提督「安価でどんどんみんなと遊ぶ」 (1000)

提督「……」ソワソワ

大淀「ふふ、落ち着きが無いみたいですね」

提督「しょ、しょうがないだろ。まさか、こんな日が来るなんて思ってなかったし……」

大淀「男性なら、ここはどーんと構えているべきですよ」

明石「提督にとっても嬉しい日なんですよね」

提督「そうだが……いや、確かに俺らしくなかったか。……よし!」

明石「切り替えの早さは提督らしいですね」

提督「あいつに後悔するような式を挙げさせるわけにもいかないからな」

大淀「はい、その意気です」

「準備が出来ました。先に式場へお入りください」

提督「はい! じゃあ、行ってくる」

大淀「提督」

提督「なんだ?」

大淀「……おめでとうございます」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1480434143

 一人の男が結婚式場に足を踏み入れた。
 それはこの場に居るべき人物であり、またこれからの儀式の主役となる者。

「ハー、まさか先を越されるとは思わなかったネー」

「う……ぐすっ……」

「幸せになれよー!」

「……」

「うふふ、おめでとうございます、提督」

 祝う声だけでは無いものの、多くの人物の歓声を受けながら男は祭壇前に立った。
 直に女性の方もやってくる。これまでその男を支えてくれた大切な人が。

『只今より、花嫁の入場です』

 アナウンスがあり、辺り一面に音楽が鳴り響く。
 ギィ……と音をたて扉が開く。多くの視線の向こうには純白のドレスを身に包んだ女性が立っていた。
 その光景は先ほどからずっと苦言を申していた人たちも息を呑むほどであり、男自身もその美しい姿に見とれてた。

「……」

「霞、ほら」

 朝潮がその人物の手を引く。
 女性の表情は読み取れない。無表情をつくろっているが、いつも通りにも見える。
 ただ男でもわかることは、その足取りは決して不承不承といったものではなく、自分の意思でこちらへ一歩一歩みを進めているということ。

 時間にして数十秒。しかし、二人にとってはこれまで共に歩んできたと同等に感じられる時間。
 その短くは無い時間を経て、二人は視線を交わすように向かい合う。

「霞、綺麗だ」

「ありがと」

女性がこの場に姿を現してからずっと言いたかった言葉。
男は夢心地になったまま、告げる。その瞳に映る光景は今や女性だけ。

朝潮はそんな二人に苦笑を浮かべ、自分の妹の夫となる相手に向けしっかりと釘を差す。

「司令官、絶対に幸せにしてくださいね」

「ああ。もちろんだ」

その返答に気負う姿は一切ない。
きっと霞を大切にしてくれる。そう確信させる様子に、朝潮はにっこりと笑顔を浮かべ、花嫁となる妹に心からの祝福を送った。

「霞、おめでとう。幸せになってね」


 そして始まる式。
 二人を阻むものは何もない。ここから先はお互いの気持ちを確かめるだけ。

「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、愛することを誓いますか」

 男は女性をしっかりと見つめている。後は応えるだけ。司祭の言葉に、何一つ偽りのない心で。

「誓います」

 男のその言葉に対し、女性は口を開くことはない。いや、口を開く必要すらない。
 男も理解しているのだ。

 満面の嬉しそうな笑みは、式が喜ばしい以外にあるものだろうか。

 そのまま男は準備をしていた指輪を女性の指に。身長差があってもそれを感じさせない自然な行動。
 二人は己が心の愛しさのまま、どちらかとなく唇を合わせた。

 式場は静まり返っている。もちろん冷たいわけではなく、それは暖かな雰囲気のもの。
 指輪の宝石はその結婚式を祝福するかのように光を放っていたのだった。

~~~~~~~~

霞「……は?」

霞「いやいやいや……」

霞「……」

霞(なんて夢を見ているのよ私――!)

朝潮「どうかしたの?」

霞「な、なんでもないわよ!」

朝潮「? そういえば、霞が寝た後にだけど、司令官が来ていたみたい」

霞「はぁ? まさか、何かされたわけ」

朝潮「確か、仕返しだ、とか言って霞の枕下に何か入れていたみたいだけど」

霞「……!」ゴソゴソ

『結婚式の夢を見る』

霞「……!」ビリビリ

朝潮(何が書いてあったんだろう……)

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※雑談自由・キャラ崩壊注意
※安価は自由にしてます(遊ぶに縛られなくてもいいや)
※人生がENDにいきそうな安価は曲解します
※毎日一回更新
※sage進行(E-mail欄に『sage』と記入してからの書き込みをお願いします)

―執務室―

提督「見たい夢の内容を紙に書いて枕の下に置くと見れるらしい」

提督「眉唾物だし、まさか本当に効いてるとは思えんが、まあ自己満足の範疇だ」

下2

川内「この前書道をしたんだって?」

提督「!?」

川内「おっと、それは何で知っているのかという顔だね」

提督「いや、川内の口から夜戦以外の言葉が出るとは思わなくて」

川内「そこ!?」

提督「悩み事があるならいつでも相談に乗るぞ」

川内「むしろ心配する提督の方がレアな感じがあるんだけど」

提督「失敬な」

川内「とにかく、書道についてなんだけど」

提督「ふんふん」

川内「書き方、教えてほしいなーって」

提督「……やっぱりどこか頭でも打ったんじゃないか?」

川内「もういいから」

提督「まあ、習字っていうのなら、別にいいんだが。理由はなんだ」

川内「書初めはうちでも毎年やってるんだけどさ」

提督「神通とかやりそうだし、那珂ちゃんも毎年抱負を持ってるしな。続けて」

川内「神通は当然だと思ってるかもしれないけど、これが那珂ちゃんも上手で……」

提督「ははーん。姉の威厳的に、一番字が下手くそなのが堪えるっていうわけか」

川内「うっ……その通りなんだけど」

提督「そういうなら手伝うとしますか。じゃあ、まずは何か書いてみて」

川内「うん」

~~~~~~~~

提督「下手だな」

川内「そんなに?」

提督「いや、夜戦という文字は完璧に等しいほど上手だ。だが、それ以外の文字はなんでこんなにムラがあるんだ」

川内「……気持ちの入りようかな」

提督「マジでそんな気がしてきた……とりあえず、基礎はできてるんだから、もう単純に集中力の問題だ」

川内「なるほど」

提督「だから、ここの一覧の文章をきちんと書いてみることから始めようか」

川内「すごいね提督、まるで習字の先生みたい」

提督「え、そうかな? いやー、俺くらいになると、改善点まできちんと指示できちゃうからなー」

川内「うんうん。そんな先生のお手本も見せてほしいな」

提督「しょうがないなー。よし、それじゃあ手本というのを見せてやるか。いくぞー!」

川内(今のうちに逃げておこう。夜戦以外の文字をあんなに書くなんて拷問みたいだし)コソコソ

~~~~~~~~

提督「……はっ! 気づけば川内がいない!」

提督「くっ、俺としたことが、流されてしまったか」

下2

―母港―

提督『さあ、只今より開始されますのは水上機エアレース!』

青葉『先にコースをぐるりと一周して指定地点に爆撃成功した人が勝ちとなります!』

提督『しかし爆撃地点には審査員がおり、合格を貰えなかった場合はその時点で負けとなります』

青葉『さーて、いよいよ選手の登場です!!』

提督『まずは瑞雲のことなら私に任せろ! その知識は開発者をも超える! 瑞雲師匠こと日向だぁー!』

日向「優勝は私と瑞雲以外に有り得ないな」

提督『その他、瑞雲12型扶桑、試製晴嵐シオイ、Late298Bコマンダン・テスト、人数合わせにOS2Uアイオワ、Ar196改ビスマルクからお送りする』

ビスマルク「適当すぎない!? しかも人数合わせって」

提督『全員分やってたら時間が足りないだろ、諦めろ』

ビスマルク「じゃあなぜ呼ばれたのかしら……」

提督『さあて、全員の準備が整ったようです。スタートまで5、4……』

青葉『3……2……1……スタートです!』

日向「スタートは貰った」

提督『おおっと、もうすでに発艦をしている! さすが瑞雲は身体の一部と豪語するだけある!』

扶桑「伊勢や日向には負けられないの……!」

ビスマルク「えっと、たしか発艦は……こうね!」

アイオワ「……あ」

ビスマルク「どうかした……えっ」

提督『? ……ああ、発艦直後にぶつかってら』

青葉『ミスですかね』

アイオワ「燃料を入れるのを忘れてたわ。ミステイク♪」

ビスマルク「巻き込まれたこっちの身になってほしいんだけど!?」

アイオワ「ドンマイ」

ビスマルク「それを貴女が言うの!?」

提督『さあて、数合わせ組が早々に退場しつつ、他は順調といったところ』

青葉『シオイちゃん頑張ってますねー』

提督『だな。まあ操作しているのは妖精さんなわけだから、発艦後はそれぞれは見守ってるだけだけど』

シオイ「……!」

青葉『あれ、突然戻しましたね』

提督『ほら、あれだ』

日向「さあいけ瑞雲、その対航空戦も見せてやれ!」

扶桑「燃料タンクに命中!? 不幸だわ……」

日向「私のように瑞雲を愛せ。そうすれば、瑞雲もまた答えてくれるようになるぞ」

青葉『あー、試製晴嵐は対空出来ないですからね』

提督『つーか、日向は何を言っているんだ』

青葉『最後のコーナー曲がりましたね。Lateが後ろに追従してますけど、追い越せそうにはないです』

提督『コマさん一言もしゃべっていないように、この展開についていけてないらしいしな』

青葉『まずはこの鎮守府に慣れてほしい所ですね』

ドーン

日向「私と瑞雲の勝利だ!!」

―執務室―

提督「しかし、いくらなんでも普通の瑞雲が勝つとは思わなかったな……」

提督「愛もあながち笑えんな」

下2

―鳳翔の店―

提督「かんぱーい!」

カチャン

翔鶴「前は羽目を外し過ぎてしまいましたから、気を付けて飲まないといけませんね」

金剛「前?」

天城「そういえば、悪酔いしたって聞きましたね」

翔鶴「覚えていませんが、もうあんなことが無いように気を付けます」

提督「たまたま会ってつき合せたってのに、なんか気を使ってもらってるみたいだ」

古鷹「いえ、私も今日は来ようかと思っていましたから」

祥鳳「はい。たまにはこういうところも良いですよね」

提督「……なんだか、お前達って悪口言われても怒らなそうだよな」

古鷹「そうですか?」

提督「無理に引き連れても怒らなかったし」

祥鳳「これくらいで怒る人は逆にいないと思いますけど……」

古鷹「それに、嫌なら嫌とちゃんといいますよ」

提督「ふむ……古鷹」

古鷹「はい?」

提督「重巡って戦艦ほどのパワーも無くて、駆逐艦ほど夜戦に強いわけも無く中途半端だよな」

古鷹「」

祥鳳「てて、提督! いきなり何を言っているんですか!」

提督「祥鳳もなんか軽空母の中でもちょっと微妙だよな。影が薄いというか」

祥鳳「」

翔鶴「どうしたんですか!?」

天城「提督がご乱心に!」

金剛(嫌な予感がするデース)

提督「……翔鶴は、駄目男と結婚しそう。つーか、見た目があるキャラに似てるし」

翔鶴「えっ」

提督「金剛、提督デース」

金剛「それは止めろと言ってマース」

提督「天城は……すまん、姉と妹の方は言いやすいけど、天城は難しいわ」

天城「それはそれでひどいと……いえっ、決して貶されたいわけじゃないですけど!」

提督「ふぅ……言い切った。さて、皆としてはこのくらい全然おこることじゃ――」

ドーン<ギャアアアアア

~~~~~~~~

提督「」

龍鳳「わわ、すぐ医務室に運びますね!」

提督「いや……会計を……」

龍鳳「後で良いですから!」

提督「はい……」

―執務室―

提督「古鷹と金剛は一発アウトの台詞だった。空母組は先に泣かれそうだし」

提督「そう考えると、怒るラインはきっちり分けられているような気がする。うん、謎の研究結果だ」

下2

―母港―

青葉『匿名希望さんのお便りにより、前回の勝負のリトライとして再びエアレースを開始します』

提督『うちの鎮守府らしいと思ったんだけどなぁ。てか、お便りってなんだ』

青葉『コマンダンさんがかわいそうでしたから』

提督『今回はコマさんもやる気みたいだし、まあいいか。それで、選手はそろってるな』

青葉『はい。前回の六人、ちゃんと位置についているようです』

提督『ルールはご覧のとおり。変更点としてはラフプレイしにくい感じになっているな』

青葉『しにくい?』

提督『さて、選手の準備も整ったようだし。さっそく開始の合図を出すぞ』

青葉『はあ、まあいいですが』

提督『3……2……1……始め!』

日向「今回も優勝は貰うぞ。いけ、瑞雲よ」

扶桑「大丈夫、今回は勝てる……発艦開始!」

青葉『距離を離しているおかげで、今回は接触もなさそうですね』

提督『偶然の衝突はないだろう。偶然ならな』

ビスマルク「……アイオワ、どうして貴女の機体は私の艦載機の上の方を飛んでいるのかしら」

アイオワ「フフッ」

ビスマルク「ムカッ……アラド、つけられないように動いて!」

アイオワ「そう簡単に逃げられると思う? ホットなバトルのスタートよ!」

青葉『あのー、二人ともコース外へ行ってますけど』

提督『放っておけ。あいつらはあれで楽しんでいるんだろう』

青葉『それで、真面目にレースをしている人たちの方では、やはり試製晴嵐が強いみたいですね』

提督『普通にやっても勝てないとわかっているからこそ、前回日向は航空戦に持ち込んだわけだしな』

扶桑「試製晴嵐にも瑞雲にも追いつけないわ……日向の瑞雲、本当にただの瑞雲なのかしら……」

日向「性能が上なのに勝てないことに疑問か。笑止、120%の力を発揮してこそ、本当の瑞雲を扱うことができるのだ」

扶桑「日向が何を言っているのかわからないわ……」

シオイ「日向さん、今回はお先にゴールさせていただきますね!」

日向「シオイ、爆撃も完璧だった。ふふ、この私の瑞雲のライバルにふさわしいぞ」

シオイ「ありがとうございます?」

コマンダント(やはり速度ではかなわないみたい……ズイウン、セイラン、素敵な機体ね)

―執務室―

提督「食いついてはいたものの、さすがにシオイ晴嵐には日向瑞雲でも厳しかったみたいだな」

提督「まあでも、これでお互いの親交が深まってくれればいい結果だといえるだろう」

下2

―暁型の部屋―

提督「響ってロシアっぽさがないよな」

響「ヴェールヌイと名乗った方がいいかい?」

提督「いや、それは好きにすればいいけど、そういうことじゃなくてな」

響「そうだね……じゃあ、ロシア語についてちょっとした豆知識を話そうか」

提督「豆知識?」

響「うん。何か知りたいことはあるかい」

提督「いや、特にはないが、強いて言うならば今の響にも関係ありそうな言葉がいいな」

響「じゃあロシアとソ連についての」

提督「いや、そういうの以外で」

響「じゃあ司令官、ウォッカについて説明しようか」

提督「ウォッカ? 酒だろ」

響「その通り。でも、ウォッカはどういう意味かは知っている?」

提督「さあ……ていうか、意味があるのか」

響「水だよ」

提督「そりゃ、ロシア人はウォッカを水のように飲むとはいうけれど」

響「そうじゃなくて、ウォッカという言葉には、ヴァダーと指小辞をつけたものを指しているんだ」

提督「ヴァダー?」

響「水、だね」

提督「ウォッカを水扱いは変わらないのか……」

響「というわけで、ウォッカを持ってきたよ」

提督「話がつながっていないが」

響「司令官はのどが渇いていないのかな?」

提督「なるほど、有言実行と」

響「そういうことだよ。はい、乾杯をするよ」

提督「コップが一つしかないが」

響「私はこのままで大丈夫だからね」

提督「瓶ごとか……」

響「ほら司令官、乾杯」

提督「ん、乾杯」

―執務室―

提督「響は絶対に俺よりお酒が強い気がする」

提督「もしかして、改装することにより体制が?」

下2

―夕雲型の部屋―

提督「なりたいものに近付くには、まずは見た目から入るべきだ」

清霜「見た目から?」

提督「戦艦になりたいんだろう。ならば、その髪型を戦艦たちの髪型に変えてやる!」


~~~~~~~~

清霜「というわけで、ストレートよ!」

夕雲「あら、似合ってるわよ」

長波「珍しさは無いけどな。寝るときとかも髪を解くだろう」

早霜「わたしと……被る……」

清霜「不評かな」

提督「そういうわけじゃないが、単純にレア度的にだろうな。次だ!」

~~~~~~~~

清霜「次は金剛さんのお団子付きよ!」

夕雲「可愛らしさが上がったわね」

風雲「本当。特徴もあって、良い感じじゃない」

沖波「金剛型なら霧島さんはしないの?」

提督「眼鏡は髪型じゃないぞ」

~~~~~~~~

清霜「武蔵さんの髪型ね!」

夕雲「猫っぽくて愛嬌があるわね」

高波「かわいい……かも」

朝霜「武蔵さんは獣のイメージがわくけど、清霜に限ってはそんな感じがしねーな」

清霜「褒められてる、のかしら?」

提督「褒め言葉と受け取って良いだろう」

~~~~~~~~

清霜「大和さんのポニテね!」

夕雲「清霜さんの活発さが出て良いわね」

巻雲「なんだかかっこいい感じがするー」

提督「大和は優美って感じが出るが、清霜は良くも悪くもそのままの印象だな」

清霜「結局どれが良かったと思う?」

夕雲「私は何でもに合っていたと思うわ。もちろん、本心よ」

提督「やっぱ、どれも特色があっててな。でも、一つ言える事は」

清霜「言える事は?」

提督「髪型同じにしても、戦艦の人たちの雰囲気は出ないって事だな」

清霜「うー、何だか悔しい。分かっていたけど」

―執務室―

提督「とりあえず、後でこっそり集計しておこう。反応的に、同着っぽいが」

提督「次やる時は服装も変えてもっとそれっぽくするべきかな」

下2

―鳳翔の店―

提督「たわわチャレンジ、やってみるか」

龍驤「ぐはぁ!!」バタッ

龍鳳「龍驤さんが倒れました!」

飛鷹「たわわチャレンジってあれよね、胸に携帯を乗せてる、あの」

隼鷹「んー? あー、なんか見た事ある気がする」

千歳「SNS等では有名になってましたよね」

千代田「千歳お姉と一緒にやってみたよね!」

千歳「は、恥ずかしいからそれは言わないで」

祥鳳「胸……」チラッ

瑞鳳「胸……」ズーン

飛鷹「やってみるかって、セクハラかしら?」

提督「そんなつもりはない。俺も前にやったしな」

飛鷹「はぁ!?」

隼鷹「さすがだねぇ。結果は?」

提督「落ちたぞ」

隼鷹「あったりまえじゃんか! あはは!」

飛鷹「馬鹿なのかしら……」

隼鷹「飛鷹ならできるだろ。ほら」

飛鷹「あ、こら、勝手におかないで!」

祥鳳「……」ドキドキ

千代田(あれ、こっそりチャレンジしようとしてる?)

千歳(頑張って……!)

提督「一部除いたら、ここにいる人は大体できるだろ。なあ、鳳翔」

鳳翔「はい?」ゴゴゴ

提督「すみませんでした」

龍鳳「あ、えっと、ほら提督、私は出来ましたよ!」

提督「おお、そうか!」

鳳翔「良かったですね」ニッコリ

龍鳳「すみません鳳翔さん!」

鳳翔「い、今のは純粋に賞賛しただけですよ?」

提督「しかし、あまりに普通の結果で面白くない。瑞鳳、倒れた龍驤をこっちの方に」

瑞鳳「はい……」

提督「龍驤の胸の位置に携帯を置いて……ほら、落ちない、チャレンジ成功だ!」

龍驤「馬鹿にしとるんかキミィ!」

瑞鳳「私もああすれば……!」

飛鷹「いや、貴女はそれでいいの?」

祥鳳(ぎ、ギリギリのった!)

千歳(おめでとう!)

千代田(身体を反らしてるけどね!)

―執務室―

提督「チャレンジをしている最中は、落とす奴らのハイライトが消えるのが……」

提督「いや、失敗する姿もそれはそれで面白いとは思うけど」

下2

―暁型の部屋―

提督「電、年賀状を書かないか!」

電「え……」

提督「露骨に嫌そうな顔しないで!」

電「冗談なのです」

提督「電の冗談の境目が良く分からない……」

電「それは司令官さんも同じだと思うのです」

提督「……で、年賀状についてだがな」

電「はい」

提督「酉年なわけだから、何か鳥に関することが描きたいと思うんだ」

電「酉年ですか……逆光に向かって羽ばたく艦載機とかどうです?」

提督「お、おう、思ったよりガチな答えで困惑だ」

電「聞いてきたのは司令官さんなのです」

提督「まあ、ビジュアル面はそれでいいかもしれないな。しかし、上官に送る物としては不適切じゃないだろうか」

電「司令官さんは達筆なのですから、文字だけで送ればいいと思うのです」

提督「うーん……一回書いてみるか」

電「なのです」

~~~~~~~~

提督「ふむ、こんなものだろうか」

電「電もかけたのです」

提督「静かにしていたと思ったら、電も年賀状を書いていたのか」

電「姉妹で送り合うのです。あと、お世話になった人達にも」

提督「なるほど。……なあ電、この文字を暁が読めると思うか?」

電「これは響ちゃん用なのです。暁ちゃんの分はもっと柔らかく書くのです」

提督「ちゃんと考えてるのな」

電「それより、司令官さんはこれを下書きなしで書いたのですか?」

提督「おうよ、力作だ」

電「率直に言って、上手すぎて気持ち悪いのです」

提督「なぜ上手に描けて罵倒されなきゃならないんだ!?」

電「えと、ごめんなさいなのです。いきなり出来のいい絵が出て来たから……驚いてしまったのです」

提督「そう素直に謝られるのも、なんだか違和感があるな……とりあえず、これで良いって事か」

電「はいなのです! きっと、皆さんも喜んでくれると思うのです!」

提督「久しぶりに電が素直に賞賛してくれたし、この線で書いてみるか。ありがとな、電!」ダッ

電「……もしかして、この絵を一枚一枚描くつもりなのですか?」

―執務室―

提督「時間が空いたら適当に書かなくちゃな。秋雲に資料用の写真も借りたいし……」

提督「いやー、作戦の後始末といい、しばらく大変だ」

下2

―提督私室―

提督『鍋するぞー! 参加する奴は材料は好きにもってきてくれ!』

提督「って、確かに言った。だが、なんだこの材料」

赤城「はい、野菜ですよ」

翔鶴「お肉ですけど……間違えてましたか?」

提督「いやまあ、二人が普通の持ってきたのはわかってる。それはいい」

蒼龍「だから、果物はやめた方がいいって……」

飛龍「蒼龍だって、ブリもってきたじゃん」

蒼龍「シーフードにするならありかとおもって」

提督「ある意味鍋っぽさがでていいとは思う。ああ、ブリは切って入れるがな」

加賀「松茸ともずくですけど」

瑞鶴「私はカイワレ大根」

提督「つっこみずらいなぁもう!」

赤城「鍋に松茸はちょっともったいないですよね」

翔鶴「瑞鶴はカイワレ大根をどこから持ってきたの……?」

瑞鶴「明石さんの店で安かったから」

提督「理由ショボ!」

~~~~~~~~

提督「えー、いろいろあって、冷蔵庫の中にあったやつをぶち込みます」

加賀「真っ暗なのだけど」

飛龍「あ、これ闇鍋ってやつだよね。わくわくしてきた!」

蒼龍「提督、入れるのは食べられるものですよね?」

提督「冷蔵庫に食べられないものなんて入れるか」

赤城「目薬とか入れますよ」

提督「……多分、大丈夫」

蒼龍「一気に不安が増してきたんですけど……」

提督「仮に入っていてもキャップを空けなきゃ大丈夫だろ。それ」

ボトボトボトギャーボト

翔鶴「今何か聞こえませんでした!?」

提督「ん? ……ああ、もしかしたらおもちゃが入っていたかも」

翔鶴「ついさっき食べられないものを入れてないって言いましたよね……」

提督「多分って言っただろ」

加賀「それで、もう箸を入れてもいいですか」

蒼龍「よく食べる気になるね……」

飛龍「こういうのは最初に箸を入れて食べられそうなものを探した方がいいでしょ。味も混ざってないし」

蒼龍「意外と考えてたんだ……」

飛龍「失礼だなぁ」

瑞鶴「……さっきから、なにか絡みついてくるんだけど」

加賀「我先に取ろうとするなんて、これだから五航戦は……」

瑞鶴「そういいながら箸を入れてない?」

加賀「ええ」

瑞鶴「そういいながらさっきから当たってるのは――正直!?」

提督「ノリ突込みとは余裕あるな。さーて、もずくも巻き終えたし適当にとるか」

瑞鶴「さっきからやたらと絡みついてると思ったら提督さんの仕業!?」

赤城「やっぱり鍋は春菊ですね」

翔鶴「こんな状況でのんびり食べられる赤城さんはさすがですね……」

―執務室―

提督「とりあえずお腹を壊すことはなさそう……かな」

提督「まあ、うちの飯まず組よりひどいものはそうそうできないだろう」

下2

―提督私室―

ポーラ「提督ぅ、この前お酒について教えてもらったそうですね~」

提督「教えてもらったって、響の件か」

ポーラ「今度はポーラが教えちゃいましょ~」

提督「ええ、いいよ……」

ポーラ「遠慮はいりませんよぉ?」

提督「ポーラに説明を任せると、ガッツリお酒について説明されそうで……」

ポーラ「むー、では、提督にも身近なワインについて説明します~!」

提督「どうしても説明したいのか。酔って……はいるな。いつも」

ポーラ「酔ってないですよぉ~」

提督「酔っぱらいの典型的な戯言だな」

ポーラ「とにかく説明しますね~」

提督「お手柔らかに」

ポーラ「イタリアではワインのことをヴィーノていうんです~」

提督「そういえば、たまに赤をロッソ、白をビアンコと呼んでいたな」

ポーラ「はぁい、そうなんです~。その中間のロゼがロザートですねぇ」

提督「ちなみにポーラはどれが好きなんだ?」

ポーラ「どれも大好きで~す」

提督「だろうね」

ポーラ「続けますね~。スパークリングワインなんですが~、これはなんて言うか知ってますかぁ?」

提督「スパークリング? たしか発泡性のワインで、シャンパンみたいなワインのことだよな。うーむ……」

ポーラ「答えはスプマンテで~す」

提督「ああ、言われてみればそんな名前のワインを見たことがある気がする」

ポーラ「さらにぃ、イタリアではほかに種類があるんですよぉ」

提督「ほほう、種類とな」

ポーラ「微発泡性がフリザンテ、天然弱発泡性がランブルスコなんです~」

提督「へぇ、そんなふうに分けられているんだな」

ポーラ「ここまで説明しましたけど~、お酒って細かいことはやっぱりどうでもいいと思うんですよぉ」

提督「えぇ、それ言っちゃうのか……」

ポーラ「問題は美味しいか、そしてどう味わうかですから~」

提督「言いたいことはわかる。そういうポーラはいつも浴びるように飲んでるが……いや、だからこそのセリフなのか」

ポーラ「そんなわけで~、イタリアのスパークリングワインをもってきましたぁ」

提督「またこのパターンか……って、多くないか!?」

ポーラ「え~? ほんの十本くらいですよぉ」

提督「ほんのじゃないと思う量だぞ」

ポーラ「これでも厳選したんですよ~?」

提督「これで減らしたんだな……」

ポーラ「それじゃぁ提督~、一緒に飲みましょ~!」

提督「はぁ……ま、たまには付き合うか」

―執務室―

提督「なんだかんだ、ほとんどポーラ一人で飲んだぞ……」

提督「でも、持ってきたワインは実際に美味しかった。厳選はしていたみたいだ」

下2

筑摩「あの、提督……」

提督「どうした。筑摩がここまで来るのは珍しいな」

筑摩「少しご相談があるのですが」

提督「相談! はぁ、本当に珍しい事もあるもんだ。よし、言ってみろ」

筑摩「実は、姉さんのことなのですが、こもって出て来なくて……」

提督「こもって? 何にだ」

筑摩「こたつ、です」

提督「こたつて……え、時期的に早くないか?」

筑摩「私もそう思うのですが、どうしても出てきたくないと」

提督「はぁ、まあ利根ならありえるか。でも、筑摩なら一人でなんとかできそうなものだが」

筑摩「……こたつにこもる姉さんが可愛いんです」

提督「姉馬鹿め」

―利根型の部屋―

提督「利根ー」

利根「む、なんじゃ、提督まで来たのか」

提督「うわ、こたつから利根の顔が出てる」

利根「吾輩は絶対に出んぞ!」

筑摩「ご覧の通りでして……」

提督「もうこたつを引っぺがせばいいんじゃないか?」

筑摩「そんな可哀想な事は出来ません!」

提督「相変わらず過保護なやつめ。じゃあどうする」

筑摩「説得をしましょう。きっと姉さんは言えば分かってくれると思います」

提督「分からなかったから俺の所に来たんじゃないのか!?」

筑摩「……頑張ってください!」

提督「丸投げ!?」

利根「むぅ、吾輩を差し置いて楽しそうじゃの……」

提督「いや、それが嫌なら出てくればいいだろ」

利根「いーやーじゃー! さーむーいーのーじゃー!」

提督「子どもか!」

筑摩「姉さん、そんなに我が儘を言ったらだめですよ」

利根「筑摩が何といおうとも絶対に出ないのじゃ!」

筑摩「どうしましょう……」

提督「一言で終わりとか、本当に甘いな!」

筑摩「でも、我が儘を言う姉さんは可愛くありませんか?」

提督「そうかもしれないけどさ!」

利根「むー、二人で仲が良さそうなのじゃ!」

提督「うるさい! こたつなんかこうしてやる!」バッ

利根「ぬわー! こたつを無理やり剥がすでない!」

筑摩「あ、どうせなら写真に収めておけばよかったですね」

―執務室―

提督「実はあの姿を見せたいから呼んだんじゃないよな……」

提督「なんだかんだ、あの後すぐにクリスマスの話をしていたし」

下2

―母港―

提督「はい、チーズ」

パシャッ

提督「うーん、良い笑顔。これは使えるな」

大鳳「あの、どうして撮影なんて?」

提督「どうしてって、来年は酉年だろ」

大鳳「はい」

提督「だから」

大鳳「……??」

鳥海「鳥に関する名前を付けた人に集まってもらったわけですか」

大鳳「あ、なるほど」

提督「さすが鳥海、まあそういうわけだ」

鳥海「それより私は変なコスプレの方が気になるのですが」

響「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

提督「フェニックスのコスプレか。別に普通じゃないか」

鳥海「普通って何でしょう……」

古鷹「私も鷹なんですけど、さすがに恥ずかしいのですが……」

提督「撮影終るまで待ってな」

古鷹「むしろ、これで撮られるのが嫌なんです」

響「でも古鷹さん、七面鳥のコスプレをした人よりましだと思った方が良いよ」

古鷹「七面鳥……あっ」

鳥海「あともう一つ気になったものがあるんですが」

提督「なんだよ。質問多いな」

鳥海「そりゃ多いですよ。それで、あそこの焼き鳥はなんですか」

提督「被写体」

鳥海「ただの料理ですよね」

提督「そりゃ焼き鳥だからな」

鳥海「……こ、今回ばかりはさっぱり意味が解りません」

提督「これはとある奴の代わりのようなものだ。まあ、気にしなくても良いぞ」

大鳳(焼き鳥の代わりって何でしょうか……)

鳥海(この話題はあんまり突っ込まない方が良さそう……)

―執務室―

提督「人数多いからほぼ着ぐるみみたいになったんだよなぁ」

提督「……なんか、これならクソコラ画像で作っても良かったかもしれんな」

下2

―廊下―

提督「じゃじゃーん、フライドチキンだぞー!」

睦月「美味しそうにゃしぃ」

提督「今回は特別上手に出来たからな。あ、でも睦月にはスパイスはちょっと辛いかもしれないから、無い方な」

睦月「子供扱いしないでほしいにゃあ!」

提督「いや、でもほら、無理して食べてもよくないぞ」

睦月「睦月だって食べられます!」

提督「うーん、でもなぁ」

睦月「暁ちゃんと一緒にしないでほしいにゃしぃ!」

提督「それは暁が可哀想だ。が、否定はしない」

睦月「とにかくー! 睦月も食べるのー!」グイッ

提督「あ、待て、とりあえず選ぶから……あっ」スポーン

睦月「およ? フライドチキンが飛んで行ったにゃ!」

提督「すごい勢いだ! って、着地地点には天龍が!?」

天龍「ん?」

サクッ

提督「……」

睦月「……」

天龍「なんだよ二人共、そんな驚いた顔して。オレの顔に何かついていんのか?」

提督「いや、顔には何も……」

睦月「し、司令官、背中借りるにゃ……」フルフル

天龍「おいおい、どうした? もしかして、オレが怖いのか?」

提督「それまだ言ってんのか」

天龍「まだってなんだ!?」

提督(ていうか、睦月は怯えてるんじゃなくて、笑いをこらえてるだけだし……)

天龍「まあいいか。何も用事が無いならもういくぜ」

提督「え、そのまま?」

天龍「そのままって何だよ」

提督「あー、いや……」

天龍「今日の提督は変だなー。んじゃな」

提督「……睦月、今の内に逃げるぞ」

睦月「は、はい……フフッ」


天龍「なーんか二人とも様子が変だったな」

龍田「あら、天龍ちゃ……」

天龍「お、龍田じゃねーか。どうした、龍田まで」

龍田「その、私としては天龍ちゃんの方がどうしたって感じなんだけど……」

天龍「へ?」

龍田「天龍ちゃん、頭」

天龍「? ……ああああああ!!」

―執務室―

提督「さて、今回は不幸な事故だった。俺は何もしていない」

提督「とりあえず責任を追及されたら卯月の所為にでもしておこう」

下2

―商店街―

提督「ここはとある商店街な訳なんだが」

筑摩「はあ」

提督「どうしてこんなところに来たかというと、那珂ちゃんの地方巡業、簡単に言うと営業なわけだ」

筑摩「私が呼ばれた理由は?」

提督「たまたま行く時に目の前にいたから」

筑摩「これは怒っても良いですよね?」

提督「いやー、勘弁して欲しいな。俺も好きでついてきているわけじゃないし」

筑摩「それならどうして来たんですか……」

那珂「本当だよ!」

提督「だって、那珂ちゃんが手伝ってっていっただろう?」

那珂「後ろで愚痴を言われるくらいなら来なくていいよ!」

提督「何を言っている。俺は那珂ちゃんのファン一号だぞ! 来なくて如何する!」

那珂「好きでついてきているわけじゃないって今言ったよね!」

提督「さて、冗談もほどほどにして、このケーキを売り切るか」

那珂「切り替え速いね……」

筑摩「そういえば、私達はどうしてケーキなんて売っているんですか?」

提督「挨拶は勿論のこと、那珂ちゃんのCDとケーキの抱え合せにすることにより、少しでも売れ行きを良くして知名度をあげる作戦だ」

筑摩「なるほど……」

提督「でも、うーん、やっぱりケーキのおまけにCDをつけても売れないか」

那珂「あれ、これって那珂ちゃんのCDにケーキのおまけだよね」

提督「とはいえ、このために筑摩を連れてきたと言っても過言じゃない」

筑摩「目の前にいたからじゃ無かったんですか」

提督「冗談だって。二人はサンタとトナカイの真似をして、早めのクリスマスという感じで売ろう」

筑摩「トナカイ……だからですか」

提督「一見二人共ネタっぽいが、実際はプロポーションも整ってて見た目のレベルも高い。売り子に徹すれば完売も可能だろう」

筑摩「褒められて、いるんでしょうね。ここまで来たんですし、最後まで付き合いますよ」

那珂「あの、那珂ちゃんは今日ちゃんとした勝負服なんだけど……ネタっぽいって……」

提督「じゃあ、寒いけどまだ頑張るぞ!」

筑摩「はい!」

那珂「今日は那珂ちゃん押され気味だよ……」

―執務室―

提督「……おかしいな、那珂ちゃんの営業の筈が、話題になったのはトナカイコスの筑摩のことばかり」

提督「むぅ……今日の那珂ちゃんは存在感が筑摩に負けていたし、宣伝にはなりにくかったか」

下2

―???―

提督「ジングルベール ジングルベール すーずーがーなるー♪」

ヲ級「……」

提督「というわけで、クリスマスって知ってるか?」

ヲ級「ええ、その話題の切り出し方はなんですか……」

タ級「恋人との蜜月を過ごす素敵な日と聞いたことあるわ」

ル級「家族と過ごす日ではないのか?」

レ級「十時から三時までせいけんづきをするんだよね」

提督「最後のは違うが、意外とみんな知ってるな」

タ級「もしかして、私とすごしてくれるの?」

ル級「人間と共にすごしたくはないんだが……」

提督「いや、今回は布教しに来ただけだ」

レ級「ふきょう?」

提督「クリスマスはいいものだということを教えに来たって感じだ」

レ級「へー」

ヲ級「一応戦争中ですよね。クリスマスを祝うとか、のん気すぎじゃありませんか?」

提督「意外と戦争中でもクリスマスは祝ってるもんだぞ。そもそも、その日に襲撃をかけてきたことないお前らが言うか」

ル級「その日はなぜか士気も上がらないからな……」

タ級「不思議よね……」

提督「なるほど。つまり、お前たちはクリスマスは大事なものだと、なんとなく感じているんだな!」

レ級「そうなんだ……そうかも!」

ヲ級「いえ、流されないでくださいよ」

提督「今年はお前たちもクリスマスを楽しんでみてくれ」

ヲ級「そういわれましても」

提督「想像してみるんだ。華やかなネオンに、豪華な食事。そして親しい人とのプレゼントを贈り合ったり、ゲームに興じたりする楽しいひと時」

レ級「……いいかも!」

提督「だろう!」

タ級「そこに王子様と二人きり……うふっ」

ル級「タ級、よだれがたれてる」

ヲ級「……まあ、余裕があればやってみますよ」

提督「やってみたくなったんだろー!」

ヲ級「……」

レ級「その日が楽しみだね!」

―執務室―

提督「布教成功、でいいのだろうか」

提督「実際にはその日には意味がいろいろあるんだが……こういうのは楽しさを前面に押し出していかなければな」

下2

―扶桑型の部屋―

提督「ジェンガ持ってきたぞ」

扶桑「あら……なんだか、すごく久しぶり」

山城「前にやったの、いつだったっけ」

提督「お、乗り気だな。じゃあ、早速出してみるか」

扶桑「……? なんだかカラフルですね」

提督「明石に勧められてな」

山城「なんだか不安になる人選……」

扶桑「……あれ、文字が書いてありますね」

提督「ええと、ルールによると、抜いたジェンガに書いてある言葉を実行しなければならないらしい」

山城「なんですかそれ」

提督「知らん、俺だって初開封だし。とりあえずやってみるぞ」

山城「では、提督からどうぞ」

提督「……まあいいけど。真ん中あたりの白でも……」スッ

扶桑「なんて書いてありますか?」

提督「関西人風に『なんでやねん!』という。なんでやねん!」

山城「今の心情、まさにそれです」

提督「同感」

扶桑「では、次は私……はい、えっと、全員に肩もみをしてもらう、だそうです」

山城「姉さまに肩もみ! 喜んでさせてもらいます!」

提督「あー、じゃあ俺が右側担当で」

山城「提督より上手に肩もみをしますからね!」

扶桑「ありがとう、山城。……で、でもちょっと痛いわ」

山城「すみません!」

~~~~~~~~

山城「次は私です。えっと……異性全員に愛をささやく」

扶桑「あら」

提督「まさか山城から愛をささやかれる日が来るなんてな……」

山城「いい、嫌です!」

提督「嫌って言われても、ルールだしなぁ」

山城「姉さまは私が提督に愛をささやいてもいいんですか!?」

扶桑「ちょっと複雑だけど……そういうゲームよね」

山城「う……い、今から言う言葉は本心じゃないですからね!」

提督「はいはい」

山城「……て、提督、私は姉さまのことが一番好きだけれど……でも、実は、提督のことも……姉さまと同じくらいには…………む、無理! 無理です!」

提督「ちょっと物足りないが、及第点か」

扶桑「なんだか、真に迫っていましたね」

山城「そ、そんなことはないですから!」

提督「で、次だな。ほいっと……正面の人にキスをする」

扶桑「え」
山城「え」

提督「……ええい!」ガシャーン

扶桑「て、提督!?」

山城「自分から崩した!?」

提督「こんなの実行するくらいなら負けたほうがましだ!」

山城(……い、いえっ、そっちの方が私としてもうれしいですけど!)

扶桑(そんな気はないのでしょうが、まるで魅力がないって思われているみたい……)

―執務室―

提督「あんなの実行したら、セクハラで一発軍法会議ものだ」

提督「ラブジェンガ、想像以上に恐ろしいものだった……」

下2

―金剛型の部屋―

比叡「お姉様、司令、ご飯が出来ましたよ!」

金剛「」

提督「ひえー!」

比叡「相変わらずひどい反応ですね! 司令はパクらないでください!」

金剛「む、無理することはないデース」

提督「ああ、比叡の良さは料理なんかに縛られないからな」

比叡「今回は大丈夫ですから! ほら、コーンフレークです!」

提督「オイルが入ってるとか……ないな」

金剛「実は発癌性物質が……大丈夫ですネー」

比叡「心配の度合いが酷すぎません!?」

提督「いや、冗談だよ、冗談。で、金剛は気になることはないのか?」

金剛「そういえば、牛乳の賞味期限が切れていた気がしマース」

比叡「すみません!」

