咲「無人島を買った」 (70)

立ったら書く

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咲「もうすぐ着くかな」

サバババーン…(波の音)




グオオオオオオオン…(船の音)

咲「…」



サバババーン…

グオオオオオオオン…

咲「…」

サバババーン…

グオオオオオオオン…





咲「着いた」

ザバーン


咲「すごい、これが島」

ザバーン

ザバーン

咲「長野からはちょっと遠かったね」

咲「でも、手ごろな値段でよかったよ」


ザバーン

咲「うーん、いい天気」

咲「遠くに陸地が見える、あっちは本州側かな」

咲「それでこっちが四国側」

ザバーン





……
………

ザバーン


咲「まずは住みかの整備だね」

咲「安心して過ごせるように作らないとね」

咲「台風の心配もあるし、野生動物がきたら怖いし」



ガションガション(土をならす音)

ガションガション(木を切る音)

ガションガション(岩を運ぶ音)




咲「さすがに自分で家を作るのは無理だと思ったけど」

咲「こんなものを借りてきたよ」

ジャキーン

咲「パワードスーツ。なんかすごい」

ガションガション

咲「これを装着すると、重いものでも軽々持ち運べるんだって」

咲「わたしが魔王だからじゃないよ、誰でもできるんだってば」




ガションガション


咲「よいしょっと」


ガションガション


咲「ふう」


ガション



咲「はあ、はあ…」

咲「ひとまず、完成かな」


咲「外観はちょっとごつごつした感じだけど」

咲「中は快適に過ごせるようにできたと思う、うん」




咲「というわけで、入ってみるよ。ただいま」ガチャ

咲「建てたばかりだから、木のいいにおい」




咲「気持ちよくて、このまま寝そう」ゴロン


咲「波の音がする」

咲「窓からは海が見えるし、昼間は南の空から日がよく入る」


ゴロゴロ


咲「すてき」








……
………


咲「食べ物を手に入れないとね」

咲「しばらくは、持ってきた食料でなんとかするけど」

咲「新鮮な食べ物も欲しいよね」

咲「はてさて…」




ポチポチ

咲「もしもし、お姉ちゃん?」

咲「ちょっとお願いがあって」

咲「ちっちがうよ、そんなんじゃないって」

咲「だからちがうって、ええとね…」




咲「もう、お姉ちゃんたら…」

咲「で、この番号に電話すればいいんだね」ポチポチ



咲「もしもし、宮永咲と申しますが…」






咲「魚の釣り方と野菜の育て方を教えてもらったよ」


咲「それにしても、亦野さんも渋谷さんも」

咲「こんな知識ばっかり増やさないで、麻雀もっとがんばればいいのに」

咲「なんてね」







咲「とりあえず、野菜のほうは、こんど種を持ってきて植えるとして」

咲「まずはお魚」




バキッ

ゴソゴソ…

咲「釣り竿、できた」

咲「敬意を表して、マタンゴ1号と名付けよう」

咲「魚釣りって初めてだな…長野は海ないし」


ザバーン

ザバーン




……
………


パチパチ…

咲「お空が、もう真っ暗だね。きれいな星」

咲「たき火がまぶしい」




パチパチ…

咲「さすが直伝のマタンゴ1号、よく釣れる」

咲「自然の恵みに感謝だね」

咲「あまったお魚と小エビは、タイドプールで飼育しよう」




咲「ふう、よく食べた」

咲「もうおなかいっぱいだよ」

咲「やっぱり、わたしはお魚は見るより食べる派かな」


パチパチ…




パチパチ…

咲「さて」

咲「今日は疲れたから、そろそろ寝ようか」


咲「おやすみ」







……
………

咲「今日も天気がいいね」

咲「島の反対側に行ってみるよ」


ザクザク…

ザクザク…




咲「うんしょ、よいしょ」

