綺羅ツバサ「本当の犯人は・・・誰なの!?」 (142)

絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」 ver2.0
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/index.html

の外伝的な感じ。

以前書いた 海未「・・・犯人はあなたです。」を元に書きました。

誤字脱字ここわからんって所があれば指摘よろしくお願いします。

ラブライブで推理物したくなっただけです。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427645652

リンク先ミスりました

絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」 ver2.0
絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」 ver2.0 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427639622/)

~▽月□日 音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年と■日後~

音野木坂スクールアイドル連続殺人事件。

それが、その事件の一般人が知る所の名前だ。

簡単に言うと、個人の持つ島で、当時スクールアイドルとして活躍していたメンバーと、

その身内の家族二人が爆発事故に巻き込まれ、行方不明になったという事故である。

何故爆発事故が起きたのか、原因などは一切不明であり、

遺体も殆ど爆発の衝撃で吹き飛んでしまった。

ただ、わずかに残った遺体から、何かの衝撃に合った事は間違いなく、

○月×日の午前十二時に雷の様な、腹に響くデカイ音海岸沿いの民家の住民や、

交番の警察官が聴いている事や島にポッカリと開いたクレーターが出来ている事から、

爆発事故があった事が予想されている。

しかし、その後の様々な要素から、この事故は実は事件だと思う人間もいる、いや、

訂正しよう。事故だと思っている人間の方が少ないのだと。

警察の評価では事故と認識されているし、殺人であるという証拠も存在しない。

だが、世間はそれを事故とは、大多数の者は思っていないだろうし、警察も

結果として事故と断定せざるを得ないだけで、思っている人間はやはり少ないだろう。

そしてそれは、その被害者の親族、友人も例外ではないのだ。

警察官「えぇ、あれは忘れもしません、○月×日の次の日の早朝の話ですよ。
気づいたらメッセージボトルが机の上にあったんですよね。」

古びた喫茶店の、奥の方の、人が余り来ない席。

そこに初老の男と、とても若く見える女性が向かい合って座っていた。

??「大石さん、そこの部分をもう少し詳しく教えて頂けませんか?
・・・たしかあなたはその時、海岸沿いの交番の宿直だったんですよね?」

大石と呼ばれた男は吸殻を灰皿でつぶしながら答える。

警察官「・・・よく調べておられる。その通りです。私は事件のあったと言われている○月×日、つまり爆発のあった1日前の夜から、爆発のあった朝まで宿直の当番でした。
その日の深夜、確か12時くらいだったかな?雷の音の様な、腹に響く音が聴こえてきたんですよ。何事かと思ったんですけど、その日は雨と風が強くて、半ば台風みたいでした。なので、どこかの小島に雷でも落ちたのかなとしか思っていませんでしたね。」

??「それで・・・?聞いた話では、あなたが最初にメッセージボトルを発見したとか?」

警察官「・・・まぁそうですね。早朝の7時ごろだったかな?その時は台風も収まっていたんですが、曇っていたせいでまだ島の煙とかは見えなかったんです。
んで、ある女性がフラフラと、手でお腹を押さえながら歩いてきたんですよね。
帽子を被っていたのと暗さで顔は覚えていないんですけど、
私がどうしたのか、と尋ねると、その女性はこう言うんですよ。
『あそこに溺れている人がいます!助けて下さい!』」

??「・・・あなたはそれで近くにあった漁師の家に駆けこんで助けを呼んだ訳ですね?」

警察官「ええ。見ると、その女性も全身がずぶ濡れでしたので、仲間と遊びで潜って溺れたんじゃないかと思ったんでね。
急いで近くの漁師の家に駆けこんだんですよ。
私が飛び込んでも二次遭難になるだけですし、電話するよりも早いですからね。
漁師の家に駆けこんで事情を話した後、交番に帰って本部に連絡をしようとしました。
そしたら・・・。」

??「机にメッセージボトルが置いてあって、女性は去っていた、という訳ですね?」

警察官「仰る通りですよ。女性は消えていて、変わりにメッセージボトルが置いてありました。」

??「なるほど、よく分かりました。その後は?」

警察官「お察しの通り、大慌てですよ。その上、九時には日も射してきて、島の状態も分かる様になって、そしたらなんと島から煙が吹いているじゃないですか?火山が噴火したんじゃないかって、肝を冷やしましたよ。」

??「・・・ボトルの中身は拝見しましたか?」

警察官「・・・まぁ一応は。手紙には血もついていて、事件性の可能性もあったからね。
最初に検めさせてもらったよ。内容はよく分からないけど、なんだかよく分からない話が書いてあったな。なんとかさんが殺したとか殺人方法がどうのって何かの物語みたいだった。」

??「・・・その物語こそ、ただの『事故」が音野木坂スクールアイドル連続殺人『事件』と言われる様になった原因・・・。通称『音野木坂文書』という訳ですね?」

警察官「・・・その通りだよ。当初、この事件は確かに大きく報道された。
しかし二週間も経てばニュースの一面では取り上げられなくなり、
一月も経てばお茶の間の話題からも消え去る。その程度の事件だったんだが・・・。」

事実その通りで、半年後には話題にすらならなくなった。

しかし、事件から六年後、事態は急変する。

??「まさか六年も経って『音野木坂文書』の『半分』がインターネットに流出するとは・・・。」

これにより、一度風化した『音野木坂スクールアイドル殺人事件』は再度炎上し、ニュースサイトやSNSでも大きく取り上げられてしまった。

爆発事故なんて日本で滅多に起こらない上に当時はスクールアイドル全盛期の時代で、その時のトップグループが全員事故で亡くなり、未解決のまま捜査が終了してしまった。

これだけでも世間の目を引くのに、『実はあれは事故ではなく殺人事件でした。』なんて文書が流出したのだ。

たとえ事故から六年経っていたとしても、騒ぎにならない方が無理な話なのである・・・。

??「その文書が偽造の可能性はどうですか?」

警察官「それは無いでしょう。文書にはあの日、島にいた人物の署名がありましたし、その人物の遺体の一部が島では見つかりましたからね。
確か名前は・・・。」

??「絢瀬亜里沙・・・でしたっけ?」

警察官「そうそう、絢瀬亜里沙ね。話によると彼女ともう一人は元々合宿に参加する予定では無く、親御さんも島にいるとは全く知らなかったそうじゃないですか。
つまり、彼女が島にいると知っていたのは一緒にいたメンバーだけって話になる。
手紙の署名がメンバーの誰かだったら・・・まぁ何故そんな事をするのかって疑問は無視して他の人間・・・悪質なファンにも出来るだろうけどね。」

??「・・・なるほど、絢瀬亜里沙が島にいた事を知っていた人物じゃないと
絢瀬亜里沙の名前で署名は出来るはずがない・・・。」

警察官「そういう事です。」

??「その文書と、絢瀬亜里沙の筆跡の鑑定はしたんですか?」

警察官「・・・どうだったかな?確かしていないんじゃないか?」

??「鑑定はしていない・・・。そうですか、分かりました。」

警察官「『音野木坂文書』の中身がどんな物だったのかは、極秘だったのですが、何者かがインターネットに流出させてからはそうでは無くなりました。
どんな物か、一応お話ししましょうか?」

??「いえ・・・、私も中身は知っていますから。」

ボトルの中身はA4のノートがぎっしりと詰められていて、内容は絢瀬亜里沙が事件前日から当日までを日記の様に書いた手記だった。

警察官「・・・その後はあなたの知っている通りですよ。流出事件により、インターネットや低俗な雑誌、記者により被害者はプライベートを丸裸にされて、掲示板では○○犯人説のSS(ショートストーリー)が大量に乱立していたりね・・・そういえばあのSSは『音野木坂文書』を真似て書いたみたいな感じだった様な・・・確か最近も掲示板に投稿されていたな・・・おや?どうしたんだい?」

警察官がそう言うと、向かいの者は思わずお茶を噴き出した。

??「・・・いえ、何でもありませんよ。
ところで、あなたは『これ』、どっちだと思います?事故か、事件か。」


警察官「・・・どうでしょうね?ただ事件からしばらく経って、警察が遺体の一部を見つけたそうなんですがね?それは事故だったとしたらありえない状態だったそうですよ?
後は、凶器も発見できたそうで。」

??「・・・。」

警察官「まぁそれが見つかったとしても、結局事件は解決していない。所謂迷宮入りってやつですよ。・・・ところで君は『音野木坂文書』という単語を何故知っているんだい?確かに文書は何者かによってインターネットに流出させられたが、その単語は警察しか・・・、
まてよ・・・?そもそもなんで『音野木坂文書』が半分しか流出していないと知っているんだ!?」

その者は話を打ち切る様に、バッグからファイルを出し、ペラペラと捲る。
そして、あるページを見せると、その警察官の顔は強張った顔になり額に汗を垂らした。

警察官「こ、これはっ!?」

??「最後に一つ、お伺いしたい事があります。
あなたがその日に見た、メッセージボトルの中身の方の『音野木坂文書』とはこれの事ですか?」

警察官「・・・・!!確かにそうだ!この内容に違いない!
・・・いや、筆跡などは鑑定しなければアレだが・・・
お前さん、一体何者なんだい!?」

警察官が顔を上げると、その者はファイルを閉じてバッグにしまい、財布を開ける。

??「・・・ありがとうございます。驚かせて申し訳ありません。
これが本物であるという事がよく分かりました。
今日はありがとうございました。これ、少ないですけど謝礼です。」

その者は財布から一万円札を数枚無造作に抜出し、机に置き去っていく。

警察官「ま、待ってくれ!あなたは一体何者なんだ!?どうしてそんなに事件について詳しいんだ!?せめて、せめて名前だけでも!」

その者は警察官の声に振り向きもせず、会計に向かう。

カードで払う旨を店員に伝えると、サインを求められた。

彼女はペンを借りて自分の名前と独自のサインを書いていく。

店員はそのサインを見ると、心当たりがあるのか興奮しながら握手を要求し、その者は快く応じて店をでた。

警察官が後を追いかけ、外に出て最初に見たのは、その者を乗せた海外製の車が煙を吹かしながら高速道路に向かって発進している所だった。

警察官「・・・何者なんだ・・・はっ!」

警察官は先ほどその者が記したサインを店員から強引に奪い取り見る。

警察官「・・・このサインどこかで・・・まさかっ!」

それは、俗世に疎い彼でも何回と見たサインだった。

十年前、スクールアイドル全盛期の時代に一つの時代を築き上げ、

事故で亡くなったμ'sのメンバーが憧れたスクールアイドル初代王者。

警察官「・・・身内って、そういう事か・・・。」

そこには、綺羅ツバサ、A-RISE と記してあった。

前回のラブライブ!!

なんやかんやあって無事にラブライブを優勝した私たち!!

長期休みを利用して、お祝い旅行を企画した!!

旅行先は真姫ちゃんの別荘である無人島!!なんでもこの島は色々いわくつきなんだとか!

それでも関係ないよ!私たちは楽しむんだ!

無人島に着いたとき、私たちに新たな出会いが!!

穂乃果「雪穂!?どうしてここに!?」

絵里「亜里沙!?あなたもどうして!?」

雪穂「お姉ちゃんだけずるいんだよ!!私も行くもん!」

亜里沙「ハラショー・・・ここが無人島ですか・・・」

こうしてお祝い旅行は11人で始まった!

○月×日-1日 西木野家別荘内にて 18:00

亜里沙「ちょっと待ってくださいよ!考え直す気は無いんですか!?」

普段温厚な亜里沙が手をテーブルに叩きつけながら憤る。

余り目にしない妹の顔に少し呆気にとられたが、絵里はそんな亜里沙の肩を抑えながら言った。

絵里「亜里沙、これは何も穂乃果一人で決めた事じゃないのよ?メンバー全員で決めた事なの。」

亜里沙「そんな!海未さん、お姉ちゃんも賛成なんですか?」

雪穂「そうですよ!私と亜里沙は皆さんと一緒のグループになりたくて音野木坂を受験したんですよ!それを・・・!」

真姫「別にスクールアイドルを辞めるとは、言ってないわよ。ただ、その・・・。」

海未「亜里沙、雪穂。私達はスクールアイドルを辞めませんし、来年あなた達が入ってきた時も、快く歓迎します。ただ・・・。」

希「・・・。」

絵里「・・・。」

にこ「・・・私は皆の決定に従うわよ。」

亜里沙「そんな・・・!意志は、固いんですか!?」

穂乃果「うん、二人には悪いけど、もう決まった事なんだ。」

ことり「μ'sのリーダーは穂乃果ちゃんだよ・・・。その穂乃果ちゃんが言うんだから、従うよ。」

真姫「・・・」ズズッ

にこ「真姫ちゃん、泣かないで」

真姫「べ、別に泣いてなんか・・・」ズズッ

凛「真姫ちゃん泣き虫だにゃぁ・・・」グスッ

花陽「凛ちゃんもだよ・・・私もだけどね・・・。」ズズッグスッ

穂乃果「μ'sは、解散します!!」

・・・ラブライブを優勝した記念に、真姫の別荘で合宿と称した旅行をする事になり、

それを事前に察知した亜里沙と雪穂は密かに潜り込んでついてきてしまったのだ。

最初は渋い顔をしていた穂乃果と絵里だったが、今更追い返す訳にもいかず、

メンバーからも歓迎されてしまった。

二人はμ'sのかなり初期からのファンであり、絵里と穂乃果の姉妹なので、

顔合わせも何回もした事はあるし、全く部外者な仲では無い。

なので、二人の参加を許す事にしたのだ。

島に着き、思う存分遊んで夜食をわきあいあいと食べていたら、穂乃果から二人に話しておきたい事があると言われた。

それは、二人の憧れである、μ'sの解散・・・。

穂乃果「絵里ちゃん、にこちゃん、希ちゃんが卒業で抜けてもスクールアイドルは出来るよ・・・?でもそれはμ'sじゃない、違う何かだと思うんだ。
μ'sは9人。それ以上でも、以下でもないんだよ・・・。」

亜里沙「・・・そうですか。」

穂乃果「今まで黙っていてゴメンね?実は今回の合宿はお別れ会も兼ねていたんだ・・。
ファンの人には次のライブで言おうと思っていたけど・・・。」

絵里「二人は今までμ'sをずっと支えてくれたから、真っ先に言うべきだって穂乃果が言ったのよ。」

雪穂「お姉ちゃん・・・。」

亜里沙「穂乃果さん・・・!」

穂乃果「今思うと、今回の合宿に二人が参加してくれてすごく良かったって、思うな。
μ'sのリーダーとして、お礼を言わせて?μ'sが始まってからずっと、私達を支えてくれて、本当にありがとう!」

雪穂「・・・!!」

亜里沙「・・・!!」

二人は静かに涙を流す。

それは二人からすれば、最大の名誉だった事だろう。

穂乃果「そして、ゴメンね?勝手に決めちゃって・・・。二人はμ'sを結成してからずっといままで応援してくれたのに・・・。」

亜里沙「・・・いいんですよ、もう。今まで、お疲れ様でした。μ'sは私の中で、未来永劫不滅です・・・!」

雪穂「・・・黙って決める所がお姉ちゃんらしいよ!私も許すよ、お疲れ様、お姉ちゃん、皆さん!」

穂乃果「二人とも~~~!!!ありがとぉーーーーー!!!!」

雪穂「ちょ、お姉ちゃん苦しい!!」

亜里沙「穂乃果さん!?ちょ、ちょっとほんとに・・・!」

穂乃果「あ~私は幸せ者だよこんなカワイイ良い子に恵まれてさ!
ん~ちゅっちゅっ!!」

海未「止めなさい穂乃果!」

希「まぁまぁ、今日くらいはええやん?この合宿を企画してくれたのも穂乃果ちゃんやろ?」

真姫「私も企画者の一人です~!誰のおかげでここで出来ると思ってんのよ~?」

にこ「真姫ちゃんすごいにこ~~尊敬しちゃうにこ~!」

凛「すごいにゃ~真姫ちゃんすごいにゃぁ~~~にゃぁ~~~~」

真姫「ま、まぁ分かればいいの分かれば!」

ことり「煽っているだけにしか見えないんだけど・・・?」

花陽「黙っておいた方がいいと思います・・・。」

メンバー+@はその日はとにかく楽しんだ。

ハメを外し、年齢も少しだけ忘れて普段は出来ない事をしてとにかく騒いだ。

その間は、解散の事なんて、吹き飛んでしまうくらいだった。

○月×日 11:00

希視点

pppppppppppppppp!

ガタン

希「・・・ふわ~あ・・・朝やな・・・。」

希は目覚まし時計を止めた後、ゆっくりと起きる。

カーテンの隙間から入る光は、天気の影響からか弱々しかったが、

それでも夜が明けた事は教えてくれた。

希「・・・もうこんな時間なんか・・・ちょっと寝すぎやで。」

時計は普段の自分ならとっくに起きている時刻を指していたが、

まぁ今日くらいはしょうがないだろう。

昨日は結局夜通しドンチャン騒ぎだったし、テンションも高く、初めて飲んだ飲み物も影響しているのかもしれない。

メンバーには一人一部屋与えられていたが、食事の後すぐに戻る者は誰一人いなかった。

確か最初に部屋に戻った海未でさえ・・・丑三つ時は回っていた気がする・・・。

希は身支度を済ませた後、二階のリビングに向かう。

廊下は朝だと言うのに薄暗く、窓を見ると雨が激しく降っていた。

希「あらら・・・、せっかくこんなリゾートに来たのに、もったいないわぁ。」

まぁ、それならそれでいい、今日はこの別荘内で遊ぶとしよう。

希「もしかしたら、もう皆起きているのかもしれへんな・・・。」

朝食の時間は決めていなかったが、昼ごろまで寝てしまった。

今頃もう昼食の準備をしているのかもしれない。

希「・・・?あれ、海未ちゃんと絵里ち?何してるん?こんな所で。」

希が階段を下りると、海未と絵里が二階のリビングの扉の前で立っていた。

何やらドアノブを弄っているようだが・・・。

絵里「あら希、おはよう。」

海未「おはようございます、希。」

希「どうしたんこんな廊下で?中に入らんの?」

海未「実は、扉が開かないんですよ。鍵がかかっているみたいなんです。」

絵里「そうなのよ、だからどうしようかなって思って。」

希「鍵が?ちょっと貸して?」

希がドアノブを回して押したり引いたりするが、ドアは開かない。

希「・・・ダメみたいやね、確か1Fの管理室に鍵があったはずやけど、勝手に取っていく訳にもいかんし、真姫ちゃんはまだ来てないの?」

絵里「私達以外は、まだ起きてきていないわね。・・・昨日は騒いだからねぇ・・・。」

海未「皆少しだらしがないですよ・・・、私もですけどね。」

希「まぁまぁ・・・、あっ下りてきたわ。」

下りてきたのは凛、真姫、花陽だった。

凛「おはよーにゃあ~!」

花陽「おはようございます~ふわぁぁ~。」

真姫「ハロー・・・あれ、皆どうしたの?」

絵里「鍵が閉まっていて入れないのよ、真姫しらない?」

真姫はそれを聞いて顔を歪ませる。

真姫「鍵ィ?誰か最後に閉めたの?」

メンバーは首を横に振る。

真姫「そうよねー・・・?じゃあ凛?」

凛「なんで!?今『皆』って言ったよね!?凛は入っていないの!?
おかしいにゃぁ!!!」

真姫「ウソウソ冗談よ。」

花陽「もしかしたら、中に誰かがいて鍵を閉めたんじゃないですか?」

海未「まぁ、そう言われてみれば、そうかもですが・・・。」

確かにこのドアは、中から施錠する事は出来る。

だが普通、人の家でそんな勝手な事をするだろうか・・・?