~~~~~~~~

提督「で、これがそのコーンフレークか」

金剛「始めて見マース」

比叡「賞味期限は考えていませんでした……」

提督「賞味期限切れくらい誰にでもある。俺なんて、餅の袋にガスが溜まるまで放置していたことがあったからな」

比叡「ひえー!」

金剛「牛乳は切れてるネー。どうするの、提督ー」

提督「そうだな……ここはあえて、オレンジジュースをかけてみたらどうだ」

金剛「オレンジジュース?」

比叡「合うんですか?」

提督「コーンフレークは意外となんにでもいけるぞ。ジュースも海外では一般的な食べ方だしな」

金剛「そうなんですネー」

比叡「じゃあ、カレーは!」

提督「カレーに掛ける分はありじゃないか。少々辛いくらいなら良いアクセントになるんじゃないだろうか」

金剛「スコーンやクッキーにしておやつにするのもいいデース!」

提督「お、良い考えじゃないか。うーん、いろいろ試したくなってきたぞ」

比叡「間宮アイスにもどうですか!」

金剛「ナイスアイデアデース! さっそく貰ってきマース!」

提督「これはテンション上がってきたぞ! よし、なら俺も部屋に戻って合いそうな料理を作ってみる!」

比叡「では、私は他の材料を探してきます!」

ガチャ バタン

霧島「……あの、コーンフレークの量自体がもうないんですが」

―執務室―

提督「あの味を阻害するものでなければ何にでもいける気がしてきた」

提督「最終的には好みだと思うけど。それこそ、目玉焼きに何をかけるかみたいな」

下2

―レキシントン級の部屋―

アイオワ「ハァイ、サラ。今日はとっておきの物を持ってきたわ」

サラトガ「あら、アイオワ。とっておきの物って何かしら、楽しみ!」

アイオワ「ヘイ、アドミラル!」

提督「はっ、こちらをどうぞ!」

サラトガ「料理? もしかして、提督自らが作ったんですか!?」

アイオワ「当然よね」

提督「当然だな」

サラトガ「と、当然ですか。サラはまだそういうのに慣れてません……」

アイオワ「それはおいおい慣れていけば良いわ」

サラトガ「はい!」

提督「で、頼まれ物のシカゴピザだが、どこにおけばいい」

サラトガ「あ、では、こちらの方に」

アイオワ「アドミラル、完成度はどんな感じかしら」

提督「正直食べた事無いから、それはお前等で判断してくれ。なるべく上手に作ったつもりなんだが」

アイオワ「なら、安心出来るわね」

サラトガ「アイオワが安心するくらい提督は上手なの?」

アイオワ「間宮には負けるわ」

提督「プロと比べて勝てる訳が無いだろ!」

サラトガ「サラも負けてられませんね……!」

提督「そろそろ開けるぞ。ほら」

アイオワ「あら、想像以上じゃない」

サラトガ「美味しそうです!」

提督「トッピングは日本風で良かったよな」

アイオワ「パーフェクト! じゃあ、切るわよ」

サラトガ「わぁ……チーズがトロリと垂れていきます……」

アイオワ「ここまで出来る物なのね。プロになれるんじゃないかしら」

提督「これでも何回か失敗したんだぞ」

アイオワ「アドミラルなら一発で出来たんじゃないかと思ったのだけど」

提督「中がうまくトロッとしなくてな……まあ、そういう話は後にして、先に食べないか」

アイオワ「そうね。じゃあ、さっそく頂きましょうか」

サラトガ「はい! あー……んっ…………」

アイオワ「ん……」

提督「……黙られると怖いのだが」

アイオワ「……デリシャス! 本当によく出来ているわ!」

サラトガ「サラもそう思います! こんなにも出来ているピザ、日本に来てから初めて食べました!」

提督「ほんとか。いやー、頑張ったかいがあった」

アイオワ「口に入れた瞬間、チーズが中を包むように広がり、それでいて他のトッピングの邪魔をすることなく、ソースの甘さと混ざり合う。その味はまさにピザの大王様ね!」

サラトガ「イタリアの人達はあまり合わないかもしれないですけどね」

アイオワ「あそこの国のピザは薄くて具が少ないからしょうがないわ」

提督「これを野菜と分類するお前達もどうかと思うがな」

サラトガ「え、トマトが入っているから野菜ですよね」

提督「うーん、このアメリカン」

―執務室―

提督「こんなの野菜扱いしてたら肥満待ったなしだろ……」

提督「アイオワやサラトガが肥満になった姿は……想像したくないな」

下2

―庭―

提督「雪が積もったから雪合戦します」

朝霜「雪合戦! はー、こりゃ燃えてきたね」

清霜「戦艦に近づくために必要な勝利よね!」

大淀「いえ、必要はないと思いますが」

霞「……遊んでいる暇はあるわけ?」

足柄「まあまあ、たまにはこういうのもいいじゃない」

提督「そう、足柄いいこと言った! たまにはいいじゃないか!」

霞「たまに……?」

清霜「霞ちゃんは雪合戦をするのは嫌?」

霞「……はぁ。ま、たまには付き合ってあげるわよ」

~~~~~~~~

足柄「始まったわね。向こうはあんまり攻めてきていないみたいだけど」

提督「とりあえず、迎撃しつつ作戦を話すぞ」

清霜「作戦! なんだか司令官も本気みたいね!」

提督「当たり前だろう。遊びとはいえ本気で勝ちに行く」

足柄「当たり前ね」

清霜「相手は霞ちゃんに大淀さん、朝霜姉さんか……手ごわそうね」

提督「こっちの方がフットワークは軽い。だから、まずは手を抜いて戦いに興じるんだ」

足柄「手を抜くの? 最初から全力でいった方がいいんじゃないかしら」

提督「いや、いわゆる策の準備段階だ。目的は、手を抜くことにより、こっちの戦闘力の見積もりを外させることにある」

足柄「へぇ」

提督「そうして拮抗していると、向こうは何かしら策を弄してくるだろう。そのタイミングで、こっちは仕掛ける」

清霜「つまり、どういう内容なの?」

提督「相手に合わせて油断させたところをドーン! だ」

清霜「わかりやすい!」

足柄「それにしても、相手は動く様子がないわね」

提督「時折雪玉が投げられているから、まったくやる気がないわけではないんだろうが」

清霜「朝霜姉さんがいるんだし、それはないと思うの」

提督「だなぁ。朝霜はやる気があったみたいだし。もしかして、なにか……」

足柄「提督! 誰か出てきたわ!」

提督「む? 大淀? 馬鹿な、そんな丸見えの位置に姿を見せるなんて……はっ!」

シュッ

清霜「きゃっ」バスッ

足柄「後ろから雪玉が!?」

提督「……秘書官め、実は最初からやる気満々だったな!」

霞「やるからには勝ちにいくに決まってるじゃない」

朝霜「へへっ、こそこそ移動するのはガラじゃなかったが、こうして優位に立つのは嫌いじゃないぜ」

足柄「前後を囲まれたわね……」

提督「この場を切り抜ける方法は……ない!」

足柄「言い切ったわね!」

バスッ バスッ

―執務室―

提督「チーム分けの時点で完全に負けてたな……雪玉のタイミングを計る大淀、霞と朝霜のその駆逐艦由来の敏捷性を生かした隠密」

提督「油断していたこっちが悪いんだが、滅茶苦茶悔しい。今度リベンジする機会があったらこうはいかない」

下2

―深夜・天龍型の部屋―

カチャ コソコソ

提督「(……そっちは大丈夫か)」

卯月「(大丈夫ぴょん。すぐに入るぴょん)」

提督「(……よし、寝ているな)」

卯月「(誰にも見られずに侵入できたぴょん)」

提督「(今回のミッションは、龍田の頭についているあれを飾りつけすることだ)」

卯月「(明日になったら怒られないぴょん?)」

提督「(ふっふっふ、いかに龍田といえども、尻尾を踏ませなければ報復は出来まい)」

卯月「(司令官もあくどいぴょんねぇ)」

提督「(いやいや、狡猾といってくれたまえ)」

卯月「(それで、飾りといっても量は少ないぴょん)」

提督「(音は立てられないからな。ささっと飾れるものといえば、これだ)」

卯月「(これはツリーの中段位にある飾り!)」

提督「(名をリースという。何となくイメージに合いそうだからパープルだ)」

卯月「(知られたら激怒ぴょん……)」

提督「(悪戯王うーちゃんともあろうものが怖気づいたか?)」

卯月「(そんなわけないぴょん!)」


龍田「ぅ……ん…………」


提督「」ビクッ
卯月「」ビクッ


龍田「……スー……スー……」

提督「……」

卯月「……」

提督「(とりあえず、ささっと終わらせるぞ)」

卯月「(りょーかい)」

~朝~

龍田「……」

天龍「んー……? 何を見ているんだ、龍田」

龍田「どこかの悪い子たちが、何かやったみたい~」

天龍「悪い子って……ぷっ、なんだよそれ! わははははは!」

龍田「天龍ちゃ~ん?」

天龍「はh……な、なんでもない」

龍田「犯人はなんとな~く分かってるんだけど……」

天龍「どうせ提督だろ」

龍田「……今回は実害が無いから見逃してあげますね」

天龍「!? どうした龍田! どこか悪いのか!?」

龍田「天龍ちゃ~ん。それはどういう意味かしら~?」

天龍「なんでもない」

龍田(よく見れば無駄に凝ってあるわね~。この情熱を他に向けられないのかしらねぇ~)

―執務室―

提督「今回の隠密は成功だな。食堂に置いてあるクリスマスツリーに飾ってあったのは驚いたけど」

提督「……後で問い詰められたりしないよな」

下2

提督「温泉行こう」

19「温泉! それはいい考えなのね!」

呂500「ろーちゃんも行ってもいいの?」

提督「当然だろう」

168「なんだか、珍しいこともあるのね」

58「どうせ、混浴とかそういうオチでち」

168「混浴だなんてー……え、どうなの?」

提督「そりゃ混浴だが……」

168「司令官のエッチ!」

26「えー、ニムは気にしないかな」

8「というより、普通の混浴であれば水着着用では?」

401「水着なら、私達にとって私服みたいなものだね」

168「……確かに、冷静に考えたらそうね」

―温泉―

58「ふぅー……疲れが取れるでち」

提督「といっても、そこまで有名でないただの天然温泉だから、どれだけ効能があるかは謎だけどな」

8「プラシーボ効果」

58「うるさいでち。好きにさせてほしいの」

まるゆ「温泉は溺れることがないから平和です……」

401「足とか攣ると溺れることもあるから、気を付けてね」

まるゆ「そ、そうなんですか……」

401「あはは、ごめんね、そうそう足なんて攣らないよ」

168「足が攣ったとしても、それが原因で溺れる潜水艦ってなにって感じだけど」

26「それにしても、ほとんど貸し切りだねー!」バシャバシャ

19「イクも泳ぐの!」

168「こらっ、人がいないからって泳がないの!」

58「そうでち。こっちに飛沫が飛んできて邪魔でち」

呂500「でっち、あっちにサウナがあるよ!」

58「サウナは疲れるから嫌でち」

提督「おっさん化がすすんでないか、でっち」

58「提督まででっち言うな」

26「あ、それならニムはいってみようかな」

19「我慢比べなのね!」

提督「無理はするなよー」

168「ま、後で見に行ってみましょ」

―執務室―

提督「特にオチなし。まあ、温泉行くだけでそうそう何か起こるわけもないけど」

提督「……いや、そういえばニムとイクの二人が飛び込むように水風呂に入ったのは面白かったか」

下2

―食堂―

瑞鶴「あれ、提督さんじゃない。珍しいわね」

提督「おう、瑞鶴と葛城、瑞鳳、大鳳に……そっちもなんか珍しいな」

龍驤「ちょいまち、なんでうちは外されたんや」

提督「なんとなく」

龍驤「フリか、フリなんやな。なんでやねん!」スパァン

大鳳「二人共テンション高いですね。食事中なので、もっと落ち着いてください」

提督「だってよ。ここ座るぞ」

龍驤「ネタをふったキミが悪いんやろ」

瑞鳳「わざと視線を逸らしていたしね」

提督「んで、何か話をしていたみたいだけど」

瑞鶴「耳聡いわね」

大鳳「年越しについて話していたんです」

提督「へー、年越しね」

葛城「私は今年瑞鶴先輩と一緒にすごしてもいいかなって聞いてたの」

提督「姉妹で年越しはしないのか」

瑞鶴「年越しまでは起きてるんだけど、翔鶴姉は早く寝ちゃうことも多いから」

葛城「私の所も同じような感じですね」

提督(規則正しい生活しているから、豊かに育ったのか)

瑞鶴「提督さん、今変なこと考えた?」

提督「いや。えっと、瑞鳳や大鳳はどうなんだ」

大鳳「私は初日の出を見るまでは起きてますよ。あれを見なければ、一年の始まりを感じませんから」

瑞鳳「私はそれまで起きてられないんだけど……今年は頑張ってみようかな」

提督「へー、それじゃあ、ここに集まっている皆は初日の出でも見るつもりなのか」

龍驤「うちはまだ答えとらんけど」

提督「見るだろ?」

龍驤「見るで」

大鳳「提督も見ますよね。一緒にどうですか」

提督「あー、そうだな。どうせなら一緒に見に行って、そのまま初詣とするか」

瑞鶴「初詣も? 多分翔鶴姉とも行くんだけど……まあ、いっか」

瑞鳳「皆でかぁ、これは絶対寝ないようにしなきゃ」

提督「そう意気込んでると、気付かれで逆に寝そうだな」

瑞鳳「そ、そうならないように気を付けるから!」

大鳳(……このメンバーにしては平和に決まりましたね。良い事ですけど)

―執務室―

提督「もう今年も終わりか。なんだか早かった気もする」

提督「そういや昨年の今頃には大掃除も終わらせてたな。……そろそろしなきゃ」

下2

―執務室―

提督「一人っ子な島風なわけだけど、もし姉妹だったらどう思う?」

吹雪「いきなりな上に質問の意図が掴みかねますが……」

提督「深い事聞いている訳じゃ無い。ただ、どう思うかなって」

吹雪「そうですね……毎日がもっと騒がしくなりそうです」

提督「面白くない返答だな」

吹雪「突然聞かれたのに気の利く返答が思い付くわけ無いじゃないですか!」

提督「果たしてそれが免罪符になるかな。というわけで、そこで聞いてた電よ、どう思う」

電「やり過ごせると思ったのですが……とりあえず、暁ちゃんがまた泣くので勘弁して欲しいのです」

吹雪「どうして泣くの?」

電「かけっこで負けて『おっそーい』といわれようものなら、暁ちゃん涙目は必至なのです」

提督「楽に想像できるな」

漣「あれー、ご主人様たち、何か面白い話でもしてるのー?」

提督「一人っ子島風がもし自分の姉妹だったらっていう話だ」

漣「なるほど。こっちだったら喧嘩になりますな」

吹雪「喧嘩?」

漣「ぼのちゃんは意地っ張りだから」

提督「島風も意地を張ることも多いしな」

吹雪「なんだか、そう聞くと馴染むのって難しいですね」

提督「吹雪型にも厳しい叢雲がいるから、そういう意味ではなかなかなじまないかも」

電「だったら、平和そうなところを聞いてみればいいのです」

提督「そう、だな。……お、五月雨、良い所に来た」

五月雨「司令官、どうかしましたか?」

提督「もし島風が姉妹だったとしたら、どんな感じになる?」

五月雨「島風ちゃん、ですか? えーと……そんなに、変わらないと思います」

提督「ここにきて受け入れてくれる奴が現れたぞ!」

吹雪「白露型は色んな子がいるからですかね」

漣「鬼教官みたいのも居ないからねー、いやあ、よかったよかった」

五月雨「ど、どういうことですか? 私、何かしましたか?」

提督「いや、ようやく人心地付けたんだ。本当に良かった」

五月雨「???」

電(この会話、島風ちゃんには聞かせない方が絶対にいいのです)

―執務室―

提督「そもそも、人数が多いとその分いかに島風といえど埋もれるからなぁ」

提督「なんだかんだ言っても、島風は唯一だからその存在感は大きいわけだし」

下2

提督「夜戦行くぞ!」

川内「いいね!」

神通「」

那珂(神通ちゃんの目が死んでる……)

―近海―

提督「サンタ狩りだー!」

川内「いえー!」

提督「……ところで、今日は神通と那珂ちゃんがいないんだな」

川内「出る時寝てたし、疲れてたんじゃない」

提督「そうか、風邪には気を付けてほしいな」

川内「そうだね」

提督「それにしても、夜空が綺麗だな」

川内「最近の海は星空が綺麗に映ってて嬉しいよ」

提督「ほう、川内の事だから夜戦のことばかりだと思ってた」

川内「夜空を眺めることも、夜戦の楽しみの一つだから」

提督「そうなん?」

川内「それに、星は方角とかも即座に教えてくれる便利なものだからね」

提督「ただの好みで夜戦をしている訳じゃ無いんだな」

川内「当然。夜戦の良さを聞きたいなら、この川内にお任せ!」

提督「夜が怖い系の子達にも聞かせてやりたいよ」

川内「その時になったら、この川内先生がレクチャーしてあげるね!」

提督「それは頼もしい。問題は、連れ出すときだけど」

川内「……あっ、提督! 空見て!」

提督「空? お、流れ星! 願い事だ!」

川内「夜戦夜戦夜戦」

提督「願えてないぞー」

川内「しまった。……でも、ある意味叶ってるからいいのかも」

提督「現在進行形で夜戦に出てるもんな」

川内「うん。提督も一緒だし」

提督「……はは、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

川内「そういえば、提督の用事は?」

提督「用事?」

川内「ほら、サンタがどうとか」

提督「ああ……今日、クリスマスじゃないからサンタ居ないわ」

―執務室―

提督「そもそも、サンタ役は俺もやってるから、自分で自分を狩ることになるんだよなぁ……」

提督「トナカイなら筑摩がいるが……逆にやられそう」

下2

―廊下―

提督「クリスマスを餌に狩っていくぞ」

利根「うむ……意味が分からないのじゃ」

提督「意味が分からない? フィーリングで伝われ!」

利根「ふぃーりんぐ? そもそも、その服はなんなのじゃ」

提督「トナカイだ」

利根「それは見てわかるのじゃが」

提督「さあいくぞ、利根よ!」

利根「うむむ……とりあえずは、わかったのじゃ!」


筑摩(止めたほうがいいのでしょうか……まだわかりかねますね)

~~~~~~~~


利根「それで、どうするのじゃ?」

提督「そうだな……へい夕雲!」

夕雲「……? 夕雲に何かご用ですか」

提督「妹たちに何をプレゼントするつもりなんだ?」

夕雲「あまりいいものが用意できていないのですが、マフラーなどを用意しようかと思っています」

提督「今持っている奴か?」

夕雲「ええ、そうですね」

提督「……それはいただいた!」バッ

夕雲「あっ」

提督「逃げるぞ利根!」ダッ

利根「う、うむ!」ダッ

夕雲「……もしかして、そういうことかしら」

利根「な、なぜ盗んだのじゃ?」

提督「盗んだんじゃない。サンタ狩りだ」

利根「よくわからないのじゃが……」

提督「なんだ、まだわからないのか」

利根「提督のふぃーりんぐとやらは難しすぎるのじゃ」

提督「つまりだ、サンタ役を奪うことによって、その子のクリスマスをフリーにさせることができる」

利根「む、つまりいいことをしているというわけか?」

提督「そうだ!」

利根「そういうことであれば、吾輩も協力するのじゃ!」

提督「よしきた、じゃあ早速次を狙うぞ!」

利根「うむ!」


筑摩(……大事になるまで、様子は見ておきますか)

―執務室―

提督「ふふん、だいぶん集まったな」

提督「だが、デメリットとしてはプレゼントを配るのが大変になったというところか」

下2

―ケン○ッキー―

雷「ここがあのおじさんのお店ね……」

提督「言い方がなんか怖い感じになってる」

雷「えっ、そういうつもりじゃなかったけど」

電「司令官さんのこれは何時ものことなのです」

提督「うーん、クリスマスも辛辣」

雷「でも司令官、こうして電と連れて来てくれたのは嬉しいわ」

提督「感謝は電にな。頼まれて連れてこられたんだから」

雷「電が?」

電「……少し、欲しかったのです」

~~~~~~~~

提督「うーん、このチキン、久しぶりだなぁ」

電「常連みたいなこと言っているけど、実際はそんなにきた事無いのです」

提督「なぜそう思う」

電「だって、普通のフライドチキンしか頼まないのはにわかの証なのです」

提督「え、でもここってチキンが一番だろ?」

電「どうして今日、こんなに人が多いのか分かっていないみたいなのです」

雷「そういえば、電はチキンやサラダ以外にも何かもらっていたわね」

提督「そういえば、電は別に会計をしていたような……」

電「今日はパーティバーレルがある日なのです!」

雷「ぱーてぃばーれる? それって何?」

電「いわゆるハッピーセットなのです」

雷「それならわかるわ!」

提督「なんと……しまったな、それは知らなかった」

電「司令官さんなら知っていると思ったのですが」

提督「いや、恥ずかしながら今年はそう言うことに気が向かなくてな」

雷「……えっと、電、それって私の分もあるのよね?」

電「もちろんなのです」

雷「だったら、私の分も司令官にあげてほしいの」

提督「雷……何て優しい奴なんだ! 感動した、チキンを一つ上げよう」

雷「ええっ」

電「心配しなくても、別に司令官さんの分の予約をとっておいたのです」

提督「電……何て優しい奴なんだ! とりあえず早速とってくる」ガタッ

雷「……電はやっぱり優しい子ね」

電「雷ちゃんには負けるのです」

―執務室―

提督「電、俺がもしセットの存在を知っていたら伝えなかっただろうな」

提督「いや、辛辣な事も多いけど、やっぱり優しい子だよ、うん」

下2

―暁型の部屋―

提督「レディーになるためには、まず弱点を克服しなければならない」

暁「そうなの?」

提督「弱点が有って完璧なレディーなんて言えないだろう」

暁「それは、確かに……」

提督「そんなわけで、暁の弱点とは何か。響」

響「暁の弱点は朝起きられない事だね」

提督「あー、そりゃ立派な弱点だわ」

暁「な、何よそれ。いつも起きられない訳じゃ無いし……」

響「では、暁の目指すレディーは朝をぼんやりとしていたりするのかな」

暁「そ、それは……うう」

提督「まずは寝坊の改善か。まあ、朝パッチリ起きられなくてもいいから、そのあとしっかりと起きられなければならない」

暁「??」

響「いつもの暁のように、起こしても布団にくるまったりしなければいいってこと」

暁「そ、そんなこと! ……たまにしかしてないもん」

提督「だから、いっそ寝起きに一発青汁を飲んだりするのが良いと思うんだ」

暁「え!? あ、あんなの飲み物じゃないわ!」

提督「響、もしや暁は好き嫌いが激しいのか」

響「そうだね。激しいかと聞かれたら、勿論としか言いようがないね」

暁「響!」

提督「こうなれば、寝起きから朝食の改善だな。きちんと野菜も取って、バランスが良い食事を心がけなければ」

響「そうだね。健康的な生活を送れば、いずれ治ってくるだろうね」

提督「そういうところで、どうだ、暁」

暁「う……うわあああああん! フタリが虐めるーーー!」ダッ

提督「あら、逃げちゃった」

響「ちょっとやりすぎちゃったね」

提督「悪いけど、フォローは頼むな」

響「うん、まかせて」

提督(でも逃げるって事は相当嫌だったんだろうな)

―執務室―

提督「いかに暁といえど、ずっと見栄を張り続ける事は出来ないか」

提督「次弄る時はもっと優しくしよう」

下2

―トレーニング場―

ニム「提督、呼びましたー?」

提督「ああ、ニムとはここに来て特にこれといった事をしてあげられなかったから、ちょいと遊戯でもな」

ニム「遊戯、いいねー! ワクワク!」

提督「良い場所があるし、ここでスカッシュをしようと思う」

ニム「スカッシュ! いいですよー!」

提督「ほほう、ルールは大丈夫だな」

ニム「ぜーんぜん!」

提督「……元気があってよろしい! だからルール説明するぞ」

ニム「はーい」

~~~~~~~~

ニム「とりあえず、提督の打って壁に当たった球を打ち返せばいいんだね!」

提督「高すぎたり低すぎたりしなければな」

ニム「よーし、やっちゃいますから!」

提督「じゃあ行くぞ、ヘイ」カッ

ニム「えいっ」カッ

提督「ほっ」カッ

ニム「やっ」カッ

提督「おっと、なかなかやるじゃないか」

ニム「こう見えても、瞬発力には自信があるからねー」

提督「ならば、この技を見切れるかな。くらえ!」カンッ

カン カン カン

ニム「あっ、四方向の壁に当たって落ちて来ない!」

提督「はーっはっは! どのタイミングで落ちて来るかわからないだろう!」

ニム「……でも、アウトだよね?」

提督「……しまった!」

ニム「あはは、提督って面白いね!」

提督「くうっ、次はこうはいかないぞ」

ニム「私だってまだまだいけるんだから!」


那智「ここはスカッシュをやる部屋ではないのだが」

足柄「別に誰も使ってないんだしいいんじゃない。むしろ、私も混ぜてもらおっと♪」

―執務室―

提督「いや、思ったより強かった。未経験とは思えない」

提督「勝ち負けはどうでもいいし、ニムが楽しんでくれたのなら誘って正解だったな」

下2

―談話室―

提督「なんかソファーで寝ている奴が居るし」

加古「zzz……」

提督「あーあ、お腹出して寝てて……古鷹が見たらまた怒られるぞ」

加古「んー……」

提督「しかし、本当に気持ちよさそうに寝てるな。ふわぁ……俺も少し寝ようかな」

加古「zzz……」

提督「ちょっと端っこ失礼するよ」

提督(本当に気持ちよさそうに眠って…………)

~~~~~~~~

古鷹「……」

加古「zzz……」

提督「zzz……」

古鷹「……これは、どうしましょう」

古鷹(寝かせてあげても良いんですけど、せめて加古はちゃんと服を着させてあげるべきかしら……提督に誤解をさせてしまうのは申し訳ないですし……)

古鷹「加古、起きて」

加古「んー……古鷹……?」

古鷹「昼寝は駄目とは言わないけど、はしたない格好になるのは駄目」

加古「はしたないって……あー、気付かない内に脱いじゃってた?」

古鷹「暖房が利き過ぎ。ほら、提督の目が覚める前にちゃんと服を着なさい」

加古「はーい」

提督「んあ……古鷹……? それと……」

古鷹「っ!? 見ちゃダメです!」スパン

提督「ぐふぁ!」ガツン

古鷹「あっ、す、すみません!」

加古「あーあ、今頭から落ちたよ」

古鷹「加古は早く着替えて!」

加古「はいはい」

古鷹「あああ、提督、大丈夫ですか……? すみません、すみません」

加古「古鷹もそそっかしいんだから」

―執務室―

提督「なんだか知らないが、いきなり古鷹にぶっ叩かれたときはすごく驚いた」

提督「今回は何も悪い事をしてないよな……?」

下2

提督「不知火、もしとんでもない命令を下したとしても、お前は従ってくれるか」

不知火「内容によりますが、なるべく従うつもりです」

提督「曖昧な言葉では駄目だ。従うか、否か」

不知火「……従いましょう」

提督「よし、ならば目を瞑ってそこに立つんだ」

不知火「何をするつもりなんですか」

提督「従うのではないのか?」

不知火「……分かりました」

提督「よし」

不知火「……」

提督「……」ゴソゴソ

不知火「……?」

提督「……よし。では不知火、それを今日一日落とさないように生活するんだ」

不知火「意味が解らないのですが」

提督「不知火、お前は従うと言った。その言葉は嘘ということで良いのか」

不知火「……いえ、分かりました」

提督「ならばもう行っていいぞ」

不知火「ですが、このことは霞にも伝えますから」

提督「なんと……」

不知火「あと、月の無い夜には気を付けて下さい」ギロッ

提督(人を[ピーーー]視線!)

―陽炎型の部屋一号室―

陽炎「え、なにそれ」

不知火「よく分からないのだけど、司令が……」

陽炎「ああ、それだけで分かったわ。まったく、人の妹に何をさせているのかしら」

不知火「……ところで、不知火は一体何を頭に乗せているの?」

陽炎「知らないの? うーん……ま、今日は部屋から出なければいいんじゃない。もちろん、指示を無視してそれを頭から降ろしても良いと思うけどね」

不知火「……それはそれで、不知火の沽券も……部屋にいる事にします」

陽炎「そ。心配しなくても、そんな変なものじゃないわ。多分他の人が見たら笑うと思うけど」

不知火「……?」

陽炎「じゃあ、部屋で何かご飯でも作りましょうか」

不知火「ええ」

陽炎「でも、あれね、不知火ってバランス感覚が良いのね」

不知火「……褒められているように感じない」

―執務室―

提督「あー、なんとか書類ビンタくらいで済んだ。思ったより優しかったな」

提督「ああいうことは面白くはあるが、身の危険を感じるからやめておきたいところだな」

下2


―母港―

提督「ふー、今日も良い天気だ」

武蔵「提督か。朝から外に出ている姿を見るのは珍しいな」

提督「そうか? ずっと部屋に篭っているつもりは無いんだがな」

武蔵「いや、こちらも毎朝ここに立っているというだけだ。違うのであれば、会わなかっただけだろう」

提督「毎朝?」

武蔵「ああ、乾布摩擦をするためにな」

提督「ほう、乾布摩擦。いいじゃないか」

武蔵「どうだ、提督もやってみるか」

提督「そうだな。そうと決まれば、一度戻ってタオルを持ってこなければ」

武蔵「それには及ばん。ここに予備がある、これを使え」

提督「悪いな。後で洗って返すよ」

武蔵「それこそ必要無い。どうせ、洗濯は大和だしな」

提督「……いや、その返答はおかしいと思うのだが」

武蔵「そうか? 大和なら嬉々として洗ってくれそうだがな」

提督「大和をなんだと思っているのか……」

武蔵「それより始めるぞ。洗濯なんてものは後で考えればいい」

提督「……まあいいか。んじゃ、さっそく脱いで…………」ゴソゴソ

武蔵「ほう、それなりに鍛えているじゃないか」

提督「武蔵に褒められると自信が湧くな。さて、始めるか」

武蔵「ああ」

~~~~~~~~

大和「そろそろ朝ご飯の……」

提督「いっち! にっ!」グッグッ

武蔵「ふっ! ふっ!」ガシガシ

大和「……な、なんだか力強いですね」

武蔵「ん、おお、大和ではないか」ガシガシ

提督「どうだ、大和もやってみないか」グッグッ

大和「い、いえ、私は恥ずかしいですし、遠慮しておきますけど……」

武蔵「そうか、健康にいいのだがな」ガシガシ

提督「仕方がない、大和は淑女だからな」グッグッ

武蔵「ふっ、それには同意するがな」ガシガシ

大和(なんだか、乾布摩擦の摩擦が強すぎる気もしますし、提督も何故此処にいるのかとか色々疑問があるんですが……)

―執務室―

提督「乾布摩擦は健康にいいぞ! 皆もやってみよう!」

提督「……って、言っても実際やる人は少ないよなー。手軽に始められていいと思うんだけど」

下2

―食堂―

提督「大変そうだな。手伝おうか?」

間宮「いえ、毎年のことですから、大丈夫ですよ」

提督「そうか? でも毎年増えているだろう」

間宮「それは……まあそうですけど」

提督「だったら、手伝った方がいいだろう」

間宮「そうですね……」

伊良湖「私は、手伝ってもらった方が嬉しいです」

間宮「……そうですね、では、提督にも手伝ってもらいましょうか」

提督「よし来た。では、何を手伝えばいい?」

間宮「では、提督は一段目の盛り付けをお願いします」

提督「一段目といえば……祝い肴と呼ばれるものだったか」

伊良湖「はい。料理はここにありますから、ここから盛り付けてくださいね」

提督「……量多くない?」

間宮「人数も多いので……」

提督「いや、これは手伝って正解じゃないか……? ところで、ほかの段は」

間宮「煮物類は鳳翔さんに任せています。やはり量は多くなりますが」

提督「毎年これやってんだなぁー……いや、本当に大変そうだ」

間宮「でも、私達にできるのはこういうことしかありませんから。せめて来年も何事もなく無事に過ごして欲しい気持ちを、こうして形にしているんです」

提督「間宮……感動した! よし、俺の全力を以って手伝うぞ!」

間宮「ありがとうございます。でも、ご無理はなさらなくてよろしいですからね」

提督「うおおおおおおおおおお!!」

伊良湖「聞いていないみたいですね……」

間宮「目の前のことには全力、提督らしいですね」

~~~~~~~~

鳳翔「こちらは完成しました。……あら」

間宮「ありがとうございます。こちらは提督の力添えもあって、無事に終わりました」

鳳翔「そうですか。提督は……」

間宮「お疲れのご様子でしたので、先にお休みになりました」

鳳翔「そうですか。でも、提督もこれがほんの一部だって知ったらどうしますかね」

間宮「それは……最後まで手伝うんじゃないでしょうか」

鳳翔「ふふ、そうですね」

龍鳳「ほ、鳳翔さん!」

鳳翔「どうかしましたか?」

龍鳳「おせちを作ってる皆さんのもとに、提督が!」

鳳翔「え」
間宮「え」

―執務室―

提督「ふー、おせち作るのは楽しいな」

提督「何気に人によって入れる内容が違うのが面白い」

下2

―庭―

提督「羽つきをするぞ」

雲龍「羽つき……顔に墨を塗るやつですね」

天城「違うんですけど……違うとも言えませんね」

雲龍「提督も墨を用意しているから」

葛城「準備がいいわね……」

提督「さて、だれが相手だ。誰でも構わんぞ」

雲龍「誰でもですか」

提督「おう!」

雲龍「では、私達三人同時で」

提督「……かかってこいや!」

天城(先の展開が読めるようです……)

~~~~~~~~

提督「あの、もう書くところないので勘弁してください」

雲龍「まだ体が残ってるけど」

天城「も、もうやめてあげませんか? だって顔の八割が墨で真っ黒ですよ」

雲龍「天城がそういうなら……」

葛城「雲龍姉って意外と容赦ないわよね」

雲龍「そう……?」

提督「というか、やっぱ一対三はおかしい! 正々堂々と一対一で勝負だ!」

天城(今更ですよね)

葛城(そもそも許可出したのは提督だし)

