


希「似てる?」


海未「中々似ています。さすが希ですね……」


希「海未ちゃんのこと、見とるからな」


海未「………」


希「………」

希「あの………そんな長いことくっついてるとみんなに怪しまれるで?」


海未「私がこうしたいからこうさせて下さい……」


希「我侭やなあ……」


先ほど私が希にくっつき過ぎないように言ったこととこれとは話が別です。


海未「希……」


希「何?」


陽はもうオレンジに染まり、校庭に人はいません。この屋上も練習後独特のゆったりとした時間が流れており、時間そのものがゆっくりになっているように感じられます。


海未「希……好きです…」


希「………」


少し、希が驚いています。無理もありません。私からこんなことを言うなんて滅多にないのですから。


希「海未ちゃんから言ってくるなんて珍しいね……ウチも海未ちゃんのこと、好き。大好き」


私と希は付き合い始めて今日で一ヶ月ちょうど。だから私も柄になくこんな顔から火が出てしまうようなことを言ったのかもしれません。

―――
――



にこ「海未達もクレープ一緒に食べに行かない?」


練習が終わって校門のあたりにさしかかると、そうにこが話しかけてきました。


海未「そうですね……」


今日は希家にこのまま泊まりに行く予定でした。いくら希の家が一人暮らしとは言ってもあまり夜遅くお邪魔するのも気が引けますし、
断ったほうがいいのでしょうか。


希「あ、行く行く。海未ちゃんも行くよね?」


海未「え?この後の予定は…?」


希「え?予定って?」


希が何も知らない、というような顔をしました。


希(海未ちゃん、ちゃんと話合わせて)


海未(あ、そういうことですか)

