提督「耐えられるか!」大淀「え?」【艦これ】 (49)

提督「…どうか、受け取ってくれ」


執務室で彼女と二人きりになった俺は、やっとの思いでこの言葉を絞り出した。
この日をどれだけ待っただろうか。艦娘である彼女に俺の愛を伝えられる日を。
この指輪を渡せる日を。


大淀「……これを、私に………」


彼女の顔は窓から差し込む夕日に照らされて一層美しく見えた。
俺は彼女の潤む瞳を見つめて、返事を待った。


大淀「…私、嬉しいです。提督……」

大淀「ずっと、ずっと大切にします…!」


提督「大淀…!」


彼女の頬を一筋の涙が伝った。俺は彼女に歩み寄って、抱きしめた。
彼女の身体は小さく、力を込めるだけで壊してしまいそうに思えた。

彼女が顔を上げ、目を合わせた。眼鏡越しの吸い込まれそうなほどに透き通った瞳には、俺が写っていた。
俺達は少しずつ顔を近づけて、そしてーーー










電話「ジリリリリリリリリリリリリリリリ!!」ガタガタガタ



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提督「わっ!?」ビクッ
大淀「ひゃっ!?」ビクッ



提督「……」
大淀「……」




提督「…ち、ちょっと待っててくれ、な」

大淀「あ、えと、は、はい」



俺は内心不満たらたらで電話へ駆け寄った。
畜生、あともう少しで、あと数センチで、愛しの大淀と、ファーストキッスが出来たかもしれないのに!
初だぞ!俺の春がやっと来たと思ったのに!
くだらない理由だったら本気で怒るぞ電話主め…!


提督「…はい、こちら南西鎮守府執務しt…」ガチャ



利根「た"す"け"て"ほ"し"い"の"じ"ゃ"~~~
!!」ビェー



提督「うぉ」キーーン


利根?
たしか足柄と共に一時的に駆逐艦の遠征部隊の指揮を任せていたはずだ。
それにしてもうるさい、なんだこの電話越しからもわかる喧騒は…。


提督「どうした、なにかあったのか?事故か、行方不明か?」


利根「港にの、確かに物資を届けたのじゃ。確かに、たしかーに届けたのじゃ。」

利根「でもの、明らかに量が足りないとの、ごつごつのお偉いさんが凄い剣幕での」

利根「ネコババしたんじゃないかって、あろうことか駆逐艦にまで怒鳴り始めたのじゃ!足柄もひーとあっぷして言い争っておるし、暁は泣き出すし、雷には涙目で慰められるし、でも計画書には間違いはないと堂々巡りで…」

利根「もう儂ひとりじゃどうしようもないのじゃあ!今すぐ来てほしいのじゃ~!」ビェェ


想像以上にひどいことになっているらしかった。


提督「分かった分かった。今から確認に行く。それまで出来る限り騒ぎを鎮めといてくれ」

利根「うむ。うむ。がんばるのじゃ…」グスン

提督「ああ、待っていろ」ガチャン


提督「大淀…急用ができた。その…帰った後にな」

大淀「は、はい…」


なんだかいい雰囲気が有耶無耶になってしまった。
折角の告白だったのに、何度とイメージトレーニングしたのはなんだったんだ?
畜生め、ついてない…。


提督「…じゃあ、行ってくるから。留守番を…」


大淀「あ!提督、忘れ物です」

提督「ん?」



大淀「コートです。冷えたらいけませんから、ね」



いや、これで十分かもな…。

こんな感じで提督と大淀が悶々とするお話です
スレタイが不穏な感じになりましたが別に大淀が何かしでかすわけではないです
藤川イラストレーターは神

バタン


大淀「……」



大淀「えへへ…」フニャ

貰っちゃった。婚約指輪。
途切れることのない、永遠の愛の証。
これで私は、お嫁さん?


大淀「ほんとにほんとなんだ…夢じゃないんだ…」


うわぁどうしよう、最初は誰に話そうかな?
やっぱり明石かなぁ。利根さんも驚いてくれそう。
足柄さんに話したら…嫉妬されちゃうかも、ふふ。


大淀「お嫁さん…お嫁さんかぁ…」


まだ胸がきゅんきゅんする。提督早く帰ってこないかな。
そうだ、「提督」じゃなくて「あなた」のほうがいいのかな?その方がお嫁さんらしいかな?