雲龍「じゃあ、天城、やりましょうか」

天城「私ですか? はい、ではお相手いたしましょう」

提督「俺は墨を落としておこう……」

葛城「というか、いくら提督でも私たち三人相手は無理と思わなかったの?」

提督「男には、逃げてはならないときっていうのがあるんだ」

葛城「少なくともそれは今じゃないと思う」

提督「……でも、楽しかっただろ?」

葛城「うん……そうね、確かに楽しかったかも」

提督「楽しいと思えることが大事なんだ。さて、雲龍と天城の決着がついたら俺たちも参加するぞ」

葛城「そうね。でも、罰ゲームはなしにしてね、汚れたくないし」

提督「えっ!?」


雲龍「天城、意外と強い……!」カン

天城「そう簡単には負けませんよ!」カン

―執務室―

提督「俺だけ塗られ損ではないだろうか。自爆ではあるんだけど」

提督「……楽しかったから、よしとするけど」

下2

―食堂―

大和「……」

提督「どうした、大和。鏡餅をじっと見て」

大和「いえ、その……」

提督「?」

大和「……鏡開きが、待ち遠しくて」

提督「鏡開きが? 餅が食べたいなら、鳳翔のところに行けば作ってもらえるぞ」

大和「餅が食べたいわけではないんです」

提督「だったら……まさか、開きたいだけか」

大和「それはそのー……はい」

提督「あと二週間くらいだぞ。そんな急いで開くこともないだろうに」

大和「それはわかっているんです。わかっているんですが、昨年が悔しくて……」

提督「昨年?」

武蔵「大和は昨年手で開いたんだが、有志の戦艦の中で一番割れ方が少なかったんだ」

大和「お恥ずかしい限りです……」

提督「はあ、大和にもそういうことだってあるだろう」

大和「いえ! 決戦時の主力として起用されている身として、やはり一番ダメというのは自分で許せません!」

武蔵「だが、まだ鏡開きには早いぞ」

大和「わかってます。わかってるんですが……」ソー

提督「……大和、手が伸びてるぞ」

大和「たくさんあるんですし、一つくらい……」

提督「ダメだぞ」

大和「一回、一回だけですから!」

提督「一回で一つ分を使うからな!? 武蔵、抑えろ!」

武蔵「大和にしては珍しくわがままじゃないか!」ガシッ

大和「悔しいんです! 悔しいんですー!」ジタバタ

武蔵「くっ……自分の姉ながら抑えきれる気がしないな!」

提督「ええい、ちょっとそこに座ってる扶桑、抑えるのを手伝ってくれ」

扶桑「あ、は、はい!」

山城「あっ、姉さまが手伝うなら私も!」

大和「開かせてくださーい!」

―執務室―

提督「まさか更に五人動員しなければ止められないとは……」

提督「わがままな大和は珍しいが、場合によっては止められないから、こういうことはあんまり起こらないでほしいところだな」

下2

―庭―

提督「……」

秋月「司令、準備してきました!」タタッ

提督「よし来たか。じゃあ、それを入れてくれ」

秋月「司令、あんまり激しくしないでくださいね?」

提督「それは約束できないなぁ。それに、そうは言うけど秋月も思いっきりする方が好きだろ?」

秋月「う……も、もう、それならおもいっきりついてください!」

提督「おうよ!」

照月「餅つきですよね?」

提督「当たり前だろ」

秋月「それ以外に何があるの?」

照月「ごめん、なんとなく言いたくなったの」

提督「よくわからんが……それじゃあ、餅つきを始めるか」

秋月「はい!」

照月「……こうしてみると、二人は本当に息がぴったり」

初月「僕達がやった時は大変だったよね」

照月「ゆっくりやれば出来るんだけど……あそこまではいかないから」

初月「僕達は出来ている餅でもたべてゆっくり見てようか」


提督「阿吽の呼吸でも試してみようか」

秋月「阿吽、ですか。そんなことしなくても、私と提督は息があっていると思いますが」

提督「だって、はいはい言うだけじゃ面白くないだろ」

秋月「そうですか?」

提督「……秋月との間に隔たりを感じる。このままでは息が合わなくなってしまうかもしれない! くそ、美味しい餅を作ろうと思っているのに……!」

秋月「わ、分かりましたから! じゃあ私が吽でいいですね」

提督「いや、ここは違う掛け声にしよう」

秋月「違う掛け声ですか?」

提督「俺が秋というから、秋月は月といってくれ」

秋月「月、ですか」

提督「じゃあいくぞ。秋!」ドス

秋月「月!」サッ

提督「秋!」ドスッ

秋月「月!」サッ

提督「秋!」ドスッ

秋月「って、私の名前じゃないですか!」

提督「そうだぞ」

秋月「恥ずかしいから別のにしてください!」

提督「えー」


照月「本当に息ぴったり」

初月「次の餅も美味しくなりそうだ」

―執務室―

提督「美味しいのが出来て満足。餅つきも楽しかった」

提督「しかし結構な量の餅を作ってしまったが、食べきれるのだろうか」

下2

―談話室―

提督「日本の遊戯を持ってきたぞー」

アイオワ「ただの絵に見えるけど、これからどんな面白い事をしてくれるの?」

ビスマルク「これは必見ね」

グラーフ「ふむ、ローマにウォースパイトか。意図は読めんが……」

アクィラ「あら、なんでしょうこれ? なんだか楽しそうなものの気がします!」

提督「……レーベやマックスもいるのに、先に反応するのがお前等か……戦艦や空母の低年齢化がうかがえるな」

ビスマルク「い、いいじゃない!」

アイオワ「面白そうなことには反応するわ。当たり前じゃない?」

マックス「そもそも、私はこういうことに興味を示しませんし……」

レーベ「先が気になるから早く早く!」

プリンツ「なんとなく、何をするのか分かるような……」

提督「んで、やりたいことというのは……こうだ!」バサッ

レーベ「二人の顔がバラバラに!?」

アイオワ「ワオ! これは予想外ね」

アクィラ「これがあのフクワーライってものね!」

提督「なんでよりにもよって二人が好意的な反応するかなぁ」

アイオワ「ドイツ艦のこだと率直な反応は出来ないでしょ?」

アクィラ「え、でも面白そうですよ?」

提督「ムードメーカーがいてウレシイナー」

グラーフ「しかし、これは本当に後で怒られないだろうか」

プリンツ「私もそれが心配なんですけど……」

提督「バレなきゃいいだろ」

ビスマルク「……そうよね! バレなきゃいいのよ!」

アイオワ「じゃあ一番は私が貰うわね」

ビスマルク「あ、ずるい!」

アクィラ「アクィラも混ぜてくださーい!」

提督「低年齢化がうかがえるな、本当に」

マックス「本国に謝りたい気分です、本当に」

~~~~~~~~

アイオワ「アハハ! ファンタスティック!」

ビスマルク「~~~~~!!」ダンダン

グラーフ「ッフフ」

アクィラ「ヒー、ヒー!」ジタバタ

レーベ「あはははは!」

提督「なんて酷い絵面なんだ……いや、確かに面白く出来てるけど」

プリンツ「っ……っ……」

提督「オイゲンが笑う程だけど、さすがに笑い転げるのは酷すぎる」

マックス「ホント、見せられない光景です」

提督「マックスは平気のようだな。……どうして扉を見ている?」

マックス「誰か入ってこないか監視しているんです」

提督「……」ガシッ

マックス「! な、なんですか抱え上げて! 無理矢理向かせようとしないで――」

―執務室―

提督「当事者には見せられない光景だった」

提督「俺も事前に一人でやって耐性を付けておかなければ、あの無残な光景の一部と化していただろうな」

下2

リットリオ「ボンジョールノ、提督」

提督「チャオ。なんだ、まだ着物を着ているのか」

リットリオ「あれ、駄目でしたか?」

提督「そういう訳では無い。てっきり、海外艦は着物なんて面倒な物は着ないと思っていたからな」

リットリオ「そんなことはないです。だって、とっても素敵な服でしょう?」クルン

提督「気に入ってくれたのなら、日本人として嬉しい事このほかないな」

リットリオ「あ、そうだ。提督も一緒にどうですか?」

提督「一緒に?」

リットリオ「イタリア艦のみんなで写真を撮るんです。提督もどうですか」

提督「うーん、でも俺は何時もの軍服だぞ」

リットリオ「かまいませんよ」

提督「なら、よろしく頼む」

リットリオ「はい♪」

―V・ヴェネト級の部屋―

リットリオ「みんなー、提督を連れて来たわよー♪」

ローマ「提督!? ちょ、ちょっと待ってください」ゴソゴソ

リットリオ「ローマ、着物で写真を撮るんじゃないの?」

ローマ「うっ……姉さん、謀ったわね」

リットリオ「はかる……?」

ローマ「はぁ……ちょっと恥ずかしいけど、いいわ」

リベッチオ「提督さんと一緒なの?」

提督「いやか?」

リベッチオ「ううん、うれしい! あ、ねえねえ、リベ似合ってる?」

提督「おう、とってもかわいいぞ」

リベッチオ「わーい! そうだ、提督さんはリベの後ろ!」

提督「リベの後ろって、中心じゃないか」

ポーラ「うふふ、ポーラは~提督が真ん中でも~問題無いですよ~」

提督「いやだって、皆着物だろ、やっぱそんな中で真ん中は……ザラはどう思う?」

ザラ「は、はい……」

提督「どうした、そんな視線を逸らして」

ポーラ「あれですよ~、ザラ姉さまは褒めてもらいたいんです~」

提督「ああ、すまん気が利かなくて。ごほん、まるで今のザラは眺望の地に咲き誇る満開の花々の煌きを持っているようだ!」

ザラ「ほ、褒めるなら普通に褒めてくださいよ! でも……ありがとうございます」

ポーラ「ポーラにはないんですか~?」

提督「まるでスピリタスのようだ」

ザラ「提督、流石にそれは適当すぎでは……」

ポーラ「嬉しいです~」

ザラ「それでいいの!?」

リベッチオ「三人で楽しそうにお話ししてずるーい! リベも混ぜてー!」

提督「もちろんいいぞ。そういえば……アキラは?」

ローマ「アクィラは寝てますよ」

提督「まだ寝てるのか? 困った奴だな……リットリオ?」

リットリオ「なんでもないです! ローマがなにかしたとか、そんな事は全然ないです!」

提督「そ、そうか」

提督(何があったんだ……)

リットリオ「はいはい! 撮りますよ! タイマーセットしたからみんな集まって!」

リベッチオ「わー!」ギュッ

ポーラ「わ~」ギュッ

提督「結局真ん中か……って、リットリオ、こっちに飛び込んでくるなー!」

リットリオ「わー!」バッ

ローマ「やれやれね」

ザラ「楽しくはあるんですけどね」

カシャッ

―執務室―

提督「流石にリットリオが跳び付いて来たら支えられん……」

提督「でもアキラはご愁傷様だな。たぶん、目の前で思い出し笑いしてばれたんだろうな」

下2

―デパート―

提督「福袋売ってるぞ。買ってみるか?」

大鳳「え……」

瑞鶴「露骨に嫌そうな顔ね」

大鳳「あんまり認めたくはないですが、私が買っていいのが出たためしがないので……」

瑞鶴「あー……」

提督「しかも三人とも同じのを買ったら被りも出てきそうだしな」

瑞鶴「じゃあやめておく?」

提督「うーん、しかし正月に福袋を買わないのは……」

瑞鶴「なら、皆で選ばない? そうすれば一人くらい欲しい人がいるでしょ」

大鳳「せめて見て楽しめる物があればいいんですけど……」

瑞鶴「大鳳が福袋に何も期待していなかったのは分かったわ」

―提督私室―

提督「それじゃ、開封だ!」

瑞鶴「何を買ったんだっけ?」

大鳳「たしかはずれても被害が無さそうな玩具にしましたよね」

提督「ああ、一万円の玩具福袋だぞ!」

大鳳「撤回します。被害が大きそうな福袋にしましたよね」

瑞鶴「……それって何が入ってるの」

大鳳「袋もそんなに大きく見えないんですが」

提督「地雷の臭いがするだろ?」

大鳳「自分から駄目そうなのに突っ込んでいく提督には驚きですよ」

提督「まあまあ、福袋は開けるときが一番の楽しみだから」

瑞鶴「分からなくはないけれど……」

提督「中は……ミニ四駆、コマ、めんこ、トランプ……あと麻雀牌、碁盤、人生ゲーム」

瑞鶴「百均でも売ってそうな玩具たちね……」

大鳳「合計二千円分もなさそうですが」

提督「……しかし! これは一万円の福袋。みろ、ミニ四駆は数千円する高価なもの。コマとメンコだって作りがしっかりしている!」

瑞鶴「そういえば……よく見てみれば麻雀牌と碁盤も結構高そう……」

大鳳「ええ、トランプは……いえ、これプラスチック製の安い奴ですね」

提督「それは売れ残りだろ。いや、人生ゲームもマットが複数あって遊べるつくりだし……これは勝ったな。大鳳がいたのに」

瑞鶴「もしかして運が向いてるのかもしれないわね!」

大鳳「運が……はっ、年末のお祈りが効いているって事ですね! これは皆さんにもお知らせしなければ!」ダッ

提督「……」

瑞鶴「……で、本当のところは?」

提督「ミニ四駆は多分中古。コマ、メンコも。ただ瑞鶴が手に取った二つは本当にいい奴だ」

瑞鶴「ということは、見事中和されただけみたいね」

提督「だな」

―執務室―

提督「とはいえ、良いものが入っていたのなら福袋にしては当たりの部類なんだろうけど」

提督「三人バラバラで買ったら、格差が生まれるところだったかもしれないな」

下2

鈴谷「提督、鈴谷とでーとしない?」

提督「デート? どこに」

鈴谷「うーん、やっぱりショッピングかな」

提督「……」

鈴谷「……」

提督「……まあいいか」

鈴谷「何なの、その間」

提督「最近よく出かけてばかりな気がして。しかもデパート」

鈴谷「そうだとしても、こんな可愛い子と出かけられるんだよ?」

提督「自分で言うか……しかも、前にもデートはしたよな」

鈴谷「もしかして、鈴谷に飽きたって事……?」

提督「ちょ、言い方が悪い! 鈴谷と出かけるのが嫌ってわけでもない!」

鈴谷「じゃあ、鈴谷とデートしてくれる?」

提督「もちろん!」

鈴谷「なら昼前に公園集合っ! 鈴谷は準備してくるから!」

提督「……鈴谷はあの手この手と主導権を握ってくるようになってきたな……」

―公園―

鈴谷「ごめーん、待った?」

提督「今来たところだ」

鈴谷「うんうん、受け答えも完璧」

提督「……準備って何かと思ったら、服か」

鈴谷「そうなの! ねえ、この振袖似合ってる?」

提督「似合ってるが……外に遊びに行く服じゃないような気もする」

鈴谷「だからデートだって。おしゃれするのも当然でしょ」

提督「うーん……確かにこんなきれいな女性を連れて歩くのも悪くは無いか」

鈴谷「……むー、なんだか余裕綽々って感じ」

提督「そんなことはない。一緒に歩くのも酷く緊張するくらいだ」

鈴谷「嘘っぽーい」

提督「とにかく、今からデパートか?」

鈴谷「もー、提督ってばもうちょっとゆっくりしようよ」

提督「ゆっくりか……それじゃ、少し歩くか」

鈴谷「うん」

提督「冬の公園は少しさみしい感じがするよな」

鈴谷「そう? 鈴谷は提督と一緒だから平気かなー」

提督「今日の鈴谷はなんだか甘い言葉が多いな」

鈴谷「ドキドキする?」

提督「はいはい、ドッキドキドッキドキ」

鈴谷「提督テキトー。……」ギュッ

提督「……その恰好じゃ寒いだろ。ほら、マフラーを持って来てるから」スルッ

鈴谷「!? ああもう、提督手ごわすぎ!」

提督「いきなり何!?」

鈴谷(急にそんなことやられたら、鈴谷がドキドキしちゃうじゃん、もー……)

―執務室―

提督「マフラーを巻いただけなのに、いきなりなんで怒られなければならないのだ」

提督「実はデリカシーに欠けていたとかか? ふーむ……」

下2

那珂「て・い・と・く♪ 那珂ちゃんのライブのチケットあげるね!」

提督「何それ」

那珂「知らないの? なんと、前の那珂ちゃんライブが反響を呼んで、新春ライブが決定したんだよ!」

提督「へー」

那珂「だから、那珂ちゃんファンクラブ一番の提督も当日来てね!」

提督「うん」

那珂「じゃあ、那珂ちゃん今から練習だから!」ダッ

提督「……」

提督(独占ライブっぽく言ってたけど、色々な歌手やアイドルの新春ライブなんだよなぁ)

―ライブ会場―

川内「あれ、提督。わざわざ来るなんて暇だねー」

神通「那珂ちゃんに誘われたんですか?」

提督「そんなところ。俺を呼ぶってことは二人も来ているだろうとは思ったけど」

川内「妹の晴れ舞台だからね、そりゃ来るよ」

神通「そういえば次ですよね。準備はいいですか?」

提督「おう、サイリウムは五本あるし、タオルも持ってきた。掛け声の準備もばっちりだ」

川内「完璧じゃん。ついでに一本分けて」

提督「実姉の方が準備できてないってどうよ」

神通「すみません……私も……」

提督「神通までか……」

~~~~~~~~

那珂『みんなー! 今日は那珂ちゃんに会いに来てくれてありがとー!』

『ワー!!』


提督「わー」

神通「棒読みですね」

提督「一応言っておいた方がいいかなって」

川内「うんうん、練習通りにマイクパフォーマンスもできてるね」

提督「練習通りって、付き合ってたのか?」

神通「ずっと部屋で練習していましたから」

提督「なるほど」


那珂『――じゃあ、恋の2-4-11、いっくよー!』


神通「あっ、ほら、始まりますよ!」

提督「おうよ!」

川内「はい、はい、はいはいはい!」

―執務室―

提督「那珂ちゃんのアイドルも貫禄がついてきたな」

提督「まあ、グッズの売り上げを見たところマイナー所を抜け出してないみたいだけど……」

下2

長良「駅伝したいから手伝って!」

提督「お、おう。長良型でか?」

長良「ううん、軽巡で競争がいいな」

提督「……駅伝って六区間に分けられてるよな」

長良「うん」

提督「長良型はともかく、他はどうするんだ。夕張と大淀に至っては一人だぞ」

長良「……まかせた!」

提督「何も考えてなかったな!」

―公園―

提督「ぶっちゃけ公道を走るわけにもいかないから、ここからぐるっと遠回りしつつ鎮守府まで競争だ。途中信号も通るけど、信号は守れよ」

長良「わかってますよ!」

五十鈴「絶対実現しないと思ってたのに……」

由良「駅伝といってもただのリレーだからね。無理ではないでしょ」

阿武隈「絶対足引っ張っちゃうんですけど……」

鬼怒「大丈夫だって、どうせ5㎞のところに配置されるよ」

阿武隈「それならいいんですけど……」

長良「ううん、違うよ」

阿武隈「……え?」

提督「悪いが人数に差がありすぎるから、四区画に減らして二人のところは一人を入れることにしたんだ」

阿武隈「五人以上のところは……」

提督「余った人数分解散! そして阿武隈は……なんと、一緒のチームである天龍型の指名により最後の区画を走る権利が与えられたのだ!」

龍田「そっちの方がいいかなぁって~。頑張りましょうね」

阿武隈「嬉しくないですよぉ!」

五十鈴(でもそれでも軽巡は二人余るんじゃ……)

大淀「給水所で待ってますね」

夕張「まあ私はテントの設営に貢献したし?」

五十鈴(他人事のように……)

―母港―

阿武隈「はぁ……はぁ……」

提督「はいラスト。一番は長良型、二番目川内型+木曾、三番目球磨型、四番目阿賀野型、ビリは天龍型+鬼怒阿武隈か」

阿武隈「私を最後にするより……龍田さんの方が……」

大淀「阿武隈さん、水です」

阿武隈「ありがと……」

提督「確かに二番までは天龍型がトップだったな。僅差ではあったが」

長良「そこは悔しいところでした、もうちょっとで抜けたんですけど」

大淀「天龍さん、たすきを渡すと同時に倒れるくらいぐったりするぐらい本気でしたけどね」

提督「白目向いてたからな……負けづ嫌いは恐ろしい。最終的に負けたけど」

阿賀野「提督さん! 阿賀野頑張ったの!」

能代「阿賀野姉は最初に走って最下位だったけど……」

阿賀野「5㎞走れたよ!」

能代「それは……確かに頑張った、阿賀野姉は」

川内「でもたまにはこういうのもいいかもねー。神通は本気で悔しそうだったし」

神通「はい、まだまだ鍛錬が足りていないと気付くことができましたから」

球磨「球磨はさっさと帰って寝るクマ」

多磨「疲れたにゃー」

提督「それじゃあ、具体的なタイムは追って教える。ご褒美は明日には用意するから……それじゃ解散!」

―執務室―

提督「なんだかんだ全員完走できたのはすごいな。結果は訓練差やらが出ている気がするけど」

提督「まあ、見ていて面白かったし、いろいろ準備したかいがあった」

下2

―利根型の部屋―

筑摩「姉さん、みかんをもってきました」ドサッ

利根「うむ、ありがとうなのじゃ」

筑摩「でも提督、まだまだみかんの箱があったみたいですけど、食べきれるんですか?」

提督「昨年もみかんが異様に有り余っていたが、今年もか……なんだかんだ、全部食べ切るだろ」

筑摩「確かに余れば間宮さんたちが加工してくれますしね」

利根「うむ。しかし、普通に全部食べつくしてしまってもかまわんのじゃろう」

提督「できるもんならな」

利根「ふっふっふ、あまり舐めてはいかんぞ。吾輩は年明け前に段ボールひと箱いただいたぞ?」

提督「む、そうなのか」

筑摩「私は姉さんほどいただきませんからね。前に持ってきた分は全部なくなってましたし……」

利根「どうじゃ!」

提督「そんなドヤられても……なら、競争してみるか」

利根「ふむ、競争とな」

提督「ああ、どっちが多くみかんを食べられるか。シンプルでいいだろう?」

利根「いいじゃろう、その戦い乗った!」

筑摩「では、私は審判をしますね」

利根「筑摩、贔屓はなしじゃぞ?」

筑摩「はい、わかってますよ」

利根「勝負じゃ、提督!」

提督「かかってくるがいい!」

~~~~~~~~

利根「むむ……」ムキムキ

提督「……まず剥くのから遅いよな」パク

筑摩「姉さんは自分で皮をあまり剥きませんから」

提督「食べれる量はともかくとして、早食い的には負けだな」

筑摩「提督、これは時間無制限のみかん大食い競争ですよ」

提督「わかってる……無制限?」

筑摩「はい」

提督(……じゃあ勝負決まらないじゃん)

筑摩「ふふ、必死に皮をむく姉さんは可愛いです」

提督(もしや、この姿が見たいがために無制限に?)

―執務室―

提督「ルール確認しなかったこっちにも非はある」

提督「まあ多分利根のことだから、どこかで勝負のことなんて忘れると思うけど」

下2

―金剛型の部屋―

比叡「提督、料理作りましたよ! 今度は大丈夫です!」

提督「やめろ! まだ死にたくない!」

比叡「ひどくないですか!?」

霧島「いつもの光景ですね。でも、たまには優しくしてあげてもいいんじゃないですか」

提督「俺は十分にやさしくしてあげているつもりだけど」

比叡「ひえぇ……これが司令のやさしさですか……」

霧島「提督と私たちの優しさという言葉には重大な齟齬が生じているようですね」

提督「うーん……なら今回は優しくしてあげよう!」

霧島「え」

~~~~~~~~

比叡「……あ、そういえば、手紙の確認を」

提督「ほら。仕分けはしておいたぞ」ドサ

比叡「あ、ありがとうございます」

霧島「……では、私はお茶のおかわりを」

提督「どうぞ。きちんと温度にも気を遣ったぞ」

霧島「ありがとう、ございます」

比叡「……」

霧島「……」

比叡「あ」
提督「みかんならここに」

比叡「はい」

提督「霧島、自分から動かなくても、ちゃんと洗い物は片しておくから」

霧島「はい」

霧島(視線を動かしただけで思考を読まれた!?)

比叡「(あの、正直行き過ぎだと思うんだけど……)」

霧島「(優しさを通り越して甘やかしになってますからね)」

比叡「(誰でもいいから何とかしてくださいこの状態!)」

霧島「(そういえば、そろそろお姉様と榛名が……)」

提督「……あ、もしもし金剛? ……ああ、榛名と買い物か。うん……うん……気にしなくても、こっちは……ああ、ちゃんと作り置きしておくから」

比叡「……司令? もしかして、電話相手って」

提督「ああ、榛名にもよろしく言っておいてくれ。……夜ご飯な、わかってる。じゃあ切るぞ」ピッ

霧島「司令?」

提督「と、いうわけで、金剛と榛名は夜まで帰ってきません。二人とも、優しさを存分に受け取ってくれ」

比叡「ひ、ひえぇ……」

霧島「あぁ……」

―執務室―

提督「夜まで体を動かさせなかったぜ」

提督「あと三日くらいあれば完全に堕落させられそうだったかも……」

下2

―提督私室―

ビスマルク「どうやら、ロシアとイタリアからお酒について学んだそうね」

提督「厳密にいうとお酒についての言語だがな。それで、ビスマルクも何か教えてくれるのか」

ビスマルク「ドイツといえばビールよ!」

提督「知ってた」

ビスマルク「ふふ、実はビールは国によって少し名前が違うのよ」

提督「そうなのか? じゃあ、ビールっていうのは……」

ビスマルク「ドイツ語よ!」

提督「ビールが? そういえば、ドイツ艦がビール以外の名前で呼んだことはなかったか……」

ビスマルク「確か、イタリア語ならビルラ、ロシア語ならピーヴォね」

提督「へぇ、違うんだな」

ビスマルク「さらに、ビールの語源はゲルマン語のビオレから来たって言われてるわ!」

提督「そうなのか。てっきり、ラテン語のビレラからとばかり」

ビスマルク「語源は重要じゃないのよ!」

提督「すぐさま撤回した!?」

ビスマルク「じゃあ次は種類について説明するわね」

提督「切り替え早いな」

ビスマルク「ラガービールは知ってる?」

提督「種類としては」

ビスマルク「あのラガーにはラーゲルン、日本語で貯蔵するという意味があるの」

提督「へぇ。じゃあ、エールの方は?」

ビスマルク「……エールは、語源がドイツじゃないし……」

提督「うん、わからないならわからないでいいからな」

ビスマルク「でもドイツのエールだっていいのがたくさんあるのよ! ヴァイツェンビアとかベルリーナー・ヴァイセとかケルシュとか!」

提督「ああ、うん。ヴァイセとか二回出てきたような気がするけど」

ビスマルク「別の種類のお酒よ。ヴァイツェンは小麦、ヴァイスは白って意味があるの」

提督「ん? それってこんがらがったりしないのか」

ビスマルク「ビール飲むのにそんなの気にする? ドイツはおおらかなの!」

提督「それって自分でも違いが分かってないだけじゃ……」

ビスマルク「ハルツマウル!」

提督「まあ、よくわかったよ。相変わらず使う機会のなさそうな知識だけど」

ビスマルク「それならよかったわ。じゃあ、毎度のことらしいからわかっているわよね」

提督「……持ってきたのか」

ビスマルク「私はラガーとエール一本ずつだからましでしょ?」

提督「……一瞬本気でそう思ったけど、二本でも十分だよな」

ビスマルク「まま、いいじゃない。アトミラール、グラスを出しなさい」

提督「しょうがないな……ほら、二人分だな」

ビスマルク「ええ。アトミラールの今後のお酒の知識に」

提督「かんぱーい! って、変な物に対して乾杯させるな!」

―執務室―

提督「飲みに関してはビスマルクが騒いだくらいで一番普通だったか」

提督「しかし、本当に無駄な知識が増えていくな……」

下2

―高雄型の部屋―

高雄「ふむふむ……」ペラッ

愛宕「たーかお♪ 何を見ているのかしら」

提督「俺も気になるなー」

高雄「愛宕に提督まで……いえ、ただの雑誌です」

愛宕「高雄がそういうのを見るのって珍しいわ~」

提督「確かに。経済新聞とか見てるイメージだ」

高雄「そこまで真面目だと自分で思っていませんけど」

愛宕「でも、珍しいわよね?」

高雄「そうかもしれないけど、これは摩耶が買ってきたものなの。私は暇だから見ているだけです」

提督「実は少しくらい中身が気になっただろ」

高雄「……まあ」

愛宕「どんな内容かしら~」

『男性にしてもらうならやっぱり胸枕!? 男らしい人ほど包容力と安心感が!』

愛宕「もしかして、こういうのをやってみたいのかしら?」

高雄「た、たまたまそのページが開いていただけだから!」

提督「ふむ、胸枕か……」ギシッ

高雄「提督? 私たちのベッドの方に行って何を……」

提督「――こい、抱いてやろう」

高雄「!?」

愛宕「今日の提督は積極的ですねぇ」

高雄「はは、破廉恥ですよ!」

提督「胸枕だろ? これ一つで男性力……そう、漢力(おとこぢから)が測れるならバッチコイだ!」

高雄「そ、そういわれましても……」

愛宕「誘われる方は、すこーしだけ恥ずかしいですよ~?」

提督「……いや、むしろ頼む! お前たち二人から太鼓判を押されれば、とてつもない自信につながるんだ! だからこそ、お前たちを抱きたいんだ!」

高雄「う……そこまでおっしゃるのなら……少しだけですよ?」

愛宕「高雄が寝るなら私も寝るわよー。うふふ、失礼しまーす」


―部屋の外―

鳥海「……だだ、抱く? え、これって入っていいんですか?? ……ご、誤解だと思いますけど、今はそっとしておきましょう……」

―執務室―

提督「率直に言ってそのまま寝た」

提督「だってさ、ほら、暖かいじゃん。それに高雄と愛宕も寝てたから俺だけのせいじゃない。うん」

下2

―会議室―

提督「全員揃ったな。では、次の作戦についての会議を始める」

赤城「質問良いですか」

提督「どうぞ」

赤城「いつ終わりますか」

提督「三十分くらいだ」

赤城「ならいいです」

提督「他に質問は無いかー」

野分(今の質問にどういう意味が……?)

アイオワ「とりあえず、どういう作戦かもわかっていないのだし、早く始めて頂戴」

提督「そうだな。じゃあ、ここに事項をまとめた紙がある。これを回していってくれ」

野分(そういえば、野分が作戦会議に出るのは初めてかも……少し、緊張してきた)

利根「のわっち。お主の分じゃ」

野分「は、はい。……のわっち?」

利根「……」

野分(聞き間違え……? そ、そうよね。えっと、まず編成は……)

『アイオワ・赤城・利根・阿賀野・舞風・のわっち』

野分(アイオワ……さんもいっしょ……えっ、のわっち?)

舞風「どうしたの、のわっち」

野分「そ、それが……あっ、舞風の方の編成はどうなってるの?」

舞風「舞風の方って……もしかして、アイオワさんのこと?」

野分「ち、違っ……うわけじゃないけど、もっと別のことなんだけど」

提督「どうしたのわっち。もしかして、やっぱりアイオワが気になるか?」

アイオワ「そうね、ユー達からするとオンテキってやつになるのかしら」

野分「それより、野分の名前が」

舞風「確かに、今でも偶に脳裏に浮かぶ記憶は怖くなるけど……でも、舞風には信頼できる人が沢山居るから」

提督「舞風……」

舞風「アイオワさんもゆーもあがあって面白いから。今では全然大丈夫です! 多分、その気持ちはのわっちも同じだと思います!」

アイオワ「舞風……のわっち……ユーたちは優しいわね」

野分「さりげなくアイオワさんまで野分のことをのわっちって」

赤城「私のことも気にしなくて良いですからね。のわっちは何も思い悩むことはありませんよ」

野分「いままさに悩みが増えているんですけど……」

阿賀野「うんうん、阿賀野には何のことかさっぱりわからないけど、とってもいい話だね」

提督「よし、こうして分かり合えたのなら、この編成にした意味があったってものだ。じゃあ作戦の説明を続けるぞ!」

『はい!』

野分(のわっちが気になって、流れについていけない……)

―執務室―

提督「どうせ集めるならノリの良い奴、野分と関係ある奴が良いかなって」

提督「……あ、やべ、ドッキリって伝えるの忘れてた」

下2

霞「はい、これとこれは今日中にやってちょうだい」

提督「残りは明日でもいいってことだな」

霞「魚の餌にするわよ」

提督「勘弁してください」

霞「まったく……」

提督「……秘書官、なんだか最近様子がおかしいな」

霞「は? いきなり何よ」

提督「いきなりっていうか……なんか一か月くらい前から様子が変なような気がするんだ」

霞「……気のせいじゃない?」

提督「いいや、一体何年の付き合いだと思っているんだ。さっきだって罵倒にキレがなかったぞ」

霞「あんたは何を求めてるのよ!」

提督「それで、何があった?」

霞「だから、気のせいよ。別に何もないわ」

提督「もしかして、あまりにも仕事が遅すぎてついに呆れ始めたとか……」

霞「わかってるのならきちんとやってくれないかしら!?」

提督「一応真面目に聞いているつもりなんだが」

霞「な、なんでもないったら! 用件はそれだけ!? 忙しいから失礼するわ!」

バタン

提督「ふむ……時折机の引き出しを気にしたりするのは、気のせいではないと思うのだが」

朝潮「司令官が、何か細工をしていたのが原因だと思いますが」

提督「朝潮? いつからそこに」

朝潮「すみません。立ち聞きしてしまったみたいで……」

提督「それはいいんだけど、朝潮は何か知っているのか」

朝潮「多分なんですけど、司令官が枕の下に紙を入れていたのが原因だと思います」

提督「紙……? ああ、もしかして見られてたのか」

朝潮「ぼんやりとですけど……何を書いていたんですか?」

提督「何だったかなー……結婚がどうたらって書いたような……」

朝潮「けっこん……もしかして、霞はその夢を見たんじゃないですか」

提督「なるほど! ケッコンカッコカリの力が増大して、敵戦艦をバッタバッタとなぎ倒していく夢を見たとかか!」

朝潮「……霞ならありえますね!」

提督「だから机をちらっと見たり、指輪についての書類に動揺の跡が見られるのか!」

朝潮「そういえば、明石さんのお店で指輪が売っているときにも、小さく感嘆するような声を漏らしていました!」

提督「これでまた一つ謎が解けたな。ありがとう、朝潮。朝潮がいなければ真実にたどり着けなかっただろう」

朝潮「いえ! では司令官、私も失礼します!」

バタン

提督「秘書官はまだまだ自分の力に納得していないということか。精進を志すのはいいことだ」

提督「……しかし、それにしてはやっぱりおかしなところもあるような……いや、それ以上は本人も言う通り気のせいかもな」

下2

扶桑「大変です提督!」バァン

提督「ど、どうした、そんなに慌てて」

扶桑「鏡開きで! 大和さんが! 暴れて!」

提督「どうどう、落ち着け扶桑、深呼吸だ」

扶桑「は、はい。すー……はー……」

提督「それで、何があった?」

扶桑「実は大和さんが鏡開きで餅を粉砕し続けていまして!」

提督「粉砕? あー、あの様子なら有り得るかもな」

扶桑「それが、止まらないんです!」

提督「……止まらない?」

―食堂―

大和「ふっ……!」

ドゴォン

武蔵「うむ、もはや粉々ではないか」

大和「いえ、まだまだです。欠片も大きすぎます。大和型一番艦として、この程度で満足しては居られません」

武蔵「そうか……私でもここまで木端微塵にはできないんだがな」


提督「なにあれ」

金剛「破壊の権化デース」

提督「それは見て分かる」

長門「昨年もやった鏡開きをしていた所、滝修行を終えてきたような大和が現れて、全力と言わんばかりに開きにいっているのだ」

陸奥「正直、こんな姿海外艦の人達に見られたら『ニホンの艦はクレイジーね……』とか噂されそうだわ」

伊勢「というよりそろそろ止めないとヤバイですよ! 食堂の地面にひびが入ってますって」

提督「えっ、マジだ! 止めるぞ!」ダッ

大和「なんですか、貴方達」

提督「何ですかじゃなくて、地面が耐えられてないって!」ガシッ

金剛「ウェイト! ウェイトデース!」

扶桑「他の人にお見せできない光景になってますよ!」

大和「ですがっ! これくらいでは全然っ!」ググ 

長門「くっ、なんてことだ、複数人でも止めきれんのか……!」

武蔵「流石我が姉だな」

提督「見てないで武蔵も手伝え! 後で秘書官と間宮から怒られるのは俺なんだぞ!」

武蔵「それが本音だろ」

大和「今年こそ! 満足いくまで開かせてくださーい!!」

―執務室―

提督「なんとか抑え切れた……しかし、残るのは見るも無残になった餅たち……」

提督「大和型の力はやはり尋常ではないのだと再認識した」

下2

―暁型の部屋―

提督「コサックダンスといえば」

響「ウクライナの伝統的舞踊だね」

提督「あれ踊れるか?」

響「……無理だと思うよ」

提督「だよなぁ」

暁「何の話なの?」

提督「コサックダンスの話」

暁「こさっく……?」

響「ホパークとも言うよ」

暁「ほぱーく……?」

電「暁ちゃんがそれで分かるはずが無いのです」

暁「わ、分かるわよ!」

雷「そうなの? じゃあ暁、こさっくだんすってどういう物か見せてくれない?」

暁「え」

雷「知ってるんでしょ?」

暁「う、うん……」

提督「悪意の無い言葉ほどきつい物は無いよな」

響「仮に知ってても、あれを踊れるとは到底思えないけどね」

電「その、どうしていきなりコサックダンスの話をしたのですか?」

提督「突然思い付いた」

電「今回は奇行の部類なのです」

響「うん……でも電、コサックダンスは武術の一つだったんだよ」

電「そうなのですか?」

響「だから、あれを踊れるということは鍛錬の一環にもなる。実際、体を酷使するからね」

電「響ちゃんは妙な事に詳しいのです」

提督「そろそろ暁も限界みたいだし、少しばかりか実践してみるか。口ばっかってのもなんだし」

響「じゃあ、司令官の御点前を見せて貰おうかな」

提督「よーし、いいだろう。暁、雷、これがコサックダンスだ!」

~~~~~~~~

提督「ぐはぁ!」ズデッ

雷「大丈夫司令官!?」

電「最後盛大にこけたのです」

暁「う、うーん……踊りということでいいのかしら?」

響「やっぱり問題は足を蹴る有名なあの動作だね」

提督「ゆっくりならできるんだけど、本場のスピードはまねできないよなぁ………」

響「うーん、ならみんなでやってみようか」

電「変な繋げ方なのです……」

響「皆でやればコツを掴めるかもしれないだろう?」

電「絶対ないのです」

雷「でも、やってみたいわ」

暁「わ、私も……」

響「二人はこう言ってるよ?」

電「……電もやるのです」

提督「では、再チャレンジだ!」

―執務室―

提督「ゆっくりならできる。なんだかんだ、普段から皆鍛錬はしているからな」

提督「だが再現となると……鍛えなきゃ無理だよな」

下2

―工廠―

提督「節分も近いから、何か面白そうなものを作りたい」

夕張「突然ながら意味不明ですね」

提督「節分だぞ」

夕張「それで伝わる子は誰もいないと思います」

提督「うーん、そうかぁ……」

夕張「それで、具体的にどういう内容ですか? なにも考えなしに言ってきたわけじゃないですよね」

提督「もちろん。高速で豆を吐き散らすようなものがほしい」

夕張「危なくないですか、それ」

提督「どうせ、今年も受ける奴は一部の脳筋だろ。へーきへーき」

夕張「言われてみれば……いえ、そういう人じゃない人もいますよ」

提督「そういう相手に向けなけりゃいいわけだし」

夕張「それでも……はぁ。まあいいです。それで、マシンガンでも作ればいいんですか?」

提督「いや、これを改造してくれ」

夕張「……これ、誰のですか?」

提督「子日からすってきた」

夕張「えぇ……いえ、もういいです」

提督「じゃあ、任せたぜ!」

夕張(子日ちゃんのせいにならないように、後で今年鬼になる人たちに教えておきましょう)

~~~~~~~~

子日「ねーねー、子日の装備知らない?」

提督「来たか子日。実はお前の頭にあったそれを、こっそり改造していたのだ」

子日「頭の……あっ、本当だ!」

提督「……今気づいたのか」

子日「うん」

提督「まあ、いい。それで、生まれ変わった子日の頭上ユニットがこれだ!」

子日「わあ! ……何が変わったの?」

提督「この後ろにあるボタンを押すと、豆が飛び出る!」パパパパ

子日「すごーい! ねえねえ、本当に貰っていいの!?」

提督「もちろん、元は子日のだからな!」

子日「今日は子日にとって特別な日だね! 提督からのプレゼントだし!」

提督「うんうん……」

―執務室―

提督「冗談のつもりだったのに、プレゼント扱いにされて喜ばれたんだけど」

提督「なんか、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだが」

下2

―談話室―

電「はわわ……どきどき」ペラッ

提督「何見てるんだ?」

電「わわっ!? しし、司令官さん!? 驚かせないで欲しいのです!」

提督「普通に声を掛けただけだが」

電「そ、そうですか。……電は部屋に戻るのです」

提督「そうか。じゃあ、その手に隠している物を出せ」

電「司令官さんが見ても面白く無い物なのです」

提督「それを決めるのは俺だ」

電「……はぁ。どうせ、誰かの忘れものなのです」スッ

提督「ほほう、これはいわゆるレディースコミックってやつだな」

電「驚きなのです。司令官さんが、こういう物を知っているなんて」

提督「そりゃ、名前くらいなら少々漫画を見ている奴なら誰でも知ってるだろ」

電「そう言うことではないのですが……」

提督「……ほほう、もしや電ちゃんはこれを見て、体験してみたいなーとか思っちゃったわけだな」

電「っ!? そそ、そんなわけないのです!」

提督「電が本気で興味無いのなら、泰然として応えるだろう?」

電(司令官さんにしては鋭いのです)

提督「つまり電は、こうされたりすることがお望みと」ギュッ

電「!?!?」

提督「なんだかパニックになってるみたいだが」

電「ししし、しれいかんさんっ!」

提督「どうした?」

電「っ」

電(はわわわ、司令官さんの顔が近くにあって、あのマンガのようなことって――)

提督「ん?」

電「」

提督「……気絶した」

―執務室―

提督「まさか抱き付いただけでああなるとは……ちらっと見た男が女性を抱き締めるシーンを真似しただけなのに……」

提督「普段はきついこと言うことも多いけど、こういうところはまだまだ子供なのかもな」

下2

―提督私室―

コマンダン「ボンジュール、提督」

提督「ボンジュー……その手に持っているのは、もしや」

コマンダン「シードルです。ビスマルクが順番といってきたので……」

提督「誰かが口添えでもしているのか……?」

コマンダン「自主的、とは言われましたけどね」

提督「……まあいい。えっと、シードルってどんな酒だ?」

コマンダン「シードルはリンゴ酒でヴァン・ムスーである事が多いお酒ですね」

提督「ヴァンムスー?」

コマンダン「あ、えっと……ニホンでいうところの、ハッポウセイワインですね」

提督「ああ、スパークリングワインか。この時点で色々な言い方があるんだな」

コマンダン「はい」

提督「フランスも色々お酒があるんだなぁ」

コマンダン「ですが、シードルの生産量はイギリスの方が上なんですよ」

提督「まじで」

コマンダン「もちろん質ではフランスの方が勝ってますから。それに、フランスではシードルを蒸留させたものも有名なんですよ」

提督「ワインの蒸留って……確かブランデーだったか」

コマンダン「フランスではブランデーをオー・ド・ヴィ……命の水と呼ばれているんです」

提督「ここでも水扱いか……」

コマンダン「フランスでは健康に良いものとしてブランデーは扱われてきましたから」

提督「へー。それで、フランスで有名なお酒って」

コマンダン「カルヴァドスです」

提督「聞いた事あるぞ。たしか、冬季限定でロッテからチョコで販売もしていた気がするし……」

コマンダン「そうですね、使われているのは確かにカルヴァドスです」

提督「こうして色々な国の酒事情を聞いてると、やっぱ文化の違いってあるんだなと思うよ」

コマンダン「ですが、アルコールはどの国でも同じ。美味しくいただけることには違いは無いんですよ」

提督「ポーラとかが言うと酒飲みの戯言に聞こえるけど、コマさんが言うと同意できるような気がするよ」

コマンダン「ワタクシの方が、ですか?」

提督「説得力の問題だな」

コマンダン「そろそろ提督、ヴレ・ヴ-・プランドル・アン・アペリティフ?」

提督「えっと、シードルとおつまみを出しながらということは、はいと答えればいいのか」

コマンダン「では、楽しみましょう。ボナペティ」

―執務室―

提督「おつまみが手作りで力入ってたなー。美味しかった」

提督「フランスでは食事と共に酒を飲むらしいし、相手によって酒の飲み方も色々だなぁ」

下2

コンコン ガチャ

霞「失礼するわよ」

提督「ああ」カリカリ

霞「珍しい……この時間は何時もいないのに」

提督「たまには真面目に仕事もするさ。それで、どうした」

霞「書類の仕分けよ。それと、真面目に仕事をするのなら、ついでに報告書にも目を通しておいて」

提督「確認済みだよな?」

霞「責任者はあんたでしょ」

提督「それもそうか。承った」

霞「……」

提督「どうした、まだ何かあるのか」

霞「いえ、強烈な違和感を感じているだけよ」

提督「なんでお前等って俺が仕事していると同じような事しか言わないんだ」

~~~~~~~~

提督「……」ペラッ

大淀「あら、今日はおひとりですか」

提督「今日は特に手伝って欲しい事も無いしな」

大淀「あら、正直ですね」

提督「どう誤魔化すことを期待していたんだ」

大淀「手伝わせるわけにはいかない、とかですかね」

提督「前に手伝ってもらった身でそんな事は言えんだろう。今回手伝っても、精々お茶くみ位だな」

大淀「でしたら、しましょうか、お茶くみ」

提督「……頼む」

―廊下―

青葉「ふむふむ、今回の記事はこれで決定ですね」

大和「あら、青葉さん。執務室の前で何をしているんですか?」

青葉「司令官の調査です!」

大和「調査、ですか」

青葉「意外といい記事になるんですよー。普段見ない人でも、なぜか見たりしてくれますから」

大和「そういえば、提督が真面目に仕事した次の日は、そんな内容でしたね」

青葉「今日は書類確認多めですから、少し退屈なんですよね」

大和「はあ……」

青葉「あ、どうせならアンパンを買って来るので、大和さんはちょっと見張っておいてくれませんか!」

大和「提督に用事が有るので、それは構いませんが……」

青葉「では任せました!」ダッ

大和「……」

提督「まったく、どうせなら堂々とすればいいものを」

大和「提督、気付いていらっしゃったのですか?」

提督「青葉新聞は毎回目を通しているからな。ばれているんだから隠れる必要もないだろうに」

大和「気を使っているんですよ」

提督「誰か居る位じゃ問題は無いんだがな。大和はどうしたんだ?」

大和「はい、私は提督がお仕事をしていると聞いたので、食事の用意をしてきました」

提督(たまにまじめに仕事をしていると、周りの態度が凄く優しくなるのがなんか申し訳ないな)

―執務室―

提督「やはり普段とのギャップなのだろうか。それとも俺の周りの見方が変わっているだけなのか」

提督「気を使わなくても良いんだけどなぁ」

下2

―提督私室―

サラトガ「今日はサラがお酒について説明しちゃいますね」

提督「何気に続いたお酒講座も英語編か。てっきりアイオワがくるものかと」

サラトガ「サラよりもアイオワの方が良かったですか……?」

提督「いや、ちょっと意外だっただけだ。で、今回説明してくれるのはなんだ」

サラトガ「はい、バーボンです」

提督「バーボンといえば、ウイスキーの一つだったかな」

サラトガ「その通りです! では、バーボンの言葉の由来は分かりますか?」

提督「由来か……英語だし、そのままバーボンだったり?」

サラトガ「いえ、違いますよ」

提督「だよなぁ。それだと問題にならないし」

サラトガ「正解は、フランス語のブルボンです」

提督「ブルボン? お菓子メーカーの名前であったな。アルフォートとか好きだぞ」

サラトガ「アルフォート?」

提督「まだ食べた事無いのなら、部屋に置いてあるから食べてみるか」

サラトガ「リアリィ? それなら頂き……ま、待ってください! 先に説明を終わらせてからにしてください!」

提督「お、おう。食べながらでも良いと思うんだが……」

サラトガ「いえ、どうせならバーボンと一緒に頂こうかと……」

提督「そっか。で、ブルボンからバーボンになった理由は? もじっただけとか」

サラトガ「アルファベットの綴りが同じなんです。ブルボンと、バーボンは」

提督「へー。もしかして、読み方が違うのか」

サラトガ「はい。フランス語ではBourbon。英語ではBourbon」

提督「分からん」

サラトガ「ふふふ、ジャパニーズであればすぐにわかるから良いんですけどね」

提督「はぁ……なんにしても、お酒は美味しく飲めれたら読みがどうであろうと関係は無いけどな」

サラトガ「あ、それサラが使おうと思っていた言葉です」

提督「言われると思ったから先回りだ」

サラトガ「仕方がありませんから、バーボンを飲みましょうか」

提督「仕方がないというか、最初からそのつもりだろう?」

サラトガ「こうすれば提督とも飲めると聞きましたから!」

提督「もうパターンだしな」

サラトガ「あ、それと、アルフォートというものも……」

提督「はは、了解」

―執務室―

提督「満足そうでよかった。しかし、英語も外から言葉を取り入れることがあるんだな」

提督「ケンタッキー州のバーボン郡って、日本人が聞いたら地名だとは思わなさそうだ」

下2

―会議室―

提督「さて、今年の節分なわけなのだが……鬼を決めたいと思う」

長門「ふむ、それだけの為に昨年の鬼を集めたのか」

妙高「今年も好きな人で良いと思いますが」

提督「それでもいいと言えばいいんだが、そうも言っていられない事情がでてきた」

神通「事情……?」

川内「自分から鬼をかってでて、問題が起こるとはあまり思えないんだけど」

提督「それが、豆のマシンガンをちょっと投入しちゃって」

明石「……ま、まさか工廠にたくさんあったあれは」

提督「ちょっと量産しちゃった」

明石「ちょっとじゃないですよ!?」

武蔵「機関銃とは、今年の豆まきは面白くなりそうだな」

千代田「ち、千代田はもうやりたくないんだけど!?」

摩耶「そもそも、使うと決まったわけじゃないだろ?」

提督「決まったわけじゃない。が、昨年の様子から使わないと思うか?」

神通「ありえませんね」

天龍「龍田が喜んで配りそうだな……」

提督「もう予想の時点でこうだからな」

鬼怒「もしかして、鬼怒にも投げられたり?」

提督「正確には撃つだな。鬼怒の場合は名前が名前だしな」

鬼怒「えぇ……鬼決めの集まりの意味が無いんだけど」

長門「艦娘が全力で投げた豆と比べるとどうなんだ?」

提督「威力的には全力で投げた方が痛いんじゃないか。威力自体は抑えてあるし。ただ、連射が痛いからな……」

武蔵「この武蔵の装甲が破れるか……くく、なおさらワクワクしてきたぞ」

妙高「今年の豆まきは気を付けましょう、ということでいいんですね」

舞風「当たらなければどうということはないという言葉もあるしね」

提督「とりあえず、昨年鬼をやった奴を呼んだわけだけど、今年鬼をするときは気を付けるように」

赤城「すみません提督、もし当てられた場合はどうすればいいですか?」

提督「全力で投げられるよりましだと思って諦めろ。でも、赤城がそういうことを気にするのは珍しいな」

赤城「いえ、加賀さんが……」

提督「ああ、加賀なら両手に抱えて撃ち返しかねないな」

加賀「私のことをなんだと思っているんですか」

―執務室―

提督「当日に任せるってことで」

提督「あの様子だと自分から進んでやってたやつはやるな。マシンガンはやる気ある相手のみにしておこう」

下2

提督「最近は寒いよな」

朝潮「そうですね。先月より寒く感じます」

提督「寒波が訪れているとかなんとか。普段雪が降らない地方にも雪が積もったりとか」

朝潮「大変ですね」

提督「朝とか起きられない奴多いんじゃないか。朝潮の方とか」

朝潮「あはは……えっと、ちゃんと起きてくれる子も居ますから」

提督「ま、少なくとも朝潮はちゃんと起きれるだろうしな」

朝潮「わ、私もすぐに起きられている訳じゃ無いですよ」

提督「謙遜っぽいなー」

朝潮「そんなことはないですから!」

提督「なら、今日は一緒に寝てみるか」

朝潮「寝て……えっ!?」

提督「寒いし、いいだろ?」

朝潮「えっ、えっ、それは……は、はい」

提督「よし、約束だ。今日の夜にこっそりお邪魔するぞ」

朝潮「は、はい」


―夜・朝潮型の部屋―

荒潮「それじゃ消すわよ~」

朝潮「は、はい……」

荒潮「あら、どうかしたの? そんなに固くなっちゃって」

朝潮「なな、なんでもないです! 緊張しえるわけじゃないですから!」

荒潮「なんだか大丈夫そうには見えないけれど……疲れてるのな早く寝るのよ?」

朝潮「わ、わかったわ」

カチッ