希「まだ来てない人は?」

絵里「えーっと、穂乃果、雪穂ちゃん、にこと、ことり。あ、亜里沙も来てな・・・」

雪穂「おはようございまーす!あれ、どうしたんですか?そんな所で?」

海未「ドアが閉まっているんですよ、それで今話している所なんですけど・・・。」

雪穂「あ、そうなんですか。・・・あれ?お姉ちゃんと亜里沙がいない・・・おかしいな。」

雪穂は首をかしげる。

凛「おかしいってどういう事にゃ?」

雪穂「あ、いえ、実は私、お姉ちゃんと亜里沙を今日の朝尋ねたんです。
多分起きていないと思ったんで。
そしたら、二人とも部屋にいなかったんですよ。」

希「部屋、開いていたん?」

雪穂「ドアは開いていましたよ、もちろん中には入っていませんけどね。
だからてっきりこっちに来ていると思ったんですけど。」

真姫「こっちには来ていないわよ。
どこに行ったのかしら?」

凛「中にいるんじゃないのかにゃ?」

絵里「そうなるわよねぇ?」

海未「もしかしたら、昨日リビングで寝てしまったのかもしれませんよ?
今来てない四人は確か遅くまで起きていたはずですよね?」

絵里「この中で昨日、最後まで起きていた人は?」

希「多分うちやね。穂乃果ちゃん、にこっち、亜里沙ちゃん、ことりちゃんはまだ起きていたと思うで。」

雪穂「じゃあまだ中にいるんですかね・・・?」

海未「多分そうだと思います、ここは孤島ですし、この天気です。
他に行く所なんてありませんよ・・・。」

凛「とりあえず呼んでみるにゃ!おーいい!!穂乃果ちゃんことりちゃん亜里沙ちゃああん!!にこちゃあああああん!!!!」

ドンドンドンドン!!

真姫「ちょっと凛あんまりドンドンしないでよね!!」

凛「起きるにゃああああああああああ!!!!!」

ドンドンドンドン!!!

真姫「・・・。」

絵里「これで起きるでしょ・・・。」

海未「人騒がせな・・・。」

雪穂「うちの姉がすいません・・・。」

絵里「それを言ったらうちの妹もよ、だらしないわぁ・・・。」

希「あの四人は大人の飲み物ガブ飲みしていたからなぁ・・・。」

凛「おーーーきーーーるーーーーにゃあああああ!!ウェイクアップ!!!」

ドンドンドンドンドン!!!

真姫「壁壊れたら、凛に請求しようかしら・・・。」

凛は10分間もドアを叩き、叫び続けたが、ドアは開かなかった。

最初は楽観視していたメンバーも、段々と表情が曇ってきた。

真姫「ちょっとぉ・・・、いくらなんでもおかしいわ?凛がこんだけドアを叩いて叫んでいるのに誰も起きないなんて・・・。」

花陽「確かにおかしいです、もしかして何かあったんじゃないですか!?」

雪穂「な、な、何かってなんですか!?」

花陽「例えば、事故とか・・・。」

海未「それが本当なら早く助けないと!」

絵里「落ち着きなさい!まだそうと決まった訳ではないわ!」

花陽「この部屋の鍵は無いの?」

真姫「確か一階の管理室にあったはずだわ!!取ってくるわね!」

希「うちも行くわ!」

希と真姫は一階に駆け下り、ホールを抜ける。

その時、希は視線を感じ、振り向いた。

希「これは、・・・・。」

その先にあったのは、デカイ肖像画だった。

希は昨日、真姫から聞いた話を思い出す。

真姫の祖父が戦後、莫大な富を得て病院とこの別荘を建てたと・・・。

そして、余った富を暗号にしてどこかに隠したと・・・。

その肖像画の真下には、ライオンの像が二つ、真ん中の石碑を崇めるかの様に建ててあった。

この石碑に、富を隠した暗号が書いてあるのだが・・・。

昨日の食事の後メンバーで考えてみたのだが、ちっともわからない・・・。

その石碑には、こう書いてある。

『以下の碑文を解いたものに黄金を授ける。

火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。

一の国に三の村、二の国に四の村有り。

三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り。

使い、黄金に至る鍵を得る。

宮殿より古来から作られし鍵、

納殿の鍵、

庫理の鍵、

田の鍵。

これらを砕いて一つの鍵を作り、使い、黄金に至った。

鍵を一つにして二十の破片に砕き、三十七の欠片に分けよ。

六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。

Nishikino Laidourou 』

真姫「希!?どうしたの!?立ち止まったりなんかして!?」

希「・・・あっゴメン!今行くわ!!」

真姫「急ぎましょう!!」

希はその事を一端忘れ、真姫の後を着いていくのだった。

管理室と言ってもそこは埃に塗れていて、希は学校の体育倉庫みたいだと思った。

希「管理室に鍵はかかっていないの?」

希の問いに真姫は笑って、

真姫「こんな島まで来て盗る馬鹿はいないわ。」

と笑いながら言う。

希「そりゃそうやね、それで鍵はあった?」

管理室に入ってすぐの所に、鍵は立てかけてあった。

鍵には部屋の番号が書いてあるのですぐに分かるのだが・・・。

真姫「・・・あれ?無いわ!!」

希「・・・本当に?」

真姫「嘘・・・!他の部屋の鍵は全部あるのに、二階のリビングの鍵だけないわ!」

希「そんな・・・!?他は!?どこか心当たりはないの!?」

真姫「そんな事を言われても・・・!」

希「鍵は一部屋につき、何本あるん?」

真姫「どれも一本しかないわよ!」

二人は管理室を探しまわったが、二階のリビングの鍵を見つける事は出来なかった。

二階 リビング前

海未「鍵が無かった・・・!?それも、二階のリビングの鍵だけ!?」

希「・・・うん。」

真姫「おかしいのよね、何故か一つだけないの。
他のメンバーは?」

そこには、花陽と凛がいなかった。

海未「今ことり達の部屋と、玄関を見てきてもらっています。」

絵里「真姫・・・?それは?」

絵里は真姫が持ってきたソレを指す。

真姫「あぁ・・・、これはね。」

と、そこへ、凛と花陽が戻ってきた。

凛「ことりちゃん達の部屋を訪ねてみたけど、扉は開いていて、中にはいなかったよ・・・。」

雪穂「やっぱり・・・。」

花陽「玄関を覗いてみましたが、皆さんの靴はありました。」

希「って事はやはりこの中にいるって事やね・・・。」

凛「にこちゃん達~~~~~!!!起きてる~~~!?」

ドンドンドンドンドン!!!

凛は扉を叩き、叫ぶが、扉は開かなかった。

花陽「真姫ちゃん・・・それは?」

真姫が片手で持っているのは、女性でも持ち運びの出来る、折り畳み式の斧だった。

真姫「いざって時の為に持ってきたんだけど、持ってきて正解だったみたいね・・・。」

凛「・・・もう出ないにゃ。」

絵里「凛、もういいわ。真姫・・・お願い出来る?」

真姫「・・・はぁ、しょうがないわね。ま、友達の為だし、ドアの一枚や二枚、壊してあげましょう。」

ドアの一部なら、簡単に砕く事が出来そうだ。

海未「お願いします!真姫。」

雪穂「お願いします!」

真姫「分かったわ!皆下がっていて!!」

真姫はドアの前に立ち、斧を振り上げて、ドアノブ付近に叩きつける!!

ガツン!!ガツン!!ガツン!!

真姫「・・・後少し!!いくわよおおお!!」

ガツン!!ガツン!!!ガツン!!!

バキン!!!

斧の一部がドアにめり込む。

真姫「やった!!」

真姫は斧を取り除き、斧で開けた隙間へ手を入れて施錠を解除する。

真姫「開いたわ!」

真姫を先頭に、メンバーは流れる様に部屋内に入室する。

希も後に続いて入ると・・・、

「「ひっきゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」」

リビング内に、悲鳴が響き渡った。

希「なんや・・・!?なんやこれは・・・!?」

リビングには、皆が予想した通り、にこ、ことり、穂乃果、亜里沙が『あった。』
何故『あった』という表現をするのか?人ならば『いた』と言うべきではないのか・・・?

・・・しかしそれは『あった』で正しいのだ。

何故なら、『いた』は生きている生物に対して使う言葉だからだ・・・。

雪穂「そんな、嘘よ!!ことりさん!!お姉ちゃん!!亜里沙!!いやああああああ!!!!」

昨日、皆で過ごしたリビングは今や、日常とかけ離れた光景になっていた。

部屋は荒らされに荒らされて、部屋中は赤く、場所によっては変色して赤黒く染められていた。

その中心に、亜里沙が座っていた。

いや、座らされていたという方が正しいのかもしれない。

亜里沙の手はぶらん、と垂らしており、首もイスを支えにして、後ろに垂らしている。

代わりにむき出しになった首には、直径30cm程だろうか?杭の様な物が刺さっていた。

中は空洞になっていて、そこからこの部屋を染めたのと同じ色の液体が亜里沙の服を染める様に流れでていた。

絵里「いやああああああああ!!!!!」

ことりは、昨日皆で座ったソファに、座らされていた。

腹からは、赤くて黒い、細長い物が絨毯を這っていて、背中からは亜里沙と同じ、杭の様な物が生えている。

にこと穂乃果に至っては、全身が血という血で塗れていて、うつ伏せで床に転がっていた。

よく見てみると、至る所に切り傷の様な物があり、二人を中心にして血は床を染めていた。

穂乃果とにこの腹あたりは少し盛り上がっていて、杭が服を突き破って赤い塗料をまき散らしていた。

どうやら、腹に刺さっていた杭が、バランスを崩して貫通してしまったらしい・・・。

杭にはそれぞれ、赤い血液がたっぷりと付着していた・・・。

花陽「こ、こんな!!!こんな事って!!!」

凛「お、おえええええええええええ!!!!!」

希「訳が、わからへん・・・。」

メンバーの反応はそれぞれだった。

茫然とする者、叫ぶ者、涙を流しながら嗚咽する者。

もはや阿鼻叫喚だった。

皆、その場に縫い付けられたかの様に、動く事は出来なかった。

もしかしたら、まだ助かるのかもしれないのに、容体を視なければいけないのに・・・!

しかし、四人の元に行くには、この部屋に満ちている血を踏みながら進まなければいけない。

皆その血を踏みたくなかった。

血のついた、非現実の証しを靴につけて現実に帰りたくはなかったのかもしれない。

雪穂「い、医者・・・そうよ医者よ!!!!医者医者医者!!!医者ぁ!!!!」

花陽「そうですよ医者!!!医者を早く電話して来てもらいましょうよ!!ほら早く医者を!!!」

「医者」という現実的な言葉に我に帰ったのか、いや、きっと叫ばなければ飲まれてしまうのだ・・・。この部屋の、非現実さに。

真姫「・・・私が視るわ!!皆はそこから動かないで!!」

真姫は嗚咽を我慢しながら四人に近づく。

真姫が歩くと、べちゃ、べちゃ、べちゃ、という不協和音と共に、足裏に粘り気の様な物がついた感触がまとわりつく。

真姫は粘り気の正体を考えない様にしながら、四人に近づいた。

しかしこんなの、どう処置しろと言うのだろうか・・・?

医者の娘なだけの真姫に処置など・・・いや、例え凄腕の医者と設備があっても、

もう助かりなどしないだろう・・・。

こんなの、処置などする必要などない・・・!

死んでいるって、誰からみても分かるじゃないか・・・!

真姫は四人の手首に軽く触ると、皆の元に戻り、涙を流しながら、こう言った。

真姫「・・・四人共、な、亡くなっているわ。」

絵里「何を言っているの真姫!!早く助けてあげないと!!!医者を呼んで!!私の妹を誰か助けて!!」

絵里が亜里沙の元を駆け寄ろうとするの、真姫が腰を掴んで止める。

真姫「エリー!!もう死んでいるのよ!!脈も・・・無かったわ!!!!」

絵里「・・・いや、いやあああああああああああ!!!」

凛「そ、そんな・・・」

花陽「・・・嘘だよ!!嘘だよおおおおお!!!!」

希「・・・悪魔や・・・悪魔の仕業や・・・ん?」

希は上を見上げる。

この現実から、逃避したくなったのだ・・・。

すると、棚の上に何か光る物がある。

希は何気なくそれを見ると・・・。

希「・・・鍵?」

海未「亜里沙、にこ、ことり、穂乃果・・・あああああああああああ!!!!!!!!!」

リビングを悲鳴が支配する。

虹色に輝いていた旅行は、一瞬にして赤黒く、染められた。

~▽月□日 音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年と■日後~

??「収穫はあった?ツバサ。」

ツバサ「・・・ありありよ。『音野木坂文書』は警察によって偽造がされていない事、この文書は著者であると言われている絢瀬亜里沙が書いたとは限らない事、そして、もしかしたらあの島から生き残った者がいるかもしれないって事がね・・・ところで変な曲ね、それ。」

??「アメリカンポップな曲嫌い?まぁ警察を辞めてまで捜査しているんだからこれくらいの成果は無いとねぇ?ツバサちゃん。」

ツバサ「まだ辞めていない・・・、サマーバケーションなだけよ。上司にも言っていないけどね。・・・それより良いの?私についてきちゃって・・・。ただじゃすまないよ?あんじゅ。」

あんじゅと呼ばれた、車を運転している女性はフフフと笑いながら、

あんじゅ「別にいいのよぉ・・・、ツバサちゃんと一緒にいたいから入った警視庁みたいなもんだし、それより英玲奈も一緒に行きたがっていたわよ?」

ツバサ「英玲奈には警視庁で調べて欲しい事があったから残ってもらったのよ・・・。」

あんじゅ「どーしても、ツバサちゃんが解決したい事件だもんね。手がかりが見つかったとなれば、いくらでも手伝うよ。」

ツバサ「・・・あんがと。」

あんじゅ「ツバサちゃんカワイイー!」

ツバサ「うわ!あんじゅ前見て前!」

あんじゅ「・・・おっとっと、ところで『音野木坂文書』ってどんな事が書いてあったのよ?」

ツバサ「・・・さっきの会話を盗聴器で聞いていたでしょ?・・・まぁいいわ。簡単に言うと、メンバーのある一人が犯人じゃないかっていうただの手記よ。
手記は前編と後編に分かれていて、流出したのは前編って訳。」

あんじゅ「へぇ~、流出したのはその前編だけなんでしょ?そりゃ荒れる訳ね。
結末が分からないお話し程、ムカムカする物は無いわよ。」

ツバサ「でしょ?だからネットにはこの続きを想像してSSにして投稿している人が五万といるって訳よ。」

あんじゅ「なるほど、でもツバサちゃんは全て持っているんでしょ?じゃあ誰が犯人か知っているんじゃない?」

ツバサ「それがね、前編と後編は物語が違うのよ。」

あんじゅ「え・・・?どういう事?」

ツバサ「前編は物語Aが始まるのよ。西木野家の別荘に11人で合宿に行き、そこで連続殺人が起こり、最後は自分も殺されるって話ね。
後編は物語Aと最初は同じなのよ、でも『碑文』を解くあたりから物語Aとは展開が大きく変わるの。犯行手口や誰が死んだのかもまるで違う。物語Aと物語Bは並行世界みたいね。」

あんじゅ「・・・結局犯人は分かったの?」

ツバサ「・・・後編には碑文の答え以外、全てが書いてあったわ。
後編の犯人はもちろん、前編のトリック、動機、犯人も。
でも私はこの人が犯人だとは、どうしても思えない。
恐らく犯人は別にいて、文書に掛かれたこの人はスケープゴートにされたんだわ!」

あんじゅ「なるほどね、それで浜辺にいた女性に繋がる訳か・・・。」

ツバサ「メンバーの誰かがあの日、殺人を犯して何らかの方法で爆発事故から逃れた。
その後、『音野木坂文書』に偽の犯人を記して交番に置いたのよ。」

あんじゅ「でも何で警察に事件の事を記した手記を置いたの?そいつが犯人なら危険じゃない?」

ツバサ「それなのよねー、そこが分からないのよ。何か犯人にとって得になる事があるからだと思うんだけど・・・。」

ツバサはリクライニングシートを倒して姿勢を楽にする。

ツバサ「何はともあれ、全てはこの女性を見つければ全て分かる事よ。」

あんじゅ「でも、どうするの?誰か全く分からないんでしょ?・・・そもそも生きてるの?この女性。」

ツバサ「・・・確証は無いけど、多分生きているわ。
それをこれから炙り出すのよ。」

あんじゅ「それが、これって訳?」

あんじゅはツバサのスマートフォンを指さす。

ツバサ「そうよー。」

ツバサはスマートフォンを開き、URLをタップする。

しばらくすると、画面にある掲示板のスレッドが表示された。

ツバサ「・・・まだエサにはかかっていないわね。
でもきっとかかるはずよ。もう少し『エサ』を巻く必要があるみたいね。
あんじゅ、予定していた本島の海岸沿いに向かって。西木野家の別荘跡地に行くわよ。」