大淀「おかえりなさい、あなた。…なーんて、えへへっ」

明石「なにやってるの…?」

大淀「練習。…」






大淀「きゃあああ!?」


大淀「いいい、いつからいたの!?」

明石「今入ってきたところだけど。え、何?何の練習!?」

大淀「えと、その、あの…!」


う、嘘でしょ?聞かれてたの?あんな台詞を?
は、恥ずかしい…顔から火が…


…あれ?


明石「『おかえりなさい、あなた』だーって!うぷぷ、どこの夫婦よ、おっかしー!演劇でもやる気ですかーっ!ぷっ、あははは!」


恥ずかしがる必要、ないわよね?


大淀「……ふふん、決まっているでしょう。私の旦那様のために練習してたの」


だって本当のことだもの。


明石「なーにが私の旦那様ですか!男っ気のない大淀にそんな相手がいるわけ」

大淀「ほら、ご覧なさい」ドヤーッ

明石「な…………い………」





明石「……え?」バサバサッ


明石「……あれ?本物?おもちゃじゃなくて……?」

大淀「正真正銘、本物です。触ってみる?」


明石「…う、ウソだ、大淀に彼氏がいないことくらい知ってるんだから」

明石「な、なにかのドッキリでしょ!明石さんは騙されませんよっ!」


大淀「そりゃそうよ、彼氏とか、そんなのじゃないわ」

大淀「私たちはずっと前から、もっともーっと強い信頼、愛情で結ばれていたの…」ウットリ

明石「……あ…まさか…………」



明石「数週間前、初めて提督がわざわざ荷物を取り寄せたのって…」

明石「こんな小さな荷物をなんでわざわざって思ってたけど…」

明石「もし、もしか、もしかしてぇ……」




明石「じょ、成就したんですかぁーーーーッ!?!?」

大淀「…え、えへへ…」

明石「本当!?あの提督と!?すごい、すごいよ大淀!!」ガシィ

大淀「わわ、揺すらないでぇ!」グワングワン

明石「良かったねぇ!やっとなんだね!ほんとうに…ぐすっ…」


大淀「あ、明石?どうしたの…?」


明石「いや…うれしくなっちゃって…いっしょになれたんだぁ…ぐすっ、うぅ…」

大淀「そんな、泣かないでよ…」


明石「提督が好きだから、香水変えるとか、お土産買って帰るとかぁ、話半分に聞いてたけどぉ…」

明石「報われたんだぁ、良かったぁ……」

大淀「明石…」


……………………


大淀「もう、大丈夫?」

明石「うん、おかげで落ち着きましたよ!」

大淀「それならよかった…その…ありがとう、ね」

明石「それ程でも。…ところで、肝心の提督はどこなの?」

大淀「なんでも、急用ができたっていってどこかに行っちゃったの。もっとお話ししたかったのに…」

大淀「だから帰ってきたらたっくさん話すの、うふふ、今日は寝られる気がしないわ!」

明石「そうかぁ、帰ってきてから……あ……」

大淀「うん、とっても楽しみで…どうしたの?」



明石「あー、そのぉ、この部屋に来た理由なんだけどぉ……」

大淀「…そういえばなにか持ってたわよね?確か紙の束みたいな…の…」


大淀「…明石、その、床に散らばってる…のって…」


明石「…うん……」





明石「『残業確定♪頑張って』って言いに来たんです……」


………………

初日が長いとは思ったけど
スカートに手を突っ込むには積み重ねが必要だからね
しょうがないね
大和のスカートより明石と大淀のスカートのほうがスケベに見えます
よって藤川は神

………………

提督「手間をかけたな、足柄」

足柄「別に。仕事を全うしようとしただけよ」


黄昏の中、トラックの助手席に座った足柄に声をかける。
本部から送付された資材管理書が更新されていなかった、というのが一悶着の原因だった。
どうも最近、本部の数値のミスが目立ち、あちらも苛立っていたようだ。