~~~~~~~~

朝潮(……眠れるわけがないのよね)

朝潮「(でも、こっそりお邪魔するって言っていたけど、どうやって……)」

提督「(お邪魔してるぞ)」

朝潮「っ!?」ガタッ

提督「(静かに、静かに)」

朝潮「(いつのまに朝潮の布団の中に!?)」

提督「(それは企業秘密だな。だが、朝潮が布団に潜り込んだときには、すでに暖かかっただろ)」

朝潮「(もしかして、ずっと私の布団の中に……?)」

提督「(ははは、とにかく、正直もう眠いから寝させてもらうぞ)」ギュッ

朝潮「(しし、司令官!?)」

提督「zzz……」

朝潮(は、早い……うう、朝潮は、しばらく眠れそうにないのに……)

―執務室―

提督「やっぱり誰かと寝ると暖かさからかぐっすり眠れるな」

提督「朝になって叩き起こされはしたけれど……」

下2

―提督私室―

雪風「今日は雪風が説明しちゃいます!」

提督「……ちょっと考えたけど、何を説明するんだ」

雪風「お酒です!」

提督「雪風ってそもそもお酒飲めるのか?」

雪風「しれぇ、お酒にも飲む以外の用途がありますよ!」

提督「……あっ、料理酒か」

雪風「はい! 雪風が持ってきたのはこれ、紹興酒です」

提督「紹興酒か。あまりお世話になった事は無いが、一応知ってるぞ」

雪風「では、紹興酒について説明しますね。えっと……何から話しますか?」

提督「まずは紹興酒の読み方についてとか」

雪風「はい! 紹興酒は中国ではシャオシンチュウと言います!」

提督「まあ、一緒ではないな」

雪風「紹興酒はホワンチュウの一つなんですよ」

提督「黄酒といえば中国版日本酒みたいなものだな」

雪風「そうなんですか?」

提督「アルコール度数はそっちの方が平均的に少し高いかもしれないけど、概ねな」

雪風「なるほど……」

提督「って、雪風の方があまり知識ないじゃないか」

雪風「すみません……雪風、もっと精進します!」

提督「うん。まあ、飲めないなら無理に精進する必要もないけどね」

雪風「でもしれぇ、いつもと言われたので、お酒も持ってますよ」

提督「なら、予定通り料理に使うか」

雪風「雪風も手伝います!」

提督「それはありがたい。そういえば、持ってきたお酒の種類は?」

雪風「種類、ですか? ……シャンシェンチュウ。って書いてますね」

提督「香雪酒か。料理に丁度良いが……もしかして誰かに持たされたのか」

雪風「今日のしれぇはするどいです!」

提督(料理に使うことを見越してか、雪という漢字があるから選んだのか。どっちでもいいか)

―執務室―

提督「まさか雪風が来るとは……さすがに予想外」

提督「ご飯は美味しくいただいたけど。お酒は飲む以外でも美味しくいただける事を再確認した」

下2

―談話室―

提督「ふんふふーん、さーて、おやつの時間だ」

初雪「なに、それ……?」

提督「おおう、いたのか。これは生八つ橋だ」

初雪「お土産ですか……」

提督「京都のお土産ではあるな。これは売店で売っていたから買ったんだ」

初雪「ふぅん……」

提督「……」

初雪「……」ジー

提督「いるなら言ってくれればあげるぞ」

初雪「ください!」

提督「正直なのはいいことだ」

初雪「ありがとう、ございます」

提督「……えっと、さっきからじっと見つめてる弥生もいるか?」

弥生「! や、弥生は別に……見てませんから」

提督「いや、そんな睨んできて見てないってのは」

弥生「睨んでないです……! それに、弥生は……」

提督「正直にならないとあげられないぞ」

初雪「正直は、美徳……」

弥生「うぅ……弥生にも、その、ください……」

提督「うんうん。ほら」

弥生「ありがとうございます……」

初雪「八つ橋、うまー」

弥生「はい、弥生も、そう思います」

提督「もちっとしてて、さすがの生八つ橋」

初雪「あ、食べ終えちゃった……」

提督「一人じゃ食べきれないし、好きにとっていいぞ」

初雪「じゃあ、お言葉に甘えて……」

提督「初雪は好きなことには積極的だなぁ」

弥生「では、弥生も貰います」

提督「弥生は獲物を狩る猛獣の目をするのはやめような」

弥生「!? そんな目、してません……!」

提督「冗談だ」

―執務室―

提督「どこのものかはよくわからないけど、生八つ橋としては普通に美味しかった」

提督「さすが京都一の和菓子のお土産は伊達じゃない」

下2

―球磨型の部屋―

多摩「それは多摩のみかんにゃ!」

提督「先に取ったもん勝ちだ」

多摩「にゃにをー!」

球磨「二人は元気クマね」

提督「みかん一つで騒ぐ多摩の方が元気だ」

多摩「提督が言えたことじゃないにゃ! ふしゃー!」

提督「……しかし、こうしてみると多摩って猫っぽいよな」

多摩「多摩は猫じゃないにゃ!」

提督「そんな『ふしゃー』とか言ってるのに」

多摩「つ、つい出ちゃっただけにゃ!」

提督「ふむ……どう思う、球磨さんや」

球磨「どっちでもいいクマ」

多摩「球磨!?」

球磨「多摩がなんでも、大切な妹であることには変わらないクマ」

多摩「球磨……」

提督「意外と球磨って処世術もしっかりしてるよな」

球磨「意外とは余計クマ」

提督「うーん……なら、猫じゃないなら他ならどうだ」

多摩「にゃ?」

~~~~~~~~

多摩「……」E:ウサミミ

球磨「こ、これは……」

提督「これで猫っぽさは下がったな!」

多摩「元から猫じゃないにゃ!」

球磨「でも、案外似合ってるかもぷっ……クマ」

多摩「ちょっと笑ってるのが見えたにゃ!」

提督「にゃ、じゃないだろ。ぴょんだ」

多摩「それもおかしいにゃ……ぴょん!」

球磨(つっこむのにちゃんとぴょんって言うんだクマ……)

提督(意外とノリノリじゃないだろうか)

―執務室―

提督「あの後ずっと兎耳着けてたんだけど……」

卯月「うーちゃんのあいでんてぃてぃが崩壊ぴょん!?」

提督「気のせいだから下がっていいぞ」

卯月「わっかりました! びしっ!」

提督「……ま、気にしないでおこう」

下2

―提督私室―

ウォースパイト「アドミラル、お酒について勉強しているときいたのだけれど」

提督「勉強している訳では無いが……そもそも、その情報はどう出回っているんだ?」

ウォースパイト「What do you mean?」

提督「……誰から聞いた?」

ウォースパイト「ポーラが話してました。その場にサラトガやビスマルクの姿もあったの」

提督「こりゃ広まっていると見るべきか……」

ウォースパイト「どうかしたの?」

提督「いや、なんでもない。考えてみれば特に困る要素も無いしな」

ウォースパイト「よく分からないのだけど、始めた方が良いですか」

提督「どうぞ」

ウォースパイト「では、ウィスキーについて話しますね」

提督「ウィスキーか。有名だが、まだだったっけ」

ウォースパイト「簡単な事から説明すると、イギリスとアメリカでは少し違うのよ」

提督「どっちも英語だろ?」

ウォースパイト「アメリカ英語とイギリス英語では少し違うの。ウィスキーの場合はkeyかkyの違いね」

提督「なるほど……それは知らなかった」

ウォースパイト「あとウィスキーそのものの語源としては……」

提督「あ、それ当ててやろうか」

ウォースパイト「どうぞ」

提督「命の水、だな。ラテン語のアクア・ヴィテ、ゲール語に訳してウィシュケからのウィスキーだな」

ウォースパイト「ビューティフル! よく知っていたわね」

提督「水関連は前に聞いたしな」

ウォースパイト「ではアドミラル、続きは頂きながらにしましょうか」

提督「ん、そうだな」

ウォースパイト「私が持ってきたのは秘蔵モルトウィスキーです。多分、アドミラルも気に入ってくれると思うの」

提督「皆、わざわざ秘蔵の酒とかよく持って来てくれるなー。気持ちはありがたく受け取っておくけどさ」

ウォースパイト「ふふ、そういえばアドミラルとウィスキーを頂くなんて、初めてね」

提督「言われてみれば……ウォースパイトとこうして落ち着いて話す機会は無かったな」

ウォースパイト「では、丁度良かったです。良い話題を提供してくれた皆さんには感謝ね」

提督「その通りだな。それじゃ、準備も出来たところで、乾杯!」

ウォースパイト「乾杯!」

―執務室―

提督「やはりまだ絡み足りないのか。もっといろんな奴と話していくべきだな」

提督「この機に、みたいな奴も居たのかな。基本来る者拒まずなんだけど」

下2

―母港―

提督『さーて、今日は何気に前回高評価を博したエアレースだ!』

青葉『あれ評判良かったんですか?』

提督『再戦希望があるくらいには。あと、空母組はそれなりに楽しんでいるみたいだ』

青葉『なるほど。それでは今日のメンバーを発表します』

提督『一番、今回一番古参の飛龍の九七式艦攻。友永隊と共に先輩としての意地を見せて欲しい所』

青葉『二番、より良き艦載機を求める雲龍の天山。これで勝ったら最新式の機体に転換の模様』

提督『三番、その妹葛城の流星。機体能力では姉より上だが、果たして操作技術はどうか』

青葉『四番、パスタの国からこんにちは、アクィラさんのRe.2001 G改。海外艦としての力を見せて欲しい所です』

提督『五番、アメリカ生まれの歴史ある空母サラトガのTBD。期待能力で劣ってはいるものの、それを覆す経験があるか』

青葉『以上の五名となります』

提督『ルールは前回通り。さあ、カウントダウン、3……2……1……ゴー!』


葛城「発艦始め! ……能力的には私の流星とアクィラの2001ってところかしら」

アクィラ「負けませんよー!」

雲龍「姉としても、負けられない」

サラトガ「さすがにサラの機体じゃ難しそう……飛龍さん、のんびり行きましょうか」

飛龍「サラ、最初から負ける気で挑む勝負なんて勝負じゃないんだよ!」

サラトガ「飛龍さん!?」


青葉『おや、飛龍さん、何か作戦があるみたいですね』

提督『古参としてのプライドがあるんだろう。前回では日向が見せてくれたんだ。今回も、何か見せてくれると嬉しいんだが』

~~~~~~~~

青葉『レースは終盤! 雷撃は誰も外すことなく、いまやゴール手前に差し掛かっています!』


葛城「私が一番……アクィラも雲龍姉も追いぬける位置じゃない。よし、今回は貰ったわ!」

雲龍「まさか、もう勝った気でいるの」

葛城「だって、すでに二人とは差があるのよ。最後のカーブも終えて、抜かされる要素が無いわね」

アクィラ「うーん、アクィラとしてはやっぱり悔しいんだけど……」

雲龍「それには同感」

葛城「なによ、二人だって負けを認めてるんじゃない」

雲龍「もちろん。でも、認めているのは葛城じゃなくて」


提督『おーっとぉ!? ゴール手前、流星の後ろから誰かが突然躍り出た!」


葛城「! ど、どうして! 一体誰が……」

飛龍「機体の能力が重要って言ってる内じゃ、勝てないよ!」

葛城「飛龍先輩……はっ、もしかして、ずっと後ろを!?」


青葉『動揺か、流星の機体がぐらつきましたね』

提督『そうなれば決まったようなものだな。しかし、乱気流にのり続けるなんて、生半可な技術じゃないな。さすが友永隊と飛龍というべきか』

―執務室―

提督「あれは結構強烈な印象を残していったな」

提督「動画にまとめたけど、これ実は売れるんじゃないだろうか。明石に相談しておこう」

下2

―陽炎型の部屋三号室―

浦風「最近よう金縛りにあうんよ」

浜風「浦風も? 実は私も……」

提督「はぁ? 浦風と浜風が非科学的なことを言うのも珍しいな」

浦風「うちはそんなに科学的おもうとらんが」

提督「んー、まあいいか。それで、金縛りってなんだ?」

浜風「金縛りといえば、夜中寝ているときに体が動かせない現象のことです」

提督「あ、うん。説明はありがたいけど、そういうことを聞いているんじゃないからね」

浦風「でも、うちらにもよう分からんのよ」

浜風「夜中起きると体が動かないってだけですからね」

提督「なんだ、特に被害が無いならいいや」

浜風「非情ですね」

提督「といっても、何か対策が出来るようなものじゃないしなー」

浦風「提督さんは、金縛りをどう思うとるん?」

提督「そりゃあ、脳が起きてて体が寝ている状態だろう」

浦風「科学的なのは提督さんの方じゃけえ!」

浜風「それだけならばいいのですが……」

提督「他に何か心配ごとでも?」

浜風「いえ……」

提督「?」

浜風(トイレに行くときに困る、とは流石に言えませんし……)

浦風「うーん、うちらでもようわからん事象を聞いても、駄目じゃのう」

提督「同室の他の奴はどうなんだ?」

浜風「特に問題は無いと」

提督「他の奴らになくて、お前らにある物……」

浜風「何か思いつきますか?」

提督「……バストカップだ! きっと、夜起きても胸が重くて体が動かないという――」

ドスッ

―執務室―

提督「冗談だったのに、本気で鳩尾に攻撃してくるとは……」

提督「何か被害があるなら本気で考えてやるか」

下2

―鳳翔の店―

隼鷹「おーす、提督じゃないか」グネグネ

提督「……いや、何やってんの?」

隼鷹「納豆をかき混ぜてる」

提督「ご飯に納豆は王道的だ。かけて食べるのも、それもまた一興」

隼鷹「卵かけごはんにかけんの? えー」

提督「馬鹿者! 納豆卵かけごはんは日本が生み出した最高のお手軽料理だ! というか、栄養面で優秀だ」

隼鷹「じゃあやってみようかね。…………パクッ」

提督「どうだ?」

隼鷹「こ、これは! ……まあ普通に美味しいね」

提督「うん」

隼鷹「ガツガツガツ……」

提督「……」

隼鷹「鳳翔さん、おかわり!」

提督「ハマった?」

隼鷹「うん」

提督「いや、まあいいけど。ふぅ……」

隼鷹「おやおや、提督の溜息なんて珍しいじゃないか」

提督「別に溜息のつもりは……いや、違うくも無いか」

隼鷹「なら飲んで忘れようぜ。今日はいい酒があるんだ」

提督「最近飲んでばかりだから遠慮しておく。つか、隼鷹も珍しいな」

隼鷹「なにが?」

提督「ここに来る時はいつも酒ばかり飲んでいるのに、今日は違うじゃないか」

隼鷹「ちょっと夜食のつもりだったんだ。あ、鳳翔さん、おかわり」

提督「それ三杯目だろ。ちょっとじゃなくなってきてないか」

隼鷹「いやー、お腹すいたから少しだけって思ってたのにねぇ」

提督「どうせここに来た時点で酒も浴びるように飲むんだろうに」

隼鷹「でも、今日はそんなに飲むつもりは無いよ」

提督「そもそも納豆卵かけごはんを食べながらお酒ってどうよ」

隼鷹「……試してみる?」

提督「俺が肯定しようと否定しようと結局は頼むんだろ」

隼鷹「わかってるねー! 鳳翔さん、今日のおすすめあるー?」

提督(酒が飲めればなんでもいいんだろうな。巻き込まれる前に退散しておこう)

―執務室―

提督「見てたら食べたくなってきた。自分で作るか」

提督「さりげなく黄身のみの卵かけごはんを出しているところもミソだ」

下2

―睦月型の部屋―

睦月「絶対に取った方がいいにゃし!」

如月「取らない方がいいわ!」

提督「あー、みかん美味し」

睦月「味がなくて苦いだけのところなんて取った方がいいにゃ!」

如月「あれには美容効果もあるのよ! 取らない方が絶対いいわ!」

提督「これとか甘くて最高」

水無月「司令官普通だね」

提督「だってどうでもいいだろ?」

水無月「う、うーん……確かにそうかも」

睦月「司令官! 無視しないでほしいの!」

如月「これは司令官にとっても重要なことなんですから!」

提督「重要ではないだろう」

睦月「重要なのです!」

提督「えぇ……」

水無月「たいへんだねぇ~。もぐもぐ」

提督「いや助けてくれよぉ、水無月。好みとしか言えないことに結論は無いんだぞ」

水無月「ふーん、川内さんの時に止めてくれなかったし、しらないよー」

提督「そんなことあったっけ……いや、川内絡みは多すぎてわからないだけか」

睦月「司令官!」

如月「司令官!」

提督「はいはい! わかった、わかったから!」

睦月「司令官、どっちが正しいと思いますか!」

如月「もちろん、如月よね!」

提督「いや、二人の言い分もわかるから、どっちが正しいとかは……」

睦月「司令官ははっきりしないにゃしぃ!」

如月「八方美人は嫌われますよ!」

提督「ああ、もう! ならばみかんなんて、こうしてやる!」

睦月「あっ、睦月達のみかんが!」

如月「ミキサーの中に!」

提督「へい水無月、電源だ!」

水無月「はーい」

提督「スイッチオン!」

グオングオン

如月「さ、さすがに適当じゃないかしら?」

提督「ミキサーでみかんジュースにすれば、すじがあってもなくても関係ない。ほれ、飲んでみろ」

睦月「にゃし……あ、美味しい」

如月「本当……」

提督「はいはい、美味しいと思ったのなら仲直りしろ。全部混ぜれば一緒だ」

水無月(それって、真に受けたらダメな言葉じゃないかなー……)

―執務室―

提督「最初からミカンジュースにできるよう準備はしておいたのさ。喧嘩は想定外だけど」

提督「今年も食べきらないとそろそろまずいからな……」

下2

―庭―

提督「雪が降ったぞ、かまくらだ!」

天龍「え、だが……」

提督「降ったんだ。いいな」

天龍「おう……」

龍田「でも、そんなに簡単に作れるものなのかしら~?」

提督「かまくらは以前作ったこともある。心配しなくても平気だ」

天龍「ま、こういうことに関して提督は信頼してるけどさ」

龍田「……もしかして、天龍ちゃんは作りたいのかしら」

天龍「ばっ……! 提督が作りたいっていうから仕方なくだ!」

龍田(そういう割にはすごくうきうきしているのよね~)

~~~~~~~~

天龍「できた……!」

提督「おお、十分な広さもできてるし、これぞかまくらって感じだ」

龍田「ほんとね~」

天龍「なあなあ、中に入ってみようぜ!」

提督「こらこら、天龍ったら焦りすぎ。中に入る前に火鉢をつけるぞ」

天龍「火鉢? そんなことしたら溶けるんじゃねーのか」

提督「説明はめんどくさいから省く。理論的にはおかしくないから」

天龍「そ、そうなのか。まあ、難しいことなんて考えても仕方ねーよな」

龍田(天龍ちゃんがまたちょっとバカっぽく……そこが可愛いんだけれどね~)

天龍「お、もしかしてそれは餅か。焼くのか」

提督「そうだけど……なんか今日の天龍は饒舌だな」

天龍「じょうぜつ?」

龍田「口数が多いって意味よ」

天龍「い、いつも通りだろ」

提督「へぇ」

天龍「べ、別にワクワクしてちょっと気がせってるわけじゃないからな!」

提督(そういう一言が多いんだよなぁ)

龍田(やっぱり天龍ちゃんは可愛いわ~)

天龍「……で、いつ餅はできるんだ?」

提督「せめて興味津々な様子を隠す努力位したほうがいいんじゃないのか」

―執務室―

提督「かまくら作るのは久しぶり」

提督「といっても、なんかすごいやる気だった天龍が大半を終わらせたんだけど」

下2

―母港―

提督『急降下爆撃エアレースー。あ、このお菓子美味し』

青葉『司令官、すごく適当な感じになりましたね』

提督『だって、こんな誰が勝っても微妙に禍根が残りそうなレース見たくないぞ』

青葉『参加者は誰なんですか?』

提督『加賀と瑞鶴と葛城とグラーフ、アキラ、サラだな』

青葉『わぁ、それは確かに……』

提督『しかも全員普通の流星で固定だそうだ。機体の差すらないぞ』

青葉『うーん、一番いいのはグラーフさんが一位になることですかね』

提督『はいはい、実況が一位予想しても何にもならないし、そろそろ始めるぞ』

青葉『はい! では、位置についてください!』

葛城「先輩たちの胸を借りるつもりでいかせてもらいます!」

瑞鶴「そこは一位になる気で行かなきゃ駄目よ」

葛城「は、はい!」

加賀「本気でそう思っているのなら、おめでたい考えね」

瑞鶴「いつまでも見習いのままだと思ったら大間違いよ」

加賀「その言葉、ただの見栄でないことを祈るだけね」

アクィラ「グラーフ、負けませんよー!」

グラーフ「こちらこそ。だが、一番の強敵はあちらだろう」

サラトガ「サラだって、今回は優勝を狙います!」


青葉『はい、では、よーい……スタート!』

~~~~~~~~

提督『うーん、なんだかお互いがお互いをけん制していて、あまり動きがないな……』

青葉『そうですね、直接的な邪魔はないですけど……司令官は誰が優勝すると思いますか?』

提督『言ってなかったっけ。普通にレースをしていれば、多分サラが一位だな』

青葉『サラトガさんが? それはまた、意外ですね』

提督『加賀と瑞鶴はお互いにつぶし合うし、グラーフとアクィラも似たような感じだろうからな。葛城は瑞鶴に遠慮して前に出られない』

青葉『それでサラトガさんが……』

提督『今の状況だと、誰かが前に出ようとすると全員で妨害しかねんから、その予想は当たらないけどな』

青葉『えーと……以上、エアレースの中継でした!』


アクィラ(実はアクィラだけすでに撃墜されてました! うう、ちょっと前に出ただけですのに……)

―執務室―

提督「うーん、結局判定待ちか。予想以上に動きのない試合だったな……」

提督「でも実力差が大きければ離されていただろうけど、それもなかったことは喜んでいいのかもしれないが」

下2

加古「なあなあいいだろ~」

青葉「きっと鎮守府の為にもなりますよー」

提督「駄目だ」

加古「なんでさ」

青葉「絶対いい案だと思いますよ!」

提督「そりゃ床暖房とか、とんでもないほど予算が必要なものをそうそう作れるわけが無いだろう」

青葉「司令官、よく考えてみてくださいよ。こんな寒い中でも、とっても暖かいんですよ」

提督「それ床暖房じゃなくても良いよな」

加古「いつでもどこでも寝る事が出来るんだよ」

提督「いつでもどこでも寝るな」

青葉「潜入捜査のために匍匐前進しても寒くない!」

提督「そんなことする奴は青葉以外にいないと思うけど」

ガチャ

古鷹「提督、加古が執務室に行ったと聞いたのですが……あっ、加古」

衣笠「青葉まで居る!」

提督「いいところにきた。この分からず屋どもを何とかしてくれ!」

古鷹「何か提督を困らせるようなことを?」

提督「床暖房の設置を求めて来ているんだ」

古鷹「加古?」

衣笠「もしかして、青葉まで……」

加古「間違ったことは言っていないから!」

青葉「そうです、誰もが幸せになれるプランですよ!」

古鷹「内情知っている大淀さんと霞ちゃんは幸せになれないと思うよ」

衣笠「しかも、それを実行して喜ぶ人も少数だろうし」

加古「ええー」

提督「ほら二人共、保護者が来たし帰りなさい」

加古「はーい」

青葉「今回は諦めますか……」

古鷹「えっと、提督お騒がせしました」

衣笠「保護者呼ばわりはちょっと気になるけどね……」

バタン

提督「……なぜいきなり床暖房……冬も終わるというのに」

提督「引き際も素直だったし、何かに影響されただけかもな」

下2

―工廠―

夕張「こうして整理してみると、完成まで至らなかった発明品が色々ありますねー」

明石「廃棄しようにも、自分達でもよく分からないものが多いせいで、処分に困るんですよね」

夕張「あー、分かります」

明石「ほら、これとかなんでしたっけ」

夕張「枕ですね。……あれ、何で枕が此処に」

明石「紛れ込んだんでしょうかね」

夕張「なんですかねぇ?」

夕張(何か忘れているような……)

明石「でしたら、ちょっと売り物にしてみましょうか。素材もよさそうですから、もったいないですし」

―執務室―

提督「――で、こうなったと」

暁「……」ギュー

夕張「流石に何年も前のことですし、覚えていませんよ……」

提督「それって、変な夢を見せる枕だろ。まったく……で、暁たちは何を見たんだ」

暁「べ、べつに……」

電「司令官さんが屈強な男達につれられて行く夢です」

提督「俺が一番怖いんだけど」

雷「電はそうなの? わたしは、鎮守府が狙われて…………」

響「司令官が敗残兵に討たれた夢を見たよ」

提督「ちょっと待って、なんで俺ばかりが犠牲になってんの? 何か怨みでもあるの?」

夕張「ほら、自分で言うのもなんですが、あれって未完成品でしたから」

提督「それにしても酷い」

雷「でも、なんだか現実味がある夢だったの……それで……」

提督「ああ、なんとなく分かってる。暁もそろそろ離してくれないか」

暁「……もうちょっとだけ」

響「枕が問題なら、暁は直に受けていたからね。私達よりもっとひどい夢だったのかも」

電「あんな目に遭った司令官さんが、もっとひどい目に……お、恐ろしいのです……」

提督「俺も聞かないでおこう……もう少しだけな」

暁「うん……」

~~~~~~~~

提督「恥をしのんであんな風になるほどの夢か……いや、ほんとに怖い」

提督「というか、倉庫にしまってある物を売り物にしないよう明石にも言っておかねば」

下2

―提督私室―

提督「最近面白いテレビやってないなー」ピッピッ

電「あっ」

提督「ん、さっきの動物番組か。いいぞ」ピッ

電「あ、ありがとうなのです」

提督「ほら、ついでにみかんでも食べるか」

電「では、電はお茶を注いでくるのです」

提督「悪いな。こたつから出るのもしんどいだろうに」

電「これくらい、平気なのです」

提督「じゃあ、まかせた」

電「……」カチャカチャ

提督「……しかし、電が二日連続で尋ねて来るなんて珍しいな」

電「そう、です?」

提督「好かれてない……とはいわないけど、姉妹で一緒に居る方が自然に感じる」

電「たまにはこういう日もあるのです。それとも、電がいて迷惑ですか?」

提督「それはないから安心しろ」

提督(裏が読めなくて俺は安心できないけど)

電「……電なりに、司令官さんのことが心配なのです」

提督「心配って……昨日の夢の話か?」

電「……できたのです。味が合えばいいのですが……」コトッ

提督「ああ、うん。……美味しいぞ」

電「あっ、司令官さん、テレビでライブをやっているのです!」

提督「え? おっ、まじか。あいつはいま鎮守府にいるはずだから……録画かな」

電「でも、普段はちょっと抜けているように感じますけど、テレビに映ってる姿はアイドルなのです……」

提督「もう二年以上になるのにまだまだ人気だな」

電「……」

提督「なんだ、電もやっぱこういうのにあこがれるか」

電「女の子の夢なのです。もう少し見ていても良いですか?」

提督「別に今は見たいテレビもないし、許可を得なくて良いぞ。お、どうせならこっちはこっちで冷かしておこう」

電「……はい、司令官さんらしいです」

―執務室―

提督「なんか普通に過ごしてしまった」

提督「特別ちょっかいかける雰囲気でも無かったし、そんなものか」

下2

―雲龍型の部屋―

雲龍「童貞を[ピーーー]服って気になります」

提督「またキャッチーな話題だな。雑誌からか?」

雲龍「そんなところですね」

提督「この手の話題は分からないからなー」

天城「提督はあまりこういうことに興味を示しませんからね」

葛城「それで、雲龍姉は何が気になってるの?」

雲龍「それで本当に死ぬのかどうか」

葛城「……分かってると思うけど、そういう意味じゃないわよ?」

雲龍「えっ」

葛城「えっ」

天城「えっと……私もよくは分からないのですけど、ウォースパイトさんみたいな服がそうではないですか?」

提督「ウォースパイトに怒られるぞ。そういう要素はあるが……あれよりもっと清楚だろう」

葛城「その発言はその発言で怒られそうだけど」

雲龍「うーん……じゃあ、これだと思う物でも皆で取ってうる?」

天城「疑問形ですか。いえ、面白そうだとは思いますけど……」

葛城「誰かに借りたりするの? ちょっと迷惑じゃない」

提督「葛城は借りて来られる相手が多そうだと思うが」

葛城「……ねえ、それどういう意味? もしかして、体型的って意味じゃないわよね」

提督「あー、俺ちょっといいもの思い出した。取ってくるー」ダッ

葛城「あっ、逃げた!」

雲龍「提督の帰りを待とっか」

天城「マイペースですね」

~~~~~~~~

提督「童貞を殺す服っていっても、結局は好みなところがある。ブラウスにフレアスカートみたいな時点で大分目的は達成される」

雲龍「それが、これですか?」

提督「おう。アンクルージュのワンピースだ。リボン付きでフワッとしていて受けが良さそうなのを選んだ。うんうん、結構似合っていると思うぞ」

天城「な、なんだか結構ちゃんとした物を選んできましたね」

葛城「着ている私が言うのもなんだけど、ちょっと気持ち悪いんだけど……」

提督「なんだと、せっかく真面目に選んで来たのに!」

雲龍「……もしかして、これが提督にとって殺される服?」

天城「えっ! そ、そうなんですか?」

提督「嫌いじゃないけど、殺されるかは分からんな」

雲龍「なんだ、ちょっとがっかりです」

提督「なぜガッカリ」

葛城(……わかんないって、もしかして提督……)

―執務室―

提督「明石の店に行けばだいたい何でもあるからなー」

提督「でもやっぱ思うのは服より佇まいの方が重要な気がしないでもない」

下2

―Z1型の部屋―

提督「星座占いをしよう」

レーベ「セイザウラナイ?」

マックス「占いですか。非科学的ですね」

提督「非科学的でもいいじゃないか。それに、当たる当たらないじゃなくて、内容に一喜一憂するものだぞ」

レーベ「うーん、よくわからないな」

提督「考えるくらいならやっちゃおうってことだ」

レーベ「そっか」

マックス「はぁ、少しくらいならいいですけど」

提督「なんだかんだワクワクしてるだろ」

マックス「べっ、別にしてません」

提督「ふーん。んで、星座占いだが……何がいい?」

マックス「そうですね……この時間は占い番組はしていませんし、新聞に書いてある内容は個人的に好きじゃないですし……」

レーベ「マックスってそういうの見てるの?」

マックス「それなり……はっ」

提督「少しくらい、なぁ。そりゃよく見ているならそんな反応か」

マックス「ちょっと待って、よく見ているとは言ってないわ!」

提督「はいはい。てっとり早いのは本かネットか雑誌か」

マックス「雑誌ならいいのがあるの。ここの星座占いコーナーというのが……」

レーベ「マックス?」

マックス「……な、なんでもないです」

提督「いやもう隠さなくていいだろ。んで、それにはどんないいことが書いてあったんだ」

マックス「いいことだけってことはないです。どの本にも言えることですが、欠点を書いてから利点を書いているので」

レーベ「僕の運はどんな感じ?」

マックス「レーベは仕事運と金銭運は星四つ。恋愛運は星二つ。自分の考えていたものと現実との差異に苦しめられるかも。よりよい方に理解すれば、心も晴れる。ラッキーカラーはセルリアンブルー」

レーベ「なるほど」

提督「見ないでも言えるくらい読み込んでるんだな」

マックス「た、たまたまよ」

レーベ「じゃあ、提督はどうだったのかな?」

マックス「ええと…………こ、ここまでにしましょうか」

提督「いや、なんて書いてあったんだよ」

マックス「ひとつ言っておくと、占いはあくまで占いです。心の底から真に受けるべきではないんですよ」

提督「いや、真に受けてるのはマックスだよな? なんで顔ひきつってるんだ。おい、おーい!」

―執務室―

提督「結局教えてくれなかった……どんだけひどい内容だったんだ……」

提督「占いなんて所詮は暇つぶし程度だし、そんなひどい内容でも気にしないんだが」

下2

―提督私室―

金剛「今回は私が教えマース!」

提督「金剛が? 金剛は……そもそも英語が喋れるのか以前に、酒を飲めるのか」

金剛「お酒は淑女のたしなみデース!」

提督「嘘っぽい……」

金剛「疑い深いデース……でも、お酒にもこんなのがありマース!」

提督「ティー……リキュール?」

金剛「紅茶の茶葉を漬け込むことによって、紅茶の味と香りを楽しむことができマース!」

提督「へー。そんなものがあるのか。初めて知った」

金剛「じゃあ、さっそくいただきまショー!」

提督「いきなりか! 説明もせずに飲むのは金剛が初めてだな」

金剛「そうなのですカ?」

提督「雪風でも頑張ったくらいだからな……」

金剛「でも、よく言いますよネー。お酒は楽しんで飲むのが一番って」

提督「鎮守府の標目かなにかかそれ……」

金剛「お注ぎしマース!」

提督「まあいいか。えっと、グラスならそこの棚の中にあるぞ」

金剛「ここですネー。あっ!」ルツッ

提督「げっ! 落ちていたバナナに引っかかって金剛がこけてたまたま垂れていたひもを引っ張って段ボールが落ちてきた!」

ボスッ バチバチッ

提督「あっ、段ボールから火が! 多分中に入っていたマッチ棒がやすりですってしまいそれが爆竹に着火してそれにより段ボールに火がついて燃え上がったんだ!」

金剛「ダンボールがファイアデース!」

提督「言ってる場合か! 早く消火だ!」

金剛「ウォーターデース!」

提督「おう! くらえ!」バシャッ

ボオオオオォ

提督「ってアホか! これリキュールじゃないか!」

金剛「ソーリーデース」

~~~~~~~~

提督「はぁはぁ……なんとか消火したぞ……」

金剛「……それじゃ、ティータイムを始めマース!」

提督「そんな状況じゃないよな!?」

―執務室―

提督「被害はそんなになかったが、無事ともいえんな」

提督「まあこれくらいいつものことか……」

下2

―鳳翔の店―

提督「はぁ……講座とか言って大抵飲みに来るだけだからなぁ」

鳳翔「ふふ、いいじゃないですか。皆さん提督と一緒にしたいんですよ」

提督「その気持ちはうれしいけど、昨日はボヤ騒ぎがあったしさ」

鳳翔「青葉さんが面白おかしく記事にしていましたね」

提督「あれくらいなら明石が一晩で直してくれるからいいんだけど……つか昨日は実際当事者じゃないと笑えるけど」

鳳翔「とりあえず、あの事があったので自粛するという話ですよ」

提督「そうなのか? それはそれで少し寂しいな……」

鳳翔「でしたら、聞き納めにいかがですか?」

提督「ん、いいかもな」

鳳翔「日本酒の熱燗です。熱燗が何かは知っていますか?」

提督「燗は確かお酒の温度を上げることだろ。熱燗自体に意味はあるのか?」

鳳翔「熱燗は五十度くらいの温度のお酒のことです。五度間隔くらいで呼び方は変わるんですよ」

提督「へえ、例えば?」

鳳翔「五十五度では飛び切り燗、三十五度では人肌燗などというんです」

提督「あんまり呼び方とか考えたことなかったから、結構驚きだ」

鳳翔「では、熱燗ではないですが冷やはどれくらいの温度だと思いますか?」

提督「冷やっていうんだから五度とか」

鳳翔「実は違うんですよ。冷やは燗では常温のことなんです」

提督「そうなのか! はー、こういうのが日本語てやつなのかね」

鳳翔「そうですね。普段使っている日本語でも知らないことは多くあるんですよ」

提督「さすが、鎮守府内とはいえ店をやってるだけはあるな」

鳳翔「趣味みたいなものですし……それに、少しでも皆さんに喜んでいただけるようにと思っていたら、自然と覚えただけですよ」

提督「心構えが眩しい!」

鳳翔「普通ですよ」

提督「間宮も同じこと言いそうだし、料理人っていうのはこうなのかね。それじゃあ鳳翔、そろそろ片付けも済んだだろう」

鳳翔「待っていただかなくてもよかったんですよ?」

提督「一人で飲み始めるより、誰かと飲んだ方がおいしいだろ。嫌でなければ、隣に来てくれ」

鳳翔「その言い方はずるいですよ。……ですけど、断るつもりがなければ一緒かもしれませんね」

提督「じゃあ鳳翔、乾杯」

鳳翔「はい、乾杯です」

―執務室―

提督「久しぶりに落ち着いて飲めたような気がする」

提督「……いや、暴れまわるやつらばかりってわけではなかったはずだが、なんというか精神的に」

下2

ニム「最近みんな忙しそうだね」

提督「もう少しでバレンタインだからじゃないか」

ニム「ばらんたいん?」

提督「バレンタインな。ニムは初か」

ニム「うん! えっと、たしかお世話になっている人にお菓子をあげる日だっけ?」

提督「大体そんな感じだな」

ニム「だったら、提督の分も作ってあげるね! 期待して待っててよー!」

提督「あ……そ、そうか……」

ニム「どうかしたの?」

提督「いや、昨年のことを思い出してな……」

ニム「昨年? ニムは夏着任だから何があったのか知らないの」

提督「そういえばそっか。まあ、簡単に言えば爆発オチってことなんだが」

ニム「爆発?」

