妹「えへへ、楽しいなぁ…」(112)

深夜 路地裏

チンピラ1「嬢ちゃん、こんな時間に何してんの?」

妹「満月だから、お散歩してたの?」ニコ

チンピラ2「散歩?お嬢ちゃん何歳?」

妹「10歳!」

チンピラ1「おいおい、ガキはもう寝る時間だぜ?」

妹「むぅ、ガキじゃないもん!」

チンピラ2「…………」ガタガタ

妹「お兄さん、どうしたの?」

チンピラ1「てめえ、何震えてんだよ」

チンピラ2「に、逃げるぞ…」

チンピラ1「は?」

チンピラ2「いいから逃げるんだよ!」グイ

チンピラ1「何で逃げ───」

ザシュ

チンピラ1「─────」ドサッ

チンピラ2「あ、あ……」ガタガタ

妹「今日は寒いもんね…私が暖めてあげるね」ポタポタ

チンピラ2(足が動かねぇ…!)ガクガク

チンピラ2(このままじゃ、殺される)

妹「んんっ…!やっぱり人の血ってあったかい!それに…」ペロ

妹「すっごく美味しい」トロン

チンピラ2「く、来るな…や…止めてくれ!」

妹「お兄さんも私のオモチャにしてあげるね」スタスタ

チンピラ2「────」

ザシュ

妹「はぁ…気持ちいい…」ベチャ

妹「人を切り刻むのって、何で楽しいんだろ」クス

妹「んく…お腹もいっぱいだし、そろそろ帰ろうかな」スッ

トコ…

妹「んっ…?」

少女「あっ………」

妹「こんばんは」ニコ

少女「…………こんばんは」ボソ

妹「もしかして、『初めて』?」

少女「………」コクン

妹「そっか…じゃあ、はい」グチョ

妹「右腕はまだ新鮮だから…舐めるだけでも落ち着くよ?」スッ

少女「…………」ペロ

少女「っ……ぅ?!」ゾクゾク

妹「美味しい?」

少女「………うん」ペロ

妹「ぐちゃぐちゃにしちゃったけど、私はもういいから好きにしていいよ」ニコ

少女「………いいの?」

妹「うん、私はもう帰るから」

少女「ありがと…」ニコ

妹「ううん、じゃあバイバイ」フリ

少女「バイバイ…」フリ

妹の家

ガチャ

妹「………ふぅ」

兄「おかえり」

妹「わっ?!お兄ちゃん、まだ起きてたの?」

兄「あぁ……」ジロ

妹「えへへ、お洋服…血まみれにしちゃった」

兄「……お風呂、入ってきな」

妹「お兄ちゃん、今日も洗ってくれる?」

兄「いいけど…」

妹「わーい、やったー!」ヌギ

兄「ここで脱ぐなよ」

妹「あっ…ごめんなさい」シュン

風呂場

兄「………」ゴシゴシ

妹「んん~♪」

兄「ご機嫌だな」ゴシゴシ

妹「だって、お兄ちゃんに洗われるの気持ちいいんだもん」ニコ

兄「そっか…」ゴシゴシ

妹「うん!」

兄「今日は………」

妹「ん?」

兄「………」ゴク

妹「お兄ちゃん?」

兄「今日は、『何個』オモチャにしたんだ?」

妹「えっとね、2個!」

妹「2つとも大きくてバラバラにするの大変だったの」

兄「っ……そ、そっか」ゴシゴシ

妹「途中で他の娘にも会ってね、分けてあげたの」

兄「妹は偉いな…」ナデ

妹「えへへ♪」

妹「今度、お兄ちゃんにも持ってきてあげるね」ニコ

兄「い、いや…俺はいいよ」

兄の部屋

妹「お兄ちゃん♪」ギュム

兄「自分のベッドで寝ろよ」

妹「やーだ!」スリ

兄「…まぁ、暖かいからいいけど」

妹「うんうん、あったかー」ギュゥ

兄「はいはい」ギュゥ

妹「こうしてるとね…お兄ちゃんの夢をみるの」

兄「俺の夢?」

妹「うん、お兄ちゃんをオモチャにする夢…」ニコ

兄「………!」ゾワ

妹「お兄ちゃん…」ギュゥ

兄「…………」

翌日 学校

女「おはよ、兄くん」

兄「ふぁ…おはよう」

女「寝不足?」

兄「ちょっと、な」

女「妹ちゃんの帰り待ってたの?」

兄「………あぁ」

兄「お前は待たなかったのか?」

女「私はあんまり見たくないの…血まみれで帰ってくるあの子を」

兄「俺は洗ってやらないといけないからな」

女「ふふ、ほんとに仲良いね」

兄「普通だろ?」

女「普通…かぁ」

────
──

教師「10歳を迎えた少女は残虐的行動をするようになる」

教師「これは女性特有のもので、残虐的行動の衝動は10歳を迎えた瞬間から起こる」