コソッと希が私に耳打ちをしました。


にこ「何コソコソ話してんのよ。来るの?来ないの?」


希「にこっち冷たいなあ。海未ちゃんとウチは行くよ」


にこ「そう。じゃあ結局全員ね」


そう言うとにこは私達から離れて携帯を触り始めました。


希「本当に海未ちゃんは隠し事が苦手やなあ……」


いい加減あきれた、という感じで希はため息をつきました。


海未「すみません……」


私と希が付き合っていることはメンバーの誰も知りません。いえ、知らないというよりは私達が言っていないのです。


私と希は同姓です。多少世の中からの理解が得られてきているとはいえ、まだまだ一般には受け入れられにくい関係です。


もちろん、メンバーのみんなを信頼していないわけではありません。彼女達が私たちを受け入れてくれる可能性は十分にあります。


ただ、今はラブライブ直前です。受け入れてくれたとしても動揺させてしまうこは確実でしょう。

だから、少しでも練習やライブに悪影響を及ぼさないよう私と希はこの関係を隠しています。


もちろん、ラブライブが終わったら全てを告白するつもりです。


ただ、本当にみんなが私達を受け入れてくれるのか。とても不安です。


海未「………」


希「…海未ちゃん。悩み事?」


また、ぼんやりとしてしまいました。
横には全てを見透かすような希の瞳があります。


海未「いえ、何でもありません」


希「そう?」


希は、それ以上何も聞いてきませんでした。


希「あ、そういえば海未ちゃ」


穂乃果「うっみちゃーん!」


海未「うわっ!」


穂乃果「あっ、ゴメン!」

穂乃果に盛大に飛び掛られて、しりもちをついてしまいました。


海未「全く穂乃果は……」


いつも通りすぎて怒る気にもなりません。


海未「何か用ですか?」


穂乃果「海未ちゃんもクレープ食べに行くって言うから嬉しくなっちゃっただけ!」


海未「食べに行くことくらい何回でもあったでしょう?」


穂乃果「いや、最近はそんなに無かったよー。なんでか知らないけど」


ぷーと穂乃果が頬を膨らませます。


確かに最近は希と二人きりでいることが多くて、あまり穂乃果達と遊んでいませんでしたね。


希「………」


海未「あ、すいません希。先ほど何か言いかけていませんでしたか?」


希「あ、いや。大したことじゃないし別にええんよ」


あはは、と希が笑いました。
大したことではないならいいんですが。


穂乃果「ほら、もうみんな行っちゃうよ!二人も早く行こう!」


海未「ちょっ……引っ張らないで下さい!」


穂乃果「いいから~。ほら、希ちゃんも!」

希「ん?ああ、そうやな」


ぐいぐいと穂乃果が私を引っ張ります。幼馴染としてもう少し落ち着きを持って欲しいものです。


希くらい、とまでは言いませんが。


海未「希、行きますよ!」


希「………」


海未「希?」


希「……あ、うん。早く行かないとね」


海未「…何か考え事ですか?」


先ほどから希の様子が少しおかしいです。何か考え事をしているのでしょうか。


希「いや、本当に大したことないんよ。ほら、早くいこ!」

そう言って希は私の手を引きました。


穂乃果「お、いいねえ希ちゃん!」


希「穂乃果ちゃんには負けへんで~」


海未「ふ、二人とも待ってください!」


希「あはは」


ずるずると二人に引っ張られてしまいます。


良くある日常の楽しい風景。でも希の様子が少しだけ気になりました。


鈍感だ、といつもからかわれている私が気付くのですから、十中八九希には何かあるはずです。


相談事なら何でも私に相談してくれればいいのに、と思うと同時に、私は希に信用されてないのでは、と少し不安になりました。

真姫「クレープ、って中々美味しいのね」


海未「真姫はクレープを食べたことがなかったんですか?」


真姫「何よ。悪い?凛達にはラーメン屋ばっかり連れて行かれるから来る機会が無かっただけよ」


そう言って真姫はクレープをかじりました。……少し、真姫にクレープは似合わないなと思ってしまいました。


家が道場の私がいうのもなんですが。


海未「真姫……生クリームをこぼしています……」


真姫がかじりついた方と逆側の方から生クリームが押し出され、溢れて手に付き、地面にまでに落ちています。


真姫「え……?」


真姫は何のことだか分からない、というような表情をした後、手に付いている大量のクリームに気が付いてぼっ、と顔を赤くしました。


真姫「……し、仕方ないでしょ!初めてなんだから!」


私は別に責めたつもりはなかったんですが。


海未「別に、怒ってるわけではないんですから………はい」


真姫にハンカチを差し出します。


真姫「そんな……悪いわ」


海未「たかが、ハンカチですよ」


真姫「でも………」


海未「私達は仲間ですから。仲間なら助け合うのが当然でしょう。……そんなに大げさなことでもありませんが」

私はにっこりと、笑って見せました。


真姫「……ありがとう。洗って返すわ」


真姫はハンカチを受け取り、バッグにしまいました。


海未「別に構いませんよ」


真姫「これくらいさせてほしいわ」


海未「まあ、真姫がそういうなら」


思わず、笑みがこぼれてしまいました。


真姫「何かおかしい?」


海未「いえ、真姫らしいなと思いまして」


真姫「何よそれ」


真姫も笑いました。


真姫「こうして海未と二人で話すのもなんだか久しぶりな気がするわ」


海未「そうですか?曲作りのときは結構話していると思うのですが」


真姫「まあ、それもそうだけど。海未って最近は希と一緒にいることが多いじゃない?だから、少し話しかけづらかったのよね」


海未「そ、そんなに私と希って仲良く見えます?」

……私、明らかに動揺しています。自分でも分かるくらい。


真姫「ええ、最近は特にね」


海未「そうですか……」


少し、希と距離を置くことを考えるべきでしょうか……?