~~~~~~~~

ニム「面白そうなことになってたんだね!」

提督「あれ、結構大変だったんだぞ……百以上のチョコはもう食べたくない……」

ニム「あはは。うーん、それならニムは違うものの方がいい?」

提督「正直そっちの方がありがたいな。前の時もそうしてくれたやつもいたが、相当な量だったし……」

ニム「じゃあ、前の時に貰って一番うれしかったものは?」

提督「煮干し」

ニム「提督しぶーい! って、バレンタインに煮干し?」

提督「ネタでな。でも、甘いものの中に煮干しは実際かなりありがたかった」

ニム「提督も奇特だね」

提督「自分でもそう思う」

ニム「でも、流石に煮干しはニムとしてはいやかなー」

提督「そっか? ならクッキーとかでも嬉しいな。簡単に作れるし、負担にもなりにくい」

ニム「クッキーかー。ほかには?」

提督「他には……ドーナツとかプリンとかか。作れるなら和菓子とかでもうれしいな」

ニム「食べ物ばっかりだね」

提督「あんまり特別なものにすると、来年あもっと大変になりそうな気がするからな……いや、瑞雲くれたやつもいたけど」

ニム「瑞雲って、日向さんだよね。提督も大変そうだね」

提督「今年はバラバラに貰えるらしいから、流石にあんなことは起こらないとは思うがな」

ニム「……でも、提督って欲しくないわけじゃないんだよね。爆発までしたのに、あんまり本気で困っているわけじゃないし」

提督「そりゃそうだろ。なんだろうと、俺のために用意してくれたものを不遜に扱えるわけがないだろう。嬉しいのも事実だしな」

ニム「そっか。うんうん、それならニムのチョコにも期待しててね♪」

提督「ああ、こっちも今からでもお返しを考えておくよ」

~~~~~~~~

提督「って、思い返してみれば結局チョコかい」

提督「まあただの雑談だしそんなに深い意味はないと思うけど」

下2

―デパート―

秋津洲「今日は提督と高波と一緒に買い物に来たかも!」

提督「はい説明お疲れ。誰に言っているのかはわからないけど」

秋津洲「状況確認は大切かも」

提督「当事者の間で確認しても意味はないからな」

秋津洲「提督は細かいかも」

提督「何だこいつ……」

高波「浮かれてるの、かも……」

秋津洲「そ、そんなことはないかも! 誰かと一緒に出掛けることがちょっと嬉しいとか、そんなわけないかも!」

提督「隠す気ないだろ」

秋津洲「ち、違うかも!」

高波「えっと、何を買いに来たんですか……?」

提督「そうだった、実は鍋をするつもりなんだけど、ネギを買うのを忘れたんだ」

秋津洲「それだけかも?」

提督「それだけなんだけど、結構量が必要だからな。暇そうな二人を借り出したわけだけど」

秋津洲「暇そう!? ひどいかも!」

高波「でも、確かに何もしていなかったかも、です……」

提督「だろう。秋津洲だって、誘ったらほいほいついてきたくせに」

秋津洲「提督が困ってそうだからついてきただけかも!」

提督「はいはい。おっと、ここだな。えっと……ここにあるもの全部……はまずいから三分の二くらいかな」

高波「多くない、ですか……?」

提督「食堂でするつもりだから、多分大勢来そうな気がするから、多めにな」

秋津洲「あたしも参加するかも!」

提督「はいはい。来るもの拒まずだ。高波も姉妹を呼んで参加していいからな」

高波「は、はい!」

秋津洲「じゃあ、ネギをばばーっと……かごに入りきらないかも」

高波「カートに入らない分は、手で持ったほうがいいかも、です」

提督「ん、じゃあレジに進むか」

秋津洲「あたしが一番乗りかも!」シャー

高波「……あっ……」

提督「どうした?」

高波「もしかして、司令官が高波たちを誘ったのって、かもがネギを……」

提督「ふっふっふ……秋津洲には言わないでくれよ。言ったらあいつ怒るだろうし」

高波「は、はい……」

―執務室―

提督「ギャグ落ち。かもかも言ってるとやりたくなる」

提督「ネギが足りなかったのは本当だし、そのままからかってもよかったんだけど」

下2

168「司令官、失礼します……あれ、どうかした?」

提督「いや、なんだか肩の調子が悪いなと」

168「四十肩? 無茶ばかりするから……」

提督「それは俺のプライドに掛けて絶対ないといえる」

168「四十肩呼ばわりってそんなにいやなの」

提督「どうせちょっと凝ってるだけだ。適当にマッサージでもしとくさ」

168「ふーん……えっと、イムヤがやってあげようか?」

提督「何を」

168「だから、マッサージ」

提督「……不安」

168「なんでよ!」

提督「なんか方が壊されそうというか、そもそもそんなに上手じゃなさそうだし」

168「戦艦の人達じゃないんだから、そんなに力が出るわけ無いでしょ!」

提督「まあ、そうか。……それなら、頼もうかな」

168「もう、わざわざ茶化すんだから。じゃあ、触るわよ」

提督「んー、適当にやってくれ」

168「わかった」グリッ

提督「いった!! つよ、強すぎ!」

168「そ、そう?」

提督「もしかして、本当に壊すつもりじゃ無いよな……」

168「ちょ、ちょっと力加減を間違えただけだから! そんな警戒しないで」

提督「こ、今度こそ、よろしく頼むぞ?」

168「わかってる。えっと、このくらいかしら」グイッ

提督「あ、うーん、そんな感じかな」

168「そ、そう。じゃあ、このまま……」グイグイ

提督「うん、うん……結構いい……あ゛ーー」

168「変な声出さないでほしいのだけど」

提督「おっと、すまん」

168「……どのくらい凝ってるかわからないんだけど、やっぱり司令官の仕事って大変なの?」

提督「そうだなー……どっちかというと、凝っているのは皆といろいろはしゃいでいるからかも」

168「……」グリッ

提督「それやめて!」

168「司令官が真面目にやってないのが悪いんでしょ」

~~~~~~~~

提督「部下と親交を深めることも重要だろうに」

提督「まったく……あ、でも、少し肩も楽にはなったか。意外と上手だったかもしれん」

下2

―執務室前―

瑞鶴「……」ウロウロ

葛城「何をしているんですか?」

瑞鶴「! か、葛城じゃない。そっちこそ、何か用なの?」

葛城「私は……ほら、抽選で当たったじゃないですか、バレンタイン当日にチョコを渡す権利。使わないでいると、なんだか一部の人に睨まれそうな気がしましたし、提督にチョコをあげようかと思って用意してきたんですけど」

瑞鶴「わ、私もそうなのよ。抽選で当たった相手は提督さんも知っているみたいだし? なんだかそれであげないのって、逆に可哀そうな気もするから、せっかく作ったわけだから提督さんにプレゼントしようかなーって」

葛城「わ、私と同じですね」

瑞鶴「葛城だって」

葛城「……」

瑞鶴「……」

大鳳「二人共、凄い早口ね」

二人「「!?」」

大鳳「なんだか言い訳っぽく聞こえたけれど、とにかく二人共提督にあげに来たって事でいいのよね?」

瑞鶴「そ、そうね」

葛城「せっかくですしね、せっかく」

大鳳「……ではお先にどうぞ」

葛城「そうですよね! 瑞鶴先輩がお先でしたし!」

瑞鶴「い、いや私は後でもいいのよ! ほら、大鳳とか力入っているみたいだし、早くあげたいじゃない?」

大鳳「いえ、ここはやはり先に来ていた人を優先するべきでは」

葛城「そういうことであれば、やはり瑞鶴先輩こそ!」

瑞鶴「いやいやいや」

大鳳「いえいえいえ」

葛城「どうぞどうぞ」

龍驤「何しとるんや」

三人「「「!?」」」

龍驤「そな昔の芸人みたいな真似しとらんで、はよあげにいったらええやろ」

瑞鶴「わ、私は順番を譲ってるだけよ。善意よ善意」

葛城「先輩差し置いてあげに行く事なんて出来ませんから」

大鳳「順番ってのがありますので」

龍驤「遠慮し過ぎや! もっとガンガンいけや!」

瑞鶴「そ、そうだ、龍驤こそ先にどう? 私は後で渡しに行くから」

葛城「そうですね! やっぱり年功序列って大事ですから!」

大鳳「私達の事は気にしなくて良いのよ。ここにとどまってもしょうがないでしょ?」

龍驤「うちは抽選に外れたんやけど、なんや」

瑞鶴「ご、ごめん」

葛城「言われてみればチョコ持ってませんしね……」

大鳳「大事なのは気持ちだから……日付なんて、おまけみたいなものよ」

龍驤「一気に悲哀なムードになるのやめや!」

―執務室―

提督「部屋に丸聞こえなんだけど。いいから早く渡しに来ればいいのに」

提督「ていうか、抽選だったのか……てっきり話し合いかと。なんとなく渡さないっていうのは許されそうにないよなぁ、雰囲気的に」

下2

>>535の続き~

瑞鶴「じゃあじゃんけんで決めましょ!」

葛城「いいですよ!」

大鳳「三回勝負ね!」

龍驤「いつになったら部屋に入るんやろ……」

瑞鳳「? あの、入ってもいいんですか?」

龍驤「えーよ」

瑞鳳「はあ、では失礼します、提督」

ガチャ

提督「瑞鳳か。外の四人は?」

瑞鳳「いえ、私もよくわからなくて……」

提督「あ、そう。それで、瑞鳳の用は?」

瑞鳳「その、実は私も……えっと、チョコを作ってきたんです。瑞鳳のチョコ……食べる?」

提督「たべりゅうううううううううう!!」

瑞鳳「そうですか! では、瑞鳳チョコ、召し上がれ♪」

提督「ぱくっ……うまいぞおおおおおおおおおお!!」


三人「「「あっ!」」」

龍驤「あほやなぁ……」

―神風型の部屋―

提督「――ってことがあってさ」

神風「この時期はみんな大変なのね」

春風「司令官様、お茶です。お茶請けもどうぞ」

提督「ありがと。春風もそこ座れ」

春風「では、お言葉に甘えますね」

神風「いや、私達の部屋だし」

提督「ははは、気にするな」

神風「それをいうのもこっちだと思うんだけど」

朝風「のんびりね。作戦中だっていうのに」

神風「うちに来た艦娘はみんなそれ言っているらしいわね」

春風「神風お姉様も言ってましたしね」

神風「そりゃ言うでしょ」

朝風「そういえば、松風はどこにいったの」

提督「部屋に入るとき、入れ違いで遊びに行ったぞ」

朝風「……まず妹の規律からどうにかするべきね」

提督「上がこんなんだから、少々別にいいだろ」

朝風「司令官が言っていい言葉じゃないでしょ!」

春風「いいではないですか。松風さんも着任したばかり。司令官様も普段から頑張っているんですから」

神風「司令官はともかく、松風に関しては私も同意見かしら」

朝風「二人がそういうのでしたら……」

提督「ちょっと待って。俺はともかくって……あ、わかってるから、その目やめて」

神風「まったく……」

春風「その、司令官様、お茶は……どうですか?」

提督「お茶? 美味しいけど……ちょっと待て、少し考える」

神風「配合を変えたのよ。前にもう少し渋い方がいいって言ってたでしょ」

提督「せっかく当てようかと思ってたのに!」

春風「お口に合いましたか?」

提督「お茶に関しては他の追随を許さないな。文句なしだ」

春風「はい、ありがとうございます」

神風「嬉しそうな顔しちゃって……」

朝風「神風姉が飲んでるのって、司令官と同じものなの?」

神風「私が飲むには苦すぎるのよ。司令官、少し分けてみたら」

提督「いいぞ。ほれ、朝風」

朝風「あ、うん。……うえ、にが……」

―執務室―

提督「あれ配合割合教えてもらえないかな、本当に口に合っていたんだが……」

提督「……もしや、あれを使っておびき寄せようとしている……!?」

下2

―白露型の部屋―

提督「春雨が呼んでいると聞いたのだが」

春雨「はい! 来てくれて、ありがとうございます。その、自分から向かうのが恥ずかしくて……」

提督(何となく要件がよめた。うーむ、まるで乙女のようだ)

春雨「あの、チョコを作ってきました……食べて、くれますか」

提督「春雨からか。嬉しいな、ありがとう」

春雨「今年は気合入れて作ってみました。き、気に行って貰えたら嬉しいです……」

提督「……気合入れているのは、服装を見れば何となく伝わるんだが……なにその恰好」

春雨「これですか? めいど服というらしいですよ」

提督「それは知っている。昨年も着ていたような気がするが……気に入ったのか」

春雨「少し……や、やっぱりいつもの服の方が良いですか?」

提督「ずっとそのままでも良いくらいには似合ってると思うぞ」

春雨「そ、そうですか」

提督「メイド服ってどこから手に入れたんだ?」

春雨「明石さんの所のお店で売ってましたよ」

提督「なんでもそろってるなぁ……」

春雨「ここ数日はチョコレートが飛ぶように売れて嬉しそうでした」

提督「売り上げがそのまま懐が入るわけじゃないだろうに……」

春雨「ふふふ、商売している身としては、やっぱりうれしいんじゃないですか」

提督「かもな。さて、春雨からの手作りチョコ、食べてみるか」

春雨「はい! 特別なものは何もありませんけど……」

提督「何もないって、それは嘘だろ」

春雨「デコレーションに力は入れましたけど、間宮さんや鳳翔さん程じゃないですから……」

提督「春雨、昨年俺はなんて言ったっけ?」

春雨「司令官から……確か、大切なものは気持ちと教えられました」

提督「だったら、それが特別な物だ。一人一人、込める感情は別の物だからな」

春雨「司令官……」


白露「ねえねえ、あれってラブコメみたい!」

時雨「多分司令官は精々敬愛くらいにしか思ってないだろうけどね」

村雨「でも、胸がドキドキしちゃうわ~」

山風(どうして、時期が過ぎてから渡していいるんだろ……)

―執務室―

提督「うーむ、春雨のチョコはデコが半端ないな。チョコがおまけなんだけど」

提督「チョコ単体だと飽きるから、嬉しい心配りなんだけど」

下2

―お風呂―

舞風「ふんふふーん♪」

舞風(夢中でダンスをしてたらこんな時間になったけど、貸切みたいで楽しいかも)

ガラッ

舞風「あれ、誰か入ってきた? でも、この時間に入ってくる人なんて……」

提督「あっ」

舞風「えっ」

提督「……」

舞風「……ひゃ――」
提督「うわああああああああああああ!!??」

舞風「っ……て、提督の方が声を上げるの!?」

提督「セクハラで憲兵に捕まるのは嫌だ! 許してくれ!」ガバッ

舞風「見事な五体投地!? や、やめてください!」

提督「ここで許してくれなきゃ大変なことになる!」

舞風「お風呂場で提督を五体投地させているところを見られた方が、大変なことになるって!」

提督「いや、しかし……」

舞風「許すから!」

提督「あ、ああ……は、はっくしょい! さむ……」

舞風「……? そういえば髪が濡れているみたいだけど……」

提督「ちょっと夜戦に付き合ってたら海に落っこちてな」

舞風「冬の海にですか!? もうっ、だったら入ってください!」

提督「そんな恐れ多い!」

舞風「そういうのいいですから! 風邪ひかれる方が、困るし……」

提督「そ、そうか?」

舞風「うん……」

提督「……じゃあ、失礼させてもらおうかな」

~~~~~~~~

提督「あ~~~~温まる」

舞風「急に提督が入ってきたの、びっくりしたんだから」

提督「悪かった。でももう深夜だろ? こんな時間に入る奴も居ないだろうし、なんの札もかかってなかったから、誰も居ないものだと」

舞風「舞風も同じように思ってたけど……」

提督「むう、つまり以心伝心って事だな」

舞風「以心伝心してたら、逆に鉢合わせないと思うのですけど」

提督「ははは、それもそうか」

舞風「……」

提督「ふー……」

舞風「……ねえ、提督。舞風と一緒で、その、どきど」
提督「さーて、適当に温まったし上がるか」

舞風「えっ」

提督「いつまでも入ってたら舞風がゆっくりできないだろ。邪魔したな」ペタペタ

ガラッ

舞風「……もう! 提督ってばデリカシーない!」

―執務室―

提督「風呂から出た後、なんか悪態つかれた気がする」

提督「やはり誘われたからといって、一緒に入るべきでは無かったか……」

下2

―談話室―

提督「へー、二人共25日が進水日なのか」

古鷹「誕生年としては七年ほど私が早いんですけどね」

電「古鷹さんはお姉さんなのです」

提督「ほうほう、ならば早めの誕生日というのも良いかもしれんな」

古鷹「た、誕生日ですか? そこまでしていただかなくても……」

提督「古鷹は謙虚だな。電みたいにふてぶてしく喜んでいいんだぞ」

電「嘘を言うのは止めるのです」

提督「とにかく、久しぶりにケーキも作りたいし、そのおまけと思っておけばいい」

古鷹「はい……では、お言葉に甘えます」

電(司令官さんはチョコケーキも沢山貰っているはずなので、作りたいとか絶対ウソなのです)

古鷹(提督は気分屋ですからね)

~~~~~~~~

提督「というわけでさっそく作ってきたぞ!」

古鷹「チーズケーキですか。美味しそうに焼き上がってます」

電「なのです……」

提督「ついでに明石の所でプレゼントも買って来たぞ」

古鷹「プレゼントまでですか! なにからなにまで、すみません……」

電「電が言うのもですけど、誕生日を祝ってもらえることはしていませんよ?」

提督「ん? はは、子供が余計な事を気に掛けなくていいんだ」

電「い、電は子どもじゃないのです!」

提督「またまたー」

電「進水日から考えると、85歳ですよ」

提督「おばあちゃんじゃないか!」

古鷹「そうなると、私は92歳でしょうか」

提督「うわ、ろうそく一杯立てなきゃ!」

古鷹「艦娘として生まれてからでいいですよ。じゃないと、ケーキがろうそくで一杯になっちゃいますから」

電「そうしたほうが古鷹さんと一緒に祝いやすいのです」

提督「そう言われてみればそうか。……じゃあ、その前にプレゼントも渡しておくか」

古鷹「あ、その、本当にもらっていいんですか?」

提督「中身はシャンプーだから、貰ってくれないと悲しい思いをしながら自分で使わなければならなくなる」

古鷹「そ、そうですか。でも、せっかく選んで下さったのですから、大事に使わせて頂きますね」

電「ありがとう、です……」

提督「何か気にかかる事でも?」

電「他の子に羨ましがられそうって思っただけなのです」

提督「少々高いとはいえ、明石の店でも売ってるようなただのシャンプーだぞ? そんな羨ましがられるはずが無いだろう」

電「はぁ……」

古鷹「鈍感ですよ、提督」

提督「え、なんで」

―執務室―

提督「ああ、でもよく考えてみたら特定の子だけ誕生日を祝うって確かに不平等かも」

提督「いやしかし、全員分やると数日に一回誕生日があるとか、凄いことになりそうだからな……」

下2

―スケート場―

鈴谷「いいスケート日和よね!」

熊野「あまりはしゃぎ過ぎないように気を付けて下さいまし。鈴谷はそれでなくてもおっちょこちょいなんですから」

鈴谷「む、熊野だってスケート靴の履き方間違ってるじゃん」

熊野「ちょ、ちょっと忘れてただけですの!」ササッ

鈴谷「そうでもないってー。熊野ったら、おっちょこちょいなんだから」

熊野「もう! 先に行かさてもらいますわ!」

鈴谷「あっと、ごめんって」


提督「俺はどうしようかやっくん」

やっくん←提督の肩にのってる人形

提督「うんうん、そうだね。なら二回転ジャンプを見せてあげよう」

やっくん←提督の肩に(ry

提督「迷惑かかるって? もちろん、誰も居ない時に狙ってやるに決まってるじゃないか」

やっくん←提督の(ry

提督「それでもダメ? やっくんは優しいんだから」

鈴谷「待って、提督は何をやってるの」

提督「何って、ダブルデートしようと言ったのは鈴谷だろ?」

鈴谷「えっ、ダブルデートってそういう意味じゃ……あれ、そういう意味だっけ」

熊野「というより、そのやっくんってなんですの」

提督「ふっふっふ、俺の恋人(仮)のやっくんだ。2000円で自作した」

鈴谷「可愛くない上に地味に高いんですけど……」

熊野「ただの怪しい人に見えますわよ」

提督「俺もこんなことはしたくなかった……だが、恋人もいないからしょうがなかったんだ!」

熊野「(鈴谷、どうしてこのような狂気に至らせるような真似をしたんですの)」

鈴谷「(普通に誘うだけじゃ面白くないかなって)」

鈴谷「ああもう! 提督も鈴谷達の事を放っておかないで、一緒に滑るの!」

提督「だが、それではダブルデートには……」

鈴谷「鈴谷と熊野の恋人は提督で良いから! ほら、行くよ!」

提督「お、おう」

熊野(鈴谷ったら、とんでもないことを言って……後で気付いて顔を真っ赤にするパターンですわね)

鈴谷「ほら、二回転ジャンプを見せるんでしょ」

提督「いや、周りの人の邪魔になるからそういうのは止めておいた方が良いぞ」

鈴谷「さっきの会話は!?」

熊野「二人共、普通に滑りませんこと? そろそろ、周りの視線が……」

鈴谷「あ……うん」

提督「だな……」

―執務室―

提督「その後は普通に滑りましたっと。何か忘れているような……」

提督「……あっ、やっくんをスケート場に忘れた!」

下2

―高雄型の部屋―

提督「そういや、鳥海のメガネってどんな感じだ?」

鳥海「どんな、とは?」

提督「度がきついのか、はたまたファッション伊達メガネだったり」

鳥海「いえ、普通に度は入ってますよ。強いかどうかはわかりませんが」

摩耶「目が悪いと大変だよな。わざわざかけたり外したり」

鳥海「コンタクトでもないから、そうでもないわ」

提督「ちょっとかけさせてもらってもいい?」

鳥海「少しくらいなら構いませんが」

提督「では……おっ、おおお~~」

摩耶「何か面白いものでも見えたか?」

鳥海「眼鏡をかけたくらいで、見えるわけないでしょう」

提督「ああ、むしろ逆に見えない」

鳥海「視力にあってないとそうなりますから」

提督「どうだ、摩耶もかけてみるか?」

摩耶「あたしが? 別に興味ないからなあ」

提督「まあまあ、メガネ摩耶様も見てみたいんだ」

摩耶「むしろそれが目的じゃねーのか」

提督「ははは」

摩耶「まあ、いいけど。鳥海、借りてもいいのか?」

鳥海「ええ、これくらいで困るわけでもないし」

摩耶「んじゃあ、ほれ」

提督「おおお、メガネ摩耶とは新鮮だな!」

摩耶「新鮮って、そりゃわざわざメガネになることもないしな」

提督「そして、こうしてみると裸眼鳥海も新鮮」

鳥海「私も眼鏡をはずすことはないですからね」

提督「ほー、ふむふむ……」

摩耶「……そろそろ外していいか。目が痛くなってきたんだが」

鳥海「私も、そこまでじっくり見られると、さすがに……」

提督「いや待て、一枚写真に撮ってから!」

摩耶「ほら、鳥海。返す」

鳥海「ええ」

提督「あー! もったいない! もう少し目に焼き付けておきたかった……!」

摩耶「どんだけ見たかったんだよ!」

鳥海「そこまでするほどじゃないでしょうに……」

―執務室―

提督「いやー、メガネの着脱だけで印象が変わるもんだなぁ」

提督「意外と似合ってたし、眼鏡も悪くはないかも」

下2

提督が
脱衣所から持ってきた本人たち脱ぎたての
・水着(ろーちゃん)
・甲板ニーソ(鈴谷)
・マフラー(川内)
・スカート(天城改)
・カチューシャ(島風)
・メガネ(霧島)
を着てみて卯月の口調で吹雪に感想を聞いてみる

青葉「司令官! 節分の写真の現像を終えましたよ!」

提督「おおー、綺麗に撮れてるなぁ」

青葉「でも、今年も大変でしたね」

提督「確かにな……」


~ダイジェスト~

雪風「おにはーそとー」バララ

天津風「すみません神通さん、鬼役なんてやってもらって」

神通「いえ、これくらい大丈夫よ。貴女も投げて来ていいからね?」

天津風「えっと、では……」

時津風「ふふーん、いい兵器貰っちゃったよ」

天津風「ん? それって……」

時津風「マシンガンだって! じゃあ、行くよ~」

天津風「えっ、ちょっ、やめなさ――」

<ドドドド

~~~~~~~~

提督「今日はやけに豆に囲まれているな」

武蔵「ふっ、多くの豆に耐えた勲章のようなものだな」

長門「あのマシンガンをあれほど受けたら、流石に立っていられないと思うのだが、流石だな」

提督「……えっ、結局運用されてんの?」

武蔵「提督も受けてみるか? 悪くはないぞ」

提督「いえ、遠慮しとく……」


~~~~~~~~

グラーフ「なるほど、豆を年齢と同じ量を食べるというのも、この文化なのか」

提督「ああ、豆自体は投げた後も食べれる素敵仕様だぞ」

ビスマルク「落ちたものを食べるの?」

プリンツ「セツブーンの豆には川がついてるから、むいて食べたらいいんですよ」

ビスマルク「へー、考えているのね」

提督「ところで、お前ら何粒食べるんだ」

ビスマルク「……結構な量に、なるわね」

~~~~~~~~

龍鳳「潜水艦の子たちが全力で投げて来て大変なんです……」

加賀「私の方は同じ空母からよ。いったい誰が鬼役なんて……」

サラトガ「沙羅は良く分からない内に投げられました……」

提督「何で此処こんなに暗いんだ」

赤城「自分から鬼役になった訳じゃ無いのに、投げられているみたいですから。あむあむ」

提督「一度鬼役になると逃げにくいからなぁ。ところで、赤城は何を食べてるんだ?」

赤城「巻き寿司です」

提督「……今年の方角違う上に、それって黙って食べる物だろう」

赤城「!?」

~~~~~~~~

提督「……なんか、みんな楽しんでいるとは言い難い思い出なんだが」

青葉「大多数は笑顔ですよ? ただ、その裏にはいくつか影があるだけで」

提督「影があるイベントってなに」

青葉「では、青葉は新聞の製作作業があるので、失礼しますねー」

バタン

提督「思ったよりマシンガンの運用はされていないみたいだ」

提督「まあ、どの道艦娘が全力で投げた方が痛いから、そんなに変わらないのだが」

下2

―吹雪型の部屋―

吹雪「へー、アルマジロって絶対四つ子を生むんだ」

~~♪

吹雪「ん、あれ、どこからか音楽が……」

ガチャ

吹雪「えっ、ドアが勝手に!? こういうことをするのは……司令官ですね!」

シーン

吹雪「……あれ? 誰も居ないのかな」

パリィン

提督「……ぴょん!」グッ

吹雪「まさかの窓から!? えっ!?」

提督「はぁー、この着心地堪らないっぴょん……ぴょん、吹雪だぴょん」

吹雪「いえいえいえ! 色々突っ込みたいところが多すぎて……いや本当に多すぎるんですけど!?」

提督「喝!!」ドンッ

吹雪「ふひゃぁ!?」

提督「いかなるときは冷静さを欠いちゃいけないぴょん!」

吹雪「そんな恰好した人が現れて冷静な方が変ですよ!」

提督「そうか?」

吹雪「そうです!」

提督「なら……スカートくらいは脱ぐぴょん」

吹雪「おえええええええええ!」

提督「なにその反応! 声だけでも傷付くぴょん!」

吹雪「むしろ吐きたかったですよ! 中途半端に気分が悪くなって心を砕かれるくらいなら吐いた方がマシでした!」

提督「そうか?」

吹雪「そう……あ、ちょっと待ってください、あとちょっとで吐けそう……」

提督「吐くと胃液でのどを傷つけることになるぴょん、やめた方が良いよ」

吹雪「むしろ吐かせてください! あ――」

ドゴーン

―風呂場―

島風「あれー、ないなー」ゴソゴソ

霧島「めがねめがね……」

呂500「ろーちゃんの水着がないー」

鈴谷「私のソックスもないし、これは……」

川内「提督だね」

天城「ええっ、そんな簡単に断言できるものなんですか?」

川内「実はちょっと改造して、私がマフラーから一定距離離れると爆発するようにしたんだ」

島風「そういえば、どこかで爆発するような音が聞こえたかも!」

鈴谷「……それって逆に証拠も隠滅するんじゃ……ま、いっか」

霧島「いいって、私の眼鏡はスペアが二十個しかないんですよ!?」

呂500「ろーちゃんの水着の数より多いです……!」

―執務室―

提督「なんか、ここ数時間の記憶が無い」

提督「なんかまずい物でも食べたかな……」

下2

―神風型の部屋―

提督「帽子はファッション的にも大切だと思うんだ」

松風「どうしたんだい。海軍帽子にでも飽きた?」

提督「いや、これは飽きたっていうか、制服だし……そうじゃなくて、松風の帽子だ」

松風「僕の? ……あげないよ」

提督「貰おうとしているわけじゃないから」

松風「僕の帽子が目的でもないって、キミの目的がよくわからないな」

提督「たまには違う帽子でもどうかなってことだよ」

松風「姉貴に言われた……わけじゃなさそうだね」

提督「ふふん、朝風の言葉ごときで動くわけがないからな!」

松風「ごときは、さすがにひどい気がするけど」

提督「それで、どうだ、色々そろえてみたんだが」

松風「カンカン帽にチロリアンハット、ニット帽にカウボーイハットって、本当に色々揃えてきたね」

提督「松風が普段付けているその帽子が最も気に入っているのはわかっている。しかし、たまにはこういうのもいいだろう?」

松風「うーん……そう、だね。姉貴みたいに、脱げといわれているわけでもないからね」

提督「むしろ、別の帽子をかぶることによって、自分の気に入っている帽子の良さを再確認できるいい機会でもあるぞ」

松風「キミは口が上手いね。いいよ、試してみようか」

提督「よしきた!」

松風「個人的にはシルクハットが気になるかな」

提督「日常じゃまず見かけない帽子だしな。少し大きいかもしれないけど」

松風「おっと……確かにそうだね。でも、こういう帽子もあるんだね」

提督「次は王道の麦わら帽子はどうだ」

松風「この季節に麦わらはさすがに合ってないんじゃないかな」

提督「むしろそのアンバランスさがいい!」

松風「キミはなかなか趣味が濃いね」

提督「じゃあテンガロンハット!」

松風「カウボーイハットか……実は僕もちょっと気になってたんだよね」

提督「この形状がたまんないよな!」

松風「僕はそこまでカウボーイハットに思い入れはないけど、わかる気はするよ」

提督「二人で被って西部劇ごっことかしよーぜ!」

松風「いいね!」

提督「よーし、さっそく外へ出発!」

松風「おー!」

―執務室―

提督「あれ、俺なにしに部屋に行ったんだっけ……」

提督「うーん……覚えてないってことは、どうでもいいってことだな!」

下2

―夕雲型の部屋―

夕雲「藤波さんも着任するのよ。うふふ、楽しみだわ」

提督「夕雲型も揃ってきたな」

夕雲「そうね、そろそろお部屋も狭く感じてきた頃かしら」

提督「なんだ、部屋の分割を望みか」

夕雲「うーん……そこまではまだいいかしら」

提督「そか」

夕雲「でも、本当に多くなってきたら頼もうかしら。私と提督が同じ部屋、とかどうかしら?」

提督「ははは、それは面白そうだ。しかし、他の子にばれた途端に部屋が崩壊させられそうだから遠慮しとくよ」

夕雲「そう、残念ね」

巻雲「でも、新しく入ってくる子ってどんな子なんでしょ~」

夕雲「藤波さんのこと? そうねぇ……」

提督「俺みたいなんだと、馴染みやすいんじゃないか?」

夕雲「提督は唯一の存在でいてくださいな」

提督「む、そういわれると、やっぱり藤波は少し明るいくらいでとどめておいた方が良いか」

巻雲(夕雲姉さん、遠回しに嫌って言ってますね~)

夕雲「もうすぐ着任するというのに提督は藤波さんの事知らないんですか?」

提督「特殊な事でも無ければまず知らないな。その辺りも全部秘書官に任せてるし……」

夕雲「はぁ、そうですか」

提督「え、なんか失望したような声出すのやめてくれない」

夕雲「いえ、そんなことはないですよ」

提督「えー……じゃあ、他の姉妹の話をしよう」

夕雲「他の姉妹……着任していない妹だと、玉波さんとかどうでしょう」

提督「玉波というと、主に護衛任務と勤めていた」

夕雲「そうですね。艦娘になってどうかは分からないですが、戦闘に不慣れだと思うんです」

提督「あー、なるほど。巻雲みたいなちょっとドジだったり」

巻雲「ま、巻雲はドジじゃないですよ!」

夕雲「潜水艦などは特に苦手かもしれません」

提督「潜水艦嫌い多いよな。しょうがないかもしれないが」

巻雲「巻雲は無視ですかぁ」

夕雲「ごめんなさい、巻雲さん。そういうつもりじゃないのよ。みかん食べます?」

巻雲「食べます~」

提督「結論からすると、夕雲型は夕雲がいる限りどんな子が来ても平気そうだな」

―執務室―

提督「全員が艦娘として着任する訳じゃ無いと思うが、こういうのもたまにはいいかもな」

提督「でも、想像だけなら口からミサイル出すとか突飛な想像した方が良かったかも……」

下2

榛名「報告は以上です!」

提督「ああ。それより、報告の前にお風呂へいってよかったんだぞ」

榛名「榛名は大丈夫ですよ?」

提督「いや、長丁場の遠征だったんだ。傷は無くとも心の疲れは溜まっているはずだ」

榛名「提督……ありがとうございます。榛名、お風呂に入ってきますね」

提督「うむ」

バタン

提督「……へっへっへ、パンパカパーン! 榛名はどこまで大丈夫なのかギリギリを見極める回ー!」

青葉「撮影は、この青葉にお任せください!」

提督「最初はお風呂に後から突入しようかと考えたんだが」

青葉「絶対にやめた方が良いと思います」

提督「だよな。憲兵怖いもん」

青葉(怖いのは外より中なんですけどね)

提督「というわけで、悪戯方面で挑戦することにしました! 悪戯の監修は、すでに風呂場で待機しているうーちゃんだ!」

青葉「さて、そろそろ青葉も行きますね」

提督「俺も準備をしてこないと」

―風呂場―

榛名「……あら?」

卯月「どーしたぴょん?」

榛名「その、榛名の下着が……」

卯月「榛名さんの? うーん、さっき誰かが掃除しに入ったみたいだから、落し物として持って行かれたのかもしれないぴょん」

榛名「そ、そう……」

卯月(ぷーっぷくぷー! 実は上下ともうーちゃんが持ってるぴょーん! その短いスカートで部屋に戻るまで恥ずかしい思いをするぴょん! ……あ、うーちゃんは榛名さんのことは嫌いじゃないぴょん。司令官に言われたからやってるだけぴょん)

榛名「……あの、部屋まで取ってきてもらうって、できない?」

卯月「申し訳ないけど、うーちゃんはこれからしれーかんに呼ばれてるぴょん。少しくらいなら良いかもしれないけど……」

榛名「そ、そうなの! だったら、そっちを優先してください」

卯月「わかったぴょん。じゃあね!」

榛名「……ど、どうしましょう」

―廊下―

青葉『こちら青葉。榛名さんはそのまま部屋へ最短距離で向かっている模様』

提督「オーケー。廊下でバッタリ会うようにセット済みだ。こちらは任せておけ」

青葉『幸運を祈ります!』

提督「さて……おーっと、人の気配がしないし曲がり角を曲がっちゃうぞー」

榛名「えっ、ていと――」

ドン

提督「あいたたた、おや、榛名じゃないかー」

榛名「す、すみません提督、急いでいて……えっと……」モジモジ

提督「ニヤリ。うん、榛名くん。尻もちをついた上官に対して、手も差し伸べないのかね?」

榛名「えっ、は、はいっ! ……っ! す、すみません、ちょっと、今は」

提督(くくく、その位置だと抑えなければ見られそうで怖いのだろう。まあ、俺の位置管理はばっちりだから、抑えなくても見られることはないんだが)

榛名「……い、いえ、どうぞ、提督……」オズオズ

提督「おっ」

榛名「ど、どうかしましたか!?」

提督「いや、なんでもない。ちょっと驚いただけだ」

提督(おそらく、俺が盗んだ場合くらいまでは榛名の中ではセーフかな。ま、実験はこれくらいにしておこうか)

榛名「何に驚いたんですか!?」

提督「いや榛名には関係の無いことだあら心配するな。それじゃ、失礼して――」

島風「この乗り物はやーい!」ビュン

夕張「それ凄い風圧が出来るから、なるべく軽いものが多い場所は通らないようにしてねー!」ビュン

ブワッ

榛名「……」

提督「……」

<ブンッ パリーン

―執務室―

提督「まさかあのまま窓を突き破って投げ飛ばされるとは。受け身を取らなければ即死だった」

提督「夕張は謎の乗り物を開発して、実験で島風を乗せていたらしいが……建物の中で走らせるなよ……」

下2

―デパート―

提督「雛人形なんて、秘書官や明石に頼めば仕入れてくれるぞ」

時雨「それが、カタログの中にみんなが気に入るものがなかったらしいんだ」

提督「雛人形なんてどれも同じじゃないか?」

時雨「全然違うよ」

提督「お、おう」

時雨「全体として質はもちろん、表情の作り、衣装の模様、ひな壇にも多くの工夫がなされているんだよ」

提督「そういえばシルバニアも微妙に違いがあったりしたっけ……」

時雨「お内裏様とお雛様はもちろん、三人官女や五人囃子などの供揃いだって重要だ」

提督「わかった、わかったから、そろそろ抑えておこう、な?」

時雨「あ……ほ、本に書いてあったんだ」

提督「うんうん。しっかり調べてきたんだな」

時雨「うぅ……」

提督「さて、恥ずかしがってないでそろそろ選ぼうか。正直、雛人形はよくわからないんだ」

時雨「それはそれで意外だね」

提督「流石に女の子のお祭りについてはな……で、このお店はどうだ?」

時雨「……うん、いいね。ここなら気に入ってくれそうなものもありそうだ」

提督(衣装の違いくらいしかわからん……)

提督「えっと、どんなのを買うつもりなんだ?」

時雨「実際に買う前にみんなに相談をするつもりだけど、前提として七段飾りだよ」

提督「七段飾りって……こんな大きいのをか」

時雨「うん」

提督「あー、確かに白露型ならこういうのじゃないと駄目か。白露からして大きそうなのがすきそうだし」

時雨「そうだね」

提督「でも、そうなると……時雨が今日来た理由がわからないな。姉妹で来ればよかったんじゃないか?」

時雨「みんなとはまた明日来る予定だよ」

提督「そうなのか? ……え、じゃあなんで今日わざわざ来たんだ」

時雨「えっと、それは……」

提督「……やっぱり、一番楽しみにしてるのって、もしかして」

時雨「だ、黙っててね? みんなに知られると、特に夕立とかが……」

提督「はは、時雨は可愛いな」

時雨「と、突然なんだい?」

提督「なんでもない。じゃあ、今日は二人が納得できるものを探そうか。個人的には、俺でもわかる衣装の仕立て方を重視したいんだが」

時雨「僕としては素体込みの造形かな。衣装に隠れるといっても、見逃しちゃいけないと思うんだ」

提督「なるほど、ならこっちの――」

―執務室―

提督「あの後真面目に選んだ。雛人形の良し悪しはよくわからんが……」

提督「どうせまた皆で行ったときに選びなおすだろうし、問題はないか」

下2

―朝潮型の部屋―

提督「お前の身体が忘れられないんだ、朝潮」

朝潮「え、ええっ!?」

提督「今日の夜も抱かせてくれないか?」

朝潮「えっ、そのっ、ど、どういう意味ですか!?」

提督「どういうって、そのままだが……」

満潮「何言ってるのよ!!」

荒潮「さすがにおいたは駄目よ?」

提督「おいた?」

朝潮「あわわわわわ」

大潮「ねえねえ、大潮にはよくわからないんだけど」

霞「え? そうねぇ……最近寒いから、温かくして寝たいって事じゃない」

大潮「なるほど!」

霰「さすが……」

朝雲「なんでこれだけで分かるのよ……まあ、なんとなくそんな気はしてたけど」

朝潮「つ、つまり、前の時のように、一緒に寝たいということですか?」

提督「むしろ、それ以外に何か意味があるのか」

朝潮「い、いえ! そのご命令、承りました!」

提督「なにか様子が変だが……また夜に潜り込みに来るからな」

朝潮「あわわ……」

満潮「嫌なら嫌ってバシッと言わなきゃ!」

朝潮「い、嫌ではないんですけど……」

大潮「大潮が変わっても良いよ?」

朝潮「だ、大丈夫です!」

荒潮「霞は落ち着いてるけど、内心穏やかじゃないんじゃないの~?」

霞「あいつが寝るって言った時は大体本当に寝るだけだから、朝潮が嫌じゃないなら特に関わらないわ」

荒潮「あら、クールね」

~夜~

朝潮(ドキドキ……)

満潮(ふん、皆が良くても、私は変な事しないように見張ってるんだから!)

ガチャ

朝潮(来ました!)

提督「……」ソロー ゴソゴソ

朝潮(し、司令官が、私の中に入ってきます……!)

満潮(ふ、布団よね、布団に入ってるだけよね!?)

朝潮(ふわっ! し、司令官が、私を包むように……こ、これじゃあ動けませんよぉ)

満潮(あいつの背中大きすぎてよく見えないじゃない! 蹴り倒す……と、朝潮の方にも衝撃がいっちゃうし……!)