あんじゅ「何をやっているのか分からないけど、りょうかーい!それより、結局『碑文』は解けたの?」

ツバサ「碑文ねー・・・一応私なりの答えを出す事は出来たかしら。
ただ最後の答えがギリギリ分からない。
こればっかりは、現地に行って別荘の写真と照らし合わせながらやるしかないわ。」

そういうと、ツバサはバッグから先ほど見せたファイルを取り出す。

・・・そこには三人が今まで死に物狂いで、解決してやるという絶対の意志で調べ上げた

『音野木坂スクールアイドル連続殺人事件』の資料が入っていた。

あんじゅ「アレを解いたの!?さっすがツバサちゃん!」

ツバサはフフンと笑いながらファイルを出してページを捲る。

『音野木坂文書』の次のページ。

そこには

『『火払いの印を志す王』から始まる碑文が書いてあった。

ツバサ「・・・何とかね。碑文を解くよりも、碑文の内容を探すのに苦労したわよ・・・。碑文の書かれている内容を知っているのは西木野家だけで、その西木野家は離散したみたいにバラバラになって、消息がつかめなかったから・・・。」

あんじゅ「結局、石碑に碑文を彫った職人の所まで行って聞き出したのよねー?」

ツバサ「大変だったわよ・・・、ゴメン少し寝るわ。着いたら起こしてね。」

あんじゅ「はいはーい、おやすみー。」

あんじゅはそう言うと、速度を少し緩めてアメリカンポップなテンポの曲を止める。

ツバサはあんじゅの気遣いに感謝したが、次の瞬間あんじゅがインディアンポップなテンポの曲を流し始めてうんざりするのだった。

○月×日 午後 12時 30分 3Fリビングにて

海未視点

海未「・・・・・・・・・。」

あれから約一時間、メンバーは茫然としながらも、三階のリビングに場所を移した。

真姫はすぐに警察に連絡をした。

警察は真姫にその部屋は事件において重要な意味を持つから荒らさずに鍵をかけて立ち入らないこと。

メンバー全員で常にいること。

玄関、窓などの施錠を確認すること。

また、台風の影響で警察はすぐにはこの島に到着するとは難しい事を伝えた。

・・・希が発見した鍵は、真姫によると二階のリビングの鍵らしい。

真姫達はそれを使って施錠を行った。

だが、一つ問題があった。

真姫達は二階のリビングに突入する為に斧を使ってドアの一部を壊しているのだ。

これでは鍵をかけたとしてもその隙間から手を入れて、内側の鍵を開ける事が出来てしまう。

そこで、何重にもガムテームを貼る事で隙間を補強し、その上からガムテープとドアを跨ぐ様に絵里にロシア語で複雑なサインを書いてもらう。

これによってガムテープを剥がして、中に入ったとしても、一目で分かるし、貼り直しても一目で分かる・・・。

これをする事で、メンバーはようやく三階のリビングで休む事が出来た。

最初は恐怖と怒りからか、犯人を必ず捕まえて同じ目に合わせてやると息巻いていたメンバーもいたが、部屋を変えて時間を取る事で、冷静になる事が出来た。

・・・実際その方が良いだろう。

犯人は四人も殺した危険な人物なのだ。

もちろんメンバーを殺されて、悔しいとは思う。

こうしている今でも、激怒に駆られて物に当たりたくなってしまうのだ。

あのあまりにも残酷で、無情な光景を受け入れるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

海未「穂乃果、亜里沙、ことり、にこ・・・誰がどうやって・・・!」

海未の脳内には、あの光景がへばりついていた。

しばらくは、赤い物を見る度に思い出すだろう・・・。

海未(許さない・・・!皆を殺した犯人を、私は絶対に許さない!!)

害を受けて、悲しむ者と、怒る者がいる。

海未は後者の人間だった。

海未(皆が泣いていたり、落ち込んだりしているのに、私は薄情なのかもしれませんね・・・。)

海未は改めて今朝の状況を思い出す。

吐き気がこみ上げてきたが、水を飲んで我慢する。

海未(まずは状況の確認からですね・・・。)

海未(私がリビングに行ったのが、午前十一時頃、その時はまだ誰もきていませんでした。
リビングに入ろうとしましたが、鍵がかかっていて中には入れない。
そこに、少し遅れて絵里、希、凛、真姫、花陽、雪穂の順でリビング前に集まりました・・・。)

海未(事情を話し、真姫と希は一階の管理室に向かい、凛と花陽は部屋を来ていないメンバーの部屋を訪問した。)

海未(その結果、管理室には、二階リビングの鍵だけ無く、凛達が部屋を訪ねると、部屋は開いていて誰も居なかった・・・。)

海未(意を決して斧を使って扉を開けて中に入ると、死体が四つ・・・。
亜里沙は喉を、ことりは腹と背中に杭の様な物が刺さっていて、穂乃果とにこは仰向けで倒れていて、死んでいた・・・。
近くには血が充満していて、二人の近くには、二人と同じ様に、杭の様な物が二本落ちていました。
これを使って刺されたと思う方が妥当でしょう。)

海未(その後、私達は遺体に毛布をかけて回りました。
現場を荒らす行為だと分かっていましたが、これ以上無体な姿を晒すのが耐えられなかったのです。)

海未(部屋を施錠して退室し、今に至る・・・。こんな所でしょうか。)

絵里「ねぇ、皆、今回の事なんだけど、どう思うのよ?」

絵里の突然の言葉に、メンバーは顔を顰める。

凛「急にどうしたの・・・?」

雪穂「・・・質問の意味がいまいち分からないんですが・・・。」

絵里「雪穂ちゃんと凛だって気づいているでしょ!?あの四人は殺されたのよ!?
それで今この島にいるのは誰よ!?私達しかいないじゃない!」

希「・・・!?えりち、何が言いたいんや!?まさかうちらの誰かが事件と関係あるって言いたいの!?」

花陽「いくらなんでも、それは無いですよ!!言っていい冗談と、そうじゃない冗談が・・・!」

絵里「じゃああれはどういう事なのよ!?自殺した様にはとても見えなかったわよ!?」

雪穂「それでも、この中に犯人がいるとは限りませんよ!もしかしたら、外部犯なのかもしれません!」

絵里「外部犯!?私達に何か恨みでもある人が殺したって事!?わざわざ嵐の中の無人島に来てまで!?穂乃果達は、そこまでして殺される程、恨まれていたって訳!?」

雪穂「それは・・・。」

絵里「でしょ?ここに来るには、真姫の船を使わなければ行けないし、島から泳いでいける距離でもない。私達をこんな手間かけて殺しに来るような人物も、心当たりもない。
じゃあ誰が殺したのよ!?今この島には、私達しかいないのだとしたら、私達の誰かが犯人よね!?」


凛「ん・・・。」

花陽「でも待って?それだとおかしな事になりますよ?」

絵里「何がよ?」

花陽「リビングの鍵は閉まっていて、鍵は部屋の中にあったんですよね?私達の誰かが殺人を犯したのならば、どうやって部屋から脱出したんですか?」

絵里「・・・どういう事?言いたい事が分からないんだけど・・・。」

希「真姫ちゃんから聞いたんやけどな、鍵は一部屋につき、一本しか無いんや。
その鍵が部屋の中にあったって事は、鍵をかけて部屋から出る事は出来ないよね?」

海未「つまり、密室って事ですよね・・・?」

絵里「・・・!」

花陽「・・・じゃあ、犯人はどうやって皆を殺したんですか!?」

絵里「た、例えばリビングの部屋からもう片方の部屋に飛び移るとか・・・
ほら、窓があったじゃない!」

雪穂「絵里さん、窓の下見ました?崖で、下は海、その上この天気で足場は悪い。
危険すぎますよ。後、窓も鍵がかかっていましたよ?」

絵里「・・・じゃあ犯行を行なった後、鍵を部屋に入れたのよ!
例えば、ドアの隙間からとか・・・!」

希「鍵はタンスの上にあったんよ?あのドアの隙間は下にしかないから、無理だと思うわ。」

絵里「じゃあどうやったっていうのよ!?この中にいるのは明らかなのよ!?」

昨日の深夜未明から今朝の十一時まで、リビングは密室だった。

別に管理室自体は鍵がかかっている訳でもないので誰でも入る事ができ、鍵にも名前が書いてあるからどこの部屋かは分かる。

だが、鍵は部屋の内側にあったのだ!

犯人はどうやってリビングの鍵を閉めて、姿を消したのか・・・?

その時、うーうー唸っていた絵里が突然はっと、天明を受けた顔をする。

花陽「・・・絵里ちゃん?」

絵里「分かったわよ・・・!」

凛「何が・・・?」

絵里「犯人がよ・・・。」

凛「・・・!?本当なの?」

希「えりち・・・?」

絵里「犯人はあなたでしょ?」

絵里「希!!!」

絵里は人差し指を希に向ける。

希「えぇ!?ウチィ!?」

海未「絵里!?ふざけているならいい加減に・・・。」

凛「そうだよ!希ちゃんがそんな事する訳ないじゃん!」

絵里「私だって信じたくは無いわ、でも状況がそう言っているのよ。」

真姫「どういう事か、説明してもらえるんでしょうね?」

絵里「もちろんよ!そもそもリビングの鍵は、部屋の中になんて無かったのよ。」

花陽「・・・?どういう事?」

絵里「皆思い出して?最初に鍵を発見したのは誰よ?希よね!?」

希「そうだけど、それが何か関係あるん!?」

絵里「おかしいと思わない?あの混乱した状況で、呑気に鍵なんて見つけられるかしら?
見つけたとしても、それがリビングの鍵だと思うかしら?そもそも声にして言うかしら?」

雪穂「そう言われてみれば・・・。」

絵里「あの時皆は死体を見て唖然としていた。そこへ、希が鍵を見つけたと発言する。
まるで、そこに鍵があると、皆に主張する様に・・・!」

海未「・・・。」

絵里「つまりこういう事よ。希は犯行を犯した後、鍵を自分で持ち去っていたのよ!
その後、リビングに入った時、皆が死体に注目しているうちに鍵をタンスに置いて見つけたフリをした!!」

真姫「そ、そんな・・・!」

希「ちょ、ちょっと待って!?うちが鍵を見つけたから、犯人だって言いたいの!?
無茶苦茶や!そんなん!」

雪穂「そうですよ!それに、本当の犯人なら、自分から鍵を見つけただなんて言わないんじゃないですか!?その辺に置いておけば、誰かが発見するかもしれないんですよ!?」

絵里「その通りね。でも、もし発見されなかったら?皆考えてみて?」

凛「もし、発見されなかったら?」

海未「・・・絵里の言いたい事が分かりました。」

凛「・・・海未ちゃん!?どういう事!?」

海未「・・・もしあのまま鍵が発見されなければ、私達はこれを密室とは認めず、鍵は犯人が持っていると考えるはず。
この状況から、私達の中に犯人がいると言い出す者が、きっといるでしょう。
その時に、自分にも疑いの容疑がかかってしまう・・・・。」

絵里「そうよ!犯人の狙いは、この事件を外部犯だと思わせて、自分から疑いを逸らす事だったのよ!」

雪穂「・・・。」

海未「絵里、さすがにそれはおかしいですよ・・・。今回の状況で鍵を発見する事は、絵里がさっき言った様に一番疑われます。鍵を発見した希が犯人だとしたらリスクが大きすぎますよ。」

花陽「そうですよね・・・。部屋が密室となれば当然どうやったんだ、という話になるのは犯人も想像できます。その時一番疑われる者は、鍵を最初に発見した人物ですよ。」

絵里「・・・!じゃぁ真姫はどうかしら?」

真姫「えぇ・・・!?どうして私なのよ!!」

絵里「あなたはこの別荘の持ち主よ。鍵だって、もしかしたら二本あるのかもしれない!!」

雪穂「そんな、可能性で疑うなんて・・・!」

真姫「はぁ・・・!?そんな事ある訳ないでしょ!鍵は一本しかないわよ!」

絵里「口だけならなんとだって・・・!」

ダンッ!!!

それは空気が破裂する音だった。

メンバーは何事かと、音の発せられた方を見る。

海未「・・・。」

海未が机を叩いた音だった。」

凛「海未ちゃん・・・?」

花陽「・・・?」

絵里「どうしたの?お腹でも痛くなったの?それとも、にこの言う事に何か意見でもあるの?」

海未「・・・止めませんか?もう。」

絵里「何がよ?」

海未「もうやめましょうよ。仲間が少し疑わしい状況にいるからって黒にするのは・・・」

絵里「私だって、こんな事したくなんてないわ。でも誰かが言わなくてはいけないのよ!そして、真姫と希は怪しいわ!二人は黒!疑わしきはk・・・」

バンッ

海未「違います!!!疑わしきは白なんです!!絵里・・・あなたは今仲間が殺されたショックで混乱しているんです。冷静になってください!!」

絵里「私は冷静よ!そこまで言うのなら海未!あんたは誰か疑わしい人物でもいるって言うの!?」

海未「・・・私には、誰が犯人かなんてわかりません。」

絵里「分からないんだったら口を閉じt・・・。」

ダンッ!!!

海未「ですが、考え方を提示する事は出来ます。」

凛「考え方・・・?」

花陽「・・・?」

希「海未ちゃん・・・?」

真姫「海未・・・?」

海未「さっき絵里の話と少し似ますが・・・、何故犯人はドアの鍵を閉めたのだと思いますか?」

凛「・・・?」

絵里「・・・そんなの、鍵がかかっていなければ密室にならないからでしょ?」

海未「その通りです。もっと言うならば、犯人にとって、密室な方が都合はよかった。
希、真姫が疑われているのは、あの部屋が密室だったからです。
ここで犯人の気持ちになって考えてみましょう。犯人からしたら、疑われるのは何としても避けたいはず。もし二人が犯人だとしたら部屋に鍵をかける行為自体、おかしいのです。」

雪穂「・・・どういう事?」

凛「・・・?」

花陽「そうか!希さんは、自ら鍵を取りに行き、真姫さんは自分の別荘だから!!」

海未「その通りです。希の場合、鍵を自ら発見しただけでは無く、自分から鍵を取りにいった。もしかしたらその時に盗ったのではないかと疑われるのかもしれない。
ただでさえ鍵を発見する事で疑われそうな物なのに、さらに疑いのかかる行動を取るでしょうか?」

雪穂「確かにそうですよね・・・、希さんが犯人で、自ら密室にしたのならば、そんな疑いのかかる行為はしない・・・。」

海未「真姫にしてもそうです。真姫が疑われているのは、あのリビングが密室であり、真姫がこの別荘の所有者だからです。
真姫が犯人ならば、鍵をかけて真姫が得する事は一つもありません。」

希「仮に密室にする事の出来る方法があったとして、この別荘の持ち主にしか分からない方法を殺人トリックの一部に使う事は疑われるリスクがあるって事やね?」

凛「確かにそうだよね!真姫ちゃんが犯人なら、鍵をかけて得する事は一つもない・・・!」

花陽「むしろ、そんなトリックを使ったのなら、まっさきに所有者である真姫ちゃんが疑われますね・・・。」

海未「その通りです。私はどうやってあの密室が作られたのかは解りません。ですが、これは真犯人が真姫を、そして鍵を最初に見つけた者をハメるために作られた密室だと思います!!」

真姫「海未・・・。」

希「海未ちゃん・・・。」

絵里「じゃあ、この事件はどうなるのよ!?鍵を掛けられそうなのは、この二人しかいないのよ!?私だって二人を疑いたくはない!じゃあ誰がどうやって・・・」

海未「絵里、もう止めましょうよ、犯人を捜すのは・・・。」

絵里「え・・・。」

海未「どうせ私たち素人があーだこーだ言い合っても解決するわけないんです。
私たちが今すべきなのは人を殺した恐ろしい犯人を見つける事ですか?違いますよね?
警察が来るまで生きる事です。
犯人は警察がきっと見つけてくれます。この中にいても、いなくても」

絵里「でも海未・・・!!あんただって犯人を見つけたいんじゃないの!!復讐したいんじゃないの!?メンバーはあなたにとって大切な・・・」

海未「えぇ!!大切な親友です!犯人も分かるなら罰を与えたい!!でも、それでもし見つけたとして、私が復讐をしたら、皆、悲しむと思います。」

花陽「海未ちゃん・・・」

希「・・・」

海未「だから・・・止めましょう・・・?」

絵里「・・・悪いけど、私は・・・、海未、あんたの言いたい事は分かった。
でも、それでも私は、この中に犯人がいるって考えは変わらない。
・・・言葉は悪いけど、疑わしい人と一緒になんていられないわよ。
私は部屋に戻るわ。」

希「・・・!?」

真姫「っ・・・!」

雪穂「・・・。」

凛「・・・!?何を言ってるの絵里ちゃん!!」

海未「もしかしたらこの島に十二人目がいる可能性も0じゃないんですよ!?
一人では危険すぎます!!」

絵里「大丈夫よ、犯人はこの中にいる。私はそう思っているから。」

海未「そんな事を言っても・・・。」

雪穂「じゃあ、こうしましょう。」

雪穂が手をポンと叩く。

雪穂「二つのチームに分けましょう。今七人いますから、3:4で分けるんです。
そうすれば、どちらも孤立しなくて済みますよね?」

花陽「確かにそうすれば大丈夫かもですけど・・・。」

海未「しかし・・・やはり危険ではないですか?犯人は4人を殺しているんですよ?
それを下回るのは・・・。」

絵里「雪穂ちゃん、これは私の我儘だから無理して付き合う事はないのよ?」

雪穂「絵里さんの気持ちも分かるんです。こんな無人島に来てまで私達を殺しに来る物好きがいるとは思えない。だったら犯人はこの中にいる・・・。そう思うのは当たり前です。」

凛「そんな・・・!?雪穂ちゃんも、この中に犯人がいるって言いたいの!?」

雪穂「そうは言っていません。ただ、絵里さんの考えも分かると言いたいんです。
一人になって閉じこもりたい気持ちも分かる・・・しかし、絵里さんを一人にする訳にはいきません。
何故、犯人は手間のかかる密室にこだわったのか?それは、私達を疑心暗鬼にさせる為だと思うんです。」