教師「11歳になると衝動は無くなるが、自らが行った残虐的行動は一切覚えていない」

教師「部分的な記憶喪失」

教師「これらの原因は今も分かっていない」

教師「この場にいる女子も自分がどんな残虐的行動をしたのかは覚えていないだろう?」

女生徒「先生、最近のデータだと残虐的行動した女性は、後に犯罪を犯さないとか」

教師「あぁ、確かに…残虐的行動が発見されてから女性の犯罪係数は激減した」

教師「『一生分の罪』を10歳の内に犯したからかもしれんな」

──


帰り道

兄「………」スタスタ

女妹「こんにちは」ヒョコ

兄「うわぁ?!」ビクッ

女妹「相変わらず良いリアクションですね、兄さん」クス

兄「女妹ちゃん、驚かすなよ」ハァ

女妹「ごめんなさい、気配を消していました」

兄「いや、怖いから…」

女妹「今日は姉さんと一緒じゃないんですね」キョロ

兄「あぁ」

女妹「では、今日は私が兄さんを独り占めです」ギュゥ

兄「お、おい…」

女妹「…………」ニコ

兄「………!」ゾワ

女妹「そんなに怯えないで下さい」

女妹「衝動は夜しかきませんから」スリ

兄「女妹ちゃんも、夜中に散歩してるの?」

女妹「もちろんです!最近は綺麗な瞳を集めて、お手玉にして遊んでるんです」ニコ

兄「………は?」

女妹「力を入れすぎると潰れちゃうから、難しいんですよ?」クス

兄(何言ってるんだ…?)

女妹「兄さんは私達が『お散歩』してるの見たことないんですか?」

兄「実際には無いかな…」

女妹「じゃあ今晩、私と『お散歩』しません?」

兄「え?」

女妹「大丈夫です、親族や知り合いなら衝動も抑えられますし…」

女妹「兄さんの身の安全も私が保証しますから」ニコ

兄「…………」

深夜 兄の家

兄「もう、そろそろ約束の時間か…」

兄「見てみたい気もするけど」

兄「見てしまったら引き返せない気がする」

兄「………どうするか」

1、待ち合わせ場所に行く
2、そのまま寝る

公園

女妹「こんばんは、兄さん」ニコ

兄「あぁ…」

女妹「来てくれると思ってました」

兄「俺もちゃんと見ておきたいからな」

女妹「ふふ、後悔しないで下さいね」

兄「覚悟は出来てるよ」

女妹「では、行きましょうか」ギュゥ

兄「静かだな」

女妹「この時間は誰も外に出ないですよ」

女妹「日本の偉い方が出ないようニュースで言ってましたし」

兄「お前らに襲われるからな」

女妹「それでも襲われる人間がいるんです」

女妹「私達の存在を信じてない人も多いということですね」クス

兄「俺は妹がソレだからな…」

女妹「兄さんは私達のこと、どのくらい知ってますか?」

兄「深夜に起きる衝動を抑えるために人を襲う」

女妹「授業で習う内容ですね…」

兄「あんまり覚えてないしな」

女妹「では、おさらいしましょうか」クス

兄「よろしく頼む」

女妹「はい」ニコ

女妹「衝動にも、それぞれ個性があるのをご存知ですか?」

兄「個性?」

女妹「はい、人の血を飲んだり肉を食べて衝動を満たす方」

女妹「人の体をバラバラにしたりオモチャにして満たす方」

女妹「多くの人を殺すことで満たす方」

女妹「大きくこの3つの個性に分けられます」

女妹「大抵は、肉を食べたりオモチャにして満たす方が多いです」

女妹「私と兄さんの妹ちゃんはオモチャにすることで衝動を満たしています」

兄「…なるほど」

女妹「一人や二人をオモチャにすれば衝動は満たされるんですけど…」

女妹「人を殺すことで満たされる方は何十人も殺さないと満たされません」

女妹「衝動が満たされなければ、私達は死にます」

兄「………」

女妹「姉さんは人を殺すことで満たされる方だったんですよ」

兄「えっ、女が…?」

女妹「はい、本人は覚えてませんけど」

女妹「姉さんは凄かったんですよ」

女妹「カッターナイフ一本で何十人も殺してたんです」

兄「嘘、だろ…?」

女妹「本当ですよ」

女妹「お母さんが姉さんの後をつけて日記を書いてたんです」

女妹「この前、偶然見つけて私も驚きました」クス

兄(あの女が…そんなことできるはずない)

