女子高生「豆腐マン?」 (9)
ごく普通の女子高校生・凜香は今、信じられないものと対峙していた。
豆腐。巨大な豆腐が目の前にいるのだ。
凜香「な、何コイツ……。入学式の日に曲がり角で激突したから少女漫画的な展開を期待してたのに、まさか豆腐のコスプレをした変態だなんて」
怪人「落ち着いて。豆腐マンです、私は」
凜香「と、豆腐マン? ますます変態っぽいわ!」
豆腐「ヒーローです、私は町の平和を守る。戦っています。納豆と」
凜香「その倒置法みたいな話し方止めてくんない? キモいからさ」
豆腐「あ、危ない、納豆が、そんな、」
ズガァン!
轟音と共に黒煙が豆香の視界いっぱいに広がった。
凜香「ゴホゴホ……。……きゃあああっ!」
敵の攻撃で吹き飛んだ豆腐マンは塀にめり込んでいた。
更に砕け散った頭部からはなんと父の顔が覗いていた。
凜香「と、父さん!」
駆け寄ると父は低く呻きながら腕に着けている銀色の時計を豆香に渡した。
父「お、お前なら分かってくれると思うが、父さんは死ぬ」
凜香「何言ってんの!? 父さんが死んだら生活費とか」
父「そのために、この『にがりウォッチ』をお前に託す」
凜香「ごく普通の時計じゃない! 正気になってよ!」
父「にがりウォッチのボタンを押すと、にがりパワーがお前のDNAと水素結合して、豆腐マンになることが、できる。お前は、豆腐マンになるんだ」
凜香「どういうこと!? 全く分からないよ!」
父「それから、自分が豆腐であることを他人に漏らしてはいかん、ぐおっ!」
気づかぬうちに凜香の背後にいた納豆マンが速やかに父の首を折った。
納豆「納豆モード・隠密。豆腐マン、排除」
凜香は恐ろしさで腰が抜けてしまった。
尻餅をついた拍子に凜香はウォッチのボタンを押していた。
ポチ
デデデデンデデデン
アフリカ原住民の様なBGMが流れる。
地面から白い巨大な立方体が現れ、凜香を包み込んだ。
凜香「うわぁ……。麹の匂いが半端ないよぉ!」
納豆「なぜ……豆腐マンは排除したはず!」
凜香「残念ね、今から豆腐マンはこ、この私よ! 父の仇、取らせてもらいます!」
とは言ったものの何をどうすれば戦えるのか分からない。
凜香「あー……。何か剣とか無いかな?」
すると地面から純白の剣がにょきっと飛び出して来た。
凜香「おお~、豆腐サーベルね!」
右手に持ち、満足げにブンブンと振り回す。
攻撃力が高いのかどうかは知らないが素手よりかは心強い。
納豆「そうか……。納豆モード・ひきわり」
納豆マンは両腕を広げたと思うと粘り気のある糸を放ってきた。
ヒュンヒュン! ニュルッル!
凜香「何とか防いだけど剣に糸が絡みついちゃった……。ってうわ!」
信じられないほどの強さで豆腐サーベルが吹っ飛んだ。
納豆「クク……。牙を抜かれた虎をどうして恐れようか」
納豆マンは奪い取った剣をフェンシングが如く突き出す。
凜香「これじゃあまともに近づけない! 何か遠距離系の攻撃はないの?」
???「豆腐ピカリーンを使えば良いじゃないか」
頭上からそう間延びした声が降ってきた。
見上げると騎士の兜に水玉パンツ一丁という珍妙な格好をした変態が塀の上に座っていた。
???「ほら、早く体内のにがりを絞り出してごらんよ」
凜香「ごめん、どうやって絞り出すの!?」
???「両手を握りしめて汗を出す要領で力むんだ。その後技名を叫んで」
変態に言われた通り力んだ後に「豆腐ピカリーン!」と叫ぶ。
ピカアアアアアアアアアアアアアアア!
全身から迸ったにがりが光線となって納豆マンを焼き尽くした。
納豆「プギャアアNATTOォォォ!!」
凜香「NOにがり NO豆腐……」
奇妙な決めゼリフを吐きながら凜香は元の姿に戻った。
騎士のコスプレをした変態に礼をしようと思ったがその時には既に誰もいなかった。
~第一章『NOにがり NO豆腐』完~
第二章をお楽しみに!
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