でも話せなくなるのは嫌ですし……考えどころです。


真姫「最近、といえば希と話している時の海未はなんというか…少しはしゃいでいるように見えるわ」


海未「ほ、本当ですか?」


真姫「いや、私はいいと思うわよ。凛くらいまでとは言わなくても海未も少しくらいはしゃいでもいいと思うわ」


海未「そういうものでしょうか……?」


希との関係はバレていないようですが、私がはしゃいでいるように思われているていうのはやはり気恥ずかしいです。


凛「真姫ちゃん、呼んだかにゃー?」


真姫「呼んでないわよ」


凛「真姫ちゃん冷たいにゃー」


唇を尖らせて、にゃーにゃー言いながら凛はみんなの方に戻っていきました。


海未「練習中にはあんまりその……はしゃぎ過ぎないように気を付けますね」


真姫「別に気にしないでいいわよ。……私はそっちの海未も嫌いじゃないわ」

海未「嫌いじゃない……とは?」


真姫「いや、だから、………好きってことよ」


海未「………今日の真姫は嫌に素直ですね」


真姫「いいでしょ?仲間には素直でも」


仲間、という単語を強調して真姫は笑いました。


海未「私も、みんなのことが好きですよ」


真姫「私の事も?」


海未「ええ、もちろん」


真姫「………」


真姫「……海未は変なところ素直で羨ましいわ」


真姫の顔は心なしか赤くなっているように見えます。


その表情は私の事を羨ましがっている、と形容するには少し違う気がしました。


だから


海未「真姫、顔赤くないですか?」

真姫「……うるさい」

顔が赤い理由を聞くことは出来ませんでした。

女子高生というのは中々に理解の難しい生き物だと感じました。


希「二人とも楽しそうやんな?」


海未「希」


ポンと肩に手が置かれ、振り返るといつも通りニコニコした希がいました。


海未「ええ、真姫が今日は少し素直みたいなので」


希「へえ…………?」


真姫「べ、別にいつも通りよ!」


希「何話してたの?」


真姫「え?」


希「海未ちゃんと何話してたの?」


真姫「いや、別に大したことは………」



希「ウチは何話したのって聞いてるんやけど………?」



海未「希?」

希はいつも通りの笑顔のままです。


ただ、語気が違うというか雰囲気が違うというか、とにかくいつもと何かが違いました。


真姫「別に何を話してたって……」


希「そんなんええから何話してたのかを聞いてるんやけど」


真姫「何よ……?希、あなた変よ?別に何を話してたっていいじゃない」


海未「そ、そうですよ希。何かあったんですか?」


希「……もうええ」


スッと希の笑顔が消え、私達に背を向けました。


希「海未ちゃん、帰ろう」


ボソッと、普段からは考えられないくらい暗い声で言いました。


海未「えっと……それはいいんですが、みんなにも言わないと」


希「真姫ちゃん、言っといてくれるよね?」


真姫「え………」


希「言っといてくれるよね?」

真姫「え、ええ……分かったわ……」


有無も言わせない、とはこういうことなんでしょうか。


真姫も今の希の様子に少し怯えているようでした。


希「じゃ、行こうか」


こちらには顔も向けず、希は言いました。


―――
――



海未「あの………?私何かしましたか?」


希「………」


帰り道。


私が何度質問をしても希は返事をしませんでした。


海未「………」


希「………」


無言で信号を渡り。


海未「………」


希「………」


無言で坂を上り。


海未「………」


希「………」


希の住んでいるマンションの階段を上がります。


希が住んでいる部屋の前まで来たときでした。


希「………もう限界が来たんよ」


希が、ポツリと呟きました。


海未「………何の限界ですか?」


希「毎日毎日、海未ちゃんが他の人と楽しそうにしてるのを見るのが嫌なの……」

海未「私が他の人と楽しそうにしてるのが嫌………?」


希「そう」


こちらを見た希の目はどこか狂気じみていて、でも口元は確かに歪んでいました。


希「世界中から私達以外いなくなればいいのにね」


希はそう言って。




そっと私の首に手をかけました。




海未「え………?」


グッと手に力が入ります。


海未「や………やめて下さ……」


喉を掴まれているのですから、当然声は出ません。


更に力が強くなります。


海未「ゴホッ……」




私は、希のことを世界で一番想っていると、そう思います。


希が今、私を殺そうとしてるのは希が我侭だからでしょうか。他人の目の届かない場所に一生私を置いておきたいという我侭を望んだ希が悪いのでしょうか。


……多分違います。私が悪いんです。希のことを理解してあげられなかった私が悪いんです。


でも、まだ遅くありません。希のことを理解してあげることは出来ました。それではどうするか?