女妹「でも勿体ないですよね」

女妹「ただ殺すだけなんて面白くもなんともないのに」

兄「そういう問題じゃないだろ…」

グチャ

兄「?!」

女妹「あっ………」

金髪「あら、こんばんは」

女妹「こんばんは」ペコ

金髪「お楽しみ中だったかしら?」

女妹「この人は違います」

金髪「そうなの…?」

金髪「残念ね、凄く美味しそうなのに」ペロリ

兄「食べて満たすタイプか」

金髪「えぇ、さっきまで食事をしていたのだけど…」

金髪「まだデザートは食べていないの」ニコ

兄「っ………!」

女妹「ダメですよ…」ザッ

金髪「貴女、本当に良いの?」

金髪「その人、かなりのレアよ?」

兄「レア…?」

女妹「確かに兄さんは魅力的です」

女妹「でも、兄さんは私の大切な人ですから」ニコ

金髪「………はぁ」

女妹「それに兄さんを食べなくても…手に良い物があるじゃないですか」クス

金髪「あぁ…これ?」クス

グチャ

兄(何だ…暗くて良くみえな───)

金髪「私、舌が大好物だから…最後に食べようと思ってね…」

兄「………は?」

金髪「このブニョブニョした感触が最高よね」

グチャグチャグチャグチャ

金髪「ふぅ、ごちそうさま」ペロ

兄「………」

女妹「兄さん、口があいてますよ?」

金髪「あら、美味しそうな舌ね」ジッ

兄「っ?!」

金髪「冗談よ」クス

金髪「さて、そろそろ私は行くわね」

金髪「貴方とは、また会いたいわ」ニコ

兄「俺は遠慮したいな」

金髪「あら、冷たいのね…」

金髪「じゃあ、またね」スタスタ

女妹「兄さん、あの人には気をつけて下さいね」

兄「どうしてだ?」

女妹「次に会ったら食べられますよ?」

兄「…………」

───
──


女妹「この辺ですかね…」

兄「ここに何かあるのか?」

女妹「はい!」

ガチャガチャ

兄「…何だ、それは?」

女妹「ノコギリです」ニコ

兄「女妹ちゃんのか?」

女妹「はい、ここに隠してるんです」

兄「そんなもので何を───」

女妹「来ましたよ」スッ

兄「?」

兄(あれは……)

OL「はぁ…はぁ…早く帰らないと…!」

兄(………まさか)

女妹「あは…みぃつけましたぁ…」グニャ

バッ

兄「ま、待て……!」

女妹「…………」タッタッタッ

OL「だ、誰っ……?」

女妹「…………」ギラ

OL「ひぃ…?!」

ザシュ

OL「っあ…かっ…?!」ズキン

女妹「こんな時間に外に出ちゃダメですよ…?」ポタポタ

女妹「聞こえますかぁ?」ゴリュ

女妹「ノコギリの刃が骨に当たってる音…」ゴリュ

女妹「綺麗に切断してあげますからね」ニコ

ゴリュゴリュゴリュゴリュ

OL「いやぁぁぁぁぁァァァ!!」

OL「助けてぇぇぇ!」

兄「………」ガクガク

女妹「うるさいですよ…?」ザク

OL「──────」

女妹「ふふ、さぁ楽しみましょう」ゴリュ

女妹「兄さん!右手をプレゼントします」ブン

グチャ

兄「……っぁ?!」

女妹「ふふふ…あははははは」ザシュ

ザンゴリュ…グチャ

兄「…………」

───
──


兄「………」パチ

兄「……ここは、俺の部屋か」キョロ

兄(いつの間にか帰ってたんだな)