咲「小さな島とはいえ、反対側まで行くのは大変だね」

ザクザク…

咲「まだかな」




ザクザク…

咲「と…遠い」

咲「足が痛くなってきたし、そろそろ限界」




ザバーン

ザバーン…


咲「…」

咲「あれ、波の音かな」



ザバーン

ザバーン

咲「海が見える…」

ザバーン


咲「やった、反対側だ」




咲「反対側は、海岸のすぐ手前が林なんだね」

咲「ヘビとか出そう…」



咲「でも、少し休んだら、林の中に入ってみるよ」




ザクザク

咲「入ってみると、外から見てるほど暗くないね」

咲「怖くない」


ザクザク

ザクザク




バサバサッ

咲「うわわっ」

バササーッ

咲「びっくりした…大きな鳥…」

バッサバッサ

咲「ほかにもいるみたいだね」



バササーッ

バササーッ

咲「あの鳥」

咲「キジかな…ふんふむ…なるほどなるほど…キジ肉…」

ポチポチ

咲「もしもし、お姉ちゃん? ええとね…」




ガサッ

咲「…」

ガサガサ

咲「…」

バサバサーッ

咲「よしいけ、シャープシューター1号」

ビュンッ

グエーッ

咲「やった、しとめた」




咲「さすがに今から小屋に戻る力はないから、今晩はここでキャンプだよ」

咲「持ってきたテントを設置して、と」

咲「今日の晩ごはんは豪華だよ、マタンゴ1号とSS1号のおかげ」




パチパチ

咲「おいしい」

咲「ふう…ごちそうさま」

パチパチ…


咲「今日もきれいな星だね」

咲「おやすみ…」








……
………



咲「今日はプロリーグの試合のお仕事だから、本州に帰ってきたよ」

咲「もう麻雀なんてやめたい…」

咲「早く島に行きたい…」


和「咲さん、どうかしましたか?」

和「なんだかずいぶんお疲れの様子ですが」

咲「うん、だいじょうぶ」

和「では急ぎましょう、試合に遅れますよ」

咲「ご、ごめん和ちゃん」




咲「カン! 嶺上開花!」







……
………


ザバーン

咲「ようやくお休みだよ…」

咲「なんだか1週間が長かった…」




咲「今日は、島の真ん中を調べに行くよ」

咲「先週のうちに、島を横断するトロッコを敷いておいてよかった」

咲「移動が楽ちんだよ」

ゴトゴト…




咲「このあたりが、島の中心部だね」

咲「小高い丘のふもと、小さな川が流れる静かなところ」

咲「この丘に登ったら、島全体が見渡せるのかな」



咲「でもわたしが探しているのは」

ガサガサ

咲「きっと、この辺にある気がする」

ガサガサ

ガサガサ…


咲「あ、やっぱりあった」


咲「ほら穴の入り口」


咲「こういうところには、だいたいほら穴があるんだ。本で読んだもん」



咲「日当たりのいいところだから、じめじめしてないね」

咲「風が通るし」

咲「よかった、すてきなところだ」




咲「石と木で、ここに目印を作るよ」

咲「よいしょ、よいしょ…」

ガサガサ

ガサガサ…

咲「はあ、はあ…」

ガサガサ…

咲「よいしょ、っと…」

咲「つ、疲れた… でもこれでよし」


咲「今日は、日が出ているうちに小屋に帰ろう」






……
………


咲「…」



和(咲さん、最近ちょっと様子が変じゃないですか…?)ヒソヒソ

和(顔色悪いし、ずいぶんやせてしまって)ヒソヒソ

久(呼びかけても気づかないし)ヒソヒソ

久(常に心ここにあらずって感じね)ヒソヒソ

福路(でも、プロリーグの成績はうなぎのぼりですよね)ヒソヒソ

池田(きっとやばいもんでも食ったんだし)ヒソヒソ




咲「カン! もいっこカン! 嶺上開花!」








……
………


咲「島なう」




咲「今日から12月、だいぶ寒くなってきたね」

咲「朝は、少し雪が降ってたし」

咲「でも、小屋のまわりはこんなにすてき」