希と共に生きていく覚悟をしましょう。


初めから、私にとって一番大切なのは希です。


彼女のために。彼女のために私の人生を使いたい。そう思いました。




ドンッ




そう考えた瞬間、勝手に体が動き私の上に馬乗りになっていた希を突き飛ばしていました。


海未「ゲホッ!ゴホッゴホッ!」


激しく咳き込みます。


海未「希!」


私は、突き飛ばされて唖然としている希の肩を掴みました。


海未「私が他の人と話したり、触れ合ったりするのが嫌なら………」






海未「全員、殺せばいいんです」





希「え………?」


海未「そうすれば、もう希が苦しむことはありませんよね?」

希「……本気?」


海未「本気です」


希「………海未ちゃんに人を殺せるの……?」


海未「……………分かりません」


希のために何でもしてあげたい、それは本心です。


でも実際に人を目の前にして殺すことなんて本当に出来るのでしょうか。


希「………ウチがやるからええよ」


海未「………希が手を下す、ということですか?」


希「うん」


希「そうと決まったら、準備しよか」


希は立ち上がり、スカートについた砂をパンパンと払いました。


希「ほら」

差し出された手をつかみ私も立ち上がりました。




ふと、外を見ました。音ノ木坂は都会ですから星はそう多くは見えません。


でもその代わりに月がくっきりと浮かび上がっています。


月の綺麗な夜に殺人の計画なんて、少しお洒落だと思いませんか。








希「大体、こんなもんでいいかな?」


海未「そうですね……いえ、私はよく分かりませんが……」


希がその計画を話し終えた時、私はいまいち理解できていませんでした。


私が発言したことといえば「夏休みに合宿がある」ということくらいで、計画のほとんどは希の発案です。

誰を最初に殺す、とか凶器は何、とか次々と希はメモにとっていきました。


更に驚いたことに、希は「誰が殺されたら、誰がどんな行動をとる」というような人の心理から来る行動をも計画に含めています。


海未「本当にみんなこの通りの行動をとるんでしょうか」


希「十中八九、大丈夫やと思うよ」


海未「凄い自信ですね……」


特に、「花陽が恐怖に駆られて自殺」なんて本当にあるんでしょうか・・・?