兄「ん…何だこの箱?」

女妹『兄さんに差し上げます』

兄「…………」パカ

目玉 グチャ

兄「うわぁぁ?!」ブン

ガシャン

兄「はぁ…はぁ…?!」

ガチャ

妹「お兄ちゃん、どうしたの?」

兄「何でもない…」

妹「昨日は、どこに行ってたの?」

兄「ちょっとな…」

妹「…………」ガシ

兄「?!」

妹「誰といたの……?」

兄「別に誰でも───」

妹「…………」ドン

兄「………っ!」ドサ

妹「昨日は女妹ちゃんとお散歩してたんだよねー?」ピト

兄「な、なんで……?」

妹「私に隠し事するなんて酷いよ、お兄ちゃん」ニコ

兄「…………」

妹「お散歩、楽しかった?」

兄「……あぁ、最高だったよ」

学校 屋上

女「兄くん!」ギュゥ

兄「いきなり、どうした?」

女「どうしたって、昨日妹とお散歩に行ったんでしょ?」

兄「あぁ…」

女「大丈夫…?」

兄「身体は何ともないさ」

兄「女、そろそろ離れろ」

女「ごめん…でも、今はこうさせて」ギュゥ

兄「………」ナデ

女「あっ……」ピク

兄「嫌だったか?」

女「ううん、嬉しい」ニコ

兄「なら、続ける」ナデ

女「んっ……//」

兄(女も…女妹ちゃんみたいに…)