花陽「・・・私達が仲間割れを起こす様に犯人が誘導しているって事?」

雪穂「仲間割れを起こさせて孤立させる、まさに今、この状況じゃないですか?」

絵里「・・・そういえば、そうね。」

希「一理あるわぁ・・・。」

雪穂「本当ならば、皆で固まって一つの場所で過ごすのが一番です。
しかし、絵里さんも思う所があるでしょう。
今はお互い頭を冷やす時間が必要だと思います。
何も、ずっとそのままでいるって訳じゃないんですから、
気が向いたらその時もう一度話し合えばいいんですよ。」

絵里「雪穂ちゃん・・・ゴメンなさい、上級生として恥ずかしく思うわ。
私、亜里沙をあんな目に合わされて、ちょっとどうかしていたわ。」

雪穂「・・・いいんですよ、それが普通です。」

凛「とても年下とは思えないにゃ!」

海未「確かにそうですね、今一番冷静なのは、どうやら雪穂の様です。
雪穂の案に従いましょうか。」

こうして、雪穂の案を採用する事になり、雪穂、絵里、凛のチームと、海未、希、真姫、花陽の二チームに分かれる事になった。

絵里「私達は雪穂ちゃんの部屋にいる事にするわね。」

花陽「本当に、大丈夫なんですか?」

凛「大丈夫!ちゃんと鍵も預かったし、施錠していれば誰も入ってこれないよ!」

個人の部屋は、ベッドルーム、トイレ、バスルームで構成されている。

窓はあるがベランダは無いので、部屋に入るには扉を使うしかなく、

外から扉を開けるには今、凛が持っている鍵を使うしかない。

扉は鍵とチェーンで施錠できる様になっている。

真姫「何かあれば、すぐに連絡するのよ、いいわね?」

真姫は籠城の前に管理室に立ち寄り、メンバー全員の部屋の鍵を支給し、二階リビングの鍵を壊して海に放り投げた。

これが今、真姫にとって潔白を証明する精一杯の事だった。

絵里「真姫、希。あなた達を疑ってしまって本当に申し訳ないわ。
もしあなた達が犯人でないのなら、明日、じっくり謝らせて?」

希「ええよ、そんな事。無事でいてな、えりち。」

絵里「希もね。」

凛「じゃあ皆、何もなくても、夕方くらいにまた連絡するにゃ、その頃には頭も冷えてるよ!」

真姫「凛、絵里、雪穂これを持っていきなさい。」

真姫が凛に渡した物は先ほどドアを破るのに使った、折り畳めるコンパクトサイズの斧だった。

真姫「護身用よ。そっちは人数も少ないし、部屋も狭いわ。
持っていきなさい。」

絵里「・・・分かったわ、ありがとう。」

海未「皆、本当に気を付けて下さいね!」

凛「じゃあ、海未さん、行ってきます!」

ギイイイイイイイイイイイ

ガチャン

三人は出て行き、扉は閉ざされた。

海未「・・・本当に、大丈夫でしょうか・・・?」

希「信じるしかないわ・・・。」

真姫「施錠をちゃんとしていれば大丈夫よ。
鍵もかけられるし、チェーンロックもある。
窓からは出入り出来ない。
完璧よ。」

海未「・・・。」

真姫は楽観しているが、犯人は鍵のかかった密室から姿を消しているのだ・・・。

と、いう事は鍵のかかった部屋に侵入する事も出来るのではないのか・・・?

とても安心とは言えない・・・。

警察は天気の影響で迎えには来てくれない。

激しい雨と風は弱まる気配が無く、天気予報では明日の朝には止むと言っていた。

今は午後一時過ぎ・・・。

明日の午前七時に警察が迎えに来るとしても、後十五時間以上もある・・・。

果たしてそれまで、生きていられるのだろうか・・・?

もしかしたら、犯人は今も、虎視眈々と狙っているんじゃないか?

海未の悪い予感は、窓に写っている、暗雲たる雲の様にモクモクと膨らんでいく。

そして、その予感がそう遠くないうちに当たる事を海未はまだ知る由も無かった。

今日はここまでっす 意味わかんねって所がありましたら指摘オナシャス

>>46
にこの言うことに何か意見でもあるの?
ってミス?
後前の話は誰かが書いた創作だったってことでいいのか

>>46のセリフを一部修正

× 絵里「どうしたの?お腹でも痛くなったの?それとも、にこの言う事に何か意見でもあるの?」

○ 絵里「どうしたの?お腹でも痛くなったの?それとも、私の言う事に何か意見でもあるの?

>>54

指摘ありがとうです。創作かどうかってのは話が進むにつれて、分かる・・・様にしたいです。

真姫家 別荘跡地にて


ツバサ「本当にありがとうございました!わざわざ船を出してくれるなんて!」

船長「いやいや、いいのさ!A-RISEのファンとしてこれくらい当たり前の事だよ!」

あんじゅ「おじさん私達のファンだったの!?後で色紙持ってきてよ!サインしてあげる!」

船長「本当かい!?それは家宝にするしかないなぁ!」

ツバサ「じゃあ、二時間後にまたよろしくお願いしますね!」

船長「おうよ!ツバサさん達も気を付けるんだよ!!まぁ、こんな島何もない島だ、
危険も無いと思うがな!」

あばよー!と言って、船長は船のエンジンをいれて、本島へ戻って行った。

あんじゅ「良かったわね、正直な所、今日中には島につけないんじゃないかと思っていたわ。」

ツバサ「交通面の準備はあんじゅの担当だったでしょ・・・。」

あんじゅ「まさか、公的な船が無いとは思わなかったわ・・・。」

港に着いたは良いが、島へ行く公的な船は無かった。

もとよりあの島は西木野家の所有地であり、戦時中は日本軍が使っていた島で、

多くの戦死者がいたとかなんとか、要するにいわくつきの島としても本島の住民からは

恐れられてきた。

その上、十年前の事件により噂に尾ひれはひれがついてしまった。

おかげで、今あの島に好んで渡ろうとする連中はいない。

捜査の邪魔にならないのでちょうどいいと思ったツバサ達だったが・・・。

ツバサ「しっかし、テレビで見たまんま、何にも無い島ね、これは。」

あんじゅ「島の端から端まで、障害物が何も無いわね。
都会じゃなくてもお目にかかる事は出来ないわ。」

実際に島に来た事はない二人だが、テレビやニュース、警察の資料で何回も見たその光景は、どこか懐かしさを感じる。

ツバサ(穂乃果さん、皆さん。遅くなってごめんなさい。
もう何もかも手遅れかもしれないけど、自己満足なんだろうけど、
この事件を解決してみせますから・・・。)

あんじゅ「ツバサ、見えてきたわよ。あれがどうやら『隠し小屋』みたいね。」

ツバサ「・・・そうみたいね。」

爆発の範囲はとても大きく、調査によれば爆弾の量は900トンと言われている。

そんな物が爆発すれば、小島ならば、何も残らない。

しかし、島の端っこにポツンと建っているその小屋は、爆発に巻き込まれない様に計算して建てられたようだ。

ツバサ「犯人は、この小屋に逃げ込んで爆発から難を逃れたって事ね・・・。」

ギイイイイイイイイイイイイイイイイ

ツバサが小屋を開ける。

あんじゅ「・・・ほこりまみれね・・・。」

ツバサ「管理する人もいないからね。」

中はほこりまみれで、窓から射す光だけが光源だった。

あんじゅ「ベッド、イス、机・・・、家具はこれくらいか・・・。」

ツバサ「そして、この地下通路・・・。」

小屋の中央の床に埋めてある扉・・・。

ツバサがそれを開けると、梯子がつるしてあった。

ここから1m梯子を下りて、5km程歩くと、隠し部屋にたどり着くと言われている・・・。

何が隠されているのかは、今となっては知る由も無い。

あんじゅ「にしても、ここに手がかりがあるのかしら・・・?」

ツバサ「あると思って探すしかないわね・・・。始めましょうか。」

二人は軍手をつけて、この小屋を調査する。

あんじゅ「でも警察はもう、あらかた調べ尽くしたんでしょ?」

ツバサ「警察が調べ尽くした後、犯人が何かを残したのかもしれないわ。」

あんじゅ「何でそんな事を・・・?」

ツバサ「ここに来た人に、メッセージを届けたいのかもしれないわ・・・。」

あんじゅ「・・・ふーん。」

ツバサ「ほら、この机持って!あんじゅ!」

あんじゅ「ハイハイ、せーの!!んんんんんおもいいいいいいいいいい!!」

○月×日 午後 15時 30分 3Fリビングにて

三階のリビングに戻った彼女らは、軽い食事を取る事にした。

昨日から彼女たちは何も食べてはいないのだ。

食糧は島に行く前に大量に買い込んでいたので問題は無かった。

人間正直な物で、あのようなトラウマな事件に遭遇しても三大欲求には勝てないらしい。

食事をすれば便所に行きたい者や、ちょっと違う空気を吸いたい者もいる。

海未は危険ではないか?と発言したが、他のメンバーがどうしてもと頼むので、一人で行動しない事を取り決めてしぶしぶ了承した。

しかし、この館で2人も殺されたことは紛れもない事実。

メンバーは許可が降りてもほんのちょっと廊下で空気を吸うと、

そこにいるのが怖くなりすぐにリビングに戻るのだった。

花陽「雨、止まないね、むしろどんどん激しくなってる・・・。」

海未「天気予報を調べましたけど、やはり明日の午前には止むそうです。
もうちょっとの辛抱ですよ。」

真姫「警察にもう一度連絡したけれど、船の準備はもうできているそうよ。
この天気が止めばすぐにでも来てくれるみたい。」

希「なんにせよ、今日一日は自衛をしなければいけないって事ね・・・。」

海未「・・・本当にこれで良かったんでしょうか?」

真姫「海未、それどういう意味?」

海未「いえ、賛成した立場で言うのもアレなんですが、二チームに分けて果たしてよかったのかと思いまして・・・。」

花陽「で、でもあの状況ならしょうがないんじゃ・・・、それに・・・。」

海未「花陽の言いたいことはわかります。犯人はこの中にいる可能性が高い。
しかし、もし第三者が犯人ならばあの密室は簡単に実行できると思うんです・・・」

希「え!?どうゆうことなん?」

花陽「???」

海未「簡単ですよ。二人を殺して鍵を閉めた後、どこかに隠れればいいんです。」

花陽「あっ・・・!」

海未「あの時、私たちは混乱していたこともあって、ソファの中とか、クローゼットの中とか、死角になる所は見ていません。
最近ニュースで冷蔵庫に入った事を呟いて捕まった、なんてニュースもあります。
人間入ろうと思えば案外どこにでも入れるんじゃないでしょうか?
そう考えると・・・あえて密室にして真姫や希に疑いの目を向かせたのも、納得がいくんです。」

真姫「でも一体だれが・・・」

海未「私たちはスクールアイドルです。ありがたいことにラブライブを優勝できるほど、人気もでました・・・。その中に、熱狂的な・・・その・・・ファンも一人はいるのではないでしょうか・・・。」

花陽「・・・。」

希「そういえば最近ニュースでやっていたわ・・・。
スクールアイドルだけを狙った事件が起きているって・・・。
幸いまだ直接的な被害者はでていないけど確かにそういうのがいてもおかしくはなさそうね・・・。」

海未「この島には十一人しかいません。
いないはずなんですが・・・もしかしたら十二人目がいるのかも。」

希「怖いわ・・・」

海未「そもそも、何故犯人は今私達を殺そうと思ったのでしょうか?」

花陽「・・・?どういう事ですか?」

海未「私達を殺したいのなら、それこそ街中で殺した方が捕まるリスクは圧倒的に下がりますし、この雨で私達はもちろん、犯人ですらこの島から逃げる事は出来ない。何故このタイミングで決行したのか・・・。」

希「確かにそうやね、まともな人間なら捕まった時の事を考える・・・。」

真姫「殺人犯の考える事なんて、分かりゃしないわよ・・・。」

海未「もしかしたら、この状況だからこそ、この無人島にいるからこそ、犯人は殺人を決行したのもしれません・・・。
真姫、この島の秘密、何か知りませんか?」

真姫「秘密ねぇ・・・、私は碑文の事しか思いつかないわね。」

希「碑文って、昨日ホールにあった、石に書いてあったやつの事?」

真姫「そうそう、私はそれくらいしか思いつかないわね・・・。」

海未「碑文ですか・・・、にこと穂乃果が興味ありげに見ていましたね。」
真姫「そうね、結局解けなくて、うーうー言っていたけど。」

海未「・・・。」

希「まぁ、今はそれよりも明日まで生き残る事の方が大事やで。そうやろ?」

海未「え、ええまぁ・・・。」

海未(この無人の別荘で、しかも外からも中からも干渉できないこの状況で、何故犯人は殺人を実行したのか・・・警察が来るまで私たちはこの島を出ることができない。
それは犯人も同じです・・・。個人に恨みがあるのなら、わざわざ犯人が限定されるここで殺す必要はないはず・・・。それこそ町中で殺せばいい、にも関わらず、この無人島で殺すと言うことはきっと意味があるはずなんです。
・・・わかりません。犯人は十二人目なのか・・・、この中にいるのか。)

花陽「もう、あれから三時間も経っています。
そろそろ絵里ちゃんの頭も冷えたんじゃないですか?」

希「・・・そうやね、そろそろ話し合っても良い頃だと思う。」

真姫「そうね・・・。」

花陽「ご飯だって、まだ食べていないと思いますよ?食事はとらなきゃいけません!でないと大変ですよ!」

花陽が空気を和ますように明るく言う。

海未「ははは・・・、そうですね。」

海未はその気遣いに感謝しながら、携帯電話を取りだした。

海未「じゃあ、電話しますよ?」

prrrrrrrrrr・・・prrrrrrrrrrr・・・

真姫「誰に電話しているの?」

海未「絵里です。」

prrrrrrrrrrr・・・prrrrrrrrrrr

花陽「・・・どうしたの?」

prrrrrrrrr・・・prrrrrrrrrrrrrr

海未「電話に・・・出ません・・・。」

希「えりち、寝ているんかな?他の人にかけてみよ。」

海未「え、ええ・・・。」

その後、海未達は雪穂、凛に電話をかけてみたが、出る者は一人もいなかった・・・。

海未「ダメです!!でません!!」

希「ウチも電話してみたけど、でないわ!!!」

花陽「私もです!!」

海未「っ・・・!」

海未は、もう一度絵里に電話をかける。

海未は頭の中で、危険を知らせるサイレンが鳴り響くのを感じた。

prrrrrrrrrrrrrrrrrr・・・

海未が切ろうとしたその時・・・

プツッ!

海未「・・・っ!繋がりました!」

希「・・・っ!嘘!?」

真姫「なんて・・!?」

海未「もしもし・・・!?絵里ですか!?もしもし・・・!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

海未はスピーカーモードにして問いかける。

しかし、電話からは、ツー、ツー・・・という電話特有の通話音?しか聞こえてこない。

希「えりち!?えりち!!返事して!!」

カチャッ・・・

その時、何かを固定する、・・・引っかける金属音の様な物が聴こえる。

海未「っ・・・静かに!!何か聴こえます!!」

海未はボリュームを最大にして耳に神経を傾ける。

すると・・・

パアン!!!!

海未「っ・・・!!」

今までの小音とは打って変わって、何かが破裂する音がスピーカーから響き渡った。

花陽「・・・え?これって・・・。」

一同は、唖然とするしかない。

だってこの音って・・・、ドラマとかでよく聞いた事ある・・・。

希「銃・・・声・・・?」

希がそう言うのと同時に・・・

パアン!!!

先ほどと同じ、何かが破裂した音がスピーカーから発せられた。

花陽「う、うわああああああ!!!」

海未「まずい!!!急いで向かわないと!!」

真姫「・・・、でも海未、これって!!」

海未「まだ諦めないで下さい!
皆、何か武器か身を守れる物を!!」

海未と希はリビングに飾ってあった、甲冑の鎧の盾を。

花陽と真姫はフライパンを持ち、急いで雪穂の部屋に向かう。

二階 廊下 

希「海未ちゃん・・・!?そっちは雪穂ちゃんの部屋ちゃうで!?」

海未「少し確かめたい事があるんです!ついてきてください!」

海未は二階のリビングにたどり着く。

それは、先ほど惨劇があった場所・・・。

しかしここは、真姫が先ほど鍵で施錠したはず・・・。

海未「くっ・・・!」

海未はリビングのドアノブを回す。

・・・ドアは開かない。

ガムテープで補強された箇所を見ても、特に変わった様子は無いが・・・。

真姫「開くはずがないでしょ!?さっき私が施錠したんだから!」

花陽「海未さん!?どうしたんですか!?」

海未「いえ・・・、急いで雪穂の部屋に向かいましょう!」

一同は、急いで雪穂の部屋にたどり着く。

電話を切ってから、まだ三十秒程度だ。

すると、

希「なんやこれ・・・!?」

まるで、遅れてきた海未たちを待っていた様に、封筒が丁寧に置いてあった。

真姫「誰がこんな物を・・・!?」

封筒には『これを見ている者へ。』

と書いてある。

海未はそれを手に取り、中を開ける。

中には、手紙と・・・・、

希「鍵・・・!?」

鍵が入っていた。

鍵には、雪穂の部屋の番号が書いてある・・・。

海未「そんな、まさか!!」

ガチャガチャ!!!

真姫はドアノブを捻る。

真姫「・・・鍵がかかっていて開かないわ!!!」

海未「貸して下さい!!」

ガチャガチャガチャ!!!!

ドアは真姫の言った通り、鍵がかかっている。

ドンドンドンドン!!!

希「凛ちゃん!!雪穂ちゃん!?えりち!!!開けて!ここを開けて!!:

希が必死な形相で扉を叩く。

花陽「・・・。」

海未「希!どいて下さい!」

海未は封筒をポッケに仕舞い、扉に耳をつける。

花陽「海未さん?」

海未「テレビの音はします・・・、でもそれ以外は・・・!」

その時、

パアアン!!!!