希「まあ、みんなのことはかなり見てきた自信があるからね」


海未「あれ?」


メモを見て狂気に書かれている「毒」というの物に目がとまります。


海未「この、毒というのはどうやって用意するんですか?」


希「それは、もちろん作るんよ」


海未「毒って手軽に作れるものなんですか………?」


希「まあ、材料自体はそんなに難しくは無いけど………あ、あれが足りない」


希はピン、と指を立てました。


希「煙草」


海未「煙草ですか………?」


希「そ、煙草。煙草に含まれてるニコチンは二、三滴たらすだけで人を殺せる、猛毒なんよ」


海未「そ、そうなんですか……」


希「そういうわけで、海未ちゃんに買ってきてもらおうかな」


海未「な、何で私なんですか!?」


希「いやー、この辺だとウチは顔知られてるから買えないんよ」

海未「私、高校生なんですけど………」


希「大丈夫やって。滅多なことじゃ身分証明書出してーなんていわれへんよ」


海未「しょうがないですね………」


希「あ、制服のままはまずいからウチの服に着替えてな」


ちょい、と希が指差した先には綺麗に折り畳まれた服がありました。


海未「もう………こんな不良みたいな真似………」


ブツブツと呟きながら外へ出ます。


まあ、これから殺人という罪を犯そうという人が煙草を買うだけのことをためらうというのも変な話ですが。












海未「ここが一番近いコンビニですかね」


時刻は午後九時くらい、人の出入りが極端に多いというわけではありませんでした。

海未「さっさと終わらせましょう…」


穂乃果「あれ?海未ちゃん?」


後ろを振り向くと見知った顔がありました。


海未「穂乃果………」


穂乃果「むっ!その反応はひどくない!?」


思わず落胆気味の声を出してしまったようです。


穂乃果「海未ちゃん、今日途中で帰っちゃったけどどうかしたの?」


海未「い、いえ………」


穂乃果と目を合わせられません。当たり前です。これから殺そうとしている人とまともに話せるはずなんてありません。


穂乃果「海未ちゃんは嘘ついてるねっ!」


びしっと私に指を突きつけました。


海未「いえ、あの、少し体調が悪くて……」


穂乃果は変に鋭いから困ります。


穂乃果「やっぱりそうかあ。お腹の中からの幼馴染なんだからね。嘘ついても分かるからね!」

海未「すいません………」


穂乃果「っていうか、体調悪いんじゃなかったの!大丈夫?」


怒ったり心配したり、コロコロと表情が変わりますね………


海未「あ、もう結構良くなってて……」


穂乃果「駄目だよっ!早く帰って暖かくして寝ないと!」


じゃあ煙草を買ったら帰りますね、なんて言えるはずも無いので、


海未「分かりました……じゃあ今日のところは帰ります」


穂乃果「うん!」


私がそう言うと穂乃果は満足そうに頷きました。


海未「……じゃあ、また」


穂乃果「海未ちゃん」


海未「……なんですか?」


穂乃果「………何か隠し事してるんじゃないの?」

やっぱり、変なところで鋭いですね………


海未「……そんなことありません」


穂乃果「やっぱり」


………私は本当に隠し事が苦手みたいです。


穂乃果「勉強のこと?」


海未「いいえ」


穂乃果「家のこと?」


海未「いいえ」


穂乃果「じゃあ、みんなとのこと?」


海未「………いいえ」


穂乃果「………海未ちゃんは呆れるくらい嘘が下手だね」

海未「…そうみたいですね」


私もその自覚はあります。


海未「でも、うまくいってないとかそういうことじゃないので大丈夫ですよ」


穂乃果「本当に?」


海未「ええ」


申し訳ないですが言ったところで穂乃果にはどうすることもできないでしょう。


それに何より穂乃果はもうすぐいなくなるのです。


穂乃果「………穂乃果は海未ちゃんの幼馴染なんだからね」


海未「………」


穂乃果「辛い時はいつでも頼ってくれていいんだからね!」


海未「………ええ」


穂乃果「………海未ちゃん?」

海未「…………なんですか」




穂乃果「なんで、泣いてるの………?」