咲「ビニールハウスの中では、冬でも野菜が育つんだよ」

咲「きれいなお花も、こんなにたくさん」




咲「釣ったお魚は、干してくんせいにすれば長持ちするし」

咲「お肉だってそう」


咲「テレビもラジオもないけど、もともとあんまり興味ないし」

咲「本は何冊か持ってるし」




咲「昼間はあたたかな日差しと、青い海から吹いてくる潮風」

咲「夜はやさしい星の光」


咲「ああ、わたしって幸せ」








咲「あと2週間だね」







咲「ねえ、淡ちゃん」











……
………


咲「もしもし、お姉ちゃん?」

咲「だからちがうってば、あ、いや、お姉ちゃんのことは大好きだけど」

咲「でもちがうの」

咲「今まで、どうもありがとう」

咲「お父さんとお母さんによろしくね」

咲「あはは、うん、なんでもないの。じゃあね」




咲「お姉ちゃん、ごめんね」




咲「プロリーグのみんなは…別にいいか」

咲「亦野さん、渋谷さん、菫さんも…いいや」




咲「和ちゃんごめん、みんなごめん、さよなら」



咲「もう、携帯電話もいらないね」ポーイ

ボチャン





咲「淡ちゃん」

咲「よいしょっと」

咲「淡ちゃん、見える…?」


ザバーン

ザバーン…




咲「波の音がする」

咲「窓からは海が見えるし、昼間は南の空から日がよく入る」

咲「春になれば花が咲き、冬になれば雪が舞う」

咲「すてきな景色でしょう」




咲「ねえ淡ちゃん」


咲「お誕生日、おめでとう」

咲「この島、淡ちゃんにプレゼントするよ」

咲「この海も、丘も、畑も、星も太陽も、ぜんぶあげる」


咲「淡ちゃん、大好きだよ、愛してる」

咲「だから、これからずっと一緒だよ」

咲「もう、わたしを置いて、遠くになんて行かないで」




咲「もっと、淡ちゃんの身体に触れていたかったから」

咲「もっと、淡ちゃんと一緒にいろんなものを見たかったから」

咲「だから、冷たい石の下から、連れてきちゃった」

咲「びっくりしたかな、ごめんね、ええへ…」




咲「でも、これからわたしたちは、ずっと一緒にいられるの」

咲「喜んでくれる?」

咲「そう、うれしい、本当に」

咲「わたしの大好きな淡ちゃん」




咲「あそこに小高い丘が見えるでしょう?」

咲「あのふもとのほら穴に、小さな教会を作ったの」

咲「わたしたちは、今からあそこで永遠に結ばれる」

咲「今日はその記念日でもあるの」





咲「淡ちゃんを冷たい石の下に入れてしまうなんて、なんてひどいことをするんだろう」

咲「ってずっと思ってたけど」

咲「今はこうやって一緒に過ごせるから、わたしは幸せ」

咲「連れ出すの、遅くなってごめんね」







咲「さあ、教会に着いたよ」

咲「きれいな小川が流れる、すてきなところでしょう」

咲「ほら、小鳥が祝福してくれてる」




咲「淡ちゃん、これ」

咲「指輪はちょっと作れなかったから、花かんむり」

咲「この白い花は、丘の上に咲いてたんだよ」

咲「ふふっ」

チュッ










咲「ちょっと疲れたから、ほら穴で休もうね」

咲「よいしょ」





咲「静かだね」

咲「水の流れる音と、鳥のさえずりと、葉のこすれあう音だけが聞こえる」


咲「もう誰も来ない」

咲「だれにもじゃまされない」

咲「結ばれた、ふたりだけの世界」




咲「くりかえしになるけど」

咲「淡ちゃんと、これからずっと一緒にいられて、わたしは幸せ」

咲「愛してる」

咲「愛してるよ」





咲「なんだか、眠くなってきたよ」

咲「少し、横になるね」

咲「おやすみ、淡ちゃん」




咲「今夜も、星がきれいだといいね」














カン

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