今さっき海未の電話のスピーカーから発せられた音が、今度は扉の中から発せられる。

生まれて初めて聞いたその音はとても大きく、トゲトゲしくて、鋭利な刃物の様に思えた。

海未「っ・・・!!」

花陽「どうしましょう!!これ、銃声ですよね!?」

希「・・・そんな、アホな・・・。」

海未「くっ、ドアを開けます!!」

海未は封筒に入っていた鍵をドアノブに差し込む。

鍵は何の抵抗も無く、ドアに吸い込まれていき、鍵を回そうとする。

カチャン・・・。

回しきれてしまう・・・。

確かにこれは、雪穂の部屋の鍵・・・!

海未「っく・・・!」

早くこの扉を開けて、三人を助けなければいけない!

でも、見れない!!

だってこの鍵が・・・、雪穂のもっているはずの鍵がここにあるって事は・・・。

海未はそれ以上考えない様に、ドアノブを回して勢いよく引く。

ドアは途中まで開いたが、

ガチャン!!!!

希「・・・チェーン!?」

それはドアのチェーンを引っ張る音だった。

チェーンは外からは掛けられないものだ。

・・・誰かが部屋にいるんだ!!

部屋の中からテレビの音声が漏れて聞こえた。

花陽「どうしましょう!?」

真姫「黙って仲間が殺されているのをポカンとしている訳にはいかないわ!!
チェーンを破らないと!!」

海未「何か、あるんですか!?」

真姫「・・・リビングのドアを破る斧は雪穂に渡してしまったから・・・、
検討もつかないわ!!」

花陽「とにかく探しましょう!!」

真姫「私は一階を探してみる!希は二階!海未と花陽は三階をお願い!!」

海未「分かりました!!」

希「了解や!」

メンバーはそれぞれ、各階にちらばった。

三階

海未「とは言っても、どこから探したら・・・!」

花陽「・・・リビングの台所に何かあるかもしれません!」

海未「・・・探してみましょう!」

二階

希「・・・一体どこを探したら・・・、部屋には鍵がかかってるし・・・。」

一階

真姫は管理室にやってきていた。

斧を見つけたのも管理室なのだから、他にも何かあると思ったのだ。

真姫「何か、何かないの・・・っこれなら!」

それは、マルタを割る時に使う、斧だった。

先ほどの斧よりは重いが、なんとか真姫でも持てそうだ。

真姫は急いで二階に上がり雪穂の部屋の前にたどり着く。

真姫「っ・・・!」

ガチャガチャガチャ!!

ドアを開けようとしたが、やはりまだチェーンがついていた。

真姫は斧を振り上げてチェーン目がけて振り下ろす!

バキン!!

真姫「っく!」

チェーンには当たったが、刃が少し外れてしまった。

真姫「もう一回!!」

真姫は位置を少し修正して、もう一度振り下ろす。

真姫「おりゃあああああああ!!!!」

バキンッ!!!!

何かが割れる音がした後、チェーンが割れた。

真姫「やった!!!」

そこに、海未、希、花陽が来た。

海未「スゴイ音がしましたけど、どうしました!?」

希「何かを叩きつける音だったけど・・・チェーンが開いたの!?」

花陽「中に入りましょう!!」

真姫「えぇ!!」

海未「待ってください!!中には犯人が・・・!」

三人は海未の言葉を聞かずになだれ込む様に中に入る。

すると、

『きゃあああああああああああああ!!!!!』

部屋の中からはまたしても悲鳴が響き渡る。

海未はその声を聴いて、半ば諦めた様に部屋に入る。

海未「これは・・・!?」

部屋内では、雪穂、絵里、凛がバラバラに倒れていた。

着衣に乱れは無く、先ほどの様に、部屋内も血まみれでは無い。

ただ少し、三人の額の真ん中に、ビー玉より少し小さいだろうサイズの穴が開いていて、

そこから、四方八方に血が飛び散っているだけなのだ・・・。

希「み、皆、射殺されたって事なん!?」

花陽「凛ちゃ、凛ちゃあああああああああああああん!!!!」

花陽は凛の死体を抱き上げて、悲鳴にも似た叫びを上げる。

凛の額から溢れた血が花陽の服を汚していき、赤く、黒く染めていく・・・。

真姫「何で、どうして銃でなんて・・・!!」

海未「くっ・・・!!!」

ドンッ!!

海未は悔しさから拳を床に叩きつける。

海未(完璧に、油断をしていたとしか言えません・・・!
犯人は怯えるものだと・・・その結果がこれ・・・!!
・・・とりあえず、今出来る事、出来る事を・・・!)

海未「皆さん、よく聞いてください!今すぐ、この部屋を調べましょう!!」

希「・・・どういう事なん!?」

海未「鍵は部屋の外にあり、中にはチェーンロックがかかっていました。
そして真姫がそれを割って私達は中に入った。
つまり・・・!」

真姫「犯人が、部屋の中にいて隠れているって事ね!」

希「・・・!」

海未「そうです!!犯人は今、この部屋の中にいます!!
武器を持っている可能性もあります!
皆で慎重に探しましょう!!」

メンバーは部屋内を徹底的に調べた。

ソファの中、クローゼットの中、床下が無いか、天井裏が無いか・・・。

その結果、雪穂の部屋には誰も隠れていない事が明らかになった。

希「・・・そんな!?こんな事はありえないやろ!
絶対犯人はこの部屋に隠れているはずやのに・・・!」

海未「・・・窓も閉まっていますし、部屋内も何かを動かした形跡すらありません。
犯人は消えたとしか・・・!!」

真姫「嘘でしょ・・・!?
だとしたら、おかしいじゃない!!」

そう、これは最初に起きた密室事件の再現と言えるだろう。

ドアはチェーンロック、窓には鍵。(窓の外は海)にも関わらず、犯人は消えた・・・。

真姫「・・・皆、部屋に戻らない?
ここにいても、気分を害するだけだわ。」

希「・・・そうやね、現場をあんまり荒らす訳にもいかないし。
・・・海未ちゃん?」

海未「・・・そうですね、行きましょうか・・・ん?」

海未の目に偶然目に入ったもの・・・それはこの部屋に入るために斧で切られたチェーンだった。

海未「・・・。」

そのチェーンはまるで、捻じれた様に切られていた。

海未「・・・・・・・・・・・・・。」

真姫「海未・・・?」

海未「・・・何でもありません。」

海未はそう言って部屋を出る。

希「ここの部屋の鍵って、誰が持っていたっけ?」

海未「私です、今閉めますね。」

ガチャン

海未は鍵を使ってドアを閉める。

海未「・・・あれ?」

希「どうしたん?海未ちゃん。」

海未は、ドアの横の壁に凹んだ傷があるのを発見する。

花陽「なんですか?これ。」

海未「さぁ・・・まるで、何か固い物を何度もぶつけた様な傷ですねこれ・・・。
ここだけ凹んでいます・・・。」

真姫「犯人が、密室から脱出する為のトリックに使ったのかもしれないわね・・・。」

希「でもこれだけでどうやって・・・?別に中と繋がっている訳でもないんやで・・・?」

海未「・・・。」

チェーンと凹んだ痕・・・。

これらがどう繋がるのか・・・。

希「・・・とりあえず、部屋に戻ろうか・・・。」

海未「そうですね・・・。」

花陽「これから私達、どうなっていくのでしょうか・・・?」

花陽の問いに、前向きな答えを思いつく者は、いなかった。

~▽月□日 音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年と■日後~

真姫家 別荘跡地にて

ツバサ「・・・ん?」

あんじゅ「どうしたの、ツバサ?」

ツバサ「ここ、何か外れそうじゃない?」

あんじゅ「・・・?あ、本当だ!!!」

ツバサが指を指したのは、床の一部分・・・。

そこだけ、よく見ないと分からないが、床の一部分が外れる様になっていた・・・。

ツバサ「・・・よいしょ!!」

あんじゅ「なにこれ・・・?手紙?」

ツバサ「あけるわよ!」

手紙にはこう書いてあった。

『仲間を殺しながらも、生き永らえてしまった私を、どうか許してください。

私が全て悪いのです。 黄金なんて、あんな物発見するんじゃなかった。

そうすれば、私達はいつまでも、親友のまま、共に歩む事が出来たのに・・・。

これを見ているあなた。どうか、どうかこのまま、安らかに眠らせてあげて下さい。

私が全て、全て悪いのですから。』

その文章の下には、これを書いたのであろう、人物の名前が書いてあった。

あんじゅ「ツバサ、これって・・・。」

ツバサ「えぇ・・・、そうね。」

ツバサ「『音野木坂文書』を投下した犯人は・・・、」


ツバサ「犯人は、あなただったのね・・・。」

ツバサ「      。」

○月×日

三階リビング 午後 16:20 

真姫「警察に電話してきたわ・・・・。」

海未「なんて言っていましたか・・・?」

真姫「さっきと同じよ。皆で一つになって、単独行動はしない様に。
雨と風が止んだらすぐにでも船は出せる準備はしてあるって。」

海未「そうですか・・・。
しかし、この天気では・・・。」

花陽「天気予報もさっきと変わりません。
やはり、今日一日は来てくれないと思った方がいいでしょうね・・・。」

希「そうやね・・・、この風と雨じゃ、無理よね。」

風と雨は次第にドンドン激しくなっていく。

これでは外に出る事すら、危険だろう。

花陽「でも、こうしてる間にも・・・いえ、何でもありません。」

雪穂達が殺された事により、犯人の目的はメンバーを皆殺しにする事だと改めて確認できた。

それはつまり、自分は今、命の危険にあると言う事。

メンバーは精神的にも追い詰められていた。

だが、明らかになった事もある。

花陽「あの、本当は今、言う事じゃないんですけど・・・。」

希「どうしたん?言ってみ?」

花陽「雪穂ちゃん達がその、ああなったって事は、私達には犯行は無理ですよね・・・?」

海未「・・・確かにその通りです。雪穂達が出て行ったのが十二時五十分ごろ・・・。
電話を掛けたのが十五時三十分・・・その間の三時間、私達は部屋にいました。」

希「トイレとか外の空気を吸いには行ったけど、1、2分程度や。
その間に殺人を犯すのは無理やで・・・。」

花陽「そもそも、電話をかけた時、銃声がしましたよね?その時私達は一緒にいましたよ?」

真姫「それに、私と希はただでさえ疑われている。
あの用心深い絵里が、私達が訪ねに行っても開けてくれるはずは無いわ。」

海未「しかし犯人が雪穂の部屋に入った事は、鍵が部屋の前に置いてあった事から明らかですよ?」

真姫「・・・どうやって部屋の中に入ったのかは考えない事にして、もう一つ問題があるわ。
どうやって犯人は雪穂の部屋から姿を消したのか、よ。」

海未「それもありますね・・・。私達が雪穂の部屋内に着いた時、銃声の様な音が聴こえました。つまり、犯人はその時部屋にいたという事です。」

希「・・・これならどうや?三人は海未ちゃんが電話した時にはすでに死んでいた。」

海未「電話から聴こえてきたあの銃声はダミーだった・・・、という事ですか?」

希「そうや、私達が雪穂ちゃんの部屋の前で聴いた銃声は、何かの仕掛けで、
犯人はすでに脱出していた。これならイケルんと違うか?」

花陽「確かに・・・。」

真姫「・・・希、それは無理よ。」

希「なんでや?」

真姫「扉にはチェーンがかかっていたのよ?
希の方法でやるならば、チェーンをかけたまま、部屋から脱出しなければいけないわ。」

海未「それに、銃声を出す仕掛けなんて、部屋にはありませんでしたよ・・・?」

海未(何故犯人はそこまでして密室に拘るのでしょうか・・・?)

最初の密室は海未の言った通り誰かが隠れていた説とメンバーの誰かが密室に見立てていた、で少し苦しいが説明出来る。

しかし今回はどうだろうか。

窓には鍵がかかっていて、ドアには鍵とチェーンロック。

もちろん、この別荘には隠し扉や、秘密の通路といった物は存在しない。

つまり、最初の密室は真姫や希、外部犯を疑えるので成立せず、次の密室は『全員を疑えない』から成立しない。

希「じゃあこれはどうや?犯人は部屋の外から三人を殺したんや。
三人の死因は拳銃による射殺やろ?鍵さえどうにか出来ればチェーンがしてあっても隙間からどうにか出来るんじゃない?」

海未「確かに鍵さえどうにか出来れば多少の隙間が空きますが・・・。」

真姫「無理ね・・・雪穂達はバリバリ警戒をしていながらも、眉間を撃たれて一発で殺されていたのよ?鍵をどうにかされた時点で不審がるでしょうし、視界の狭い中で三人をキレイに一発で仕留めるなんて不可能よ。」

海未(もうなんか考えるのがいやになってきました。いっその事魔法使いかその手の専門家がやったと思いたいくらいです。しかし本当に無理なんでしょうか・・・?
チェーンをかけて外に出る事は・・・?)

花陽「あの、皆さん・・・、例えばなんですけど、部屋の中からじゃなくて、外からチェーンをかけるというのはどうでしょうか・・・?」

希「外からチェーン・・・、確かにそれは考えなかったわ、でもそんな事が出来るんかな?」

真姫「外からチェーンをかけられるのなら、外からチェーンを外せるという事だわ。
そんなチェーンに意味は無いわよ・・・。
それに、あのチェーンは特別なチェーンなんかじゃないし、どこにでもある普通のチェーンよ?」

花陽「実は、こういう話を聞いた事があるんです。
手紙を運ぶ郵便屋さんが、針金を曲げた特殊なヘラを持っているって話。」

希「というと?」

花陽「マンションのポストに手紙を入れる時に名前がポストに書いていないから数字だけを見て手紙を入れるんだけど、その時に間違えて入れちゃうって事が結構あるらしいの。」

その時は本来ならば誤認配達である事を家主に言えばいいのだが・・・、大抵家主は留守。

帰ってくるまで待つのも手間である。

花陽「だから、そうなった時に針金を曲げたヘラを持っていくみたいです。
間違えた時に取り出せる様にって。」

真姫「そういえばうちの病院でもあったわね。
なんかの拍子で誰も入っていないトイレの鍵が閉まっちゃった事が。
でもベテランの看護師さんが定規を器用に使って開けてくれたわ。」

希「でもその話と今回の話はどう関係があるの?」

海未「つまりこう言いたいのでしょう。
ポストやトイレも鍵がかかっているのに開ける、取り出せる様な方法があった。
つまり今回のチェーンも外から施錠出来る方法があるのではないか?そうですね?花陽。」

花陽「うん、チェーンなんてもう何年も前に出来た施錠手段だし、もしかしたら糸とかを器用に使えば、出来るんじゃないかなぁ・・・って。」

海未「でも、糸だとか、その様な仕掛けはありませんでしたよ?糸やチェーンをはめる穴もよく見ましたけど・・・。」

希「・・・でも犯人は一度、雪穂ちゃんの部屋に入っているんやで?それが間違いないとするならば、その方法があるって事や。・・・なぁ?真姫ちゃん?」

そして希は冷ややかな目を真姫に向ける。

海未「・・・。」

海未には希が何を語りたいのか、何となく理解できた。


真姫「え・・・?」

希「え?やないわ。当然そんな事を知っている人物なんて、今この別荘の中では一人を除いているわけない。
この屋敷の事を知っている真姫ちゃんなら、もしかしたらこの屋敷のチェーンを開ける方法も知っているかもしれない!!」

真姫「ちょっと!!!また私なの!?いい加減にしてよ!!それに私はエリーから一番疑われていたのよ?私が訪ねたからって鍵を開けてくれると思うの!?」

希「うるさい!!チェーンを開けられる方法があるなら、鍵も開けられる方法があるんと違うか!?」

真姫「はぁ!?いい加減にしてよ!!!そんなめちゃくちゃで私を犯人にしないで!!それを言ったら、花陽だってどうなの?さっきの例え話を知っているんだから、チェーンを開けられる方法も知っているんじゃないの!?」

花陽「ひどいよ真姫ちゃん!!そんな事知る訳ないよ!!」

海未「二人とも止めてください!まだ十二人目がいる可能性もゼロじゃないんです!!
落ち着いて下さい!!」

そうは言うが、海未も、うすうすは感じていた。

犯人は、この十一人の中にいると・・・。

何故なら第二の殺人の際、三人は眉間を銃で殺されていて、部屋もそれほど荒らされていなかったからだ。

つまり、至近まで怪しまれずに近づく事が出来る人物が犯人、という事になる。

・・・そんなの、今この状況なら、自分たちしかいないじゃないか・・・!