朝潮「し、司令官――」

荒潮「もう寝ちゃってるわね~」

提督「zzz……」

朝潮「……あ、ほ、本当……」

荒潮「ちょーっと期待してたんだけど、少しだけ残念ね~。じゃあ、私も寝ようかしら」

満潮「た、狸寝入りじゃないでしょうね!」ガバッ

荒潮「ちゃんと見ればわかるわよ」

満潮「…………う、本当に寝てる」

朝潮「……寝ます」

荒潮「おやすみなさい」

満潮「おやすみ。はぁ……なんだかやりきれないわ」

―執務室―

提督「なぜか朝起きたら、よくわからない微妙な表情をされたんだが」

提督「個人的には凄く寝やすいんだけど、やっぱり邪魔に思われたか」

下2

―売店―

明石「お客さんお客さん、夜に燃え上がる例のセーターはいかがかい?」

提督「なんだその怪しい客寄せは」

明石「いつも同じだと味気ないかと思いまして」

提督「そもそも客寄せ自体しないだろ」

明石「そうなんですけどねー。あ、でもセーターを仕入れたのは本当ですよ」

提督「ふーん。どんなだ?」

明石「実はですね――」


―提督私室―

瑞鶴「私達に用事ってなあに、提督さん」

提督「面白そうな服を買ったから、プレゼントしようかと」

大鳳「え……」

龍驤「嫌な予感が……」

瑞鳳「うん……」

葛城「先輩たち、どうしたんですか?」

瑞鶴「葛城、きっと貴女も今にわかるわ」

葛城「?」

提督「ホルターネックのセーター、ベアバックが特徴だ!」

瑞鶴「こんなものプレゼントしないでほしいんだけど!?」

龍驤「キミぃ……」

提督「? 何か問題でもあったか」

龍驤「問題しかないわボケぇ!」

瑞鶴「提督さんは爆撃をくらいたいみたいね!」

提督「えええ……ちょ、ちょっとこの二人何で荒ぶってるんだ?」

瑞鳳「さあ……」

大鳳「ここに来るまでは何もありませんでしたが」

瑞鶴「何もって……ちょっと、葛城も何か言ってやりなさいよ!」

葛城「はい! 提督、これ本当にもらっても良いの?」

提督「そりゃプレゼントするために買ったんだから」

葛城「ありがと! さっそく着てみて良い?」

提督「もちろん」

龍驤「ちょいまちちょいまち! 何普通に着ようとしとるんや!」

葛城「えっ、何か問題が?」

龍驤「問題ちゅーか……ず、瑞鶴、先輩なんやろ。バシッといったれ!」

瑞鶴「私に任せるの!? ほ、ほら、こんなの着たら、その……丸見えになるじゃない?」

葛城「? よく分からないんですけど……こうやって着るんですよね。何か見えますか?」

龍驤「上から着おった……!」

瑞鶴「えぇ……」

瑞鳳「そうですよね! 私もそうかと思ってたんです!」

葛城「私は普段の格好だと寒いからさ、実はちょっと嬉しいのよね」

瑞鳳「私も着てみますね!」

瑞鶴「……はぁ」

大鳳「あの、ああやって着る物なの?」

龍驤「! や、やっぱ変やろ」

大鳳「変というか……てっきり、通気性もよさそうなので、寒い日のトレーニング用かと……」

龍驤「なあ、うちらが変なんか?」

瑞鶴「心が穢れているような気がしてくるわね……」

―執務室―

提督「微妙に喜んでもらえなかったような……いや、ああいうセーターは上から着る物だよな」

提督「瑞鶴と龍驤は多分なにかと勘違いしていたんだろう」

下2

―談話室―

提督「何を集まってるんだ?」

時津風「しれーじゃん。しれーこそ、何か用?」

提督「なかなか珍しい組み合わせだし、混ぜて貰おうと思って。こいつと」

多摩「ふしゃー! 多摩は部屋でゆっくりするにゃ! なんだか、場違いな感じもするし!」

時雨「場違いだなんて、そんなことはないけど」

不知火「艦種のことでしょうか。司令官も混ざるのであれば、気にすることはないかと」

多摩「そんな事はないにゃ、こう、多摩の中にある野生が離れるべきと囁いているにゃ」

提督「動物みたいだな」

多摩「猫じゃないにゃ!」

提督「言ってないけど」

夕立「提督さん、提督さんもいるっぽい?」

時雨「あ、実は今日お菓子を買いすぎちゃってね。みんなにおすそ分けをしているところなんだよ」

雪風「こんなにお菓子があるんですよ!」

提督「なるほど。じゃあ、一つ貰おうかな」

夕立「はい、提督さん!」

提督「ああ。ほれ、あーん」

夕立「あむっ! むぐむぐ……美味しいっぽい!」

時津風「って、しれーがあげるんだ」

提督「いや、何となくやりたくなって。ほら、初月」

初月「何だい」

提督「ほいっ」ポイ

初月「おっと……あむっ」

雪風「凄いです! 口の中に吸い寄せられるみたいでした!」

初月「おとしたら……ん……どうするつもりなんだい?」

提督「初月ならやってくれると信じていた」

不知火「どういう信頼ですか」

多摩「なんにゃこれ……」

提督「多摩もやってみるか?」

多摩「やらないにゃ!」

提督「えー、ここにいる皆はなんだかんだやってくれそうなのに、多摩はしてくれないのか?」

不知火「いえ、不知火はしませんが」

多摩「不知火は最終的にやるけど、多摩はしないにゃ!」

不知火「……」

時津風「なんで視線そらしたの?」

不知火「言い切られると、ちょっと自信が……」

時雨「そこはしっかりした方が良いと思うけど」

提督「……つまり、さっきの多摩の野生の勘は、この集まりが餌を相手から受け取るかどうかって事を見ぬいてたんだな」

初月「僕としてはその餌って言い方は止めてほしいんだけど……」

―執務室―

提督「なんか、動物っぽい感じは似てると思うんだが」

提督「話す分には全然仲良いんだけど。ムードメーカーも多いし当然かもだが」

下2

提督「あまつん、ちょっと八重歯触らせて」

天津風「嫌」

提督「あまつん厳しいー」

天津風「触らせるって人の方が珍しいと思うわ。それと、あまつんってなによ」

提督「ふん、なら雷に頼むから」

天津風「あの子なら触らせそうだけど……はあ、まあいいわ」

提督「やったぜ。じゃあ、目をつぶって口を開けてくれるか」

天津風「え、なにそれ。すっごく嫌な予感がするんだけど……」

提督「まあまあ」

天津風「……わ、わかったわ」

提督(じゃあ、この魚肉ソーセージを口にセットして)

天津風(……? な、なによこの太いの)

提督「今天津風の口にあるものを噛んでみて」

天津風「あむっ……」

提督「うーん……何か違うな」

天津風「……ん。それで、何でこんな事させたのよ」

提督「もうちょっとそれっぽそうな奴を探してくる」

天津風「な、なんなのよ、もう」

―球磨型の部屋―

提督「かくかくしかじか」

球磨「それで伝わる人は居ないクマ」

提督「このソーセージをかじってみてほしいって事だ」

球磨「分かりやすいクマ」

多摩「さっぱりにゃぁ……」

提督「ほら、多摩とか好きだろ。どうだ」

多摩「そりゃ、にゃあ……」

球磨「貰えるのなら損はないクマ。やってあげたらどうクマ」

多摩「……一回だけにゃ。はぐっ」

提督「うーん……違うな。なんか、猫っぽい」

球磨「球磨もそう思うクマ」

多摩「猫じゃないにゃ!」

―妙高型の部屋―

提督「足柄とか意外としっかりしてるよな」

足柄「あら、突然何かしら」

提督「実はさっきから八重歯持ちの子にソーセージを噛んでもらって、吸血鬼っぽくなるかってのを試しているんだが」

足柄「上手くいかないって? そりゃ、八重歯をつき立てなきゃ、そんな風にならないわよ」

提督「はっ、確かに!」

足柄「折角だから、私がやってみましょうか?」

提督「本当か! よろしく頼む」

足柄「じゃあ、いくわよ……カプッ」

提督「お、おおお! そんな感じだ!」

足柄「ふふん、痕も完璧に付けたわ」

提督「いやー、意外とこういうのみないから新鮮だわ」

足柄「結局、どうしてこれをさせたかったの?」

提督「八重歯っ子ってみるけど、それを活かした芸を見ないと思って」

足柄「芸呼ばわりされてもちょっと微妙な気分ね……」

―執務室―

提督「ちゃんとした八重歯でもないと突き立てるのが難しそうだな」

提督「まあ、満足したししばらくはいいや」

下2

提督「今日はスライディングの練習をしたいと思う」

鹿島「スライディングですか。それは何か重要な意味が?」

提督「スライディングが上手くなるぞ」

鹿島「……必要、ですかね?」

提督「馬鹿者! 必要か不必要かなんて関係ない! 時としてそれが必要になる場面が出るかもしれないという事実だけで価値があるのだ!」

鹿島「……! そうですね。経験は人生の糧になる、といいますしね!」

提督「芸は身を救うという言葉もある。スライディングを覚えたことで明日笑っているのは自分かもしれない」

鹿島「そうと決まれば、早速練習しましょう」

提督「ああ!」

―トレーニング場―

提督「スライディングは素早く体重移動をしなければ、速度も遅い上、相手の不意をつくことも難しくなる。それに行った後に安定もしなくなる」

鹿島「そういわれると、なかなか難しいですね……」

提督「だからこそ、完璧なスライディングは実践においても有用に活用することができる」

鹿島「例えばどういう場面で使えるんでしょうか」

提督「スポーツではないのだから、それこそ敵が目の前にいる時だな。そして相手の懐に瞬間的に入り込む場合」

鹿島「入り込む場合ですか?」

提督「一歩足を踏み込むより、足全体を使った移動の方が長いだろう。確実に相手の間合いを混乱させることができる」

鹿島「なるほど……」

提督「そのまま足をとってもいいし、体勢を戻して攻撃に転じてもいい。とはいえ、一発芸ではあるが」

鹿島「でも、そう聞くとやはり習得が必須に感じてきました。提督さん、ご指導お願いいたします」

提督「よし、まずは体勢を崩さず、素早くスライディングに移る練習だ」

鹿島「はい。……はっ!」ズザァ

提督「なるほど、動きは才能を感じさせるな。しかし、まだ実戦の仕様には至らんな」

鹿島「体勢を崩さない、というのがなかなか難しいですね……」

提督「あえて崩すことで別の動きにつなげる方法もある。しかし、まずは基礎からだ」

鹿島「はい、完璧にスライディングができるように頑張ってみます」

提督「よーし、俺も練習だ。ふっ……!」ズザァ

鹿島「さすが提督さんです。私も、できるように頑張りますね」

提督「なに、鹿島ならきっとすぐにできるはずだ」

鹿島「うふふ、そういっていただけるのはなんだか嬉しいです」


陸奥(二人でスライディングしている姿っていうのは、こう……そう、これがシュールっていうのね)

―執務室―

提督「今考えてみると、海の上でスライディングなんて使わないだろ……」

提督「ま、まあ草野球とかでも転用できるから、いつかそういう日が来たら役に立つだろう」

下2

―食堂―

提督「後日のごたごたも終わって、今日がようやく慰労会だ!」

霞「あんたの仕事が滞ってたからでしょ、このクズ」

提督「真面目なトーンで言うのはやめて」

日向「今回の作戦は私にも実りあるものだった。礼を言う」

提督「あれ、今回日向は哨戒程度だったと思うんだが……」

日向「特別な瑞雲が手に入ったのだ。これは私にとって最も最高に近い結果といえる」

提督「あ、はい」

日向「しかし、できれば自分自身の戦果によって手に入れたかったところだ」

大和「今回の作戦では速力の問題で出番が回ってきませんでしたからね」

日向「くっ……こうなったら、次の作戦を考えて高速にしてもらうしかないか……!」

提督「妖精さんでも無理だぞ」

アイオワ「オペレーションといえば、今回はミーがMVPよね!」

ビスマルク「一番敵を沈めたのは私よ!」

リットリオ「私だって、旗艦として頑張りました!」

提督「残念だが、MVPはもう決めてある」

アイオワ「残念? つまりミーたちではないということ?」

提督「今回のMVPは潜水艦の子たちだ」

ビスマルク「戦闘に出ていなかったじゃないの。どうしてなのか、説明をいただけるかしら」

提督「物資を運んでたのはほとんどあいつらだからだ。輸送ルートの確保までしてくれたし」

リットリオ「そういえば、きちんと物資の供給はできてましたね」

提督「つーか、ビスマルクは駆逐艦ばかりを狙うのをやめろ。スコア稼ぎか」

ビスマルク「か、確実に倒してるんだからいいじゃない!」

アイオワ「それで、MVPの子たちはどこに?」

提督「そういえばいないな。秘書官、どこに行ったか知らないか?」

霞「潜水艦の子たちならオリョールでバカンス中よ」

提督「バカンス!?」

霞「MVPだって伝えたら、休暇がほしいといわれたからあげたわ」

提督「ええ……いや、いいんだけど……慰労会にMVPがいないって」

ビスマルク「つまり、この場における暫定MVPを決めるべきね!」

リットリオ「あ、それなら今度こそ私がMVPですよ!」

アイオワ「スコア稼ぎのビスマルクじゃなくて、敵の旗艦を倒したミーこそがMVPね!」

ビスマルク「スコア稼ぎじゃないわよ!」

提督「ここで決めてもMVPではないからな。せいぜい二位どまりだから」


―オリョール海域―

26「提督には言わなくていいの?」

58「別に言わなくても誰も困らないでち」

13「それでいいの……?」

19「全然問題ないの」

168「むしろ、言ったことで『俺も行く!』みたいなこと言われる方が困るわよね」

14「そうそう、姉貴ももうちょっと楽になってもいいんだよ」

8(今回の子、馴染むの早すぎ)

401(一応出しておいてよかったのかも)

―執務室―

提督「別にバカンスにいくのはいいんだけど、一言ぐらいあってもさあ……」

提督「……よく見たら申請の書類もあったわ」

下2

―庭―

提督「多分今年最後の雪だし遊ぼうぜ!」

雷「もう、司令官ってばいきなり走らないで」

提督「ははは、ついテンションが上がってな」

暁「雪くらいではしゃぐなんて、司令官もまだまだ子供ね」

響「暁、雪兎だよ」

暁「かわいい! ねえ響、暁にも作り方教えて……はっ」

提督「暁もまだまだ子供だな」

暁「ひ、卑怯よ!」

電「みんな子供なのです」

提督「かまくら作ったぞ!」

雷「多分みんなが入れるくらいの大きさになったと思うんだけど」

響「スパシーバ。よくできているね」

暁「な、中に入ってもいい?」

提督「んん? 暁は子供じゃないんだから入らなくてもいいよなぁ」

暁「れ、レディーでもかまくらに入りたいときくらいあるわ!」

雷「それってどんな時なのかしら」

響「暁の中のレディーはちょっと特殊だからね」

暁「う、うるさい!」

提督「まあ、さっき雷が言ったように全員は入れるくらいの大きさにしたから、入るのに問題はない」

暁「じゃ、じゃあ入ってもいいのね?」

提督「しかし! 素直に入るだけじゃ面白くない。ここは勝負で優先順位を決めようじゃないか」

暁「勝負……乗ったわ!」

提督「勝負内容は雪合戦! 全員でバトルロワイヤルだ! ぶふぁ!」バスッ

響「勝負はもう始まってるよ、司令官」

雷「何の合図もなかったのに躊躇なく投げて……響、司令官の仇をうつんだから!」

響「ふふふ、私に勝てるかな」

暁「わ、私だって負けないんだから!」

提督「ていうか流石に今のはノーカンだ! ええい、もう手加減しないからな!」

<ワーワーギャーギャー

電「……電はかまくらさんの中でゆっくりしておくのです」

―執務室―

提督「気が付けば二体二になってた。電はかまくらでゆっくりしていたし」

提督「しかし言うだけあって響は強かった。暁という足手まといを背負いながらあそこまで戦うなんて」

下2

―伊号潜水艦の部屋―

提督「ちわー、誰か居る?」

13「今みなさんは、お出かけしていますが……」

提督「ヒトミだけか。いや、これはこれでタイミングが良かったかもな」

13「良かった……?」

提督「だってヒトミが鎮守府に着任してからまともに話したことはなかっただろ」

13「作戦中でしたから……仕方ないと思いますよ……?」

提督「終わってからも特に何もアプローチをかけなかったんだから、それは言い訳に過ぎない」

13「そ、そうですか……」

提督「だから、今日は付きっきりで会話をしようじゃないか」

13「その……はい」

提督「というわけで目は口ほどにものを言うという諺から、お互いを見ることで知り合っていきたいと思う」

13「会話は……?」

提督「目で話せるようになれれば、会話できるだろう」

13(目で話すって、そういうことじゃない気が……)

提督「……」ジー

13「そ、そんなに見詰めないで、下さい……は、恥ずかしいです……」

提督「恥ずかしがってないでヒトミも俺を見るんだ! ハリーハリー!」

13「そんなじっと見つめられて……見つめ返すなんて、むり……です」

提督「そんな事じゃ先輩たちには勝てないぞ!」

13「え、みんなやってるんですか……?」

提督「イムヤやゴーヤとはすでに視線だけで会話をできるようになってるぞ。ヒトミも負けていられないからな!」

13「そ、そう言われると……は、はい……!」

提督「よーし、良い感じだ。まるでヒトミの瞳に吸い込まれそうだ。心にヒットミーってな。あはは」

13「……」

提督「そんな気まずそうに目を背けるならスルーしていいから。何か反応しようとして表情を歪めなくていいから」

13「イヨちゃんなら……多分良い返しをしたのに……すみません」

提督「だから無視して。こっちだってちょっとした出来心なんだから」

13「いえ、提督の瞳から、辛い気持ちが伝わりますから……」

提督「目で心を読み取れるようになったのはいいけど、本当に気を遣わなくて良いからな?」

13「で、では、続けますか?」

提督「うん……」


14(姉貴と提督が面白いことになってる! 録画して後でみんなに回しておこっと)

―執務室―

提督「一日でお互いのことが分かり合えた気がするが、あくまで気がするだけかもしれない」

提督「ていうか、視線だけで会話を交わすのは無理だな。言葉は必要だわ。うん」

下2

「陸奥、加賀、多摩、長良、那珂、摩耶、朧、響、若葉、酒匂、大淀
共通するものはな~んだ?」
この問を大井(唯一名前が母音のみ)と考えてみる

提督「若葉、散歩に行かないか?」

若葉「散歩か。そうだな、たまにはいいかもしれない」

提督「それじゃ、早速出かけようか」

若葉「今からか? それはなんとも、急だな」

提督「善は急げというだろう」

若葉「善……か。そうだな、そうしようか」


―公園―

提督「うーん、まだまだ寒いな」

若葉「だが、じきにそろそろ暖かくなる」

提督「春になるもんな。この辺りは桜が咲くから、人も増えるだろうし」

若葉「閑散としているのも、味があるように感じるよ」

提督「若葉は感性があるな」

若葉「これを感性があると断定していいものか」

提督「あくまで俺が思っただけだから。ほら、新芽が見えるぞ」

若葉「本当だ。ふふ、やはりこういう季節も悪くない」

提督「冬の終わりは同時に春の息吹も感じることができて、いい季節だと思うよ」

若葉「提督の場合、春になったら季節の始まりが感じることができて、いい季節だと思いそうだ」

提督「まさにその通り」

若葉「提督は素直だな」

提督「わざわざ隠すことでもない。だが、春の訪れを感じるのは自然だけじゃないぞ」

若葉「どういうことだ?」

提督「若葉の格好だってそうだろう。コートを羽織ったりしていたのに、今はそこまで防寒をしていないじゃないか」

若葉「突然連れ出されたからというのもあるのだが。しかし、必要ないと感じたのは確かだ」

提督「人だって季節に合わせて変わっていく。うちはコスプレする奴も多いしな」

若葉「なるほど。季節の変わり目だからこそ、提督もこの若葉を連れだしたというわけか」

提督「ま、そういうことだな」

若葉「なら、悪くないという言葉は撤回しよう」

提督「撤回?」

若葉「良いものだ。季節というのは」

提督「ふっ、同感だ」

若葉「さて、そろそろお腹もすいてきたな。どこかで食事でもとらないか」

提督「そうだな。この辺りならラーメン屋とかが……」

ビュウウウッ

提督「おっと、すごい風。これが春一番……お」

若葉「…………みたか」

提督「ラブコメのプロローグにありそうだよな。色を見てまさに春一番ってな、あはは――」

―執務室―

提督「せっかく笑い飛ばそうと思ったのにグーだぞ、グー」

提督「いや、自分でもデリカシーのない言葉だって思ったけど」

下2

>>659でスコア稼ぎ呼ばわりされて以来ビス子が病んだ

プリンツ「お姉様が死んでしまいます!」
長門「無理に戦艦、空母を墜とそうとして陣形が崩れて被害が増している」
明石「むちゃくちゃな装備改修を強要してくる」

お前のせいだろ!なんとかしろ、と提督に批判殺到

提督「書類整理が終わらない……」

雷「司令官、困っているみたいね!」

提督「い、雷! そうだ、悪いんだが、手伝ってくれないだろうか」

雷「もちろんよ。私に任せて!」

提督「さすが頼りになるぅ!」

雷「もーっと私を頼ってもいいんだからね!」

提督「じゃあ、雷はこちらの書類をファイリングしておいてくれ」

雷「わかったわ!」

~~~~~~~~

提督「ふう、雷のおかげで思ったより早く終わったよ」

雷「司令官のお手伝いができて、私もうれしいわ」

提督「いや、本当に助かった。ありがとう」

雷「えへへ、ねえ、もっとすることはないのかしら?」

提督「そういや、そろそろご飯の時間だな。じゃあ、お言葉に甘えて……」

雷「食事の用意ね! 私に任せて!」

提督「じゃあ、任せるよ」

雷「美味しいご飯を作ってくるからね!」

提督「つ、作るんだ」

雷「私の手料理じゃいやかしら……?」

提督「いや、むしろ嬉しいぞ!」

雷「じゃあ、司令官が満足するものを必ず作ってあげるわ!」

―提督私室―

提督「なんやかんや、いろいろ頼んでしまって申し訳ないな」

雷「話し相手や掃除、耳掃除くらいなんでもないわ。司令官が喜んでくれるだけでうれしいの」

提督「そうか?」

雷「ええ。むしろまだまだ頼ってくれてもいいのよ」

提督「こ、ここまでしてまだ頼ってほしいと思うのか……」

提督(ここまでくると、どこで断られるのか気になってくるな……)

提督「じゃ、じゃあこの後風呂に入るんだけど、背中を洗ってもらっても……」

雷「ええ、もちろんいいわ!」

提督「……そのあと、今日は寒いらしいから。湯たんぽ代わりに添い寝してくれないかなー」

雷「添い寝……」

提督「さ、さすがに無理か! うん、無理にとは言わないからな」

雷「無理じゃないわ。暁たちにも言っておかないとって思っただけなの」

提督「えぇ……じゃあ、明日早いから起こしてくれたりとか?」

雷「何時に起こせばいいのかしら。あまり早すぎると、私も起きれるか心配なんだけど……」

提督(頼みごとに限界がない!?)

―執務室―

提督「本当に朝まで起こしてもらった……ついでに朝食まで……」

提督「雷いれば他に何もいらない気が……はっ、だ、ダメだ。堕落していく……!」

下2

秋雲「提督って女性に興味はないの?」

提督「入渠するなら入って来ていいぞ」

秋雲「いきなり人が壊れてるみたいなこと言わないで!?」

提督「はぁ……お前達は部下なんだから、大切に扱わない方がおかしいんだ」

秋雲「嘘だね。だって、提督は夜な夜な倉庫で……」

提督「……どこのネタだ」

秋雲「きのう書いた新刊。憲兵攻め提督受けの三冊目だよ」

提督「聞きたくなかったんだけど!!?」

秋雲「あはは、冗談だって」

提督(俺をネタにしているのは冗談じゃないんだろうな……)

秋雲「でも、ここまで女の子に言わせて、何も無しってわけにはいかないよね」

提督「……で、何をしてほしいんだ」

秋雲「さすが提督。話しがわっかるー!」

提督(たぶん最後に説教くらうな……)

―庭―

提督「よお、舞風」

舞風「あ、提督。どうかしましたか?」

提督「どうかしたというか、秋雲から聞いてな」

舞風「そうですか。秋雲はおせっかいだなぁ……」

提督(さて、どうやら舞風はダンスのことで悩んでいることがあるらしい)

提督「困ったことがあるなら話し相手になるぞ。手伝えることがあるなら、手伝うつもりだ」

舞風「……その、実は一人では踊りにくいところがあって……でも、みんなに頼むのはちょっと引けちゃうなって思ってて」

提督「なんだ、そういうことなら俺が相手になろう」

舞風「え、本当ですか。……って、こんなふうに言っちゃえば、付き合ってくれると思ってたんですけどね」

提督「そのくらいのことなら誰も嫌がらないと思うから、次からは皆にも遠慮なく言って大丈夫だからな」

舞風「提督がそういうのなら、もっとみんなも誘いますね」

提督(しかし、俺に課せられた指令は舞風を元気づける訳では無く、舞風のスカートをめくる事。秋雲がそうしなければBL本を本当に三冊作るって言ってたからな!)

~~~~~~~~

舞風「はいっ、わん、つー」

提督「はっ、はっ……」

舞風「やっぱり、提督の身のこなしっていいですね。この際ですからダンサーになったりとかどう?」

提督「お世辞か。舞風が凄すぎて自分なんて霞んでしまうよ」

舞風「お世辞のつもりじゃないんですけどね」

提督(しかし、踊っていればチャンスがあると思っていたが、意外とスカートめくりってのは難易度が高いな。悪ガキってすごい)

舞風「そろそろ疲れちゃった?」

提督「え? あ、ああ、ずっと踊り続けだったしな」

舞風「じゃあ、そろそろ休憩しましょうか。そこに腰を下ろして……」

提督(はっ、座られると捲りにくくなる……! ならば、無理矢理でも今しかない!)バッ

舞風「え、提督――」

提督「……スパッツ?」

舞風「踊る時、見えちゃいますし……その、それを確認するために?」

提督「ああ、うん」

舞風「視界に入ってたのかなぁ……でも、こういうのは他の人には絶対やめてくださいね」

提督「はい」

―執務室―

提督「よく考えたら当然だった」

提督「そりゃ、秋雲だって本気でスカート捲って修羅場にしようとか考えてないはずだし。……だよな?」

下2

提督「……なんとかしろ、かぁ」

プリンツ「あんな姿のお姉様を見るのは辛いです……」

長門「実際に被害が出ている以上、対策は練らなければならないだろう」

提督「いずれ落ち着くとは思うんだがな。だが、被害が出ている以上は動かざるを得ないか」

プリンツ「お願いします、アトミラール」

提督「うむ。ああ、あと明石」

明石「なんですか?」

提督「その装備改修、喜んでやったらしいな。あとで始末書な」

明石「わ、私は言われただけですしー」

提督「今秘書官がお前の店に向かってるらしいから、逃げられないぞ」

明石「殺生な!」

―ビスマルク級の部屋―

ビスマルク「あら、アトミラールじゃない。入っていいわよ」

提督「お邪魔しまーす。……なんか、思ったより普通だな」

ビスマルク「何がかしら」

提督「いや、オイゲンや長門が言ってくるくらいだから、真っ暗な部屋でなにかを呟いていたりするものかと」

ビスマルク「それは精神が病みすぎじゃないかしら」

提督「しかし、スコア稼ぎといわれてから、陣形を崩すほどに無茶な特攻をしたりするそうじゃないか」

ビスマルク「うぐ……」

提督「平時の作戦でそうそう危険なことにはならないと思うが、あんまり無理をされるともしもということがある」

ビスマルク「……わ、わかってるわよ」

提督「オイゲンだって心配してた。グラーフだって言葉には出さなかったが、不安そうにしていたぞ」

ビスマルク「それはレアね。ちょっと今から見てくるわ」

提督「おい」

ビスマルク「……はぁ。一応、本当にわかっているのよ。このままじゃみんなに迷惑をかけることも」

提督「頭でわかっていても気持ちが追い付かないパターンか。理由を聞いてもいいか?」

ビスマルク「他の国の子にね、最近差が付けられているように思うの」

提督「他の国……リットリオやアイオワ、ウォースパイトか? ああ、大和たちも含めるかもしれんが」

ビスマルク「あの二人よりは私の方が早くに着任した。でも、彼女らの方が今や多く戦果を挙げている」

提督(そうだっけ。やべ、気にしたことなかった)

ビスマルク「オイゲンやグラーフは自分のライバルが出てきても先輩として自分の存在を確立させているわ」

提督(だって運用違うしなぁ……)

ビスマルク「でも、私にはそれがない。それが、私として……ビスマルク級のネームシップとして悔しいのよ……!」

提督(しかし、思ったより真面目に悩んでたんだなぁ……雷撃できる戦艦としては唯一なんだし、自分がとってかわられるわけないのに)

提督「ふむ、ビスマルクが言いたいことはわかった」

ビスマルク「ごめんなさい。変なことを聞かせちゃったわね……」

提督「上官として、そういった悩み事は大歓迎だ。そうだな……じゃあ、高速戦艦部隊で演習させるか」

ビスマルク「……え?」

提督「いわゆる自分の価値に悩んでるんだろ。だったら、思いっきり競ってこい」

ビスマルク「自分で言うのもなんだけど、そういう競うのが駄目だからこうして来たんじゃないかしら?」

提督「相手は大和型二隻、赤城と加賀。あとは暇そうな潜水艦もいれて……最近書類仕事ばかりでストレスたまってそうな秘書官を旗艦に据えるか」

ビスマルク「いえちょっと待って。それって勝てなくないかしら」

提督「うるさい。ついでに見世物にしてやろう。明日の一面は決まりだな」

ビスマルク「わかったわ! アトミラールは私に恥をかかせたいだけね!」

提督「ははは。大丈夫、お互いの連携さえうまくいけば引き分けくらいには持っていけるさ」

ビスマルク「勝てるとは言わないのね!」

―執務室―

提督「見事に負けてた。そりゃ相手が相手なうえ、前回の作戦で特に出番がなくてフラストレーションがたまっててそうだったし」

提督「まあ、役割が全員同じなわけじゃないのに勘違いして暴走するビスマルクが悪い」

下2

―睦月型の部屋―

提督「体の柔らかさを確認するならリンボーダンスだ!」

文月「りんぼーだんすってなに?」

提督「リンボーダンスっていうのは、こう……棒を用意して、これより下を潜り抜ける競技だ」

文月「ふみぃ……?」

提督「つまり、こうやって仰向けになってくぐ……いたっ!」ゴン

文月「だ、だいじょうぶ?」

弥生「仰向きで反れば、そうなりますよ……」

提督「え、うるさくしてごめん」

弥生「別に怒ってないです」

提督「だが、どういうものかわかっただろう」

文月「でも、あぶなくないかなぁ?」

提督「自分の限界をちゃんと見極めて挑戦すればそこまでではないぞ。そうだ、ちょっと勝負してみるか」

文月「しれーかんと? 不安だけど、やってみるね~」

提督「じゃあ、まずはこれくらいの高さでやってみようか」ガシャン

弥生「どこで……そのセットを……?」

提督「じゃ、邪魔なら外でやるけど」

弥生「怒ってませんから……」

文月「あたしと同じ高さだよ?」

提督「文月の身長と同じ高さでも、俺からすればかなり低いからな」

文月「司令官のためだね」

提督「そういうことだな」

弥生(さっき司令官が試しにやった時より、低くないですか……?)

提督「よーし、じゃあ文月はそこのラジカセから音楽を流してくれ」

文月「わかった~」

弥生「音楽まで、あるんですね……」

提督「え、うるさい? す、すまん」

弥生「怒って……ないのを知って、わざわざ言ってます……よね」

文月「押したよ!」

提督「よし、みてろよ。……よっ、ほっ……」

ガシャァン

提督「しっぱ……ぐあっ」ズルッ ゴンッ

文月「し、しれーかんだいじょうぶ?」

弥生(こ、これ笑ってもいいんでしょうか……)

提督「……文月、運動神経と体の柔らかさ、そしてリンボーダンスのうまさはそれぞれ直結しないのかな」

文月「うーんと、あたしにはよくわかんないかも……」

―執務室―

提督「その後、文月は胸くらいまでは行けた模様。いや、俺だってその気になればもうちょっと……」

提督「気が向いたら練習しておこ」

下2

―庭―

提督「神風って薙刀が似合いそうだよな」

神風「よなって言われても、私にはよくわからないんだけど」

提督「え、薙刀知らない? 槍や銃にとって代わられたものの、いつしか武芸として発展することによりその存在を確立させていった武器のことだけど」

神風「そういうのは知ってるわよ。聞き返したのは、私が似合ってるってところ」

提督「いや、絶対似合うって。服装や、神風自身のしっかりしたところとか、すごくあってると思う」

神風「そ、そうかしら」

提督「ほら、試しにもって見ないか?」

神風「試すだけ……どこからその薙刀を取り出したの」

提督「ここに来た時点で話を振ることは確定していたからな」

神風「本当に準備がいいんだから」

提督「当然だ。伊達に提督をしているわけじゃない」

神風「……ど、どうかしら?」

提督「おー、おー。いい感じ。ちょっと舞踏っぽく振ってみて」

神風「舞踏っぽくなんて、無茶な頼みをして……笑わないでよ?」

提督「神風ならできるって信じてる!」

神風「もう……じゃあ――」

提督「……」

提督(あれ、思ったよりすごい綺麗。おかしいな、できないものかと無茶ぶりをしたつもりなのに……いや、ステップ踏むのは得意そうだから、おかしいことではないのか)

神風「――♪ ~~♪」シュッ サッ

提督(歌い始めた!? 鼻歌だけども、自分でリズム刻んでる……ここまで出来ると、舞風の存在が……い、いや、彼女とはダンスの種類も違うから大丈夫だろう)

神風「――……ふう。どうかしら」

提督「正直笑うつもりだったけど予想以上の出来に困惑」

神風「すっごい失礼ね。でも、そこまで驚いたのならある意味嬉しいかも」

提督「ちょっと俺もやってみたくなった」

神風「いいけど……刀と薙刀は違うわよ」

提督「わかってるつもりだ」

神風「わかってるって、ああもう、さっそく違う!」

提督「え?」

神風「持ち方もだけど、構え方が全く違うわよ。持ち手はこう、右足じゃなくて左足が前!」

提督「お、おう」

神風「だから、構えは……もう、手を借りるわね! こうやって構えるの!」

提督「こ、こうか?」

神風「ええ、うん……そうね、ちょっと甘いところもあるけど、そんな感じよ」

提督「本当に神風は薙刀を知らないのか? なんかしっかり理解しているように感じるが」

神風「知らないとは言ってないわ。こうして艦娘となってから触ったことあるし」

提督「……自分でも気に入っただろ」

神風「べ、別にいいじゃない。私としては司令官が薙刀を知らないことの方が驚きね」

提督「女性の武道だし、そうおかしなことでもないだろ。そうだ、この後刀と薙刀で試合してみないか」

神風「あら、面白そうね。剣術三倍段って言葉を教えてあげる」

―執務室―

提督「リーチの差を埋めるの厳しい……いや、神風の扱いが上手いのかもしれないが」

提督「薙刀自体が特殊だからなぁ。女性中心ってこともあって動きを知らん」

下2

―山―

提督「山菜採りだー!」

秋津洲「たっくさん見つけるかも!」

瑞穂「気を付けてくださいね。山は危険ですから」

提督「子供のころ山の野生児と呼ばれた俺に隙は無い!」

秋津洲「秋津洲だって負けないかも!」

瑞穂「あの、本当に気を付けてくださいね? 毒草とか、見分けられない場合は私が見ますから」

秋津洲「ふふーん! そんなの大丈夫かも」

提督「だな。山岳の熊と呼ばれた俺に資格はない」

瑞穂(なぜでしょう、不安しか積もりません)

~~~~~~~~

瑞穂「これはアケビね。先ほどふきのとうとワラビもありましたし、まだまだありそう」

提督「ふっふっふ、大量だ!」

瑞穂「スギナとたんぽぽが大量に……いたどりもあったんですか」

提督「実はこの日までずっと観察をしていたからな」

瑞穂「なるほど。それ以外がないところが、なんというか……ですけど」

秋津洲「たくさん採ってきたかも!」

瑞穂「秋津洲さんは……毒草ばかりですね」

秋津洲「毒草!?」

提督「これトリカブトとドクゼリじゃないか。というか、セリが一つもなくてドクゼリばかりってよく集めたな」

秋津洲「集めたつもりはないかも!」

瑞穂「それにしても、本当に毒草ばかりで……あら、これって」

秋津洲「ピンク色で可愛いかも」

提督「なんだっけそれ、見たことあるような……」

瑞穂「……ドクウツギじゃないですか! 時期も違う上に、存在自体がそれなりに珍しいのによく見つけましたね」

秋津洲「それってすごいかも?」

瑞穂「すごい、といいますか……」

提督「毒草に愛された女だな。もう山菜採りしない方がいいぞ」

秋津洲「ひどいかも!」

瑞穂「いえ、本気でやめておいた方がいいです」

秋津洲「そ、そう?」

瑞穂「はい」

秋津洲「や、やめておきます」

提督(流石に命に関わることだし、瑞穂も怖くなるか)

―執務室―

提督「今日の夕ご飯は山菜採りで採ったやつもたくさん出てきた」

提督「スギナとたんぽぽばっかり採らなきゃよかったと後悔もしてるが……あんまり美味しくない……」

下2

霞「今日は仕事をしなくてもいいわよ」

提督「なんだと……」

霞「どうせお返しの量も多いでしょ。別に一日くらい問題ないし、そもそも普段からあんまり真面目にしてないし」

提督「そういわれると真面目にしたくなってきたなぁ! ほら、仕事をよこせ!」

霞「じゃあこれ」ドサッ

提督「……謀ったな!」

霞「同じ方法でかかるあんたが悪い」

提督「だが男に二言はない。うおおおお、やってやるぞおおおお!!」

霞(なんというか、ちょろいわね)

~~~~~~~~

霞「もう一通り終わったの? なら、もういいわよ」

提督「いや、今度は資材の運用について詰めよう」

霞「別にそっちは今日やらなくても問題ないけど」

提督「できるときにしておこう。それに、そっちの方が秘書官の負担も軽くなるだろう」

霞「そう、だけど……はぁ、今日は珍しい日ね。わかったわ、詰めましょうか」

提督「あと作戦についての見直し、全体の運用の確認。各人の休暇についても一通りまとめるぞ」

霞「……本当に、珍しいわ」

~~~~~~~~

霞「――ふう、まさかあれだけあったのに一日で終わらせるなんて」

提督「仕事の終わりと同時に一日の終了か……ま、ギリギリか」

霞「何か約束でもあったのかしら」

提督「いや、どうせ普通にお返ししたところで秘書官は『まじめに仕事をしてくれるのが一番のお返し』とか言って怒りそうだから……ほら」

霞「はあ? これって……」

提督「バレンタインデーのお返し。ショートケーキだ」

霞「これ、いつ作ったの? 完成からそう時間がたってないように見えるけど……」

提督「休憩時間にちゃちゃっと。小分けに休憩とっただろう?」

霞「ふーん。わざわざ面倒なことをするなんて、馬鹿ね」

提督「馬鹿だと! 失礼な!」

霞「それに時間は考えてほしいところね。日付が変わる直前に渡されても困るだけよ」

提督「くっ、秘書官のデレはここまでしても見れないというのか!」

霞「普段を考えなさい。……でも、その…………がと」

提督「ん、何だって?」

霞「……あ、ありがとう、って言ったのよ! ふん!」

提督「これがあの有名なツンデレってやつか!」

霞「う、うるさいわね!」

提督「いやぁ、これが見れただけで今日頑張った甲斐があった」

霞「ふん。じゃあ、部屋に戻らせてもらうから。お疲れ」

バタン

提督「……」コソー カチャ


霞「……ふふっ、おいし」


提督「……」パタン

提督「よし、勝った! なんとなく勝った気分!」

提督「というか、歩きながら食べてたけど、まさかホールごといただく気なのだろうか。朝潮たちには別に渡してるけどさ」

下2

電「お花見に行くのです!」

提督「馬鹿な、あの電が俺を誘うだと……」

暁「荷物持ちにはちょうどいいからよ!」

提督「なるほど、納得」

雷「何を言ってるのよ。まだ桜が小さいから、少ない人数でやった方が良いって響が言ったからでしょ」

響「暁の子守もいるからね」

暁「暁は子どもじゃないんだから!」

雷「でも桜を見て一番にはしゃいでたのって……」

暁「わー! わー!」

提督「なるほど、了解。すぐに準備するよ」

―庭―

提督「本当だ。まだ小さいけれど、桜がなってるな。まだまだ早いだろうに」

暁「電がみつけたのよ!」

電「お庭を散歩していたら、たまたま見かけて……」

提督「いや、庭にもある事は知っていたが、もう咲こうとしている桜があるなんてな」

響「だから、少し早いお花見だね。どうかな」

提督「むしろ呼んでくれてうれしいよ。こうして咲いていく桜を見られることなんて滅多にないからな」

雷「それなら呼んだかいがあったわね。ね、電」

電「司令官さんですから」

提督「俺だからって、確かに風情を感じる物は好きだがな」

雷「ほら、シートを敷くわよ。お弁当だって作って来たんだから」

提督「本当にお花見の準備をしてきたんだな」

響「お花見、というには少し早いけどね」

暁「それがふぜいって奴よね! 暁にもわかるわ」

提督「少し早いお花見に風情は感じないが……」

暁「あ、暁は感じるのよ!」

雷「ほら、喧嘩してないで、暁は端っこを持って」

暁「わかったわ」

提督「素直なのか素直じゃないのか。そういえば、結局俺を呼んだのは誰なんだ?」

響「最初に名前を挙げたのは……」

電「……? なんなのです?」

提督「ははは、そりゃ面白い冗談だ」

電「どうして電をみて笑うのですか」

雷「敷けたわよ! どうぞ、司令官」

提督「ありがとう。そういえば、お弁当は誰が作ったんだ?」

暁「暁たち全員で作ったのよ!」

響「頑張った」

提督「へー、ちょっと中身を見ても良いか?」

雷「いいわよ」

提督「じゃあ、お言葉に甘えて……おお」

暁「どうかしら!」

提督「……個性的だな。こう、一目見ただけで誰が作ったか分かるような……」

電「ちょっと可愛らしすぎでしょうか……」

響「司令官も来るというから、ガッツリとしたものを入れてみたんだ」

雷「私はバランスを考えたわ!」

提督「そうか、うん、頑張りが見えて良いと思うぞ、うん」

暁「どうして暁の方を見て言うのかしら?」

―執務室―

提督「本当に準備バッチリだった。あれで断ってたらどうなってたんだろうか……」

提督「次は満開になった時かな。その頃には他の桜も芽吹き始めているだろう」

↓2

―談話室―

提督「龍田っていい声しているよな」

龍田「あらあら、突然なんですか~」

提督「素直に思っただけだ。それで物は相談なんだが」ゴソゴソ

龍田「それは……」

提督「だだーん! 日本昔話~(桃太郎編)!」

龍田「さっきの話からすると……読んでほしい、かしら?」

提督「大正解!」

龍田「恥はないのでしょうか」

提督「ないな!」

龍田(この前久しぶりに真面目だったらしいから、その時頭でもおかしくなったのかしら)

提督「……っと、まあ、流石に俺だけの頼みというわけではない」

龍田「?」

提督「おーい! 許可貰ったぞー!」

雪風「流石しれぇです!」

時津風「しれーはプライドがあるように見えないよね」

天津風「正直無茶だと思ったんだけど……」

龍田「あら、あらあら、もしかしてそういうことかしら~」

提督「俺が代わりにってことだな」

龍田「うふふ、直接言ってくれてよかったのよ」

時津風「しれーは龍田さんの気に障るようなことをしたら禁固百年の刑になるって言ってたから」

龍田「提督~?」

提督「ひゅーひゅー、知らないなぁ」

龍田「口笛吹けていないわよ~」

提督「ほ、ほら、みんな待ってるし、読み聞かせしよう! な!」

龍田「それなら、後で、ね?」

提督(死んだ)