足柄「ちょっと強めに言い返したのだって、あっちの態度が気に入らなかったからよ。この子たちは言われた通りにしただけなのに、変ないちゃもんまでつけて」


一瞬、後部座席に目をやった。
駆逐艦たちも疲れていたのだろう、互いに寄り合って眠ってしまっていた。

…一人大きな奴も混ざっていたが。


足柄「…提督こそ、わざわざ迎えに来なくたって良かったのに。私がいるんだから、あれくらいどうとでもなったわ」

提督「お前ならどうにかしてくれただろうさ。でも、駆逐艦たちにあまり怖い面を見せられても困るんだ」


提督「…それに、日の沈む中のドライブも、たまにはいいかと思ってな」

足柄「…あら、随分ロマンチックね。そういうの、絶対言わないタイプだと思ってたのだけど」

足柄「何かいいことでもあったのかしら?」

提督「…そろそろ着くぞ。支度してくれ」

足柄「あ、誤魔化したわね。いけずな人」


足柄「ほらほら起きて。もう着いたわよ。休むなら部屋で休みなさい」


暁「…んぇ、もう着いたのぉ…」

雷「眠いの?おんぶして部屋まで運んであげる!」

暁「え、ん、んんっ!そんなのレディーには必要ないわ!当たり前じゃない!」

利根「じゃあおねがいしようかの~…」

足柄「お前は起きろっ!」バシッ

利根「いったぁーー!!?見たか提督、叩きおったぞ!こやつ叩きおったぞ!」

提督「利根は艤装の積み下ろしを手伝ってくれ」

利根「無視か!?」


足柄「…そうだ、提督。もしお暇なら、この後一杯、どうかしら?」


手で作った輪を傾けるジェスチャーをする。俺は足柄の愚痴に付き合うことが多々あった。
しかし、今日はそんなことをしている暇はないのだ。


提督「悪いが、遠慮しておこう。これからの予定が詰まっているんだ」

足柄「…そう、残念ね」

利根「うう…もういいのじゃ、筑摩に言いつけてやるのじゃ…」

提督「…よし、入ろう」


執務室前に戻って来る頃には、すっかり夜になってしまっていた。
予定が詰まっているとは言ったが、どうにも小っ恥ずかしく、部屋に戻って何をするかなどまるで考えついていなかった。
ましてやキスの続きなどとても無理であった。

今までと同じようにすればいい。それが一番だ。
そう心に決め、ドアノブに手をかける。


提督「大淀、今帰ったぞ」ガチャ

大淀「あ、提督、おかえりなさい!」ピタ

大淀は手を止めて執務机から立ち上がり、駆け足で近づいてくる。
思わずどきりとしてしまう。

が、


大淀「はい!本部に送る資源搬入の改正書です」ドサッ

提督「え…これは…」

大淀「どうやら基本的な搬入量の変更があったらしくて、これ全部サインと印がいるので!」

大淀「期限明日までですから。…その、残念ですけど、頑張りましょう!」


声をかけるまでもなく、彼女は席に戻って、ファイルの資料とにらめっこを始めた。

この量は間違いなく今日中に終わらない。話をする暇などなさそうだった。


提督「…ついていない…」


ある意味、全くのいつも通りだった。

利根はそうですね、吾輩ですね
改二にしてレギュラーメンバーにさえしてるのになぜ間違ってしまったのか
bobゆるして

…………


提督「…おはよう、大淀」

大淀「…おはようございます」


提督「よく眠れたか?」

大淀「…いいえ」

提督「だろうな…」


結局、昨日の仕事は深夜までかかり、解散した後泥のように眠った。
当然起床時間は変わらないのでまともに睡眠が摂れるはずもなかった。


提督「いい加減シャキッとしないとな、流石に今日はあんなことはないだろう」

大淀「ええ、そうですね…この1日、頑張って乗り切りましょう」


提督「…えぇーっと…あぁ、7時から演習監督…そろそろ行かなきゃな」

大淀「あ、外出されますか…?」

提督「ああ、できる限り早く戻ってくるから、勤怠処理は任せたぞ」


大淀「あ、あのっ!」


提督「どうした?」

大淀「わ…っ、忘れ物です」

提督「忘れ物…?」




チュッ


提督「……な…?」


大淀「…ぁ、ぅぅ……」





大淀「…い、いってらっしゃいのキスですよっっ!!」

大淀「ほらほら、目も覚めたでしょう、早く行ってっ!」グイグイ

提督「あ、あぁ…」

バタン

提督「……」





大淀の中の夫婦のイメージが、少し分かった気がする…。

やらかしました
酉変えます
嫁艦の一人でした

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