真姫「だから、私じゃないって言っているじゃない!!
そもそも私はあなた達と殆ど一緒だったでしょ!?
トイレに一回行ったけど、精々1,2分程で戻ってきたじゃない!」

花陽「いや、そうとも、限りませんよ・・・?」

希「花陽ちゃん・・・?」

真姫「花陽?」

花陽「雪穂ちゃんの部屋に着く前、海未さんが二階のリビングに寄ろうと提案しましたよね?皆、覚えている?」

希「そういえば、そんな事あったわ・・・、結局ドアが開いていなかったから中には入れなかったけど、あの時の行動はなんなん?海未ちゃん?」

海未「それは・・・。」

花陽「私もそれをずっと考えていたんです。
でも、海未ちゃんの『もしかしたらまだ十二人目がいるかもしれない』という発言で分かりました。」

希「どういう事なん・・・?」

花陽「・・・第二の事件の時です。海未ちゃんが電話をして、犯人がそれを取り、
銃声を聴かせ、私達は雪穂ちゃんの部屋に向かいました。
その時に、海未さんはある仮説を考えていたと思います。
だから、部屋に行く前に、犯人が雪穂ちゃんの部屋にいる可能性が一番高いうちに
二階のリビングに向かったんです。」

希「・・・なんや!?その仮説は!?」

海未「花陽・・・。」

花陽「それは、この中にいる誰か、いえ、もうはっきりと言いましょう。
真姫さんがこの島の犯人、十二人目と繋がっているんではないか?という仮説です。」

真姫「は、はぁ!?どういう事よ!?」

花陽「恐らく海未さんは、電話の時点で三人はもう手遅れと思ったんでしょう。
だから、犯人を見つける為に行動した。」

希「それが、二階のリビングを調べる事だったの?」

花陽「違います、二階のリビングのドアが今でも施錠されているかどうか、それが海未ちゃんは知りたかったんです。・・・そうですよね?海未ちゃん?」

海未「・・・。」

海未は何も答えない。

しかし、その表情を一目見れば、一目瞭然だった。

希「どういう事なん・・・?」

花陽「これは、海未さんの、十二人目がリビングに隠れていて四人を殺し隠れたのではないか?という推理の元の話です。
まず、私達四人では、第二の事件を起こす事はアリバイの関係から出来ません。
殺された三人も同じです。
じゃあ誰なら出来るのか?それは、この島に潜んでいて、リビングに隠れている十二人目にしか出来ない・・・。」

希「そうやね、メンバーの中にはもう、容疑者がいない・・・。」

花陽「しかし、ここで思い出してください。警察からの指示により、二階のリビングは封鎖される事になり、真姫さんが施錠を行いました。この時、隠れていた十二人目はリビングに閉じ込められてしまったのです。」

希「でも、閉じ込められた言うても中から鍵を開ける事は出来るやろ?
だったら意味なんて・・・っ!そうか!だから海未ちゃんはリビングが施錠されているか確認したんや!」

花陽「その通りです。犯人が雪穂ちゃんの部屋にいるのなら、単独犯ならば、二階のリビングは開いているはずなんです!海未ちゃんはそれを確認したくて、二階のリビングが施錠されているかを見に行ったんです!しかし、二階のリビングは、施錠されていた・・・!」

真姫「・・・!」

花陽「犯人は二階リビングに鍵をかけて犯行を行ったんです。
ここから出せる答えは・・・。」

希「十二人目に、この中の誰かが鍵を渡したって事やね・・・?
そして、その鍵を持っていそうなのは・・・。」

真姫「ふざけないでよ!バカバカしいわね!何が仮説よ!?それだって、第一の事件を十二人目が行ったっていう仮説の元に成り立っているじゃない!仮説を元にした仮説なんて何の根拠にもなりはしないわよ!!!そもそも私は皆の目の前で二階のリビングの鍵を壊して海に放り投げたじゃない!見ていたでしょ!?」

希「どうやろうね!?鍵だって別に特殊な物じゃないんやろ?いくらでも複製できるやないかい!それにな、この推理はまだ穴だらけかもしれない!でも、少なくとも第二の事件は十二人目がいなければ犯行を行う事は不可能なんや!それだけでも、この推理を聞き流すのはどうかと思うで?」

真姫「ふざけないでよ!そもそもその推理があっていたとして、何で私が鍵を閉めさせるのよ!?十二人目が疑われるのならば、私は疑いを逸らせる事になるのよ!?
第一の事件と同じよ!私が鍵を閉めて得になる事は存在しないわ!!!」

希「どうやろね!?もし海未ちゃんがあのタイミングで施錠されているか確かめなかったらどうなっていたか!?十二人目はリビングにいないのに私達はリビングにいると思い込んでいる中、事件が発生でもしたら!きっと疑心暗鬼になって、犯人にあっけなく殺されていたと思うで。」

花陽「その通りです。海未さんがあそこで気が付かなければ、十二人目は屋敷を自由に行動できる事を私達は知りえる事が出来なかったでしょう。
真姫さんはリビングに十二人目が居続けている様にしたかったんだと思います。
そうすれば、自分はアリバイを立証し続けながら十二人目に殺人を任せる事が出来ますからね。
メンバーの中に犯人はいると、ますます疑心暗鬼になっていたのかもしれない。」

真姫「そ、そんな・・・こんな仮説、間違っているわよ!!
百歩譲って第一の事件がリビングに隠れていた十二人目だとして、第二の事件の密室はどうなるのよ!?
解けていないじゃない!?犯人はどうやって雪穂ちゃんの部屋に入って、チェーンをかけたまま姿を消したのよ!?」

希「だからそれはさっき言ったやろ!?ここは真姫ちゃんの別荘や!あんたしか知らん、チェーンを外したり、鍵を開ける事の出来る方法を知っているんと違うか!?」

真姫「はぁっ!?そんなアホな事で犯人にされちゃたまったもんじゃないわよ!!!
花陽!?海未!?あんた達もこんな訳の分からない推理を信じているんじゃないでしょうね!?」

花陽「・・・私が言いたいのは、第二の事件を起こす事が出来るのは十二人目だけであり、
この別荘の所有者は真姫さんだという事だけです。」

海未「・・・さっき花陽が言った事は、確かに私も考えていました。
しかし、それを言わなかったのは、真姫を信じているからです。
それに、この考え事態も犯人の計算通りなのかもしれません。」

花陽「さっき言っていた、私達を疑心暗鬼にさせて、内部崩壊はさせる・・・だっけ。」

希「大丈夫やよ、犯人は真姫ちゃんなんやから、真姫ちゃんがどこか行っても何も起きへんって。」

花陽「その通りです。海未さんがあそこで気が付かなければ、十二人目は屋敷を自由に行動できる事を私達は知りえる事が出来なかったでしょう。
真姫さんはリビングに十二人目が居続けている様にしたかったんだと思います。
そうすれば、自分はアリバイを立証し続けながら十二人目に殺人を任せる事が出来ますからね。
メンバーの中に犯人はいると、ますます疑心暗鬼になっていたのかもしれない。」

真姫「そ、そんな・・・こんな仮説、間違っているわよ!!
百歩譲って第一の事件がリビングに隠れていた十二人目だとして、第二の事件の密室はどうなるのよ!?
解けていないじゃない!?犯人はどうやって雪穂ちゃんの部屋に入って、チェーンをかけたまま姿を消したのよ!?」

希「だからそれはさっき言ったやろ!?ここは真姫ちゃんの別荘や!あんたしか知らん、チェーンを外したり、鍵を開ける事の出来る方法を知っているんと違うか!?」

真姫「はぁっ!?そんなアホな事で犯人にされちゃたまったもんじゃないわよ!!!
花陽!?海未!?あんた達もこんな訳の分からない推理を信じているんじゃないでしょうね!?」

花陽「・・・私が言いたいのは、第二の事件を起こす事が出来るのは十二人目だけであり、
この別荘の所有者は真姫さんだという事だけです。」

海未「・・・さっき花陽が言った事は、確かに私も考えていました。
しかし、それを言わなかったのは、真姫を信じているからです。
それに、この考え事態も犯人の計算通りなのかもしれません。」

花陽「さっき言っていた、私達を疑心暗鬼にさせて、内部崩壊はさせる・・・だっけ。」

希「大丈夫やよ、犯人は真姫ちゃんなんやから、真姫ちゃんがどこか行っても何も起きへんって。」


それは、希からすれば、冗談のつもりだったのかもしれない。

今朝からの様々なストレスが合い重なって、希にそう言わせたのだろう。

しかし、それが溜まっていたのは、真姫も同じなのだ・・・。

希のその言葉は、真姫の何かを振り切らせるには十分だった。

真姫「分かったわよ!!!」

バンッ!!!!

真姫は机を蹴っ飛ばす。

真姫「今度は私がここから出るわよ!!!それで文句はないでしょ!!!」

それはまさに売り言葉に買い言葉・・・。

その応酬は続いてしまう・・・。

希「ああそうや!あんたさえいなければ殺人はおきへんやろ!!!とっとと出てきい!!!」

真姫「分かったわよ!!!思えばエリー達が出て行ったのも、私が原因だもんね!!出て行ってやるわよ!!」

海未「そんなっ!?今出て行ったら犯人の思うツボですよ!?」

真姫「うるさい!!私は自分の部屋に死んでもこもってるわ!!
電話には出てあげる!!でもね!!誰が来ても!!誰が来てもよ!!絶対に開けないからね!!」

そう言って真姫は部屋から出て行った。

海未「・・・希。」

希「私は自分のしたことが間違っているとは思ってへん。前に海未ちゃんは真姫ちゃんが疑わしいからこそ疑うのは間違っていると言っていたよね?」

海未「えぇ・・・」

希「確かにその考えも間違ってはないと思う。でもあの時と今では状況が違う!もう疑わしいは白とか言っていられる状況じゃあらへん。
このままでは私たちも殺されてしまうかもしれへんのや。」

海未「そんな・・・そんな事・・・」

花陽「・・・」

希「それにもうこれで、誰も疑わなくてすむんやからな・・・。」

花陽「希ちゃん、それってどういう事?」

希「簡単な話よ。もしこれで真姫ちゃんが死んだら、真姫ちゃんは犯人じゃないって事になる。死なずに明日を迎えれば、やっぱり真姫ちゃん、もしくは十二人目がいるってことになる。まぁその場合は警察に任せれば解決する。私たちはもうこれで、誰も疑わず、ここで犯人に気を付けて籠城していればいいんや。」

海未「そんな・・・死んだら白、死ななかったら黒って・・・そんな・・・。」

花陽「・・・。」

希「とにかく、もう終わった事。もし真姫ちゃんが犯人じゃなかったら、その時は土下座をしてでも謝るつもりよ。」

・・・・・・・・・・・・
真姫は部屋にこもって籠城をしていた。

先ほど宣告した通り、誰が呼んでも絶対に出ないつもりだった。

真姫「・・・後少しって所かしら・・・、あれ、携帯・・・?」

プー!プープー!

真姫はその音に気付いて携帯を手に取る。

どうやらメールが来たようだ。

しかしメンバーとは先ほど仲たがいをしたばかり・・・真姫は元々人付き合いはよくないほうだ。

誰がメールを・・・?

真姫はそのメールを見ると感極まった顔になった。

真姫「いよいよなのね・・・っよし!!最後の仕事ね。」

そういうと真姫は携帯を握りしめ、メンバーにはあれだけ死んでも開けないと言ったはずのドアをあっさりと開け、廊下に消えていった・・・。

三階 リビング

そろそろ本格的に日も暮れる時間になったが雨が降っていて常に曇りなのであまり関係はなかった。

メンバーは夜食を食べ終えた所だった。

その食事はまるでお通夜のよう。

真姫を追い出してから、メンバーはあまりしゃべらなくなった。

それは真姫を追い出して自責の念に駆られているからなのか・・・

海未(一日前はあんなに楽しかったのに・・・どうしてこんな事に・・・)

元々μ’sとして最後に行く楽しい旅行になるはずだったのだ。

それが今ではメンバーの身内まで巻き込んで、七人も殺されている。

海未(せっかく真姫と穂乃果がこの旅行を企画してくれたのに・・・。)

花陽「そういえば海未ちゃん、あの封筒に入っていた手紙は開けたの?」

希「そうや、あの手紙にはなんて書いてあったんや?」

海未「まだ開けていないんですが・・・、あった。」

海未はポッケから手紙を出し、机に開いて置く。

手紙には、こう書いてあった。

『我、西木野卿の後を継ぐ者。

そして、黄金に至る鍵を得し者。

銃痕の残りし頭蓋と、バットがあの日の真実を閉ざす。

我から西木野卿へ、話がしたい』

希「・・・西木野って、真姫ちゃんの名字やろ?やっぱり何か関係があるんやないか?」

花陽「・・・どうなんだろう。犯人が残した物だし、あまり気にしない方がいいと思う・・・。」

海未「・・・そうですね、今はこの事件の事を考えましょう。」

海未達は、二度密室を経験している。

しかし、どれも未だに分からない・・・。


海未(最初の密室と次の密室・・・。共通点は、二階のリビングに鍵がかかっていた事・・・。
もし犯人が、鍵をかけたまま、外に出る方法を使っているのなら、そしてそれは同じ方法ならば、二回目に起きた密室を解けば、全てが分かると思います・・。)

海未(どうすれば鍵がかかったまま中に入れるのか・・・?
鍵は雪穂が持っていて、扉には鍵とチェーンロック・・・。そして、チェーンがかかったまま、犯人は雪穂の部屋から脱出した。
こんな事人間には出来るのか・・・?いや、出来ないでしょう。
出来たとしても、1、2分で出来る仕掛けじゃないはずですし、仕掛けが無いかは徹底的に調べました・・・。そもそも誰が殺したのでしょうか・・・?私達は1,2分トイレなどで部屋を出ていましたが、それ以外は常に一緒にいましたし・・・。)


希「しっかしわからへんな~密室。」

花陽「雪穂さんの部屋に仕掛けは無かったですし、
プロの犯行なら私達が思いつくはずがないですよ。」

海未(私達が・・・思いつかない・・・。)

花陽「だって、それは普通の方法じゃないんですから・・・。」

希「確かにそうやな、犯人に聞いてみたいみたいもんやわ、
どうやって用心深いえりち達を相手に、施錠された部屋の中に気付かれないように入って殺し、チェーンをかけたまま消えたのか・・・。」

海未(・・・普通の方法じゃ無理、用心深い絵里たち・・・、気づかれない様に・・・、
チェーン・・・。犯人ならどうやる・・・?いや、)

海未(・・・私なら、どうやって殺す・・・!?

穂乃果を!にこを!ことりを!亜里沙を!絵里、雪穂、凛!どうやって・・・!
密室が条件なら、私ならこうやって・・・!!)

海未「・・・!!」

希「海未ちゃん・・・?」

花陽「海未ちゃん!?」

海未(最初の事件・・・あの時の死体、状況、第二の事件の、状況、死体、チェーンロック、密室・・・、あっあ、あ、あ、あああああああああああああああ!!!)

希「海未ちゃん!?どうしたん!」

海未は立ち上がり、言う。

海未「皆さん!真姫に話を聞きにいきましょう!!」

希「・・・!?」

花陽「突然どうしたんですか!?」

海未「急ぎましょう!!真姫が危ない!!」

海未の提案に、メンバーは意味が分からなかったが海未の必死な表情を見て、しぶしぶ了承した。

真姫の部屋の前

海未「・・・!?なんですかこれは!?」

希「・・・そんな!?」

花陽「どういう・・・事でしょう・・・。」

真姫の部屋では、いや、部屋の前では今の状況では考えられない光景がそこにはあった。

海未「扉が、開いている・・・。」

真姫の部屋のドアが開いていたのだ。

それも全開で。

真姫がもし犯人でないのならありえない事だ。

メンバーは急いで部屋に入る。

空気は冷えていて、真姫の姿はどこにもなかった。

花陽「ど、どういう事でしょう・・・!?」

希「どこにもいないって、そんな!?」

海未「・・・。」

希「まさか、犯人に拉致されて危害を加えられているとか!?」

花陽「・・・そう見せかけて、真姫ちゃんを探す為に分散させるのが狙いなのかもしれないですよ・・・?」

希「・・・確かにそうやな、まだ真姫ちゃんが拉致されたのが決まった訳やない。
・・・もしかしたら今もどこかで隠れていて、私達を狙っているのかも。」

海未「・・・いえ、それはありません。」

希「!?どういう事や・・・!?」

海未「恐らく、真姫はもう殺されていると思います。」

花陽「・・・!?海未ちゃんそれってどういう事!?」

希「殺されているって・・・そんな!?何でわかるん!?」

海未「それを話す前に・・・、確かめたい事があります。
ついてきてください。」

海未は二人をつれてやってきたのは、二階のリビング・・・。

穂乃果、亜里沙、ことり、にこが殺された場所・・・。

希「海未ちゃん、ここに何が・・?」

海未「・・・。」

海未は黙ってドアノブを回す。

ガチャ、ガチャガチャ

鍵は当然かかっていて、扉は開かない。

突入時に破損した扉の箇所を補強したガムテープにも、特にヅレは感じられない。

花陽「海未ちゃん、何を・・・、海未ちゃん!?」

次の瞬間、海未はその補強されたガムテープを破く様に剥がす。

希「海未ちゃん・・・!?な、何を・・・!?」

ガムテープを剥がすと、そこには腕一本分くらいが入る大きな穴が出現する。

これは、鍵のかかったこの部屋に入る為に真姫が斧を使ってあけた穴だが・・・。

海未「・・・。」

海未はその穴に手を突っ込み、扉の内側の鍵を捻る。

カチャン。

希「か、鍵を開けて、何を・・・!?」

海未「・・・・・・・。」

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイ

海未はゆっくりと扉を開ける。

開けた瞬間、・・・なんというか、死臭と言えばいいのだろうか?