~~~~~~~~

龍田「――とさ。めでたし、めでたし」

雪風「さすが龍田さんです!」

初風「すごく聞きやすかったです。お疲れ様でした」

時津風「これなら誰にでもお勧めできそうだね」

提督「わかる。なんか先生とかできそう」

時津風「幼稚園の? 似合ってるかも」

龍田「……」

提督「ひっ、こっち見て睨んでる!」

時津風「そういえば後でって言われてたね」

天津風「ひどくならないうちに自分から行った方がいいんじゃない」

提督「い、行くわけないだろ! 逃げさせてもらうぜ!」ダッ

初風「そそっかしいんだから」

雪風「……? 龍田さん、風邪ですか?」

龍田「な、なんでもないのよ~」

―執務室―

提督「な、なぜか追っかけてこなかったな。逆に怖い」

提督「しばらくそっとしておこう。雉も鳴かずば撃たれまい……もう鳴いてる気もするけど」

下2

―提督私室―

提督「第十一回マリオカート対決!」

ローマ『そんなにしているんですか……』

リットリオ『この日のために練習してきましたよ!』

ポーラ『お酒飲みながらでも良いですか~?』

ザラ『あっ、飲み過ぎには気を付けてよ!』

リベッチオ『みんなでゲームなんて、楽しみ!』

アクィラ『ふふーん、グラーフに連戦連勝した実力見せてあげますよっ』

提督「口振りから体験者多数か。今日はいい勝負が出来そうだ」

リットリオ『ふふふ、でも噂は聞いてますよ~。なんでも、ブランクがあるそうで』

提督「一年前の話を真に受けるのか? 次の発表がされてウォームアップは完璧だ」

アクィラ『アクィラが一番ですから!』

~ダイジェスト~

提督「もはやレインボーロードも庭に近い」

ローマ『こ、ここ難しくないですか?』

リットリオ『ゲームしない人は駄目だね。私にとっても庭みたいなものだし!』

ザラ『あれ、でも二位は私ですよ? 一位は提督みたいですし……』

リベッチオ『リベが三位ー。うふふ、みんな強いね』

ポーラ『あれ~? ポーラが四位です~』

提督「ビッグマウス集団か……」

ローマ『私はビッグマウスじゃないですけど』



アクィラ『よしよし、今度は一位です』

リットリオ『提督もまだまだですね』

提督「集中狙いして来たくせに……サンダー保持して、空中で落とすとか汚いぞ」

リットリオ『勝つためには手段を選びません!』

ローマ『おかげで最下位ですけどね』

リットリオ『うぐ……』

提督「飲酒運転の割にはちゃんと走れてるな……さりげなくねじれまで」

ポーラ『こんなの飲酒の内に入りませんよ~』

ザラ『でも、順位は芳しくないわね。どうして?』

ポーラ『ゴクゴク……ぷはっ。美味しいです~』

提督「あ、直進してって落ちた」

ザラ『お酒飲むときにコントローラーから手を離しているのが問題みたいね……』



アクィラ『今のアクィラは狩人ですよ! 飢えた狼ですよ! 三連赤甲羅をくらえー!』

提督「どっちだよ……」

ザラ『目の前は知ってるのはリベみたいだけど』

リベッチオ『バナナあるから平気よ!』

アクィラ『むきゅ……』

リットリオ『あっ! なんで後ろに投げ……あ、ああー!』

ローマ『しかも全部当たってる……爆弾も置いておきますね』

リットリオ『あぁー!!』

提督「可哀想に……」

提督「というわけで、優勝は俺。二位は同着でザラとリベッチオ。ポーラ、アキラ、ローマと続く」

リベッチオ『やった! ザラさんと一緒で二番!』

ローマ『もう少しだったんだけど……もう少し、練習してくれば良かったわ』

リットリオ『むー、アクィラが邪魔ばかりするから……』

アクィラ『そっちだって、目の前にバナナを置いていったりしたじゃないですかー』

ザラ『ま、まあまあ、落ち着いて……』

提督「うーん、この醜い争い。まあ、とりあえず終わりだから、後片付けな」

リベッチオ『うん!』

アクィラ『あの場面で――』
リットリオ『最後のコーナーで――』

ブチッ

提督「……中途半端に協定組むと見事に友情破壊ゲーだな……」

提督「多分明日にはケロッとしてると思うけど」

↓2

霞「秘書艦をつけるわ」

提督「お前に? まぁ、仕事大変だもんな」

霞「クズ司令官のよ!」

提督「えぇ!? 秘書艦っていうとあれだろ、時報やお世話したり、第一艦隊旗艦のあれ」

霞「そうね」

提督「で、秘書官は鎮守府の運営や書類の整理……うん? まさか秘書官って……」

霞「今更だけど、秘書艦はほぼ誰のポジションじゃないわよ。たまにお世話する人がいるみたいだけど」

提督「!? 新事実発覚……」

霞「あんたね……」

提督「で、秘書艦って誰? 吹雪?」

霞「いいえ、大鳳よ。吹雪は……今更やらないんじゃないかしら」

提督「大鳳か。なんで大鳳なんだ」

霞「くじよ」

提督「適当!?」

霞「あと詳しいことは本人に聞きなさい」

提督「秘書官! 秘書官ー!」

バタン

提督「いや詳しいこととか言われても……」

大鳳「呼びましたか?」

提督「へあっ!? い、いつのまに」

大鳳「すれ違うように入ってきましたけど。その、これからよろしくお願いします!」

提督「あ、ああ、お願いする」

大鳳「あの、聞きたいことがあるのでは?」

提督「そうだな。えっと、任期はいつまでだ?」

大鳳「一年と聞いています」

提督「一年!? え、長くない?」

大鳳「実際のところ、様子も見ながらと言ってたから……もっと短くなるかもしれませんね」

提督「短く、なぁ。そういえば秘書官はどうなるんだ?」

大鳳「霞さんであればこのまま秘書官を続けるみたい。仕事を任せるわけではないですから」

提督「そういえばポジションとしては違ったな……」

大鳳「では、早速ですけどそろそろお食事の時間です! 用意しましょうか?」

提督「んー……いつも通り食堂で食べよう。大鳳には今後仕事の補佐を頼む」

大鳳「はい!」

~~~~~~~~

提督「あれは間違いなく、仕事中に逃げ出さないための監視だな。とりあえず、それ以外の時間は自由でいいとしたが」

提督「というより、本当に一年続けるのだろうか……」

下2

―夕雲型の部屋―

夕雲「ほら、巻雲さん、片づけますよ」

巻雲「こたつの出番が終わるには早いですよー!」

夕雲「もう、困った人ですね」

提督「いやぁ、俺も早いと思うんだ」

巻雲「司令官様もこう言ってますし!」

夕雲「提督まで。しょうがないですね……」

長波「あんまり我が儘を聞いてたら片づける物も片付けられないぞ」

朝霜「でも少し早いんじゃねえ? 別にこたつを片づける必要はまだないと思うんだけどな」

提督「ほら、意見も割れてるし、まだ片づけなくて良いということで」

長波「いや、提督の部屋じゃねーし」

風雲「そもそも、どうして急に片づけるって話になったの?」

夕雲「春物を出している内に丁度良いスペースが出来たの」

提督「あー、押入れのスペースとかできたら埋めたくなるの分かる」

巻雲「司令官様、裏切りましたね!」

提督「裏切ったつもりは無いぞ。しかし、どこも衣替えか」

藤波「春かー。藤波は初めてだから、少し楽しみかも。……くしゅん」

沖波「風邪? 季節の変わり目は風邪が引きやすいらしいから」

清霜「はっ、春の風邪って聞いた事あるわ! 顔中が植物に犯されて、一日中涙と鼻水が止まらなくてすっごく苦しいらしいわ!」

藤波「えっ、ほ、本当!?」

提督「まあ、嘘じゃあ……ないかもな」

夕雲「それは花粉症が酷い人の場合ですよ。今の所艦娘となった人がそのような症状になった人が居ないので大丈夫だと思います」

藤波「そ、そう。ちょっとびっくりした……」

提督「しかし、前考えたときは風景とか服装しか触れなかったけど、そういう変化も出て来るのか」

夕雲「季節が原因の病気は春には限りませんけどね」

提督「そうだけど、なんかこたつから解放されていっている風景を見ても冬が終わるなーって思うよ」

夕雲「少しずつ太陽が出ている時間も長くなってきますし、暖かくて洗濯物も乾きやすくなりますよ」

提督「そういえばたけのこなんかも安くなってくるか。たけのこご飯とかいいかもなー」

夕雲「果物も四月位を目途に変わりますからね。いちごも高くなっていきますし」

提督「ああ、冬の野菜や果物が売り場から減っていくのも春の一つか」

風雲「二人共主婦みたいね」

夕雲「そう?」

提督「皆考える事だと思うんだけどなぁ」

朝霜「あたいは考えた事無いぞ」

長波「少なくとも軍人が考える事ではないな」

夕雲「つまり提督と私の間にだけ伝わることね」

提督「口惜しいが、そういうことになるな」

巻雲「巻雲はこたつが護れるだけで満足ですー……」

―執務室―

提督「春とは何か、感じ取る物だ」

提督「とりあえず、そろそろ服の整理をしよう。忘れてた」

↓2

川内「提督ー!」

提督「夜戦なら行かないぞ」

川内「珍しい!」

不知火「いえ、すみませんが今は報告のまとめ中です」

川内「あれ、不知火まで。うーん、そっかー」

提督「……夜戦じゃなさそうだな。一体何の用事なんだ?」

不知火「司令?」

提督「報告なら後で聞くから」

川内「無理しなくてもいいんだけど」

提督「押しが弱い時なんてめったにないんだし、気になるに決まっているだろう」

川内「なら、ちょっとついてきてよ」

提督「?」
不知火「……」

―庭―

川内「ほら、見て提督!」

提督「おおー、見事な桜……って、開花すらまだだろ。どうなってるんだ」

川内「忍法だよ」

提督「わからん」

不知火「すごい光景ですね。月明かりに桜吹雪まで」

川内「ふっふっふ、狙ったからね」

提督「うーむ、これはパフォーマンス賞!」

川内「やったね!」

不知火「なんですかその賞」

提督「とっさに思い付いた賞」

川内「数分で終わるから、今のうちに目に焼き付けとくんだよ」

提督「個人的に仕掛けの種が気になるが、今はそんなことを考えるのも無粋か」

不知火「せっかく見せてもらったものですから」

三人(((……それにしても)))

不知火(川内さん、はためくマフラーに舞い上がる桜の花。恰好からしても司令のお付きの人にも見えますね)

川内(喋らなければ提督も出来る人っぽいねー。不知火と並んでいい感じになるし)

提督(うーん、動の川内、静の不知火。なんて、なんとなくそんなふうに見える)

三人(((絵になってる……)))

川内「……そろそろ終わりだね。今日は二人を呼んでよかったと思うよ」

不知火「こちらこそ、新たに今年の目標ができました」

提督「いいものを見れたのはいいんだが……結局どういうカラクリだったんだ」

―執務室―

提督「桜も本物っぽかったし、よくわからん。というか、何か忘れているような」

提督「……あっ、報告忘れてた!」

下2

―談話室―

提督「君の名が日本映画で世界興行収入で一位になったってさ」

日向「ほお、つまり世界一という訳か」

提督「日本映画の中では、な」

伊勢「そうなんだ。映像とかきれいだったし、話も良かったから私も好きだしね」

日向「そうなのか?」

伊勢「え、見てないの?」

日向「そういうものには疎くてな」

提督「駄目だなぁ。もはや世界的に有名な作品だぞ」

伊勢「そうよね! 特に……って、ネタバレとかしちゃったら駄目か」

提督「だな。まあ、俺も実は見ていないんだが」

伊勢「提督まで!?」

提督「そういう物に疎いと言ったが、映画自体見た事無いのか?」

日向「いや、少し前にふぉーでぃーえっくすとやらの映画を見に行った」

提督「ああ、あの体験型の」

日向「なかなか頑張ってはいたぞ。実際とは比べ物にはならないが」

伊勢「そりゃあ、現実と比べると無理があるわよ」

日向「水まで出るのは驚いたな。揺れも大人しめだったが、酔う人も居るかもしれないことを考えると妥当かもしれん」

提督「4DXの説明ばかりだが、内容はどうだったんだ?」

日向「瑞雲が出て来なかった」

提督「何の映画を見たのか全然わからん」

伊勢「瑞雲がでるかでないかで評価しているのが日向らしいわ」

日向「では、提督はどんな映画を見るのだ」

提督「見るときはB級とか関係なしに見るんだが……一番最近のはカチコチかな」

伊勢「カチコチ? もしかしてドラ……」
日向「ふむ、瑞雲は出て来たか?」

伊勢「出てくるわけないでしょ」

提督「瑞雲は出なかったが、懐かしの道具とか出てきて、少し感動したなぁ」

伊勢「おじさんみたいな反応ですね」

提督「は、話だってオリジナルの割には良かったんだぞ!」

伊勢「割りにはって、やっぱりおじさんみたいな……」

提督「伊勢の方が年寄りなくせに!」

伊勢「艦娘になってからならまだ三歳です!」

日向「それは流石にサバ読み過ぎだぞ」

伊勢「じ、自分でもそう思ったけど!」

―執務室―

提督「うーん、最近は作戦とかあったし、映画館まであんまり見に行ってないんだよなぁ」

提督「映画とかも鎮守府で出来ないかなー。無理か」

↓2

―鳳翔の店―

提督「ダーツしようダーツ」

翔鶴「ダーツですか?」

提督「ほどよく酔いが回ってきたところで遊戯を楽しむ。酒の嗜み方の一つじゃないか」

翔鶴「それはなんとなくわかります」

瑞鶴「でも、ダーツなんてあるの?」

鳳翔「ありますよ。前に龍鳳さんがもってきてくれたものがこちらに」

瑞鶴「ずいぶん準備がいいわね」

鳳翔「いえ、これはずっと前からありましたよ?」

提督「前に酔いすぎたやつが別の奴に向かって全力で投げて大事になりかけたから普段は隠しているんだ」

翔鶴「な、なんだか危なそうですね……」

提督「いやいや、ちゃんとルールを守って楽しく遊べば何にも問題はないから」

瑞鶴「ルールって、なにするの? 実は私、ダーツとかよくわからないんだけど」

提督「ふむ、最近の若者ならダーツを知らないことも珍しくはないか」

瑞鶴「若者って、提督さんもまだ若いでしょ」

提督「それもそうだ。じゃあ普通のルール、カウントアップをしようか」

翔鶴「確か当たった場所に応じて得点が増えていくルールですよね」

提督「面倒なローカルルールはなしで、得点は的に書いてある通り。これなら誰でもわかりやすいだろ」

瑞鶴「まあ、そうね。確かにこれならできそう」

提督「ふっふっふ。では早速手本てがらに投げてみようか。それっ」

翔鶴「あら……外れましたね」

提督「……とまあ、あんまり真ん中を狙いすぎると碌な結果にならないということだな」

瑞鶴「いや、外したんだから真ん中を狙ったせいじゃないでしょ」

提督「じゃあ次は瑞鶴な。きっと瑞鶴は弓術も覚えてるし、さぞ上手いことだろうなー」

瑞鶴「弓とこれは関係ないでしょ。まったく……えい!」

翔鶴「すごいわ瑞鶴、トリプルリングの二十で六十点よ」

瑞鶴「え? ……ど、どう提督さん。これが実力の差よ」

提督「嘘つけ! まぐれだろ!」

瑞鶴「ダーツにまぐれはないわよ。力加減、狙い、それらを計算して当てるのがダーツなんだから」

提督「計算してないだろ!」

瑞鶴「はいはい、次は翔鶴姉よ」

翔鶴「ええ。えっと、はいっ」

提督「十三点。普通」

瑞鶴「外した提督さんよりマシよ」

提督「ほほう、ちょっと最高得点に当たったくらいでいい気になって。すぐに追い抜いてやる」

翔鶴「二人とも……ふう、楽しそうだからいいのかしら」

―執務室―

提督「全くやってなかったのもあって、感覚が全くつかめなかった……」

提督「次やるときは絶対に負けん」

下2

―祥鳳型の部屋―

提督「ところで祥鳳、目玉焼きの焼き方に種類があることは知っているか」

祥鳳「半熟、とかではないですよね」

提督「いや、それもある。ほかに両面焼きといったもの、そして調味料だ」

祥鳳「調味料はよくケンカになりますよね」

提督「うちの鎮守府でもいろんな派閥はあるしな……と、それはおいて置いて、今回はいろいろなもので食べてみたいと思う」

祥鳳「理由は……ないですよね」

提督「思い付きだからな」

祥鳳「私は構いませんよ。何か準備するものはありますか?」

提督「そうだな、じゃあ俺が調味料を調達してくるから」

祥鳳「はい」

提督「祥鳳は目玉焼きを焼いてくれ。半熟固焼きを片面両面両方な」

祥鳳「はい……えっ」

~~~~~~~~

提督「醤油、塩、ソース……えーと、ほかにケチャップやポン酢、胡椒……とりあえずいろいろそろえたぞ」

祥鳳「お、お疲れ様です……」

提督「祥鳳の方こそずいぶんお疲れのようだが」

祥鳳「料理に自信がないわけではないですけど、作ったことのない方法だったので……」

提督「はあ、そんなに大変だったか」

祥鳳「提督が食べると思うと、少し、です」

提督「妹の瑞鳳は卵料理が上手だし比べられると思ったか? そんな野暮なことしないのに」

祥鳳「そういうわけではないんですけどね……」

提督「?」

祥鳳「さ、冷める前にいただきましょう!」

提督「よくわからんが……まずは、一番使われているらしい醤油で食べてみるか」

祥鳳「提督は普段何をかけているんですか?」

提督「その日次第だな。頻繁に目玉焼きを食べているわけではないけど」

祥鳳「では、半熟と固焼きでは?」

提督「んー、祥鳳のでは半熟の方がおいしいかな」

祥鳳「そ、そうですか」

提督「というより好みばかり聞いてないで祥鳳も食べないか?」

祥鳳「それでは、いただきますね。ん……」

提督「どんな感じだ?」

祥鳳「確かに、固焼きの方はちょっと焼きすぎたかもしれません……」

提督「ちゃんとできているんだから些細なことではあるがな。調味料を足せば、両面と片面はそこまで味に違いはないな」

祥鳳「同じ卵ですから、そう大きく変わるわけじゃないですからね」

提督「それでも見た目は結構違うけどな。それに、祥鳳が作った目玉焼きはどれもおいしいから、違いを感じにくいってこともあるかもしれんな」

祥鳳「も、もう、褒めても何もありませんからね?」

―執務室―

提督「日本では目玉焼きといえば片面だと思う。調味料は争いだが」

提督「とはいえ、両面は白身の味を引き出しているような感じもするから、どっちの方がいいってわけじゃあないと思う」

下2

―祥鳳型の部屋―

提督「目玉焼きの時に思ったんだけど、意外と祥鳳って料理上手だよな」

祥鳳「意外ってなんですか……」

提督「言葉の綾だ。とりあえず、瑞鳳も作っている卵焼き、あれも上手に作れるんじゃないか?」

祥鳳「試したことはありますけど……瑞鳳ほど上手に作る事は出来ませんよ」

提督「なに、試しにだ。祥鳳なら美味しくないということは絶対にないだろうしな」

祥鳳「そっ、そう言われるのは嬉しいですけど……」

提督「大丈夫、砂糖と塩さえ間違わなければ食べれる」

祥鳳「そんなミスはしませんから! ……あんまり期待しないでくださいね?」

提督「おうよ」

~~~~~~~~

提督「ほう、思ったより手際が良いじゃないか」

祥鳳「妹がいつも作っていますからね」

提督「いやいや、自分で作るのとは違うだろう。これは期待できそうだ」

祥鳳「だから、期待しなくても良いですからっ」

提督「あ、卵焼きは甘めで頼む」

祥鳳「甘目……瑞鳳が作るのよりもですか?」

提督「ああいや、瑞鳳が甘目だろう。それくらいでって意味だ」

祥鳳「あ、そうですか。やっぱり、いつも食べているのを基準に考えちゃいます」

提督「それは分かる」


瑞鳳(うー……祥鳳と提督、なんだか楽しそう)

瑞鳳(提督ってば卵焼きが食べたいなら私が作ってあげるのに……)

瑞鳳(祥鳳も、私が一緒に作ろうって誘っても、なんだか遠慮するし……)

瑞鳳(二人共、私が居ない間にずるいんだから)

瑞鳳(……なんだかもやもやする……)


提督「……」

祥鳳「……」

提督「(気付いている、よな?)」

祥鳳「(瑞鳳が扉の隙間からじっと見つめているのを感じます……)」

提督「(な、なにか怒らせるようなことしたか?)」

祥鳳「(い、いえ……もしかしたら、卵焼きを作っていることに怒っているのかも……)」

提督「(えぇ、なにそれ……いや、あれだけ卵焼きにプライドをかけている瑞鳳だ、ありうるかも)」

祥鳳「(冗談だと断定できないです……)」

―執務室―

提督「気が付いたら居なくなってたんだけど……怖い」

提督「もしかして作り方を間違っていたとか……いや、傍目に見てミスも無かったと思うんだがな。ちなみに、祥鳳の卵焼きも美味しくいただきました」

↓2

―売店―

提督「そういえば、この店って売れてるのか?」

明石「ぼちぼちですね。とはいえ、売れ行きが良いからといって給料が増えるわけじゃないですけど」

提督「そうなのか? それにしては、偶によくわからないものが売っていることがあるが……」

明石「あれは自費です。セグウェイとか、面白そうなものは偶に自分で仕入れますよ」

提督「そういえば買ったな。売れなかったらどうなるんだ」

明石「いえ、面白そうなものなら提督が買ってくれますよね」

提督「謎の信頼!」

明石「まあ一度霞ちゃんを通さないといけませんから、無理なものは無理ですけどね」

提督「そっか。……待てよ、つまりセグウェイとか、セーターとか、あれらは俺が買うことを予知して……?」

明石「細かいことを考えてもしょうがないじゃないですか。ところで、本日は何の御用で?」

提督「面白そうなものないかな、と」

明石「一応言っておきますけど、普段は普通の酒保ですからね。そんなに頻繁におかしなものは仕入れてませんから」

提督「でも来るときは大体馬の被り物や服や、季節外れのお菓子とか一発ギャグみたいなのをよくみるけど」

明石「それはまあ……趣味ですね」

提督「ほらみろ!」

明石「そんな変な物を買っていく提督も提督です!」

提督「俺の場合は習性だ!」

明石「それはそれで質が悪いですね!」

提督「……そもそも、今年度はそんなに変な物を買っていないだろう」

明石「セグウェイ」

提督「それは買っちゃうだろ」

明石「提督以外見向きもしない人が多かったですけど……」

提督「肩たたき券とか売ってた明石も変だろ」

明石「あ、あれはネタ半分でおいてただけですし……」

提督「あとはなんだ、服か」

明石「今年はそんなにおかしなものは置いていなかったと思いますけど」

提督「うーん……あと被り物とか、変な人形も買ったっけ」

明石「そう考えると、今年は確かにあまり変な物ってないですね」

提督「だな。日用品ならば足りない調味料とか、道具とか」

明石「資材については……個人的なものではないですから違いますね」

提督「総評、もっと無駄遣いさせてほしかった」

明石「私もちょっと同意しますけど、あんまり無茶なもの置いて怒られるのは私ですからね」

―執務室―

提督「時間さえあればある程度のものなら仕入れてくれるんだけど……」

提督「やっぱり店長のおすすめ、みたいな感じのものを買いたいんだよ」

下2

提督「浜風にイタズラしてみたいと思うんだ」

時津風「しれーも好きだね」

雪風「いたずらって何をするんですか?」

提督「そうだな……浜風の通る道をワックスがけして滑りやすくするとか」

時津風「それ面白いと思う?」

提督「まったく」

雪風「でもお掃除はいいですね。雪風頑張りますよ!」

提督「冗談だぞ」

雪風「そうですか……」

提督「掃除したいのか? うーん、それじゃあ、真面目な浜風だからこそ慌てそうなものにするか」

時津風「あ、それ面白そう」

提督「じゃあ、やるイタズラは決まった。二人には手伝ってもらうから……」

―提督私室―

浜風「し、失礼します」

時津風「もっと気楽にしてていいよ。しれーが一緒に食事でもって呼んだんだから」

浜風「そういうわけにはいかないと思うのだけど……」

雪風「でも、しれぇはいないみたいだね」

時津風「本当だ。もー、しれーったら呼んだ本人がいないんだから」

浜風「提督も忙しいのね」

時津風「普段は遊んでるのにね。まーいいや、好きにしてていいって言ってたから、飲み物でも出しておこっと」

雪風「雪風も手伝います!」

浜風「では私は……あら」

浜風(テーブルの上に書置き? 提督から……ご飯は棚の上、ですか)

浜風「あの、手紙が置いてあったのだけど」

時津風「さっきみたけど、こっちは先に飲み物の準備するから」

浜風「はあ、なら棚の上にある食事をテーブルの上にでも……また手紙? ……『食事を用意してると思った? してないんだよなぁ、これが』……」

雪風「どうかしましたか?」

浜風「……いえ」

時津風「そういえば、冷蔵庫にもう一つ置いてあるって聞いたよ。浜風、そっちも用意してくれない?」

浜風(どうせ、また同じようなものでしょうね)ガタッ

コロッ パリッパリッ

浜風「? た、卵が!?」

雪風「あっ、そ、掃除しないと!」

浜風「ど、どうしましょう……」

時津風「卵一パック落としたくらいでしれーも怒らな……あれ、それって、もしかしてこだわり卵の一万円を超える卵じゃ……」

浜風「まん……!?」

雪風「そういえば、昨日しれぇが嬉しそうにようやく届いたって言ってました!」

時津風「あの時は踊るようにスキップしてたね。今日のご飯もおいしい卵料理って言ってたような気がするし」

雪風「祥鳳さんたちにもお礼するって言ってましたね」

時津風「これは大変だよ、浜風。このままじゃ……浜風?」

浜風「――」

バタン ガチャ

提督「じゃじゃーん! 実はドッキリで、卵の中身はこっちに移してましたー! それは殻だけで……あれ、浜風が青い顔して動きを止めてるぞ」

時津風「気絶してるね……」

雪風「えっと、雪風はお掃除しておきますね?」

提督「あ、ああ。まかせた」

雪風「はい!」

―執務室―

提督「意識を取り戻した後は泣きそうな顔で土下座をしようとしていた。さすがに止めたけど」

提督「結果的にドッキリだし、本当におとしたとしても卵くらいでそんなに怒るつもりもなかったんだが……」

下2

提督「ところで、あんまり大鳳に仕事をまわしていなかったな」

大鳳「確かに、トレーニングばかりしている気が。事務仕事はないですね」

提督「ただ、確認や整理以外の書類仕事はあまり必要ないし、作戦立案もこっちでやってるから、あまりさせることがないのも事実なんだ」

大鳳「そうなんですか……あれ、でも提督が仕事をしているところ自体見ていないような……」

提督「そりゃ、やってないからな」

大鳳「そうですか」

提督「ああ」

大鳳「……!? ちょっと待ってください、やらないとまずいのでは!?」

提督「最低限はやってるからヘーキヘーキ」

大鳳「ほ、本当でしょうか……」

大鳳(いえ、思い返してみれば今までいなかった秘書艦を付けるということは、こういう時の監視なのでは)

提督「んじゃ、今日も遊びに……」

大鳳「提督」

提督「ん?」

大鳳「今日はビシバシ行きますから! 部屋から逃がしませんよ!」

提督「!?」

~~~~~~~~

大鳳「提督、お茶です」

提督「た、大鳳……お茶はいいから、ここから解放してくれ……」

大鳳「ダメです! 提督が仕事をしないことで困るのは霞さんなんですから!」

提督「一応俺が仕事をしないことも踏まえて計画立てているから、特に問題は……」

大鳳「そんなの計画じゃありませんよ!」

提督「そ、それに、この量を終わらせるのは……」

大鳳「為せば成る! 最初からあきらめちゃダメです!」

提督「た、体育会系すぎる……」

大鳳「さあ、一息ついたら続けますよ!」

提督「ひえぇ……」

~~~~~~~~

霞「はあ、だから真っ白に尽き果てているわけね」

大鳳「私も本当に全部終わらせられるとは思わなかったのだけど……」

霞「やるときはそれなりにやるのよ。さて、今日は私も大変になりそうね」

大鳳「もう夜よ?」

霞「せっかくだから、終わらせておくわよ。少々予定外ではあるけど」

大鳳「……も、もしかして、提督の速さにあわせて計画していたの?」

霞「別に問題はないわ」

大鳳「お手伝い、した方が……?」

霞「私のことより、大鳳さんはこいつの秘書艦でしょう。なら、布団に運んであげなさいな。多分このまま寝るわよ」

大鳳「あ、提督、提督? ここで寝ると風邪ひくかもしれないわよ?」

霞(予想外だけど、二人ともご苦労様)

―執務室―

提督「……はぁ、昨日は大変だった。本当に監視されるとは」

提督「すっきりした机を見ると、やりきった感はあるがなぁ」

下2

―伊勢型の部屋―

提督「するめソーメン買ってきたんだけどどうだ?」

伊勢「するめそうめん? するめと何か違うんですか」

提督「するめソーメンは炙ったするめを味付けしたものだ」

日向「酒のつまみにはちょうどいいな」

提督「だろう。伊勢もいるだろ?」

伊勢「たまにはいいかもしれませんね」

日向「では、酒はこっちで用意しよう」

伊勢「それなら、棚の中にいいのがあったから、それを取ってきて」

日向「わかった」

~~~~~~~~

提督「うむ、特に言うことのないするめだ」

日向「そうか? 美味しいと思うが」

伊勢「普通のするめより私は好きですね」

提督「俺はべつにどっちでもだな」

伊勢「そうですか? 味もちょうどいいと思うのですけど」

日向「食べやすいしな」

提督「そこは同意するがな。まあ、好みってことか」

伊勢「ところで……まだあるの?」

提督「ちょっと買いすぎたかもな」

日向「まだ五袋くらいあるな」

提督「しょうがない、ちょっと台所を借りるぞ」

伊勢「何か作ってくれるの?」

提督「今日中に全部食べる必要はないが、まだ酒も残っているみたいだからな。飽きの対処位しておこう」

伊勢「でもするめを料理って……」

日向「するめじゃないぞ。するめそうめんだ」

伊勢「そこは重要じゃないんじゃない?」

提督「料理を作るうえでは少し重要だな。元から形はそれなりに整っていて、味もついているから胡麻和えとかいいかもしれん」

日向「ほう、なかなかいいではないか」

伊勢「でも、上官に酒のつまみを作らせるって構図がね……」

提督「気にするなって。買いすぎたのは俺だし」

日向「ならば、こちらは酒の追加だな!」

伊勢「うーん、そうね。じゃあ、もっといいものを用意してきますからね」

提督「ならばそれを楽しみに作るとするか!」

―執務室―

提督「結局余ったなぁ」

提督「まあ執務中にでも適当に食べておくか」

下2

提督「さて、三人に集まってもらったのは他でもない、面白い話が聞けそうなのだよ」

響「面白い話?」

プリンツ「私たち三人にとってですよね」

鈴谷「面白い話って、鈴谷達三人共面白いと思う話題ってないと思うんだけど」

提督「ふふふ、三人に共通するものならあるだろう」

鈴谷「そんなものある?」

響「……ああ、なんとなくわかったよ」

提督「さすが、勘が鋭いね」

プリンツ「??」

鈴谷「全然わからないんだけど」

提督「ふふふ、見てみるのが一番手っ取り早いんだ!」

暁『やっぱり、レディたるものいつでも冷静でいるべきなのよ』

ビスマルク『わかるわ。やっぱり他の皆の例となるべきなのよ』

熊野『淑女たるもの優雅でないといけませんわ』

プリンツ「ビスマルク姉様?」

鈴谷「もしかして、これって盗撮?」

提督「む、一応許可は取っているんだぞ」

鈴谷「えー、提督が言うと怪しいんだけど……」

提督「レディーがなんたるものかって、会話してもらったんだよ。その結果な」

響「許可を取っているのなら何も気にする必要はないね」

プリンツ「そ、そうですか? でもビスマルク姉様がいいといっていたのであれば……」

鈴谷(熊野の性格から考えて、まっとうに言ったわけじゃないと思うんだけど、面白そうだから黙っていよっと)

ビスマルク『まあ、私は十分、その……レディーというものにはなれていると思うわ』

暁『暁だってそうよ!』

熊野『私はレディーというより淑女ですわね』

プリンツ「レディーと淑女は同じ意味ですよね?」

鈴谷「そーだよ」

提督「すでにレディーに関して話せる内容が無くなっているのが笑えるよな」

響「そもそも、レディーかどうかは自分で決めることではないと思うんだ」

熊野『それにしても、鈴谷ももう少し慎みを覚えてほしいものですわ』

暁『響は暁にもわかりやすいように言ってくれると嬉しいの……』

ビスマルク『オイゲンはレディーに近いわね。もっと私に近づけるように頑張ってほしいわ』

提督「気が付けば別の話に移ってるけど……くくっ……頑張ってほしいって……」

響「私は別に暁にわかりにくい言葉を言っていたわけじゃないんだけどな」

鈴谷「慎みって言われてもねー。というか、熊野は戦闘の時に奇声を上げるのはやめた方がいいと思うんだよね」

プリンツ(な、なんだか話が変わってきているように気がします……)

―執務室―

提督「本人たちがレディーについてよくわかっていないのに、談義なんてできるわけないよなぁ」

提督「今回はある意味それが楽しかったけど」

下2

明石「提督って、どこでお金を使っているんですか?」

提督「そりゃ趣味とかプレゼントとか」

明石「それもそうなんですけど、大抵は酒保で間に合いますよね」

提督「でも酒保だと時間がかかるだろう」

明石「それは確かにそうですけど」

提督「そもそもが衝動買いとかが好きな質でな。明石の店でもそんな感じだろう」

明石「言われてみれば確かにそうかもしれませんね……」

提督「だから明石の店以外でも買うことが多いのだよ」

明石「では、参考までにそんなものを買ったりしているんですか?」

提督「え? そりゃ家具とか小物とか」

明石「小物ってどんな感じのものですか?」

提督「オルゴールだとか、ペンダントとか」

明石「それは確かに店先で気にいったりとかすると買っちゃうものですね……」

提督「だろう。品ぞろえとかで勝てないんだし、明石の店はいつも通りでいいと思うんだが」

明石「それはそれで商売人としての意地がですね」

提督(明石って商人じゃないだろ)

明石「でも、思ったより普通のものを買っているんですね」

提督「むしろ普通じゃないものってなんだよ」

明石「えっと……土地、とか?」

提督「富豪か!」

明石「冗談ですよ冗談。でも、あっと驚くようなものも買っているんだろうな~って思っていましたから、ちょっと驚きました」

提督「明石の店で買うような変な物はめったに買わないからな?」

明石「そ、そうなんですか!?」

提督「なぜ驚かれているのだろうか」

明石「てっきり、変な道具を集めるのが趣味なのかと思ってました」

提督「そんなわけ……もしかして、そう思っているから変な物を仕入れているのか」

明石「ま、セグウェイを超えるものがないと聞いて安心しましたよ」

提督「そうそう超えてたまるか」

―執務室―

提督「本人たちがレディーについてよくわかっていないのに、談義なんてできるわけないよなぁ」

提督「今回はある意味それが楽しかったけど」

下2

―執務室―

提督「意外性で言えば明石の店の方が上なんだが……」

提督「まあ、合計金額で言えばさすがに普通の買い物の方が上だ」

―睦月型の部屋―

提督「弥生ちゃーん、お兄さんと遊ばないかい?」

弥生「……」ジリ..

提督「後ずさることはないんじゃないかな」

弥生「悪戯してくる前の……卯月と同じ顔してます……」

提督「うーちゃんほど顔に出ていないと思うんだが」

弥生「でてますよ……」

提督「む、そうか。なら少し待ってろ」

弥生「……?」

提督「……こうだな」ニヘラァ

弥生「!? そ、その笑みは……やばいです……!」

提督「まあいい、弥生がどれだけ嫌がろうと、俺は自分のしたいことをやり通す!」

弥生「その発言は……私と関係ないところで……ふにゅっ」

提督「グヘヘヘ、もちもちした肌してるじゃないかよぉ」ムニムニ

弥生「しれぇひゃん……ひゃめてくひゃ……」

提督「ヒッヒッヒ、誰も助けなんてこんぞ」

弥生「ふぇ?」

ガチャガチャ

「あれぇ、鍵がかかってるにゃし」

「おかしいわねぇ。誰もいないのかしら」

弥生「ふぁひを……?」

提督「そうだ。今は密室、弥生がどうなろうと助けなんてこんぞ」

「あ、鍵なら持ってるよ」

「さっすが水無月ちゃん!」

提督「なに!?」

弥生(当然だと思いますが……)

提督「こ、こうなったら……入ってくるまで堪能してやる!」モニュモニュ

弥生「ふええええ……」

ガチャ

睦月「ただいまー……司令官が弥生ちゃんを襲ってる!?」

如月「あ、あらあら」

提督「ククク、ではさらばだ!」ダッ

水無月「なにをしていたの?」

弥生「……揉まれてました……」

『!?』

―執務室―

提督「窓を開けていれば窓から脱出できたのだが……密室にこだわりすぎたか」

提督「だが、存分に味わってやったし、後悔はない」

下2

―庭―

提督「おー、綺麗に咲いてるなぁ」

大和「本当です……」

武蔵「少々早いと思ったが、すでに満開の桜も存在していたのだな」

提督「早咲きってやつだな。今日はこれを見ながらゆっくりしようではないか」

大和「そうですね」

武蔵「ふむ、ではこれも必要ではないのか」

提督「これ? ……ああ、酒か」

大和「どこに持っていたの?」

武蔵「それは秘密だ」

大和「秘密って……」

提督「まあまあいいじゃないか。ここにお酒がある、それが重要だろう」

大和「提督まで……はあ、飲み過ぎないようにしてくださいよ」

~~~~~~~~

武蔵「そこで一発、ぶち込んでやったのさ!」

提督「はっはっは、それはなんとも男前じゃないか」

武蔵「私からすると、そうしない選択肢など存在しなかったからな」

提督「本当に武蔵の話はスカッとするものが多いなあ」

大和「そろそろ抑えてたほうがいいんじゃないですか?」

提督「なにを?」

武蔵「私の話か?」

大和「二人してボケないでください。お酒です」

武蔵「気にするな。まだまだあるぞ」

大和「だからどこから取り出しているの! もう、せっかく綺麗な桜もあるのに」

提督「花より団子になるのはしょうがない。うちはいつもそうだろう」

大和「提督は桜とか好きだったと思うのですが……」

提督「んー、そうなんだが、この桜は毎日観察してたしな。さすがに見飽きたとも言える」

大和「毎日……なるほど、そうだったんですか」

武蔵「私は桜より酒だがな」

大和「でしょうね」

提督「また今度皆で花見をするだろ。桜を見るのはその時で良いだろ?」

大和「提督がそういうのであれば……」

武蔵「では飲みが続くと決まったんだ。大和も飲め」

大和「……では、少しだけ」

提督「じゃあ、次は俺の話でもするか。この前――」

―執務室―

提督「くぅ……飲み過ぎた……」

提督「というか、武蔵はあれだけの量をどこから取り出したんだ……」

↓2

―公園―

榛名「もう桜が咲いていますね」

提督「だなー。最近は花を見すぎて……」

榛名「どうかしましたか?」

提督「いや、なんでもない」

榛名「? 提督、どこに座りましょうか」

提督「思ったより空いてるからベンチでもいいんだが、シートを持ってきた意味がないからな……」

榛名「それで、あそこの桜に囲まれた場所とかどうですか?」

提督「お、いいね。あそこにするか」

~~~~~~~~

榛名「はい、どうぞ提督」

提督「おお、弁当まで用意していたのか」

榛名「こうすれば桜をゆっくり見られますから」

提督「桜見にきて店に入るのも確かになんだな」

榛名「だから心を込めて作りました。食べて、くれますか?」

提督「もちろんいただくよ。……うまーい!」

榛名「そうですか! お口に合ったようでうれしいです♪」

提督「うんうん、これならいくらでもいけそうだ」

榛名「あ、もう、慌てすぎですよ。ほら、ケチャップが」

提督「うん?」

榛名「ちょっとじっとしてくださいね。手拭いで……あっ、風が……!」フワッ

提督「飛んで……と、とと……!」パシッ

バターン

提督「す、すまん、押し倒すつもりじゃ……あれ」ムニッ

榛名「ん……だ、大丈夫です」

提督「えっと、手拭い、とれたぞ」

榛名「あ、はい。ありがとうございます……」

提督「なんだ、大事なもの……か?」

榛名「そうです、ね……」

提督「……って、悪い! すぐにどくから!」バッ

榛名「……て、提督さえよければ、あのままでも……」

<アソコニラブコメクウカンヲハッシテイルヒトガー
<シッ! ミナカッタコトニスルノ!