海未「………え?」


自分の頬に触れてみると、確かに涙が流れていました。


穂乃果「ど、どこか痛いの!?大丈夫!?」


海未「大丈夫です……」


大丈夫、そうは言いましたが涙は自分の意に反して流れ続けます。


覚悟は決めたはずなのに。今更穂乃果を守りたい、大切にしたいと思う自分がいます。


穂乃果に危害を加えようとしている私と、守りたいと思う私。全く逆の二人の私が中で混ざり合って感情が溢れ出します。


穂乃果「う、海未ちゃ……」


海未「本当に、大丈夫ですから。今日は帰ります」

自分でも驚くほど淡白にそう言うと、心配そうな顔をしている穂乃果に背を向けて歩き出します。


これ以上穂乃果の顔を見ていることは私には出来ませんでした。


最後の最後に情が深まってしまいそうで。


穂乃果「海未ちゃん………」






「ありがとうございましたー」


海未「………」


煙草を買いました。


海未「私ってそんなに老けてますかね……?」


本当に未成年が煙草なんて買えるのだろうかと少しビクビクしていたのですが、驚くほど簡単に買えてしまいました。


買えてよかったと思うべきなのでしょうが、スクールアイドルをしている身としては少し複雑です。


海未「そもそも、年齢が際どいように見える人には身分証明の提示をさせるべきでしょう……」


自分が違反をしているのは棚に上げて、おそらくバイトであろう人に少し愚痴を言います。

時刻は10時を回ったところ。確か高校生は11時を過ぎて出歩いていると補導されるんでしたっけ。


少し前の私にとっては補導、なんて縁の無い事でしたが今は煙草を持っています。


海未「気をつけねばなりませんね………」


警察の人に見つかりでもしたら、煙草は没収され、親には連絡され、学校にも連絡され、退学ってことになるんでしょうか。恐ろしいです。


とはいっても、普通に歩いているだけなら警官の人に呼び止められたりすることはほとんどありません。ただ歩いているだけなら、ですが。


海未「………」


人気のない公園でキョロキョロと辺りを見回します。


海未「えっと、確か吸いながらじゃないと火がつかないんでしたっけ…」


タバコをくわえ、街中で大人がやっているように手で火を覆いながらすう、と息を吸い込みました。


海未「げほっ!げほっ!」


……とても、吸えたものではありません。


ガサッ


海未「!?」

背後の物音に咄嗟に反応してしまいました。


海未「猫ですか………」

小さい黒猫が草むらから首だけをこちらに向けてじっとしていました。


ここだけの話。猫はなかなか好きなのです。


海未「おいでおいでー」


少し強くニャア、と鳴くと猫は走って逃げていってしまいました。


海未「なぜですか…」


少し目線を落とすと、モクモクと煙を吐き出しているタバコが。


海未「煙が嫌で逃げていったんですね………」


自分が嫌がられていたわけではないんだな、と安心すると同時に。


逃げていく猫の姿がメンバーのみんなと重なったのは何故でしょうか。




―――
――



その後、私と希と穂乃果の三人は予定通り迎えに来た船に乗って音ノ木坂に帰ってきました。


あそこが無人島と言えどそのうち彼女達の死体は見つかるでしょう。それまでは私と穂乃果と希の三人で生活します。


もちろん、知り合いの人に見つかるわけにはいかないので希の家でなるべく外に出ないようにします。


しかし、そんな日々が続けば気が滅入ってしまうのは当然です。


海未「あ、あの。どこかにでかけてみませんか?」


希「………万が一のことがあったら?」


海未「今は夜ですし、きっと大丈夫ですよ」


希「………駄目」


穂乃果「………」


希は帰ってきてからずっと不機嫌で、穂乃果に至っては一言も話しません。


希が不機嫌な理由は穂乃果にあります。

穂乃果は私のそばを一切離れようとせず、食料を調達するために少し外に出るときはいつも両手で私の腕を掴んでいます。


希はそれが面白くないのでしょう。何度か穂乃果に怒鳴ったことがありますが、その度に穂乃果は泣くだけで全く話にならないので、今ではもう希は穂乃果をいないものとしてみなしているように見えます。