生者が決して発しないような、死者の怨念の篭った臭いと言うべきか、そんな臭いが彼女たちを迎える。

海未「・・・やっぱり。」

海未は部屋内のある一点を見て、静かに首を振る。

希と花陽も後ろからその光景を見る。

希「・・・真姫ちゃん・・・、そんな・・・!?」

花陽「真姫ちゃん・・・嘘だよね・・・。」

三人が見ている先には、頭から血を垂らし、綺麗な顔の真ん中に杭が刺さっている真姫が倒れていた。

そんな真姫の死体の横には、長身がボコボコになった金属バットが落ちていた。

それで何を殴ったのかは・・・、その現場を見ていなくても容易に想像できた。

近づかなくとも、誰でも分かる。

『あれ』はもうダメだと・・・。

花陽と希は、それを見て、喚くよりも、悲しむよりも、ただ、ただ憔悴してしまう。

今日だけで彼女たちは、親友の死を沢山見てきた。

身体を動かせば疲れる様に、心も疲れてしまう。

彼女たちはもう、怒ったり、泣く事も出来ないほど、疲れていた。

花陽「何で、どうして・・・?」

希「鍵はかかっていたのに、何で真姫ちゃんがここに・・・?」

花陽「もう、訳がわかんないよぉぉぉ!!」

海未「希、花陽。もう一度、誰か隠れていないか、探してくれませんか?お願いします。」

花陽「・・・こんな時に何を!?」

海未「こんな時だからこそです!!後少しで全てが分かりそうなんです!!お願いします!!」

希「わかったわ・・・。」

メンバーは改めて部屋内を探し回る。

冷蔵庫の中、ソファの中、キッチンの収納スペースの中、など。

しかし、この部屋には誰も隠れていない・・・。

希「ダメや、誰もおらへんで、花陽ちゃんはどう?」

花陽「こっちもダメです。それどころか、依然に人が隠れていた形跡もありません。
海未ちゃんは・・・?」

海未「・・・・・・。」

その時海未は、真姫の遺体を調べ、ポッケの携帯を見ていた。

海未「・・・やっぱり、そういう事ですか・・・。」

海未は目をつむり、深呼吸をする。

上唇を噛み、沈痛な表情をしていた。

海未「残念です。」

希「・・・海未ちゃん?」

海未「本当に、残念です。」

花陽「残念って・・・どういう?」

海未「二人とも、よく聞いて下さい、犯人が分かりました。」

海未の言葉に、驚く花陽と希。

希「海未ちゃんそれ本当なん!?冗談じゃないやろね!?」

花陽「犯人って、十二人目じゃないんですか!?」

海未「いませんよ、この島に十二人目なんて。犯人は、この十一人の中にいます。」

花陽「・・・!?」

希「そ、そんな!十二人目が存在しないなんて!!」

海未「最初の事件から説明します。簡単な話です。
皆が寝静まった後、犯人はことり達を殺して鍵を掛けました。その後、犯人は『絶対に分からない場所』に隠れて朝を迎え、事件が発覚してメンバーが退出するまでやり過ごした後、雪穂の部屋に行き扉を開けて三人を殺害して鍵を部屋の前に置いて鍵とチェーンをかけて部屋で待機。
私達が到着して、チェーンを開ける道具を捜しに言っている間に部屋から脱出してこの二階のリビングに隠れたんです。」

花陽「ちょ、ちょっと待って!簡単に部屋に入って、とか言うけどそれが出来ないから
私達は悩んでいるんですよ!?あの時、私達は1、2分しか単独行動は取っていないし、絵里ちゃんは私達の中に犯人がいるとひどく警戒していた!部屋はもちろん施錠されている!そもそも私達が二手に分かれて籠城するかもわからないんですよ!?
犯人はどうやって・・・。」

海未「籠城の件ですが、高い確率でそうなると犯人は踏んだのでしょう。
誰かが一人、もしくは少数になればそれで良かった。
この部屋を見てください。部屋中血まみれで、仲間が四人も殺されたとなれば、恐怖心は極限まで高まります。その上、この島には私達しかいない事から犯人はこの中にいる事や、
密室殺人のせいで、鍵を見つけた希とこの別荘の所有者である真姫に疑いの目がかかってしまった。容疑者がここにいる。殺されるかもしれない。
皆のアリバイはありません。
疑心暗鬼の状態でした。
犯人からしたらそれだけで十分だったんです。
必ず誰かが籠城すると言い出すだろう、と。
現に絵里は籠城をすると言いました。」

希「やはり密室にした理由は、私達を疑心暗鬼にさせて次のターゲットを孤立させる為だったんか・・・。」

花陽「でも、絵里ちゃん達は鍵をかけて籠城したんですよ?どうやって鍵を・・・?」

海未「簡単ですよ。花陽、凛が花陽の家に遊びにきたら、どうやって部屋にあげますか?」

花陽「そんなの、扉の鍵を開けて・・・っまさか!!」

希「あの三人の中に、共犯者がいたっていうんか!?」

海未「その通りですよ。
結果として、絵里は籠城をすると言い出しました。
しかし、本当に一人で籠城されては犯人からしてみれば、当然困るんです。
お手洗いに行くなどで、1、2分は誰の目も無く行動できるでしょうが
さすがに施錠された扉を細工して開ける時間は無いですし、かと言って
絵里にバレずに力ずくで扉をこじ開ける事は不可能に近い。
じゃあどうするか・・・?」

希「次のターゲット、孤立した者と一緒に籠城しようと考えた訳やな・・・?
えりちに自分が犯人だと思わせない様に二人きりで、ではなく二チームに分かれて籠城しようと提案した。」

花陽「そ、それじゃあ共犯者って・・・!!」

海未「はい、二チームに分かれる様に提案した人物、つまり雪穂は犯人の仲間です。」

花陽「そ、そんな・・・!!」

花陽「でもおかしくないですか!?雪穂ちゃんが犯人の仲間なら、何で殺されているんですか!?・・・まさか死んだフリ・・・!?」

海未「いえ、さすがにあれは死んだフリでは無いと思います。
銃で頭を貫かれていますからね。あの三人の死体は、一目見れば誰でも死体だと分かりますよ。」

希「じゃあ何で雪穂ちゃんまで・・・!?それに、チェーンロックの謎もまだ解決していないし、犯人が二階のリビングに隠れていたと言うのなら、どうやってそこから鍵を閉めたまま部屋から脱出したんや!?」

花陽「そうですよ!海未ちゃんの推理では、雪穂ちゃんの鍵を開けた時はまだ犯人は部屋内にいたんですよね!?それで、私達が扉を壊す道具を見つける為にその場を離れた時に脱出した・・・。でも普通に脱出をしたのなら、チェーンはかかっていないはずですよね!?
一体どうやって・・・!?」

海未「チェーン・・・?何の事ですか?」

希「・・・何を言っているんや!?海未ちゃんも見ていたやろ?
チェーンがかかっていたのを!どうやってチェーンをかけて脱出したのか聞いているんや。
・・・外からチェーンをかける方法でも見つけたん?」

海未「いいえ?そんな物は見つけていませんよ。
確かにチェーンがかかっているのは見ましたよ?『私達が扉を破る道具を捜しにいくまで』はね。」

花陽「どういう・・・?」

海未「花陽、希。あなた達は見ましたか?私達が道具を捜しに行って、帰ってきてからチェーンが扉にかかっているのを。」

希「・・・!そういう事か!!・・・確かにそれならば、『見ていない』と答えるわぁ・・・。」

花陽「見てはいないけど、真姫ちゃんが斧で叩いている所は聴こえて・・・っ!!」

海未「気づきましたか。私達はチェーンが真姫によって破壊される瞬間を見ていません。
何かを叩きつける音は聴こえましたけどね。
私達があの場を去った後犯人はチェーンをペンチか何かで切断して脱出し、それを見届けた真姫がチェーンを斧で壊す演技をしたんです。
私達が到着した時、ちょうどチェーンは切断出来た・・・。
私達が探している間もチェーンはまだかかっていたと錯覚させる為にね。」

花陽「と、言う事は・・・、真姫ちゃんも共犯者なんですか!?」

海未「そうです、真姫も共犯者です。」

花陽「そ、そんな・・・。」

海未「ほら、雪穂の部屋の壁に、凹んだ傷があったでしょう?
あれは、真姫が音を演出するために斧で叩いた痕ですよ。
音でバレるかもと思うかもしれませんが、音を聞いて駆け付けた時、チェーンが切れていれば、誰でも勘違いしてしまうでしょう。」

花陽「なるほど・・・。」

海未「後は簡単ですよ。
犯人は真姫にわざと孤立させて籠城する様に指示を出し、メールか何かでこの部屋に呼び出して殺した。
後は扉を施錠すれば、密室殺人の完成です。」

希「なるほど・・・。」

花陽「・・・でもちょっと待ってください、まだ一つ、解けていない謎がありますよ。」

希「なんなん?」

花陽「第二の事件が起こった時、私達は海未ちゃんと一緒に二階に降りてすぐにリビングが施錠されているかを確かめたじゃないですか。その時リビングは施錠されていた・・・。」

希「・・・この部屋の鍵は真姫ちゃんが壊して海に捨ててしもうた。
海未ちゃんの推理なら、犯人はその時は部屋にいるはず・・・。
なら施錠されているのはおかしいって事やな?」

花陽「はい、真姫ちゃんが言うには、この別荘の部屋の鍵はそれぞれ一つしかない。
にも関わらず施錠されているのは・・・。」

海未「・・・簡単ですよ。あの部屋内にもう一人、共犯者がいればいいんです。」

花陽「・・・!?」

希「もう一人の共犯者!?」

海未「部屋内には最初から二人が隠れていたんです。殺人を実行する際、一人が雪穂の部屋に向かい、もう一人が部屋内に残り鍵を閉める。これでリビングを施錠したまま犯人は行動できます。」

希「で、でも、一体誰なんや!?そもそも犯人は・・・!?」

花陽「そうですよ!もう生きているのは私達しかいないんですよ!?
まさか、この中に犯人がいるって言うんですか!?」

海未「・・・いえ、違います。」

希「じゃぁ!やっぱり十二人目って事になるやん!」

海未「それも違います。
希、花陽。思い出すのは苦しいでしょうが、最初の事件の事を思い出して下さい。
私達はどうやって、穂乃果達が死んでいるのを知りましたか?」

花陽「そんなの、見れば分かるじゃないですか!!!
『あんなの』!見れば一発で・・・!!」

希「・・・っまさか!!いやでも、そんな!!!」

花陽「どうしたんですか!?」

希「あの時、私達は竦んでいて、誰も動こうとはしなかった・・・。
でも、たった一人だけ、動いたのがいるやん・・・。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>真姫「・・・私が視るわ!!皆はそこから動かないで!!」

真姫は嗚咽を我慢しながら四人に近づく。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

花陽「・・・っ真姫・・・ちゃんだね。」

海未「そうです。彼女は穂乃果、にこ、ことり、亜里沙の容体を視る為に近づいて診断をし、四人の死亡を宣告した。
しかし、本当の目的は、その中にいた本当の犯人を死亡したという嘘の診断結果で容疑者から外す為だとしたら・・・?」

花陽「・・・!!」

希「ちょっと待って・・・?じゃあ、もう一人の共犯者と犯人って・・・。」

??「・・・クックックッ」

海未「はい、もう分かりますよね?亜里沙とことりは、誰が見ても、もう死んでいると分かる程、残酷な刺繍がされた死体です。」

花陽「あっあぁぁぁぁぁ・・・!」

??「クックックックックックッ・・・!!」

海未「残るは誰か?・・・穂乃果とにこです。
確かに彼女たちも体中は傷だらけで、血は回りに飛び散っていました。
ですが、あれが全部血のりで、傷はメイクか何かだったとしたら・・・?」

希「あっぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!」

もぞもぞ!!もぞもぞもぞもぞ!!

海未「じゃあどちらが殺したのか?簡単ですよ。
仲間に誘っておいて、血縁者を殺す者はいません。と、すれば・・・。」

??「クックックックックックックッ!!!!!」

もぞもぞもぞもぞもぞ!!!!

希と花陽は、音がする方向を見て、尻餅をつきながら、慄いている。

音の発信源は、死体にかけたはずの、毛布の中から・・・!

そこから聴こえる不気味な笑い声は聴く者を全てに嫌悪感を与える、そんな不協和音。

海未「・・・犯人はあなたですよね?」

??「ぁアアアアぁぁぁぁぁぁあはっはっはっはっはっはっ!!!!!」

中は死体でしかないはずの毛布はぐじゅぐじゅと、まるで蛹の中の幼虫の様に不気味に変化し、やがて耐え切れなくなったといわんばかりに、自ら毛布を剥ぎ、立ち上がる。

それは、蛹だった毒虫が脱皮した様だった。






                      海未「にこ。」

にこ「あーはっはっはっはっはっはっはっ!ははははははははははははは!!!!
そうよ!犯人はこの私!!!警察でもないのによくもまぁ解いたもんね!
さすが海未だわ!!!」

希「にこちゃん!あんた!!!」

花陽「にこちゃん!!!!」

にこ「あ~~~~肩こった~~~~~~~~~!やっぱり固い所で寝転がるもんじゃないわぁ!」

服に付いた血をポタポタと垂らしながら背伸びをするにこ。

これが・・・人を、しかも親友を7人も殺した殺人鬼の姿・・・?

いつものにこと・・・何も変わらない・・・!

まるで、いつものイタズラをしているかの様に、明るく、無邪気・・・!

希「・・・。」

そのあまりにもかけ離れたギャップに、一同は困惑するしかなかった。

にこ「ありきたりな質問だけど、何で私だって分かったの?
・・・一回言ってみたかったんだよね、この質問。」

海未「正直、最初はさっぱり分かりませんでした。
最初におかしいと思ったのは、雪穂の部屋にあった、チェーンの切れ目です。
切れ目がひどく捻じれていたんですよね。とても斧でこれを壊したとは思えない・・・。
もしかしたら、斧じゃなくて、何か別の物でチェーンは破壊されたのかもしれない。
何故違う物で切ったのか?真姫は誤魔化したのか?そして、それをする事で誰が得をするのか?それを考えたらなんとなく繋がりました・・・。」

にこ「・・・なるほどね、そこまで考えていたのなら、私が密室に拘った事もバレているか・・・。」

海未「最初の密室は、架空の十二人目の存在を生む事と、疑心暗鬼にさせる事。
次の密室は、次のターゲットである真姫に疑いの目を向かせて真姫が孤立して誰も不自然に思わない状況を作る事・・・。」

にこ「その通りよ。でもまさか、海未があそこで二階リビングが閉まっているかを確かめに来るとは思わなかったわ。あれさえ無ければ・・・。」

海未「最初は本当に十二人目がいるのかもしれないと思っていましたからね・・・。」

にこ「一応、穂乃果に命じて扉を閉めさせてはいたけど・・・、ダメだったかぁ。」

花陽「・・・そうだ!穂乃果ちゃんは!?穂乃果ちゃんはどうしたの!?」

にこ「穂乃果?あぁそこで寝ているわよ?起こしてあげたら?」

花陽「穂乃果ちゃん・・・?穂乃果ちゃ・・・っ!!」

希「い、いやああああああああああ!!!!!!」

海未「穂乃果・・・穂乃果!!!!!いやああああああああああああああ!!!」

花陽が毛布を捲るとまず目に入るのは、口だった。

穂乃果の口は、頬、いや、これは耳まで届いるのだろう。

そこまでボロボロになりながら裂けていて、その中央からは、下の代わりに、何か杭の
様な物が喉仏まで、深く、深く突き刺さっている。

他にも、鼻は潰れ、目は抉られ、耳は切り裂かれ、人の顔を耕したらこんな感じになるのだろう・・・。

そんな、悪魔の装飾と言わんばかりの『化粧』が穂乃果には施されていた。

希「ひ、ひどい・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

花陽「お、おえええええええええええ!!!!」

海未「っ・・・!にこ!!あなた!!!」

にこ「海未、あまり驚いてはいない様ね・・・、当たり前か。
真姫ちゃんはもう殺されていると思ったからこそ、この部屋に入ってきたんだもんね。」

海未「えぇ・・・、あなたは私達を皆殺しにするだろうとは思っていましたから。」

花陽「何でにこちゃんはこんな事をしたの!?一体何があったの!?教えてよ!!!」

希「そうやにこっち!!!私達、にこっちに何かした!?」

にこ「・・・海未、あんたはもう全て知っているんでしょ?」

海未「・・・えぇ、先ほど、真姫の携帯のメールボックスを見させて頂きましたから・・・。」

にこ「・・・そう。」

花陽「海未ちゃんそれって!?どんな内容なの!?」

希「海未ちゃん!!」

海未「この事件を起こした、にこ、雪穂、穂乃果、真姫の目的は、」

  そこまでです。

~▽月□日 音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年と■日後~

ツバサ「かかった・・・!エサに!!」

あんじゅ「嘘!?」

ツバサ「本当よ!!これ見て!!」

ツバサが差し出したのは、スマートフォン。

画面には、ある掲示板のスレッドが映し出されていた。

VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) IDtubasan

花陽「海未ちゃんそれって!?どんな内容なの!?」

希「海未ちゃん!!」

海未「この事件を起こした、にこ、雪穂、穂乃果、真姫の目的は、」


VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) ID ID0Xobu24F0

そこまでです。 もう止めてください。

あんじゅ「・・・?何をしたの?」

ツバサ「さっき言ったでしょ?炙り出したのよ、犯人を・・・!」

あんじゅ「えぇ・・・?」

あんじゅは困惑するしかない。

手紙を発見してから、船長が帰ってくるまでひたすらスマートフォンを弄っていた様だが、それだけである。

ツバサは一体何を・・・?

ツバサはあんじゅの疑問には答えずに、スマートフォンを操作してスレッドに文字を打ち込んでいく。

VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) IDtubasan

あなたが、メッセージボトルを置いた方ですか?


VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) ID0Xobu24F0
はい。

VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) IDtubasan

何か、証拠となる物はありますか?

VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) ID0Xobu24F0

二回目は、真姫にはとても可哀そうな事をしました。

VIPにかわりましてNIPPERがお送りします XX:XX /XX/XX(木) IDtubasan

・・・あなたが手記を書いた事を信じます。

その後、真姫はスマートフォンを数分操作した後、あんじゅにこう告げる。

ツバサ「あんじゅ、あの子に会いにいくわよ。」

あんじゅ「あの子って・・・メッセージボトルを置いた・・・?」

ツバサ「そうよ、最寄の駅を教えてもらったわ。 
沖縄にいるみたい。本島から近いわ!急いで本島に帰るわよ!!」

あんじゅ「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!!一体何がどうなってるの!?
ちゃんと説明してよ!」

ツバサ「・・・走りながら説明するわよ!行きましょう!船長に連絡を!」

あんじゅ「・・・分かったわ。」

とりあえずここまで。

誤字脱字ここわからんちって所があればよろしくお願いします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

沖縄 某所

使用人「お館様、本当によろしいのですか?誰だか分からない者をここに招き入れるのは・・・。」

??「・・・失われたはずの碑文を探し出して解を出し、本当の『音野木坂文書』の事まで知っているのです。ただの野次馬ではありません。
・・・真実を託すに相応しいでしょう。」

使用人「しかし・・・!」

??「・・・それに、誰なのかはもう分かっているんでしょう?
さっきの電話は、なんだったの?」

私用人「先ほど西木野家別荘跡地へ向かいたいから船を出してくれと、女性二人が訪ねてきたそうです。
その女性は、綺羅ツバサ、優木あんじゅと名乗ったそうです。」

??「・・・懐かしい名前を聞いたものです。
ツバサにあんじゅ。多分英玲奈も関わっているのでしょう。
・・・そうですか、彼女たちが。」

私用人「いかがなされますか?」

??「丁重に迎えて差し上げて。
彼女たちは、かつてのライバルであり、友人ですから。」

使用人「・・・畏まりました。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ツバサ「簡単よ、私の考えた『音野木坂学園スクールアイドル連続殺人事件』をSSにして掲示板に投稿した、ただそれだけよ。」

あんじゅ「えぇ!?・・・なんでそんな事を・・・!?」

ツバサ「私はどうしても、犯人を見つけたかった。
でも、普通に捜査をしても犯人が見つかる可能性は低い。
だったらどうすればいいのか?
犯人が見ている目の前で、犯人にとって、してほしくない事をして止めろと言わせるのが一番いい・・・。」

あんじゅ「その方法って・・・?」

ツバサ「あの子はね、恐れているのよ。
この事件が何故起こったのか、暴かれる事をね・・・。」

あんじゅ「事件の動機を解明されるのを恐れている・・・?
どうしてそう思ったのよ・・・?」

ツバサ「小屋でのあの手紙・・・。
まるで、全ての罪を自分でかぶってその代償として何かを庇っている様だった・・・。
あの子はね、汚名を被せられてでも、守りたい物があったのよ。」

あんじゅ「・・・。」

ツバサ「じゃあどうすれば、『私はこの事件が起きた動機を知っているぞ』と犯人に伝える事が出来るのか・・・?犯人が今気にしている事は・・・?」

あんじゅ「そんなの、事件が解明される事よね・・・っそうか、だから掲示板に書き込んだのね・・・!」

ツバサ「その通り。匿名でいくらでも好きな事を書きこめる掲示板だけど、犯人だけはそれを無視する事は出来ない。何故ならば・・・。」

あんじゅ「『音野木坂文書』の半分が最初にインターネットに書き込まれたのは、掲示板・・・!」

ツバサ「そう。だから犯人は掲示板を常に見ていると思った訳。
このSSを犯人が見ている事を祈って掲示板に書き込んだの。
『自分は事件の全て、動機を知っていますよ、暴露してもいいんですか?』っってね。


あんじゅ「・・・ツバサがSSを掲示板に書き込んだ訳は分かった・・・。
でもそれだけで何で炙り出す事が出来たの?今どき『音野木坂学園スクールアイドル連続殺人事件の』SSはいくらでもあるじゃない!
今までどれにも犯人が反応した事は無いわ!何でツバサの書いたSSだけに犯人は反応したの!?」

ツバサ「それはね、私の書いたSSにはあの時その場にいた者にしか分からない、『真実』の一部が記されてあったから。だから犯人は反応せざるを得なかった・・・!」

あんじゅ「真実って・・・!?」

ツバサ「あの時、警察官がこんな事を言っていたの、覚えている?」

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>警察官「・・・どうでしょうね?ただ事件からしばらく経って、警察が遺体の一部を見つけたそうなんですがね?
それは事故だったとしたらありえない状態だったそうですよ?後は、凶器も発見できたそうで。」

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あんじゅ「確かに言っていた様な・・・。でもそれって?」

ツバサ「警察が見つけたのはね・・・、銃創のあった一人分の頭蓋骨と、長身がまるで何回も固い物を殴ったかの様に凸凹になった、金属バットよ。
今まで数多の『音野木坂学園スクールアイドル連続殺人事件』のSSが書かれてきた・・・。
でもその中の彼女たちの死因は刃物による刺殺や鈍器による撲殺・・・。
当たり前よね、高校生同士で殺し合ったのだから。」

ツバサ「まさかメンバーの死因の一部が、銃による物だったなんて普通ならば誰も思わないでしょう・・・。」

あんじゅ「・・・!じゃあ、犯人がツバサの書いたSSにだけ食いついたのって・・・!」

ツバサ「そうよ、一般人なら知るはずの無い、真実の死因をSSに加えたから。
メンバーの一部が銃で殺された事を知っているのは、警察のごく一部の関係者と、生き残った犯人だけ。だから犯人は、真実の記してある私のSSにだけ反応した!
こいつは事件の殆どを知っている・・・・と思わせたのよ。
・・・ダメ押しの一手で金属バットを描写に入れたのも良かったわね。」

あんじゅ「なるほどね、それで、動機を書こうとしたら反応してきたって訳か。」

ツバサ「そういう事よ。・・・じゃあ向かうわよ!!場所は私が案内するわ!!
犯人の顔を見てやりましょうよ!!!」

二人は、その者の元へと向かう。

その人物が要求してきた場所は、本島の港から車で20分程向かった先にあった。

人並みからは外れていて、周りは海と山しかない・・・。

ツバサ達が待ち合わせた場所に向かうと、初老くらいだろうか、白髪の男が立っていた。

ツバサ「・・・あなたは?」

使用人「・・・綺羅ツバサ様、優木あんじゅ様ですね?
お初にお目にかかります。私、使用人をしております、源次と申します。
お館様の命を受けまして、あなた方をお屋敷へお連れする様にと・・・。」

ツバサ「案内人って訳ね・・・。」

あんじゅ「どうする・・・?ツバサ。」

ツバサ「ここまで来て、引き下がる訳にはいかないわよ。
・・・お願いします。」

使用人「・・・畏まりました。お屋敷はすぐ近くです。
どうぞ、こちらへ・・・。」

源次と名乗った使用人を先頭に、ツバサ達は歩いていく。

ツバサ「お館様とやらは、今も元気にしているの?」

使用人「・・・あまりよろしくはございません。
お館様は、事故が原因で腎臓を患っています。
今朝も体調はあまり芳しくは無いご様子で・・・。」

あんじゅ「それなのに、突然会いに行っても大丈夫なの?
こっちとしては、日を改めてもいいのだけれど。」

使用人「碑文を解き、文書の事を知っておられるのならば、
そうも言ってられないとお館様は仰っていました。
・・・ましてや、それが若い頃のご友人ともあれば、尚更の事でございます。」

ツバサ「・・・この事件の事を引っ掻き回している私達の事を、お館様はどう思っているのかしら?」

使用人「私にはなんとも・・・。ですが、お館様は例の事件を隠す為に、ご自分の一生を捧げる覚悟だと、仰っていました。」

ツバサ「・・・そう。」

使用人「・・・同時にあなた達になら、真実をお話ししても良いと仰っていました。」

あんじゅ「それは何で?私達が碑文を解いて、文書の事も知っているから?」

使用人「それももちろんありますでしょうが・・・当時のスクールアイドル、μ'sの事を最も理解しておられるのは、あなた達だとお館様は思ったのでしょう。
だからこそ、真実をお話ししたいのだと思います・・・。」

ツバサ「・・・。」

使用人「・・・着きました。どうぞ、中にお入り下さい。」

源次が案内したのは、家では無く、施設の様だった。

外には子供が遊べる様な遊具が沢山設置されており、

窓には子供が写っていて、教師の話を聞きながら、熱心にノートを取っている。

ツバサ「これは・・・?」

使用人「お館様が建てた、児童福祉施設でございます。
今は授業中の様ですので、お静かにお願いします。」

ツバサ達は最上階まで階段で・・・。

そして、一番奥の部屋までたどり着く。

使用人「ここが、お館様の部屋でございます。どうぞ、中へ。」

使用人は、『園長室』と書いてある部屋に入る様に進める。

ツバサとあんじゅは顔を見合せて、

ゴンゴン

ツバサがドアをノックする。

すると、中から『どうぞ』と女性の、しかも、ツバサにとって懐かしい声色で返事が帰って来た。

ツバサ「失礼します・・・。」

ツバサはゆっくりとドアを開ける。

ギイイイイイイイイイ

まず目に入ったのが来客用のソファとテーブル。

次に目に入ったのが、その奥にある、この部屋の持ち主が座る物なのだろう、椅子と机とPC。

ツバサが中に入って部屋をよく見ると、一人用のベッドが壁に沿って設置されていて、

その部屋の主はベッドの中に入ったまま座っていた。

ツバサ「・・・久しぶりね、『  』。
体調はあまりよくなさそうね。」

??「本当に久しぶりですね・・・。あんじゅ、ツバサ。
あぁ・・・、見苦しい格好でごめんなさい。」

ツバサ「そんな事、気にする関係でもないわよ・・・。」

??「あぁ、そこに座って下さい。
今源次が何か飲み物を運んできてくれますから。」

ツバサ達は来客用の椅子に腰かける。

ツバサ「さっそくだけど、こちらの質問に答えてもらうわよ。」

??「何?」
ツバサ「あの日、一体何があったの?嘘の手記まで残して、あなたが一体何がしたかったのよ!?」

??「その前に、質問します。ツバサ、あんじゅ。あなた達はこの事件を調べているのですか?確かに私達は友人であり、ライバルでした。
しかし、もう十年前の話ですよ?何があなた達をそこまで駆り立てるのですか?」

ツバサ「そんなの、決まっているじゃない。」

ツバサはソファに深く腰掛け、心痛な顔をして告げる。

ツバサ「殺されたあなた達、そしてあの事件のせいで志半ばにしてスクールアイドルを諦めなければならなかった、同士の無念の為よ。」

○月×日から★日後の事。

UTX学園 芸能科 学科長室

ツバサ「どういう事ですかこれは!?」

バンッ!!!

ツバサが机を叩いて学科長に詰め寄る。

普段冷静なツバサも、今回の件に関しては憤らざるを得なかった。

あんじゅ「そうですよ!!何でこんな事になったんですか!?」

英玲奈「そうだ、余りに急すぎる!
それにこの判断は・・・スクールアイドルを潰す行為だぞ!」

学科長は腕を組みながら、生徒の意見に耐えるしかない。

彼女たちが抗議しているのは、今学科長のテーブルに乗っている一枚の文章のせいだった。
この書類はUTX学園だけでは無く、日本中の学校に配布されている。

その送り主は、教育委員会。

その内容は大人の文章らしく、小難しい事で書かれているが、つまりはこういう内容だった。

『スクールアイドルとしての活動記録を動画、画像にしてインターネットにアップロードするのを禁止する。』

『スクールアイドルとしての、外に出ての活動を全面禁止する。』

ツバサ「こんなの、実質のスクールアイドルを辞めろって言っているのと同じじゃないですか!!」

スクールアイドルは部活というくくりながら、元手が掛かる事無く芸能活動が出来る新しい芸能コンテンツと言っていいだろう。

ネットに自分たちが踊ったり、歌ったりした動画をアップロード。

それをリスナーが見てSNSなどで伝わっていき有名になる。

これがスクールアイドルの有名になるプロセスな訳だが、

当然ながらネットにアップロードできなければ自分たちの活躍を見てもらう事が出来なくなる。

更に外に出てのスクールアイドルとしての活動の禁止。

これでは外でライブを行う事が出来ず、そもそもスクールアイドルの夢である、ラブライブに出場する事が出来ない。

・・・いや、そもそもこの通知が全国の学校に回っている時点でラブライブは中止だろう。

インターネットと外での活動。

これらの禁止は実質、スクールアイドルの廃止だった。

ツバサ「どうしてこんな事に・・・!ひどすぎるわ!!」

学科長「当然ながら、私も抗議したさ・・・!
我がUTX学園もスクールアイドルの廃止はかなり痛い。
だが・・・、無理だったよ。
今回の事件と、PTAからの莫大な数の署名を見せつけられたらね・・・。」

あんじゅ「そんな・・・、穂乃果ちゃん達の事は事件なんじゃ・・・。」

学科長「確かにそうだ。ただ、時期がマズかった。
ほら、ちょっと前に起きた、同級生殺害事件覚えているだろ?
加害者はあるスクールアイドルのファンだった事がマスコミやテレビのワイドショーでピックアップされてしまった・・・。」

ツバサ「そんなの、関係ないじゃないですか!?」

学科長「もちろんその通りだ。だがどのコンテンツにもイメージという物が存在する。
特にスクールアイドルはその名の通り、学校がその活動を認めている。
これがマズイ。」

ツバサ「つまり、こういいたい訳ですか?スクールアイドルの活動は、学生にとって、不適切であると・・・。」

学科長「元々スクールアイドルを快く思っていない大人も多い・・・。
スクールアイドルは名目上、部活動の一環として処理される。つまり、営利目的でやってはいけないと言う事だ。裏を返せば、話題性抜群の可愛くて若い子が、許可さえとれればタダで出てくれるという訳だ。
視聴者も食いつきやすい・・・。そうなると、アイドル事務所としては当然面白くはないだろう・・・。PTAだってそうだ・・・。言い方は悪いが、自分の娘が過激な衣装を着て大勢の目の前で晒されるのは、あまりいい気持ちはしない・・・。その両方から、前々から圧力をかけられていたみたいだ・・・。」

ツバサ「・・・くっ!」

学科長「今スクールアイドルの印象は最悪だ・・・。
亡くなったのがラブライブ優勝チームだと言うのが火に油を注いでいる。
週刊誌ではそのチームの家庭環境まですっぱ抜かれていて、何やらお金の問題で色々悩んでいたらしい事まで発覚して、事故かどうかも分からない。
ネットは絶賛炎上中。
親御さんたちは自分の娘がスクールアイドルな事に嫌悪感と危機感を抱いているだろう。
そしてそれは、親ならば当たり前の感情だ。」

ツバサ「それは分かります!しかし、この学校がそれに屈したら、それこそお終いになっちゃうんですよ!?ここはUTX学園!スクールアイドルの総本山と言っていいいでしょう!その学校が下ったら!他の学校も芋づる式になっちゃいますよ!!!!」

学科長「もちろんそんな事は分かっている!我がUTXがその決断をしたらどの様な影響があるかも、もちろん理解している!!だが、すまん・・・。」

あんじゅ「学科長・・・。」

ツバサ「それでもあんたUTXのっ!」

英玲奈「ツバサ!!!」

頭を下げる学科長の胸倉をつかもうとしたツバサだが、英玲奈に止められ、ある一点を見る様に促される。

学科長「・・・すまない。」

学科長の机は涙でぬれていて、手は血が出る程に握りしめられていた・・・。

ツバサ「・・・。」

それを見てしまえば、ツバサに言える事はもう、何もない・・・。

三日後、UTXはスクールアイドルを廃止する事を決定。

一週間後には、各地の学校もスクールアイドルを廃止したのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

??「なるほど、スクールアイドル廃止のきっかけを作った犯人が許せないのですね・・・。」

ツバサ「・・・そうよ、確かに直接の原因は違うのかもしれない。
でも、もしこの事件が起こらなければ、スクールアイドルは一日でも、少なくとも私達が卒業するまでは、続ける事が出来たでしょう。
ある日突然ライバルを失って、スクールアイドルを出来なくなった私達の気持ちが分かる?
あの事件から、私達、スクールアイドルの心の中にはぽっかりと大きい穴が開いてしまった。
そんなスクールアイドルの無念を晴らすために、決めたのよ。
証拠も何もないのかもしれない。
でも、絶対に見つけてやる。その為なら何でもする。
だから、『音野木坂文書』の半分を掲示板に流出してやったのよ!」

あんじゅ「え・・・?」

それは、あんじゅさえ知らない事だった。

『音野木坂文書』の半分を流出させたのは、ツバサ・・・?

あんじゅ「そんな・・・!?嘘でしょ!?ツバサ!!」

ツバサ「・・・嘘じゃないわ。これも犯人を捕まえる為よ。
でも結果的にやって良かったと、島で読んだ手紙を見て思ったのよ。
あんたの目的が分かったからね。
何でわざわざ自分が犯人だという手記を交番に置いて立ち去ったのか・・・それは
あの手記を世間に公表、もしくは警察の間だけでも公表してもらって、犯人はあんただと思わせて事件を鎮静化させる事だった。」

??「・・・。」

あんじゅ「・・・どういう事?」

ツバサ「島が爆発する程の大事件よ。
警察は事故では無いんじゃないか?という証拠として銃創のある頭蓋骨も出てきた。
メンバーの家庭事情をすっぱ抜かれた事によって世間でも殺人じゃないかと常々言われてきた。
でも、メンバーは全員死んでいるから何も分からない。
分からないからこそ、炎上する。囁かれる。噂になる。
そうなれば、いずれ真実にたどり着く者がいるかもしれない。
ならどうすればいいか?宝の前に宝箱を用意したのよね?
そうすれば、宝箱に夢中になってその先の宝にはたどり着けない。」

??「えぇ・・・。世間も警察も、納得の出来る答えがあれば落ち着くと考えていましたから。現に警察は擬似的にですが犯人が分かった事で、調査を止めて世間は落ち着きを取り戻した。・・・ところが。」

ツバサ「六年後、事件が風化してしまうのを恐れた私は警察に入ってから、『音野木坂文書』の、『あえて半分』を流出させた。結果は目論見通り。世間は再び事件に関心を持った。」

??「おかげで私はいつ真実にたどり着かれるかビクビクしながら、掲示板を見る日々・・・。
という訳です。」

あんじゅ「なるほど・・・。」

ツバサ「さて、今度はこっちの質問にも答えてもらいましょうか・・・。」

??「なんでしょう?」

ツバサ「十年前に起こった、『音野木坂スクールアイドル殺人事件』の犯人は、」



     ツバサ「本当の犯人は・・・誰なの!?」

??「・・・いいでしょう。お教えしましょう。」

そう言って『   』は一冊の本を差し出す。

ツバサがページをパラパラめくると、直筆な事が分かる。

表紙のタイトルは・・・、『真実の書』。

ツバサ「これは・・・?」

??「私が書きました。
これが、あの日、○月×日に起こった事です。」

あんじゅ「・・・。」

ツバサはその本を受け取る。

軽いはずなのに、重い・・・。

きっと、それは『  』が人生をかけて、守ってきた思いがこの本に詰まっているのだろう・・・。

・・・だからこそ、重い。

ツバサは心を決めて、本を開き、文字を読む。

そこに書かれている事は、一点の曇りもない程、真実だった。

<キャスト>

綺羅ツバサ

優木あんじゅ


園田海未

絢瀬絵里  東條希

矢沢にこ  高坂穂乃果

南ことり  小泉花陽

西木野真姫 星空凛

高坂雪穂  絢瀬亜里沙


藤堂英玲奈 警察官

使用人   船長


絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0 絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427824056/)

へと続く

余りにも分かりづらかったと思うので補足です。

『音野木坂文書』の流出された方→前作 絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」あたります。

ツバサがあえて半分だけ流出させたおかげで世間は答えを求めて沢山の人がSSを書いて自分の推理を披露する事が

ちょっとしたブームになりました。ってお話しです。

あえて半分だけ流出させたかと言うと全部流出させると犯人が書いてある訳ですから事件を風化させない事を良しと

ツバサからすれば答えが載っている=世間は納得してしまい、またしても風化してしまうと思ったからです。

それで半分だけ投下すればツバサの計算通り。『  』に出来る事はまた掲示板に流出しない様に見守る事しか

出来なかったってお話しです。

流出しなかった方の答えの乗っているお話しは綾瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2の前半。

『真実の書』は後半の方になります。

ですが、あくまで外伝ですので、深く考えない様によろしくお願いいたします。


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