榛名「! な、なんでもないです!」

提督「そ、そうか!」

―執務室―

提督「あれが桜の効果とでもいうのだろうか、恐ろしい……」

提督「いや関係ないか。しかし、あれは見る人によっては思いっきりセクハラだったぞ」

下2

―やよい軒―

提督「弥生、ここで昼食を取ろうか」

弥生「ここは……?」

提督「やよい軒だ」

弥生「やよい……私?」

提督「いや、そういう店ってことだ。そこそこお値段も安く、そしてうまい!」

弥生「そ、そうですか……」

提督「一口食べればきっと弥生も考えが変わるぞー」

弥生(そうかな……)

~~~~~~~~

弥生「おいしい……」

提督「だろう」

弥生「でも、間宮さん達には……」

提督「別格と比べるな。レストランじゃないんだから」

弥生「でも、外で食べた中だと……おいしい、です」

提督「値段も悪くないしな。高いやつもあるが、なんといってもごはんはおかわり自由だ」

弥生「そうなんですか……?」

提督「ご飯自体もおいしいしな。すみませーん、おかわりお願いできますかー!」

弥生「私はこれだけでいっぱい……」

提督「弥生はそんなに食べるように見えないしな」

弥生「漬物……」

提督「お、気に入ったか? 俺もここの漬物は押しでな、これだけでご飯がおかわりできるよ」

弥生「すごい……」

提督「なんだかんだおかわり自由は強いからな」

弥生「……司令官って、自分で料理作れます……よね……?」

提督「自分で作れるからって、自分の料理だけで完結するのは駄目だぞ。ほかの料理を口にして、研鑽を積んでいかなくては」

弥生「プロみたい……」

提督「よせやい。ただの趣味だよ」

弥生「あ……ごはん来たみたいですよ……」

提督「よーし、まだまだ食べるぞー」

弥生「……」

弥生(ギャグだけのために、来たと思ったけど……私も司令官も、満足できる場所につれてきてくれてたんだ……)

―執務室―

提督「うーん、満足。弥生も満足してくれていたようで結構」

提督「チェーン店は安定感があるな、やっぱり」

下2

>>675

―球磨型の部屋―

提督「陸奥、加賀、多摩、長良、那珂、摩耶、朧、響、若葉、酒匂、大淀、共通するものはな~んだ?」

大井「突然なんですか?」

提督「部屋に戻ると、こんな問いの書いてあった紙があってな。大井はわかるかなと」

大井「あったって、提督が用意したんじゃないですか?」

提督「俺が? なら、正面から大井に問いかけるさ」

大井「……では、なぜ私なんですか。そういうのが好きそうな子ならいっぱいいるでしょうに」

提督「愚問だな。くじ引きで決めたからだ」

大井「はぁ、この人は本当に……」

提督「まあまあ、そういうのは今はおいといて、今はこの謎を解き明かそうじゃないか」

大井「いやですよ」

提督「説いた暁には何でも好きなものをプレゼントするって紙の裏に書いてあるな」

大井「…………やりましょう」

提督(嘘だけどな)

提督「さて、そういうことなら早速といてみようか。大井は何かわかったか?」

大井「……北上さんが居ませんね」

提督「うん、見ればわかる」

大井「それ以外だと、艦種がバラバラっていうくらいですかね」

提督「それだけしかわからんのか!」

大井「こんなのパッと見て答えられる訳無いでしょう! 提督は分かるんですか!?」

提督「全然」

大井「このクズ」

提督「本気で冷めた目をするのはやめて」

大井「手がかりなしでどうするのよ。まったく……」

提督「まったく手がかりなしという訳では無い。何もかもばらばらというのだから、何か共通点があるはずなんだ」

大井「はぁ? 共通点が無いからバラバラなんじゃないですか」

提督「逆だ。共通点がないからこそ、数少ない共通点が目立つんだ」

大井「数少ない共通点……? 艦娘は……ここにいる人ほぼ全員で、生まれ……も違うわね」

提督「……意外とないな」

大井「そもそもヒントが少なすぎなのよ! せめて北上さんの名前があったらやる気が出るのに……」

提督「大井はぶれないな。……ん? あ、あー……大井……あー、あー、なるほど」

大井「何かわかったんですか」

提督「いやー、くじ引きで決めたつもりだったが、運命ってある物だな。大井の名前がヒントになってたとは」

大井「私の? 名前? ……?」

提督「駄目だなぁ、大井は」

大井「次ムカつく発言をしたらどうなるか分かってますよね」

提督「オーケイオーケイ。でも、答えが分かったからって犯人に繋がらないんだけど」

大井「はあ、ではただの悪戯なんじゃないですか」

提督「ま、そうかもな。それだけで大体絞れるけど」

大井「……」

提督「どうかしたか?」

大井「……ところで、その、答えは……?」

提督「そうだな……うーん、大井が悩んでいるのも珍しいから、このまま教えない方がいいかな――」

―執務室―

提督「遠慮なく鉄拳を飛ばして来るとは思わなかった……さすがにただの戯れだと思うけど」

提督「ちなみに、犯人は答えからあぶれている人だった。日本語に関するクイズを作ってみたとかなんとか」

下2

ひびき→母音が全て「い」
おおよど→「お」
ってことです

―談話室―

提督「詰将棋大会をしようかなって」

大淀「いいんじゃないですか。将棋が好きな人も多いですし」

提督「だから、大淀が問題を考えてくれ」

大淀「……はい? すみませんが、もう一度言ってくれませんか」

提督「大淀が、詰将棋の、問題を考えてくれ」

大淀「提督が考えるものだと思うのですけど」

提督「俺も参加したいから嫌にに決まっているだろ!」

大淀(この人は……)

提督「いや、俺も考えたんだ、秘書官に任せるか、青葉に任せるか……あと大鳳にも振ってみたな」

大淀「快い返事をもらえなかったと?」

提督「秘書官は忙しいといわれ、青葉は新聞用の簡単なものしか作れないって言うし、大鳳に至っては知らないって

言われた」

大淀「そうなると、次は私ですか……ちなみに、提督は実力はどれほどですか?」

提督「将棋図巧が半分くらい解ける秘書官と戦えるレベル」

大淀「やっぱり提督が作った方が良いんじゃないですか!?」

提督「参加したいのもあるが、詰将棋は得意じゃないんだよ。大淀ならその点大丈夫だろ」

大淀「しょうがないですね……では、こうしましょう。参加者に詰将棋を作ってきてもらうんです。それを問題とし

て出しましょう」

提督「……! な、なるほど、そうすれば楽が出来るな」

大淀「いえ、詰将棋になっているかきちんと確認して難易度付けをしますから、想像以上に大変だと思いますよ」

提督「やっぱり大変なのか……なんにしても、裁量はまかせる」

大淀「わかりました、引き受けることにします」

提督「さて、あとは周知させなきゃならないな。青葉に新聞として……」

大淀「ですけど提督、一つ忘れている物がありますよ」

提督「え、なにが?」

大淀「大会、というからにはなにか褒賞がないといけませんよ」

提督「褒賞……確かにそうだ、一体どうすれば」

大淀「私にいい案があります」

提督「む、それはなんだ。よさ気であればそのまま採用するが」

大淀「提督自身が、なんでも願いをかなえるというのはどうでしょう」

提督「……いいかもな、何も考えなくて済むし」

大淀(その分酷い目に遭うと思いますけどね)

提督「じゃあ、そういうことで後は任せたぞ!」ダッ

明石「……大淀って、なかなかしたたかよね」

大淀「そうですか?」

―執務室―

提督「詰将棋と将棋は結構違うものだからなぁ。ちょっと楽しみだ」

提督「……いや、でも待てよ、俺が勝った場合は褒賞なにもないぞ」

↓2

提督「初雪、駆逐艦の枠が空いたから代わりに出撃してくれ」

初雪「……なぜ……」

提督「そりゃ一番暇そうだから」

初雪「暇じゃないし……」

提督「嘘つけ、吹雪に聞いたら昨日も部屋でのんびりしていたみたいじゃないか」

初雪「う……」

提督「今日もこの時間までほとんど動いていないみたいだが?」

初雪「……わ、わかりました……めんど……」

提督「出撃から帰還したら、また時間をおいて遠征、そのあと演習な」

初雪「えっ」

提督「もうそれで書類作ってるから変更は効きませーん。じゃあがんばってね」

初雪「鬼……」

~~~~~~~~

提督「――ふむ、文句をいいつつもちゃんとやってくれたじゃないか」

初雪「もう動けない……」

提督「そういいながら演習ではノリノリだったじゃないか」

初雪「自棄に、なっただけ……」

提督「なんにしても、MVPもとってきてくれたんだし、何か褒美がないといけないな」

初雪「ご褒美なら、休みを……」

提督「休みならあげるが、ほかに……お、間宮券が余ってた」

初雪「間宮券……!」

提督「やっぱ好きなんだな。ただ一枚しかないし……何かしてほしいこととかあるか?」

初雪「なんでも……?」

提督「いや、なんでもではないが、できることで」

初雪「……じゃあ……」

~~~~~~~~

提督「……なあ、楽しいか?」

初雪「少し……」

提督「少しかー」

初雪「それより、今いいところだから、静かに……」

提督「はい」

初雪「……」

提督(いいんだけどさ、椅子代わりにしてゲームしても。ただ、個人的にはもっと別の頼み事されるかと)

初雪「……」

提督「……」ナデナデ

初雪「っ!? な、なに……」

提督「ちょうどいいところにあったから」

初雪「そ、そう……」

提督「嫌だったか?」

初雪「……別に。続けてもいい、です、けど……」

提督「ならば、そうさせてもらおう」

~~~~~~~~

提督「これはアメとムチを使いこなせたのではないだろうか!」

提督「だからといって、次からも初雪がやる気を出すとは思えないけど」

下2

提督「比叡、お前今日一日『ひえー』というの禁止な」

比叡「ひえっ!?」

提督「いきなり破って来るとか、なかなか豪胆な奴だな」

比叡「そ、そういうつもりじゃないですよ!」

提督「ちなみに破ったら恥ずかしい格好をして執務室に滞在してもらうから」

比叡「ひえ……っ!」

提督「二回目か、これはすぐにでも罰ゲームを……」

比叡「も、もうしません! いきなり司令が驚かしてくるのが悪いんです!」

提督「しょうがないな。じゃあ、今からスタートという事にしておこう」

比叡「ほっ……」

提督「ところで比叡」

比叡「なんですか?」

提督「実は俺金剛とケッコンカッコカリをする予定なんだが」

比叡「ひええええええええ!!??」

提督「予想通りの反応」

比叡「そそ、それよりもお姉様と結婚って……!?」

提督「嘘だぞ」

比叡「ぅ、嘘? はぁぁ~~~……」

提督「で、比叡? 罰ゲーム」

比叡「ひ、ひえぇ……」

~~~~~~~~

比叡「汚いです、司令……」

提督「汚かろうが目的を達成できればいいのよ。はっはっは」

比叡「うぅ……そもそも、この服は何処から持ってきたんですか……」

提督「売店で売ってた」

比叡「あそこなんでも売りすぎですよぉ……」

提督「そもそも比叡が言わなきゃよかっただけだからな」

比叡「あんなこと言われたら言うに決まってます!」

提督「まだまだだなぁ」

ガチャ

大鳳「提督、昼食のご用意が……比叡さん、その恰好は……?」

比叡「み、みないでください……」

提督「ちょっとした罰ゲームをな」

大鳳「なぜ罰ゲームを……」

比叡「……! そ、そうです! どうして司令に付き合わないといけないんですか!」

提督「今更気づいたのか。別に俺は強制してないからな」

比叡「そ、そういえばそうですけど!」

提督「あ、そのコスチュームはあげるから、有効に活用してくれよな」

比叡「そんな場面ありませんよ!」

大鳳「あら、比叡さんのことですし、てっきり金剛さんに見せるのかと」

比叡「お姉様に…………こ、こんな恥ずかしい格好見せられませんよー!」ダッ

提督(少し考えたな)

提督「……あれ、比叡逃げたけど着替えなくていいのか?」

大鳳「その、それなら私が比叡さんの服を持って行ってきますね」

提督「たのんだ」

バタン

提督「比叡は何時になってもちょろいんだから。もっとガードを硬くしないと」

提督「まあそこが可愛い所はいえなくもないが」

↓2

提督「さーて、今日はこのお便り。ペンネーム、世界一のバトルシップさんから。なぜ提督は黙っていればそれなりに少しだけ可能性としてはかっこよくなるかもしれない気がするのに普段はあんなに駄目なんですか。はい、では世界一のバトルシップさんのために今日一日寡黙な感じで過ごしてみよう」

大井「こんなわけのわからない茶番のために北上さんと私の時間を無駄しようとしたのかしら」

提督「茶番って、今からやる行動を分かりやすく簡潔にまとめただけじゃないか」

大井「それが茶番なんですが」

北上「別に良いんじゃない大井っち。私は面白そうだと思うけどな~」

大井「そうですね。私もそう思ってきたところです!」

提督「本当に大井は分かりやすいな」

大井「北上さん第一ですから」

北上「私を呼んだのはそれだけじゃないっしょ?」

提督「そうだな。せっかくの試みだし、手伝ってもらおうかと思って」

北上「いいよいいよ、なんでもいっちゃって~」

大井「き、北上さん」

提督「頼むと言ってもちょっとしたサポートだ。内容は……」

~~~~~~~~

吹雪「司令官、遠征から帰還しましたよ」

提督「……」

吹雪「司令官?」

提督「……」

北上「提督は『よくやった、後はゆっくり体を休めるとよい』っていってるね」

吹雪「えっ? な、何も言ってませんよね!?」

提督「……」

北上「今のは何に驚いているの変わらないって感じかな」

吹雪「全然伝わらないんですけど……」

大井(そりゃあ、北上さんの想像で伝えてるだけだから。提督は何にも考えてないですし)

提督(部屋の電気消したっけ)

大井(気になるなら確認してくればいいじゃないですか)

提督(こいつ、脳内に……! あ、代わりに見て来て)

大井(嫌です)

吹雪(な、なんか後ろでアイコンタクトをしている司令官と大井さんも気になるんですが……)

北上「遠征だけなら報告だけで問題ないっしょ?」

提督「……」

北上「だって」

吹雪「だから分かりませんって!」

阿賀野「提督さーん、阿賀野達第三艦隊も帰投したよー……ありゃ、いつもとなんか違うね?」

提督「……」

阿賀野「むー、提督さん、無視は駄目だよ」

吹雪「いえ、司令官は今……」

北上「提督ならもうちょっとダイエットしろっていってるよ」

阿賀野「ひ、ひどーい! これでも最近はおやつの量減らしたんだよ!」

大井「そういえば、能代さんが食べ過ぎだから減らすようにしたって言ってましたね」

阿賀野「そ、それは……」

提督「……」

北上「ほらほら、提督も呆れてるよ」

吹雪(今のは私にもそう見えました)

阿賀野「うぅ~、今日の提督さんなんだか怖い~……」

吹雪「静かにしていればそれなりに貫録はありますからね……」

阿賀野「じゃあ、阿賀野戻りまーす……」

吹雪「私もそうします。あ、司令官、そのままだと一部の子がこわがっちゃうので、気がすんだら止めて下さいね」

バタン

大井「そもそも上官ともあろうものがフランクに部下と接しているのがおかしいのよ」

北上「私はそっちの方が楽だけどね~」

大井「でも北上さんの為にも、これは早くやめて頂けないと」

提督「……」

提督(そもそも一番つらいのは喋れない俺だわ)

~~~~~~~~

提督「予想通り、北上はそれなりに意図を掴んでくれていたがそもそも黙っているというのが苦痛だった」

提督「やっぱ喋らないと始まらないな、うん」

↓2

―談話室―

提督「おや、ここにいるなんて珍しいな」

間宮「少し休憩です」

提督「ふーん……間宮、マッサージをしてやろう」

間宮「提督自らですか? 一時期よく行っていましたね」

提督「最近はあまりしなかったが、間宮の慰労のためにもな」

間宮「なんだかいろいろしてもらって申し訳ないです」

提督「何を申し訳なくなる必要がある。むしろ、こちらこそ何も返せなくて申し訳ないくらいだ」

間宮「そんなことはないですよ。こっちこそ提督たちには色々と……」

提督「待った、これはエンドレスしてしまう」

間宮「あ、そうですね」

提督「だから大人しくマッサージを受けるがいい。拒否権はない」

間宮「拒否権がないのであれば、受けるしかないですね」

提督「うむ」

~~~~~~~~

提督「ふむ、なかなか凝っているじゃないか」

間宮「そうですか……? 自分では、よくわからないのですけど……」

提督「知らずのうちに疲れがたまっているってことだな」

間宮「そうかもしれませんね……」

提督「……どんな感じだ?」

間宮「ん……気持ちいいですよ」

提督「それにしては反応が鈍いな。腕落ちたかな……?」

間宮「そんな、ことはないですよ……」

提督「リラックスはしているみたいだしな。うーん、もうちょっと、こう」

間宮「あっ、そこ、いい感じです……」

提督「この辺りか。うーむ、しかし、やはり納得いかんな」

間宮「提督……?」

提督「……こうだ!」グリッ

間宮「……っ!? そ、それ……っ!」

提督「おおっ、こんな感じか!」

間宮「んんんっ……! つ、強いです……!」

提督「いいや、凝りをほぐすにはこれくらいではなければ!」

間宮「で、ではせめて……っ、もうちょっとゆっくり……!」

提督「一通りほぐしたらなぁ!」

間宮「ふあっ! い、いじわるですよ……!」


伊良湖「ま、間宮さんを呼びに来たんですが、入れません……」

―執務室―

提督「やっぱ時間が空くと感覚を忘れるな」

提督「まあ満足してくれたみたいでよかった」

下2

提督「うーん、今日も良い朝だ。……おや秘書官、お疲れのようではないか」

霞「徹夜だからよ……」

提督「徹夜? 要領の良い秘書官が珍しい」

霞「私だって、たまにはミス位するわ……ふわぁ……」

提督「大あくび。うむ、眠気のせいかいつもより棘も少ないし」

霞「もういい? 部屋に戻って寝るんだけど」

提督「あいや待たれよ」

霞「言い方……」

提督「眠いというのなら、膝枕しようか? ん?」

霞「いやよ」

提督「何故だ! 別に膝枕くらいいいじゃないか!」

霞「なんでする方が必死なの……」

提督「まあまあ、ほら、カモン!」

霞「……どうせ、膝枕させないと通さないって言うんでしょ」

提督「もちろん」

霞「分かったわよ……」

提督「素直な子は好かれるぞ。さあ、こい!」ポンポン

霞「いつの間にソファーが……はぁ」

提督「……なんか、本当に素直に寝ころばれると、異様な気分になるな」

霞「あんたね……」

提督「いや悪い。別に貶すつもりは無かったんだ。ほれ」ナデナデ

霞「ん……」

提督「……」

提督(本当に怒らないな。もしかして、今日は何をしても許される日か!)

提督「では早速……!」

霞「スー……スー……」

提督「……」

~~~~~~~~

大鳳「提督、本日はどうなさい……あら」

提督「ああ、大鳳、今日はお休みで」

大鳳「ええ、了解しました。では失礼します」

バタン

提督「ふう……」

霞「……んん、あら……」

提督「あ、悪い、起こしたか」

霞「別に……ん、ここは……?」

提督「執務室だが」

霞「あぁ……えっ!? そ、そうよ、思い出してきた……!」

提督「まだゆっくり寝てていいんだぞ」

霞「だ、誰が! わ、忘れなさい! いいわね!」

提督「お、何か最近の秘書官はクールだったからその慌てようは懐かしい!」

霞「うるさいこのクズ! あーもう、私も幾ら眠たかったからって……!」

提督「ははは、良い寝顔だったぞ」

霞「何もしてないでしょうね!?」

提督「それはなんとなく憚られたから、何もしてないぞ」

霞「ったく…………」

提督「ん、何か言ったか?」

霞「何も言ってないわよ! ふん!」

バタン!

提督「まったく、いくら自分の弱みを見られたからって、あんなツンツンしなくてもいいのに」

提督「実は最後に感謝を小さく述べたところがなんとも可愛らしい」

↓2

提督「回旋塔って知ってるか」

大和「回旋塔、ですか。昔の公園にあった遊具ですね」

武蔵「提督の言いたいことが分かったぞ」

提督「なに、いきなりか?」

武蔵「回旋塔で遊びたいということだろう。提督はわかりやすいな」

提督「うーむ、近いが違う」

武蔵「違うだと?」

提督「俺がやりたいのは、自分を回旋塔に見立てて駆逐艦の子たちを何人回せるかだ!」

大和(悪い意味で予想より斜め上ですね。いくらなんでも、こんな話は……)

武蔵「ほう、面白そうではないか」

大和(武蔵……!)

―庭―

提督「さあ、来るがいい!」

暁「き、危険じゃないかしら?」

響「地獄の沙汰ほど面白いっていうよ」

暁「暁でもそれは違う意味だと思うんだけど……」

武蔵「ふん、そっちは暁型四姉妹か。自分に自信がないみたいだ」

提督「では、そっちはいったい誰だと……ゆ、夕雲型だと!」

清霜「武蔵さんが楽しいことをしてくれるって!」

早霜「楽しみ……」

長波(面倒なことに巻き込まれたのはわかるぞ)

武蔵「どうする、増やすか?」

提督「ふん、どうせうまく回れないに決まっている。いくぞ!」

武蔵「ああ!」

大和「いいえ、ダメです」

提督「……! ど、どうした大和」

大和「ずっと考えていましたが、やっぱり危険です。やめておいたほうがいいですよ」

武蔵「臆したか。そんなことだから、回旋塔が撤去されてしまったんだ!」

提督「そうだそうだ!」

大和「そこまでいうのでしたら……私が回してあげますよ!」

提督「は?」
武蔵「なに?」

大和「では、行きますね」ガシッ ヒョイ

提督「ちょ、待て、苦し……!」

武蔵「これがまさに首根っこをつかまれるということだな」

提督「冷静に言っている場合か! う、うおおおおおお!」

大和「回旋塔は危険な遊具だから、遊ぶ時には気を付けてください……ね!」グルグル ブンッ

<ヌワー

清霜「すごーい! 司令官と武蔵さんがきれいに飛んで行っちゃった!」

暁「え、ええ、大丈夫かしら……」

―執務室―

提督「遠心力のまま吹っ飛んでいく感覚を味わった。受け身を取らなきゃ強打してたぞ」

提督「意外と一番力あるのは武蔵じゃなくて大和かもな……武蔵とか海のほうまで飛ばされてたし」

下2

―初春型の部屋―

提督「桜餅作るぞ」

初春「ほう、桜餅。悪くないのう」

若葉「そういえば今年は少なかったと記憶している」

提督「昨年は元々作りすぎだったからな」

子日「子日達はもっと食べたいなー」

提督「だからこそ、追加で桜餅を作るのだ。もち米自体も余っていたしな」

初霜「私もお手伝いしますね」

提督「助かる」

初春「わらわは待っておるぞ」

提督「手伝わないならないぞ」

~~~~~~~~

子日「これをつぶせばいいの?」

提督「軽くな」

子日「はーい!」

初霜「こ、こんな感じでどうでしょう」

提督「おお、綺麗な形じゃないか。初めてとは思えないぞ」

若葉「手に張り付いて、うまく形が整えられないな」

初春「全然だめじゃな」

若葉「む」

提督「はいはい、そこで煽りあってないで仲良くする。というか、初春は手伝え」

初春「しょうがないのう」

初霜「若葉、手に張り付くならラップを使って包めばいいのよ」

若葉「なるほど。さすがだな」

~~~~~~~~

初春「うむ、自分で作った物は格別じゃの」

若葉「ほとんど任せてなかったか」

初春「桜の葉でつつんだじゃろう!」

初霜「それで手伝ったって胸張れないと思うのですけど」

子日「でも美味しいのは本当だよ。ちょっと不格好だけどね!」

提督「手作りなんだから、それもまた味の一つさ」

初春「ふむ、よいことをいう」

若葉「でも、作りすぎではないか?」

提督「もち米余ってたからなぁ」

―執務室―

提督「結局また配ることになろうとは。餅って意外と残るんだよな」

提督「そもそも作りすぎなきゃいい話なんだが……」

下2

龍鳳「提督、私の部屋についてなんですけど」

提督「Gでも出たか」

龍鳳「そ、そういうことではないです。仮に見つけても自分で処理しますし……」

提督「それ以外に部屋の相談なんてあるか……?」

龍鳳「私って、改装前は潜水空母でしたよね」

提督「そうだっけ?」

龍鳳「わ、忘れたんですか?」

提督「冗談だ。そうだけど……ああ、もしかして、部屋の位置か。潜水艦で固めていたしな」

龍鳳「はい。軽空母の人たちに転居したほうがいいかなと」

提督「今更面倒じゃないか?」

龍鳳「それは……」

バタン

19「話は聞かせてもらったの!」

龍驤「うちもや!」

提督「えぇ、なんか面倒そうなやつらが来たぞ」

19「面倒とはひどい言い草なのね!」

龍驤「そうやそうや!」

龍鳳「あの、話は聞かせてもらったとは?」

19「部屋の移動に賛成なの!」

龍驤「うちは反対や!」

提督「……」

龍鳳「私、嫌われているんでしょうか」

提督「龍驤は何となく理由はわかるが、イクはなんでだ?」

龍驤「なっ、うちにだって深い理由があるかもしれへんやろ!」

19「イクとしては、仲がいい人の近くのほうがいいと思うの」

提督「ふむ、意外とまとも。で、龍驤は何か言ったか?」

龍驤「なんもいうとらんよ」

提督「というか、決めるのは龍鳳だしなぁ。秘書官に言えば変えてもらえるだろうし」

龍鳳「あの、私は無理にというわけではないですので」

提督「うーむ、ならゲームで決めるか」

龍鳳「ゲームですか?」

19「何でも来いなのね!」

龍驤「負ける気せんで」

提督「じゃあ……戦争だ!」

龍鳳「せ、戦争ですか!?」

19「余裕なの!」

龍驤「じゃあいくで!」

『せーんそう!』

19「軍艦、軍艦、ハワイ!」

龍驤「くっ……!」

19「一本取ってぐーんかん! にーほんとってちょーせん!」

龍驤「あ、待てや! 早すぎ……!」

19「三本とってかった!」

龍驤「ちょいまち! 三本、三本勝負や!」

19「えー、何回やってもイクが勝つの!」

提督「まあ、早すぎたし、いいんじゃないか」

19「提督が言うのなら、また勝負してあげるのね」

龍驤「その言葉、後悔させたる」

龍鳳「戦争って、そっちのですか……」

龍鳳(……なんだか、ちょっと悩んでいたのがバカらしくなってきます)

~~~~~~~~

提督「いやー、意外とあの手のゲームもはまるな」

提督「……あれ、そういえば龍鳳は何の相談をしに来たんだっけ」

下2

提督「忍者屋敷に興味はないか?」

川内「伊賀流と甲賀流なら行ったことあるよ」

提督「え、そうなん」

川内「伊賀流では手裏剣もらったよ。ほら」

提督「あの的に当たるともらえるっていう」

川内「甲賀流は当時のまま残ってるって話だったからね。なかなか古風な感じがして良かったよ」

提督「あー、そっか。俺も行ってみようかな」

川内「うんうん、お薦めするよ!」

提督「……って違う! 今回はわざわざ旅行にはいかん!」

川内「旅行に行かないって、近くに忍者屋敷でもあるの?」

提督「例において夕張と明石が一晩で作った」

川内「……資材で、勝手に?」

提督「後で秘書官に怒られることは考えない」

―からくり部屋―

川内「なんだ、部屋の改造か」

提督「ガッカリする事無かれ。忍者屋敷って言うくらいだから、もちろんのこと色々なからくりが」ポチ

ガコン <ウワアアアア

川内「提督が落とし穴に落ちた!?」

ドスン

提督「痛っ! え、え、ここは?」

川内「え!? う、上から落ちて来たんだけど」

提督「!? 何だそのからくり!」

川内「提督も内容知らないの?」

提督「そりゃ自分からネタバレしたくなかったからな。いや、意外と面白そうだぞ」

川内「こっちはいきなり心臓が飛び出るかと思ったんだけど……」

提督「心配し過ぎ」グルン

川内「回転扉!? うわー、周りの景色と全然見分け付かない」

川内(そういえば、どこに繋がっているんだろう)グルン

川内「……外? えっと、二階だけど……提督なら大丈夫か」

提督「落とし穴は吃驚したのに、回転扉は驚かないんだな」

川内「だって、落ちたのに上から降って来たんだよ。そりゃ驚くって……あれ、二階から落ちたんじゃ?」

提督「急いで登ってきた」

川内「うん、からくりについては分かった。でも、忍者屋敷というには大事なものがあるよね」

提督「抜かりない。過去実際に使われたとされる手裏剣や忍者装飾は準備してある」

川内「すごっ! ……本物?」

提督「妖精さん製作のレプリカ。本物そっくりであることには間違いないが」

川内「じゃ、じゃあ、もしかして触れちゃったり?」

提督「かまわんぞ。レプリカだし、万一壊しても平気だからな」

川内「よしっ! じゃあ行ってくる!」ダッ

提督「あっ、人に向けて投げるのは駄目だぞ!」

―執務室―

提督「伊賀流で手裏剣貰ったって言ってたのに、元気だなぁ。偽物だというには変わりないのに」

提督「……というか、今度本物に行ってみるか。自主製作と比べ物にならないくらい凄いんだろうな。期待しておこう」

↓2

―トレーニング場―

卯月「卯月だぴょーん、がんばりまーす!」

提督「違うな」

卯月「ぴょん?」

提督「そうじゃなくて、エヘ顔ダブルピースして『卯月です! 頑張ります!』の方が近い」

卯月「司令官は注文が細かいぴょん……」

提督「アイドル活動に妥協はせんぞ!」

卯月「なんだかしれーかんが熱いぴょん……」

提督「別に何処のオーディションに出るってわけでもないけどな」

卯月「当たり前だぴょん!」

提督「折角衣装まで用意したし、なにか一曲踊ってみるか」

卯月「うーちゃん、元の子の踊りなんて知らないよ」

提督「まあまあ、そんなに難しくないし、やるだけやってみようではないか」

卯月「しれーかん、自分でやらないからって簡単に言ってない?」

提督「んなことはない。自分で出来ない事を頼むわけないだろう」

卯月「そうぴょん? ……踊れるの?」

提督「もちろん。アイドル島村のファーストシングル。こうして卯月に勧めるまでに完璧に覚えた」

卯月「ちょっとひくぴょん」

提督「というわけで、やるぞ卯月!」

卯月「うー……」

~~~~~~~~

卯月「愛を込めてずっと歌うよ――!」

提督「……ひゅー! ぶらぼー!」

卯月「しれーかん、どうだった!?」

提督「想像以上だ! よくここまで成長した!」

卯月「意外とこういうのも悪くないぴょん」

提督「だろう。さて、俺はこれを……」

卯月「? そのビデオカメラは?」

提督「さっきの歌って踊っているのを撮ってた」

卯月「!? や、やめるぴょん!」

提督「やーだね! 家宝にしてやる!」ダッ

卯月「待つぴょん!」

提督「その恰好で追い掛けて来るか!?」

卯月「あっ……ううう、しれーかん、後で覚えておくぴょん!」

―執務室―

提督「ははは、これでしばらくからかえそうな材料が手に入った」

提督「……さて、いくつかコピーしてクラウドにもうつしておくか。絶対に消させんぞ」

↓2

―庭―

提督「いやぁ、桜が散るのは早いな」

瑞鶴「本当に早く散ってるわね」

提督「早咲きしてたから、その分早いって感じだ」

瑞鶴「ふうん」

提督「さて、葉桜で花見としゃれこむか」

瑞鶴「……提督さんって、今年何回も花見してないかしら」

提督「そうか? あー、そうかもな」

瑞鶴「そんなに桜好きだっけ?」

提督「好きといえば好きだぞ。今年は珍しく早咲きしている桜が近くにあったから観察しているだけだ」

瑞鶴「この桜……というより新芽かしら、の観察ねぇ。私はあんまりわからないわ」

提督「花より団子って感じがするからな、瑞鶴は」

瑞鶴「花より団子って……」

提督「え、違うのか?」

瑞鶴「……否定はしないけど、釈然としない言い方ね」

提督「そんな瑞鶴のための甘味。たまにはみたらし団子だ」

瑞鶴「団子? そういえば、今年ももち米が余ったんだっけ」

提督「そうだ。そんなわけでみたらし団子」

瑞鶴「花見に団子……本当に花より団子になるわね」

提督「そっちのほうがいいだろ?」

瑞鶴「……さすがにいい加減にしないと爆撃するわよ」

提督「ちょ、ちょっとしたジョークだって」

瑞鶴「許してほしければ……そうね、いいお酒も用意してもらおうかしら」

提督「おいおい、昼から酒かよ」

瑞鶴「ほかの人だけっていうの、ずるいじゃない」

提督「本当に何回も花見をしていること知っているんだな。しょうがない、ほら」

瑞鶴「やっぱり準備してるんじゃない。じゃあ、いただきましょ♪」

提督「へいへい」

―執務室―

提督「桜の花びらが落ちて、春が過ぎ去っていくことを連想させてくれるのが葉桜の魅力だな」

提督「まあ、葉桜の言葉すら知らない人もいるくらいにはマイナーな風情かもしれないけど」

下2

まるゆ「木曾さんみたいになってみたいです!」

提督「ふむ、それで俺の所に来るとは、慧眼だな」

まるゆ「何かいい方法があるんですか?」

提督「なりきるのだ!」

まるゆ「……?」


―球磨型の部屋―

木曾「ふーん、まあ似合ってるんじゃないか」

まるゆ「本当ですか!?」

提督「しかし、まさか素直に貸してくれるとはな」

木曾「他ならぬ提督の頼みだしな。服を貸すくらいどうということはない」

まるゆ「ありがとうございます、木曽さん!」

提督「サイズは……こういう時は大体問題無かったりするよな」

まるゆ「御都合主義ってやつですね!」

木曾「はあ? まあ、この服も妖精さん製だし、そういう事があっても不思議じゃないな」

まるゆ「でも、なんとなく木曾さんに近づけた気がします!」

木曾「潜水艦が軽巡艦に近付いたからって何だって話だが……それは洗って返してくれればいいからな」

まるゆ「はい!」

提督「今回は何事も無く終わりそうだな」

「あっ、危ない!」

木曾「ん? うわ!」ドバシャァ

提督「ああ、木曾がどこからともなく出て来た水を盛大に被ったぞ!」

秋月「ご、ごめんなさい、家庭菜園の水を運んでいたらつまずいちゃって……だ、大丈夫でしたか?」

提督「木曾がその水を被った以外は特に被害はないぞ」

秋月「被害あるじゃないですか!」

まるゆ「だ、大丈夫ですか木曾さん?」

木曾「あ、ああ、本当にただの水だからな。しかし、服がぬれてしまった」

まるゆ「では、まるゆが着ている服を!」

木曾「一度貸した物をこの程度のことで返してもらうのは俺の沽券に関わる。とはいえ、確か他の服は全部丁度洗濯中だったか……」

まるゆ「ではどうするんですか?」

提督「俺に良い案がある」

木曾・まるゆ「「?」」

~~~~~~~~

木曾「……なんで俺がまるゆの服なんか……」

提督「ひゅーひゅー、似合ってるぞー!」

木曾「うるさい!」

まるゆ「その、えっと……」

木曾「何も言うな。確かに今はまるゆが着ていた服しかないからな……」

まるゆ「すみません……」

提督「今の内に写真撮っておこう。はい、ピース」

木曾「撫で斬りにするぞ」

―執務室―

提督「めっちゃ恥ずかしがってやんの。すごい珍しい光景が見れたので一発もらった分はチャラだ」

提督「まるゆもまるゆで雰囲気が少しきりっとしていた気がするし、衣装って大切なんだな」

下2

―暁型の部屋―

提督「電、女の子の夢といえば?」

電「お金持ちのイケメンと結婚なのです」

提督「」

電「ご、ごめんなさい。冗談なのです」

提督「あんなに純粋だった電がこんなことに……」

電「テレビで見た言葉をそのまま言っただけです! 電自身の夢は、平和な世界が訪れることですから」

提督「うーん、そこのところ変わらないな」

電「変わるものではないのです」

提督「そか。それで電」

電「何ですか?」

提督「お姫様抱っこをさせろ」

電「話のつながりがないのです!」

提督「お姫様になること、からのお姫様抱っことつなげようとしたら、まさかのイケメンだからなぁ」

電「そんな夢を持つ子のほうがまさかだと思うのですが……」

提督「少々誤算だったがまあいい。さあ、やるぞ!」

電「お断りです」

提督「なぜだぁ!」

電「いつもいっつも思うのですけど、どうしてそれで素直に聞くと思うのですか?」

提督「上官命令だし」

電「パワハラなのです」

提督「……だが、お姫様抱っこは本人が拒否ろうとも強引にすることができるのだ!」

電「はい? あっ……」ヒョイ

提督「ふーはははは! 軽い軽い!」

電「離すのです、離すのです!」

提督「嫌だね! さあ、女の子の夢をかなえた気分はどうだい!」

電「お姫様抱っこが夢の女の子なんていないのです!」

提督「ははは、また冗談か?」

電「違うのです!」

提督「さあて、このまま鎮守府一周だ!」ダッ

電「こういう時の司令官さんは止まらないのですうううう!」

―執務室―

提督「いやぁ、楽しかった。あんなにはしゃぐ電なんて滅多に見ない」

提督「後で手痛い仕返しが来そうだけど」

下2

―雲龍型の部屋―

提督「お前達は露出が高すぎる!」

雲龍「今更……」

葛城「ほんと、今更ね」

提督「ずっと思っていたけど、あえて考えないようにしていただけだ!」

天城「提督は改装前の服の方が良いですか?」

提督「あんまりどっちの方が良いって言うのはよくないが、驚いたのは確かだ」

天城「そうですか……」

雲龍「つまり、着込めということですか?」

提督「好みという事もあるから、そこまではいわないが」

葛城「じゃあ、なんで注意しに来たのよ」

提督「気になるからな」

葛城「勝手ね!」

提督「とはいえ、対策も勿論考えてきた」

天城「対策ですか?」

提督「露出がしたい、だけど危ない。下半身的な意味で。ならばどうすればいい」

葛城「言い方が悪意があるわね」

雲龍「でも、間違ってはない、かも」

提督「そこで出てくるのがホットパンツだ!」

天城「ホットパンツ、といえばあの?」

提督「そうだ、考えている通りのホットパンツだ」

葛城「えー、この下に履くの? 似合わなくないかしら」

天城「私もちょっと……」

提督「不評だな……」

雲龍「和服の下には似合わないから」

提督「それもそう……和服?」

雲龍「はい」

~~~~~~~~

提督「でも、なんだかんだ一応履いてくれるお前らの事は好きだぞ」

雲龍「ちょっと気になったの……」

天城「履いた感覚としては今までどおりなのは嬉しいですね」

葛城「思ったより隠れるわね……でも、合ってないとは思うけど」

雲龍「これを履くなら、いつもの服はなしね」

提督「そうだなぁ。さすがに、ちょっと合って無いわな」

葛城「でも、至福にする分にはいいかも。ちょっと気に入ったわ」

天城「そうですね。提督、これってこのまま貰っていいんですか?」

提督「いいぞ。俺が持っていてもしょうがないし」

雲龍「サイズ合わないですからね」

提督「サイズがあっていたとしても、女性用の服は着ないが」

葛城「でも、サイズピッタリっていうのが恐ろしいわね……」

提督「なんいせよ、気に入ってくれてうれしい。カタログで買ったかいがあった」

―執務室―

提督「サイズは観察のたまものだ。服屋の店員は見ただけでサイズを計れるとか」

提督「そもそもこちとらある程度の個人情報を知る事が出来るし。ほら、青葉とかいるから」

↓2

隼鷹「お花見するぞー!」

提督「あ、俺パスで」

隼鷹「えええええええ!!? 珍しい!」

提督「俺今年何回花見をしたと思ってるんだよ。観察だけなら三月の中ごろから毎日だぞ」

隼鷹「でもほら、酒が飲めるぞ?」

提督「それで釣られるのは呑兵衛だけだ」

隼鷹「可愛い女の子たちと飲めるんだぞ? これは行くしかないでしょ!」

提督「お前達は女の子というにはおっさんすぎる」

隼鷹「酷っ!」

―公園―

隼鷹「酒なしだなんて横暴だー」

飛鷹「ここは公共の場所よ? 駄目に決まってるでしょ」

ポーラ「お酒、お酒~」

ザラ「禁止!」

ポーラ「あう」

提督「……一部の呑兵衛は地獄の形相だな」

霞「たまにはいいでしょ。実際、この人数で飲んだら後の掃除が大変なことになるわよ」

提督「貸切にしてもらって、汚したじゃ評判がた落ちだしな。……というか、黙って用意していたのか?」

霞「あら、勝手に何かするのは提督の十八番じゃないのよ」

提督「全員参加は断れないって。つか、本当にすごい人数だな」

霞「それだけうちも大所帯になったって事ね」

大和「あの、提督」

提督「どうした大和」

大和「どうやら、一部の子達がダッシュでコンビニまで走って行ったみたいですけど……」

提督「それ絶対酒だろ! ああもう、迎えに行ってくる!」ダッ

大和「……言ってくれれば私が行ったんですけど」

霞「あいつも動きたいんですよ。監視役は合ってませんから」

大和「そうですか? ちょっと矛盾している気がしますけど……あ、そういうことですか」

霞「絶対余計な物を買って来ますからね。今から頭が痛いわ」

大和「霞さんも今日は休んでも良いと思いますよ。あちらにカラオケを用意していますし」

霞「カラオケ、ねぇ。あんまり好きじゃないですね。どうせならあっちの百人一首でもしましょうか」

大和「いいですね。私も頑張りますよ」

霞「では、競争しませんか? 負けた方が今日の司令官のお世話をするということで」

大和「はい!」

―執務室―

提督「さすがに百人以上の暇つぶしはビンゴゲーム以外に思いつかなかった。何もしないだけましか」

提督「しかし、なぜかずっと大和が傍にいたんだが、なんだったんだろうか」

↓2

―公園―

提督「昨日あれだけはしゃいだ場所というのが嘘のように静かだな」

暁「レディーにはちょうどいい静けさね」

響「そうかい? だったらそこの散歩コースを一人で歩いて来ていいんだよ」

暁「ひ、響は意地悪ね!」

雷「私もこんな暖かい日に司令官と散歩できてよかったわ」

提督「俺も最近は色々と忙しい日ばかりでな。こういう穏やかな日常が一番だよ」

電「穏やかな日常が一番? この前無理矢理抱いてきた人が何を言っているのです」

提督「電も嫌がってなかっただろ」

電「嫌がってましたけど」

提督「まったく、この間から電は機嫌が悪いな……え、なに」

響「これは憲兵かな」

雷「犯罪者になっても、会いに行ってあげるわ!」

提督「なんでそうなってるの!?」

響「抱いたんだろう?」

提督「そうだが」

雷「いけないわ司令官! どうしてもというのなら、私が!」

暁「? 抱くって、抱っこのことよね。どうして響と雷ははしゃいでいるの?」

電「暁ちゃんは純粋なままでいてほしいのです」

暁「?」

~~~~~~~~

提督「今日はクレープ屋とかもきてないし、おやつはなしかな」

暁「えっ」

提督「……欲しいのか?」

暁「そ、そんなわけないじゃない! 我が儘なんて言わないわ」

電「電はちょっと疲れたのです……」

雷「そうね。私も何か食べたいわ」

響「司令官、私も口が寂しいのだけど」

暁「み、みんながそういうならしょうがないわね。何か食べさせてあげたいわ」

提督(暁、皆はお前のためを思って言っているんだぞ……)

―執務室―

提督「……今日は、何もないな?」

霞「なに慎重になっているの。早く入りなさいよ」

提督「いや、このくらいの時期になると、いつも何かが爆発しているような気がして……」

霞「だいたいあんたが悪いんじゃない。今回も何かしたの?」

提督「いいや! 天地神明に誓って何もしていないと誓おう!」

霞「だったら何も心配することはないでしょ」

提督「そ、そうか? そうだな!」

霞「それじゃあ、私はまだ仕事があるから」

提督「おう! 秘書官もたまには休めよ!」

霞「あんたがちゃんとすればね。そういえば、失敗作の不発弾が入口にあるらしいから気を付けなさいよ」

提督「え、なにそれ。フラグ……じゃあ俺もたまには仕事でも」

ガチャ

大鳳「あ、お帰りなさい提督」

提督「おう、何をしていたんだ?」

大鳳「ええ、そろそろ季節も変わるでしょう。一度要らないものを捨ててすっきりしようかと」

提督「それは良い考えだ。……あれ、そのストーブは」

大鳳「え? ええ、一度確認してから捨てるか考えようと思いまして」

提督「いや、それ……オイル漏れてない?」

大鳳「あ、ほ、本当! 急いで拭かなくちゃ!」

提督「そのダンボールの中には爆竹が!」

大鳳「爆竹……? きゃっ」

提督「やすりも入っているのに投げ……あ、このパターンは!」

                               ヽ`
                              ´
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                         ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´


<ムリヤリスギダロー


霞「あー、今回はまだ小規模ね。何時もと比べたら」



明日、また、立てます。
1000ネタはいつもどおり何でもありの夢落ちで

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