女妹『ふふふ…あははははは』

兄「っ…!」ブル

女「兄くん…?」

兄「…………」ガタガタ

女「…怖かったよね」ピト

兄「………」

女「大丈夫、兄くんは大丈夫だから」ナデ

兄「……ありがとな」

深夜 女の家

女妹「ふふ♪」

女「ご機嫌ね」トコ

女妹「姉さんは不機嫌ですね」

女「昨日はどういうつもりなの?」

女妹「兄さんとのお散歩…まだ怒ってるんですか?」

女「兄くん、凄いショック受けてた」

女妹「怯えている兄さん、可愛いですよね」クス

女「ふざけないで!」

女妹「…………」

女妹「姉さんも私達と同じじゃないですか」

女「何を───」

女妹「たくさん人を殺して、多くの人を怯えさせて…」

女妹「忘れてしまったら罪は無かったことになるんですか?」

女「っ?!」

女妹「私は知ってるんですよ、姉さんの罪を」

女「どうして…?」

女妹「では、お散歩に行ってきますね」ガチャ

女「…………」

女「私の罪…?」

ズキン

女「っ…!」

女「……行かなきゃ」

ガチャ

女妹「はぁ…私も嫌な女ですね」スタスタ

女妹「姉さんは悪くない」

女妹「そんなことは分かってるのに…」

女妹「私も、忘れてしまうんですよね」

ドクン

女妹「………ふふ」

女妹「忘れてしまうなら、何をしても構わない」

女妹「そう思いませんか?」ニコ

リーダー「へぇ、気づいてやがったのか」スッ

女妹「近づいて来てくれる方がいるなんて驚きました」クス

リーダー「まぁ、お前みたいな『化物』に近づく奴いないだろうな」

女妹「『化物』?」ピク

リーダー「人を殺したり食べたりオモチャにするような奴等」

リーダー「『化物』以外に何て呼べばいいんだよ?」

女妹「……確かに、そうかもしれませんね」

リーダー「何だよ、認めんのか?」

女妹「でも、私達だって好きでこんな『化物』になりたかったわけじゃないんですよ」

女妹「姉さんもきっと…」

リーダー「まぁ、何だっていいさ」

リーダー「『化物』は全員殺すからよ」

女妹「ふふ、面白いこといいますね」

女妹「衝動は脳のリミッターを解除する効果があります」

女妹「普段出しきれない力を私達は出すことが出来る…」

女妹「だからこそ、体格に絶対的な差がある男性や大人も殺す事が出来るんです」

女妹「その事をお分かりですか?」ニコ

リーダー「あぁ、良く分かってるよ」

リーダー「だからお前等は『化物』なんだよ」

女妹「はぁ、貴方と話すのは疲れます」

女妹「もう終わりにしましょう」スッ

リーダー「ノコギリとは『化物』にぴったりな武器だな」

女妹「…………」スタスタ

リーダー「じゃあ俺の『武器』見せてやるよ」

女妹「………」ピタ

ゾロゾロ

不良グループ「………」ニヤニヤ

リーダー「さぁ、始めようぜ」ニヤ

女妹「っ……?!」

リーダー「安心しろ、お前を殺した後…姉貴も後を追わせるからよ」

女妹「?!」ピク

女妹「姉さんの衝動は終わりました」

女妹「もう関係ありません!」

リーダー「お前の姉は俺の兄貴を殺したんだよ」

女妹「………っ」

リーダー「だから、お前を殺して…あの女を絶望させてから殺す」

女妹「………」

女妹「そんなことさせません…」

リーダー「この人数相手じゃ『化物』も終わりだろ?」ニヤ

女妹「絶対に貴方達を止めます!」バッ

リーダー「てめえ等やっちまえ!」

不良グループ『うおぉぉぉぉぉ!』

女妹「はぁぁ!」ザシュ

キン

女妹「もっと楽しませて下さいよぉ!」ブシュ

ドス

女妹「くっ…?!」ブン

バキ

女妹「あぁぁァァァ!!」グチャ

メキ ドス バキ

───
──


女妹「くっ…ぁ…」ビチャ

リーダー「チッ…7人も殺しやがって…!」ドス

女妹「かはっ…?!」

リーダー「ぐちゃぐちゃにしてから殺せ」

グギギギ

女妹「っ…あぁぁ?!」

ゴキッ!

女妹「…………??!」

ゴキッ ゴキッ ゴキッ

リーダー「もうどこも動かせねぇだろ?!」

女妹「…………」ボー

リーダー「あっはははは!!」

リーダー「苦しみながら死ね!」

リーダー「お前等なんて死んで当然なんだよ!!」

深夜 兄の家

兄「まだ帰ってこないか…」

プルルル

兄「ん…女から電話?」

ポチ

兄「もしもし?」

女『こんばんは、兄くん』

兄「…こんな時間にどうしたんだ?」

女『兄くんに来てほしい場所があるの』

兄「どこだ?」

ヤメテクレ ザシュ

兄「………女、何してるんだ」

女『…………』カチチ

ザシュ

───
──


兄「はぁ…はぁ…!」タッタッ

兄「ここか…!」

イテェ タスケテクレ オエッ

兄「っ?!」

兄「何だコイツ等…どいつも怪我して───」

女妹「─────」

兄「女妹ちゃん…?」

兄「何があったんだ!」ギュッ

兄「………死んでる」ガタガタ

兄(誰が女妹ちゃんを…)

兄「女の姿もないし、どこへいったんだ」キョロ

兄(一つだけ逃げてる痕跡のある血痕がある)

兄「…まさか」

路地裏

リーダー「も、もう許して───」

ザシュ

リーダー「ぎゃああああ?!」ブシャ

女「…………」スタスタ

リーダー「く、来るなぁぁ!」ブン

女「…………」ヒュン

女「………」ブン

ザシュ

リーダー「─────」

女「…………」ポタポタ

兄「……………女」

女「…こんばんは、兄くん」ニコ

兄「お前、どうして…」

女「ふふ、あははははっ!」

兄「?!」

女「ごめんね、兄くん」

女「つい…可笑しくて」クス

兄「何が、可笑しいんだよ…?」

女「私ね、妹達のこと『化物』だと思ってたの」

女「自分が前にしてきたことを忘れて…」

女「でもね…妹が死んでるのを見て怒りとか悲しみとか」

女「そんな感情は一切おきなくて…ただ昔の記憶を思い出したの」

女「そしたら体が勝手に動いて…ふふ、凄く楽しくてね」

女「今も、誰か殺したくて仕方がないの」

兄「嘘だな」

女「…えっ?」

兄「お前は…もう誰も殺したくなんかないはずだ」

女「違うよ…私は殺したくて堪らないの…」

兄「…なら、そんな顔するな」

女「………」

兄「お前は殺しを楽しんでなんかいない」

女「違うよ…違う違う違うっ!」

兄「女妹ちゃんが死んで悲しくなかった?」

兄「そんなはずない!」

兄「お前は怒り悲しんだからこそ、アイツ等を殺したんだよ」

兄「それをお前は衝動のせいにして…罪の意識から逃げようとしてるんだ」

女「っ…ぁぁああ!」ブン

ガキン

女「そのノコギリ……」

兄「あぁ、女妹ちゃんのを借りたんだ」

女「…………」ポロ

兄「…お前は『化物』なんかじゃない」

兄「10歳の頃の女は、もういないんだよ」

───
──


教師「稀に10歳の頃の衝動の記憶を取り戻すケースがある」

教師「感情の高ぶりによって思い出すと言われているが…詳しいことはわかっておらん」

教師「記憶を取り戻した者は昼夜関係なく人を殺し続ける」

教師「底知れぬ殺人欲求に苦しむだろう」

教師「もしも…ここにいる女生徒の誰かが記憶を取り戻した時」

教師「私達はその生徒を殺さなければならない」

教師「それが、『救い』となるだろう」

───
──


女「ぐす…ひっく…」ポロ

兄(俺は女を救いたい)