一日中そんな空気なのです。私がどこかに行きたくなるのも自然だと思います。


穂乃果「う、海未ちゃん………」


チッと希が舌打ちをするる音が聞こえました。


海未「なんですか?」


穂乃果「お風呂はいろ………」


海未「………昨日まで一人で入ってたじゃないですか」


日に日に穂乃果は私に甘えてくるようになっています。穂乃果の受けたショックは計り知れないものでしょう。それを引き起こした張本人としては出来るだけ応えたいのです。

みんなを殺しておいて何を今更善人ぶっているんだと、自分でも思います。


穂乃果「………」


無言で服を引っ張ります。


海未「仕方ないで………」






希「もうやめてよっ!」






穂乃果「ひっ………」


また始まった、と私は内心思いました。


希「のこのことここまで付いてきて!傷ついたふりして海未ちゃんに甘えようなんて本当に卑怯!早く出て行ってよ!目障りなの!」


クッションを振り上げ力のままに何度も穂乃果に叩きつけました。

穂乃果「う、海未ちゃん……」


海未「………」


その時、助けを求める穂乃果を見たときの私の顔はどんな表情だったでしょうか。


この結果はどっちつかずの中途半端な選択をした私が招いたもの。


いつもなら、ここで私がすかさず止めに入るのです。


なのに、私はこの結果から逃げたくて逃げたくて。


海未「………」


無言でそっと玄関に向かいました。


泣き叫ぶ穂乃果と口の端を吊り上げて叩き続ける希を置いて。










海未「こういう時は、一服しましょうか」


外に出て、タバコを取り出しました。


実は、島から帰ってきてから私はタバコを吸うようになりました。

海未「ふう………」


吸う姿も中々様になってきているんじゃないかと思います。タバコを吸う女性ってかっこよくないですか?ないですか。そうですか。


私のこの現実も灰のように消えてなくなってしまえばいいのに。少しベタすぎますね。


海未「そういえば、私は作詞担当だったでしたっけ」


遠い昔のように思えます。もう、帰ってきませんけど。


プルルル プルルル


海未「…希からですか」


今時珍しいであろうガラケーを取り出します。


希「もしもし」


海未「何ですか?」

希「今日はなんでうちが穂乃果ちゃんを叩くのを止めなかったの?」


海未「………」


海未「………穂乃果は?」


その質問には答えませんでした。


希「泣きつかれて寝てるよ」


海未「そうですか………」


希「それでさ、今日海未ちゃんが止めに入らなかった理由って何?」


海未「………なんでもいいじゃないですか」


希「じゃあウチが当てるよ」


ドキッとしました。希なら本当に当てられるような気がして。

希「もう、面倒なんやろ?この状況が」


そんなことはありません、という言葉は咄嗟には出ませんでした。


海未「………この結果を招いたのは私です。だから私が責任を取らないと」


それでも、私はあくまで善人としての自分を貫こうとします。


希「でも、今日は逃げ出したやん?」


海未「………」


希の一言一言は確実に私を追い詰めてきます。


希「………もう、穂乃果ちゃん殺してもいいんやない?」


海未「………駄目です」

やっぱり、即答できない自分がいます。


希「ほら、言葉に迷いがあるよ。やっぱりあんな風に真姫ちゃんを殺しただけあって残酷やなあ。覚悟を決めて穂乃果ちゃんを助けたんじゃないの?」

ククッと、何が可笑しいのか希は笑いました。


海未「残酷だなんてやめて下さい。それに、真姫を殺したのは希でしょう……ナイフでメッタ刺しなんて私には出来ません」


希「今更偽善者ぶらなくてもいいのに」


海未「………本当に希では無いのですか?」


希「そうやけど………?」


………どういうことでしょう。


真姫は自殺した? いや、自分自身にあんなにナイフが刺せる?


私が勘違いしている? 人を殺したなんて重要なことを?


希が勘違いしている? あんなに慎重に計画を立てていた希が?

じゃあ、






他に殺人を犯した人物がいる?








希「えっ?あっ………」


通話口から、希の声が途切れました。

海未「………希?」


何も声は聞こえません。


海未「……」


私は無言で階段を上り、家のドアの前まで来ました。


ドアをあければ何が起こったのかは分かる、いや、もう大体は分かってる。


それは最悪の結果なはずなのに不思議と私の気持ちは落ち着いていて、それどころか安心すらしています。やっとこの現実から解放されるんだ、と。


きっとドアを開けば彼女だったものと、ついこの間までのような満面の笑みで迎えてくれる彼女がいるんでしょう。それはそれでいいものだ、と思っている自分がいます。


私は本当に卑怯ですね。

これで完結です。

初めてのことで色々至らない点があったとは思いますが、最後まで見てくださった方、ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月30日 (土) 23:51:41   ID: acahRwOk

無人島の別荘で合宿っていうだけで嫌な予感はしていたが案の定殺人が起こってしまったw

こういう話好きなんで面白かったです!
ただ、伏線や疑問点が残ってしまったまま終わってしまったような気がするので、次はもう少し話を深めてみるとより良くなると思いました。

次の作品も楽しみにしています!

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