兄(記憶を取り戻した女は、これから更に多くの人を殺すだろう)

兄(そこに彼女の意思は存在しない)

兄(ただ人を殺すだけの未来)

兄「っ…!」ギリ

兄(俺に出来ることは…!)

1、女を殺す
2、女を受け入れる

兄「…………」ギュッ

女「兄…くん?」グス

兄「俺は、ずっとここにいる」

女「…………」

兄「お前が嫌でも離れないからな」

女「………うん」ギュッ

兄(そうだ、何も関係ない)

兄(女がどんな存在でも…俺の気持ちは変わらないんだ)

兄(隣に居続ける…)

兄(それが女の『救い』になるような)

───
──


1年後 兄の家

妹「ふぁぁ…おはよぅ…お兄ちゃん」ウト

兄「おはよう、て言うか昼だぞ」

妹「んん…昨日は夜更かししちゃって…」

兄「『お散歩』か?」

妹「ふぇ?」

妹「夜中にお散歩なんてするわけないでしょー」

兄「…そっか、そうだな」

妹「…?変なお兄ちゃん」クス

兄「確かにな」スタスタ

妹「今日もデート?」

兄「あぁ」

妹「いいなぁ、私もお兄ちゃんとデートしたい!」ギュッ

兄「兄妹じゃデートじゃないだろ…」

妹「じゃあ、お出かけしたい!」

兄「はぁ…また今度な」ナデ

妹「んー、約束だよ?」

兄「約束だ」

妹「えへへ」ニコ

昼 公園

兄(さて、待ち合わせの30分前だが…)

女「こんにちは、兄くん」ニコ

兄「…何時からいるんだ?」

女「2時間前くらいだよ?」

兄「早すぎる」

女「兄くんとのデートが楽しみで待ちきれなかったの」

兄「それは…まぁ、嬉しいけど」

女「ふふ」ギュッ

兄「人が見てるぞ」

女「そうなの?」スリ

兄「っ…」ピク

女「ねぇ、兄くん」ジッ

兄「…ここでか?」

女「ダメ?」

兄「…………」スッ

女「優しいなぁ…兄くん」チュッ

兄(女が記憶を取り戻したあの日から俺は女と付き合うことになった)

兄(お互いの気持ちを告白し、これからどうしていくか俺達は話し合った)

兄(女は記憶を取り戻した事によって再び人を殺すようになった)

兄(殺しても殺しても女の衝動はおさまらず、いつしか苦しむようになっていった)

兄(底知れぬ殺人欲求…俺はその欲求を『愛』に変えようとした)

兄(少しずつ、女は変わっていった)

女「んっ…ぅ…」チュッ

兄「…っ…ぷは」

女「ぁっ…まだ離れちゃダメ」チュッ

兄「んんっ?!」

兄(女は俺をいつしか求めるようになった)

兄(正直それは予想以上のものだった)

兄(女の殺人欲求は以前よりなくなっていったんだが…)

兄(そろそろ息が…)

女「ぷはぁ…♪」

兄「はぁ…はぁ…!」

女「相変わらず兄くんの苦しそうな顔、可愛い」ニコ

兄「嬉しくないんだが」

女「すっごく興奮してきちゃった…」

兄「流石にそれは、ここじゃダメだ」

女「私は見られてても平気だよ?」クス

兄「…俺は平気じゃない」

女「じゃあ、人目のないところに行こ♪」ヒラ

兄「……今日は白のワンピースか」

女「似合ってる?」

兄「似合ってるよ」

女「白じゃ『汚れ』が目立っちゃうかな…」クス

兄「汚さなきゃいい」キュッ

女「兄くん?」

兄「もう汚させない」

女「………うん」

女「ねぇ、兄くん…」

兄「ん?」

女「私、すごく楽しいよ」ニコ

兄「…………」

兄「そっか」ニコ

女「うん!行こう!」グイ


──
───
────カチチ

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